(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、プレゼンテーションの場で電子黒板等に表示した原画像に、プレゼンターが図や文字などの情報を追加可能なインタラクティブ機能を有する表示装置が使用されるようになった。この電子黒板(インタラクティブホワイトボード)とプロジェクタとを併せて設置する場合、プロジェクタが予め作成したフォーマット画像をスクリーン上に投写し、その後ユーザがフォーマット画像に加筆する。
【0003】
この電子黒板において、スクリーン上に投写されたフォーマット画像と電子ペンによる加筆画像を合成するためには、電子ペンに発光部又は超音波発生部を設け、プロジェクタ本体又はスクリーンに、光又は超音波又は両者の検出部を設けて電子ペンの位置情報を検出する必要がある。
【0004】
ここで、電子ペンの位置検知方法としては、例えば、1つの赤外線受光部として超広角レンズと半導体撮像素子を組み合わせ、スクリーン上の画像を画像データとして取り込み、その後の演算処理により、予め作成したフォーマット画像とを比較することで電子ペンの位置を検出する技術がある(特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、システム構成図である。当該システムは、投写型画像表示装置(プロジェクタ)131、投写型画像表示装置131に設けられ特定波長領域の光線を受光する受光部(超広角レンズと半導体撮像素子の組み合わせ)134、被筆記面(ホワイトボードや電子黒板等のスクリーン)129、及び、電子ペン1からなる。ここでは、電子ペン1により、線130が描画されている様子を示す。
【0014】
本実施例では、特定波長領域の光線とは、赤外線であるとして説明する。電子ペン1は、ユーザの筆記時にペン先から赤外線を出射する。ユーザが電子ペン1で擬似的に筆記した軌跡を、電子ペン1から出射されている赤外線を受光することにより受光部134が認識する。受光部134は、電子ペン1から出射されている赤外線及び当該赤外線が出射されている位置を、電子ペン1の位置情報(画像データ)として取り込み、作画装置に送信する。
【0015】
作画装置は、当該画像データを受光部134から受信すると、予め作成されているフォーマット画像と比較して演算処理を行う。即ち、電子ペン1による赤外線の出射位置(筆記位置)の軌跡から、認識した軌跡に関する画像データを生成し、当該軌跡に関する画像を元画像に重畳する。そして、重畳された画像データを投写型画像表示装置131に送信する。投写型画像表示装置131は、ここで受信した画像をスクリーン129上に投写する。これにより、スクリーン129上に、電子ペンで筆記した軌跡が表示されることになる。
【0016】
作画装置は、投写型画像表示装置131に内臓されていてもよいし、当該装置131に接続されたPC(Personal Computer)であってもよい。
【0017】
次に、電子ペン1の構成について説明する。
図2は電子ペンの外観図((A)は全体の外観図、(B)はペン先からみた図)、
図3は電子ペン全体の分解斜視図、
図4は電子ペン内部の分解斜視図である。
【0018】
電子ペン1は、筆記する際に用いられる所謂ペンを模した形状であり、その外観は、ペン先端部5(ペン先保持部51、ペン先52)、ペン先端部5の保持部(キャップ)4、上部筺体31、下部筺体32、切り込み部31a、外部スイッチ33、表示用LED34、フック21、及びペン尻2からなる。
【0019】
ペン先端部5は、ペン先52をペン先保持部51に挿入することで形成され、キャップ4で保持固定される。キャップ4は、ペン先端部5が被筆記面129に平行する方向に受ける筆圧を緩衝する。上部筐体31及び下部筺体32は、電子ペン1の外装の一部を構成する部材であり、電子ペン1の中心を通る仮想軸Axに沿って2分割された略円筒形状であり、接合した際の一方の端部は開口した容器形状を成す。又、筺体内部の部品を固定収納できるように、内壁面に幾つかの固定用リブ321を設けている。
【0020】
切り込み部31aは、筆記する際の親指と人差し指によるグリップ感を改善するため、及び、机上に置いた場合に不可抗力等で発生する転がり防止のため、握り部分に設けられている。
【0021】
上述した部材を収納した下部筐体32に上部筐体31を重ね、一方の端部に設けた雄ネジとキャップ4の内面に設けた雌ネジ溝により機械的に結合する。もう一方の端部はフック21を設けたペン尻2を圧入することで機械的に結合する。
【0022】
発光素子7としては、例えば、
図10に示す指向特性(光の発散特性)を有する発光ダイオードがある。発光ダイオードを用いると、寿命が長く、コストを低く抑えられるという効果がある。
【0023】
その他の光源としては、発散角が小さくエネルギーの光変換効率に優れた赤外レーザダイオードがある。この場合、レーザ光は発散角が小さく直線性に優れているため、ペン先保持部52には光拡散効果の高い部材を使用すると良いが、受光部134に向かう赤外光が増えるように指向特性を持たせても良い。
【0024】
尚、電子ペン1は、発光素子7への供給電源として電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)や乾電池などを内臓するため、略円筒形状を成している。
図5には、EDLC100として、外部電源からの充電制御ための制御回路1011、及び2個の電源110及び111が使用されている例を示す。
【0025】
電子ペン1は、ペン先端部5の中心を通る仮想軸Axに沿って配置された複数の中空部材から成る。電子ペン1の内部では、被筆記面129からペン先端部5、発光素子7、検出部75の順に配置されている。
【0026】
図5は電子ペンの断面図である。ここでは、発光素子7、検出部75、基材76等を仮想軸Ax方向に分解して示している。発光素子7は、ペン先端部5に配設され、回路基板8の片面に設けた発光素子駆動回路(コネクタ102で発光素子7のコネクタ103と接続(
図7(A)))により発光制御される。これにより、ペン先端部5が赤外光を出射する。
【0027】
発光素子7は、第一の中空部材71に、ペン先端部5側から挿入され、円筒形の支持部材713のペン先端部5側端面で固定される。支持部材713の外周部にはバネ性を持った凸部711を備え、第二の中空部材74(741、742、743の3つの部分から成立)の円筒内面に沿ってスライドすると、当該凸部711は、同じく円筒内面に設けた穴部7421に嵌合する。この時、バネ材72の一方の端は第二の中空部材74の円筒面に設けた壁面により固定される。
【0028】
又、第一の中空部材71の他方の端面部は、電子ペン1の中心を通る仮想軸Axに略平行となるように分割され、その外周部には返り部712を設けている。
【0029】
発光素子7、第一の中空部材71及びバネ材72を、電子ペン1の中心を通る仮想軸Axに沿って延出する円筒状の第二の中空部材74に挿入し、固定部材73により第二の中空部材74の内部に固定する。固定部材73の底面には貫通穴734を設け、第一の中空部材71の端面外周部に設けた返り部712は、貫通穴734に嵌合することにより固定部73と結合固定される。
【0030】
発光素子7は、リード線701が第二の中空部材74に挿通された状態で第二の中空部材74のペン先側の端部に取り付けられている。又、リード線701は第二の中空部材74の他方の端部から引き出され、発光素子駆動基板102(
図7(A))にコネクタ102及び103によって電気的に接続される。
【0031】
第二の中空部材74の外周部は、中央部742に比べ発光素子7を固定するペン先側部743が細く、このペン先側部743にペン先52の保持部分51を挿入保持し、仮想軸Ax方向の位置は中央部742とペン先側部743の外径差で生じる段差部分の端面で決定される。
【0032】
更に、第二の中空部材74の他方の端部は外周方向に張り出した略円板状の張り出し部741が形成されている。この張り出し部741の一部には軸Axに向かって窪んだ切り欠き部7411が形成され、この切り欠き部7411と固定部材73の円筒面に設けた平坦部に信号ケーブル751を通し、回路基板8に設けた感圧センサ駆動基板101の感圧センサ端子104と接続される。 次に、ペン先52が被筆記面129に接触した際の接触状態及び筆圧を検出するための検出部75について説明する。
【0033】
図6において、検出部75は、基材76、感圧センサ固定部材752、信号ケーブル751、第一の中空部材71、第二の中空部材74、及び、張り出し部741とから構成される。基材76は、その円周上に、3つのピン761を備える。感圧センサ固定部材752は、その円周上に、3つの感圧センサ753、及び、3つの貫通穴756を備える。この3つの貫通穴は、上記3つのピンに対応し、それぞれのピンが、対応するそれぞれの貫通穴に嵌合する。これにより、感圧センサ固定部材752の位置が決まり、感圧センサ753に略一定圧力を加えることができる。
【0034】
感圧センサ753は、第一の中空部材71の外周部に配設されたバネ材72のバネ力によって第二の中空部材74の張り出し部741のペン先側面と基材76の間に略一定圧力で保持される。
【0035】
図7は電子ペンの内部構成図であり、(A)は電子ペン1がOFF状態(ペン先端部5が被筆記面129に接触していない状態)、(B)は電子ペン1がON状態(ペン先端部5が被筆記面129に接触している状態)を示す。(A)の場合、感圧センサ753に一定圧力が加わっており、(B)の場合、感圧センサ753にバネ材72による圧力が加わっていない。
【0036】
図9は、感圧センサからの出力を検出する検知回路122を含む回路図である。検知回路122は、回路基板8の発光素子駆動回路102上に実装されている。CPU(Central Processing Unit)121は、検出値と予め設定していた値とを比較処理(複数の感圧センサ端子123の電圧変化を比較)することで電子ペン1がON状態、又は、OFF状態であることを電気的に検知する。より具体的には、CPU121は、感圧センサ753にバネ材72による圧力が加わっている場合は電子ペン1がOFF状態であると判断し、感圧センサ753にバネ材72による圧力が加わっていない場合は電子ペン1がON状態であると判断する。即ち、感圧センサ753に一定圧力を常に加えておき当該圧力がなくなった時に電子ペン1のON状態を検知するようにしたため、感圧センサに圧力を加えることによって電子ペンのON状態を検知する方法に比べて、より早く電子ペンの軌跡を被筆記面上に反映できる。
【0037】
125は電子ペン1の電源を示し、発明者らの試作品では軽量化のためEDLCを使用し電源回路120により外部電源から充電と電源変動などを軽減できる構成とした。
【0038】
図11(A)は発明者らが感圧センサとして実験で使用した抵抗型感圧センサの特性を示す図であり、グラフの横軸(負荷)に対する抵抗値の変化を示している。負荷の変化に対して抵抗値の変化量が大きい500gf以下のバネ力が加わるようにバネ材のバネ力を選択すると、電子ペン1のON状態とOFF状態を明確に検知できることを見出した。同様に、周囲温度を、0度、25度、50度と変化させた場合には、抵抗型感圧センサの(負荷)に対する抵抗値変化に温度特性を持つので特性が比較的に安定している500gf以下領域のバネ力が加わるようにバネ材のバネ力を選択すると更に良い。
【0039】
図11(B)は上記抵抗型感圧センサの繰り返し加圧(ここでは、10回の加圧)により特性がどこまで復帰するかを検討した結果を示す図であり、10回加圧後では同じ負荷を加えても抵抗値が小さくなった。このため、電子ペン1を全く使用しない場合(保管する場合)には電子ペン1がOFF状態、即ち感圧センサに負荷を加えないように電子ペン1のペン先を押し続けながら保管する保管手段を備えると良い。これにより、バネ材のバネ力が低下することも軽減される。
【0040】
一方、電子ペン1がON状態、即ち、ペン先5が被筆記面129に接触している場合、感圧センサ753は検出部75の基材76と第一の中空部材71の外周部に配設されたバネ材72のバネ力によって第二の中空部材74の張り出し部741のペン先側面の間で付加されていた圧力から開放されて無負荷状態となる。この結果、抵抗型感圧センサからの出力(抵抗値)はほぼ無限大となり、これを、上記同様、検知回路122が検出し、CPU121が電子ペン1がON状態であることを検知する。
【0041】
更に、筆圧を検知して電子ペン1の筆跡情報の太さ(描画された線の太さ)を変更するには、負荷の変化に対して抵抗値の変化量が大きい500gf以下の領域を使用することで筆圧変化を大きな抵抗値変化として検出できる。これを、上記同様、検知回路122が検出し、検出値と予め設定していた複数の筆圧に対する値とをCPU121が比較処理することで電子ペン1に加えられた筆圧を電気的に検知する。
【0042】
尚、上記実施例では、感圧センサを3個使用する場合(
図8(A))について説明したが、より高精度に筆圧を検知したり、電子ペン1の筆跡に基づく今後のペンの移動方向を推定するため、感圧センサの使用数を増やしてもよい。例えば、4個の感圧センサを、それぞれ円周方向に等分割して90度毎に配置したり(
図8(B))、更に検知精度及び分解能を向上させるため、6個の感圧センサを、それぞれ円周方向に等分割して60度毎に配置してもよい(
図8(C))。
【0043】
上記実施例では、基材76及び筐体の受け面311、321は仮想軸Axに直交した平面としたが、基材76及び筐体の受け面311、321の形状をペン先と反対側に凸面又は凹面とし、張り出し部741のペン先側面も合わせて凸面又は凹面としてもよい。これにより、バネ材72のバネ力によって張り出し部741のペン先側面と基材76の間に略一定圧力で保持され、電子ペン1のペン先が斜め方向から被筆記面129に接触しても接触角に関わらず一定圧力を感圧センサに加えることができる。
【0044】
図12は、画像をスクリーンへ導くミラー133を備えたミラー折り返し型の投写型画像表示装置131(以下、本体ともいう)を示す図である。ここでは、本体131に受光部134を、固定用バンド135により外付けされている状態(本体外部に取り付け固定されている状態)を示している。
【0045】
受光部134の半導体撮像素子内蔵部分は、本体131に対して取り付け角度を可変できる構造としている。尚、誤動作を軽減するため、リモコンからの光線を受光する受光部132、及び、電子ペン1からの光線を受光する受光部134を、異なる平面上に配置するのが好ましい。
【0046】
図13は、ミラー折り返し型の本体131の別の形態を示す図である。ここでは、受光部134を本体131に内蔵した状態を示している。受光部134を投写レンズ近傍(もしくは、ミラー133の開閉部分近傍)に配置している。尚、誤動作を軽減するため、受光部134の超広角レンズ光軸とリモコンの受光部132の光軸の垂線が所定の角度をなすように配置するのが好ましい。
【0047】
図14は、前面投写型画像表示装置131を示す図である。ミラー折り返し型でない点以外は、
図12と同じである。
【0048】
図15は、前面投写型画像表示装置131の別の形態を示す図である。ミラー折り返し型でない以外は、
図13と同じである。
【0049】
以上、本実施例によれば、感圧センサに一定圧力を常に加えておき当該圧力がなくなった時に電子ペンのON状態を検知するようにしたため、感圧センサに圧力を加えることによって電子ペンのON状態を検知する方法に比べて、より早く電子ペンの軌跡を被筆記面上に反映できる。又、電子ペンで筆記した軌跡と被筆記面上での筆記位置に関する表示画像のずれ量が画面位置により異なるということがなくなる。又、ペン先が被筆記面に接触した時の筆圧に応じて筆記した軌跡の太さも表示画像としてすぐに反映できる。更に、ペン先と被筆記面に筆記した軌跡から電子ペンの移動方向もすぐに検知できる。
【0050】
従って、ユーザが通常使用する筆記器具で紙面上に文字などを筆記する場合と同様の感覚で違和感無く筆記できる電子ペンを提供することができる。