(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子カード書き込み手段は、前記プリンタユニットの前面側に設けられるとともに、前記プリンタユニットの後面側に向かって前記搬送波を放射する請求項5記載の薬品自動払出装置。
前記トレイ搬送手段は、前記薬品投入ユニットの下に設けられた第1のトレイ搬送手段と、前記プリンタユニットの下に設けられた前記第1のトレイ搬送手段とは別体の第2のトレイ搬送手段とからなり、
前記第2のトレイ搬送手段に、前記電子カード書き込み手段を設けた請求項1記載の薬品自動払出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、表示器に患者情報を書き込む際には一定の時間がかかり、薬品払出に要する時間が長くなってしまう。特に患者の生命や身体に密接に関係する薬剤の払出の場合、迅速な払出がより強く求められる。
あるいは、表示器に患者情報の書き込みを行う際、患者情報の書き込みに失敗する場合がある。このような場合、表示器には何も表示されないので、どの患者に処方すべき薬品が載置されているトレイかが不明となる。その結果、払い出された薬品を廃棄したり、あるいは再度薬品自動払出装置に払い出された薬品を戻す手間がかかり、経済効率や業務効率が悪くなるという問題がある。
あるいは、非接触で患者情報を書き込むような場合は、患者情報が外部に漏れて、個人情報の漏えいにつながる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、薬品払出に要する時間を極力短くできるような薬品自動払出装置を提供することを目的とする。
あるいは、電子カードのような表示器に対し患者情報を書き込む際に、書き込みミス等があっても患者情報等を識別することができる薬品自動払出装置を提供することを目的とする。
あるいは、患者情報が外部に漏れることがない薬品自動払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に記載する本願の発明とは、出願時の特許請求の範囲に記載した発明を指す。
本願の第1の発明である薬品自動払出装置は、空のトレイを収容する未収納トレイユニットと、調剤指示に基づき、収納されている薬品を前記トレイに投入する薬品投入ユニットと、印刷物を印刷し、前記トレイに投入するプリンタユニットと、前記薬品および前記印刷物が投入された前記トレイを収容する収納済トレイユニットと、前記未収納トレイユニットから、前記薬品投入ユニットおよび前記プリンタユニットを経由し、前記収納済トレイユニットまで前記トレイを搬送するトレイ搬送手段と、を備えた薬品自動払出装置であり、前記トレイには、患者情報が書き込まれる電子カードが設けられ、前記プリンタユニットの下部に、
前記トレイに前記薬品が投入された後、かつ、前記収納済トレイユニットに前記薬品が払い出される前、であって、前記印刷物を前記トレイに投入すると同時、あるいは相前後して、前記電子カードに前記患者情報を書き込む電子カード書き込み手段を
備え、前記患者情報のうち、日付、患者名、病棟、病室、又は患者IDは、前記電子カード書き込み手段において前記電子カードに書き込まれると共に、前記電子カードに設けられる表示部にて表示され、前記患者情報のうち、処方箋の内容又は処方薬の種類は、前記電子カードに設けられる記憶部にて記憶されるものである。
ここで、「電子カード」とは、患者情報を保持する媒体であり、電気的、磁気的、熱的に、文字やデータ等の情報が書き込まれるものである。また書き込まれた情報は可視的か否かは問わない。形状は必ずしもカード状でなくてもよく、ブロック状など任意の形状で足りる。また、書き込む手段としては、電波、赤外線などの搬送波を用いる非接触の無線手段、あるいは接触して信号を送信する有線手段のいずれであってもよい。また接触して熱を伝達するものでもよい。
また、電子カードはトレイと一体的に形成されて設けられていても取り外し可能に設けられていてもよい。
さらに、「プリンタユニットの下部」とは、文字通り下部にあればよく、何に対して設けられているかは問わない。例えば、トレイ搬送手段側に直接的、または間接的に設けられていても、プリンタユニット側に設けられていてもよい。
なお、薬品投入ユニットとプリンタユニットの順は任意である。
【0007】
本願の第2の発明である薬品自動払出装置は、第1の発明の薬品自動払出装置であって、前記電子カード書き込み手段は、前記電子カードに前記患者情報の書き込みができたか否かを検出し、前記電子カード書き込み手段が前記電子カードに前記患者情報の書き込みができなかったときは、前記プリンタユニットは前記患者情報を前記印刷物に印刷して前記トレイに投入するものである。
【0008】
本願の第3の発明である薬品自動払出装置は、第1の発明の薬品自動払出装置であって、前記トレイに前記電子カードが設けられているか否かを検出する電子カード検出手段を有し、前記電子カード検出手段が前記トレイに前記電子カードが設けられていないことを検出したときは、前記プリンタユニットは前記患者情報を前記印刷物に印刷して前記トレイに投入するものである。
【0009】
本願の第4の発明である薬品自動払出装置は、第3の発明の薬品自動払出装置であって、前記電子カード検出手段は前記電子カード書き込み手段である。
【0010】
本願の第5の発明である薬品自動払出装置は、第1の発明の薬品自動払出装置であって、
前記電子カード書き込み手段は、前記患者情報を指向性を有する搬送波で前記電子カードに送信するものである。
ここで、「指向性」とは、搬送波の強さが方向によって異なっていることをいう。
また、「搬送波」とは、患者情報を送信する送信媒体をいう。
【0011】
本願の第6の発明である薬品自動払出装置は、第5の発明の薬品自動払出装置であって、前記電子カード書き込み手段は、前記プリンタユニットの前面側に設けられるとともに、前記プリンタユニットの後面側に向かって前記搬送波を放射するものである。
ここで、「前面側」とは、通常状態で人が作業する側、あるいは通常状態で人から見える側である。
また、「後面側」とは、前面側の反対位置である。人から見えるか否かは問わない。
【0012】
本願の第7の発明である薬品自動払出装置は、第6の発明の薬品自動払出装置であって、前記プリンタユニットの後面は、導電性の部材で形成されているものである。
【0013】
本願の第8の発明である薬品自動払出装置は、第7の発明の薬品自動払出装置であって、前記プリンタユニットには、前面に扉が設けられ、前記扉には前記扉の開閉を制御する開閉制御手段を有するものである。
ここで、「開閉制御手段」とは、扉の開閉を制御できれば足り、物理的、電子的などの方法は問わない。
【0014】
本願の第9の発明である薬品自動払出装置は、第1の発明の薬品自動払出装置であって、前記トレイ搬送手段は、前記薬品投入ユニットの下に設けられた第1のトレイ搬送手段と、前記プリンタユニットの下に設けられた前記第1のトレイ搬送手段とは別体の第2のトレイ搬送手段とからなり、前記第2のトレイ搬送手段に、前記電子カード書き込み手段を設けたものである。
ここで、「別体」とは、物理的に一体として形成されていないことをいう。つまり、物理的に接触していない場合はもちろん、他の部材、例えば防振部材を介して間接的に接触している場合も、ここでいう「別体」に含まれる。
【0015】
本願の第10の発明である薬品自動払出装置は、第9の発明の薬品自動払出装置であって、前記薬品投入ユニットと前記プリンタユニットとの間には、振動の伝達を防止する防振部材が設けられているものである。
ここで、「防振部材」は、振動の伝達を防止すれば足り、振動を吸収したり他の部位へ逃がしたりなどの方法を問わない。また、完全に防止する場合の他、一部を防止する場合も含む。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1の発明によれば、プリンタユニットの下部に電子カード書き込み手段を設けているので、プリンタユニットで印刷物を待つ時間の間に電子カードに書き込みを行うことができ、電子カードへの書き込みのステップを別途設ける場合に比べ、迅速な薬品の払出が可能となる。
また、処方箋や注射箋、あるいは施用ラベルといった患者情報を扱うプリンタユニットの下部に電子カード書き込み手段が設けられているので、プリンタユニットに個人情報を扱う機器をまとめることができ、また、個人情報の漏えいを防ぐための措置をプリンタユニットにまとめることができ、ひいてはセキュリティゾーンを明確にして管理することが容易になる。
また、トレイに薬品が投入された後、かつ、収納済トレイユニットに薬品が払い出される前、であって、印刷物をトレイに投入すると同時、あるいは相前後して、というような限られた期間において、リアルタイムに表示部にて表示すべき患者情報と、後に活用可能な情報とを選別して、表示及び記憶を行なうことにより、患者情報の漏洩を防ぐとともに、薬品の払出期間をより短縮するという効果を両立させることができる。
そして、プリンタユニットの下部に電子カード書き込み手段を設けているので、処方箋や注射箋、施用ラベル等の印刷物の内容と、電子カードに書き込まれた情報との不一致を防止することができるものである。すなわち、一つのトレイに印刷物と薬品と電子カードの情報が完全に揃ったトレイを払い出すことが可能である。
【0017】
本願の第2の発明によれば、万一電子カードに患者情報の書き込みミスが発生した場合にでも、プリンタユニットの下にトレイが待機しているので、電子カードへの書き込みに代えて印刷物で代用することができる。つまり、払い出された薬品がどの患者に対する処方かを判別することが可能であり、薬品の廃棄や再度薬品自動払出装置に払い出された薬品を戻す手間を削減することができ、業務効率の向上を図ることが可能である。
【0018】
本願の第3の発明によれば、万一電子カードが設けられていなかった場合にでも、第2の発明と同様、プリンタユニットの下にトレイが待機しているので、電子カードへの書き込みに代えて印刷物で代用することができる。つまり、払い出された薬品がどの患者に対する処方かを判別することが可能であり、薬品の廃棄や再度薬品自動払出装置に払い出された薬品を戻す手間を削減することができ、業務効率の向上を図ることが可能である。
【0019】
本願の第4の発明によれば、電子カード検出手段の機能を電子カード書き込み手段で実現することができ、シンプルな構成とすることが可能である。
【0020】
本願の第5の発明によれば、患者情報を指向性を有する搬送波を用いて送信するので、搬送波の拡散を押さえることができ、個人情報を漏えいを防止することができる。
【0021】
本願の第6の発明によれば、電子カード書き込み手段はプリンタユニットの前面側から後面側に搬送波を放射するので、通常人が作業するプリンタユニット前面側から個人情報を探知することができず、個人情報の漏えいを防止することができる。
【0022】
本願の第7の発明によれば、プリンタユニットの後面が導電性の部材で覆われているので、電子カード書き込み手段から後面側に放射された搬送波が、導電性の部材に当たり、そのままグランドレベルまで落ちるので、後面側からの個人情報の漏えいも防止することができる。
【0023】
本願の第8の発明によれば、プリンタユニットに扉と開閉制御手段を設けているので、セキュリティーゾーンの保護、すなわちプリンタユニット内にある印刷済みの処方箋や施用ラベル、そして患者情報を記載した電子カードに直接アクセスすることによる個人情報の漏えいを防止を図ることができる。
【0024】
本願の第9の発明によれば、第1のトレイ搬送手段と第2のトレイ搬送手段とは別体なので、薬品投入ユニットのピッカーの移動による振動がプリンタユニットに伝わりにくく、振動による書き込みミスを防止することが可能である。
【0025】
本願の第10の発明によれば、防振部材を介して薬品投入ユニットとプリンタユニットが接続されることになるので、薬品投入ユニットのピッカーの移動による振動がプリンタユニットに伝達するのを防止することができ、振動による書き込みミスを防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1、薬品自動払出装置の全体構成)
まず、本実施例の薬品自動払出装置の全体構成について説明する。
図1は、薬品自動払出装置101の前面側からの外観正面図である。薬品自動払出装置101は、未収納トレイユニット102、薬品投入ユニット103、プリンタユニット104、収納済トレイユニット105、およびこれらをつなぐトレイ搬送手段106から構成されている。
【0028】
未収納トレイユニット102は、各種薬品を乗せるための空のトレイ107を積載、収容するとともに、下部に設けられたトレイ搬送手段106に空トレイを供給するものである。本実施例では、空トレイ収納ユニット102は、前面を透明プラスチックやガラス等で形成した扉を備え、トレイ107の在庫が確認できるようになっているが、必ずしもこれらの覆いは必要ではなく、トレイ107を露出するような形で積載、収容するようなタイプでも良い。
【0029】
薬品投入ユニット103は、各種薬品を分別保管するとともに、処方箋データなどに照らし図示しないコンピュータなどの制御装置による調剤指示に基づき、患者ごとに必要な薬品を、ピッカーを用いてトレイ搬送手段106で未収納トレイユニット102から移送された空のトレイ107に投入、載置するものである。薬品は、処方の対象となりうるものであり、例えば注射薬、点滴薬、内服薬、貼付薬、座薬等である。また薬品自体のパッケージは、注射薬においてはアンプルやプラスチックボトル、点滴薬においては輸液バッグ、内服用の錠剤、粉末剤などは小瓶やSP包装、PTP包装などが代表的である。
【0030】
プリンタユニット104は、処方箋データに基づき、薬剤処方の内容を記載した処方箋や注射箋、各種薬剤の施用ラベルを印刷するプリンタを備えるとともに、印刷された処方箋等や施用ラベルを、トレイ搬送手段106により薬品投入ユニット103から移送されてきたトレイ107に投入、載置するものである。本実施例では、プリンタユニット104は、外部からほこりや異物が入り込むのを防止するため、前面が不透明な金属ないしプラスチックの扉で覆われており、扉は開閉可能となっている。プリンタにより印刷される印刷物や後述の電子カードに表示される情報は個人情報が記載、表示されており機密性が高い。したがって、プリンタユニット104は個人情報が集まる領域として、セキュリティーゾーンとして管理することが望ましい。したがって、個人情報の漏えいの防止のために、各種鍵類からなる物理的手段、あるいはIDカード、指紋認証や虹彩認証などを行う個人認証手段からなる電子的手段で構成される開閉制御手段を設けて扉の開閉の制御を行うことが望ましい。
また、本実施例のプリンタユニット104の後面は、導電性の部材である鉄板で形成されている。望ましくは、アースで接地するとよい。なお、後面の全面を導電材料で形成する必要はなく、少なくとも後述の搬送波が当たる範囲をカバーするように形成されていれば足りる。
そして、プリンタユニット104の下部には、後述の電子カード書き込み手段が設けられている。
なお、薬品投入ユニット103とプリンタユニット104は、配置を逆にしても差し支えない。
【0031】
なお、本実施例では、薬品投入ユニット103とプリンタユニット104は別体として構成されているが、特に薬品投入ユニット103のピッカーの動作による振動をプリンタユニット104に伝達させないため、より望ましい形態として、
図6のように防振対策が施されている。
すなわち、
図6において、薬品投入ユニット103のプリンタユニット104に接するフレーム面には、適当な間隔をおいて防振部材103aが設けられているとともに、プリンタユニット104の薬品投入ユニット103に接するフレーム面にも、適当な間隔を置いて防振部材104aが設けられている。
防振部材103a、104aは、振動の伝達を防止できるものであればよく、例えば低反発ウレタンシート、その他発泡性の高分子材料を用いることができる。
なお、防振部材103a、104aは、本実施例では薬品投入ユニット103とプリンタユニット104の双方に設けられているが、どちらか一方のみに設けてもよい。つまり、少なくとも、薬品投入ユニット103とプリンタユニット104の間に防振部材が設けられるようにすればよい。
【0032】
収納済トレイユニット105は、トレイ搬送手段106によりプリンタユニット104から移送されたトレイ107を受け取り、積載、収容するものである。この時点で、トレイ107には各種薬品および処方箋や注射箋、施用ラベルが載置されている。収納済トレイユニット105も未収納トレイユニット102と同様、前面を透明プラスチックやガラス等で形成した扉を備え、収納済トレイが確認できるようになっている。そして、このような構成により、薬剤が載置されたトレイ107が倒壊し、薬剤が破損するのを防止することができる。しかし、機能的には必ずしもこれらの覆いは必要ではなく、トレイ107を露出するような形で積載、収容するようなタイプでも良い。そして、収納済トレイユニット105に積載されたトレイ107は、カート等に移し替えられるなどして、看護士や薬剤師等により、各医師や患者の元に運ばれる。
なお、セキュリティーを重視する場合は、収納済トレイユニット105の全面を不透明とするとともに、プリンタユニット104と同様の開閉制御手段を設けて扉の開閉の制御を行ってもよい。
【0033】
トレイ搬送手段106は、ベルトコンベアなどの手段により、未収納トレイユニット102から薬品投入ユニット103、プリンタユニット104を経て、収納済トレイユニット105を結ぶものである。トレイ搬送手段106は、各ユニットを跨ぎ一体としてもよいが、本実施例によれば、薬品投入ユニット103の振動がプリンタユニット104の下部に設けた後述の電子カード書き込み手段に伝わるのを防止するため、より好ましい形態として各ユニットの下部に独立して設けられている。トレイ搬送手段106の動作は、未収納トレイユニット102から空トレイ107を受け取り、薬品投入ユニット103で薬剤を、プリンタユニット104で処方箋等や施用ラベルをトレイ107上に受け取って、収納済トレイユニット105に薬剤および処方箋が載置されたトレイ107を引き渡すものである。このように、トレイ搬送手段106を一列に設けることにより、トレイ供給、薬品投入、印刷物投入、トレイ払出を各ユニットで同時並行的に進めることができ、より迅速な薬品払出しを実現することができる。トレイ搬送手段106の詳細な構成および動作は以下に説明する。
【0034】
(2、トレイ搬送手段)
図2を用いて、トレイ搬送手段106の構成を説明する。
図2は薬品投入ユニット103の下部およびプリンタユニット104の下部のトレイ搬送手段106を前面側から見た外観斜視図である。
トレイ搬送手段106のうち、薬品投入ユニット103の下部に位置する第1のトレイ搬送手段106aは、複数のベルトコンベアを組み合わせて構成されている。すなわち、第1のトレイ搬送手段106aは、第1のコンベア201、第2のコンベア202、第3のコンベア203から構成されている。
【0035】
第1のコンベア201は、ローラー、ベルト、およびローラーを駆動するためのモーターを有し、図示しないコンピュータなどの制御装置からの命令を受けてモーターを駆動し、トレイ107を搬送する。そして、第1のコンベア201は、薬品投入ユニット103の上流側に位置し、未収納トレイユニット102の側から流れてきたトレイ107を受け取り、第2のコンベア202に受け渡すという役割を担う。なお、第2のコンベア202にトレイ107が滞留しているときは、第1のコンベア201上で待機させるように制御してもよい。
【0036】
第2のコンベア202は、第1のコンベア201と第3のコンベア203の間に位置し、トレイを第3のコンベア203に受け渡すとともに、第2のコンベア202自体が旋回動作を行い、トレイ107の向きを変える役割を担う。また、この位置で、必要な薬品を掴んだピッカーなどの投入手段により、薬品がトレイ107に投入される。かかる投入と第2のコンベア202の旋回動作とを同期させて、トレイ107の所望の位置に薬品を投入することも可能である。
【0037】
第3のコンベア203も第1のコンベア201と同様、ローラー、ベルト、およびローラーを駆動するためのモーターを有し、図示しないコンピュータなどの制御装置からの命令を受けてモーターを駆動し、トレイ107を搬送する。そして、第3のコンベア203は、薬品投入ユニット103の下流側に位置し、薬品が収納されたトレイ107をプリンタユニット104に設けられたコンベア204に受け渡すという役割を担う。
【0038】
トレイ搬送手段106のうち、プリンタユニット104の下部に位置する第2のトレイ搬送手段106bは、一つのコンベア204を有する。
コンベア204も、ローラー、ベルト、およびローラーを駆動するためのモーターを有し、図示しないコンピュータなどの制御装置からの命令を受けてモーターを駆動し、トレイを搬送する。そして、コンベア204は、トレイ搬送手段106aの第3のコンベア203から流れてきたトレイ107を受け取り、プリンタユニット104で印刷された処方箋や注射箋、各種薬剤の施用ラベル等の印刷物を待つとともに、後述の電子カードの書き込みを待ち、これらが完了すれば、収納済トレイユニット105の下に設けられたトレイ搬送手段106に受け渡すという役割を担う。
【0039】
なお、第1のトレイ搬送手段106aと第2のトレイ搬送手段106bは一体としてもよい。一体としても、薬品払出に要する時間を短縮でき、また個人情報の漏えいを防ぐための措置をプリンタユニット104にまとめることができるものである。
しかし、本実施例のように、薬品投入ユニット103の下に位置する第1のトレイ搬送手段106aとプリンタユニット104の下部に位置する第2のトレイ搬送手段106bとを別体のコンベアとして設けることにより、さらに、薬品投入ユニット103のピッカーの移動に伴う振動や、第1のトレイ搬送手段106aの第1のコンベア201、第2のコンベア202、第3のコンベア203の振動が第2のトレイ搬送手段106bに伝達されるのを防止することが可能である。
【0040】
(3.電子カード、および電子カード書き込み手段)
図2において、第2のトレイ搬送手段106bには、コンベア204の脇に電子カード書き込み手段401が設けられている。電子カード書き込み手段401は、本実施例ではプリンタユニット104の前面側に設けられている。したがって、電子カード書き込み手段401は、プリンタユニット104の後面側に向かって、搬送波を放射することになる。具体的には、コンベア204上を流れてきたトレイ107の側面に設けられた電子カード301に、日付、患者名、病棟、病室、患者IDなどの患者情報を乗せた搬送波を送信、放射することで書き込みを行い、電子カード301上の表示手段にて表示させる。また、必要に応じて、処方箋の内容や処方薬の種類などの情報を同時に書き込む。
なお、本実施例では、望ましい例として、電子カード書き込み手段401は第2のトレイ搬送手段106bに設けられているが、第2のトレイ搬送手段106bに直接設けられる場合はもちろん、何らかの部材を通じて間接的に設けられる場合も含む。あるいはプリンタユニット104側に固定されていてもよい。つまり、プリンタユニット104の下部に設けられていればよい。
【0041】
次に
図3、4を用いて、電子カードおよび電子カード書き込み手段の構成および動作を説明する。
図3において、301は電子カードであり、トレイ107の側面に設けられた患者カードホルダーに収容、保持されるものである。電子カード301は電子的に患者の情報を記録するものである。電子カード301には、液晶パネルなどの表示手段からなる表示部302と、IrDAからなる送受信部303が設けられている。
電子カード301には、薬品の処方の日付、患者名、病棟、病室、患者IDなどの患者情報が書き込まれ、液晶パネルからなる表示部302に表示されている。
なお、電子カードはこのほか、磁気的手段や熱的手段を用いて直接表示を変更させるものでもよい。
また、必要に応じて電子カード301に記憶手段を設け、記憶手段に上記患者情報やその他の患者情報を記録するようにしてもよい。例えば、過去の薬剤の処方履歴や通院履歴などを記録し、薬剤の処方時や投薬時に看護師が携帯端末を用いてこれらの情報を読み出し、確認するようにしてもよい。
さらに本発明では、電子カードは、表示部302がなく、記憶手段に書き込むだけのタイプであってもよい。記憶手段から情報を読み出すための読出装置を用いて権限のある限られた人のみに情報を表示するようにしてもよい。
【0042】
図4において、401は電子カード書き込み手段であり、電子カード301に患者情報を書き込むものである。電子カード書き込み手段401には、IrDAからなる送受信部402と、患者情報や制御信号の送受信を行う通信手段403が設けられている。
【0043】
かかる電子カード書き込み手段401の動作について説明する。電子カード書き込み手段401は、トレイ107の側面に保持された電子カード301を検出すると、図示しないコンピュータから通信手段403を介して送信されてきた、日付、患者名、病棟、病室、患者ID、さらには処方箋の内容や処方薬の種類などの患者情報を、送受信部402から電子カード301に向けて送信する。これに対して、電子カード301の送受信部303は、かかる情報を受信し、日付、患者名、病棟、病室、患者IDなどの情報は内部に設けた半導体メモリなどの記憶手段に記憶されるとともに、表示部302に表示する。またその他の情報は半導体メモリなどの記憶手段で記憶する。そして、これらの情報を受け取ったことを確認する確認信号を電子カード301の送受信部303から送信する。電子カード書き込み手段401の送受信部402はこの信号を受信することにより、電子カード301への書き込みが終了したことを検出する。
【0044】
なお、本実施例では、電子カード書き込み手段401は電子カード301と非接触で書き込むIrDAを用いているが、接触して書き込む手段を用いてもよい。接触して書き込む手段であれば、患者情報の漏えいの危険性を少なくすることができる。また、振動に対しても書き込みミスが発生する危険性も少なくなる。
【0045】
また、他の非接触の手段としては、特定小電力無線によるものが挙げられる。また、RFIDを使うことも考えられる。
【0046】
本実施例では、IrDA、すなわち搬送波に赤外線を用いているので、通信可能距離が短く、患者情報の漏えいの危険性は少ない。また、赤外線には指向性があり、放射範囲が狭いので、同じく患者情報の漏えいの危険性は少ない。
これは、特定小電力無線やRFIDで実現する場合も、搬送波の指向性を調整して必要な範囲(角度や距離)にだけ電波が届くように設計することが望ましい。
【0047】
さらに、本実施例では、電子カード書き込み手段401をプリンタユニット104の前面側に設けているので、搬送波を後面側に向かって放射することになる。したがって、作業者が通常作業するプリンタユニット104の前面側では搬送波をキャッチすることができず、患者情報の漏えいの危険はさらに少なくなる。加えて、プリンタユニット104の後面は導電性の鉄板からなり,鉄板に当たった搬送波はグランドレベルに落ちるので、遮蔽効果によりプリンタユニット104の外部に赤外線や電波などの搬送波が漏れることはなく、患者情報の漏えいの危険は少なくなる。
【0048】
(4.動作)
以上の構成を有する薬品自動払出装置101の動作、特に、プリンタユニット104の下での動作について
図5を用いて説明する。
まず、電子カード301を側面に収容した空のトレイ107が未収納トレイユニット102から薬品投入ユニット103に供給される。(S1)
そして、コンピュータから処方箋に基づいた調剤指示を受けた薬品投入ユニット103は、トレイ搬送手段106aおよび図示しないピッカーを制御して、空のトレイ107に所定の薬品を投入し、払い出す。(S2)
【0049】
薬品の払出を受けたトレイ107をトレイ搬送手段106aから受け取ったプリンタユニット104のトレイ搬送手段106bは、トレイ搬送手段106bの所定位置でトレイ107の搬送を停止させる。そして、プリンタユニット104は、コンピュータから、処方箋や注射箋の印刷命令を受けて処方箋や注射箋の印刷を行うとともに、施用ラベルの印刷命令を受けて施用ラベルの印刷を行い、処方箋や注射箋、施用ラベル等の印刷物をトレイ107上に投入、載置する。(S3,S4)
【0050】
望ましくはこれと同時、あるいは相前後して、電子カード書き込み手段401は、コンピュータから電子カード書き込み命令を受けて、トレイ107に設けられた電子カード301に、日付、患者名、病棟、病室、患者ID等の患者情報を書き込み、表示手段302に表示させる。(S5)
これらのステップが終わると、トレイ搬送手段106bは、薬品や必要な印刷物、の払出、そして、電子カード301への書き込みが終わったトレイ107を、収納済トレイユニット105に払い出す。(S6)
【0051】
以上、このような動作によれば、プリンタユニット104で印刷物の印刷を待つ間に電子カード301の書き込みを行うことができ、電子カード301への書き込みをコンベア上の独立した領域で行うものに比べると、薬品の払出時間をより短縮させることができるものである。
また、薬品投入ユニット103の後にプリンタユニット104を配置するようにすれば、トレイ107上にすでに薬品が払い出されているので、薬品の払出を確認してから印刷物や電子カード301の払出ないし表示を行うことができ、トレイ107上の薬品と印刷物や電子カード301により表示された情報と一致させることが容易であり、正確な薬品の払出を担保することができるものである。
【0052】
(5.書き込み失敗時の動作)
S5にて、電子カード301の書き込みを行うが、書き込みが失敗した場合には、電子カード301に表示や情報がないトレイが払い出されるという不都合が起こる。この場合でも、電子カード書き込み手段401がプリンタユニット104の下部に存在しているため、プリンタユニット104のプリンタで代替的に患者情報を出力することができる。
【0053】
そこで、S5にて電子カード301への書き込みが失敗した時、つまり、電子カード301からの確認信号が、書き込み失敗を示す信号であったり、あるいは所定時間内に確認信号が送信されず、電子カード書き込み手段401の送受信部402で検出されなかったような場合には、電子カード301への書き込みに代えて、プリンタユニット104に対し印刷命令を出し、日付、患者名、病棟、病室、患者IDを印刷した印刷物を投入、載置してもよい。こうすることにより、処方先が不明なトレイ107を払い出すことがなくなり、処方先不明により薬品を廃棄する必要がなく、あるいは薬品を薬品投入ユニット103に戻す手間を省くことができる。
【0054】
書き込みができなかったか否かは、上述の通り、電子カード301からの確認信号の内容や確認信号の有無で検出できる。例えば、電子カード301がトレイ107のホルダーに搭載されていない場合、トレイ107の向きが反対である場合、電子カード301が不良である場合、あるいは送受信エラー等で電子カード書き込み動作が失敗に終わる場合などが、電子カード301に書き込みができない場合となる。
そのほか、電子カード書き込み手段401自体の不良などによっても、電子カード301に書き込みができない場合が発生する。これは、通信手段403からの信号の内容や有無を図示しないコンピュータ等の制御手段で検出することにより、電子カード301に書き込みが行えなかったことを検出することができる。
【0055】
これに代えて、S5にて、電子カード301への書き込みの前に、電子カード301の有無の検出を行ってもよい。この検出は、電子カード301の有無を直接的ないし間接的に検出する電子カード検出手段によって行う。前者の例としては、発光素子と受光素子とからなり、電子カードの有無によって受光素子での検出結果が異なるような配置を持った手段が挙げられる。また、後者の例として、バーコードリーダーを用いることができる。つまり、トレイ107の側面にバーコードを備えるとともに、トレイ搬送手段106bにバーコードリーダーを設け、トレイの向きで電子カード301の有無を間接的に検出するようにしてもよい。
もちろん、電子カード書き込み手段401も、電子カード検出手段の機能を内包するものであるので、電子カード書き込み手段401を電子カード検出手段として用いてもよい。
また、電子カード301の有無の検出は、電子カード301への書き込みの前に限られず、書き込みの後あるいは書き込みと同時に行ってもよい。
【0056】
さらに、電子カード301がないことを電子カード書き込み手段401が検出すると、トレイ107の向きが逆であるかどうかを検出し、もしトレイ107の向きが逆であるなら、トレイ搬送手段106bのコンベア204、および第3のコンベア203および第2のコンベア202を反転させ、トレイ107を第2のコンベア202に戻し、第2のコンベア202でトレイ107を回転させて、トレイ107の向きを正しい方向に直してもよい。
【0057】
なお、電子カード301に書き込みができなかった全ての場合に、プリンタユニット104から患者情報等を印刷物に印刷してトレイ107に投入する必要はない。
例えば、一回目の書き込みが失敗しても患者情報を印刷せず、二回目の書き込みが失敗した時に患者情報を印刷するようにしてもよい。
あるいは、電子カード301が繰り返し用いられる場合に、一回目の書き込みが失敗した時には患者情報を印刷するが、二回目の書き込みが失敗した時には電子カード301が故障していると判断してシステムを停止し、電子カード301の交換を促すようにしてもよい。
そのほか、特定の条件の場合には患者情報を印刷しないようにしてもよい。
つまり、電子カード301に書き込みができなかったことを理由として患者情報を印刷する場合があれば、本発明に該当するものである。