特許第5807848号(P5807848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5807848
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/20 20060101AFI20151021BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20151021BHJP
   F27B 3/04 20060101ALI20151021BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20151021BHJP
   F27D 15/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   F27B3/20
   F27B3/18
   F27B3/04
   F27D11/02 A
   F27D15/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-3042(P2014-3042)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-209054(P2014-209054A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-68546(P2013-68546)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】安田 一正
(72)【発明者】
【氏名】榊原 裕司
(72)【発明者】
【氏名】上坂 直人
(72)【発明者】
【氏名】山下 敦史
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260068(JP,A)
【文献】 特開昭61−195273(JP,A)
【文献】 特開2005−000964(JP,A)
【文献】 米国特許第07213634(US,B1)
【文献】 再公表特許第2012/137910(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/00−3/28
F27D 11/00−11/12
F27D 15/00−15/02
B22D 18/00−18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を溶かして得た溶湯(93)を金型(95)に注入する鋳造装置(10、60、70)であって、
第1空間(51)、通孔(53、61)により前記第1空間に接続されている第2空間(52)、当該第2空間から下方へ延びている第1通路(25)、および、前記第1通路のうち前記第2空間とは反対側の端部から上方へ延びている第2通路(27)を有する炉体(15、63、72)と、
前記第2通路と前記金型の注湯口(96)とを接続する接続部材(35)と、
前記第1空間に投入された材料を加熱して溶解させる加熱手段(30)と、
前記第1空間または前記第2空間に気体を供給して前記第1通路の溶湯の湯面(91)を押し下げつつ前記第2通路の溶湯の湯面(92)を押し上げ、前記金型内に溶湯を注入する加圧手段(40)と、
を備え、
前記第1空間の床面には、材料を載置可能であって凹凸を有する材料載置面(31)が含まれることを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
記材料載置面は、前記通孔に向かって下るように傾斜しており、
前記通孔の底面(54、62)は、前記第2空間に向かって下るように傾斜しており、
前記材料載置面と前記通孔の前記底面との間には、水平面に対する傾斜角度が前記底面よりも小さい緩傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋳造装置。
【請求項3】
前記材料載置面(31)の表面粗さは、前記通孔の前記底面の表面粗さよりも粗いことを特徴とする請求項2に記載の鋳造装置。
【請求項4】
前記炉体は、前記材料載置面の下り方向に位置するとともに前記通孔の前記底面の上り方向に位置する開閉可能な開口部(55)を有することを特徴とする請求項2または3に記載の鋳造装置。
【請求項5】
前記炉体は、前記第1空間の天井面から前記材料載置面に向かって延びる隔壁(58)を有し
前記材料載置面と前記隔壁との間には、隙間(59)が形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項6】
前記加圧手段は前記第2空間に気体を供給することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記材料載置面に相当する加熱面を有するホットプレートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項8】
前記第1通路の溶湯の湯面よりも高い位置から前記炉体内に挿入されている保温部ヒータ(36、71)を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項9】
前記保温部ヒータ(71)は、前記接続部材の真下まで延びていることを特徴とする請求項8に記載の鋳造装置(70)。
【請求項10】
前記第1通路の溶湯の湯面の面積は、前記第2通路の溶湯の湯面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項11】
前記炉体(72)は、前記通孔の最下部および前記接続部材の出湯口よりも低い位置で前記第1通路に接続されたオーバーフロー通路(74)と、前記第1通路から前記オーバーフロー通路を通じて流出する溶湯を収容可能なオーバーフロー室(75)とを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の鋳造装置(70)。
【請求項12】
前記オーバーフロー室には、前記オーバーフロー通路を通じて流入する溶湯を受けるケース(76)が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物製造ラインに用いられる溶解炉として、特許文献1に開示されたものがある。この溶解炉の炉体は、加熱板が設けられている溶解室と、連通開口を介して溶解室と接続している溶湯処理部と、溶湯連通部を介して溶湯処理部と接続している溶湯保持部とを有する。溶解室に投入された材料は、加熱板により溶かされた後、連通開口の傾斜床を下って溶湯処理部に流入し、続いて溶湯連通部を通って溶湯保持部に流入する。溶湯処理部では、材料の溶解時に発生した金属酸化物等の不純物のうち溶湯表面にあるものを除去する作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−71266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の溶解炉には、材料の溶解時に発生した不純物を溶解室に留めておく手段が無い。そのため、不純物は溶湯に混入した状態で傾斜床を下って溶湯処理部に流入する。溶湯処理部では溶湯表面にある不純物は隔壁部により堰き止められるが、溶湯に混入した不純物はそのまま溶湯保持部に流入する。したがって、金型に供給される溶湯の品質を高めるには限界があるという問題があった。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な溶湯品質を確保可能な鋳造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による鋳造装置は、炉体、接続部材、加熱手段および加圧手段を備えている。炉体は、第1空間、通孔により第1空間に接続されている第2空間、当該第2空間から下方へ延びる第1通路、および、第1通路のうち第2空間とは反対側の端部から上方へ延びる第2通路を有している。接続部材は、第2通路と金型の注湯口とを接続する。加熱手段は、第1空間内に投入された材料を加熱して溶解させる。加圧手段は、第1空間または第2空間に気体を供給して第1通路の溶湯の湯面を押し下げつつ第2通路の溶湯の湯面を押し上げ、溶湯を金型内に注入する。
【0006】
特に本発明は、炉体の第1空間の床面に含まれる材料載置面が凹凸を有していることを特徴とする。
材料載置面上の材料は、溶解時に溶湯と不純物とに層状に分離する。不純物は、部分的に材料載置面に接触した状態で溶湯を覆うように発生する。粘度が比較的小さい溶湯は材料載置面を伝って第1通路に流れ込む一方で、粘度が比較的大きい不純物は材料載置面の凹凸に引っかかり当該材料載置面上に残る。そのため、第1通路の保温溶湯に不純物が流れ込むことを抑制し、良好な溶湯品質を確保可能である。
【0007】
本明細書では、「上下」は、鋳造装置が水平面に設置された状態を基準として考えている。つまり「上下方向」は「鉛直方向」と同義である。
「上方」は、所定位置を通る水平面に対し上側であることを意味する。つまり、「所定位置から上方へ延びる」とは、当該所定位置から鉛直方向の上向きに延びることのみならず、所定位置から斜め上へ延びることも含む。
「下方」は、所定位置を通る水平面に対し下側であることを意味する。つまり、「所定位置から下方へ延びる」とは、当該所定位置から鉛直方向の下向きに延びることのみならず、所定位置から斜め下へ延びることも含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による鋳造装置の概略構成を説明する図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図1のIII−III線断面図である。
図4図2のIV−IV線断面図である。
図5図2の溶解室の第1空間に投入された材料が溶解する様子を示す図である。
図6図3の溶解室の第1空間に投入された材料が溶解する様子を示す図である。
図7図4の溶解室の第1空間に投入された材料が溶解する様子を示す図である。
図8図6のVIII−VIII線断面図である。
図9】本発明の第2実施形態による鋳造装置の断面図であって、第1実施形態の図3に対応する図である。
図10】本発明の第3実施形態による鋳造装置の概略構成を説明する図である。
図11図10のXI−XI線断面図である。
図12図10のXII−XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による鋳造装置を図1図4に示す。先ず、鋳造装置10の概略構成を説明する。鋳造装置10は、炉体15、ホットプレート30、ストーク35、保温部ヒータ36、出湯部ヒータ37および加圧手段40を備えている。
【0010】
炉体15は、溶解部16、保温部24および出湯部26を形成している。溶解部16は溶解室17を有する。溶解室17を区画形成する天井面18は、材料投入口19を有する。材料投入口19から上方へ延びている筒状の材料投入部21の上端には、開閉バルブ22が設けられている。保温部24は、溶解室17から下方へ延びる第1通路25を有する。出湯部26は、第1通路25のうち溶解室17とは反対側の端部から上方へ延びる第2通路27を有する。
【0011】
材料投入部21の真下には、特許請求の範囲に記載の「加熱手段」に相当するホットプレート30が設けられている。ホットプレート30は、材料を載置可能な材料載置面31を有しており、材料投入部21から第1空間51に投入され材料載置面31に載置された材料を加熱して溶解させる。本実施形態では、ホットプレート30のプレート部は窒化ケイ素から構成されている。
【0012】
ストーク35は、炉体15の第2通路27と金型95の注湯口96とを接続している筒状部材であり、特許請求の範囲に記載の「接続部材」に相当する。本実施形態では、ストーク35は窒化ケイ素から構成されている。また、ストーク35および第2通路27の内径は、注湯口96の直径とほぼ同じである。
【0013】
保温部ヒータ36は、炉体15の外部から内部に挿入されている。第1通路25および第2通路27の溶湯93は、保温部ヒータ36により所定温度に保温される。
出湯部ヒータ37は、ストーク35に対し径方向外側に設けられており、ストーク35内の溶湯93の温度低下を抑制する。
【0014】
加圧手段40は、炉体15の天井面18に開いたエア供給口23から上方へ延びる筒状のエア供給管41と、エア供給管41の途中に設けられている開閉バルブ42と、エア供給管41を通じて炉体15の溶解室17に圧縮空気を供給する図示しないエア供給源とを含む。エア供給源には例えばエアコンプレッサー等が用いられる。加圧手段40は、第1通路25の溶湯の第1湯面91を加圧することによって、当該第1湯面91を押し下げつつ第2通路27の溶湯の第2湯面92を押し上げ、金型95内に溶湯を注入する。
【0015】
次に、鋳造装置10の特徴構成を図1図8に基づき説明する。
溶解室17は、ホットプレート30が位置する第1空間51と、第1通路25に対し上方に位置する第2空間52と、第1空間51と第2空間52とを接続する通孔53とを含む。通孔53の底面54は、第2空間52に向かって下るように傾斜している。ホットプレート30の材料載置面31は、第1通路25の第1湯面91よりも高い位置にあり、通孔53の入口に向かって下るように傾斜している。
【0016】
ここで、図3に矢印A1で示す、材料載置面31の傾斜方向の下り向きを第1向きとする。また、図3に矢印A2で示す、通孔53の底面54の傾斜方向の下り向きを第2向きとする。炉体15を鉛直方向に見たとき第1向きA1と第2向きA2とは互いに交差している。本実施形態では、第1向きA1と第2向きA2との交差角度θ1は90度である。言い換えれば、材料載置面31の傾斜方向は、交差角度θ1が90度となるように設定されている。
【0017】
材料載置面31は、図8に示すように傾斜方向に平行な断面において凹凸を形成している。本実施形態では、材料載置面31の凹凸は、複数の円錐状の突起32と各突起32間の谷間とで構成され、通孔53の底面54と比べて表面粗さが大きくなるように形成されている。
材料載置面31と通孔53の底面54との間には緩傾斜面57が設けられている。緩傾斜面57の水平面に対する傾斜角度θ2は、材料載置面31の水平面に対する傾斜角度θ3および底面54の水平面に対する傾斜角度θ4よりも小さく設定されている。
【0018】
炉体15は、材料載置面31の下り方向に位置する開口部55を有している。開口部55は、扉56により開閉可能である。
材料90は、材料載置面31上で溶解するとき図4図8に示すように溶湯93とドロス94とに層状に分離する。ドロス94は、金属酸化物等を含む不純物であり、部分的に材料載置面31に接触した状態で溶湯93を覆うように発生する。粘度が比較的小さい溶湯93は材料載置面31と緩傾斜面57と通孔53の底面54とを伝って第1通路25に流れ込む一方で、粘度が比較的大きいドロス94は材料載置面31の凹凸に引っかかり当該材料載置面31上に残る。材料載置面31上に残るドロス94は、開口部55から定期的に除去される。
【0019】
炉体15は、天井面18から材料載置面31に向かって延びる隔壁58を有している。隔壁58と材料載置面31との隙間59は、材料90よりも小さく設定されている。隔壁58は、材料90が溶解前に材料載置面31から緩傾斜面57に落ちるのを防止するストッパである。なお、図3では隔壁58の図示を省略している。
第1通路25は、溶解室17の第2空間52から第2通路27側に向けて斜め下方向へ延びている。保温部ヒータ36は、第1湯面91よりも高い位置にある挿入孔28を通じて炉体15内に斜めに挿入され、第1通路25に沿うように延びている。なお、図3では保温部ヒータ36の図示を省略している。
【0020】
エア供給口23は、溶解室17のうち第2空間52側に形成されている。加圧手段40は、第2空間52に圧縮空気を供給して第1通路25の溶湯93の第1湯面91を加圧する。第1通路25および第2通路27は、第1湯面91の面積が第2湯面92の面積よりも小さくなるように形成されている。そのため、加圧手段40が第1湯面91を加圧するとき、第1湯面91の上下変動は、第2湯面92の上下変動と比べて小さくなる。
【0021】
以上説明したように、第1実施形態では、ホットプレート30の材料載置面31は、傾斜方向に平行な断面において凹凸を形成している。材料載置面31の凹凸は、通孔53の底面54と比べて表面粗さが大きくなるように形成されている。
したがって、材料載置面31上で発生するドロス94は、部分的に材料載置面31の凹凸に引っかかった状態で溶湯93を覆うように発生し、その多くが材料載置面31上に残る。材料載置面31上に残るドロス94は、炉体15の開口部55から定期的に除去される。そのため、第1通路25の保温溶湯にドロス94が流れ込むことを抑制し、良好な溶湯品質を確保可能である。
【0022】
ここで、溶解時に材料載置面31から流れ出る溶湯93には不純物が全く含まれないわけではない。不純物には、ドロス94となって材料載置面31上に残るものの他に、溶湯93中に混入された状態で当該溶湯93と共に材料載置面31から流れ出るものもある。材料載置面31から流れ出た不純物は、溶湯93中に混入された状態で第1通路25に流れ込むと、そのまま第1通路25の保温溶湯内に沈下していく可能性がある。
【0023】
これに対し、第1実施形態では、材料載置面31と通孔53の底面54との間に緩傾斜面57が設けられている。緩傾斜面57の水平面に対する傾斜角度は、材料載置面31および底面54よりも小さく設定されている。
したがって本実施形態によれば、緩傾斜面57が設けられない形態と比べて、材料載置面31から流出した溶湯93が第1通路25に流れ込むまでにかかる時間を長引かせることができる。そのため、不純物は、溶湯93から分離してドロス94となった状態で第1通路25に流れ込み、第1通路25の保温溶湯の表面に留まる。それゆえ、第1通路25に流れ込んだ不純物が保温溶湯内に沈下することを抑制可能である。保温溶湯の表面に溜まったドロスは、炉体15の上部に設けられている図示しない清掃窓より定期的に除去される。
【0024】
また、第1実施形態では、炉体15の開口部55は、材料載置面31の下り方向に位置している。そのため、材料載置面31に堆積したドロス94を炉体15の開口部55から定期的に除去することができる。
【0025】
また、第1実施形態では、炉体15は、天井面18から材料載置面31に向かって延びる隔壁58を有している。隔壁58と材料載置面31との隙間59は、材料90よりも小さく設定されている。隔壁58は、第1空間51に投入された材料90が溶解前に材料載置面31から緩傾斜面57に落ちることを防止可能である。
【0026】
また、第1実施形態では、エア供給口23は、溶解室17のうち第2空間52側に形成されている。加圧手段40は、第2空間52に圧縮空気を供給して第1通路25の溶湯93の第1湯面91を加圧する。そのため、第1空間51に圧縮空気を供給する場合に第1空間51のドロス94が圧縮空気に押されて通孔53に流れ込み易いという問題を回避することができる。
【0027】
また、第1実施形態では、保温部ヒータ36は、第1湯面91よりも高い位置にある挿入孔28を通じて炉体15内に挿入されている。そのため、例えば保温部ヒータ36が割れたとき等に挿入孔28を通じて溶湯93が外部へ漏れることを防止することができる。
【0028】
また、第1実施形態では、第1湯面91の面積が第2湯面92の面積よりも大きい。そのため、加圧手段40が第1湯面91を加圧するとき、第1湯面91の上下変動は、第2湯面92の上下変動と比べて小さくなる。したがって、炉体15のうち第1湯面91付近の内壁面に酸化物が堆積するのを抑制し、良好な溶湯品質を確保可能である。
【0029】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による鋳造装置を図9に基づき説明する。
図9には、通孔61の底面62の傾斜方向の下り向きである第2向きを矢印A3で示す。鋳造装置60では、炉体63を鉛直方向に見たとき第1向きA1と第2向きA3とがなす交差角度θ5は120度である。炉体63の開口部55は、材料載置面31の下り方向に位置するとともに通孔61の底面62の上り方向に位置している。
第2実施形態によれば、炉体63の開口部55から通孔61内を掃除し易い。
【0030】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による鋳造装置を図10図12に基づき説明する。
第3実施形態では、鋳造装置70の保温部ヒータ71は、鋳造装置70の設置状態においてストーク35の真下まで延びている。これにより、保温部ヒータ71が炉体72内全体に行き渡り、炉体72内の溶湯の温度分布が不均一になることを抑制することができる。そのため、局所的に溶湯が高温になることに起因して酸化物生成が促進されることを抑制可能である。したがって、良好な溶湯品質を確保可能である。
【0031】
また、第3実施形態では、炉体72には、第1通路25の溶湯の湯面91の高さを検知する湯面高さセンサ78が設けられている。電子制御装置79は、湯面高さセンサ78が検知した湯面91の高さに基づき、保温部24および出湯部26に保持される溶湯の上限量までのバッファ量、すなわち、第1通路25から後述のオーバーフロー部73にオーバーフローするまでのバッファ量を演算する。そして、電子制御装置79は、演算されたバッファ量に基づき、材料90の溶解部16への投入量を決定する。図示しない材料投入装置は、決定された投入量に応じた材料90を溶解部16へ投入する。したがって、電子制御装置79は、材料90の溶解部16への投入量と出湯部26からの出湯量とを管理して、オーバーフローを回避することができる。
【0032】
また、第3実施形態では、炉体72は、オーバーフロー部73を形成している。オーバーフロー部73は、通孔53の最下部の高さAおよびストーク35の出湯口の高さBよりも低い高さCの位置で第1通路25に接続されたオーバーフロー通路74と、第1通路25からオーバーフロー通路74を通じて流出する溶湯を収容可能なオーバーフロー室75とを有する。上記高さA、B、Cは、鋳造装置70の設置面からの高さである。オーバーフロー室75には、オーバーフロー通路74を通じて流入する溶湯を受けるケース76が設けられている。オーバーフロー通路74とケース76との間には、断熱部材から成る樋77が設けられている。したがって、例えば電子制御装置79の誤作動などによって材料90の溶解部16への投入量が多すぎた場合、過剰な溶湯は、オーバーフロー通路74を経由してオーバーフロー室75のケース76に溜めることができる。そのため、ストーク35の出湯口から溶湯が漏れることを防止することができる。また、ケース76に溜まった溶湯は、当該ケース76を空のケース76に交換することによって、容易に除去することができる。
【0033】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、材料載置面の凹凸は、円錐状の突起32に限らず、例えば円柱状の突起または細長い突起などにより構成されてもよい。また、材料載置面の凹凸は不規則な凹凸であってもよい。
本発明の他の実施形態では、ホットプレートのプレート部は窒化ケイ素以外の材料から構成されてもよい。
本発明の他の実施形態では、ホットプレートに代えて他の加熱手段が設けられてもよい。例えば、プレート下に加熱ヒータまたは誘導加熱コイルを設けてもよい。
本発明の他の実施形態では、溶解室は、通孔を有する隔壁により隔てられた第1空間と第2空間とから構成されず、1つの空間から構成されてもよい。また、溶解室の床面には緩傾斜面が設けられず、材料載置面が第1通路に直接つながっていてもよい。
【0034】
本発明の他の実施形態では、材料載置面は水平面に平行に設けられてもよい。つまり材料載置面は傾斜していなくてもよい。要するに、材料載置面は、第1通路の第1湯面よりも高い位置にあればよい。
本発明の他の実施形態では、炉体を鉛直方向に見たとき材料載置面の傾斜方向の下り向き(第1向き)と通孔の底面の傾斜方向の下り向き(第2向き)とがなす交差角度は、90度または120度でなくてもよい。
本発明の他の実施形態では、溶解室にストッパとしての隔壁が設けられなくてもよい。
本発明の他の実施形態では、第1湯面の面積と第2湯面の面積とが同じであってもよい。
本発明の他の実施形態では、加圧手段は第1空間に圧縮空気を供給してもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
10、60、70・・・鋳造装置 15、63、72・・・炉体
17・・・溶解室 25・・・第1通路
27・・・第2通路 30・・・ホットプレート(加熱手段)
31・・・材料載置面 35・・・ストーク(接続部材)
40・・・加圧手段 91・・・第1湯面
92・・・第2湯面 93・・・溶湯
95・・・金型 96・・・注湯口
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図12