【実施例】
【0024】
図1は、本発明の製造方法の一実施例の概略を示すフロー図である。この製造方法は、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各パーツのデータを作成(金型データ作成工程)した後、該データに基づいて各々のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて親型母材をNC等の自動加工機で切削加工して親型を作製する(親型作製工程)。次いで、得られた親型を用いて各金型パーツ毎に、該親型が反転した成形面を有する捨て型を作製する捨型作製工程、及び、該捨型作製工程で得られた捨て型に溶融した金属材料を鋳込む金型鋳造工程を順次実施して、各金型パーツ(鋳型)を個別に作製し、最後に全ての金型パーツを接合し、目的金型とするものである。なお、特に図示していないが、上記上型は、上記下型とは別個に作製されるものであり、通常は公知の方法で作製されるものである。
【0025】
まず、金型データ作成工程では、3次元CADにより作成した自動車用シートパッドの設計データを基に、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する。この際、上記金型パーツのデータを作成する方法は、特に制限されるものでなく、
図1に示したように、公知の3次元CADを用いて、自動車用シートパッドの設計データから各金型パーツのデータを直接作成してもよいし、自動車用シートパッドの設計データから、成形品全体の金型データ(目的金型のデータ)を作成した後、この金型データを基に目的金型を分割した形状を有する各パーツのデータを作成してもよい。また、
図1では、自動車用シートパッドの設計データを基にa〜e(底壁と4面の側壁)の計5個の金型パーツのデータを直接作成した例を示したが、該金型パーツのデータ作成数(分割数)や分割方法は、上記下型の底壁と各側壁とが分割され、切削加工や組み立て等の後工程を容易かつ確実に行うことができれば特に制限されるものではなく、底壁から分割した側壁を更に加工しやすい形状や大きさに分割する等、成形品の形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
親型作製工程では、まず、上記金型データ作成工程で得られたa〜eの各金型パーツのデータに基づいて、NC等の自動加工機用の加工データを作成する。次いで、この加工データを自動加工機に入力し、入力されたデータに基づいて親型母材を切削加工することにより、上記金型パーツの親型a〜eを作製する。ここでは、3台の自動加工機1〜3を使用し、金型パーツaを自動加工機1で、金型パーツb及びcを自動加工機2で、金型パーツd及びeを自動加工機3で作製した例を示した。この工程では、1台の自動加工機で各金型パーツの親型を順次作製してもよいが、上記のように必要に応じて複数の自動加工機を使用することにより、上記親型の切削加工を並行して行うことができ、作製期間を短縮することができる。更に作製期間を短縮したい場合は、自動加工機の使用台数を増やせばよい。なお、上記親型母材は、公知の材料から適宜選択して用いることができ、本発明では、硬質ウレタンフォームやケミカルウッド(木型)等を好適に用いることができる。
【0027】
捨型作製工程では、上記親型作製工程で得られた親型a〜eを用いて公知の方法により、該親型が反転した成形面を有する捨て型a〜eを個別に作製する。なお、この捨て型a〜eとしては、通常、鋳物砂等を用いて砂型が作製されるが、前記の砂以外にも石膏等を用いて捨て型を作製することもでき、これらは必要に応じて適宜選択すればよい。捨て型として砂型を作製する場合は、例えば、所定の大きさの外枠内に親型を配置し、その中に鋳物砂を詰め込み、結合剤にて固めた後、親型を取り除くことにより作製する方法等を採用することができる。なお、鋳物砂を詰め込む際、上記外枠内を減圧状態にしたり、振動を与えること等も任意である。
【0028】
金型鋳造工程では、上記捨型作製工程で得られた捨て型a〜eに溶融した金属材料を鋳込み、各金型パーツを並行して個別に鋳造する。なお、鋳造方法としては、通常の方法を採用し得る。また、上記金属材料としては、公知の材料から適宜選択して用いることができ、本発明では、アルミニウム合金等を好適に用いることができる。
【0029】
このようにして得られた金型パーツ(鋳型)a〜eを、接合することによりひとつの金型とすることができる。各金型パーツの接合方法は、接合面が確実に密着し、該接合面から金型内部(キャビティ)に注型された発泡材料が漏れ出ることがないようにできれば特に制限されず、例えば、各金型パーツa〜eにボルト等の締結部材を取り付ける締結部を設け、これらの締結部材により締結可能とすればよい。
【0030】
また、各金型パーツを組み合わせる際、接合面にズレを生じると、キャビティに不都合な段差を生じ、成形品の外観不良の原因となるおそれがあるが、各金型パーツの接合面に位置決めピンやボスとこれらの嵌合凹部を設けることにより、各金型パーツを接合した際に、キャビティに不都合な段差を生じないよう精度よく組み上げることができる。
【0031】
図2は、本発明の製造方法の別の実施例の概略を示すフロー図である。この製造方法は、上記
図1と同様に、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各パーツのデータを作成する(金型データ作成工程)。次いで、該データに基づいて各々のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて金型母材をNC等の自動加工機で直接切削加工する金型切削工程を実施して、各金型パーツ(切削品)a〜eを個別に作製し、最後に得られた全ての金型パーツを接合し、目的金型とするものである。
【0032】
まず、金型データ作成工程は、上記
図1での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
金型切削工程では、まず、上記金型データ作成工程で得られたa〜eの各金型パーツのデータに基づいて、NC等の自動加工機用の加工データを作成する。次いで、この加工データを自動加工機に入力し、入力されたデータに基づいて金型母材を直接切削加工する(直接切削加工法)ことにより、金型パーツ(切削品)a〜eを作製する。ここでは、3台の自動加工機1〜3を使用し、金型パーツaを自動加工機1で、金型パーツb及びcを自動加工機2で、金型パーツd及びeを自動加工機3で作製した例を示した。この工程では、1台の自動加工機で各金型パーツを順次作製してもよいが、上記のように必要に応じて複数の自動加工機を使用することにより、各金型パーツの切削加工を並行して行うことができ、作製期間を短縮することができる。更に作製期間を短縮したい場合は、上記
図1と同様、自動加工機の使用台数を増やせばよい。なお、上記金型母材は、公知の材料から適宜選択して用いることができ、本発明では、アルミニウム合金等を好適に用いることができる。
【0033】
このようにして得られた金型パーツ(切削品)a〜eは、上記
図1に示した方法と同様に接合することにより、ひとつの金型とすることができる。なお、各金型パーツの接合方法や位置決め手段等についても上記
図1に示した方法と同様であり、金型パーツの接合面を確実に密着させ、かつキャビティに不都合な段差を生じることなく精度よく組み上げることができるので、成形時における発泡材料の接合面からの漏れや、キャビティの不都合な段差に起因する外観不良などが発生することがない。
【0034】
また、特に図示していないが、本発明の製造方法では、金型パーツの形状等により、鋳造により作製する方法(鋳造法)と、切削加工により作製する方法(直接切削加工法)とを組み合わせて各金型パーツを作製することもできる。例えば、金型パーツa〜cを
図1の製造フローに従って鋳造法により作製し、金型パーツd及びeを
図2の製造フローに従って直接切削加工法により作製することができる。このように、各金型パーツを作製する際に、金型パーツ毎に鋳造と切削加工とから最適な加工方法を選択することにより、更に効率的に自動車用シートパッド成形用金型を製造することができる。なお、作製した各金型パーツの接合方法や位置決め手段等についても上記
図1及び
図2に示した方法と同様であり、各金型パーツの接合面を確実に密着させ、かつキャビティに不都合な段差を生じることなく精度よく組み上げることができるので、成形時における発泡材料の接合面からの漏れや、キャビティの不都合な段差に起因する外観不良などが発生することがない。
【0035】
図3は、本発明の製造方法に従って製造した自動車用シートパッド成形用金型の一例を示すものであり、
図3(A)は該成形金型(下型)1の組み上げ前の状態を示したものである。この下型1は、上面が開放された略矩形箱型の金型であり、材料の使用効率及び加工性の観点から、底壁1a、左右側壁1b,1c、前後側壁1d,1eの金型パーツに5分割されており、特に左右側壁1b,1c内面にはアンダーカット部を有している。また、
図3(B)には上記側壁1bのアンダーカット部Uの形状を示すため、B−B線に沿った概略断面図を示した。なお、上記側壁1cの断面形状は特に図示していないが、上記側壁1bを反転した形状を有している。
【0036】
上記金型パーツ1a〜1eは、上記
図1(鋳造法)又は
図2(直接切削加工法)のフロー図に従って作製しても、鋳造法と直接切削加工法とを組み合わせて作製してもよい。
なお、特に図示していないが、本例の自動車用シートパッド成形用金型は、上面が開放された略矩形箱型の下型1と、この下型1の開口を覆うように配置される上型とで構成されるものである。ここでは、該上型は形状が比較的単純で特に分割を必要としないため、通常の製造工程により製造することができるものである。
【0037】
図4には、上記
図3で示した金型パーツ1a〜1eを接合し、自動車用シートパッド成形用金型(下型)として組み上げた状態を示した。この際、各金型パーツ1a〜1eには、締結部11としてボルト穴があけられており、各金型パーツ1a〜1eをボルト(締結部材)12により締結することにより、接合面を確実に密着させることができ、発泡材料を金型内部に注型し発泡させても接合面から樹脂が漏れ出すことがない。
【0038】
また、特に図示していないが、各金型パーツ1a〜1eの接合面には、位置決めピンやボスとこれらの嵌合凹部が設けられており、各金型パーツ1a〜1eを接合した際に、接合面に不都合な段差を生じないよう精度よく組み上げることができ、成形品の外観不良の発生を防止できるようになっている。
【0039】
このように、本発明の製造方法を用いることにより、成形品が複雑な形状であっても、単純な形状となるように複数パーツに分割して作製することにより、最も時間を要する親型母材或いは金型母材の切削加工において、各パーツの加工を容易なものとすることができ、更には複数の自動加工機で並行して行うことができるため、自動車用シートパッド成形用金型を効率よく製造することが可能となる。これにより、製品の開発コストの削減に寄与することができ、また、形状変更や補修の際には、該当する金型パーツ毎の修正及び交換が可能なので、メンテナンス性及びランニングコストにも優れたものとすることができる。
【0040】
本発明の製造方法により得られた成形金型を用いて自動車用シートパッドを製造する場合には、キャビティ内に発泡材料を注型し、発泡・硬化させる公知の方法を用いればよく、これにより自動車用シートパッドを効率よく安価に得ることができる。
【0041】
本発明の製造方法により得られた自動車用シートパッド成形用金型の一例として、該成形金型の下型のみを分割した例を示したが、形状等により必要であれば上型を分割して作製することも任意である。また、金型パーツの分割数や各金型パーツへの分割方法等も、成形品の形状等に応じて適宜変更することができ、更にはその他の構成についても、中子型を追加で設ける等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して差し支えない。