特許第5808104号(P5808104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5808104ボールペン及びボールペン用ペン先チップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808104
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】ボールペン及びボールペン用ペン先チップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/08 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   B43K1/08 Z
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-283687(P2010-283687)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-131079(P2012-131079A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年9月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中谷 泰範
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−126715(JP,A)
【文献】 実開昭63−100285(JP,U)
【文献】 実開昭53−003634(JP,U)
【文献】 特開2002−052884(JP,A)
【文献】 特開2007−190693(JP,A)
【文献】 特開2010−269546(JP,A)
【文献】 特開平11−235892(JP,A)
【文献】 特開2010−125841(JP,A)
【文献】 実開昭56−014082(JP,U)
【文献】 特開2006−289807(JP,A)
【文献】 特開2001−158194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00− 8/02
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキが加圧状態で収納されるインキ収納部と、インキ収納部に接続されたペン先チップとを有し、前記ペン先チップは、チップ本体と筆記用のボールとバネとを有し、チップ本体はボールハウスと、先端開口と、インキ導通孔とを備え、前記先端開口はボールハウスの先端側にあってボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔は先端側がボールハウスの後端側の内面に開口してボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔はボールハウスに対する開口近傍が小径に絞られ、ボールハウス内にはインキ導通孔の開口部を中心として座部があり、当該座部にはインキ導通孔に連通する2条の溝が設けられ、前記筆記用のボールはボールハウス内にあってその一部が先端開口から露出し、前記バネはインキ導通孔内にあって筆記用のボールを先端開口側に向かって押圧する構成を備えたボールペンにおいて、インキは固形成分を含み、前記筆記用ボールは直径が0.3mm〜0.8mmであり、前記ボールハウスの内径は、前記筆記用ボールの外径に対して50マイクロメートル(μm)以上大きく、前記溝はいずれも有底であってボールハウス側とインキ導通孔内面側の双方に開口し、前記インキ導通孔は全部が前記溝の底に開口し、前記2条の溝はインキ導通孔を挟んで対向する位置に形成されていてボールハウス側に対する開口幅が0.2mm以上であり、前記ボールを座部の中央に設置した状態において、前記ボールによって封鎖されることなくボールハウス側に開口する部位を先端開口側から見た正投影面積が、2条の各溝それぞれ0.02平方ミリメートル以上であり、2条の各溝のインキ導通孔内面側の開口投影面積が0.02平方ミリメートル以上であることを特徴とするボールペン。
【請求項2】
固形成分を含むインキが加圧状態で収納されたインキ収納部に装着されるボールペン用ペン先チップであって、チップ本体と筆記用のボールとバネとを有し、チップ本体はボールハウスと、先端開口と、インキ導通孔とを備え、前記先端開口はボールハウスの先端側にあってボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔は先端側がボールハウスの後端側の内面に開口してボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔はボールハウスに対する開口近傍が小径に絞られ、ボールハウス内にはインキ導通孔の開口部を中心として座部があり、当該座部にはインキ導通孔に連通する2条の溝が設けられ、前記筆記用のボールはボールハウス内にあってその一部が先端開口から露出し、前記バネはインキ導通孔内にあって筆記用のボールを先端開口側に向かって押圧する構成を備えたボールペン用ペン先チップにおいて、前記筆記用ボールは直径が0.3mm〜0.8mmであり、前記ボールハウスの内径は、前記筆記用ボールの外径に対して50マイクロメートル(μm)以上大きく、前記溝はいずれも有底であってボールハウス側とインキ導通孔内面側の双方に開口し、前記インキ導通孔は全部が前記溝の底に開口し、前記2条の溝はインキ導通孔を挟んで対向する位置に形成されていてボールハウス側に対する開口幅が0.2mm以上であり、前記ボールを座部の中央に設置した状態において、前記ボールによって封鎖されることなくボールハウス側に開口する部位を先端開口側から見た正投影面積が、2条の各溝それぞれ0.02平方ミリメートル以上であり、
2条の各溝のインキ導通孔内面側の開口投影面積が0.02平方ミリメートル以上であることを特徴とするボールペン用ペン先チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンに関するものであり、特にガラスフレークや金属箔粉等の固形成分を含むインキを使用したボールペンに関するものである。また本発明は、上記したボールペンに使用されるボールペン用ペン先チップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末の外装や布等に、立体的に盛り上がった図柄を描くことができる塗布具が知られている。この種の塗布具では、描いた図柄が盛り上がる様に、粘度の高いインキが使用される。また描いた図柄を盛り上げるために、通常の塗布具に比べて大量のインキを排出させる必要がある。
例えば、上記した立体的に盛り上がった図柄を描くことができる塗布具の一つとして、株式会社サクラクレパスから発売されているデコレーションペン(株式会社サクラクレパスの登録商標)がある。当該デコレーションペン用のインキの粘度は、塗布したときに盛り上がる様に、約20,000ミリパスカル秒(mPa・s)程度の高粘度に調整されている。そのため、インキ収納部から大量のインキを導出することは容易ではない。
そこで上記した塗布具(デコレーションペン)では、インキ収納部を変形容易な容器で形成し、インキ収納部の先端に孔を設け、インキ収納部を指で押圧して先端の小孔からインキを絞り出す構造を採用している。
【0003】
また、上記した塗布具(デコレーションペン)では、大量のインキを排出するために、先端の孔の径が大きい。具体的には、上記した塗布具では、先端の孔の直径が約2.0mm程度に設計されている。そのため、デコレーションペンは、細かい文字や図柄を書くことには不適である。特にデコレーションペンでは、漢字等の画数の多い文字や、小さい文字を書くと、隣接する線が繋がって一つのインキ溜まりとなってしまい、文字が潰れる。
【0004】
また、ボールペンと同様の構造を採用して立体的に盛り上がった図柄を描くことができる塗布具もある。当該ボールペン形式の塗布具についても、筆記用ボールの直径が大きく、細かい文字や図柄を書くことには不適である。即ちボールペン形式であって、盛り上がった図柄を描くことができる塗布具においては、筆記用ボールの直径が1.0mm以上であり、漢字等の画数の多い文字や、小さい文字を書くと、隣接する線が繋がって一つのインキ溜まりとなってしまい、文字が潰れる。
【0005】
一方、インキ中にガラスフレークや金属箔粉等の固形成分(パール色やパール顔料)を配合し、キラキラした光輝感のあるインキを内蔵したボールペンが開発されており、このようなボールペンが特許文献1に開示されている。このようなボールペンは、固形成分がペン先に詰まらないようボールハウスの内壁と筆記用ボールとの隙間が通常のボールペンよりも広く、且つ筆記用ボールの直径も1.0mm以上である。そのため、この種のボールペンも、漢字等の画数の多い文字や、小さい文字を書くのには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−158194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のデコレーションペンのような立体的に盛り上がった文字等を書くことができ、且つ特許文献1に開示されたボールペンのようなキラキラした光輝感のある文字等を書くことができ、さらに細かい文字や図柄を書くことができるボールペンの製品化が一般ユーザーから所望されている。即ち、盛り上がる線であり、光輝感のある線であって、且つ細い線を描くことができるボールペンの開発が望まれている。
ところが、盛り上がる線や光輝感のある線を描くためには、筆記用ボールの直径を大きく設計する必要があるのに対し、細い線を描くためには筆記用ボールの直径を小さく設計する必要があり、二律背反する事態となる。
そのため、前記のような一般ユーザーが所望するボールペンの製品化は、困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、立体的に盛り上がった文字等を書くことができ、且つキラキラした光輝感のある文字等を書くことができ、さらに細かい文字や図柄を書くことができるボールペン、及び前記ボールペン用ペン先チップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した性能を有するボールペンを開発すべく、各種のボールペンを試作した。その過程において、約20,000ミリパスカル秒(mPa・s)程度の高粘度のインキをボールペン用ペン先チップから導出させるためには、インキを加圧する方策が有効であることが判明した。即ち一般的な直径の筆記用ボールを内蔵したボールペン用ペン先チップから、高粘度のインキをスムーズに導出するための方策として、インキ収納部内に充填したインキを加圧状態にし、インキ収納部内の圧力でインキをペン先チップから押し出す方策が有効であることが判った。即ち、要求される粘度のインキを導出するためには、インキを高圧力で加圧してインキ収容部に充填する必要があることが判明した。
しかしながら、インキを加圧状態にすると、ペン先の先端開口部からインキが一気に噴出するという問題があった。
【0010】
そのための対策として、ペン先チップ内にバネを内蔵し、当該バネで筆記用ボールをチップ本体の先端開口側に押圧して栓をする構造を採用することとした。即ち、インキが加圧されたボールペンのペン先チップ内にバネを封入し、前記バネでペン先のボールを先端開口部側に押圧することで、ボールペンを使用しない際に、加圧されたインキがペン先から漏れることを防止することとした。
【0011】
また、新たな問題として、バネの中心軸が安定せず、筆記用ボールの押圧が不安定になることが判明した。即ち、加圧状態のインキが漏れないように、筆記用ボールがしっかりとボールハウスの先端開口を塞ぐ必要がある。その一方で、ボールハウスの座面部分には、矢溝と称される溝が設けられる。そのため、バネの先端が矢溝に嵌まり込むと、バネ先端部が中心を離れ、筆記用ボールとチップの隙間に嵌り込む。このことによって、筆記用ボールが回転できなくなり、且つ先端開口をシールできなくなる。
【0012】
さらに、別の問題として、キラキラした成分である光輝性顔料等(固形成分)をインキに含有させると、ペン先チップの矢溝に粒子の光輝性顔料が詰まるという問題が発生する。光輝性顔料の詰まりを防ぐために、光輝性顔料の粒子径を小さくし、小さい粒子の光輝性顔料を高粘度のインキに含有させることを検討し試作したが、この試作品は不良であった。即ち、光輝性顔料の粒子が小さくなると、光輝性顔料の特色である「キラキラした光輝感」が薄れ、ボールペンとしての品質低下を招くことを確認した。
【0013】
上記した検討や試作を経て完成された発明は、インキが加圧状態で収納されるインキ収納部と、インキ収納部に接続されたペン先チップとを有し、前記ペン先チップは、チップ本体と筆記用のボールとバネとを有し、チップ本体はボールハウスと、先端開口と、インキ導通孔とを備え、前記先端開口はボールハウスの先端側にあってボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔は先端側がボールハウスの後端側の内面に開口してボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔はボールハウスに対する開口近傍が小径に絞られ、ボールハウス内にはインキ導通孔の開口部を中心として座部があり、当該座部にはインキ導通孔に連通する2条の溝が設けられ、前記筆記用のボールはボールハウス内にあってその一部が先端開口から露出し、前記バネはインキ導通孔内にあって筆記用のボールを先端開口側に向かって押圧する構成を備えたボールペンにおいて、インキは固形成分を含み、前記筆記用ボールは直径が0.3mm〜0.8mmであり、前記ボールハウスの内径は、前記筆記用ボールの外径に対して50マイクロメートル(μm)以上大きく、前記溝はいずれも有底であってボールハウス側とインキ導通孔内面側の双方に開口し、前記インキ導通孔は全部が前記溝の底に開口し、前記2条の溝はインキ導通孔を挟んで対向する位置に形成されていてボールハウス側に対する開口幅が0.2mm以上であり、前記ボールを座部の中央に設置した状態において、前記ボールによって封鎖されることなくボールハウス側に開口する部位を先端開口側から見た正投影面積が、2条の各溝それぞれ0.02平方ミリメートル以上であり、2条の各溝のインキ導通孔内面側の開口投影面積が0.02平方ミリメートル以上であることを特徴とするボールペンである。
【0014】
本発明のボールペンは、筆記用ボールが0.3mm〜0.8mmと小さい。そのため細い線を描くことができる。また本発明のボールペンは、インキが加圧されており、且つ筆記用ボールとボールハウスとの間の隙間が大きく確保されている。加えて本発明のボールペンではボールハウスにおけるインキ導通孔に連通する溝(所謂矢溝)が大きい。そのため、高粘度のインキと、粒子の大きい光輝性顔料(固形成分)とを先端開口からスムーズに導出することができる。
即ち本発明のボールペンでは、インキ導通孔に連通する溝(所謂矢溝)の幅が広く、且つ溝のボールハウス側に開口する開口面積と、インキ導通孔内面側に開く開口面積がいずれも大きく確保されているので、粒子の大きい光輝性顔料(固形成分)であっても前記溝に詰まることがない。
また本発明のボールペンでは、溝(所謂矢溝)が長く、筆記用ボールを座部の中央に設置した状態において、ボールによって封鎖されることなくボールハウス側に開口する部位が確保されている。そのため本発明のボールペンでは、溝(所謂矢溝)から直接的にボールとボールハウス内壁との間の隙間にインキが供給される。
さらに本発明のボールペンは、インキ導通孔に連通する溝が有底であるから、バネの先端が座部の溝に入り込まず、バネ先端部が筆記用ボールとチップの隙間に嵌り込まない。そのため、安定して筆記用ボールを押圧する。その結果、本発明のボールペンによれば、立体的に盛り上がった文字等を書くことができ、且つキラキラした光輝感のある文字等を書くことができ、さらに細かい文字や図柄を書くことができる。
本発明のボールペンでは、溝は2条であってインキ導通孔を挟んで対向する位置に形成されているから、溝の幅を広く設計することができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、固形成分を含むインキが加圧状態で収納されたインキ収納部に装着されるボールペン用ペン先チップであって、チップ本体と筆記用のボールとバネとを有し、チップ本体はボールハウスと、先端開口と、インキ導通孔とを備え、前記先端開口はボールハウスの先端側にあってボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔は先端側がボールハウスの後端側の内面に開口してボールハウスの内外を連通するものであり、インキ導通孔はボールハウスに対する開口近傍が小径に絞られ、ボールハウス内にはインキ導通孔の開口部を中心として座部があり、当該座部にはインキ導通孔に連通する2条の溝が設けられ、前記筆記用のボールはボールハウス内にあってその一部が先端開口から露出し、前記バネはインキ導通孔内にあって筆記用のボールを先端開口側に向かって押圧する構成を備えたボールペン用ペン先チップにおいて、前記筆記用ボールは直径が0.3mm〜0.8mmであり、前記ボールハウスの内径は、前記筆記用ボールの外径に対して50マイクロメートル(μm)以上大きく、前記溝はいずれも有底であってボールハウス側とインキ導通孔内面側の双方に開口し、前記インキ導通孔は全部が前記溝の底に開口し、前記2条の溝はインキ導通孔を挟んで対向する位置に形成されていてボールハウス側に対する開口幅が0.2mm以上であり、前記ボールを座部の中央に設置した状態において、前記ボールによって封鎖されることなくボールハウス側に開口する部位を先端開口側から見た正投影面積が、2条の各溝それぞれ0.02平方ミリメートル以上であり、2条の各溝のインキ導通孔内面側の開口投影面積が0.02平方ミリメートル以上であることを特徴とするボールペン用ペン先チップである。
【0016】
本発明のボールペン用ペン先チップを採用すると、立体的に盛り上がった文字等を書くことができ、且つキラキラした光輝感のある文字等を書くことができ、さらに細かい文字や図柄を書くことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、立体的に盛り上がった文字等を書くことができ、且つキラキラした光輝感のある文字等を書くことができ、さらに細かい文字や図柄を書くことができるボールペン、及び前記ボールペン用ペン先チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明の実施形態に係るボールペンの概略構成図であり、(b)は(a)の概略断面図である。
図2図1のボールペンのペン先チップ部分を拡大した概略断面図である。
図3図1のボールペンのペン先チップの先端開口部分を拡大した斜視図である。
図4図3の示すペン先チップ部分からボールを除去した状態におけるペン先チップの先端開口部分を拡大した斜視図である。
図5図3のボールペンのペン先チップの一部破断斜視図である。
図6】(a)は、図1のボールペンのペン先チップの正面図であり、(b)は(a)のA方向矢視図であり、(c)は(a)のB−B断面図であり、(d)は(a)のC−C断面図であり、(e)は(a)のD−D断面図である。
図7】(a)は、図1のボールペンのペン先チップからボールの図示を省略した正面図であり、(b)は(a)のA方向矢視図であり、(c)は(a)のB−B断面図であり、(d)は(a)のC−C断面図であり、(e)は(a)のD−D断面図である。
図8図1のペン先チップの拡大断面図である。
図9図7(c)の拡大図であり、図8のペン先チップのA−A断面図でもあって、ペン先チップのボールを除いた状態を図示している。
図10図8のペン先チップのB−B断面図であって、ボールと座部との接点における断面図を図示している。
図11図6(c)の拡大図であり、図8のペン先チップのC−C断面図でもあって、筆記用ボールの最大径部分で切断した断面図である。
図12】矢溝のボールハウス側に開口する部位の先端開口側から見た正投影面積と、矢溝のインキ導通孔側から見た投影開口面積を説明する概念図である。
図13】光輝性顔料の粒子を概念的に示した模式図である。
図14】ボールに付着した光輝性顔料の粒子を示した概略断面図である。
図15】本発明に関連する発明に係る実施形態のペン先チップの拡大断面図である。
図16図15のA−A断面図である。
図17図15に示すペン先チップで採用するボールハウスの断面斜視図である。
図18】本発明に関連する発明に係る他の実施形態に係るボールペンの概略構成図である。
図19】本発明のボールペンを使用して書き味を調べた際の実験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下さらに 本発明の実施形態のボールペン、及び前記ボールペン用ペン先チップの構成について、図面を参照しながら説明する。なお、説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0020】
本発明の実施形態に係るボールペン1は、レフィルと呼ばれ、通常、筒状の保持具等の中に入れられて使用するものである。また、説明の便宜上、図1における上側(ボールペンのペン先側)を先端側とし、下側を後端側として説明し、ボールペン1の長手方向を「垂直方向」とし、垂直方向に直交する方向を「水平方向」とする。
図1(a),(b)に示すボールペン1は、ペン先チップ2と、先栓3と、インキ収納部4を有する。
【0021】
インキ収納部4は、インキ(図示省略)を収容するための部材であり、ボールペン1の大部分を占めている。インキ収納部4は、図1(a),(b)に示すように、その外形が細長い円柱状である。インキ収納部4の内部は空洞である。即ちインキ収納部4は細長の管である。インキ収納部4の先端側は、先栓3と接合されており、インキ収納部4の後端側には、ガス等によって加圧状態で収容されるインキが飛び出さないように、詮部39が設けられている。
【0022】
インキ収納部4には、固形成分を含むインキが加圧状態で封入されている。固形成分は、具体的には、光輝性顔料40等である。即ち本実施形態のボールペン1に用いるインキは、チキソトロピー性を有する水性インキであり、光輝性顔料40として、ガラスフレーク顔料、金属被覆無機顔料、多重層フィルム粉、金属箔粉或いは金属被覆樹脂フィルム粉の少なくともいずれかを含有する。このような光輝性顔料40は、偏平形状を呈した粒子を含んでおり、粒子径(全長)が極めて大きいものを含んでいる。
【0023】
ここで、チキソトロピー性を有するインキとは、粘度がインキに掛かる剪断によって変化する性質を有するインキである。即ち、インキ収納部4内のような静的状態ではインキは高粘度であり、これがペン先チップ2内においてボール15が回転している場合の様に、インキが流動性を持つと、10ミリパスカル秒(mPa・s)以下のような遙かに低い粘度となる性質を持つ。尚、チキソトロピー性を有するゲル化剤を添加した水溶性インキを一般に水溶性ゲル状インキと称している。
【0024】
なお、本実施形態のインキ組成物の好適な粘度範囲は20,000〜30,000ミリパスカル秒(mPa・s)である。本発明のインキ組成物は係る粘度範囲に調整される。なお、この粘度はELD型粘度計(3°R14コーン、回転数:0.5rpm、摂氏20度)における測定値である。
【0025】
また本実施形態では、インキ収納部4内のインキは、80キロパスカルから、120キロパスカル程度に加圧されている。
【0026】
ペン先チップ2と先栓3は、図2に示すように、インキ収容部4の先端部に先栓3の後端側が嵌められており、さらに先栓3の先端部にペン先チップ2の後端側が嵌められている。ペン先チップ2はボール15(筆記用のボール)を有しており、ペン先チップ2と先栓3の内部にはバネ11が収容されている。
【0027】
バネ11は、図2に示すように、ボール15をペン先チップ2の中から外へ向かって付勢するための付勢部材である。バネ11は、略全体として螺旋状に巻かれたコイル形状であって付勢力を有しており、バネ11の先端部33は螺旋ではなく直線状をなしている。バネ11は、ペン先チップ2のインキ導通孔12と、先栓3のインキ導通孔13とに渡って位置しており、バネ11の後端側は、先栓3の段部6と当接し、段部6に係止している。バネ11の先端部33は、後記するインキ導通孔12を経てボール15と当接し、ボール15をペン先チップ2の中から外へ向けて押圧している。
そのためボール15によってペン先チップ2の先端開口18が強制的に封止され、インキの漏れを防いでいる。
【0028】
先栓3は、図2に示すように、ペン先チップ2をインキ収容部4に接続するための接続部材であって、その外形は短い円柱状である。先栓3の内部は空洞であり、インキ収容部4からペン先チップ2にインキを導通するためのインキ導通孔13を有する。先栓3の内部の後端側には、先栓3の他の部分より縮径した段部6が設けられており、段部6でバネ11を係止している。
【0029】
ペン先チップ2は、図2に示すように、全体として略円柱状であるが、その先端部14はテーパ状をなしており、文字や図柄を書くためのボール15を備えた部材である。ペン先チップ2の内部は空洞であり、先栓3からペン先チップ2にインキを導通するためのインキ導通孔12を有する。インキ導通孔12は、先栓3のインキ導通孔13と連通している。
【0030】
ペン先チップ2の先端部14は、図2,3に示すように、先端開口部18を有しており、先端開口部18からボール15の一部が露出するように、ボール15が設けられている。先端開口部18は、ボール15がペン先チップ2の外へ飛び出さないように、先端部14の他の部分より窄められている。
【0031】
つぎに、ペン先チップ2の先端部14の内部構造について説明する。先端部14の内側には、図4図5図8等に示すように、内壁17で囲まれた空間であるボールハウス16を有している。即ちボールハウス16は、円筒形の内壁17で囲まれた空間であり、その底に相当する部位に座部20がある。また座部20には、図5図7図9に示すように、2条の溝(矢溝)24が設けられている。座部20の中心には中央孔30が開口している。
【0032】
中央孔30は、図5図7図8図9に示すように、断面形状が円形の貫通孔であり、中央孔壁31で囲まれた空間である。中央孔30は、インキ導通孔12の一部であり、インキ導通孔12のボールハウス16に対する開口近傍が小径に絞られた部位である。従って中央孔30は、ボールハウス16側と、インキ導通孔12の双方に連通している。中央孔30は、バネ11の先端部33を挿通するための孔としても機能し、光輝性顔料40を含有した高粘度のインキ(図示省略)を、インキ導通孔12からボールハウス16へ導出するための孔としても機能する。中央孔30は、バネ11の先端部33の外径よりも大きく、ボールハウス16よりも小径に絞られている。このことにより、中央孔30は、バネ11の先端部33によって塞がれることはなく、ボール15を、バネ11の先端部33が押圧することを妨げることはない。
【0033】
座部20は、前記した様に、ボールハウス16内の底を形成する部位である。座部20には図5図7図9の様に矢溝24が2条設けられている。即ち矢溝24は、中央孔30を起点として対向する方向に延びている。そして2条の矢溝24終縁は、座部20の周端部に至っている。即ち矢溝24の端部は、ボールハウス16の内壁17に至っている。
【0034】
そして本実施形態では、通常のボールペンチップに比べて矢溝24の幅が広く、座部20は縁の部分だけが残っている。そのため本実施形態では、ボール15が当接するボール保持部は、平面視したところ図7図9の様に三日月形の辺21を残すのみである。即ち本実施形態では、座部20は、三日月状の辺21を有しており、ボールペン1で文字や図柄を書く際には、辺21とボール15とが接触し、ボール15を回転可能なように支持する。なお、ボールペン1を使用しない際には、ボール15はバネ11の付勢力によってやや浮いた状態となっている。座部20は、図5においては、作図の都合上、平坦な形状に見えるが実際上は、テーパ状をなしている。そのため座部20は、中央孔用壁31より、座部用壁22の高さ分だけ垂直方向に高くなっている。
【0035】
矢溝24は、図5に示すように、有底の溝であり、内壁17と、座部用壁22と、底26で囲まれた空間であり、ボールハウス16内に設けられている。本実施形態では、2条の矢溝24が設けられている。即ち矢溝24は、中央孔30を中心として、2条、放射状に設けられており、二つの矢溝24は、中央孔30を挟んで直線状に配置されている。なお本発明は矢溝の条数を限定するものではなく、3本又はそれ以上の条数を持つ矢溝であってもよい。
前記した様に矢溝24は有底であるから、先端開口部18側と、中央孔30側の双方に開口している。
矢溝24は公知のそれと同様に、光輝性顔料40を含有した高粘度のインキ(図示省略)を、中央孔30から先端開口部18へ導出するための導出路である。矢溝24は、有底であって、ボールハウス16側からボールペンチップの後端側には不貫通の溝であり、バネ11の先端部33が入り込むことはなく、ボール15を座部20に配置した状態でも、ボール15によって封鎖されることはない。
矢溝24の底26の横幅W(図9)によって、矢溝24の幅Wが決まる。なお本実施形態では、矢溝24の幅Wは、一定である。
【0036】
ボール15は、文字や図柄を書くための球であり、ボールペン1の主要構成をなすものである。ボール15は、図3に示すように、その一部がボールハウス16の開口である先端開口部18から露出している。ボール15は、図8に示すように、ボールハウス16内で回転可能に保持される。ボール15は、ボールハウス16よりも若干小さく、ペン先チップ2の中央孔30よりも十分大きい。
【0037】
つぎに、ペン先チップ2の先端部14における各部分の位置関係について説明する。
ボール15を含有したペン先チップ2の先端部14は、図3図6(a)に示すように、正面視で先端開口部18からボール15の一部が露出しており、図6(b)に示すように、平面視で先端開口部18の内側に、ボール15のみが見える状態である。
図6(c)及び図11は、ボール15の最大径部分でペン先チップ2を破断した状態の断面図である。図6(c)及び図11の様に、ボール15が最大径で断面してみても、矢溝24および座部20ははっきりと見える状態であり、2条の矢溝24の合計長さは、ボール15の直径よりも大きい。なお図11では、矢溝24を黒ベタで表現している。
図10は、ボール15と座部20との接点で切断した断面図である。また図6(d)は、ボール15の最下部よりもさらに下側の部位で破断した断面図である。図6(d)において、矢溝24を構成する底26の全部が見える状態である。また中央孔30についても見えている。
即ち、中央孔30と矢溝24、矢溝24とボールハウス16とは、いずれもボール15で塞がれることなく連通しており、さらに、ボールハウス16もボール15で塞がれてはいない。
【0038】
また図6(e)は、ボール15のさらに下側の部位で破断した断面図である。図6(e)の断面部位においては、矢溝24は存在しない。
【0039】
図7(a)〜(e)は、ボール15とバネ11の図示を省略した先端部14を示しており、それぞれ図6(a)〜(e)の位置に相当している。即ち、図6(b)〜(e)において中央孔30が見える状態であり、中央孔30と矢溝24、中央孔30とボールハウス16、矢溝24とボールハウス16、ボールハウス16と先端開口部18とはいずれも連通している。
【0040】
つぎに、ペン先チップ2の先端部14の寸法関係について説明する。
図8に示すように、中央孔30の内径は、ボールハウス16及びインキ導通孔12よりも小さく形成され、中央孔30は、インキ導通孔12と矢溝24の双方に連通している。中央孔30の内径aはボール15の径の半分から3分の2程度であり、中央孔30の高さ(長さ)Zはボール15の径の半分以上である。
バネ11の直径bは0.008mm〜0.14mmであり、中央孔30の内径aとバネ11の直径bとの差は、中央孔30の半分程度である。このことにより、光輝性顔料40等を含有した高粘度のインキを導通可能であり、且つバネ11の水平方向への可動範囲は制限される。また、バネ11の高さ方向の可動範囲は、ボール15の大きさに依存するところが大きいが、バネ11がボール15から押圧されても、中央孔30の高さZ以上の位置まで押されることはなく、バネ11の先端部33が中央孔30から外れることはない。即ち、バネ11の高さ方向の可動範囲はボール15の移動可能範囲たる軸方向のガタの範囲に制限される。
【0041】
図8図9にも示すように、座部20の座面には矢溝24が2条設けられている。前記した様に矢溝24は、有底であってボールハウス16側と中央孔30(インキ導通孔)の双方に開口している。
またボール15を中央孔30に配置した状態においても、ボール15によって矢溝24が封鎖されることはない。
【0042】
図10は、図8のペン先チップのB−B断面図であり、ボール15と座部20との接点における断面図を図示している。図10では、前記した様に矢溝24を黒ベタで表示している。
図10から明らかな様に、ボール15を中央孔30に配置した状態においても、ボール15によって矢溝24が封鎖されることはない。
黒ベタで表示した部分の面積、即ちボール15を座面(座部20)の中央に設置した状態において、前記ボール15によって封鎖されることなくボールハウス16側に開口する部位を先端開口側から見た正投影面積は、2条の各溝それぞれ0.02mm2 (平方ミリメートル)以上である。より望ましくは、0.04mm2 (平方ミリメートル)以上である。
【0043】
また、図9に示すように、矢溝24の横幅Wは、一般的なボールペンの矢溝よりも広く、0.20mm〜0.50mm程度であり、より望ましくは0.25mm〜0.45mmである。さらに、図8に示すように、矢溝24は有底であり、座部20の厚みZに対して、矢溝24の深さVは、Zの略半分の0.20mm〜0.60mm程度である。
【0044】
また、図12に示すように、ボールハウス16側に開口する矢溝24の先端開口部18側から見た正投影面積S1は、0.02mm2 (平方ミリメートル)以上であり、中央孔30側に開口する矢溝24の投影開口面積S2も、0.02mm2 (平方ミリメートル)以上である。なお投影開口面積S2は、図10の黒ベタで表示している領域でもある。
また、投影開口面積S2は、正投影面積S1以上の面積である。このことにより、座部20の矢溝24は、光輝性顔料40を含有した高粘度のインキを導通可能な開口面積を有している。
【0045】
ボール15は、直径dが0.3mm〜1.0mmの球であり、より望ましくは0.5mm〜0.8mmの球である。ボール15の素材は特に限定がなく、ステンレススチールやアルミナ焼結体、ジルコニア、SiC、WCその他公知のものが使用できる。ボール15は、図8に示すように、ボールハウス16内に回転可能に保持され、その一部がボールハウス16の開口である先端開口部18から露出している。ボール15の露出量Hは、ボールハウス16の中心軸上にボール15の中心が位置するとき、ボール15の直径dの30%〜45%である。なお、ボール15は、ボールペン1で文字や図柄を書く際に、座部20に当接し回転可能なように支持される。ボールペン1を使用しない際には、バネ11の付勢力によってボール15は浮いているため、座部20とボール15とは当接しない。
【0046】
ボールハウス16は、内壁17に囲まれた空間である。内壁17の内径D(図8)は、ボール15の直径dに50μm〜100μm(マイクロメートル)足した大きさ以上であり、より望ましくは50mm〜80mmである。このことにより、ボール15の直径dに対して50μm(マイクロメートル)以上大きい。即ち、ボール15を座部20に当接させたとき、ボール15の赤道(ボールハウス16の中心軸に対して垂直であってボール15の中心を通る位置)部分において、ボール15とボールハウス16との間に25μm(マイクロメートル)以上の隙間ができる。
【0047】
また前記した様に、矢溝24の端部は、座部20の周端部に至っているから矢溝24の終端部は、ボール15を上部から正投影した領域からはみ出す。即ち図11で説明した様に、ボール15の最大径部分で切断した断面図を見ても、矢溝24が黒ベタ部分の様に見える。この黒ベタ部分の面積は、2条の矢溝24それぞれ0.003平方ミリメートル以上である。
【0048】
上記した実施形態のペン先チップ2では、溝(矢溝)24の条数が2条であった。図15図17に示すペン先チップ50(関連発明)では、溝(矢溝)51を3条備えている。また前記したペン先チップ2では、座部20がすり鉢状であったが、図15図17に示すペン先チップ50では、座部52が中高形状となっている。即ちペン先チップ50の座部52は、中心部分が突出しており、周辺に向かう程、凹んでいる。
【0049】
本実施形態のペン先チップ50においても、ボール15とボールハウス53の寸法関係及び、溝(矢溝)51とボール15との寸棒関係は、先の実施形態と同一である。
即ちボール15を座面(座部52)の中央に設置した状態において、前記ボール15によって封鎖されることなくボールハウス53側に開口する部位を先端開口側から見た正投影面積は、3条の各溝それぞれ0.02mm2 (平方ミリメートル)以上である。より望ましくは、0.04mm2 (平方ミリメートル)以上である。
【0050】
また、矢溝51の横幅Wは、0.20mm〜0.50mm程度であり、より望ましくは0.25mm〜0.45mmである。さらに、図17に示すように、矢溝51は有底であり、座部52の厚みに対して、矢溝51の深さは略半分の0.20mm〜0.60mm程度である。
【0051】
また、ボールハウス53側に開口する矢溝51の先端開口部18側から見た正投影面積S1は、0.02mm2 (平方ミリメートル)以上であり、中央孔30側に開口する矢溝51の投影開口面積S2も、0.02mm2 (平方ミリメートル)以上である。また、投影開口面積S2は、正投影面積S1以上の面積である。
ボールハウス53の内径Dは、ボール15の径に50μm〜100μm(マイクロメートル)足した大きさ以上であり、より望ましくは50mm〜80mmである。このことにより、ボール15の直径dに対して50μm(マイクロメートル)以上大きい。
【0052】
また先の実施形態では、インキ収納部4内を加圧し、栓部39を設けて内部の圧力が逃げない様に構成した。即ち先の実施形態のボールペン1では、インキ収納部4内がガスによって加圧されている。
これに対して、バネ等の弾性体によって、機械的に押圧し、インキ収納部4内のインキを加圧してもよい。
例えば図18に示すボールペン60では、インキ収納部4に可動栓61を設け、可動栓61とペン先チップ2の間にインキ62を充填する。そして可動栓61をバネ63でペン先チップ2に押圧してインキ収納部4のインキ62を昇圧する。
【0053】
つぎに、上述のように構成した本発明の実施形態のボールペン1の各パラメータの内、ボールハウス16側に開口する矢溝24の先端開口部18側から見た正投影面積S1と、中央孔30側に開口する矢溝24の投影開口面積S2について、実験結果に基づいて説明する。
正投影面積S1及び投影開口面積S2は、ペン先チップ2の先端開口部18からインキを導出することに大きな影響を与える。即ち、正投影面積S1及び投影開口面積S2の各々の面積が極端に小さいと光輝性顔料40が通らないという問題があり、前記面積が極端に大きいと加圧されたインキが一気に噴出することになり、さらに加圧インキの圧力や、ボール15とボールハウス16との隙間、中央孔30の内径aとバネ11の直径bとの差等の各パラメータと相互に影響を与え合い、正投影面積S1及び投影開口面積S2の最善の面積を導き出すまでには多くの実験を必要とした。
【0054】
その数多の実験の中から、最終的に前記面積を導き出すに至った実験について説明する。
実験では、ペン先チップ2の評価サンプルをA、B、Cの3種類に絞り込んで実験を行った。評価サンプルAは正投影面積S1を0.02mm2 (平方ミリメートル)以下とし、投影開口面積S2を0.02mm2 (平方ミリメートル)以上とした。評価サンプルBは正投影面積S1を0.02mm2 (平方ミリメートル)以上とし、投影開口面積S2を0.02mm2 (平方ミリメートル)以下とした。そして、評価サンプルCは正投影面積S1を0.02mm2 (平方ミリメートル)以上とし、投影開口面積S2を0.02mm2 (平方ミリメートル)以上とした。
そして、各評価サンプルを、立体感、光沢感、キラキラ度、書きやすさ、細文字、防漏度の6種類の項目にて、1(非常に悪い)、2(悪い)、3(どちらともいえない)、4(良い)、5(非常に良い)の6段階の基準で評価した。
実験の評価結果は図19の通りとなった。
図19に示す通り、評価サンプルAは6種類の全ての項目で最低の1(非常に悪い)となり、評価サンプルBは6種類の全ての項目で3(どちらともいえない)となった。
一方、評価サンプルCは6種類の全ての項目で5(非常に良い)となり、最善の面積を導き出すことができた。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、立体的に盛り上がった文字等を書くことができ、且つキラキラした光輝感のある文字等を書くことができ、さらに細かい文字や図柄を書くことができる。
【符号の説明】
【0056】
1,60 ボールペン
2,50 ペン先チップ
4 インキ収納部
11 バネ
12 インキ導通孔
15 ボール(筆記用のボール)
16 ボールハウス
18 先端開口部
20,52 座部(座部)
24,51 矢溝(溝)
40 光輝性顔料(固形成分)
S1 ボールハウス側に開口する矢溝の先端開口部側から見た正投影面積
S2 中央孔側に開口する矢溝の投影開口面積
W 矢溝の底幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図18
図19