(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信電極および前記受信電極は、前記実装用基板の実装面の端縁近傍に設けられており、前記接地電極は、上面視において前記端縁および前記送信電極の間に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の回路モジュール。
前記接地電極は、前記実装用基板に複数層に渡って設けられており、前記各接地電極が前記ビア導体で接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回路モジュール。
前記接地電極は、上面視において前記分波器の外側に延出して設けられた第1の延出部を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の回路モジュール。
前記接地電極は、前記第1の延出部の端部から前記送信電極および前記受信電極の少なくとも一方の方向にさら延出して設けられた第2の延出部をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の回路モジュール。
【背景技術】
【0002】
近年、GSM(Global System for Mobile Communications)規格やCDMA(Code Division Multiple Access)規格などの複数の通信規格による通信をサポートする携帯電話や携帯情報端末などの通信携帯端末が急速に普及しており、これらの通信携帯端末では、共通のアンテナを用いて異なる周波数帯域の信号の送受信が行われる。したがって、周波数の異なる送信信号および受信信号を分波する分波器(デュプレクサ)を備えるアンテナスイッチなどのフロントエンドモジュール(回路モジュール)の更なる高性能化および小型化の要求が高まっている。
【0003】
例えば、
図7に示すように、信号の通過帯域が異なる第1および第2のフィルタ部503,505が、各フィルタ部503,505の特性が劣化しないように近接配置されることにより小型化および高性能化が図られた分波器500が、回路モジュールが備える実装用基板に搭載されることで、回路モジュールの小型化および高性能化が図られている。
図7に示す従来の分波器500は、プリント基板、LTCC基板、アルミナ系基板、ガラス基板、複合材料基板など、樹脂やセラミック、ポリマー材料から成るベース基板501の実装面に、SAW(表面弾性派)フィルタ素子502を含む第1のフィルタ部503と、SAWフィルタ素子504を含む第2のフィルタ部505とを有し、第1および第2のフィルタ部503,505には、それぞれ、SAWフィルタ素子502,504の電気的特性を補完する周辺回路素子として、チップインダクタ506およびチップコンデンサ507などの受動素子が設けられている。
【0004】
そして、インダクタ素子相互の電磁的な干渉を抑制し、各フィルタ部503,505間での信号の干渉を防止するために、第1のフィルタ部503と第2のフィルタ部505との境界部508に配置されて隣り合うチップインダクタ506は、磁束の向きが互いにほぼ直交するようにベース基板501上に配置されている。このように構成すれば、各フィルタ部503,505が近接配置されても、第1および第2のフィルタ部503,505間での信号の干渉が防止され、各フィルタ部503,505の特性変化が低減される。
【0005】
このように小型化および高性能化が図られた従来の分波器500が実装用基板に搭載されて、分波器500の第1および第2のフィルタ部503,505が、それぞれ送信フィルタおよび受信フィルタとして利用されることで、アンテナスイッチなどの回路モジュールが形成される。
【0006】
また、分波器500は、実装用基板側から送信信号を送信フィルタに入力するための送信端子と、受信フィルタから実装用基板側に受信信号を出力するための受信端子と、送信フィルタの出力側および受信フィルタの入力側に接続されるアンテナ端子(共通端子)と、接地端子とを有しており、実装用基板には、分波器500の送信端子および受信端子にそれぞれ接続される送信電極および受信電極が設けられている。そして、実装用基板の送信電極から分波器500が備える送信フィルタに送信端子を介して送信信号が出力され、送信フィルタに入力された送信信号は、所定のフィルタ処理が施されて分波器500のアンテナ端子から出力される。また、アンテナ端子から分波器500が備える受信フィルタに受信信号が入力され、受信フィルタに入力された受信信号は、所定のフィルタ処理が施されて分波器500の受信端子から受信電極を介して実装用基板側に出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、送信フィルタに送信信号を入力するために、実装用基板の送信電極から分波器500の送信端子に出力された送信信号が、実装用基板に設けられた受信信号入力用の受信電極側に漏洩し、アンテナ端子から入力されて受信フィルタを介して受信端子から実装用基板の受信電極に出力される受信信号に干渉するおそれがある。したがって、一般的に、実装用基板の送信電極から分波器500の送信端子に出力された送信信号が、アンテナ端子から入力されて受信フィルタを介して分波器500の受信端子から実装用基板の受信電極に出力される受信信号に干渉するのを防止するため、実装用基板には、送信電極と受信電極との間に、分波器500の接地端子と接続される接地電極が設けられている。
【0009】
ところが、近年、通信携帯端末の小型化が急速に進み、通信携帯端末に搭載される回路モジュールおよび回路モジュールに搭載される分波器500の更なる小型化が要求されている。しかしながら、分波器500をさらに小型化すると、分波器500に設けられる、送信フィルタへの入力用の送信端子と、受信フィルタからの出力用の受信端子との間隔が非常に狭くなるため、分波器500が搭載される実装用基板に設けられる送信電極と受信電極との間に、分波器500の接地端子と接続される接地電極が設けられても、実装用基板の送信電極から分波器500の送信端子に出力された送信信号が接地電極に漏洩し、接地電極に漏洩した送信信号が接地電極の縁部を伝って受信電極側に回り込んで、受信フィルタを介して分波器500の受信端子から実装用基板の受信電極に出力される受信信号に干渉するおそれがあり、分波器500の小型化の妨げとなっていた。
【0010】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、分波器が搭載される実装用基板に設けられた送信電極および受信電極間のアイソレーション特性の向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の回路モジュールは、通過帯域が異なる送信フィルタおよび受信フィルタを有する分波器
を備える回路モジュールにおいて、前
記分波器が実装される実装用基板を備え、前
記分波
器は、前記送信フィルタへの入力用の送信端子と、前記受信フィルタからの出力用の受信端子と、前記送信フィルタの出力側および前記受信フィルタの入力側に接続される共通端子と、接地端子とを有し、前記実装用基板の実装面には
、前記送信端子と接続される送信電極と、前記受信端子と接続される受信電極と、前記共通端子と接続される共通電極
と、前
記接地端子と接続される1個の接地電極
とが設けられており
、前記接地電極は、上面視において
、前記送信電極と前記受信電極との間と、前記受信電極と前記共通電極との間と、前記共通電極と前記送信電極との間に配置され、
前記接地電極には、上面視において前記接地電極の前
記送信電
極に近接する縁部に沿って複数のビア導体が配列されて接続され、前
記送信電極、前
記受信電極および前
記共通電極は、それぞれ、前記実装面に矩形のランド状に形成され
、前記接地電極は、上面視において
、前記送信電極および前記受信電極それぞれ
の3辺を囲んで設けられ、前記共通電極の4辺を囲んで設けられており、前記共通電極を囲む部分の縁部に沿って前記複数のビア導体が配列されて接続されていることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
また、前前記接地電極には、上面視において当該接地電極の前記送信電極に近接する縁部から前記受信電極に近接する縁部まで、当該接地電極の縁部に沿って前記複数のビア導体が
配列されて接続されるのが望ましい(請求項2)。このような構成にすることにより、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部に沿って接続された複数のビア導体により効率よく流れ込むため、接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側への回り込むのがより効率よく防止されるので、分波器が搭載される実装用基板に設けられた送信電極および受信電極間のアイソレーション特性をさらに向上することができる。
また、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号は、送信電極の少なくとも3辺を囲む当該接地電極の縁部に沿って接続されたビア導体に効率よく流れ込むと共に、上面視において当該接地電極の送信電極に近接する縁部から受信電極に近接する縁部までの、当該接地電極の縁部に沿った距離が長くなるので、接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むのを確実に防止することができる。
【0013】
また、前記送信電極および前記受信電極は、前記実装用基板の実装面の端縁近傍に設けられており、前記接地電極は、上面視において前記端縁および前記送信電極の間に設けられているとよい(請求項3)。このような構成にすることにより、分波器が実装用基板の端に詰めて配置されて回路モジュールの小型化が図ることができる。また、接地電極が、上面視において実装用基板の端縁および送信電極の間に設けられているため、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号は、実装用基板の端縁と送信電極との間に設けられた接地電極の縁部に沿って接続された複数のビア導体に流れ込み、接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むのが防止されるので、実装用基板に設けられた送信電極および受信電極間のアイソレーション特性の向上を図ることもできる。
【0014】
また、前記接地電極は、前記実装用基板に複数層に渡って設けられており、前記各接地電極が前記ビア導体で接続されているとよい(請求項4)。このような構成にすることにより、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部に沿って接続された複数のビア導体にさらに効率よく流れ込むので、接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むことをさらに効率よく防止されるため、分波器が搭載される実装用基板に設けられた送信電極および受信電極間のアイソレーション特性をより一層向上することができる。
【0015】
また、前記接地電極は、上面視において前記分波器の外側に延出して設けられた第1の延出部を備えているのが望ましい(請求項5)。このような構成にすることにより、上面視において当該接地電極の送信電極に近接する縁部から受信電極に近接する縁部までの、当該接地電極の縁部に沿った距離が長くなるので、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むのを確実に防止することができる。
【0016】
また、前記接地電極は、前記第1の延出部の端部から前記送信電極および前記受信電極の少なくとも一方の方向にさら延出して設けられた第2の延出部をさらに備えているとよい(請求項6)。このような構造にすることにより、上面視において当該接地電極の送信電極に近接する縁部から受信電極に近接する縁部までの、当該接地電極の縁部に沿った距離がさらに長くなるので、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むのをさらに確実に防止することができる。
【0017】
また、前記接地電極は、上面視において少なくとも前記送信電極を囲む形状に形成されているとよい(請求項7)。このような構造にすることにより、当該接地電極の送信電極を囲む縁部と当該接地電極の受信電極に近接する縁部とが連続していないため、接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むのを確実に防止することができる。
【0018】
また、前記
複数のビア導体それぞれは、前記接地電極の縁部にのみ接続されていてもよい(請求項8)
。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実装用基板の送信電極から分波器の送信端子に出力された送信信号が接地電極に漏洩しても、接地電極に漏洩した送信信号は、当該接地電極の送信電極に近接する縁部に沿って接続されたビア導体に流れ込むため、送信電極から出力されて接地電極に漏洩した送信信号が、当該接地電極の縁部を伝って受信電極側へ回り込むのが防止されるので、分波器が搭載される実装用基板に設けられた送信電極および受信電極間のアイソレーション特性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
本発明の分波器(デュプレクサ)を備える回路モジュールの第1実施形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は本発明の回路モジュールの第1実施形態を示す図である。
図2は
図1の回路モジュールの内部構成を示すブロック図である。
図3は実装用基板の電極形状の一例を示す平面図である。
【0023】
(回路モジュール)
図1に示す回路モジュール1は、携帯電話や携帯情報端末などの通信携帯端末が備えるマザー基板MBに搭載されるものであり、この実施形態では、実装用基板2と、分波器10と、スイッチICやフィルタ、抵抗、コンデンサ、コイルなどの各種の部品3とを備え、高周波アンテナスイッチモジュールとして形成されている。また、分波器10および部品3は、実装用基板2の実装面2aに設けられた電極に実装されて、実装用基板2に設けられた内部配線パターン5を介して実装用基板2の裏面に形成された複数の実装用電極6に電気的に接続される。そして、回路モジュール1がマザー基板MBに実装されることにより、マザー基板MBが備えるアンテナラインANTやグランドラインGND、送信信号ラインTx、受信信号ラインRxなどの各種信号ラインおよび電源ラインと回路モジュール1とが接続されて、マザー基板MBと回路モジュール1との間で送受信信号の入出力が行われる。
【0024】
実装用基板2は、この実施形態では、セラミックグリーンシートにより形成された複数の誘電体層が積層されて焼成されることで一体的にセラミック積層体として形成されており、各誘電体層に、ビア導体および電極パターンが適宜形成されることで内部配線パターン5が形成されている。
【0025】
すなわち、各誘電体層を形成するセラミックグリーンシートは、アルミナおよびガラスなどの混合粉末が有機バインダおよび溶剤などと一緒に混合されたスラリーが成膜装置によりシート化されたものであり、約1000℃前後の低い温度で、所謂、低温焼成できるように形成されている。そして、所定形状に切り取られたセラミックグリーンシートに、レーザー加工などによりビアホールが形成され、形成されたビアホールにAgやCuなどを含む導体ペーストが充填されたり、ビアフィルめっきが施されることにより層間接続用のビア導体が形成され、導体ペーストによる印刷により種々の電極パターンが形成されて、各誘電体層が形成される。
【0026】
なお、内部配線パターン5は、回路モジュール1に実装される分波器10および各種部品3と、実装用電極6とを相互に電気的に接続するための電極パターンおよびビア導体が、各誘電体層に設けられることで形成される。このとき、内部配線パターン5を形成する電極パターンおよびビア導体によりコンデンサやコイルなどの回路素子を形成したり、電極パターンおよびビア導体によるコンデンサやコイルなどの回路素子によりフィルタ回路や整合回路などを形成してもよい。
【0027】
(分波器)
分波器10は、周波数の異なる送信信号と受信信号とを分離するために用いられるものであり、
図2に示すように、分波器10は、高周波信号の通過帯域が異なる送信フィルタ11および受信フィルタ12を備えている。送信フィルタ11および受信フィルタ12は、それぞれSAW(表面弾性波)フィルタ素子により形成されており、この実施形態では、平衡出力型の受信フィルタ12が設けられている。なお、送信フィルタ11および受信フィルタ12としては、誘電体フィルタやBAWフィルタ素子など、所定帯域の信号を通過させる機能を有する素子であれば何でも構わない。
【0028】
また、分波器10は、送信フィルタ11への入力用の送信端子13と、受信フィルタ12からの出力用の受信端子14と、送信フィルタ12の出力側および受信フィルタ12の入力側に接続される共通端子15(アンテナ端子)と、接地端子16とを有し、実装用基板2に設けられた送信電極21、受信電極22、共通電極23および接地電極24とそれぞれ接続される。
【0029】
なお、この実施形態では、分波器10が備える送信フィルタ11および受信フィルタ12はSAWフィルタ素子により形成されているが、SAWフィルタ素子の他に、複数の共振器およびコイルなどが接続されて送信フィルタ11および受信フィルタ12が形成されていてもよく、周波数の異なる送信信号と受信信号とを確実に分波することができれば、送信フィルタ11および受信フィルタ12は、誘電体フィルタやBAWフィルタ素子など、どのようなものであってもよい。また、分波器10は、送信フィルタ11および受信フィルタ12を備える一般的なものを採用すればよく、その構成および動作は周知のものであるため、分波器10の構成および動作の詳細な説明は省略する。
【0030】
(実装用基板の電極形状)
次に、
図3を参照して、実装用基板2に設けられた送信電極21、受信電極22、共通電極23および接地電極24の電極形状の一例について説明する。
【0031】
図3に示すように、この実施形態では、実装用基板2を形成する複数の誘電体層の最上層の実装面2aに、送信電極21と、受信電極22と、共通電極23とが、矩形のランド状に設けられている。また、接地電極24は、実装面2aが設けられた誘電体層の1つ下層の誘電体層の表面に設けられており、接地電極24は、上面視において送信電極21および受信電極22の間に配置されている。
【0032】
また、この実施形態では、送信電極21および受信電極22は、実装用基板2の実装面2aの端縁2b近傍に設けられており、接地電極24は、端縁2b側の端部が該端縁2bに沿って両側に延出されて上面視において略T字状に形成されることにより、端縁2bと、送信電極21および受信電極22との間にも配置されている。また、接地電極24は、上面視において送信電極21、受信電極22および共通電極23それぞれの3辺を囲んで設けられている。すなわち、この実施形態では、接地電極24は、矩形の3辺にそれぞれ矩形状の切欠きが設けられた形状を成し、送信電極21、受信電極22および共通電極23は、上面視において、接地電極24に設けられた3つの矩形状の切欠きにそれぞれ配置されている。
【0033】
また、接地電極24は、内部配線パターン5の複数のビア導体25が接続されることにより、マザー基板MBのグランドラインGNDと接続される実装用電極6と接続される。この実施形態では、特に、上面視において、接地電極24の送信電極21に近接する縁部に沿って複数のビア導体25が接続されている。また、この実施形態では、上面視において、接地電極24の送信電極21に近接する縁部から受信電極22に近接する縁部まで、接地電極24の縁部に沿って複数のビア導体25が接続されている。
【0034】
なお、
図3では、説明が容易となるように、送信電極21、受信電極22、共通電極23および接地電極24、並びに、接地電極24に接続されたビア導体25のみが図示されており、その他の電極およびビア導体25は図示省略されている。また、
図3では、実装用基板2の内部に設けられた接地電極24およびビア導体25も実線で示されており、同図中の点線は、分波器10の実装面2aへの実装位置を示す。また、分波器10の接地端子16は、実装面2aに設けられた実装用の電極と、この電極に接続されるビア導体とを介して接地電極24と接続される(図示省略)。なお、後の説明で用いられる
図4〜
図6においても
図3と同様に図示されているため、以下ではその説明は省略する。
【0035】
(製造方法)
次に、
図1の回路モジュール1の製造方法の一例についてその概略を説明する。
【0036】
まず、所定形状に形成されたセラミックグリーンシートに、レーザーなどでビアホールを形成し、内部に導体ペーストを充填したり、ビアフィルめっきを施すことにより層間接続用のビア導体25が形成され、送信電極21、受信電極22、共通電極23および接地電極24などの電極パターンが導体ペーストにより印刷されて、実装用基板2を構成する各誘電体層を形成するためのセラミックグリーンシートが準備される。なお、それぞれのセラミックグリーンシートには、一度に大量の実装用基板2を形成できるように、ビア導体25や、送信電極21、受信電極22、共通電極23および接地電極24などの電極パターンが複数設けられている。
【0037】
次に、各誘電体層が積層されて積層体が形成される。そして、焼成後に個々の実装用基板2に分割するための溝が、各実装用基板2の領域を囲むように形成される。続いて、積層体が低温焼成されることにより実装用基板2の集合体が形成される。
【0038】
次に、個々の実装用基板2に分割される前に、実装用基板2の集合体の実装面2aに分波器10および部品3が実装され、分波器10および部品3が実装された実装用基板2の集合体の実装面2aにモールド樹脂が充填されて、これが加熱硬化されることによりモールド層(図示省略)が各実装用基板2に設けられて回路モジュール1の集合体が形成される。そして、回路モジュール1の集合体は個々に分割されて、回路モジュール1が完成する。
【0039】
このように形成された回路モジュール1では、マザー基板MBの送信信号ラインTxから、実装用電極6および内部配線パターン5を介して分波器10の送信端子13に出力された送信信号は、送信フィルタ11に入力されて所定のフィルタ処理が施されて、共通端子15から実装用基板2側に出力され、内部配線パターン5(整合回路)および実装用電極6を介してマザー基板MBのアンテナラインANTに出力される。また、マザー基板MBのアンテナラインANTから、実装用電極6および内部配線パターン5(整合回路)を介して分波器10の共通端子15に入力された受信信号は、受信フィルタ12に入力されて所定のフィルタ処理が施されて、受信端子14から実装用基板2側に出力され、内部配線パターン5および実装用電極6を介してマザー基板MBの受信信号ラインRxに出力される。
【0040】
なお、内部配線パターン5が設けられた実装用基板2、分波器10、部品3およびモールド層を備える回路モジュール1は、上記した製造方法に限らず、周知の一般的な製造方法により形成すればよく、実装用基板2は、樹脂やセラミック、ポリマー材料などを用いた、プリント基板、LTCC、アルミナ系基板、ガラス基板、複合材料基板、単層基板、多層基板などで形成することができ、回路モジュール1の使用目的に応じて、適宜最適な材質を選択して実装用基板2を形成すればよい。
【0041】
また、この実施形態では、内部配線パターン5により整合回路を形成したが、実装用基板2の実装面2aに実装されるチップコイルなどの部品3により整合回路を形成してもよい。
【0042】
以上のように、この実施形態では、分波器10は、送信フィルタ11への入力用の送信端子13と、受信フィルタ12からの出力用の受信端子14と、接地端子16とを有し、分波器10が実装される実装用基板2には、分波器10の送信端子13と接続される送信電極21と、分波器10の受信端子14と接続される受信電極22と、上面視において送信電極21および受信電極22の間に配置されて、分波器10の接地端子16と接続される接地電極24とが設けられている。また、実装用基板2の接地電極24には、上面視において当該接地電極24の送信電極21に近接する縁部に沿って複数のビア導体25が接続されている。
【0043】
したがって、実装用基板2の送信電極21から分波器10の送信端子13に出力された送信信号が接地電極24に漏洩しても、接地電極24に漏洩した送信信号は、当該接地電極24の送信電極21に近接する縁部に沿って接続されてマザー基板MBのグランドラインGNDと接続されるビア導体25に流れ込むため、送信電極21から出力されて接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22側へ回り込むのが防止され、送信電極21および受信電極22が、地電極24を介して漏洩した送信信号により電気的に結合するのが防止されるので、分波器10が搭載される実装用基板2に設けられた送信電極21および受信電極22間のアイソレーション特性の向上を図ることができる。
【0044】
また、接地電極24には、上面視において当該接地電極24の送信電極21に近接する縁部から受信電極22に近接する縁部まで、当該接地電極の縁部に沿って複数のビア導体25が接続されているため、送信電極21から出力されて接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部に沿って接続された複数のビア導体25により効率よく流れ込むことにより、接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22側への回り込むのがより効率よく防止されるので、分波器10が搭載される実装用基板2に設けられた送信電極21および受信電極22間のアイソレーション特性をさらに向上することができる。
【0045】
また、送信電極21および受信電極22が、実装用基板2の実装面2aの端縁2b近傍に設けられることにより、分波器10が実装用基板2の端に詰めて配置されて回路モジュール1の小型化を図ることができる。しかも、接地電極24は、上面視において実装用基板2の端縁2bと、送信電極21および受信電極22との間にも設けられているため、送信電極21から出力されて接地電極24に漏洩した送信信号は、特に送信電極21側において、実装用基板2の端縁2bと送信電極21との間に設けられた接地電極24の縁部に沿って接続された複数のビア導体25に流れ込み、接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22側へ回り込むのが防止されるので、回路モジュール1の小型化を図ることにより、実装用基板2に設けられた送信電極21と受信電極22との間隔が狭くなっても、送信電極21および受信電極22間の高アイソレーション特性を維持することができる。
【0046】
また、送信電極21、受信電極22および共通電極23が、実装用基板2の実装面2aに矩形のランド状に設けられており、接地電極24は、上面視において送信電極21、受信電極22および共通電極23それぞれの少なくとも3辺を囲んで設けられているため、送信電極21から出力されて接地電極24に漏洩した送信信号は、送信電極21の少なくとも3辺を囲む当該接地電極24の縁部に沿って接続されたビア導体25に効率よく流れ込むと共に、上面視において当該接地電極24の送信電極21に近接する縁部から受信電極22に近接する縁部までの、当該接地電極24の縁部に沿った距離が長くなるので、接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極24側へ回り込むのを確実に防止することができる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、
図4を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図4は本発明の第2実施形態における実装用基板の電極形状の一例を示す平面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なる点は、
図4に示すように、接地電極24に、上面視において、分波器10の外側に延出して設けられた延出部24a(本発明の「第1の延出部」に相当)が送信電極21および受信電極22側に設けられている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0048】
このように構成すると、接地電極24は、上面視において分波器10の外側に延出して設けられた延出部24aを備えているため、当該接地電極24の送信電極21に近接する縁部から受信電極22に近接する縁部までの、当該接地電極24の縁部に沿った距離が長くなるので、送信電極21から出力されて接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22側へ回り込むのを防止することができる。
【0049】
なお、上面視において、接地電極24が、送信電極21または受信電極22の矩形の少なくとも2辺に近接配置されるように、接地電極24の延出部24aを、その端部から送信電極21および受信電極22の少なくとも一方の方向にさら延出してもよい(本発明の「第2の延出部」に相当)。このように構成すると、上面視において当該接地電極24の送信電極21に近接する縁部から受信電極22に近接する縁部までの、当該接地電極24の縁部に沿った距離がさらに長くなるので、送信電極21から出力されて接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22側へ回り込むのをより確実に防止することができる。
【0050】
<第3実施形態>
次に、
図5を参照して本発明の第3実施形態について説明する。
図5は本発明の第3実施形態における実装用基板の電極形状の一例を示す平面図である。この実施形態が上記した第1実施形態と異なる点は、
図5に示すように、実装用基板2の実装面2aに2つの分波器10,10aが実装されており、実装面2aに、分波器10aが実装される送信電極21a、受信電極22aおよび共通電極23aがさらに設けられて、接地電極24が、送信電極21,21aと受信電極22,22aとの間に配置されるように大面積に形成されている点である。その他の構成は上記した第1実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。
【0051】
このように構成すると、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
<第4実施形態>
次に、
図6を参照して本発明の第4実施形態について説明する。
図6は本発明の第4実施形態における実装用基板の電極形状の一例を示す平面図である。この実施形態が上記した第3実施形態と異なる点は、
図6に示すように、分波器10を実装するための送信電極21および受信電極22が、接地電極24の同図中の上下方向における中央側に配置され、共通電極23が接地電極24の上端側に配置されている点である。その他の構成は上記した第3実施形態と同様の構成であるため、同一符号を付すことによりその構成の説明は省略する。なお、
図6では、接地電極24の送信電極21,21aに近接する縁部に沿って接続されたビア導体25のみが図示され、その他のビア導体25は図示省略されている。
【0053】
このように構成すると、上面視において接地電極24の送信電極21,21aに近接する縁部から受信電極22,22aに近接する縁部までの、当該接地電極24の縁部に沿った距離が長くなり、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、接地電極24を、実装用基板2を構成する複数の誘電体層に渡って設け、各接地電極24を、複数のビア導体25で接続してもよい。
【0055】
このように構成すると、実装用基板2に複数層に渡って設けられた各接地電極24がビア導体25で接続されているため、送信電極21,21aから出力されて接地電極24に漏洩した送信信号は、上面視において、当該接地電極24の送信電極21,21aに近接する縁部に沿って接続された複数のビア導体25にさらに効率よく流れ込むので、接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22,22a側へ回り込むのをさらに効率よく防止でき、分波器10,10aが搭載される実装用基板に設けられた送信電極21,21aおよび受信電極22,22a間のアイソレーション特性をより一層向上することができる。
【0056】
なお、実装用基板2に複数層に渡って設けられた各接地電極24は、同一形状であってもよいが、少なくとも、上面視において、送信電極21,21aに近接する部分の形状を同一にすることにより、送信電極21,21aから出力されて接地電極24に漏洩した送信信号を、当該接地電極24の縁部に沿って接続された複数のビア導体25に効率よく誘導することができる。
【0057】
また、接地電極24を、上面視において少なくとも送信電極21,21aを囲む形状に形成してもよい。このように構成すると、送信電極21,21aから出力されて接地電極24に漏洩した送信信号は、当該接地電極24の送信電極21,21aを囲む縁部に沿って接続されたビア導体25に流れ込むと共に、当該接地電極24の送信電極21,21aを囲む縁部と当該接地電極24の受信電極22,22aに近接する縁部とが連続していないため、接地電極24に漏洩した送信信号が、当該接地電極24の縁部を伝って受信電極22,22a側へ回り込むのを確実に防止することができる。
【0058】
また、少なくとも、上面視において接地電極24の送信電極21,21aに近接する縁部に沿って複数のビア導体25が接続されていればよく、接地電極24を実装用基板2の実装面2aに設けてもよい。
【0059】
また、実装用基板2の実装面2aに設けられる、送信電極21,21a、受信電極22,22aおよび共通電極23a,23aの形状は矩形状に限られるものではなく、円形状など、分波器10,10aを実装することができれば、どのような形状であってもよく、接地電極24は、必ずしも、矩形状の送信電極21,21a、受信電極22,22aおよび共通電極23a,23aを、少なくとも3方向から囲むように形成しなくともよい。
【0060】
本発明は、通過帯域が異なる送信フィルタおよび受信フィルタを有する分波器を備える回路モジュールに本発明を広く適用することができる。