(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ファラデーシールドと前記構成部材の間に、熱膨張係数が前記ファラデーシールドより高く前記構成部材よりも小さい中間層を有することを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
前記第2の誘電部材の表面上には前記導電部材に供給される電力により自己バイアスが発生しており、前記自己バイアスは、下記式(1)により求められるファラデーシールドに誘起される電圧Veの1/2に設定されることを特徴とする請求項10または11に記載の金属膜のエッチング方法。
Ve=Va×(d2×ε1/(d1×ε2+d2×ε1)) (式1)
(上記式中、Vaは前記導電部材に印加される電圧、d1及びε1は導電部材とファラデーシールド間の距離及び比誘電率、d2及びε2はファラデーシールドとプラズマ間の距離及び比誘電率である。)
前記エッチング方法は、前記プラズマ中のイオンを引き出して形成されるイオンビームを用いてエッチングを行うイオンビームエッチング方法であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の金属膜のエッチング方法。
前記エッチング方法は、前記プラズマ中のイオンを、前記基板に印加した電圧によって引き込みエッチングを行う反応性イオンエッチング方法であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の金属膜のエッチング方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、本発明は本実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下で説明する図面において、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0014】
本発明に係る放電容器を用いたプラズマ処理装置の一例としての、イオンビームエッチング装置の概略図を
図1に示す。
【0015】
本発明に係るイオンビームエッチング装置は処理空間101とプラズマ形成空間102を有する真空容器100を有する。
【0016】
プラズマ形成空間102にプラズマを形成するためのプラズマ形成手段として、プラズマ形成空間を構成するベルジャ(放電容器)104、ガス導入部105、ベルジャ104内に誘導磁界を発生させる導電部材から構成されるアンテナ106、アンテナ106に高周波電力(ソース電力)を供給する放電用電源112、放電用電源112とアンテナ106の間に設けられた整合器107、電磁コイル108が設置されている。ベルジャ104は真空容器100の一部を構成している。また、処理空間101との境界にはグリッド109が設置されている。放電用電源112から供給された高周波電力がアンテナ106に供給され、ベルジャ104内部のプラズマ形成空間102にプラズマが形成されるようになっている。ベルジャ104はその内部壁部にファラデーシールド118を備える。
【0017】
処理空間101には排気ポンプ103が設置されている。また、処理空間101内には基板ホルダ110があり、基板111は基板ホルダ110により固定される。
【0018】
プラズマ形成空間102にプラズマが形成された後、グリッド109に電圧を印加して、プラズマ形成空間102内のイオンをビームとして引き出す。引き出されたイオンビームは、ニュートラライザー113により電気的に中和されて、基板111に照射される。
【0019】
図2に本発明の特徴部分であるベルジャ104及びその周辺を拡大した様子を示す。尚、
図1において示した装置の一部構成物品は省略して図示している。
【0020】
本発明に係るファラデーシールド118は
図2に示すように、ベルジャ104の内部壁に固定されている。ファラデーシールド118の固定には種々の方法が採用し得る。例えば、導体からなるファラデーシールドを真空蒸着或いは無電解めっきや、アルミなどの金属を溶射することでベルジャ104の内部壁に固定したファラデーシールド118である金属膜を形成する方法が採用し得る。特に金属の溶射によってファラデーシールド118を形成することがベルジャ104の生産性の観点から好ましい。
【0021】
ベルジャ104の材質としては絶縁体の材質が用いられ、加工性に優れる石英が好適に用いられる。導電部であるアンテナ106には高周波の印加が可能であり、ベルジャ104の内部に放電を形成し得る材質が用いられ、例えば銅やアルミが用いられる。ファラデーシールド118には導体が用いられ、例えばアルミや銅、チタン、モリブデン、タンタル、導電性カーボンなどが用いられる。誘導電流による損失を小さくするためには、非磁性材料を用いるのが望ましい。
【0022】
ファラデーシールド118は、ベルジャ104の外周に位置するアンテナ106に対して垂直方向であり且つベルジャ104の内壁に沿う方向に伸びる複数の電極を有する。該円周方向に並列した複数の電極を同一電位とするために、各々の電極の一端もしくは両端は、円周方向に伸びる電極に電気的に接続される。該接続する位置は、誘導電流による電力損失が実用的に問題とならないようにアンテナ106から離れた位置とすることが望ましい。ファラデーシールド118は全体がアースに対してフローティング電位となるように構成される。
【0023】
また、円周方向に並列した複数の電極の開口率が大きすぎると、ベルジャ104の内壁のクリーニング効果が薄れ、小さすぎるとアンテナ106からの電力利用効率が低下するため、開口率は50%程度とするのが望ましい。
【0024】
ファラデーシールド118の厚さは薄いことが望ましいが、少なくとも、使用する周波数に対する表皮深さよりも厚くする必要がある。例えば、ファラデーシールド118の材料がアルミニウムであり、アンテナ106に印加される電力が13.56MHzの高周波である場合、ファラデーシールド118の厚みは20μm程度以上あれば良い。
【0025】
アンテナ106はベルジャ104の外周部において、ファラデーシールド118と対向するようにベルジャ104の外部壁に固定される。アンテナ106の固定にも種々の方法が採用し得る。例えば、溶射或いは無電解めっきによってベルジャ104の外部壁上にアンテナ106を形成する方法や、金属板をベルジャ104の外部壁に接着することでベルジャ104の外部壁に固定することでアンテナ106を形成する方法などが採用され得る。また導線をアンテナに巻きつけ接着してもよい。特に金属薄板の接着が電力の低損失及び電力供給の容易さの観点から好ましい。
【0026】
尚、本発明において、ファラデーシールドとは、アンテナとプラズマとの間に設置され、アースに対してフローティング電位であり、アンテナから放射される高周波磁場を通過させてプラズマに直接結合させると同時に、アンテナから放射される周方向に不均一な高周波電場を均一化してプラズマに結合させる作用を有する金属製の格子状電極のことを言う。
【0027】
ファラデーシールドを用いることで、プラズマとの間に高周波電場を生成し、スパッタリング作用による放電容器内部壁状態の制御を可能とする。特に、放電容器内部壁に堆積物が付着する場合は、堆積物の付着速度を上回るスパッタリング作用を設定することにより、放電容器内部壁への堆積を抑制することができる。
【0028】
本発明ではベルジャ104にアンテナ106及びファラデーシールド118を固定するため、ベルジャ104の加工精度内においてアンテナ106とファラデーシールド118の距離を一定に保つことが可能となる。
【0029】
また、本発明において、アンテナ106及びファラデーシールド118の固定とは、上述したような何れかの方法を用いることで、アンテナ106とファラデーシールド118をベルジャ104と一体とすることをいう。
【0030】
ファラデーシールド118は、遮蔽部材122aにより被覆されており、ファラデーシールド118が、プラズマ形成空間102に導入されたエッチングガスに晒されない構造となっている。遮蔽部材122aは種々の構造を採用し得る。例えば板状の石英から構成され、ファラデーシールド118が設けられた空間を封止するようにベルジャ104の内壁に取り付けられても良い。また蒸着によりファラデーシールド118を覆う誘電体膜を形成してもよい。しかし、ベルジャ104との密着性を考慮した場合、遮蔽部材122aは溶射により形成されることが望ましい。遮蔽部材122aを溶射により形成する場合は、アルミナ(Al
2O
3)やイットリア(Y
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)が好適に用いられる。イットリアは化学的に安定であるため特に望ましい。
【0031】
本発明ではさらに、ベルジャ104とファラデーシールド118と遮蔽部材122aを挟んでアンテナ106と対向する位置に遮蔽部材122bが設けられている。遮蔽部材122bは真空容器100の一部を構成するチャンバ壁100aに形成された突出部126上に載置されており、容易に交換可能である。遮蔽部材122bの材質としては石英が好適に用いられる。
【0032】
遮蔽部材122bはアンテナ106と対向した位置に在り、且つ遮蔽部材122aよりもプラズマ形成空間102側に在るため、アンテナ106近傍に発生した自己バイアスによるイオン入射のために表面が削られる。しかし、遮蔽部材122bは突出部126上に載置されているため、メンテナンスの際は他の遮蔽部材122bと交換すれば足りる。ファラデーシールド118を被覆する遮蔽部材122aはアンテナ106と遮蔽部材122bとの間に位置するために自己バイアスで加速されたイオンが直接入射することは無い。このため遮蔽部材122aの交換周期は遮蔽部材122bに比べて遥かに長くすることが可能である。
【0033】
遮蔽部材122bの設置方法については、チャンバ壁100aに突出部126を設けてその上に載置する以外にも種々の形態を採用し得る。例えば、突出部126をベルジャ104に形成しても良いし、遮蔽部材122bをチャンバ壁100aの一部に螺子止めしても良い。しかし、遮蔽部材122bの損傷防止、交換容易性の観点からチャンバ壁100aに形成された突出部126に載置する構成が望ましい。
【0034】
本発明に係るアンテナ106、ベルジャ104、ファラデーシールド118及び遮蔽部材122a、122bを有する放電装置の構造は、金属膜をエッチングする基板処理装置に設けられた際に特に効果を奏する。
【0035】
金属膜が形成された基板に対してIBEやRIEといったエッチング処理を行う場合、
エッチングされた金属が飛散し、そのうちの一部はベルジャ104の内壁や遮蔽部材122bの基板を臨む領域に付着する。アンテナ106と対向する領域に金属膜が付着すると、アンテナ106からプラズマ形成空間102に投入された電力が、金属膜中に電流が流れることによって消費され、プラズマ形成空間102におけるプラズマの生成・維持が困難となる。
【0036】
このような被エッチング材による金属膜は、アンテナ106近傍に発生する自己バイアスによるイオン入射によって除去することが可能である。しかし、実際には被エッチング材による付着速度と、イオン入射によるエッチング速度を等しくすることは困難であり、付着速度よりもエッチング速度を大きくしておく必要がある。
【0037】
従って、基板処理装置において金属膜のエッチングが行われる場合、アンテナ106と対向し、プラズマ形成空間102の最も内部側に設けられる部材は常にイオン入射によりエッチングされることとなる。本発明ではイオン入射によりエッチングされる遮蔽部材122bは突出部126上に載置されているのみであり、容易に交換可能であるため、特に金属膜のエッチングにおいて効果を奏する。
【0038】
また、フローティング電位であるファラデーシールドを用いることで、アンテナ106の対向領域の各点(本発明では基板周方向)におけるプラズマの均一性を向上させることができる。このため、遮蔽部材122bに付着した金属膜を、アンテナ106の対向領域の各点で均一性良好にエッチングすることができ、長時間の安定したプラズマの生成・維持を可能とする。
【0039】
ベルジャ104の厚みが薄い場合、遮蔽部材122bのプラズマ形成空間102側の面であってファラデーシールド118に対向する位置に生じる自己バイアス電位が、ファラデーシールドの形状を反映してしまうことがある。この結果、堆積物が除去できない領域が縞状に発生し得る。この現象を避けるため、ベルジャ104の厚みは1mm以上であることが望ましい。
【0040】
また、ファラデーシールド118を用いて遮蔽部材122bに付着する金属膜のクリーニング効果を得るには、遮蔽部材122b表面に発生する自己バイアス電圧を適正な範囲に規定する必要がある。自己バイアス電位が小さすぎればクリーニングが不十分となり、大きすぎれば非処理基板等への誘電体薄膜付着や誘電体シールドの短寿命化といった不具合が発生する。
【0041】
適正な自己バイアス電位は、遮蔽部材122bの材質、付着する堆積物の成分等によって異なるが、標準的な装置の使用においては数100V〜数kVの範囲に設定される。この値は、スパッタ現象が発生する閾値より大きく、かつ一般的なスパッタ成膜装置のターゲット表面に発生する電位よりは小さい。
【0042】
本発明で想定されている高周波電力の周波数は13.56MHzであり、この周波数帯では遮蔽部材122bの表面に発生する自己バイアス電位は、実際の装置運用においてはファラデーシールド118に誘起される高周波電圧のおよそ1/2程度となる。
【0043】
電極に誘起される高周波電圧は、アンテナ106に印加される電圧を、アンテナ106とファラデーシールド118間の静電容量と、ファラデーシールド118とプラズマ間の静電容量とによって分配された値となる。すなわち、アンテナ106とファラデーシールド118間の距離をd1、比誘電率をε1、ファラデーシールド118とプラズマ間の距離をd2、比誘電率をε2とすれば、ファラデーシールドに誘起される電圧Veとアンテナ10
6に印加される電圧Vaとの関係は、
Ve=Va×(d2×ε1/(d1×ε2+d2×ε1)) (式1)
となる。従って、仮にベルジャ104と遮蔽部材122a、122bの比誘電率が同一であり、且つファラデーシールド118からプラズマ間に遮蔽部材122aと122bが間隙無く配置されており、アンテナ106に印加される電圧が5kVである場合に、自己バイアス電位を1kVとしたい場合、電極電位は2kVであるため、
d1=1.5×d2
となる。すなわち、放電容器厚みが6mmの場合には誘電体シールド厚みを4mmとすれば良い。他の例では、放電容器厚みが6mmであり、自己バイアス電位を0.5kVとしたい場合、遮蔽部材122aと122bを併せた厚みを1.5mmとすると良い。
【0044】
遮蔽部材122a及び122bの間に間隙が在る場合や遮蔽部材122a及び122bの材質が異なる場合は、ファラデーシールド118と遮蔽部材122bのプラズマに接する面までの各部材の比誘電率に各部材の厚みを乗じたものの和を、ファラデーシールド118から遮蔽部材122bのプラズマに接する面までの距離で除した平均の比誘電率を求めることで式1のε2を求めることが可能である。遮蔽部材122aと122bの間隙については比誘電率を1とし、遮蔽部材122aのプラズマ形成空間102側の表面から遮蔽部材122bのファラデーシールド側の表面までの距離を乗ずればよい。
【0045】
このように遮蔽部材122a、122b、ベルジャ104の各々の厚みや比誘電率を、遮蔽部材122b上のエッチングしたい物質の種類にあわせて設定することで、遮蔽部材122b上に生じる自己バイアスを制御することができ、遮蔽部材122bへのエッチング特性を変化させることが可能である。
【0046】
本発明においては、ベルジャ104の外周をアンテナが1回巻かれているシングルループアンテナ(以下、「SLA」という)が好適に用いられる。この理由について以下で説明する。
【0047】
ループアンテナのインダクタンスLは次式から求められる。
L=k×μ
0×π×a
2×n
2/b (式2)
(但し、k:長岡係数、μ
0:真空の透磁率、a:コイルの半径、b:コイルの長さ、n:コイルの巻き数)
【0048】
実施例に示されるプラズマ装置のアンテナ106が例えば幅3mmの金属線を巻いたコイルである場合のインダクタンスを求める。ベルジャ104の外周にアンテナ106を複数巻いた場合はその間隔を1mmとする。その他の数値として、k:長岡係数、μ
0=1、a=0.3m、n=1〜3、b=0.003+n×0.001mを代入すれば、n=1ではL=2.3μH、n=2ではL=8μH、n=3ではL=16.6μHとなる。
実施例にあるように、高周波の周波数が13.56MHzであれば、アンテナ106のインピーダンスはそれぞれ、約200Ω、約680Ω、約1400Ωと、巻き数が多いほどインピーダンスが高くなる。
【0049】
アンテナ106に供給される高周波電力が同じであれば、このインピーダンスに比例して高周波電圧の最大値は大きく、高周波電流の最大値は小さくなる。誘導結合によりプラズマを生成するには高周波電流をなるべく大きくし、更には、高電圧による絶縁破壊を防止する必要があるため、アンテナ106のインピーダンスはできるだけ小さくすることが望ましい。すなわち、ファラデーシールド118に対向する(ファラデーシールド118から見た)アンテナ106の面積及びアンテナ106の電圧を小さくする必要があり、このためにはアンテナのターン数を少なくすることが望ましい。
【0050】
また、すでに述べたように、ファラデーシールド118に遮蔽部材122bの内壁をクリーニングするための効果を付与するには、ファラデーシールド118に適正な自己バイアス電位を発生させる必要がある。しかしアンテナインピーダンスが高く、アンテナに高い高周波電圧が発生する構造であると、自己バイアス電位制御のために遮蔽部材122a及び遮蔽部材122bを薄くする必要が生じる。従って、遮蔽部材122b上に堆積した物質を積極的にエッチングするためには、遮蔽部材122a及び遮蔽部材122bの強度や交換周期の観点から、アンテナ106はSLAであることが好ましい。
【0051】
SLAを形成する際のアンテナの巻き方については、プラズマの基板周方向の均一性を高めるためにベルジャ104の外周を1回転させることが好ましい。ただし、アンテナ106がベルジャ104の外周に巻かれ始める給電端部、及びベルジャ104の外周から離れる終端部においては、端部付近でのプラズマ密度分布を調整するために、巻き数を1回より僅かに増やし、端部同士を重ねるように巻いてもよい。
【0052】
図3に本発明に好適なファラデーシールド118の一例を示す。ファラデーシールド118は、導体118aが間隙118bを有しつつ並列しており、各導体118aは連結部118cにより保持される。連結部118cも導体により構成される。
【0053】
図4にはファラデーシールド118の他の例を示す。
図4に示すファラデーシールド118も同様に、導体118a、間隙118b及び連結部118cから構成される。
【0054】
以下に
図5乃至9を用いて、本発明に係る他の実施形態を示す。尚、以下の実施形態において基本的な装置構成は
図1に示す実施形態と同様であり、遮蔽部材122bや突出部126等を省略して図示している。
【0055】
図5に、本発明に係る基板処理装置の他の実施形態を示す。
【0056】
本実施形態では、ベルジャ104の外部壁において、アンテナ106の固定部分に凹部120が形成されている。このような構成によれば、ベルジャ104を所定の厚みに形成しつつ、アンテナ106とファラデーシールド118も所望の距離とすることが可能となる。
【0057】
図6に、本発明に係る放電容器の他の実施形態を示す。
【0058】
本実施形態では、ベルジャ104の外部壁において、アンテナ106の固定部分に凸部121が形成されている。このような構成によれば、ベルジャ104を所定の厚みに形成しつつ、アンテナ106とファラデーシールド118も所望の距離とすることが可能となる。
【0059】
図7に、本発明に係る放電容器の他の実施形態を示す。
【0060】
本実施形態では、ベルジャ104の内部壁において、ファラデーシールド118の固定部分に凹部127が形成されている。このような構成によれば、ベルジャ104を所定の厚みに形成しつつ、アンテナ106とファラデーシールド118も所望の距離とすることが可能となる。
【0061】
図8に、本発明に係る放電容器の他の実施形態を示す。
【0062】
本実施形態では、ベルジャ104の内部壁において、ファラデーシールド118の固定部分に凸部128が形成されている。このような構成によれば、ベルジャ104を所定の厚みに形成しつつ、アンテナ106とファラデーシールド118も所望の距離とすることが可能となる。
【0063】
図9に、本発明に係る放電容器の他の実施形態を示す。本実施形態では、ファラデーシールド118は中間層129上に形成されている。プラズマ形成空間102にプラズマを形成した状態においてベルジャ104は加熱され、ベルジャ104上に形成されたファラデーシールドも加熱される。ファラデーシールド118を蒸着や溶射によってベルジャ104上に形成した場合、ファラデーシールド118を構成する金属膜と、ベルジャ104を構成する誘電体とでは熱膨張係数が大きく異なるため、熱膨張量の違いによりファラデーシールド118の密着性が低下し、膜剥がれ等の問題が生じ得る。
【0064】
このため、本実施形態では、ベルジャ104とファラデーシールド118との間に、熱膨張係数がベルジャ104を構成する材料よりも大きく、ファラデーシールド118を構成する材料よりも小さい材料からなる中間層129を設けている。中間層129を設けることで、ファラデーシールド118と、ファラデーシールド118が接している部材との熱膨張量の差を低減し、密着性の低下を抑制している。
【0065】
さらに、中間層129はファラデーシールド118を溶射により形成する場合に特に効果を奏する。溶射は形成したい膜の粒子を高エネルギーで基材に吹きつけることで膜を形成していく。このため形成されたばかりの溶射膜は温度が高く、熱膨張量が大きい。時間が経過するにつれて溶射膜の温度が低下し、併せて膜の熱膨張量も小さくなっていく。このとき膜の収縮量が大きいと、溶射膜の剥がれや、基材のクラックといった問題が生じる。
【0066】
本実施形態のように熱膨張係数がベルジャ104より大きく、ファラデーシールド118より小さい材料からなる中間層129を形成することで、ファラデーシールド118の膜剥がれに加えてベルジャ104の損傷を抑制することができる。
【0067】
尚、上述した実施形態では、放電容器が真空室の外部に連結されるものを示した。しかし本発明に係る放電容器はこれに限らず、例えば放電容器が真空室の内部に取り付けられても良い。また、
図10に示すように、真空室内部に絶縁性部材125を設け、該絶縁性部材125でプラズマ形成空間102と他の空間(
図10においては処理空間101)を区画することで放電容器を形成しても良い。その場合は、例えば、石英からなる絶縁性部材125、真空室の内壁及びグリッド109によって放電容器が形成される。そして絶縁性部材125のプラズマ形成空間102側の壁にファラデーシールド118が固定され、他の空間側の壁にアンテナ106が固定される。
【0068】
上述した実施形態では基板処理装置がIBE装置である場合について説明した。本発明に係る基板処理装置はIBE装置以外にも、RIE装置やPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)装置などであってもよい。
【0069】
本発明をRIE装置に用いた実施形態について
図11を用いて以下に説明する。
【0070】
本実施形態におけるRIE装置は真空容器200を備える。真空
容器200は内部に、プラズマが形成され基板処理が行われる処理空間201を有する。真空容器200はチャンバ壁200a、200b及び誘電窓204から構成される。基板ホルダ210は基板211を保持可能であり、基板211に所定の電圧を印加するための電源231及び整合器230を備える。また処理空間201内にエッチングガスを導入するためのガス導入部205、真空容器200内を排気するための排気手段203を備える。誘電窓204には処理空間201にパワーを投入するためのアンテナ206が固定されており、アンテナ206は整合器207及び電源212に接続される。
【0071】
誘電窓204の処理空間201側にはアースに対してフローティング電位であるファラデーシールド218が形成されており、ファラデーシールド218を封止するように遮蔽部材222aが形成されている。チャンバ壁200aには突出部226が設けられており、遮蔽部材222bが載置可能となっている。
【0072】
アンテナ206近傍では自己バイアスが発生し、処理空間201に形成されたプラズマ中のイオンがアンテナ206に向かって加速されるが、誘電窓204とファラデーシールド218と遮蔽部材222aとを挟んでアンテナ206に対向する位置に遮蔽部材222bがあるため、イオンは遮蔽部材222bに入射する。遮蔽部材222bは突出部226に載置されているので容易に交換可能である。
【実施例1】
【0073】
本発明に係る基板処理装置を用いてエッチングを行う一例について以下で説明する。本実施例では
図1に示すIBE装置を用いて基板処理を行う。
【0074】
図12は、本発明に係るIBE装置によって加工可能な素子の一例として垂直磁化型TMR素子(以下、P−TMR素子ともいう)700の積層構造の模式図を示している。P−TMR素子は、基板701の上に下層から順に、バッファー層としてRuCoFe層702とTa層703、フリー層としてCoFeB層704、バリア層としてのMgO層705、第1のリファレンス層としてCoFe層706、第2のリファレンス層としてCoFeB層707、配向分離層としてTa層708、第3のリファレンス層709、非磁性中間層としてRu層710、第4のリファレンス層711、キャップ層としてTa層712が形成されている。バリア層は高いMR比を得るためにMgOが好適である。その他、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ゲルマニウム(Ge)の少なくとも1つまたは2つ以上を含有する酸化物でも良い。第3のリファレンス層はCoとPdの積層構造からなり、本実施例ではCo/Pdが交互に各々4層積層された後、Coが成膜されている。第4のリファレンス層711はCo/Pdの積層構造からなり、CoとPdが交互に各々14層積層されている。
【0075】
上述したように、P−TMR素子は多数の金属膜から構成されるため、積層膜に対してエッチングを行った際に金属粒子が飛散し、その一部は遮蔽部材122b上に堆積する。しかし遮蔽部材122b表面上に該金属粒子の堆積速度を上回る速度でエッチングが進行するように自己バイアスを設定することで遮蔽部材122b上に金属膜が積層することを抑制できる。また消耗した遮蔽部材122bを容易に交換することができるため生産性の向上が望める。
【0076】
本実施例では
図1に示すIBE装置を用いてP−TMR素子の加工を行ったが、
図11に示すRIE装置を用いて加工を行ってもよい。RIEにおいても一部の被エッチング材は物理的にエッチングされ、飛散した金属粒子が遮蔽部材122b上に堆積し得るためである。
【0077】
上述したP−TMR素子の加工以外にも他の金属膜の加工において本発明に係る基板処理装置は適用可能であり、本発明の効果を奏するものである。また実施例で示したP−TMR素子のパターンを形成する工程以外にも、パターン加工後の素子側壁の金属膜をIBEにより除去する際や、金属膜表面の平坦化処理を行う場合など、広く金属膜の加工に適用可能である。