特許第5807002号(P5807002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5807002電動オイルポンプの制御装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5807002
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】電動オイルポンプの制御装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   F16H61/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-259997(P2012-259997)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-105799(P2014-105799A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐野 幸洋
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−041067(JP,A)
【文献】 特開2007−198438(JP,A)
【文献】 特開2012−052640(JP,A)
【文献】 特開2012−154392(JP,A)
【文献】 特開2011−190900(JP,A)
【文献】 特開2011−038601(JP,A)
【文献】 特開2009−185915(JP,A)
【文献】 特開2007−232115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源によって駆動されるメカオイルポンプと電源によって駆動される電動オイルポンプとを備え、前記メカオイルポンプ又は前記電動オイルポンプで発生した油圧を駆動系に配置された油圧要素に供給する車両に用いられる電動オイルポンプの制御装置であって、
前記油圧要素で必要とされる油圧が得られる電動オイルポンプの駆動トルクを目標駆動トルクに設定し、実駆動トルクが前記目標駆動トルクになるように、かつ、実回転速度が前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度の下限値である下限リミット回転速度以上になるように、前記電動オイルポンプを制御する電動オイルポンプ駆動手段と、
前記メカオイルポンプの吐出圧及び前記電動オイルポンプの吐出圧のいずれか高い方を選択して前記油圧要素に供給する油圧選択手段と、
前記電動オイルポンプの吐出圧をドレンするリリーフ弁と、
前記電動オイルポンプの回転速度が下限リミット回転速度であって、前記油圧選択手段によって前記電動オイルポンプの吐出圧が選択されていない間、かつ、前記リリーフ弁が開弁されている間、前記電動オイルポンプの下限リミット回転速度を、前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度よりも低い待機回転速度まで下げる回転速度抑制手段と、
を備えたことを特徴とする電動オイルポンプの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動オイルポンプの制御装置であって、
前記回転速度抑制手段は、前記油圧選択手段によって選択される吐出圧が前記メカオイルポンプの吐出圧から前記電動オイルポンプの吐出圧に変更された場合は、前記下限リミット回転速度を前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度まで戻す、
ことを特徴とする電動オイルポンプの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動オイルポンプの制御装置であって、
前記回転速度抑制手段は、前記油圧選択手段によって前記メカオイルポンプの吐出圧及び前記電動オイルポンプの吐出圧のいずれが選択されているかを、前記電動オイルポンプの実駆動トルクと前記目標駆動トルクとの大小関係に基づき判断する、
ことを特徴とする電動オイルポンプの制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電動オイルポンプの制御装置であって、
前記回転速度抑制手段は、前記油圧選択手段によって前記メカオイルポンプの吐出圧及び前記電動オイルポンプの吐出圧のいずれが選択されているかを、前記電動オイルポンプの実回転速度の変化に基づき判断する、
ことを特徴とする電動オイルポンプの制御装置。
【請求項5】
動力源によって駆動されるメカオイルポンプと電源によって駆動される電動オイルポンプとを備え、前記メカオイルポンプ又は前記電動オイルポンプで発生した油圧を駆動系に配置された油圧要素に供給する車両に用いられる電動オイルポンプの制御方法であって、
前記油圧要素で必要とされる油圧が得られる電動オイルポンプの駆動トルクを目標駆動トルクに設定し、実駆動トルクが前記目標駆動トルクになるように、かつ、実回転速度が前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度の下限値である下限リミット回転速度以上になるように、前記電動オイルポンプを制御し、
前記メカオイルポンプの吐出圧及び前記電動オイルポンプの吐出圧のいずれか高い方を選択して前記油圧要素に供給し、
前記電動オイルポンプの回転速度が下限リミット回転速度であって、前記メカオイルポンプの吐出圧が選択されている間、かつ、前記電動オイルポンプの吐出圧をドレンするリリーフ弁が開弁されている間、前記電動オイルポンプの下限リミット回転速度を、前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度よりも低い待機回転速度まで下げる、
ことを特徴とする電動オイルポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の動力源が停止した時に電動オイルポンプを駆動し、変速機等で必要とされる油圧を発生させる電動オイルポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジンによって駆動されるメカオイルポンプとバッテリからの電力で駆動される電動オイルポンプとを備えたアイドルストップ車両を開示している。アイドルストップ時は、エンジン停止に伴いメカオイルポンプが停止するので、電動オイルポンプを駆動し、電動オイルポンプから変速機に油圧を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−190900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変速機に油圧を継続的に供給するためには、メカオイルポンプの吐出圧がゼロになる前に電動オイルポンプの駆動を開始する必要がある。
【0005】
しかしながら、二つのオイルポンプが同時に駆動されると、メカオイルポンプの吐出圧が電動オイルポンプの吐出圧よりも高い場合で、電動オイルポンプの吐出圧が電動オイルポンプ油圧回路に設けられたリリーフ 弁の設定圧よりも高い場合には、前記リリーフ弁より余剰圧としてドレンされる場合があり、この場合、電動オイルポンプの吐出圧を下げる余地、すなわち、電動オイルポンプの消費電力及び騒音を低減する余地があった。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、メカオイルポンプの吐出圧がゼロになる前に電動オイルポンプを動作させる場合に、電動オイルポンプの消費電力及び騒音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、動力源によって駆動されるメカオイルポンプと電源によって駆動される電動オイルポンプとを備え、前記メカオイルポンプ又は前記電動オイルポンプで発生した油圧を駆動系に配置された油圧要素に供給する車両に用いられる電動オイルポンプの制御装置であって、前記油圧要素で必要とされる油圧が得られる電動オイルポンプの駆動トルクを目標駆動トルクに設定し、電動オイルポンプの実駆動トルクが前記目標駆動トルクになるように、かつ、実回転速度が前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度の下限値である下限リミット回転速度以上になるように、前記電動オイルポンプを制御する電動オイルポンプ駆動手段と、前記メカオイルポンプの吐出圧及び前記電動オイルポンプの吐出圧のいずれか高い方を選択して前記油圧要素に供給する油圧選択手段と、前記電動オイルポンプの吐出圧をドレンするリリーフ弁と、前記電動オイルポンプの回転速度が下限リミット回転速度であって、前記油圧選択手段によって前記メカオイルポンプの吐出圧が選択されている間、かつ、前記リリーフ弁が開弁されている間、前記電動オイルポンプの下限リミット回転速度を、前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度よりも低い待機回転速度まで下げる回転速度抑制手段と、を備えたことを特徴とする電動オイルポンプの制御装置が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、動力源によって駆動されるメカオイルポンプと電源によって駆動される電動オイルポンプとを備え、前記メカオイルポンプ又は前記電動オイルポンプで発生した油圧を駆動系に配置された油圧要素に供給する車両に用いられる電動オイルポンプの制御方法であって、前記油圧要素で必要とされる油圧が得られる電動オイルポンプの駆動トルクを目標駆動トルクに設定し、電動オイルポンプの実駆動トルクが前記目標駆動トルクになるように、かつ、実回転速度が前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度の下限値である下限リミット回転速度以上になるように、前記電動オイルポンプを制御し、前記メカオイルポンプの吐出圧及び前記電動オイルポンプの吐出圧のいずれか高い方を選択して前記油圧要素に供給し、前記電動オイルポンプの回転速度が下限リミット回転速度であって、前記メカオイルポンプの吐出圧が選択されている間、かつ、前記電動オイルポンプの吐出圧をドレンするリリーフ弁が開弁されている間、前記電動オイルポンプの下限リミット回転速度を、前記油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度よりも低い待機回転速度まで下げる、ことを特徴とする電動オイルポンプの制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
これらの態様によれば、メカオイルポンプと電動オイルポンプとが同時に駆動されており、かつ、油圧要素に供給する油圧としてメカオイルポンプの吐出圧が選択されている状況では、電動オイルポンプの吐出圧が電動オイルポンプの油圧回路に設けられたリリーフ弁からドレンされている可能性があるため、電動オイルポンプの回転速度は下限リミット回転速度に制限される。
【0010】
そして、このような状況では、電動オイルポンプの下限リミット回転速度が、油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度よりも低い待機回転速度まで下げられるので、電動オイルポンプの回転速度は待機回転速度に制限され、電動オイルポンプの消費電力及び騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ハイブリッド車両及びその油圧制御システムの概略構成図である。
図2】油圧制御回路に設けられる油圧選択回路の概略構成図である。
図3】電動オイルポンプの制御内容を示したフローチャートである。
図4】下限リミット回転速度の設定処理の詳細を示したフローチャートである。
図5】EP側フラッパ弁の開閉によって目標トルク−実トルク特性が変化することを示したテーブルである。
図6】下限リミット回転速度を設定するためのテーブルである。
図7】メカオイルポンプ停止時の電動オイルポンプの動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態が適用されるハイブリッド車両10及びその油圧制御システム20の概略構成図である。
【0014】
ハイブリッド車両10は、動力源としてエンジン11とモータジェネレータ12とを備える。また、これら動力源と図示しない駆動輪との間には自動変速機13が設けられる。
【0015】
エンジン11とモータジェネレータ12との間にはクラッチ14が設けられている。クラッチ14の締結状態を変更することで、動力源としてエンジン11及びモータジェネレータ12を用いるハイブリッド走行モードとモータジェネレータ12のみを用いるEV走行モードとを切り替えることができる。
【0016】
なお、自動変速機13及びクラッチ14はいずれも後述する油圧制御回路23から供給される油圧によって動力の伝達状態を切り替えるものであり、以下の説明では、自動変速機13及びクラッチ14を総称して油圧要素と表現する。
【0017】
油圧制御システム20について説明すると、油圧制御システム20はメカオイルポンプ21、電動オイルポンプ22、油圧制御回路23及びコントローラ24で構成される。
【0018】
メカオイルポンプ21は、自動変速機13の入力軸に設けられ、エンジン11又はモータジェネレータ12によって駆動されて、回転速度に応じた油圧を発生させる。メカオイルポンプ21で発生した油圧は油圧制御回路23に送られる。
【0019】
電動オイルポンプ22は、図示しないバッテリからの電力供給を受けて駆動される。電動オイルポンプ22は、入力回転が下がってメカオイルポンプ21の吐出圧が下がった場合に駆動され、電動オイルポンプ22で発生した油圧は油圧制御回路23に送られる。
【0020】
油圧制御回路23は、複数の油圧制御バルブで構成される油圧回路である。油圧制御回路23は、コントローラ24からの油圧制御信号に基づき、メカオイルポンプ21又は電動オイルポンプ22から送られる油圧を元圧として油圧要素で必要とされる油圧を調整し、油圧要素に供給する。
【0021】
また、油圧制御回路23は、メカオイルポンプ21及び電動オイルポンプ22がともに油圧を発生させている状況において、いずれか高い方の油圧を元圧として自動的に選択するための油圧選択回路30を備えている。
【0022】
図2は、油圧制御回路23に設けられる油圧選択回路30の概略構成図である。
【0023】
油圧選択回路30は2入力1出力の回路で、入力側にはメカオイルポンプ21及び電動オイルポンプ22がそれぞれMP油圧供給路31及びMP側フラッパ弁32、EP油圧供給路33及びEP側フラッパ弁34を介して接続されている。出力側は、図示しない油圧制御バルブに接続されている。
【0024】
MP側フラッパ弁32は弁体321と、弁体321を閉弁方向に付勢するバネ322とで構成される。メカオイルポンプ21が油圧を発生させると、弁体321がバネ322に抗して油圧選択回路30内に押し込まれ、MP側フラッパ弁32は開弁する。同様にEP側フラッパ弁34も弁体341とバネ342とで構成され、電動オイルポンプ22が油圧を発生させると開弁する。
【0025】
EP油圧供給路33には、リリーフ弁35が設けられている。リリーフ弁35が開弁する圧であるリリーフ圧は、メカオイルポンプ21の吐出圧の低下時(停車時)に電動オイルポンプ22で発生させる必要のある油圧よりも高く、かつ、電動オイルポンプ22が最大トルクで駆動された場合に電動オイルポンプ22が発生する油圧よりも低く設定される。
【0026】
リリーフ弁35を設けるのは、メカオイルポンプ21が油圧を発生させている状況でも電動オイルポンプ22を駆動することを可能にするためである。すなわち、リリーフ弁35がないと、メカオイルポンプ21が油圧を発生させている状況ではEP側フラッパ弁34が閉じており、電動オイルポンプ22を駆動しようとしてもEP油圧供給路33の油圧が上がってデッドヘッドの状態となり、電動オイルポンプ22を駆動することができない。本実施形態では、リリーフ弁35を設け、EP側フラッパ弁34が閉じていてEP油圧供給路33の油圧が上がった場合にはリリーフ弁35を開いてEP油圧供給路33の油圧を図中矢印で示すようにドレンするようにすることで、電動オイルポンプ22の駆動を可能にしている。
【0027】
なお、リリーフ弁35のリリーフ圧をメカオイルポンプ21の吐出圧の低下時(停車時)に電動オイルポンプ22で発生させる必要のある油圧よりも高く設定するのは、これよりもリリーフ圧が低いと、EP側フラッパ弁34を開いて電動オイルポンプ22の油圧を供給する場合にもリリーフ弁35が開いてしまい、必要とされる油圧を供給することができなくなってしまうからである。
【0028】
図3は、電動オイルポンプ22の制御内容を示している。これを参照しながらコントローラ24が行う電動オイルポンプ22の制御内容について説明する。
【0029】
まず、S11では、コントローラ24は、メカオイルポンプ21の実回転速度がEP作動しきい値よりも低いか判断する。EP作動しきい値は、車両が走行状態から停車状態に移行する場合に電動オイルポンプ22の駆動を開始するしきい値であるとともに、車両が停車状態から走行状態に移行する場合に電動オイルポンプ22の駆動を停止するしきい値でもある。メカオイルポンプ21の実回転速度がEP作動しきい値よりも低い場合は処理がS12に進む。
【0030】
S12では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の目標駆動トルクを設定する。目標駆動トルクは、エンジン11及びモータジェネレータ12から油圧要素への入力トルク、油圧要素へ供給される油の温度等に基づき、油圧要素で必要とされる油圧を求め、当該油圧を電動オイルポンプ22から供給するのに必要な駆動トルクに設定される。
【0031】
S13では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の下限リミット回転速度を設定する。下限リミット回転速度は、ポンプの製造ばらつきや油温の変動があっても、油圧要素で必要とされる油圧が確実に供給することのできる電動オイルポンプ22の回転速度の下限値である。下限リミット回転速度は図4に示すサブルーチンによって設定されるが、これについては後で説明する。
【0032】
S14では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の実回転速度と実駆動トルクとを推定する。実回転速度は電動オイルポンプ22の電流値の変化から求めることができ、実駆動トルクは電動オイルポンプ22のモータの駆動トルク−回転速度特性に基づき求めることができる。
【0033】
S15では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度よりも高い場合は、電動オイルポンプ22の実駆動トルクが目標駆動トルクになるように電動オイルポンプ22の駆動電流を制御(トルク制御)する。これに対し、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度よりも低い場合は、実回転速度が下限リミット回転速度になるように電動オイルポンプ22の駆動電流を制御(回転速度制御)する。
【0034】
電動オイルポンプ22の駆動トルクを目標駆動トルクに制御しても、ポンプの製造ばらつきや油温の変動によって電動オイルポンプ22の吐出圧が下がり、必要とされる油圧を供給できない可能性があるが、電動オイルポンプ22の回転速度が下限リミット回転速度よりも下がらないように前記トルク制御に加え回転速度制御を合わせて行うことで、油圧要素で必要とされる油圧を確実に供給することができる。
【0035】
上記制御によれば、メカオイルポンプ21の回転速度がEP作動しきい値よりも低い状況では電動オイルポンプ22が駆動され、油圧要素で必要とされる油圧が確保できるように、電動オイルポンプ22のトルク及び回転速度が制御される。
【0036】
ところで、メカオイルポンプ21の回転速度がEP作動しきい値よりも低い状況であっても、メカオイルポンプ21の回転速度が十分に下がっていない状況では、メカオイルポンプ21の発生する油圧が電動オイルポンプ22の発生する油圧よりも高く、EP側フラッパ弁34が閉じられるため、電動オイルポンプ22の駆動を開始しても電動オイルポンプ22の負荷が高く、電動オイルポンプ22の実回転速度がリミット回転速度下限値まで上がりにくいことがある。
【0037】
このため、かかる状況では、上記下限リミット回転速度による回転速度制御が行われ、電動オイルポンプ22の駆動電流を増大させて、電動オイルポンプ22の回転速度が下限リミット回転速度まで高められる。また、この駆動電流の増大を受けて電動オイルポンプ22の実駆動トルクが最大駆動トルクまで高められる。
【0038】
そして、リリーフ弁35のリリーフ圧は電動オイルポンプ22が最大駆動トルクで駆動されたときの油圧よりも低く設定されているので、電動オイルポンプ22の実駆動トルクが最大駆動トルクまで高められるとリリーフ弁35が開弁し、電動オイルポンプ22の吐出圧はリリーフ弁35よりドレンされる。
【0039】
メカオイルポンプ21の回転速度が十分に下がってメカオイルポンプ21の発生する油圧が電動オイルポンプ22の発生する油圧よりも低くなれば、EP側フラッパ弁34が開かれ、リリーフ弁35が閉弁し、電動オイルポンプ22の発生する油圧が油圧制御回路23に供給されるようになる。
【0040】
ここで、EP側フラッパ弁34が閉じられている間に電動オイルポンプ22が発生する油圧は、リリーフ弁35が開弁されている間は、リリーフ弁35からドレンされるだけであり、この間、電動オイルポンプ22は無駄に駆動されているといえる。
【0041】
そこで、本実施形態では、EP側フラッパ弁34が閉じられている間の電動オイルポンプ22の下限リミット回転速度をさらに低い待機回転速度(例えば、500rpm)まで下げ、電動オイルポンプ22の回転速度を抑制することで、電動オイルポンプ22の消費電力・騒音を低減する。
【0042】
図4は、図3のS13における下限リミット回転速度の設定処理の詳細を示している。
【0043】
まず、S21では、コントローラ24は、EP側フラッパ弁34が閉じているか判断する。EP側フラッパ弁34が閉じている状況では、上記の通り、電動オイルポンプ22の負荷が高くなるため、電動オイルポンプのトルク制御と回転速度制御とによって、電動オイルポンプ22の回転速度が下限リミット回転速度となることで、電動オイルポンプ22の実駆動トルクが最大駆動トルクまで高められ、図5に示すように、電動オイルポンプ22の実駆動トルクが目標駆動トルクよりも大きくなるので、EP側フラッパ弁34が閉じていると判断することができる。EP側フラッパ弁34が開いている場合は処理がS22に進み、閉じている場合は処理がS24に進む。
【0044】
S22では、コントローラ24は、カウンタをリセットする。このカウンタは、後述するように電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度に制限されている時間を計測するためのものである。
【0045】
S23では、コントローラ24は、下限リミット回転速度を図6に示す油圧要素で必要とされる油圧及び油温と下限リミット回転速度との関係を規定したテーブルを参照して得られるマップ値に設定する。
【0046】
S24では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度になっているか判断する。下限リミット回転速度になっていない場合は処理がS22に進み、なっている場合は処理がS25に進む。
【0047】
S25では、コントローラ24は、カウンタをインクリメントし、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度に制限されてからの経過時間を計測する。
【0048】
S26では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度に制限されてから所定時間経過したか判断する。所定時間経過したと判断された場合は処理がS27に進む。所定時間は、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度に制限されていると判断するのに十分な時間である。
【0049】
S27では、コントローラ24は、電動オイルポンプ22の下限リミット回転速度をS23を参照して得られるマップ値よりも低い待機回転速度(例えば、500rpm)設定する。
【0050】
以上の処理によれば、EP側フラッパ弁34が閉じており、かつ、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度である状態を検知した場合は、処理がS26からS27へと進み、下限リミット回転速度が待機回転速度まで下げられ、電動オイルポンプ22の実回転速度が待機回転速度に制限される。
【0051】
また、電動オイルポンプ22の実回転速度が待機回転速度に制限されている間にEP側フラッパ弁34が開くと、電動オイルポンプ22の負荷が下がって電動オイルポンプ22の実回転速度が待機回転速度よりも上昇するので、処理がS24からS22、S23へと進み、下限リミット回転速度がマップ値に戻される。
【0052】
続いて上記実施形態の作用効果について説明する。
【0053】
図7は車速が徐々に低下し、車両が停車状態且つエンジン停止状態となってメカオイルポンプ21が停止し、その後、再び発進するときに電動オイルポンプ22が動作する様子を示している。
【0054】
車速が徐々に低下していくと、メカオイルポンプ21の実回転速度がEP作動しきい値よりも低くなるので、電動オイルポンプ22の駆動が開始される(時刻t1)。
【0055】
この状態では、EP側フラッパ弁34が閉じており、電動オイルポンプ22の負荷が大きいので、電動オイルポンプ22の実回転速度は下限リミット回転速度に制限される。また、電動オイルポンプ22の実駆動トルクは、実回転速度を下限リミット回転速度に維持すべく最大駆動トルクとなり、これによりリリーフ弁35が開かれる。
【0056】
この状態が所定時間継続すると、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度に制限されていると判断され、下限リミット回転速度が待機回転速度まで下げられる(時刻t2)。これにより、図中斜線部Aに対応する分の電動オイルポンプ22の消費電力・騒音が低減される。
【0057】
メカオイルポンプ21の実回転速度がさらに下がり、メカオイルポンプ21の発生する油圧が電動オイルポンプ22の発生する油圧よりも低くなると、EP側フラッパ弁34が開かれ、油圧要素によって必要とされる油圧が電動オイルポンプ22から供給される(時刻t3)。このとき下限リミット回転速度は油圧要素で必要とされる油圧を供給することのできるマップ値まで戻され、電動オイルポンプ22の回転速度がマップ値まで上昇するので、ポンプの製造ばらつきや油温の変動があっても油圧要素で必要とされる油圧を確実に供給することができる。
【0058】
停車中は、油圧要素で必要とされる油圧はもっぱら電動オイルポンプ22によって供給される(時刻t4〜t5)。
【0059】
その後、車両が発進し、メカオイルポンプ21の実回転速度が上昇し、メカオイルポンプ21の発生する油圧が電動オイルポンプ22の発生する油圧よりも高くなると、MP側フラッパ弁32が開かれ、EP側フラッパ弁34が閉じられる。これにより、油圧要素にはメカオイルポンプ21から油圧が供給される。また、電動オイルポンプ22の実回転速度が下限リミット回転速度に再び制限され、電動オイルポンプ22の実駆動トルクが最大駆動トルクとなり、リリーフ弁35が開かれる(時刻t6)。
【0060】
そして、この状態が所定時間継続すると、下限リミット回転速度が再び待機回転速度まで下げられる(時刻t7)。これにより、図中斜線部Bに対応する分の電動オイルポンプ22の消費電力・騒音が低減される。
【0061】
そして、メカオイルポンプ21の実回転速度がさらに上昇し、EP側フラッパ弁34が閉弁し、メカオイルポンプ21からの吐出圧が、トルク伝達に必要な油圧が十分確保されると判断されるEP作動しきい値を超えると、電動オイルポンプ22が停止される(時刻t8)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、メカオイルポンプ21と電動オイルポンプ22が同時に駆動され、油圧選択回路30によってメカオイルポンプ21が選択されている状況では、電動オイルポンプ22の回転速度制御によって、電動オイルポンプ22が最大駆動トルクで作動されるため、電動オイルポンプ22の負荷が高く、電動オイルポンプ22の回転速度が下限リミット回転速度に制限される。
【0063】
そして、このとき、下限リミット回転速度が油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度よりも低い待機回転速度まで下げられるので、電動オイルポンプ22の回転速度が待機回転速度に制限され、電動オイルポンプ22の消費電力・騒音を低減することができる(請求項1、5に対応する効果)。
【0064】
また、油圧選択回路30によって選択される吐出圧がメカオイルポンプ21の吐出圧から電動オイルポンプ22の吐出圧に切り替えられると、下限リミット回転速度が油圧要素で必要とされる油圧を供給するのに必要な回転速度に戻されるので、油圧要素で必要とされる油圧を確実に供給することができる(請求項2に対応する効果)。
【0065】
また、油圧選択回路30によっていずれのポンプの吐出圧が選択されているかは、電動オイルポンプ22の実駆動トルクと目標駆動トルクとの大小関係に基づき判断することができる。あるいは、選択されるポンプの吐出圧が変更されると、電動オイルポンプ22の負荷が変化し、実回転速度が変化するので、電動オイルポンプ22の実回転速度に判断するようにしてもよい。いずれの方法によっても油圧選択回路30の状態を検出するためのセンサが不要になるという効果がある(請求項3、4に対応する効果)。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0067】
13 自動変速機(油圧要素)
14 クラッチ(油圧要素)
21 メカオイルポンプ
22 電動オイルポンプ
24 コントローラ(制御装置、電動オイルポンプ駆動手段、回転速度抑制手段)
30 油圧選択回路(油圧選択手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7