(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ラジカル重合性モノマー(A)、反応性分散媒(B)、光ラジカル重合開始剤(C)、及び低分子ゲル化剤(D)を少なくとも含み、且つ前記ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率は前記反応性分散媒(B)の屈折率よりも高いホログラム記録材料組成物であって、
前記反応性分散媒(B)がカチオン重合性化合物(Bc)であり、該組成物はさらにカチオン重合触媒(E)を含み、
前記カチオン重合性化合物(Bc)は、環状エーテル基及びビニルエーテル基からなる群から選ばれる反応性基を有するものであり、
前記低分子ゲル化剤(D)は分子量5,000以下のものである、ホログラム記録材料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のホログラム記録材料組成物は、ラジカル重合性モノマー(A)、反応性分散剤(B)、光ラジカル重合開始剤(C)、及び低分子ゲル化剤(D)を少なくとも含み、且つ前記ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率は前記反応性分散媒(B)の屈折率よりも高い。本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成された前記本発明のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している。本明細書において、ホログラム記録層をホログラム記録材料層ということもある。
【0027】
前記ラジカル重合性モノマー(A)は、分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーから選択するとよい。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及びアクリロイル基を総称する意味である。
【0028】
前記ラジカル重合性モノマー(A)は、好ましくは、分子中に少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。分子中への芳香環の導入により、屈折率は高くなる。
【0029】
前記ラジカル重合性化合物(A)としては、好ましくは、分子中に芳香環を有する単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーから選択するとよい。また、分子中に芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。
【0030】
前記ラジカル重合性化合物(A)として、一般式(V)〜(VIII)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
【0032】
一般式(V)において、R
51及びR
52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH
2 CH
2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH
2 CH(OH)CH
2 −基を表す。R
53及びR
54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。具体的には、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0034】
一般式(VI)において、R
61は、単結合、又はヘテロ原子(例えば酸素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表す。R
62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。ハロゲン原子(Cl、Br又はI)が導入されると、化合物の屈折率が高くなる。
【0035】
R
61の具体例としては、単結合、−CH
2 −、−CH
2 CH
2 −、(ベンゼン環側)−OCH
2 CH
2 −、(ベンゼン環側)−(OCH
2 CH
2 )n −、(ベンゼン環側)−(OCH(CH
3 )CH
2 )n −、(ベンゼン環側)−OCH
2 CH(OH)CH
2 )−、(ベンゼン環側)−SCH
2 CH
2 −等が挙げられる。
【0036】
上記R
61の具体例に対応する式(VI)の化合物を例示すると、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェニル(メタ)アクリレート、PO変性フェニル(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン(ECH)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
一般式(VII) において、R
71は、ヘテロ原子(例えば酸素原子)を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表す。R
72は、水素原子又はメチル基を表す。R
71の具体例としては、−CH
2 CH
2 −、(カルバゾール環のN側)−CH
2 CH
2 −(OCH
2 CH
2 )n −等が挙げられる。具体的には、2−(9−カルバゾリル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
一般式(VIII)において、R
81及びR
82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子(例えば酸素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表す。R
83及びR
84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。ハロゲン原子(Cl、Br又はI)が導入されると、化合物の屈折率が高くなる。
【0041】
R
81及びR
82の具体例としては、−CH
2 −、−CH
2 CH
2 −、(ベンゼン環側)−OCH
2 CH
2 −、(ベンゼン環側)−(OCH
2 CH
2 )n −、(ベンゼン環側)−(OCH(CH
3 )CH
2 )n −、(ベンゼン環側)−OCH
2 CH(OH)CH
2 )−、(ベンゼン環側)−SCH
2 CH
2 −等が挙げられる。具体的には、EO変性テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
上記の他に、一般式(V)〜(VIII)で表される化合物には属しないものとして、フルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記の光ラジカル重合性モノマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、光ラジカル重合性モノマー(及びそれの重合体)を高屈折率成分とするために、上記の光ラジカル重合性化合物の屈折率は、例えば1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましい。屈折率の上限は特に定められないが、1.70以下程度である。2種以上の光ラジカル重合性モノマーを併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。なお、屈折率とは、Na D線での20℃における屈折率n20/Dである。
【0044】
光ラジカル重合開始剤(C)としては、記録光の波長に対応するもの、すなわち、記録レーザ光を吸収してラジカルを発生するものを用いる。例えば、
ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のカルボニル化合物;
トリブチルベンジル錫等の有機錫化合物;
テトラブチルアンモニウム・トリフェニルブチルボレート、トリフェニル−n−ブチルボレート等のアルキルアリールホウ素酸塩;
ジフェニルヨードニウム塩等のオニウム塩類;
η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスヘェイト(1−)等の鉄アレーン錯体;
トリス(トリクロロメチル)トリアジン等のトリハロゲノメチル置換トリアジン化合物;3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール等のビスイミダゾール誘導体
等が挙げられる。
【0045】
光ラジカル重合開始剤の市販のものとしては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア784 、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ社製)、BT−2(チッソ(株)製)等を用いてもよい。
【0046】
上記の光ラジカル重合開始剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、ホログラム記録材料組成物の不揮発分を基準として、例えば0.1〜20重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%程度である。
【0047】
ホログラム記録材料組成物は、光ラジカル重合開始剤の他に記録光波長に対応した光増感剤として機能する色素などを含有してもよい。光増感剤としては、例えば、チオキサンテン−9−オン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン等のチオキサントン類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、及びスクアリリウム類等が挙げられる。光増感剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光増感剤の使用量は、光ラジカル重合開始剤(C)の0.5〜100重量%程度、好ましくは1〜50重量%程度とするとよい。
【0048】
反応性分散媒(B)は、前記光ラジカル重合性モノマー(A)及び前記光ラジカル重合開始剤(B)を分散するものであり、カチオン重合性化合物(Bc)、及び/又はラジカル重合性化合物(Br)から選ばれる。反応性分散媒(B)としてカチオン重合性化合物(Bc)を用いる場合には、さらに、カチオン重合触媒(E)を用いる。反応性分散媒(B)としてラジカル重合性化合物(Br)を用いる場合には、前記ラジカル重合性モノマー(A)よりも反応性の低いラジカル重合性化合物(Br)を用いる必要がある。本明細書において、反応性分散媒(B)の「反応性」とは、記録露光時における反応性ではなく、記録露光後に行われる後露光及び/又は加熱処理によって重合硬化され得る反応性を意味している。
【0049】
反応性分散媒(B)としてのカチオン重合性化合物(Bc)は、環状エーテル基及びビニルエーテル基からなる群から選ばれる反応性基を有する化合物であって、室温(20℃)で流動性を有するものを用いることができる。
【0050】
このようなカチオン重合性化合物(Bc)のうち、環状エーテル基を有する化合物としては、例えばエポキシ基や脂環エポキシ基、オキセタニル基を有する化合物が挙げられる。
【0051】
エポキシ基を有する化合物として、具体的には、1,2-エポキシヘキサデカン、2−エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル等の単官能エポキシ化合物;
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、二塩基酸(アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸など)のジグリシジルエステル[アジピン酸ジグリシジルエステルなど]、
さらに、1,4-ビス(2',3'-エポキシプロピル)パーフルオロ−n−ブタン,1,6-ビス(2',3'-エポキシプロピル)パーフルオロ−n−ヘキサン、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3- テトラメチルジシロキサン、ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0052】
また、脂環エポキシ基を有する化合物として、具体的には、1,2-エポキシ-4- ビニルシクロヘキサン、D-2,2,6-トリメチル-2,3- エポキシビシクロ[3,1,1] ヘプタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の単官能化合物;
二塩基酸(アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸など)のビスエポキシシクロヘキシルエステル[ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなど]、2,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4- エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5- スピロ-3,4- エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂)等の多官能化合物が挙げられる。
【0053】
オキセタニル基を有する化合物として、具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキタセン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキタセン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキタセン等の単官能オキセタニル化合物;
1,4-ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,3-ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタニル化合物が挙げられる。
【0054】
ビニルエーテル基を有する化合物として、具体的には、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等の単官能化合物;
トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4- ジメチロールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ポリエステルジビニルエーテル、ポリウレタンポリビニルエーテル等の多官能化合物が挙げられる。
【0055】
カチオン重合性化合物(Bc)の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記反応性分散媒(B)の屈折率は前記ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率よりも低い。そのため、上記カチオン重合性化合物(Bc)は、芳香族基を有していない低屈折率(例えば、屈折率1.5以下)のものが好ましく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上の反応性分散媒を併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。記録露光後のポストキュアによる固定化を考慮すると、多官能のカチオン重合性化合物が好ましい。
【0056】
反応性分散媒(B)としてカチオン重合性化合物(Bc)を用いる場合には、カチオン重合性化合物を記録露光後に非コヒーレントな光による全面露光及び/又は加熱処理によりポストキュアさせるために、さらに、カチオン重合触媒(E)を用いる。
【0057】
カチオン重合触媒(E)としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩を用いることができ、特に、芳香族オニウム塩を用いることが好ましい。その他、フェロセン誘導体等の鉄−アレーン錯体や、アリールシラノール−アルミニウム錯体等も好ましく用いることができ、これらの中から適宜選択するとよい。具体的には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(シグマ・アルドリッチ社製)、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990(いずれも米国ダウケミカル社製)、イルガキュア264 、イルガキュア250 (いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)、CIT−1682(日本曹達製)等が挙げられる。カチオン重合触媒の含有量は、例えば、カチオン重合触媒を除く組成物の不揮発分100重量部を基準として、0.1〜10重量部程度、好ましくは0.5〜5重量部程度である。
【0058】
反応性分散媒(B)としての上記カチオン重合性化合物(Bc)は、ラジカル重合性炭素−炭素二重結合を有しておらず、記録露光時に光ラジカル重合開始剤(C)の存在下においても反応することはない。上記カチオン重合性化合物は、記録露光時において、ラジカル重合性モノマー(A)の移動度を高め、高い屈折率変調度を得ることができる。そして、記録露光後に、カチオン重合触媒(E)の存在下、上記カチオン重合性化合物(Bc)を重合硬化させることにより記録層に固定できる。そのため、記録層の経時による劣化は非常に少ない。
【0059】
反応性分散媒(B)としてのラジカル重合性化合物(Br)は、前記ラジカル重合性モノマー(A)よりも反応性の低いラジカル重合性化合物であって、室温で流動性を有するものを用いることができる。
【0060】
前記ラジカル重合性モノマー(A)は、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有しているので、前記ラジカル重合性化合物(Br)としては、(メタ)アリル基、スチリル基、ビニル基、及びN−ビニル基からなる群から選ばれる反応性基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。ここで、(メタ)アリル基とは、メタリル基及びアリル基を総称する意味である。
【0061】
(メタ)アリル基を有するラジカル重合性化合物(Br)としては、例えば、アリルジグリコールカーボネート(ADC)
CH
2=CH-CH
2-OCO-O-CH
2CH
2-O-CH
2CH
2-O-COO-CH
2-CH=CH
2
などが挙げられる。
【0062】
スチリル基を有するラジカル重合性化合物(Br)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。ただし、前記ラジカル重合性モノマー(A)よりも低い屈折率とするため、芳香環上又はその他の位置に長鎖アルキル基、フッ素置換長鎖アルキル基、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖などが導入されていることが好ましい。
【0063】
ビニル基を有するラジカル重合性化合物(Br)としては、例えば、二塩基酸のビニル基含有エステルや、ジアルコールと不飽和カルボン酸のエステル、アルコール又はジアルコールのビニルエーテル等が挙げられる。
【0064】
二塩基酸のビニル基含有エステルの具体例としては、
ジ(3−ブテン−1−イル)マロネート
CH
2=CH-CH
2CH
2-OCO-CH
2-COO-CH
2CH
2-CH=CH
2
ジ(4−ペンテン−1−イル)マロネート
CH
2=CH-(CH
2)
3-OCO-CH
2-COO-(CH
2)
3-CH=CH
2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)マロネート
CH
2=CH-(CH
2)
4-OCO-CH
2-COO-(CH
2)
4-CH=CH
2
ジ(3−ブテン−1−イル)スクシネート
CH
2=CH-CH
2CH
2-OCO-(CH
2)
2-COO-CH
2CH
2-CH=CH
2
ジ(4−ペンテン−1−イル)スクシネート
CH
2=CH-(CH
2)
3-OCO-(CH
2)
2-COO-(CH
2)
3-CH=CH
2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)スクシネート
CH
2=CH-(CH
2)
4-OCO-(CH
2)
2-COO-(CH
2)
4-CH=CH
2
ジ(3−ブテン−1−イル)セバケート
CH
2=CH-CH
2CH
2-OCO-(CH
2)
8-COO-CH
2CH
2-CH=CH
2
ジ(4−ペンテン−1−イル)セバケート
CH
2=CH-(CH
2)
3-OCO-(CH
2)
8-COO-(CH
2)
3-CH=CH
2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)セバケート
CH
2=CH-(CH
2)
4-OCO-(CH
2)
8-COO-(CH
2)
4-CH=CH
2
ジ(3−ブテン−1−イル)マレエート(cis) 又はフマレート(trans)
CH
2=CH-CH
2CH
2-OCO-CH=CH-COO-CH
2CH
2-CH=CH
2
ジ(3−ブテン−1−イル)シトラコネート(cis) 又はメサコネート(trans)
CH
2=CH-CH
2CH
2-OCO-CH=C(CH
3)-COO-CH
2CH
2-CH=CH
2
等が挙げられる。
【0065】
ジアルコールと不飽和カルボン酸のエステルの具体例としては、
エチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH
2=CH-(CH
2)
8-CO-OCH
2CH
2O-CO-(CH
2)
8-CH=CH
2
ジエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH
2=CH-(CH
2)
8-CO-O(CH
2CH
2O)
2-CO-(CH
2)
8-CH=CH
2
トリエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH
2=CH-(CH
2)
8-CO-O(CH
2CH
2O)
3-CO-(CH
2)
8-CH=CH
2
エチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH
2=CH-(CH
2)
5-CO-OCH
2CH
2O-CO-(CH
2)
5-CH=CH
2
ジエチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH
2=CH-(CH
2)
5-CO-O(CH
2CH
2O)
2-CO-(CH
2)
5-CH=CH
2
トリエチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH
2=CH-(CH
2)
5-CO-O(CH
2CH
2O)
3-CO-(CH
2)
5-CH=CH
2
等が挙げられる。
【0066】
アルコール又はジアルコールのビニルエーテルの具体例としては、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0067】
N−ビニル基を有するラジカル重合性化合物(Br)としては、例えば、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン及びその誘導体等が挙げられる。
【0068】
反応性分散媒(B)として、上記ラジカル重合性化合物(Br)の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記反応性分散媒(B)の屈折率は前記ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率よりも低い。そのため、上記ラジカル重合性化合物(Br)は、芳香族基を有していない低屈折率(例えば、屈折率1.5以下)のものが好ましく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上の反応性分散媒を併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。記録露光後のポストキュアによる固定化を考慮すると、多官能のラジカル重合性化合物が好ましい。
【0069】
反応性分散媒(B)としての上記ラジカル重合性化合物(Br)は、反応性基として(メタ)アリル基、スチリル基、ビニル基、又はN−ビニル基を有しており、前記ラジカル重合性モノマー(A)に含まれている(メタ)アクリロイル基よりも反応性が低い。従って、記録露光時に、ラジカル重合性モノマー(A)を反応させるが、上記ラジカル重合性化合物(Br)を反応させないようにすることができる。上記ラジカル重合性化合物(Br)は、記録露光時において、ラジカル重合性モノマー(A)の移動度を高め、高い屈折率変調度を得ることができる。そして、記録露光後に、残存する上記ラジカル重合性化合物(Br)を重合硬化させることにより記録層に固定できる。そのため、記録層の経時による劣化は非常に少ない。
【0070】
反応性分散媒(B)の他に、補助的に非反応性の分散媒を用いてもよい。ここで、「非反応性」とは、記録露光後に行われる後露光ないしは熱によっても反応性を有していないことを意味している。
【0071】
非反応性の分散媒としては、例えば、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジドデシル、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)、グルタル酸ジドデシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジデシル、スベリン酸ジドデシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル等の脂肪族ジカルボン酸エステル類; マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フマル酸ビス(2−エチルヘキシル)、シトラコン酸ジドデシル、メサコン酸ジドデシル等の不飽和脂肪族ジカルボン酸エステル類; グリセリルトリアセテート、酢酸2−エチルヘキシル等の酢酸エステル類; 等を用いることができる。
【0072】
非反応性の分散媒の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。上記反応性分散媒(B)と前記非反応性分散媒の屈折率の加重平均も上記のようにする。
【0073】
本発明において、低分子ゲル化剤(D)とは、有機液体に少量添加したのち、例えば、加熱によって均一溶解させ、この均一溶液(ゾル)を冷却することにより組成物全体を流動性のないゲルに変化させられる物質のことを指す。ゲル化の駆動力は、水素結合、ファンデルワールス力、π−π相互作用、静電相互作用などの非共有結合的な相互作用である。このような相互作用の強い物質がすべてゲル化剤として作用するわけではなく、有機液体に対する溶解性やゲル化剤分子の結晶性などのバランスによって、ゲル化剤として作用する化合物と有機液体との組み合わせが決まる。
【0074】
また、加熱及び冷却によってゲル化させるのではなく、希釈溶剤の留去によってゲル化させることもできる。すなわち、フォトポリマー組成物に対するゲル化能を有し、希釈溶剤(アセトン、アルコール、トルエンなど)に対して溶けやすいゲル化剤を用いれば、溶剤で希釈された状態では流動性を有し、この溶液を基材上に塗布し、溶剤を乾燥する段階でゲル化させるプロセスを採ることができる。
【0075】
前記低分子ゲル化剤(D)は、分子量が例えば10,000以下であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下であり、対象有機液体と前記低分子ゲル化剤(D)の合計質量(すなわち、組成物の不揮発分質量)に対して、15重量%以下、好ましくは5重量%以下の添加量で、対象有機液体を含む組成物を透明なゲルに変化させることのできる有機化合物である。
【0076】
低分子ゲル化剤(D)としては、一般式(I)で表されるα−アミノ酸誘導体を用いることができる。
【0078】
ここで、R
11は、アミノ酸の側鎖基(残基)を表し、ただし、前記側鎖基が修飾されていてもよい。Xは、単結合、O原子又はNH基を表し、R
12は、ヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。Yは、O原子又はNH基を表し、R
13は、ヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。
【0079】
α−アミノ酸としては、ヒスチジン(His) 、リシン(Lys) 、アルギニン(Arg) 、アスパンギン酸(Asp) 、グルタミン酸(Glu) 、アスパラギン(Asn) 、グルタミン(Gln) 、セリン(Ser) 、トレオニン(Thr) 、フェニルアラニン(Phe) 、チロシン(Tyr) 、トリプトファン(Trp) 、メチオニン(Met) 、システイン(Cys) 、アラニン(Ala) 、ロイシン(Leu) 、イソロイシン(Ile) 、バリン(Val) 、プロリン(Pro) 等が挙げられる。L型、D型のいずれであってもよいが、天然のアミノ酸はL型である。
【0080】
従って、R
11は、上記アミノ酸の側鎖基となる。例えば、
バリン(Val) の場合、R
11は−CH(CH
3 )
2 であり、
イソロイシン(Ile) の場合、R
11は−CH(CH
3 )CH
2 CH
3 であり、
フェニルアラニン(Phe)
2 の場合、R
11は−CH
2 Phであり、
リシン(Lys) の場合、R
11は−(CH
2 )
4 NH
2 である。末端アミノ基が修飾されていてもよい。
【0081】
Xは単結合、O原子又はNH基を表し、Xが単結合の場合には、R
12が直接的にカルボニル炭素に結合していることを表す。R
12は、ヘテロ原子(例えば、O、N、S)を有していてもよい有機基を表す。
【0082】
R
12が表す有機基としては、分岐及び/又は二重結合を有していてもよい鎖状炭化水素基が挙げられ、前記鎖状炭化水素基の炭素数1以上30以下、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数4以上25以下、より好ましくは炭素数6以上20以下である。
【0083】
また、R
12が表す有機基としては、炭化水素基にヘテロ原子を含む置換基が導入されているものも挙げられる。例えば、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル基が挙げられる。すなわち、R
12X−として、CH
2 =C(CH
3 )COO−CH
2 CH
2 −NH−、又はCH
2 =CHCOO−CH
2 CH
2 −NH−である。
また、ビニルオキシエチル基が挙げられる。すなわち、R
12X−として、CH
2 =CH−O−CH
2 CH
2 −NH−である。
さらに、グリシジルオキシエチル基、又はエポキシシクロヘキシルオキシエチル基が挙げられる。すなわち、R
12X−として、(C
2 H
3 O)CH
2 O−CH
2 CH
2 −NH−、又は(C
6 H
9 O)−O−CH
2 CH
2 −NH−である。
【0084】
低分子ゲル化剤(D)の添加量は後述するように0.5〜15質量%程度(好ましくは0.5〜5質量%程度)と少ないため、前記有機基R
12が、ラジカル反応性基及び/又はカチオン反応性基を有していても差し支えない。低分子ゲル化剤(D)の分子構造や添加量にもよるが、記録露光時のラジカル重合性モノマー(A)の拡散を実質的に阻害せずに、記録露光後に行われる後露光及び/又は加熱処理によって、ラジカル重合性モノマー(A)及び/又は反応性分散媒(B)の一部を低分子ゲル化剤(D)に結合させることができる。それにより、記録されたホログラムの安定性をさらに向上させる効果が期待できる。
【0085】
さらに、R
12同士が互いに連結されて2価の連結基(−R
12R
12−,又は−R
12L
1 R
12−)となり、アミノ酸由来構造[−NH−C(R
11)−CO−]がビス化されていてもよい。ここで、L
1 は2価の連結基であり、O原子、NH基、又はジメチルシリコーンセグメントなとが挙げられる。例えば、−R
12L
1 R
12−が、−(CH
2 )m−ジメチルシリコーンセグメント−(CH
2 )m−となるような場合である。m=2〜12程度。ジメチルシリコーンセグメントにおけるジメチルシリコーン単位の繰り返し数(後で示す化合物7、化合物8におけるn+2に相当する)は、例えば3〜30程度である。
【0086】
Yは、O原子又はNH基を表し、R
13は、ヘテロ原子(例えば、O、N、S)を有していてもよい有機基を表す。R
13が表す有機基としては、分岐及び/又は二重結合を有していてもよい鎖状炭化水素基が挙げられ、前記鎖状炭化水素基の炭素数1以上30以下、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数4以上25以下、より好ましくは炭素数6以上20以下である。
【0087】
さらに、R
13同士が互いに連結されて2価の連結基(−R
13R
13−,又は−R
13L
2 R
13−)となり、アミノ酸由来構造[−NH−C(R
11)−CO−]がビス化されていてもよい。ここで、L
2 は2価の連結基であり、O原子、NH基、又はジメチルシリコーンセグメントなとが挙げられる。例えば、−YR
13R
13Y−が、−NH(CH
2 )
12NH−となるような場合である。
【0088】
R
12及びR
13のうちの少なくとも一方は、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数4以上25以下、より好ましくは炭素数6以上20以下の、分岐及び/又は二重結合を有していてもよい鎖状炭化水素基であることが好ましい。
【0089】
より具体的には、低分子ゲル化剤(D)として、次の化合物1〜8を好適に用いることができる。
【0098】
また、低分子ゲル化剤(D)としては、一般式(II)で表される環状ジペプチド化合物を用いることができる。環状ジペプチド化合物は、同一又は異なる2つのアミノ酸から構成される。
【0100】
ここで、R
21及びR
22は、同一又は異なっていてもよく、アミノ酸の側鎖基を表し、ただし、前記側鎖基が修飾されていてもよい。α−アミノ酸としては、上述したものが挙げられる。環状ジペプチド化合物として、より具体的には以下のものが例示される。
【0101】
R21 R22
1 H CH
3
2 H (CH
3)
2CH
3 H (CH
3)
2CHCH
2
4 H C
6H
5CH
2
5 H C
6H
5
6 (CH
3)
2CH (CH
3)
2CH
7 (CH
3)
2CH (CH
3)
2CHCH
2
8 (CH
3)
2CHCH
2 (CH
3)
2CHCH
2
9 C
6H
5CH
2 (CH
3)
2CHCH
2
10 C6H5CH2 C6H5CH2
【0102】
R21 R22
11 H CH
3CH
2-OCOCH
2CH
2
12 (CH
3)
2CH CH
3CH
2-OCOCH
2CH
2
13 (CH
3)
2CH CH
3(CH
2)
10CH
2-OCOCH
2CH
2
14 (CH
3)
2CH CH
3(CH
2)
16CH
2-OCOCH
2CH
2
15 (CH
3)
2CH (CH
3)
2CHCH
2CH
2CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2-OCOCH
2CH
2
16 (CH
3)
2CH CH
3CH
2CH
2CH
2CH(CH
2CH
3)CH
2-OCOCH
2CH
2
17 (CH
3)
2CHCH
2 H-OCOCH
2CH
2
18 (CH
3)
2CHCH
2 CH
3CH
2-OCOCH
2CH
2
19 (CH
3)
2CHCH
2 CH
3(CH
2)
10CH
2-OCOCH
2CH
2
20 (CH
3)
2CHCH
2 (CH
3)
2CHCH
2CH
2CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2-OCOCH
2CH
2
21 (CH3)2CHCH2 C6H5CH2-OCOCH2CH2
【0103】
R21 R22
22 H-OCOCH
2 C
6H
5CH
2
23 CH
3(CH
2)
2CH
2-OCOCH
2 C
6H
5CH
2
24 CH
3(CH
2)
10CH
2-OCOCH
2 C
6H
5CH
2
25 (CH
3)
2CHCH
2CH
2CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2-OCOCH
2 C
6H
5CH
2
26 CH
3CH
2CH
2CH
2CH(CH
2CH
3)CH
2-OCOCH
2 C
6H
5CH
2
27 (CH
3)
3CCH
2CH(CH
3)CH
2CH
2-OCOCH
2 C
6H
5CH
2
28 CH3CH2CH(CH2CH3)CH2-OCOCH2 C6H5CH2
【0104】
低分子ゲル化剤(D)としては、一般式(I)のα−アミノ酸誘導体、及び一般式(II)の環状ジペプチド化合物の中から1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
さらに、低分子ゲル化剤(D)として、上述したものの他に、例えば、
非特許文献1:Kenji Hanabusa et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., pp390-392 (1993)
非特許文献2:Kenji Hanabusa et al., Chemistry Letters, pp885-886 (1996)
非特許文献3:Kenji Hanabusa et al., J. Colloid and Interface Sci., 224, pp231-244 (2000)
に記述されている化合物、特開2004−262856号公報に記述されている化合物を用いることができる。また、上述したものの合成は公知の方法により行うことができるが、これらの文献を参照してもよい。
【0106】
さらに、特開2007−191626号公報、特開2007−191627号公報、特開2007−191661号公報、特開2010−280799号公報にそれぞれ記載されているペルフルオロアルキル基含有芳香族化合物も本発明の低分子ゲル化剤として用いてもよい。
【0107】
前記低分子ゲル化剤(D)によってホログラム記録材料組成物はゲル化させられ、バルクでの流動性が抑えられた記録層が得られる。低分子ゲル化剤(D)の添加量は後述するように0.5〜15質量%程度(好ましくは0.5〜5質量%程度)と希薄であり、それによって形成される3次元骨格は数100nmの空隙を有する極めて疎な網目構造となる。そして、網目構造の空隙には、ラジカル重合性モノマー(A)、室温で液状の反応性分散媒(B)及び光ラジカル重合開始剤(C)、さらに、反応性分散媒(B)がカチオン重合性化合物の場合にはカチオン重合触媒(E)が存在している。このようにして、記録層は、記録露光時において、反応性分散剤によって干渉縞明暗のピッチ(数100nm)オーダーではラジカル重合性モノマーの高い移動度を維持しつつ、且つ、低分子ゲル化剤によって膜の剛性や安定性が高く、記録前及び記録後において記録媒体端部から材料漏出の恐れがない。
【0108】
ホログラム記録材料組成物はさらに、バインダーポリマーを含んでいてもよい。バインダーポリマーは、ホログラム記録材料層においてマトリクスとしての機能を有する。ただし、本発明においては、低分子ゲル化剤によって膜の剛性や安定性が高いので、バインダーポリマーは任意成分である。
【0109】
バインダーポリマーとしては、前記の各成分と相溶性がよく有機溶剤に可溶なポリマーを用いる。ここでのポリマーとは、オリゴマー(低重合度で分子量の小さい高分子)をも含む概念である。
【0110】
バインダーポリマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体、又は該モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、ジオールとジカルボン酸との縮合重合体、ヒドロキシカルボン酸の重合体、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0111】
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のエステル、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等、種々のものが挙げられる。
【0112】
バインダーポリマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
上記バインダーポリマーの屈折率は、例えば1.58以下が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上のバインダーポリマーを併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。
【0114】
本発明のホログラム記録材料組成物における各成分の配合重量の上限値及び/又は下限値については、
前記ラジカル重合性モノマー(A)10〜70重量部、
前記反応性分散媒(B)25〜80重量部、
前記光ラジカル重合開始剤(C)0.1〜20重量部、
前記低分子ゲル化剤(D)1〜15重量部、
とすることが好ましく、
前記ラジカル重合性モノマー(A)20〜60重量部、
前記反応性分散媒(B)25〜60重量部、
前記光ラジカル重合開始剤(C)0.1〜10重量部、
前記低分子ゲル化剤(D)1〜10重量部、
とすることがより好ましい。
【0115】
前記ラジカル重合性モノマー(A)の含有量は、上記範囲内において、組成物の不揮発分を基準として、例えば5重量%以上80重量%以下、好ましくは10重量%以上70重量%以下になるようにするとよい。このようなラジカル重合性モノマー(A)の含有量とすることにより、高い屈折率変調度を得ることができる。ラジカル重合性モノマー(A)の含有量が、5重量%未満では、屈折率変調度の観点から好ましくない。一方、80重量%を超えると、相対的に反応性分散媒(B)の量が少なくなるので、記録の際にラジカル重合性モノマー(A)の移動度が低下する可能性がある。
【0116】
前記反応性分散媒(B)の量は、記録露光時のラジカル重合性モノマー(A)の拡散移動を十分に行わせるのに必要な量である。前記分散媒(B)の量が25重量部未満であると、ラジカル重合性モノマー(A)の拡散促進効果が弱くなる傾向にある。一方、前記分散媒(B)を80重量部を超えて用いると、ラジカル重合性モノマー(A)の量が減ってしまうので屈折率変調度の観点から好ましくない。
【0117】
光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、上記範囲内において、組成物の不揮発分を基準として、例えば0.1〜20重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%程度になるようにするとよい。
【0118】
低分子ゲル化剤(D)の添加量は、上記範囲内において、組成物の不揮発分を基準として、例えば0.5〜15質量%程度、好ましくは0.5〜5重量%程度になるようにするとよい。
【0119】
カチオン重合性化合物(Bc)及びカチオン重合触媒(E)を用いる場合には、各成分の配合重量の上限値及び/又は下限値については、
前記ラジカル重合性モノマー(A)10〜70重量部、
前記反応性分散媒(B)25〜80重量部、
前記光ラジカル重合開始剤(C)0.1〜20重量部、
前記低分子ゲル化剤(D)1〜15重量部、
前記カチオン重合触媒(E)0.1〜10重量部、
とすることが好ましく、
前記ラジカル重合性モノマー(A)20〜60重量部、
前記反応性分散媒(B)25〜60重量部、
前記光ラジカル重合開始剤(C)0.1〜10重量部、
前記低分子ゲル化剤(D)1〜10重量部、
前記カチオン重合触媒(E)0.1〜5重量部、
とすることがより好ましい。
【0120】
また、前記反応性分散媒(B)に追加して補助的に非反応性分散剤を用いる場合には、前記非反応性分散剤の添加量は、前記反応性分散剤(B)及び前記非反応性分散剤の合計量を基準として、80重量%までの量、例えば5〜80重量%の量、好ましくは10〜70重量%の量とするとよい。前記非反応性分散剤の添加量が80重量%よりも多くなると、前記反応性分散剤の量が少なくなるので、前記反応性分散剤による効果、特にポストキュアによる記録層への固定及び記録層の経時安定性効果が得られにくくなる。一方、前記非反応性分散剤の添加量が5重量%以上とすることにより、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)のより高い拡散移動促進が得られ、より高い回折効率が達成される。
【0121】
また、バインダーポリマーを用いる場合には、上述の配合重量において、例えば3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部程度とするとよい。
【0122】
本発明のホログラム記録材料組成物は、希釈溶剤(F)を用いて各成分を混合して、均一な組成物として得ることができる。混合方法は、公知の各種方法によればよい。
【0123】
希釈溶剤(F)としては、用いる低分子ゲル化剤(D)やその他の各成分を溶解しやすい各種の有機溶剤を用いることができる。例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール溶剤、プロピレンカーボネートなどのカーボネート溶剤、トルヘン、キシレン、アニソールなどの芳香族溶剤が挙げられる。
【0124】
希釈溶剤(F)は、低分子ゲル化剤(D)やその他の各成分を溶解させ得る程度の量を用いればよいが、組成物液の塗布性や、塗布後のゲル化工程等を考慮して適宜決定するとよい。通常、組成物の不揮発成分の合計量100重量部に対して、10〜500重量部程度を用いるとよい。
【0125】
ホログラム記録媒体の製造において、各成分を含むホログラム記録材料組成物液(前駆体)を、ゲル化温度を超える温度に加熱して基材上に塗布し、次いでゲル化温度以下の温度に冷却し、その後に前記希釈溶剤を揮発させてホログラム記録層を形成する。
【0126】
基材は、例えば、透明ガラス基材や、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂製透明基材を用いる。ゲル化温度とは、基材上に塗布され膜状となった組成物全体が、冷却により流動性のないゲルに変化する温度である。ゲル化温度は、例えば30〜120℃であり、好ましくは40〜80℃である。ゲル化温度が30℃未満であると、媒体の取扱い環境によっては、ゲル化温度を下回り、ゾル状態に変化してしまう。ゲル化温度が120℃を超えると、組成物液(前駆体)を基材上に塗布するに際して、組成物液の温度によって樹脂製透明基材の変形や収縮が顕著になる場合があり、好ましくない。
【0127】
ゲル化温度を超える温度に加熱された組成物液は均一な溶液状態となっている。この組成物液を基材上に塗布し、次いでゲル化温度以下の温度に冷却する。膜状の組成物全体がゲル化する。ゲル化の後に、ゲル化温度以下の温度において前記希釈溶剤を揮発させる。揮発は、例えば遠赤外線オーブン、減圧乾燥などによって行う。このようにして、ホログラム記録層を形成する。さらに、再度、組成物をゲル化温度を超える温度に加熱して流動化させ、より均質なホログラム記録層としてもよい。
【0128】
あるいはホログラム記録媒体の製造において、各成分を含むホログラム記録材料組成物液(前駆体)を、ゲル化温度を超える温度に加熱して基材上に塗布し、次いでゲル化温度を超える温度で前記希釈溶剤を乾燥させ、その後にゲル化温度以下の温度に冷却してホログラム記録層を形成する。
【0129】
ゲル化温度を超える温度に加熱された組成物液は均一な溶液状態となっている。この組成物液を基材上に塗布し、次いでゲル化温度を超える温度で前記希釈溶剤を乾燥させる。乾燥温度は、ゲル化温度を超える温度であればよく、用いた希釈溶剤の沸点や揮発性を考慮して適宜決定する。乾燥の後に、ゲル化温度以下の温度に冷却する。膜状の組成物全体がゲル化する。このようにして、ホログラム記録層を形成する。
【0130】
本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成されたホログラム記録材料層とを有している。ホログラム記録材料層の上に、さらに基材を被せて2〜3層構成とすることもできる。また、ホログラム記録材料層の厚さは、限定されるものではなく、記録媒体の設計上から適宜決定するとよく、例えば5〜500μm程度とするとよい。
【0131】
ホログラム記録媒体の記録材料層に干渉性のある光を照射すると、露光部(明部)では光重合開始剤が開裂し、それをトリガーとして、近傍に存在する光ラジカル重合性化合物(モノマー)が重合反応を起こしポリマー化する。これに伴い、明部では未反応モノマーの濃度が減少し、非露光部(暗部)との間にモノマーの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配を補償するため、暗部から明部に未反応モノマーが拡散移動し、明部でさらにモノマーの重合反応が進行する。結果として、明部では光重合性モノマーの重合体が多く存在するようになる。このとき、光重合性モノマー(及びその重合体)と他の成分との間で屈折率差があれば、光の明暗に応じたパターンが屈折率変調(Δn)として記録される。
【0132】
本発明のホログラム記録材料組成物は、上述したように、反応性分散剤及び低分子ゲル化剤を含んでいる。このため、記録露光時において微視的な領域でのラジカル重合性モノマーの高い移動度が得られ、高い回折効率が達成される。そして、記録後において記録層の高い剛性が得られ、優れた経時安定性が得られる。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0134】
[実施例1]
(ホログラム記録媒体サンプルの作製)
以下の手順に従って、表1に示す配合組成の記録材料組成物溶液を調製した。
反応性可塑剤としてビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン6.0gと非反応性可塑剤としてアジピン酸ジエチル1.0gとを混合し、さらに下記の構造を有する低分子ゲル化剤(化合物1)0.2gを加えた。混合物を110℃で10分間加熱し、低分子ゲル化剤を溶解させた後、室温まで冷却し、透明ゲルを得た。この透明ゲルに、ラジカル重合性モノマーとして9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村工業(株)製、NKエステル A−BPEF)5.0g、光ラジカル重合開始剤(チッソ(株)製、BT−2、3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンほか位置異性体混合物の40wt%アニソール溶液)1.5g、及び光カチオン重合触媒としてトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(シグマ・アルドリッチ社製、50wt%プロピレンカーボネート溶液)0.6gを加えた。さらに、30mgの増感色素(3−ブチル−2−[3−(3−ブチル−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−2(3H)−イリデン) プロパ−1−エン−1−イル]−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−1−イウム=ヘキサフルオロ−λ5−ホスファヌイド,下記の化学式)を5.0gのアセトンに溶解させた溶液を添加した。
【0135】
【化15】
【0136】
【化16】
【0137】
次いで、得られた材料混合物を90℃で加熱溶解し、その温度を保ちながら、90℃に加熱されたホットプレート上に載置された厚み75μmのPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布した。塗布層が形成されたPETフィルムを室温(25℃)まで放冷して、続いて、25℃で24時間減圧乾燥し、記録材料層を得た。その後、厚み1.0mm、5.0cm×5.0cmのスライドガラスに、PETフィルムを記録材料層がガラス面に接するように貼り付けた。このようにして、ホログラム記録媒体サンプルを得た。記録材料層の厚みは25μmであった。
【0138】
(特性評価)
実施例1のホログラム記録媒体サンプルについて、
図1に示すようなホログラム記録光学系において、特性評価を行った。
図1の紙面の方向を便宜的に水平方向とする。
【0139】
図1において、ホログラム記録媒体サンプル(1) は、記録材料層が水平方向と垂直となるようにセットされている。
【0140】
図1のホログラム記録光学系において、記録用の光源(11)としてNd:YAGレーザ(波長532nm)を用い、この光源(11)から発振した光を、シャッター(12)、凸レンズ(13)、ピンホール(14)、及び凸レンズ(15)によって空間的にフィルタ処理及びコリメートし、ミラー(16)及び1/2波長板(17)を介してビームスプリッタ(18)で2つの光束に分割し、分割された各光束それぞれが、ミラー(19,20) 及びアパーチャ(21,22) を介して、ホログラム記録媒体サンプル(1) の記録材料層に対して垂直に対向して入射するように調整した。
【0141】
この光学系を用いて、ホログラム記録媒体サンプル(1) に対して反射型ホログラムを記録した。記録条件は、光強度30mW/cm
2 で露光時間5秒(150mJ/cm
2 )とした。その後、記録媒体サンプル(1) を蛍光灯(27W)下(サンプル(1) までの距離30cm)に6時間放置し、未反応成分を反応させるとともに、増感色素に由来する着色を完全に消失させた(ポストキュアと呼ぶ)。
【0142】
ポストキュア後の記録媒体サンプルを、分光光度計(日本分光(株)製V−660)にセットし、透過スペクトルを測定し、そのピーク強度及びピーク波長から反射型ホログラムの初期における回折効率を求めた。
【0143】
次いで、ポストキュア後の記録媒体サンプルを、80℃のオーブン内に24時間放置し、その後取り出した。この記録媒体サンプルについて、上記と同様にして回折効率を求めた。これを80℃/24時間加熱試験後の回折効率とする。
【0144】
回折効率は、分光光度計の処理ソフト上で求めたピーク波長及びそのピークにおける透過率Tp (%)、及びベースライン透過率T0 (%)から、以下の式により算出した。
回折効率(%)=[(T0 −Tp )/T0 ]×100
【0145】
実施例1のホログラム記録媒体サンプルの回折効率は90%(初期)、91%(加熱試験後)であり、いずれも良好であった。
【0146】
[実施例2〜5、比較例1〜3]
(実施例3は本発明の範囲外)
表1に示すような化合物及び配合組成とした以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録媒体サンプルをそれぞれ作製し、その特性評価を行った。比較のため、ゲル化剤を用いない場合(比較例1)であっても、実施例1と同様の加熱工程を行った。結果を表1〜2に示す。
【0147】
実施例4では、低分子ゲル化剤として下記の構造を有する化合物6を用いた。
【0148】
【化17】
【0149】
実施例5では、低分子ゲル化剤として下記の構造を有する化合物7を用いた。
【0150】
【化18】
【0151】
なお、表1〜2において、各成分の配合量(g)は、不揮発分としての量を表示している。例えば、実施例1において用いられた光ラジカル重合開始剤BT−2(40wt%アニソール溶液)1.5gは、不揮発分の量0.6gに相当する。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
実施例1〜5のホログラム記録媒体サンプルでは、反応性分散媒及び低分子ゲル化剤を用いたので、記録時にラジカル重合性モノマーの拡散が得られ、高い回折効率が得られた。それと共に、加熱試験後においても、高い回折効率が維持されていた。実施例1、2、4、5と、実施例3とを比較すると、反応性分散媒としてはカチオン重合性化合物が好ましい。