(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、光を照射される前の前記半導体素子から得られる接合容量−バイアス電圧特性において接合容量が立ち上がるバイアス電圧であるしきい値電圧と、印加されるバイアス電圧を変えつつ、変化させたバイアス電圧の電圧値毎に光の照射が停止された後の前記半導体素子の接合容量が測定されたときの前記過渡応答が生じたバイアス電圧の下限値と、から前記電気的特性の変化量を求める請求項1に記載の半導体素子の特性変化量測定装置。
前記演算部は、光を照射される前の前記半導体素子から得られるドレイン電流−ゲート電圧特性においてドレイン電流が立ち上がるゲート電圧であるしきい値電圧と、印加されるゲート電圧を変えつつ、変化させたゲート電圧の電圧値毎に光の照射が停止された後の前記半導体素子におけるドレイン電流が測定されたときの前記過渡応答が生じたゲート電圧の下限値と、から前記電気的特性の変化量を求める請求項3に記載の半導体素子の特性変化量測定装置。
前記半導体素子の接合容量−バイアス電圧特性を測定し、この接合容量−バイアス電圧特性において接合容量が立ち上がるバイアス電圧であるしきい値電圧を求める工程と、
印加されるバイアス電圧を変えつつ、変化させたバイアス電圧の電圧値毎に光の照射が停止された後の前記半導体素子の接合容量を測定し、前記過渡応答が生じたバイアス電圧の下限値を求める工程と、
前記しきい値電圧と前記過渡応答が生じたバイアス電圧の下限値とから前記電気的特性の変化量を求める工程と、を備える請求項5に記載の半導体素子の特性変化量測定方法。
前記半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、このドレイン電流−ゲート電圧特性においてドレイン電流が立ち上がるゲート電圧であるしきい値電圧を求める工程と、
印加されるゲート電圧を変えつつ、変化させたゲート電圧の電圧値毎に光の照射が停止された後の前記半導体素子におけるドレイン電流を測定し、前記過渡応答が生じたゲート電圧の下限値を求める工程と、
前記しきい値電圧と前記過渡応答が生じたゲート電圧の下限値とから前記電気的特性の変化量を求める工程と、を備える請求項7に記載の半導体素子の特性変化量測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の測定方法では、電気的特性の変化量を精度よく測定するために、半導体素子へのストレスの付与と、半導体素子の電気的特性の測定とを交互に多数回繰り返す必要があり、このため、一つの半導体素子における電気的特性の変化量の測定には、例えば、1000秒以上の時間が必要であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、半導体素子の電気的特性の変化量を短時間で測定することができる半導体素子の特性変化量測定装置、及び特性変化量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。即ち、本発明の一態様に係る半導体素子の特性変化量測定装置は、半導体接合を有する半導体素子の電気的特性の変化量を測定する装置であって、前記半導体素子に光を照射する光照射部と、前記半導体素子における前記半導体接合を挟んで一方側の部位に設けられた電極と他方側の部位に設けられた電極との間にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加部と、前記半導体素子の接合容量を測定する接合容量測定部と、測定された接合容量の変化に基づいて前記半導体素子の電気的特性の変化量を求める演算部と、を備える。そして、前記演算部は、光
の照射
が停止された後の前記半導体素子にバイアス電圧が印加された状態で当該半導体素子の接合容量が測定されたときに前記接合容量の値が変化する過渡応答が生じるバイアス電圧の範囲に基づいて前記電気的特性の変化量を求める。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る半導体素子の特性変化量測定方法は、半導体接合を有する半導体素子の電気的特性の変化量を測定する方法であって、光
の照射
が停止された後に、前記半導体素子の前記半導体接合を挟んで一方側の部位に設けられた電極と他方側の部位に設けられた電極との間にバイアス電圧を印加した状態で前記半導体素子の接合容量を測定し、この測定結果における前記接合容量の値が変化する過渡応答が生じるバイアス電圧の範囲に基づいて前記電気的特性の変化量を求める。
【0011】
これらの構成によれば、半導体接合を有する半導体素子における光の照射による電気的特性の変化量(例えば、CV特性(バイアス電圧の変化に対する接合容量の変化)において半導体素子への光の照射によって接合容量が変化するバイアス電圧の範囲)を接合容量の過渡応答の有無によって検出することにより、短時間で測定することができる。
【0012】
即ち、光の照射によって変化した接合容量は光の照射を停止することで元の値に戻るため、この接合容量の挙動を、バイアス電圧を変えつつ電圧値毎の光照射停止後の接合容量を測定することで過渡応答(接合容量の値の変化)として検出することにより、CV特性において光の照射によって接合容量が変化するバイアス電圧の範囲を精度よく検出することができる。そして、半導体素子への光照射後(光の照射を停止した後)に接合容量が時間の経過に伴って変化するか否かだけで過渡応答の有無が判断できるため、各電圧値での接合容量の測定時間を短くする(例えば、0.001秒から10秒程度にする)ことができ、その結果、半導体素子の電気的特性の変化量を短時間で測定することができる。
【0013】
具体的に、過渡応答が生じるバイアス電圧の範囲に基づいて電気的特性の変化量を測定する装置では、前記演算部は、光を照射される前の前記半導体素子から得られる接合容量−バイアス電圧特性において接合容量が立ち上がるバイアス電圧であるしきい値電圧と、印加されるバイアス電圧を変えつつ、変化させたバイアス電圧の電圧値毎に光
の照射
が停止された後の前記半導体素子の接合容量が測定されたときの前記過渡応答が生じたバイアス電圧のしきい値と、から前記電気的特性の変化量を求めてもよい。
【0014】
また、具体的に、過渡応答が生じるバイアス電圧の範囲に基づいて電気的特性の変化量を測定する方法では、前記半導体素子の接合容量−バイアス電圧特性を測定し、この接合容量−バイアス電圧特性において接合容量が立ち上がるバイアス電圧であるしきい値電圧を求める工程と、印加されるバイアス電圧を変えつつ、変化させたバイアス電圧の電圧値毎に光
の照射
が停止された後の前記半導体素子の接合容量を測定し、前記過渡応答が生じたバイアス電圧のしきい値を求める工程と、前記しきい値電圧と前記過渡応答が生じたバイアス電圧のしきい値とから前記電気的特性の変化量を求める工程と、を備えてもよい。
【0015】
これらの構成によれば、光を照射する前の半導体素子から得られたCV特性(接合容量−バイアス電圧特性)におけるしきい値電圧と、光を照射することによって過渡応答が生じるバイアス電圧の下限値とを検出すればよいため、即ち、バイアス電圧を予想されるしきい値電圧のシフト量よりも十分広く振った上で各電圧値での接合容量の過渡応答の有無を全て調べる必要がないため)、半導体素子の電気的特性の変化量をより短時間で測定することができる。
【0016】
また、本発明の他の態様に係る半導体素子の特性変化量測定装置は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有する半導体素子の電気的特性の変化量を測定する装置であって、前記半導体素子に光を照射する光照射部と、前記ゲート電極にゲート電圧を印加するゲート電圧印加部と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に引出電圧を印加する引出電圧印加部と、前記半導体素子における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間を流れるドレイン電流を測定するドレイン電流測定部と、測定されたドレイン電流の変化に基づいて前記半導体素子の電気的特性の変化量を求める演算部と、を備える。そして、前記演算部は、光
の照射
が停止された後の前記半導体素子にゲート電圧が印加されると共に所定の引出電圧が印加された状態で当該半導体素子を流れるドレイン電流が測定されたときに前記ドレイン電流の値が変化する過渡応答が生じるゲート電圧の範囲に基づいて前記電気的特性の変化量を求める。
【0017】
また、本発明の他の態様に係る半導体素子の特性変化量測定方法は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有する半導体素子の電気的特性の変化量を測定する方法であって、光
の照射
が停止された後に、前記半導体素子において前記ゲート電極にゲート電圧を印加すると共に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に所定の引出電圧を印加した状態で当該半導体素子における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間を流れるドレイン電流を測定したときに前記ドレイン電流の値が変化する過渡応答が生じるゲート電圧の範囲に基づいて前記電気的特性の変化量を求める。
【0018】
これらの構成によれば、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有する半導体素子における光の照射による電気的特性の変化量(例えば、IV特性(ゲート電圧の変化に対するドレイン電流の変化)において光の照射によってドレイン電流が変化するゲート電圧の範囲)をドレイン電流の過渡応答の有無によって検出することにより、短時間で測定することができる。
【0019】
即ち、光の照射によって変化したドレイン電流は光の照射を停止することで元の値に戻るため(リカバリ効果)、このドレイン電流の挙動を、ゲート電圧を変えつつ電圧値毎に光照射停止後のドレイン電流を測定することで過渡応答(ドレイン電流の値の変化)として検出することにより、IV特性において光の照射によってドレイン電流が変化するゲート電圧の範囲を精度よく且つ確実に検出することができる。そして、半導体素子への光照射後(光の照射を停止した後)にドレイン電流が時間の経過に伴って変化するか否かだけで過渡応答の有無が判断できるため、十分な光量の光を半導体素子へ照射したあとにドレイン電流を測定することで、各電圧値でのドレイン電流の測定時間を短くする(例えば、0.001秒から10秒程度にする)ことができ、その結果、半導体素子の電気的特性の変化量を短時間で測定することができる。
【0020】
具体的に、過渡応答が生じるゲート電圧の範囲に基づいて電気的特性の変化量を測定する装置では、前記演算部は、光を照射される前の前記半導体素子から得られるドレイン電流−ゲート電圧特性においてドイレン電流が立ち上がるゲート電圧であるしきい値電圧と、印加されるゲート電圧を変えつつ、変化させたゲート電圧の電圧値毎に光
の照射
が停止された後の前記半導体素子におけるドレイン電流が測定されたときの前記過渡応答が生じたゲート電圧のしきい値と、から前記電気的特性の変化量を求めてもよい。
【0021】
また、具体的に、過渡応答が生じるゲート電圧の範囲に基づいて電気的特性の変化量を測定する方法では、前記半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、このドレイン電流−ゲート電圧特性においてドレイン電流が立ち上がるゲート電圧であるしきい値電圧を求める工程と、印加されるゲート電圧を変えつつ、変化させたゲート電圧の電圧値毎に光が照射された後の前記半導体素子におけるドレイン電流を測定し、前記過渡応答が生じたゲート電圧のしきい値を求める工程と、前記しきい値電圧と前記過渡応答が生じたゲート電圧のしきい値とから前記電気的特性の変化量を求める工程と、を備えてもよい。
【0022】
また、具体的に、過渡応答が生じるゲート電圧の範囲に基づいて電気的特性の変化量を測定する方法では、前記半導体素子のドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、このドレイン電流−ゲート電圧特性においてドレイン電流が立ち上がるゲート電圧であるしきい値電圧を求める工程と、印加されるゲート電圧を変えつつ、変化させたゲート電圧の電圧値毎に光
の照射
が停止された後の前記半導体素子におけるドレイン電流を測定し、前記過渡応答が生じたゲート電圧のしきい値を求める工程と、前記しきい値電圧と前記過渡応答が生じたゲート電圧のしきい値とから前記電気的特性の変化量を求める工程と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上より、本発明によれば、半導体素子の電気的特性の変化量を短時間で測定することができる半導体素子の特性変化量測定装置、及び特性変化量測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施形態について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、第1実施形態に係る半導体素子の特性変化量測定装置の概略構成図である。
【0026】
本実施形態に係る半導体素子の特性変化量測定装置(以下、単に「測定装置」とも称する。)10は、クライオスタット12と、光照射部14と、バイアス電圧印加部16と、接合容量測定部18と、制御装置20と、を備え、MOSダイオード(半導体素子)50に光を照射することによって生じる電気的特性の変化量(本実施形態では、CV特性におけるしきい値電圧V
thのシフト量)を測定する。ここで、CV特性(接合容量−バイアス電圧特性)とは、バイアス電圧V
Bの変化に対する接合容量Cの変化である。また、しきい値電圧V
thとは、各種定義があるが、本実施形態の例では、CV特性のグラフにおいて接合容量Cが立ち上がる位置のバイアス電圧V
B(バイアス電圧V
Bが変化したときに接合容量Cが変化し始める位置、より詳しくは、金属膜52中に広がった空乏層が変化し始める電位である(
図3のV
th参照)。尚、当該測定装置10での測定においては、CVカーブの平行移動量(シフト量)を正確に求めることができれば、具体的なしきい値電圧V
thのとり方(定義の仕方)は限定されない。
【0027】
測定装置10の測定対象であるMOSダイオード50は、半導体層(半導体)56と、半導体層56上に設けられた絶縁層(絶縁体)54と、絶縁層54の上面に設けられた金属膜52と、を備える。このMOSダイオード50は、電圧の変化によって接合容量を生じる構造である半導体接合を有する。MOSダイオード50において、絶縁層54を挟んで金属膜52側の端部と半導体層56側の端部とには、それぞれ電極51が設けられている。このMOSダイオード50では、金属膜52として、Mo(モリブデン)やTi(チタン)等の高融点金属が用いられる。また、絶縁層54としては、SiO
2等が用いられるが、SiO
2とSiNとが積層されたものが用いられてもよい。また、半導体層56としては、任意の半導体でよく、例えば、酸化物半導体が用いられるが、Sn(スズ)を用いたもの等でもよい。尚、半導体56としては、酸化物半導体のなかでも、特に、インジウム、ガリウム、亜鉛、及び酸素からなるアモルファス酸化物半導体(In−Ga−Zn−O:IGZO)が非常に高いキャリア移動度を有するため好ましい。
【0028】
クライオスタット12は、MOSダイオード50への不純物の付着を防ぐと共にMOSダイオード50を所定の温度に保つためにその内部にMOSダイオード50を収容可能な容器である。クライオスタット12は、制御装置20に接続され、制御装置20からの温度制御信号に基づいて内部の温度を調整する。このクライオスタット12には、レーザ(光)照射用の窓13が設けられている。本実施形態のクライオスタット12は、MOSダイオード50を、例えば、333Kに保つ。尚、この温度は任意であるが、一般的なストレス試験に用いられる温度が望ましい。
【0029】
光照射部14は、窓13を通じてクライオスタット12内に収容(配置)されたMOSダイオード50に光を照射する。この光照射部14は、紫外線等のレーザや紫外線又は白色のLED等の光源を有し、例えば、MOSダイオード50のバンドギャップ以上の波長の光を含む光を出力する。尚、光照射部14は、MOSダイオード50を構成する酸化物半導体に含まれる欠陥準位に相当するエネルギー以上の光を出力できればよい。本実施形態の光照射部14は、371nmのレーザ光を出力する。
【0030】
バイアス電圧印加部16は、MOSダイオード50の両電極51、51間にバイアス電圧V
Bを印加する。このバイアス電圧印加部16は、制御装置20に接続され、制御装置20からの指示信号によってバイアス電圧V
B(電圧値)を変更可能に構成される。
【0031】
接合容量測定部18は、MOSダイオード50の接合容量を測定する。本実施形態の接合容量測定部18は、例えば、半導体素子の接合容量Cを測定可能な、いわゆる容量計である。この接合容量測定部18は、制御装置20に接続され、測定結果に応じた容量信号を出力する。
【0032】
制御装置20は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子、及びその周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。この制御装置20は、例えば、MOSダイオード50への光の照射の停止(終了)後にバイアス電圧V
Bを印加した状態でMOSダイオード50の接合容量Cを測定することによってMOSダイオード50のしきい値電圧V
thのシフト量を導出可能な電気的特性の変化量測定プログラムの実行によって、機能的に、演算制御部(演算部)22を備える。また、制御装置20は、測定結果や各種情報等を表示可能な表示部(出力部)24を有する。
【0033】
演算制御部22は、光の照射を停止された後(即ち、光を照射された後)のMOSダイオード50にバイアス電圧V
Bが印加された状態で接合容量Cが測定されたときに、過渡応答(測定された接合容量Cが時間の経過に伴って変化する状態)が生じるバイアス電圧V
Bの範囲に基づいてしきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)を求める。例えば、演算制御部22は、光照射部14、バイアス電圧印加部16、及び接合容量測定部18を制御し、バイアス電圧印加部16がMOSダイオード50に印加するバイアス電圧V
Bと接合容量測定部18によって測定されたMOSダイオード50の接合容量Cとから、しきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)を求める。そして、演算制御部22は、求めたしきい値電圧V
thのシフト量を表示部24に出力して表示させる。尚、しきい値電圧V
thのシフト量を測定するときの演算制御部22の動作(制御及び演算)についての詳細は、以下の測定装置10によるMOSダイオード50のしきい値電圧V
thのシフト量の測定の説明において述べる。
【0034】
以上のような測定装置10では、以下のようにしてMOSダイオード50のしきい値電圧V
thのシフト量を測定する。
図2は、測定装置においてMOSダイオードのしきい値電圧のシフト量を求めるときのフローを示す図であり、
図3は、CV特性を示す図であり、
図4は、第1実施形態における過渡応答を説明するための図である。
【0035】
測定対象のMOSダイオード50がクライオスタット12内に配置され(ステップS1)、制御装置20が温度制御信号を出力してクライオスタット12内の温度を333Kに制御する。
【0036】
クライオスタット12内の温度が333Kになると、演算制御部22は、MOSダイオード50に印加されるバイアス電圧V
Bをスイープ(走査)させつつ接合容量Cを測定し、これにより得られたCV特性からしきい値電圧V
th(本実施形態では、例えば、6V)を求める(ステップS2)。
【0037】
しきい値電圧V
thが求められると、演算制御部22は、MOSダイオード50に、所定時間、光(本実施形態では371nmのレーザ光)を照射し(ステップS3)、光の照射停止後、所定のバイアス電圧V
B1を印加しつつ接合容量Cを所定時間(本実施形態では、0.001秒から10秒程度の範囲内における所定時間)測定する(ステップS4)。このときMOSダイオード50に印加されるバイアス電圧V
B1は、予測されるMOSダイオード50でのしきい値電圧V
thのシフト量よりもマイナス側に十分大きく変化させた電圧値V
B1(本実施形態では、例えば、−1V)である。
【0038】
演算制御部22は、ステップS4において接合容量Cを所定時間測定したときに、
図4(A)に示されるように、過渡応答が生じていなければ、即ち、接合容量Cが略一定であれば(ステップS5:No)、ステップS3と同様に、MOSダイオード50に所定時間光を照射し(ステップS6)、光の照射停止後、電圧値をV
B1から所定の電圧値だけ上げたバイアス電圧V
B2を印加しつつ接合容量Cを所定時間測定する(ステップS7)。本実施形態では、電圧値をV
B1(−1V)から1V上げた電圧値V
B2(0V)を印加する。
【0039】
ここで、本実施形態における過渡応答とは、接合容量Cを測定したときに、
図4(B)に示されるように、時間tの経過に伴って接合容量Cが変化(変動)する状態をいう。この過渡応答は、光の照射によって変化したMOSダイオード(半導体素子)50の接合容量Cが光の照射を停止することで元の値に戻る特性(リカバリ効果)に起因して生じる。詳しくは、次の通りである。
図3に示されるように、光の照射によって、MOSダイオード50(半導体素子)のしきい値電圧がV
thからV
Bnにシフトする。そして、光の照射を停止すると、リカバリ効果によってしきい値電圧がV
BnからV
thに戻る。このとき、V
BnとV
thとの間の電圧値であるV
aのバイアス電圧を印加した状態で接合容量Cを測定すると、しきい値電圧がV
BnからV
thに戻るときに接合容量もC
2からC
1まで変化する(
図3の矢印A参照)。本実施形態では、この変化を過渡応答とする。
【0040】
演算制御部22は、ステップS6において接合容量Cを所定時間測定したときに過渡応答が生じていなければ(ステップS8:No)、ステップS6に戻り、接合容量Cの測定結果に過渡応答が現れるまで、ステップS6〜S8を繰り返す。
【0041】
接合容量Cの測定結果に過渡応答が現れると(ステップS8:Yes)、演算制御部22は、ステップS2で求めたしきい値電圧V
thと、この過渡応答が最初に現れた(生じた)バイアス電圧V
Bnとから、しきい値電圧V
thのシフト量を求める(ステップS9)。具体的に、演算制御部22は、最初に求めたしきい値電圧V
thと、前記過渡応答が最初に現れたバイアス電圧V
Bnと、の差を求め、この差の値をしきい値電圧V
thのシフト量(|V
th−V
Bn|)とする。
【0042】
このように、バイアス電圧V
Bを所定の電圧値(本実施形態では、例えば、1V)だけ上げながら、電圧値V
B1、V
B2、…V
Bn毎に接合容量Cを所定時間測定し、最初に過渡応答が生じたバイアス電圧(過渡応答が生じるバイアス電圧のしきい値又は下限値)V
Bnと、しきい値電圧V
thとからしきい値電圧V
thのシフト量を求めることで、前記最初に過渡応答が生じたバイアス電圧V
Bnより大きな電圧値V
Bn+1、V
Bn+2、…での接合容量Cの測定を行なわずにしきい値電圧V
thのシフト量を求めることができるため、当該測定装置10における電気的特性の変化量の測定時間を短くすることができる。即ち、
図3に示されるように、光の照射を停止した後、リカバリ効果によって接合容量Cが時間とともに元に戻るバイアス電圧V
Bの範囲を、過渡応答(接合容量Cの変化)が生じるバイアス電圧V
Bの範囲として検出することができるが、この過渡応答の生じるバイアス電圧V
Bの範囲を全て検出するのではなく、過渡応答の生じるバイアス電圧の下限値(しきい値)V
Bnのみを検出すればよいため、当該測定装置10では電気的特性の変化量の測定時間を短くすることができる。
【0043】
一方、ステップS5において、過渡応答が生じていれば(ステップS5:Yes)、演算制御部22は、MOSダイオード50に光を所定時間照射し、光の照射を停止した後、ステップS4において印加したバイアス電圧よりも所定の値(例えば、3V)だけマイナス側に振った電圧値のバイアス電圧V
Bを印加しつつ接合容量Cの測定を行ない(ステップS10)、過渡応答が生じているか否かを判断する(ステップS5)。
【0044】
以上の測定装置10によれば、半導体接合を有するMOSダイオード50における光の照射による電気的特性の変化量(CV特性において、光の照射によってシフトするしきい値電圧V
thのシフト量)を接合容量Cの過渡応答の有無によって検出することにより、短時間で且つ精度よく測定することができる。
【0045】
即ち、光の照射によって変化した接合容量Cは、光の照射を停止することで元の値に戻るため(リカバリ効果により)、この接合容量Cの挙動を、バイアス電圧V
Bを変えつつ電圧値V
B1、V
B2、…、V
Bn毎の光照射停止後の接合容量Cを測定することで過渡応答(接合容量Cの値の変化)として検出することにより、CV特性において光の照射によって接合容量Cが変化するバイアス電圧V
Bの範囲を精度よく検出することができる。しかも、MOSダイオード50への光照射後(光の照射を停止した後)に接合容量Cが時間の経過に伴って変化するか否かだけで過渡応答の有無が判断できるため、各電圧値V
B1、V
B2、…、V
Bnでの接合容量Cの測定時間を短くする(例えば、0.001秒から10秒程度にする)ことができ、その結果、MOSダイオード50のしきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)を短時間で測定することができる。
【0046】
しかも、本実施形態の測定装置10では、光を照射する前の半導体素子から得られたCV特性におけるしきい値電圧V
thと、光を照射することによって過渡応答が生じるバイアス電圧の下限値V
Bnとを検出すればよいため(即ち、バイアス電圧V
Bを予想されるしきい値電圧V
thのシフト量よりも十分広く振った上で各電圧値V
B1、V
B2、…、V
Bn、…での接合容量Cの過渡応答の有無を全て調べる必要がないため)、MOSダイオード50のしきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)をより短時間で測定することができる。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態について
図5を参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。ここで、
図5は、第2実施形態に係る半導体素子の特性変化量測定装置の概略構成図である。
【0048】
測定装置110は、クライオスタット12と、光照射部14と、ゲート電圧印加部30と、引出電圧印加部32と、ドレイン電流測定部34と、制御装置20と、を備え、薄膜トランジスタ(半導体素子)60に光を照射することによって生じる電気的特性の変化量(本実施形態では、IV特性におけるしきい値電圧V
thのシフト量)を測定する。ここで、IV特性(ドレイン電流−ゲート電圧特性)とは、ゲート電圧V
Gの変化に対するドレイン電流Iの変化である。また、しきい値電圧V
thは、各種定義があるが、本実施形態の例では、簡単のために、IV特性のグラフにおいてドレイン電流Iが立ち上がる位置のゲート電圧V
G(ゲート電圧V
Gが変化したときにドレイン電流Iが変化し始める位置、より詳しくは、TFT60において、チャネルの形成がはじまるゲート電圧V
Gとする(
図7のV
th参照)。
【0049】
測定装置110の測定対象である薄膜トランジスタ(TFT)60は、ガラス基板61と、ガラス基板61上にされたゲート電極62と、ゲート電極62を覆うゲート絶縁膜63と、ゲート絶縁膜63上に形成される酸化物半導体層64と、酸化物半導体層64上に間隔を空けて設けられる一対のオーミック電極(ソース電極65及びドレイン電極66)と、酸化物半導体層64の露出部分を覆う保護膜(絶縁膜)67と、を備える。
【0050】
ゲート電極62、ソース電極65、及びドレイン電極66は、例えば、高融点材料のMoやTi、電気抵抗率の低いAl(アルミニウム)やCu(銅)の金属、又はこれらの合金等によって形成されている。ゲート絶縁膜63及び保護膜67としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等が用いられる。また、ゲート絶縁膜63及び保護膜67は、Al
2O
3やY
2O
3等の酸化物や、これらを積層したものでもよい。酸化物半導体層64は、例えば、IGZOによって形成されている。
【0051】
ゲート電圧印加部30は、ゲート電極62にゲート電圧V
Gを印加する。このゲート電圧印加部30は、制御装置20に接続され、制御装置20からの指示信号によってゲート電圧(電圧値)を変更可能に構成される。
【0052】
引出電圧印加部32は、ソース電極65とドレイン電極66との間に引出電圧V
Dを印加する。この引出電圧印加部32は、制御装置20に接続され、制御装置20からの指示信号によって引出電圧(電圧値)を変更可能に構成される。
【0053】
ドレイン電流測定部34は、TFT60におけるソース電極65とドレイン電極66との間を流れるドレイン電流Iを測定する。本実施形態のドレイン電流測定部34は、例えば、いわゆる電流計である。このドレイン電流測定部34は、制御装置20に接続され、測定結果に応じた電流値信号を出力する。
【0054】
制御装置20は、例えば、TFT60への光の照射の停止(終了)後にゲート電圧V
Gと引出電圧V
Dとを印加した状態でドレイン電流Iを測定することによってTFT60のしきい値電圧V
thのシフト量を導出可能な電気的特性の変化量測定プログラムの実行によって、機能的に、演算制御部(演算部)26を備える。
【0055】
演算制御部26は、光の照射を停止した後(即ち、光を照射された後)のTFT60にゲート電圧V
Gが印加されると共に所定の引出電圧V
Dが印加された状態でドレイン電流Iが測定されたときに過渡応答(測定されたドレイン電流Iが時間tの経過に伴って変可する状態)が生じるゲート電圧V
Gの範囲に基づいてしきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)を求める。例えば、演算制御部26は、光照射部14、ゲート電圧印加部30、引出電圧印加部32、及びドレイン電流測定部34を制御し、ゲート電圧印加部30がゲート電極62に印加するゲート電圧V
Gと、引出電圧印加部32がソース電極65及びドレイン電極66間に印加する引出電圧V
Dと、ドレイン電流測定部34によって測定されたドレイン電流Iとから、しきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)を求める。そして、演算制御部26は、求めたしきい値電圧V
thのシフト量を表示部24に出力して表示させる。尚、しきい値電圧V
thのシフト量を測定するときの演算制御部26の動作(制御及び演算)についての詳細は、以下の測定装置110によるTFT60のしきい値電圧V
thのシフト量の測定の説明において述べる。
【0056】
以上のような測定装置110では、以下のようにしてTFT60のしきい値電圧V
thのシフト量を測定する。
図6は、測定装置においてTFTのしきい値電圧のシフト量を求めるときのフローを示す図であり、
図7は、IV特性を示す図であり、
図8は、第2実施形態における過渡応答を説明するための図である。
【0057】
測定対象のTFT60がクライオスタット12内に配置され(ステップS11)、制御装置20が温度制御信号を出力してクライオスタット12内の温度を333Kにする。
【0058】
クライオスタット12内の温度が333Kになると、演算制御部26は、ソース電極65とドレイン電極66との間に所定の引出電圧V
D(本実施形態では、例えば、10V)を印加した状態で、ゲート電極62に印加されるゲート電圧V
Gをスイープさせつつドレイン電流Iを測定し、これにより得られたIV特性からしきい値電圧V
th(本実施形態では、例えば、0V)を求める(ステップS12)。
【0059】
しきい値電圧V
thが求められると、演算制御部26は、TFT60に、所定時間、光(本実施形態では371nmのレーザ光)を照射し(ステップS13)、光の照射停止後、前記所定の引出電圧V
D(10V)を印加したまま、所定のゲート電圧V
G1を印加しつつドレイン電流Iを所定時間(本実施形態では、0.001秒から10秒程度の範囲内における所定時間)測定する(ステップS14)。このときゲート電極62に印加されるゲート電圧V
Gは、予測されるTFT60でのしきい値電圧V
thのシフト量よりもマイナス側に十分大きく変化させた電圧値V
G1(本実施形態では、例えば、−5V)である。
【0060】
尚、光がTFTに照射されている最中のゲート電圧V
Gは任意である。例えば、光がTFTに照射されている最中のゲート電圧V
Gを大きなマイナスの電圧値とすることで、光照射時のTFTに加わるマイナス電圧ストレスを見積もることが可能になる。
【0061】
演算制御部26は、ステップS14においてドレイン電流Iを所定時間測定したときに、
図8(A)に示されるように、過渡応答が生じていなければ、即ち、ドレイン電流Iが略一定であれば(ステップS15:No)、ステップS13と同様に、TFT60に所定時間光を照射し(ステップS16)、光の照射停止後、電圧値をV
G1から所定の電圧値だけ上げたゲート電圧V
G2を印加しつつドレイン電流Iを所定時間測定する(ステップS17)。このとき、引出電圧V
Dは、10Vのままである。本実施形態では、電圧値をV
G1(−5V)から1V上げた電圧値V
G2(−4V)を印加する。尚、
図8(A)における10
−3〜10
−1秒の間の電流値Iの乱れは、ノイズである。
【0062】
ここで、本実施形態における過渡応答とは、ドレイン電流Iを測定したときに、
図9(B)に示されるように、時間の経過に伴ってドレイン電流Iが変化(変動)する状態をいう。この過渡応答は、光の照射によって変化したTFT(半導体素子)60のドレイン電流Iが光の照射を停止することで元の値に戻る特性(リカバリ効果)に起因して生じる。詳しくは、次の通りである。
図7に示されるように、光の照射によって、TFT60(半導体素子)のしきい値電圧がV
thからV
Gnにシフトする。そして、光の照射を停止すると、リカバリ効果によってしきい値電圧がV
GnからV
thに戻る。このとき、V
GnとV
thとの間の電圧値であるV
bのゲート電圧を印加した状態でドレイン電流Iの測定が行なわれると、しきい値電圧がV
GnからV
thに戻るときにドレイン電流もI
2からI
1まで変化する(
図7の矢印B参照)。本実施形態では、この変化を過渡応答とする。
【0063】
演算制御部26は、ステップS16においてドレイン電流Iを所定時間測定したときに過渡応答が生じていなければ(ステップS18:No)、ステップS16に戻り、ドレイン電流Iの測定結果に過渡応答が現れるまで、ステップS16〜S18を繰り返す。
【0064】
ドレイン電流Iの測定結果に過渡応答が現れると(ステップS18:Yes)、演算制御部26は、ステップS12で求めたしきい値電圧V
thと、この過渡応答が最初に現れた(生じた)ゲート電圧V
Gnと、からしきい値電圧V
thのシフト量を求める(ステップS19)。具体的に、演算制御部26は、最初に求めたしきい値電圧V
thと、前記過渡応答が最初に現れたゲート電圧V
Gnと、の差を求め、この差の値をしきい値電圧V
thのシフト量(|V
th−V
Gn|)とする。
【0065】
このように、ゲート電圧V
Gを所定の電圧値(本実施形態では1V)だけ上げながら、電圧値V
G1、V
G2、…V
Gn毎にドレイン電流Iを所定時間測定し、最初に過渡応答が生じたゲート電圧(過渡応答が生じるゲート電圧のしきい値又は下限値)V
Gnと、しきい値電圧V
thとからしきい値電圧V
thのシフト量を求めることで、前記最初に過渡応答が生じたゲート電圧V
Gnより大きな電圧値V
Gn+1、V
Gn+2、…でのドレイン電流Iの測定を行なわずにしきい値電圧V
thのシフト量を求めることができるため、当該測定装置110における電気的特性の変化量の測定時間を短くすることができる。即ち、
図7に示されるように、光の照射を停止した後、リカバリ効果によってドレイン電流Iが時間とともに元に戻るゲート電圧V
Gの範囲を、過渡応答(ドレイン電流Iの変化)が生じるゲート電圧V
Gの範囲として検出することができるが、この過渡応答の生じるゲート電圧V
Gの範囲を全て検出するのではなく、過渡応答の生じるゲート電圧の下限値(しきい値)V
Bnのみを検出すればよいため、当該測定装置110では電気的特性の変化量の測定時間を短くすることができる。
【0066】
一方、ステップS15において、過渡応答が生じていれば(ステップS15:Yes)、演算制御部26は、TFT60に光を所定時間照射し、光の照射を停止した後、ステップS14において印加したゲート電圧V
G1よりも所定の値(例えば、3V)だけマイナス側に振った電圧値のゲート電圧V
Gを印加しつつドレイン電流Iの測定を行ない(ステップS20)、過渡応答が生じているか否かを判断する(ステップS15)。
【0067】
以上の測定装置110によれば、ゲート電極62、ソース電極65及びドレイン電極66を有するTFT60における光の照射による電気的特性の変化量(例えば、IV特性において光の照射によってドレイン電流Iが変化するゲート電圧V
Gの範囲)をドレイン電流Iの過渡応答の有無によって検出することにより、短時間で且つ精度よく測定することができる。
【0068】
即ち、光の照射によって変化したドレイン電流Iは光の照射を停止することで元の値に戻るため(リカバリ効果)、このドレイン電流Iの挙動を、ゲート電圧V
Gを変えつつ電圧値V
G1、V
G2、…、V
Gn毎に光照射停止後のドレイン電流Iを測定することで過渡応答(ドレイン電流Iの値の変化)として検出することにより、IV特性において光の照射によってドレイン電流Iが変化するゲート電圧V
Gの範囲を精度よく且つ確実に検出することができる。しかも、TFT60への光照射後(光の照射を停止した後)にドレイン電流Iが時間の経過に伴って変化するか否かだけで過渡応答の有無が判断できるため、各電圧値V
G1、V
G2、…、V
Gnでのドレイン電流Iの測定時間を短くする(例えば、0.001秒から10秒程度にする)ことができ、その結果、TFT60のしきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)を短時間で測定することができる。
【0069】
しかも、本実施形態の測定装置110では、光を照射する前の半導体素子から得られたIV特性におけるしきい値電圧V
thと、光を照射することによって過渡応答が生じるゲート電圧の下限値V
Gnとを検出すればよいため(即ち、ゲート電圧V
Gを予想されるしきい値電圧V
thのシフト量よりも十分広く振った上で各電圧値V
G1、V
G2、…、V
Gnでのドレイン電流Iの過渡応答の有無を全て調べる必要がないため)、TFT60のしきい値電圧V
thのシフト量(電気的特性の変化量)をより短時間で測定することができる。
【0070】
尚、本発明の半導体素子の特性変化量測定装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0071】
電気的特性の変化量(上記第1及び第2実施形態では、しきい値電圧V
thのシフト量)の具体的な求め方は限定されない。上記第1及び第2実施形態では、光の照射前の半導体素子50(又は60)のCV特性(又はIV特性)におけるしきい値電圧V
thと、過渡応答が生じるバイアス電圧V
B(又はゲート電圧V
G)の最小値とから、しきい値電圧V
thのシフト量を求めているが、この方法に限定されず、過渡応答が生じているバイアス電圧V
B(又はゲート電圧V
G)の範囲に基づいて半導体素子の電気的特性の変化量が求められれば、他の方法でもよい。例えば、以下の例のように求められてもよい。
【0072】
先ず、光の照射前の半導体素子のCV特性を測定し、得られたCV特性から、
図9においてγで示すCV特性の変化の幅を求める。次に、バイアス電圧V
Bを前記変化の幅γが十分に含まれる範囲V
B1〜V
Bm(
図9に示す例では、−1V〜11Vの範囲)で広く振ると共に、振ったバイアス電圧の電圧値V
B1、V
B2、…、V
Bm毎に、光照射後の半導体素子の接合容量Cを所定時間測定する。得られた各接合容量Cを1次のサイン波を用いたフーリエ変換を行なうことで、変極点(時定数)の見積もりを行なう。その結果を
図10に示す。この結果において、過渡応答は、バイアス電圧V
Bの電圧値が時間の経過に伴って変化する状態である。即ち、
図10に示す例では、バイアス電圧V
Bが3V〜10Vの範囲において過渡応答が現れて(生じて)いる。
【0073】
これらの測定結果において、過渡応答が生じるバイアス電圧V
Bの最小値αが3V、最大値βが10V、光照射前の半導体素子におけるCV特性の変化の幅γが4Vである。ここで、しきい値電圧のシフト量は、
図9より|α−β+γ|の式で得られることが分かる。この式に上記の各値α、β、γをそれぞれ代入することで、しきい値電圧V
thのシフト量が3V(具体的には、|3−10+4|=3V)であることが求められる。
【0074】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。