特許第5807792号(P5807792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5807792
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】回転電機の固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   H02K3/04 J
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-182717(P2013-182717)
(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公開番号】特開2015-50887(P2015-50887A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】関山 陽介
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−280121(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01708339(EP,A2)
【文献】 特開2002−335657(JP,A)
【文献】 特開2001−245454(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0040418(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01331718(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロット(310)が周方向に並んで形成された固定子鉄心(31)と、
前記固定子鉄心の各スロットに複数の巻線を巻回することにより構成され、前記巻線の端部を結線する際に形成される結線部(T)と、この結線部に対して径方向内側に這い回しコイル(H)によって形成される壁面(h)とを有する固定子巻線(32)と、
を備えることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
請求項1において、
前記壁面は、複数の結線部に対応して、周方向に連続する前記這い回しコイルによって形成されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記壁面を形成する前記這い回しコイルは、多角形断面を有し、径方向内側に平面を有することを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記壁面は、軸方向に沿って並べて配置された複数本の前記這い回しコイルによって形成されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、
前記壁面は、周方向に沿って並べて配置された複数本の前記這い回しコイルによって形成されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、
前記壁面の軸方向高さは、前記結線部の軸方向高さよりも高く設定されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記壁面は、回転子(2)の軸方向端面に取り付けられた冷却ファン(23)に対して、軸方向に沿って重複した位置に配置されていることを特徴とする回転電機の固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定子巻線として30度位相がずれた2つの三相巻線を有し、第1の三相巻線結線部と第2の三相巻線結線部が互いに重なり合わないように周方向にずらして配置するようにした車両用回転電機の固定子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この固定子では、それぞれの三相巻線において、Δ結線部が2つの出力引き出しコイルに周方向で挟まれるように配置することで、Δ結線する各相コイルを上記出力引き出しコイル間で這い回している。その結果、這い回しコイル長さを短くして結線を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−280121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1の固定子は、複数の結線部を有し、結線および出力取り出しの這い回しコイルをこれら複数の結線部との干渉を避けるように配置しているため、回転中心に対する這い回しコイルの径方向距離が一様とならず、結線部と這い回しコイルにより円滑な内周面にならない。したがって、結線部および這い回しコイルが、固定子の径方向内側に配置された回転子の冷却ファンによる風を受けた際に圧力変動が発生し、ファン騒音が増大するという問題があった。
【0005】
また、一般に、結線部は皮膜を剥離した後に電気接合される。接合後は絶縁のための樹脂が塗布されるが、上述の構造では結線部が径方向内側から見て直接見通せる位置にある。したがって、冷却ファンから径方向外側に吐出される粉塵や塩水等の電解液が結線部に到達しやすいため、結線部の耐環境性が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、ファン騒音を低減するとともに固定子巻線の結線部における耐環境性を向上させることができる回転電機の固定子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の回転電機の固定子は、固定子鉄心と固定子巻線とを備える。固定子鉄心は、複数のスロットが周方向に並んで形成されている。固定子巻線は、固定子鉄心の各スロットに複数の巻線を巻回することにより構成され、巻線の端部を結線する際に形成される結線部と、この結線部に対して径方向内側に這い回しコイルによって形成される壁面とを有する。
【0008】
結線部に対して径方向内側に這い回しコイルによる壁面を配置することにより、回転子の冷却ファンによって発生する風を受けた際の圧力変動を小さくすることができるため、回転時のファン騒音を低減することができる。また、冷却ファンの回転時に径方向外側に吐出される粉塵や塩水等の電解液から固定子巻線の結線部をこれらから保護することができ、結線部の耐環境性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の車両用交流発電機の断面図である。
図2】固定子巻線を構成するセグメント導体の斜視図である。
図3図2に示したセグメント導体の組み付け状態を示す斜視図である。
図4】フロント側コイルエンド部の接合端部を示す斜視図である。
図5】本実施形他の固定子巻線の説明図である。
図6】引出線や結線部となるセグメント導体の組み付け状態を示す斜視図である。
図7】複数の結線部の配置とその径方向内側に形成された這い回しコイルを示す図である。
図8】固定子巻線を内径側から見た部分的な側面図である。
図9】冷却ファンと壁面との位置関係を示す図である。
図10】セグメント導体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の回転電機の固定子を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、一実施形態の車両用交流発電機1は、回転子2、固定子3、フレーム4、整流器5、レギュレータ11等を含んで構成されている。この車両用交流発電機1は、エンジン(図示せず)から回転力を受けるプーリ20を有する。プーリ20は、シャフト6に回転子2とともに固定されている。回転子2は、一対のランデル型鉄心21と界磁巻線24とを有しており、エンジンによって回転駆動される。ランデル型鉄心21の軸方向端面には冷却ファン22、23が設けられている。冷却ファン22、23は、フレーム4の軸方向の開口部41から冷却風を内部に取り込み、取り込んだ冷却風を径方向の開口部42に向けて吹き出す。この冷却風により、固定子3の固定子巻線32や、固定子巻線32に接続されて固定子巻線32から出力される交流電流を整流する整流器5や出力電圧を調整するレギュレータ11等が冷却される。シャフト6は、フレーム4に回転自在に支持されており、反プーリ側の端部近傍にはスリップリングが設けられている。また、フレーム4には、回転子2の外周側に対向配置される固定子3が固定されている。
【0011】
次に、固定子3の詳細について説明する。固定子3は、電気導体としての複数のセグメント導体30(図2図3)によって構成される固定子巻線32と、この固定子巻線32が装備される複数のスロット310(図3)が形成されている固定子鉄心31と、固定子巻線32と固定子鉄心31とに挟まれた絶縁シート34とを有する。
【0012】
固定子鉄心31のスロット310に巻回された固定子巻線32は複数の電気導体により構成され、各スロット310には偶数本(本実施形態では4本)の電気導体が収容されている。これらの各電気導体は、矩形断面形状を有している。また、一のスロット310内の4本の電気導体は、図3に示すように固定子鉄心31の径方向に沿って内側から内端層、内中層、外中層、外端層の順で一列に配置されている。
【0013】
図2に示すように、一のスロット310内の内端層の電気導体331aは、固定子鉄心31の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット310内の外端層の電気導体331bと対をなしている。同様に、一のスロット310内の内中層の電気導体332aは固定子鉄心31の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット310内の外中層の電気導体332bと対をなしている。そして、これらの対をなす電気導体は、固定子鉄心31の軸方向の一方の端面側において連続線を用いることにより、ターン部331c、332cを経由することで接続される。
【0014】
したがって、固定子鉄心31の一方の端面側においては、外中層の電気導体332bと内中層の電気導体332aとをターン部332cを経由して接続する連続線を、外端層の電気導体331bと内端層の電気導体331aとをターン部331cを経由して接続する連続線が内包することとなる。このように、固定子鉄心31の一方の軸方向端面側においては、対をなす電気導体の接続部としてのターン部332cが、同じスロット310内に収容された他の対をなす電気導体の接続部としてのターン部331cにより囲まれる。外中層の電気導体332bと内中層の電気導体332aとの接続により中層コイルエンドが形成され、外端層の電気導体331bと内端層の電気導体331aとの接続により端層コイルエンドが形成される。
【0015】
一方、一のスロット310内の内中層の電気導体332aは、固定子鉄心31の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット310内の内端層の電気導体331a’とも対をなしている。同様に、一のスロット310内の外端層の電気導体331b’は、固定子鉄心31の時計回り方向に向けて1磁極ピッチ離れた他のスロット310内の外中層の電気導体332bとも対をなしている。そして、これらの電気導体は固定子鉄心31の軸方向の他方の軸方向端面側において接続される。
【0016】
したがって、固定子鉄心31の他方の端面側においては、外端層の電気導体331b’と外中層の電気導体332bとを接続する外側接合部333bと、内端層の電気導体331a’と内中層の電気導体332aとを接続する内側接合部333aとが、径方向および周方向に互いにずれた状態で配置されている。外端層の電気導体331b’と外中層の電気導体332bとの接続、および内端層の電気導体331a’と内中層の電気導体332aとの接続により、図4に示すように、異なる同心円上に配置された2つの隣接層コイルエンドが形成される。
【0017】
さらに、図2に示すように、内端層の電気導体331aと外端層の電気導体331bとが、一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる大セグメント331により提供される。また、内中層の電気導体332aと外中層の電気導体332bとが一連の電気導体をほぼU字状に成形してなる小セグメント332により提供される。基本となるU字状のセグメント導体30は、大セグメント331と小セグメント332によって形成される。各セグメント331、332は、スロット310内に収容されて軸方向に沿って延びる部分を備えるとともに、軸方向に対して所定角度傾斜して延びる曲げ部としての斜行部331f、331g、332f、332gを備える。これら斜行部によって、固定子鉄心31から軸方向の両端面に突出するリア側コイルエンド部32Rとフロント側コイルエンド部32Fが形成されており(図1)、回転子2の軸方向の両端面に取り付けられた冷却ファン22、23を回転させたときに生じる冷却風の通風路は、主にこれら斜行部の間に形成されている。
【0018】
以上の構成を、全てのスロット310のセグメント導体30について繰り返す。そして、反ターン部側のフロント側コイルエンド部32Fにおいて、外端層の端部331e’と外中層の端部332e、並びに内中層の端部332dと内端層の端部331d’とがそれぞれTIG溶接や超音波溶着等の手段によって接合されて外側接合部333bおよび内側接合部333aが形成され、電気的に接続されている。これにより、上記の固定子巻線はセグメント導体30を使用して重ね巻を形成している。
【0019】
なお、セグメント導体30は、図10に示すように、隣接層の電気導体をほぼU字状に成形してなる複数の同一形状のセグメントを用いてもよい。さらに、固定子巻線は、上記の同一形状のセグメントを用いたセグメント導体30を使用して波巻を形成してもよい。
【0020】
本実施形態では、上述したセグメント導体30を用いることにより、図5に示す2種類の三相巻線32A、32Bが形成されており、これらの三相巻線32A、32Bによって固定子巻線32が構成されている。三相巻線32A、32Bは、互いに電気角で30度位相をずらして固定子鉄心31の各スロットに巻回されている。
【0021】
一方の三相巻線32Aは、Δ結線された3本の第1の相巻線と、これら3本の第1の相巻線の巻線端部のそれぞれに一方の巻線端部が接続され他方の巻線端部が整流器5に接続される引出線Lとなる3本の第2の相巻線とを有する。これら第1の相巻線と第2の相巻線とを結線するために3つの結線部T(図5)が三相巻線32Aには含まれている。他方の三相巻線32Bも同様の構成を有しており、3つの結線部Tが含まれている。
【0022】
ところで、三相巻線32A、32Bに含まれる結線部Tや引出線Lは、図6に示すように、ターン部を有しない直線状のセグメント導体30’を用いて形成されている。このセグメント導体30’は、セグメント導体30の一方の直線部をターン部で折り返さずにそのまま延長した形状を有している。したがって、図6に示すように、セグメント導体30とともに固定子鉄心31のスロット310に挿入して先端部側を折り曲げることにより、図4に示すように、セグメント導体30’の端部を他のセグメント導体30の端部と接合することができ、リア側コイルエンド部32Rから突出する結線部Tや引出線Lを容易に形成することができる。
【0023】
次に、結線部Tを保護する構成について説明する。本実施形態では、図7に示すように、2つの三相巻線32A、32Bに含まれる合計6個の結線部Tは、周方向に沿って配置されている。また、これらの結線部Tに対して径方向内側に這い回しコイルHが配置されており、これらの這い回しコイルHによって壁面h(図8)が形成されている。
【0024】
結線部Tに対して径方向内側に這い回しコイルHによる壁面hを配置することにより、回転子2の冷却ファン23によって発生する風を受けた際の圧力変動(周方向に沿った圧力変動)を小さくすることができるため、回転時のファン騒音を低減することができる。また、冷却ファン23の回転時に径方向外側に吐出される粉塵や塩水等の電解液から固定子巻線32の結線部Tをこれらから保護することができ、結線部Tの耐環境性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、周方向に隣接する3つの結線部Tに対応して、周方向に連続する這い回しコイルHによって壁面hが形成されている。具体的には、図7に示すように、このような3つの結線部Tと這い回しコイルHとの組合せが2組周方向に隣接するように備わっている。このように、3つ(複数)の結線部Tを含む周方向の所定の区間に対応するように這い回しコイルHが形成されているため、結線部Tが複数ある場合であっても隣接する結線部T間の凹凸をなくして円滑な内周面を形成することができ、ファン騒音を低減することが可能となる。
【0026】
また、壁面hを形成する這い回しコイルHは、他のセグメント導体30と同様に矩形断面を有しており、径方向内側は平面になっている。壁面hを形成する這い回しコイルHの平面部を増やすことができるため、風が当たった際の圧力変動を小さくすることができ、ファン騒音をさらに小さくすることが可能となる。なお、這い回しコイルHの断面形状は、矩形以外の多角形形状としてもよいが、矩形断面の場合と同様に径方向内側が平面となるように這い回しの際の電気導体の向きを調整する必要がある。
【0027】
また、壁面hは、軸方向に沿って並べて配置された複数本(図8に示す例では2本)の這い回しコイルHによって形成されている。結線部Tを覆う壁面hの面積が、1本の這い回しコイルHを用いて壁面hを形成する場合に比べて増大するため、冷却ファン23から径方向外側に吐出される粉塵や塩水等の電解液が結線部Tまで到達しづらくなる。これにより、結線部Tの耐環境性を向上させることができる。なお、軸方向に沿って3本以上の這い回しコイルHを配置して壁面hを形成するようにしてもよい。また、効果は少なくなるが、1本の這い回しコイルHを配置して壁面hを形成するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、壁面hは、周方向に沿って並べて配置された複数本(図7に示す例では2本)の這い回しコイルHによって形成されている。これにより、複数本の這い回しコイルHを周方向に配置する場合であっても、これら複数本の這い回しコイルHによって円滑な内周面である壁面hを形成することができ、ファン騒音の低減効果を確保することが可能となる。
【0029】
また、図8に示すように、壁面hの軸方向高さは、結線部Tの軸方向高さよりも高く設定されていることが望ましい。これにより、結線部Tが径方向内側から見て直接見通せなくなる。したがって、冷却ファン23から径方向外側に吐出される粉塵や塩水等の電解液が結線部までさらに到達しづらくなる。これにより、結線部Tの耐環境性をさらに向上させることができる。なお、壁面hの軸方向高さが結線部Tの軸方向高さよりも低い場合であっても、這い回しコイルHによる壁面hがない場合に比べると、ファン騒音低減や結線部Tの耐環境性向上の効果は存在するため、変形例として壁面hの軸方向高さを結線部Tの軸方向高さよりも低くしてもよい。
【0030】
また、図9に示すように、壁面hは、回転子2の軸方向端面に取り付けられた冷却ファン23に対して、軸方向に沿って重複した位置に配置されている。これにより、冷却ファン23と結線部Tとが軸方向に沿って重複した位置にある場合であって、結線部Tが冷却ファン23からの風を最も受けやすくなる場合であっても、壁面hにより結線部Tを保護することが可能となり、ファン騒音低減と結線部Tの耐環境性向上を確実に実現することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、矩形断面のセグメント導体を用いて固定子巻線32を構成したが、多角形形状の断面以外のセグメント導体、あるいはセグメント導体以外の連続線を用いて固定子巻線を構成するようにしてもよい。例えば円形断面のセグメント導体や連続線を用いて這い回しコイルHを形成した場合であっても、ファン騒音低減と結線部Tの耐環境性向上の効果を維持することができる。
【0032】
また、上述した実施形態では、図5に示すように、2つの三相巻線32A、32Bを含む固定子巻線32を用いたが、いずれか一方の三相巻線のみが含まれるようにしたり、Y結線あるいはΔ結線された三相巻線を用いるようにしてもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、車両用交流発電機1の固定子2に本発明を適用したが、その他の車両用回転電機や、車両以外に用いられる回転電機についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述したように、本発明によれば、結線部に対して径方向内側に這い回しコイルによる壁面を配置することにより、回転子の冷却ファンによって発生する風を受けた際の圧力変動を小さくすることができるため、回転時のファン騒音を低減することができる。また、冷却ファンの回転時に径方向外側に吐出される粉塵や塩水等の電解液から固定子巻線の結線部をこれらから保護することができ、結線部の耐環境性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
2 回転子
3 固定子
23 冷却ファン
31 固定子鉄心
32 固定子巻線
310 スロット
T 結線部
H 這い回しコイル
h 壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10