特許第5808105号(P5808105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808105
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】熱源システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20151021BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   F25B15/00 303E
   F25B29/00 431Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-294244(P2010-294244)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-141097(P2012-141097A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】和島 一喜
(72)【発明者】
【氏名】高添 勇三
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−211979(JP,A)
【文献】 特開2004−190885(JP,A)
【文献】 特開平08−285401(JP,A)
【文献】 特開昭57−117761(JP,A)
【文献】 特開2010−255862(JP,A)
【文献】 特開2006−017350(JP,A)
【文献】 特開2003−075017(JP,A)
【文献】 特開2010−216779(JP,A)
【文献】 特開平03−144263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
F25B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、
温熱が供給されて溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させる吸収器を備えた吸収式冷凍機と、
を備え、
前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器に対して温熱を出力し、
前記吸収式冷凍機は、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力し、
前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、前記電動ヒートポンプの前記凝縮器と前記外部温熱負荷との間から分岐して前記吸収式冷凍機の前記再生器に供給することにより、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力する制御部を備えていることを特徴とする熱源システム。
【請求項2】
電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、
溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、前記凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させて温熱を出力する吸収器を備えた吸収式二種ヒートポンプと、
を備え、
前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器および前記蒸発器に対して温熱を出力し、
前記吸収式二種ヒートポンプは、前記吸収器から前記外部温熱負荷よりも高温とされた外部高温温熱負荷に対して温熱を出力し、
前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を前記吸収式二種ヒートポンプの前記再生器および前記蒸発器に供給する制御部を備えていることを特徴とする熱源システム。
【請求項3】
電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、
温熱が供給されて溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させる吸収器を備えた吸収式冷凍機と、
を備えた熱源システムの制御方法であって、
前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器に対して温熱を出力し、
前記吸収式冷凍機は、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力し、
制御部により、前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、前記電動ヒートポンプの前記凝縮器と前記外部温熱負荷との間から分岐して前記吸収式冷凍機の前記再生器に供給することにより、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力することを特徴とする熱源システムの制御方法。
【請求項4】
電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、
溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、前記凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させて温熱を出力する吸収器を備えた吸収式二種ヒートポンプと、
を備えた熱源システムの制御方法であって、
前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器および前記蒸発器に対して温熱を出力し、
前記吸収式二種ヒートポンプは、前記吸収器から前記外部温熱負荷よりも高温とされた外部高温温熱負荷に対して温熱を出力し、
制御部により、前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を前記吸収式二種ヒートポンプの前記再生器および前記蒸発器に供給することを特徴とする熱源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱出力および温熱出力を行う熱源システムおよびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷水と温水とを同時に効率良く製造する方法として、電動ヒートポンプが知られている。図3には、このような電動ヒートポンプが示されている。同図(a)に示すように、電動ヒートポンプ101は、電動圧縮機105にて圧縮された冷媒が凝縮する凝縮器107にて温水を加熱するとともに、凝縮器107にて凝縮した液冷媒を膨張弁109によって膨張させて蒸発器111にて蒸発させることで冷水を冷却するようになっている。
蒸発器111にて冷却された冷水は、冷水ポンプ113によって冷熱負荷115へと供給される。
凝縮器107にて加熱された温水は、温水ポンプ117によって温熱負荷119へと供給される。また、冷熱出力と温熱出力がバランスしない場合には、余剰温熱を冷却塔121にて排熱している。具体的には、温水の一部を三方弁123を介して熱交換器125へと分岐させ、冷却塔121から導かれた冷却水と熱交換させるようになっている。このように温水の一部を分岐させる構成は、図3(b)に示したようなダブルバンドル型(凝縮器107に温水出力用伝熱管107a及び排熱用伝熱管107bが設けられた構成)についても同様である。
【0003】
図4には、上記構成の電動ヒートポンプ101の熱収支が示されている。同図に示されているように、電動ヒートポンプ101の冷熱出力を「0.7」、電動圧縮機の入力電力を「0.3」とすると、温熱出力は「1.0」となる。温熱負荷が要求する熱量が「0.5」の場合には、余剰温熱の「0.5」は排熱されることになる。
【0004】
また、下記特許文献1には、低段側を圧縮式冷凍機を用いた冷凍サイクルとし、高段側を吸収式ヒートポンプを用いたヒートポンプサイクルとして、冷却と加熱を同時に行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−20065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図3に示したような電動ヒートポンプは、図4に示したように余剰温熱を有効利用せずに捨ててしまうものであり、効率向上を妨げる一因となっていた。
一般に、電動ヒートポンプは、所定の電気エネルギーを投入して低温熱源から熱回収して(冷熱を出力して)高温側へと熱を移動させるものであるため、熱回収量(冷熱出力)と温熱出力との間には一定の比率がある。したがって、冷熱負荷が要求する冷熱出力が増大すると、これに対応して温熱出力も増大する。特に、夏期の場合、冷熱負荷が要求する熱量は温熱負荷が要求する熱量に比べて大きくなるので、余剰温熱がさらに増大するという問題がある。
なお、特許文献1に記載のものは、冷熱および温熱を同時に出力するものであるが、余剰温熱の有効利用については何ら言及されていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高効率にて冷熱および温熱を出力することができる熱源システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の熱源システムおよびその制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱源システムは、電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、温熱が供給されて溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させる吸収器を備えた吸収式冷凍機とを備え、前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器に対して温熱を出力し、前記吸収式冷凍機は、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力し、前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、前記電動ヒートポンプの前記凝縮器と前記外部温熱負荷との間から分岐して前記吸収式冷凍機の前記再生器に供給することにより、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力する制御部を備えていることを特徴とする。
【0009】
外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する電動ヒートポンプの温熱出力から、外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、吸収式冷凍機の再生器へと供給して駆動用熱源として用いることとした。これにより、従来は有効利用されずに捨てられていた余剰温熱出力を有効利用することができる。また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式冷凍機の冷熱出力が外部冷熱負荷へ供給されるので、さらに熱源システムの効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の熱源システムは、電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、前記凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させて温熱を出力する吸収器を備えた吸収式二種ヒートポンプとを備え、前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器および前記蒸発器に対して温熱を出力し、前記吸収式二種ヒートポンプは、前記吸収器から前記外部温熱負荷よりも高温とされた外部高温温熱負荷に対して温熱を出力し、前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を前記吸収式二種ヒートポンプの前記再生器および前記蒸発器に供給する制御部を備えていることを特徴とする。
【0011】
外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する電動ヒートポンプの温熱出力から、外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、吸収式二種ヒートポンプの再生器および蒸発器へと供給して駆動用熱源として用いることとした。これにより、従来は有効利用されずに捨てられていた余剰温熱出力を有効利用することができる。また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式二種ヒートポンプの温熱出力が外部温熱負荷よりも高温とされた外部高温温熱負荷へ供給することができるので、温熱の用途を広げることができる。また、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の熱源システムの制御方法は、電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、温熱が供給されて溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させる吸収器を備えた吸収式冷凍機とを備えた熱源システムの制御方法であって、前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器に対して温熱を出力し、前記吸収式冷凍機は、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力し、制御部により、前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、前記電動ヒートポンプの前記凝縮器と前記外部温熱負荷との間から分岐して前記吸収式冷凍機の前記再生器に供給することにより、前記蒸発器から前記外部冷熱負荷に対して冷熱を出力することを特徴とする。
【0013】
外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する電動ヒートポンプの温熱出力から、外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、吸収式冷凍機の再生器へと供給して駆動用熱源として用いることとした。これにより、従来は有効利用されずに捨てられていた余剰温熱出力を有効利用することができる。また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式冷凍機の冷熱出力が外部冷熱負荷へ供給されるので、さらに熱源システムの効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の熱源システムの制御方法は、電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器、該凝縮器によって凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁、及び、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器を備えた蒸気圧縮式の電動ヒートポンプと、溶液を加熱濃縮して再生させる再生器、該再生器から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器、前記凝縮器にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器、及び、該蒸発器によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させて温熱を出力する吸収器を備えた吸収式二種ヒートポンプとを備えた熱源システムの制御方法であって、前記電動ヒートポンプは、前記蒸発器から外部冷熱負荷に対して冷熱を出力するとともに、前記凝縮器から外部温熱負荷および前記吸収式冷凍機の前記再生器および前記蒸発器に対して温熱を出力し、前記吸収式二種ヒートポンプは、前記吸収器から前記外部温熱負荷よりも高温とされた外部高温温熱負荷に対して温熱を出力し、制御部により、前記外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する温熱出力から、前記外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を前記吸収式二種ヒートポンプの前記再生器および前記蒸発器に供給することを特徴とする。
【0015】
外部冷熱負荷に供給する冷熱出力に対応する電動ヒートポンプの温熱出力から、外部温熱負荷が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、吸収式二種ヒートポンプの再生器および蒸発器へと供給して駆動用熱源として用いることとした。これにより、従来は有効利用されずに捨てられていた余剰温熱出力を有効利用することができる。また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式二種ヒートポンプの温熱出力が外部温熱負荷よりも高温とされた外部高温温熱負荷へ供給することができるので、温熱の用途を広げることができる。また、熱源システムの効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
余剰温熱出力を、吸収式冷凍機の再生器へと供給して駆動用熱源として用いることとし、また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式冷凍機の冷熱出力を外部冷熱負荷へ供給することとしたので、熱源システムの効率を向上させることができる。
また、余剰温熱出力を、吸収式二種ヒートポンプの再生器および蒸発器へと供給して駆動用熱源として用いることとし、また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式二種ヒートポンプの温熱出力を外部温熱負荷よりも高温とされた高温温熱負荷へ供給することとしたので、熱源システムの効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の熱源システムにかかる第1実施形態を示し、(a)概略構成図、(b)は熱収支を示す図である。
図2】本発明の熱源システムにかかる第2実施形態を示し、(a)概略構成図、(b)は熱収支を示す図である。
図3】従来の電動ヒートポンプを示した概略構成図である。
図4図3の電動ヒートポンプの熱収支を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1(a)に示すように、熱源システム1Aは、電動ヒートポンプ2と、吸収式冷凍機3とを備えている。
【0019】
電動ヒートポンプ2は、ターボ冷凍機とされている。ターボ冷凍機は、図示しないが、電動モータによって駆動されて冷媒を圧縮するターボ圧縮機5と、ターボ圧縮機5によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器7と、凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁9と、膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器11とを備えている。
なお、ヒートポンプ2としては、典型的には、本実施形態のようにターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機が挙げられるが、スクリュー式やスクロール式の圧縮機を用いた他の蒸気圧縮式のヒートポンプでもよい。
【0020】
ターボ圧縮機5は、一定速で回転する固定速であっても良いし、インバータ駆動による周波数可変とされた可変速であっても良い。
【0021】
蒸発器11は、冷水配管13によって、空調機等の外部の冷熱負荷15と熱的に接続されている。冷水配管13内には冷水が流通し、冷水ポンプ17によって冷熱負荷15と蒸発器11との間で循環するようになっている。蒸発器11には冷熱負荷15から導かれた例えば15℃の冷水が流入し、蒸発器11内で冷媒から蒸発潜熱を奪い例えば10℃まで冷却された冷水が冷熱負荷15に返送されるようになっている。このように、蒸発器11は、冷熱負荷15に冷熱を出力するとともに、冷熱負荷15から熱回収するようになっている。
なお、冷熱負荷15に供給する冷水温度は、冷熱負荷15から予め要求された設定値となるように図示しない制御部によって運転されるようになっている。具体的には、ターボ圧縮機5の回転数、ターボ圧縮機5に設けた容量制御用ガイドベーンの開度等を調整することによって冷水温度調整が行われる。
【0022】
凝縮器7は、温熱出力配管19によって、外部の温熱負荷21と熱的に接続されている。高温水出力配管19内には熱媒としての温水が流通し、温水ポンプ23によって凝縮器7と温熱負荷21との間で循環するようになっている。凝縮器7からは温熱負荷21に向けて例えば80℃の温水が出力されるようになっており、温熱負荷21にて例えば75℃まで温度低下した温水が凝縮器7に返送されるようになっている。
【0023】
高温水出力配管19には、温水用三方弁20を介して、吸収式冷凍機3へ温水を供給する温水供給配管25が接続されている。この温水供給配管25によって温水の一部が分岐され、吸収式冷凍機3の再生器30へと導かれ、再生器30を通過した後に温水出力配管19へと返送されるようになっている。
温熱負荷21に供給する温水温度は、温負荷21から予め要求された設定値となるように図示しない制御部によって運転されるようになっている。したがって、温水用三方弁20の開度を制御部によって調整することで、温熱負荷21へ供給する温水温度および出力熱量が調整されるようになっている。なお、温水用三方弁20を、2つの二方弁によって構成しても良い。
【0024】
吸収式冷凍機3は、温熱が供給されて溶液を加熱濃縮して再生させる再生器30と、再生器30から導かれた冷媒を凝縮させる凝縮器32と、凝縮器32にて凝縮された液冷媒を蒸発させる蒸発器35と、蒸発器35によって蒸発した冷媒を溶液に吸収させる吸収器37とを備えている。
【0025】
再生器30には、上述したように、温水供給配管25を介して例えば80℃とされた温水が供給されるようになっている。すなわち、電動ヒートポンプ2が出力した温水を吸収式冷凍機3の駆動用熱源としている。
【0026】
凝縮器32は、冷却水によって冷却されるようになっている。冷却水は、冷却水ポンプ39によって、冷却塔41、吸収器37、凝縮器32との間を循環するようになっている。凝縮器32を通過して冷却塔41に流入する前の冷却水温度は例えば37.5℃とされており、冷却塔41によって例えば32℃まで冷却された冷却水が吸収器37へと流入するようになっている。
【0027】
蒸発器35は、冷水配管43によって、冷熱負荷5と熱的に接続されている。冷水配管43内には熱媒としての冷水が流通し、蒸発器35と冷熱負荷5との間で循環するようになっている。蒸発器35からは冷熱負荷5に向けて例えば10℃の冷水が出力されるようになっており、冷熱負荷5にて例えば15℃まで温度上昇した冷水が蒸発器35に返送されるようになっている。このように、吸収式冷凍機3の蒸発器35は、例えば10℃とされた冷水を出力するようになっている。
【0028】
図示しない制御部は、熱源システム1A全体の運転を制御する。
制御部は、電動ヒートポンプの性能データをその記憶部に格納しており、冷熱出力と温熱出力との関係が各状態において演算できるようになっている。したがって、冷凍負荷15に出力した冷熱出力に対応する温熱出力が演算され、温熱負荷21へ供給する温熱出力との差分である余剰温熱も演算できるようになっている。制御部は、この余剰温熱を吸収式冷凍機2へ供給するように、温水用三方弁20の開度を調整する。
【0029】
このように、上記構成の熱源システム1Aは、冷熱負荷15に冷水を供給し、温熱負荷21に温水を供給するとともに、温水の余剰温熱を駆動用熱源として動作する吸収式冷凍機3から冷熱負荷15に冷水を出力するものである。
【0030】
図1(b)には、本実施形態の熱源システム1Aの熱収支が示されている。同図に示されているように、冷熱負荷15に供給する冷熱出力の熱量を「0.7」とし、ターボ圧縮機5の動力の入力熱量を「0.3」とすると、電動ヒートポンプ2の温熱出力は熱量「1.0」となる。この電動ヒートポンプ2の温熱出力のうちの半分である熱量「0.5」を温熱負荷21へ供給し、残りの半分の熱量「0.5」を吸収式冷凍機3の駆動用熱源として使用する。そして、吸収式冷凍機3のCOPを0.8とすると、熱量「0.4」の冷熱を冷熱負荷5へ供給することができる。一方、冷却塔41では熱量「0.9」が排熱される。
熱源システム全体としてのCOPは、入力熱量がターボ圧縮機5の「0.3」であり、温熱負荷21への温熱出力が「0.5」、冷熱負荷5への冷熱出力が「1.1」(0.7+0.4)なので、5.3((0.5+1.1)/0.3)となる。
【0031】
以上の通り、本実施形態にかかる熱源システム1Aによれば、冷熱負荷15に供給する冷熱出力に対応する電動ヒートポンプ2の温熱出力から、温熱負荷21が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、吸収式冷凍機3の再生器30へと供給して駆動用熱源として用いることとしたので、従来は有効利用されずに捨てられていた余剰温熱出力を有効利用することができる。また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式冷凍機3の冷熱出力が冷熱負荷15へ供給されるので、さらに熱源システム1Aの効率を向上させることができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。
本実施形態は、第1実施形態の吸収式冷凍機3が吸収式二種ヒートポンプに変更されており、100℃以上の高温水を出力する構成となっている点で第1実施形態と相違する。それ以外の共通する構成については同一符号を付しその説明を省略する。
【0033】
図2(a)に示されているように、熱源システム1Bは、第1実施形態と同様に低温排熱から排熱回収して90℃以上の高温水を出力する電動ヒートポンプ2と、吸収式二種ヒートポンプ4とを備えている。
電動ヒートポンプ2の温熱出力である温水は、温水出力配管19から、温水用三方弁20を介して、温水供給配管25を介して吸収式二種ヒートポンプ4の再生器3へ供給されるともに、蒸発器35へも供給されるようになっている。
【0034】
吸収式二種ヒートポンプ4の凝縮器32は、冷却水によって冷却されるようになっている。冷却水は、冷却水ポンプ39によって、冷却塔41と凝縮器32との間を循環するようになっている。凝縮器32を通過して冷却塔41に流入する前の冷却水温度は例えば37.5℃とされており、冷却塔41によって例えば32℃まで冷却された冷却水が凝縮器32へと返送されるようになっている。
【0035】
吸収器37と高温温熱負荷55とは、高温水配管57によって熱的に接続されている。すなわち、高温水ポンプ59によって、吸収器37を通り加熱された高温水が高温温熱負荷55へと供給されるようになっている。高温温熱負荷55へは温熱負荷21よりも高い温度の温水が供給され、例えば110℃程度とされた100℃以上の高温水が供給され、例えば100℃まで温度低下した高温水が吸収器37へと返送されるようになっている。
【0036】
このように、本実施形態の熱源システム1Bは、冷熱負荷15に冷水を供給し、温熱負荷21に温水を供給するとともに、温水の余剰温熱を駆動用熱源として動作する吸収式二種ヒートポンプ4から高温温熱負荷55に高温水を出力するものである。
【0037】
図2(b)には、本実施形態の熱源システム1Bの熱収支が示されている。同図に示されているように、冷熱負荷15に供給する冷熱出力の熱量を「0.7」とし、ターボ圧縮機5の動力の入力熱量を「0.3」とすると、電動ヒートポンプ2の温熱出力は熱量「1.0」となる。この電動ヒートポンプ2の温熱出力のうちの半分である熱量「0.5」を温熱負荷21へ供給し、残りの半分の熱量「0.5」を吸収式冷凍機3の駆動用熱源として使用する。そして、吸収式二種ヒートポンプ4は、電動ヒートポンプ2から得た熱量「0.5」によって、熱量「0.25」の110℃の高温水を高温温熱負荷55に出力するとともに、熱量「0.25」を冷却塔41にて排熱する。
熱源システム全体としてのCOPは、入力熱量がターボ圧縮機5の「0.3」であり、温熱負荷21への温熱出力が「0.5」、高温温熱負荷55への温熱出力が「0.25」、冷熱負荷45への冷熱出力が「0.7」なので、4.8((0.5+0.25+0.7)/0.3)となる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、冷熱負荷15に供給する冷熱出力に対応する電動ヒートポンプ2の温熱出力から、温熱負荷21が要求する温熱出力を減じた余剰温熱出力を、吸収式二種ヒートポンプ4の再生器30および蒸発器35へと供給して駆動用熱源として用いることとした。これにより、従来は有効利用されずに捨てられていた余剰温熱出力を有効利用することができる。また、この余剰温熱出力によって駆動された吸収式二種ヒートポンプ4の温熱出力が温熱負荷21よりも高温とされた高温温熱負荷55へ供給することができるので、温水の用途を広げることができる。また、熱源システムの効率を向上させることができる。
【0039】
なお、上述した各実施形態では、吸収式冷凍機または吸収式ヒートポンプとして説明したが、吸収式に代えて、シリカゲル等を用いた吸着式冷凍機または吸着式ヒートポンプを用いることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1A,1B 熱源システム
3 吸収式冷凍機
4 吸収式二種ヒートポンプ
5 ターボ圧縮機
7 凝縮器
9 膨張弁
11 蒸発器
15 冷熱負荷(外部冷熱負荷)
21 温熱負荷(外部温熱負荷)
30 再生器
32 凝縮器
35 蒸発器
37 吸収器
55 高温温熱負荷(外部高温温熱負荷)
図1
図2
図3
図4