特許第5806995号(P5806995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806995
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   F01M13/04 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-212090(P2012-212090)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-66193(P2014-66193A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−050949(JP,A)
【文献】 特開2009−197722(JP,A)
【文献】 実開昭55−097108(JP,U)
【文献】 実開昭60−175810(JP,U)
【文献】 特開2007−332802(JP,A)
【文献】 実開昭59−141114(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドカバー(1)の天井壁(2)の下方にブリーザプレート(3)が取り付けられ、天井壁(2)とブリーザプレート(3)との間がブリーザ室(4)とされ、ブリーザプレート(3)の端部(5)と端部(5)に対向する対向壁(6)との間がブローバイガス入口(7)とされたエンジンにおいて、
上記ブリーザプレート(3)の端部(5)に、端部(5)の延長方向にある対向壁(6)に向けて突出した複数の突出片(11)(11)が形成され、隣合う突出片(11)(11)同士の間がブローバイガス(9)の通過隙間(10)とされている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンにおいて、
シリンダヘッドカバー(1)の天井壁部分(13)がブリーザ室(4)に突出する湾曲部(13a)とされ、ブリーザ室(4)を通過するブローバイガス(9)が湾曲部(13a)に衝突するようになっている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載したエンジンにおいて、
湾曲部(13a)の上側に形成される窪み(14)に過給パイプ(15)の下側部が進入している、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、ブリーザ装置の組み立てが容易になるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドカバーの天井壁の下方にブリーザプレートが取り付けられ、天井壁とブリーザプレートとの間がブリーザ室とされ、ブリーザプレートの端部と端部に対向する立壁との間がブローバイガス入口とされたエンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
この種のブリーザ装置によれば、ブリーザ室でブローバイガスのオイル分離を行うことができる利点がある。
しかし、この従来技術では、ブローバイガス入口で、シリンダヘッドカバーにブリーザプレートとは別部品の邪魔板が取り付けられているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−145214号(第2図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 ブリーザ装置の組み立てが繁雑になる。
ブローバイガス入口で、シリンダヘッドカバーにブリーザプレートとは別部品の邪魔板が取り付けられているため、シリンダヘッドカバーへのブリーザプレートと邪魔板の組み付け時に、これらの位置関係を調節する必要があり、ブリーザ装置の組み立てが繁雑になる。
【0005】
本発明の課題は、ブリーザ装置の組み立てが容易になるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図2に例示するように、シリンダヘッドカバー(1)の天井壁(2)の下方にブリーザプレート(3)が取り付けられ、天井壁(2)とブリーザプレート(3)との間がブリーザ室(4)とされ、ブリーザプレート(3)の端部(5)と端部(5)と対向する対向壁(6)との間がブローバイガス入口(7)とされたエンジンにおいて、
図4に例示するように、上記ブリーザプレート(3)の端部(5)に、端部(5)の延長方向にある対向壁(6)に向けて突出した複数の突出片(11)(11)が形成され、隣合う突出片(11)(11)同士の間がブローバイガス(9)の通過隙間(10)とされている、ことを特徴とするエンジン。
【0007】
【0008】
【0009】
【発明の効果】
【0010】
【0011】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 ブリーザ装置の組み立てが容易になる。
図4に例示するように、上記ブリーザプレート(3)の端部(5)に、端部(5)の延長方向にある対向壁(6)に向けて突出した複数の突出片(11)(11)が形成され、隣合う突出片(11)(11)同士の間がブローバイガス(9)の通過隙間(10)とされているので、ブリーザ室(4)の入口で突出片(11)(11)によるオイル分離が行われる。この突出片(11)(11)はブリーザプレート(3)に形成されているので、ブリーザプレート(3)と別にシリンダヘッドカバー(1)に取り付ける必要はなく、ブリーザプレート(3)との位置調節も必要ないため、ブリーザ装置の組み立てが容易になる。
ブリーザ室(4)の入口で突出片(11)(11)によるオイル分離が行われる理由は、突出片(11)(11)の下流でブローバイガス(9)のカルマン渦が発生し、ブリーザプレート(3)上面へのブローバイガス(9)の接触が促進され、ブローバイガス(9)に含まれるオイルミストがブリーザプレート(3)上面で凝縮するためと推定される。
【0012】
ブリーザ室(4)の入口で隆起部(12)(12)によるオイル分離が行われる理由は、隆起部(12)(12)の下流でブローバイガス(9)のカルマン渦が発生し、ブリーザプレート(3)上面へのブローバイガス(9)の接触が促進され、ブローバイガス(9)に含まれるオイルミストがブリーザプレート(3)上面で凝縮するためと推定される。
【0013】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ブリーザ装置の組み立てが容易になる。
図2に例示するように、シリンダヘッドカバー(1)の天井壁部分(13)がブリーザ室(4)に突出する湾曲部(13a)とされ、ブリーザ室(4)を通過するブローバイガス(9)が湾曲部(13a)に衝突するようになっているので、湾曲部(13a)にブローバイガス(9)が衝突し、ブローバイガス(9)に含まれるオイルミストが湾曲部(13a)の表面で凝縮し、オイル分離が行われる。この湾曲部(13a)はシリンダヘッドカバー(1)の一部であるため、新たな組み付けは必要なく、ブリーザ装置の組み立てが容易になる。
【0014】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの全高を低くすることができる。
図2に例示するように、湾曲部(13a)の上側に形成される窪み(14)に過給パイプ(15)の下側部が進入しているので、過給パイプ(15)を低く配置することができ、エンジンの全高を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1参考形態に係るエンジンで用いるブリーザプレートを説明する図で、図1(A)はブリーザプレートの端部の斜視図、図1(B)は変更例に係るブリーザプレートの端部の斜視図である。
図2】本発明の第1参考形態に係るエンジンで用いるブリーザ室の縦断側面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るエンジンで用いるブリーザプレートの端部の斜視図である。
図5】本発明の第2参考形態に係るエンジンで用いるブリーザプレートの端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図3は本発明の第1参考形態に係るエンジンを説明する図、図4は本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図、図5は本発明の第2参考形態に係るエンジンを説明する図であり、各参考形態と実施形態では、立形の多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0017】
第1参考形態について説明する。
図3に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(16)の上部にシリンダヘッド(17)が組み付けられ、シリンダヘッド(17)の上部にシリンダヘッドカバー(1)が組み付けられ、シリンダヘッド(17)の横一側に吸気マニホルド(18)が組み付けられ、シリンダヘッド(17)の横他側に排気マニホルド(19)が組み付けられている。シリンダヘッド(17)には渦室(36)が形成されている。シリンダヘッドカバー(1)内には吸気バルブ(図外)や排気バルブ(20)を連動するロッカアーム(21)が収容されている。
【0018】
図2に示すように、シリンダヘッドカバー(1)の天井壁(2)の下方にブリーザプレート(3)が取り付けられ、天井壁(2)とブリーザプレート(3)との間がブリーザ室(4)とされ、ブリーザプレート(3)の端部(5)と端部(5)の延長方向にある対向壁(6)との間がブローバイガス入口(7)とされている。
【0019】
図2図3に示すように、ブリーザ室(4)は、シリンダヘッドカバー(1)の天井壁(2)と天井壁(2)から下向きに垂設された左右側壁(22)と端壁(23)と対向壁(6)とで囲まれて構成され、ブリーザプレート(3)の対向壁(6)側にブローバイガス入口(7)が設けられ、端壁(23)側の天井壁(2)にブローバイガス出口(24)が設けられている。
図2に示すように、ブローバイガス出口(24)には閉弁側に付勢されたダイヤフラム式のブリーザ弁(25)が配置され、ブリーザ弁(25)の調圧機能により、クランク室(図外)の内圧が調圧されるとともに、ブリーザ弁(25)の絞り抵抗により、ブローバイガス(9)のオイル分離がなされる。
【0020】
図1(A)に示すように、上記ブリーザプレート(3)の端部(5)に上向きに突出した複数の突出片(8)(8)が形成され、隣合う突出片(8)(8)同士の間がブローバイガス(9)の通過隙間(10)とされている。
このため、ブリーザ室(4)の入口で突出片(8)(8)によるオイル分離が行われる。この突出片(8)(8)はブリーザプレート(3)に形成されているので、ブリーザプレート(3)と別にシリンダヘッドカバー(1)に取り付ける必要はなく、ブリーザプレート(3)との位置調節も必要ないため、ブリーザ装置の組み立てが容易になる。
ブリーザ室(4)の入口で突出片(8)(8)によるオイル分離が行われる理由は、突出片(8)(8)の下流でブローバイガス(9)のカルマン渦が発生し、ブリーザプレート(3)上面へのブローバイガス(9)の接触が促進され、ブローバイガス(9)に含まれるオイルミストがブリーザプレート(3)上面で凝縮するためと推定される。
ブリーザプレート(3)は板金製で、打ち抜いた板金素材の端部に凹凸を形成しておき、突部を上向きに折り曲げて、突出片(8)(8)を形成している。突出片(8)は方形に形成されているが、三角形その他の形状であってもよい。
図1(B)に示すブリーザプレートの変形例では、ブリーザプレート(3)はダイカスト製で、金型成型により突出片(8)(8)を形成している。
【0021】
図2に示すように、シリンダヘッドカバー(1)の天井壁部分(13)がブリーザ室(4)に突出するように湾曲部(13a)とされ、ブリーザ室(4)を通過するブローバイガス(9)が湾曲部(13a)に衝突するようになっている。
ブリーザ室(4)の途中で、湾曲部(13a)に衝突したブローバイガス(9)に含まれるオイルミストは湾曲部(13a)の表面で凝縮し、凝縮オイル(26)はブリーザプレート(3)上に落下し、ブローバイガス入口(7)からシリンダヘッド(17)上に戻される。
【0022】
図2に示すように、シリンダヘッドカバー(1)の湾曲部(13a)の上側に形成される窪み(14)に過給パイプ(15)の下側部が進入している。
図3に示すように、排気マニホルド(19)の上部に過給機(27)が配置され、過給機(27)の過給空気出口部(28)と吸気マニホルド(18)の過給空気入口部(29)とがシリンダヘッドカバー(1)の上方を横断した過給パイプ(15)で連通している。
【0023】
図3に示すように、過給パイプ(15)が金属パイプ(30)とゴムパイプ(31)とで構成され、シリンダヘッドカバー(1)の横一側で、過給機(27)の過給空気出口部(28)に金属パイプ(30)の一端部(32)がボルト(33)で連結固定され、金属パイプ(30)がシリンダヘッドカバー(1)の上方を横断するようにし、シリンダヘッドカバー(1)の横他側で、吸気マニホルド(18)の過給空気入口部(29)と金属パイプ(30)の自由端部(34)の各開口を対向させ、この過給空気出入口部(29)と金属パイプ(30)の自由端部(34)とを、これらに嵌合させた真っ直ぐなゴムパイプ(31)で連通させている。ゴムパイプ(31)の両端部はベルトクランプ(35)(35)で過給空気入口部(29)と金属パイプ(30)の自由端部(34)に締結している。
【0024】
図3に示すように、金属パイプ(30)に過給圧がかかっても、ボルト(33)で連結固定した金属パイプ(30)の固定端部となる一端部(32)が過給空気出口部(28)から簡単に外れることはなく、ゴムパイプ(31)に過給圧がかかっても、真っ直ぐなゴムパイプ(8)は径方向に膨らむだけで、ゴムパイプ(31)の両端部が金属パイプ(30)の自由端部(34)や過給空気入口部(29)から簡単に抜けることはない。また、一端部(32)をボルト(33)で固定し、他端の自由端部(34)をゴムパイプ(31)で支持した金属パイプ(30)は、両端部をゴムパイプで支持した金属パイプに比べ、振動が少ないうえ、ゴムパイプ(31)を嵌合させた金属パイプ(30)の自由端部(34)や過給空気入口部(29)の振動は、ゴムパイプ(31)の弾性変形によって吸収され、金属パイプ(30)の自由端部(34)や過給空気入口部(29)が振動で損傷したり、ゴムパイプ(31)の両端部から簡単に抜けることはない。このため、過給パイプ(15)の連結箇所が外れる不具合が起こりにくい。
【0025】
図4に示す実施形態は、上記ブリーザプレート(3)の端部(5)に立壁(6)側に向けて突出した複数の突出片(11)(11)が形成され、隣合う突出片(11)(11)同士の間がブローバイガス(9)の通過隙間(10)とされている。この突出片(11)(11)は三角形のノコ歯形に形成されている。
他の構成は、第1参考形態と同じであり、図4中、第1参考形態と同一の要素には、図1と同一の符号を付しておく。
【0026】
図5に示す第2参考形態は、上記ブリーザプレート(3)の端部(5)に上向きに隆起する複数の隆起部(12)(12)が形成され、隣合う隆起部(12)(12)同士の間がブローバイガス(9)の通過隙間(10)とされている。
このため、ブリーザ室(4)の入口で隆起部(12)(12)によるオイル分離が行われる。この隆起部(12)(12)はブリーザプレート(3)に形成されているので、ブリーザプレート(3)と別にシリンダヘッドカバー(1)に取り付ける必要はなく、ブリーザプレート(3)との位置調節も必要ないため、ブリーザ装置の組み立てが容易になる。
この隆起部(12)(12)は円錐を中心軸に沿う平面で2分割した半円錐形状で、板金の端部をプレス加工で波板状に形成して得られる。
他の構成は、第1参考形態と同じであり、図5中、第1参考形態と同一の要素には、図1と同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0027】
(1) シリンダヘッドカバー
(2) 天井壁
(3) ブリーザプレート
(4) ブリーザ室
(5) 端部
(6) 対向壁
(7) ブローバイガス入口
(8) 突出片
(9) ブローバイガス
(10) 通過隙間
(11) 突出片
(12) 隆起部
(13) 天井壁部分
(13a) 湾曲部
(14) 窪み
(15) 過給パイプ
図1
図2
図3
図4
図5