【実施例】
【0017】
以下、本発明に係る食品切断装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1において、食品切断装置は、上端部が切断対象食品(以下、単に「食品」という)10の供給部、前面下部が食品10の排出部となっていて、前面は上記供給部と排出部を除き前面パネル15で覆われ、左右両側面はそれぞれ側面カバー14で覆われている。この装置の動作開始前は上記供給部に食品載置台5があり、この食品載置台5に、食品10、例えば、寿司飯が海苔で巻かれた柱状の海苔巻きを水平方向の姿勢で載置するように構成されている。食品載置台5に食品10を載置し、スタートスイッチを押すと、食品載置台5が駆動機構によって装置の前側下部に向かって移動させられ、この移動の途中で食品10が切断刃によって輪切り状に切断され、上記排出部に排出されるように構成されている。排出された食品10は、食品載置台5から放出されて受け取り部材8で受け取られ、受け取り部材8が斜め下方にスライドし、食品載置台5は駆動機構によって原位置に復帰するように構成されている。
【0018】
次に、上記食品切断装置の内部構造を詳細に説明する。
図1乃至
図4において、食品切断装置は、ベース1と、ベース1の左右両端部に結合されて互いに平行に垂直方向に立ち上がった左右の側板4と、各側板4の後端部を連結する背板20を有していて、これらベース1、左右の側板4および背板20で食品切断装置の骨格をなしている。装置の前寄りの位置に切断刃固定枠2がほぼ垂直方向の姿勢で配置されている。切断刃固定枠2は、左右の両端縁部が、左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれ、上記ガイドレールにより左右の側板4間に実質的に固定されている。
【0019】
切断刃固定枠2は、高さが装置の高さよりも僅かに低い四角形の枠形で、上下の桟にわたって複数の切断刃3が互いに平行に配置されている。図示の例では7本の切断刃3が一定間隔で配置されていて、食品10を8等分するようになっている。各切断刃3は細長い薄板状の部材で、その幅方向が装置の前後方向に向くように、かつ、刃の形成縁が背面側を向くように配置されている。各切断刃3の表面は食品10に対する滑りをよくするために例えばフッ素樹脂などでコーティングされている。各切断刃3は長さ方向の両端部が切断刃固定枠2の上記上下の桟に固定された両持ち形式であるため、上記のように細長い薄板状の部材であっても、十分大きな機械的強度を保つことができる。
【0020】
前記食品載置台5は、
図3、
図17に示すように、上側のほぼ半分の側面形状がL字形に形成されることにより、L字の水平辺と垂直辺からなる角隅部に切断前の食品10を載置することができるようになっている。より具体的には、上記L字の水平方向に延びる部分が食品10の底面受け51、上記L字の垂直方向に延びる部分が食品10の背面受け52となっている。
【0021】
図16、
図17、
図18に示すように、上記底面受け51は、左右両端部が前方に向かって延び出た突出部59となっていて、これらの突出部59に挟まれた中央部の前端面は上記突出部59の前端面から後退している。上記左右の突出部59と上記中央部との間には、前端面から後方に向かってスリット79が形成されている。上記左右の突出部59を左右方向に貫いて水平軸55が設けられ、水平軸55によって位置規制部材7が垂直面内において回転可能に支持されている。各位置規制部材7は、上記各突出部59の外側面側に位置する外側レバー701と、内側面側に位置する内側レバー702を対にして有している。対をなす外側レバー701と内側レバー702はそれぞれの前端部が軸74で連結されることにより平面形状がU字状に一体化されていて、さらに、上記水平軸55で連結されることにより、上記突出部59の内外両側において水平軸55を中心に回転可能に支持されている。上記各軸74は上記各突出部59の前方に位置し、各軸74には円柱形状の錘75が取り付けられている。内側レバー702の水平軸55より後ろ側の大半は上記スリット79内にある。
【0022】
各外側レバー701は後方に延びた腕71と前方に延びた腕72と下方に延びた突起73を有する3腕状のレバーで、前方に延びた腕72の前端部と内側レバー702の前端部が上記軸74で連結されている。
図18に示すように、各内側レバー702は、水平軸55よりも後ろ側に三つの突起76,77,78を、前側から後ろ側に向かってこの順に有している。位置規制部材7は水平軸55を中心とした前後の重量バランスによって姿勢が変わるようになっていて、外力が加わらない自然状態では、
図3、
図19等において反時計回りに回転付勢され、上記突起73が食品載置台5の側部に形成された突出部50の前端面69に当接することにより上記付勢力による回転が規制されるようになっている。
図19は、位置規制部材7が上記のような外力が加わらない自然状態で、付勢力による回転が規制されている状態を示している。位置規制部材7が
図19に示すような自然状態での姿勢をとっているときは、三つの突起76,77,78が全て食品載置台5の底面受け51の上面よりも上方に進出する。
【0023】
三つの突起76,77,78は、食品載置台5に載置される食品10の前方に進出することにより、食品10が底面受け51上を前方に向かって移動することを阻止して食品10を所定の位置に位置規制するストッパの役目をする。食品10の横断面の大きさは大、中、小の3段階に分けることができる。
図19は小サイズの食品10が底面受け51と背面受け52で形成される角隅部に載置されることにより、小サイズの食品10が内側レバー702の後端よりも後方にあり、位置規制部材7が上記のような重量バランスによる付勢力で回転し、かつ突起73が食品載置台5の側部に形成された突出部50の前端面69に当接して回転が阻止された姿勢をとっている。この回転姿勢では三つの突起76,77,78のうち最も後ろの突起78が食品10の前方にあって食品10の移動を阻止している。
【0024】
中サイズの食品が食品載置台5に載置されると、各内側レバー702の突起77と突起78の間の窪みに食品の前端下縁部が当たり、食品の重みで位置規制部材7を
図19に示す態様から時計回りに回転させ、突起77で食品の移動を阻止する。
図17、
図18は大サイズの食品10が食品載置台5に載置された状態を示している。大サイズの食品10が食品載置台5に載置されると、各内側レバー702の突起76と突起77の間の窪みに食品10の前端下縁部が当たり、食品10の重みで位置規制部材7を
図17、
図18においてさらに時計回りに回転させ、突起76で食品10の移動を阻止するようになっている。上記のように中サイズまたは大サイズの食品10の重みによって各位置規制部材7が回転するとき、その内側レバー702の後半部分が、弧を描きながら前記スリット79内を移動する。
【0025】
各位置規制部材7の外側レバー701の腕71は、食品10が切断刃3で切断されたあと位置規制部材7による食品10の位置規制を解除し、切断された食品10を食品載置台5から放出するために設けられている。上記腕71は、左右の側板4に固定されているストッパ11と共働して位置規制部材7を前記付勢力に抗して回転させ、前記突起76,77,78による食品10の位置規制を解除し、切断された食品10を放出するようになっている。この放出動作については本実施例の動作の説明で詳細に説明する。
【0026】
食品載置台5に載置されている食品10を前記切断刃3で切断するために、食品載置台5には切断刃3が進入することができるスリット58が形成されている。スリット58は切断刃固定枠2に固定される切断刃3の数および設置位置に対応した数と位置に設けられる。図示の実施例では、食品10の分割数を4個、6個、8個のいずれかを選択することができるように、左右方向の中央のスリットを中心にして上記の分割数にそれぞれ対応した位置にスリット58が形成されている。各スリット58は、切断刃3を迎え入れて食品10を確実に切断することができるように、
図16に示すように、前記底面受け51および背面受け52を含む広い範囲にまたがって深く切り込まれている。
【0027】
食品載置台5は、図示の実施例ではフッ素系の樹脂を切削加工して製作されている。したがって、上記のように複数のかつ深いスリット58を設けると強度が低下するので、スリット形成部分を避けた櫛歯形の金属製補強部材(図示されず)を固着して強度を補っている。なお、食品載置台5は、これを板金加工によって作成してもよい。
【0028】
食品載置台5の底面受け51には、スリット58と平行に複数の溝57が刻まれている。上記溝57は、後で詳細に説明する受け取り部材8の突起85と共働して、切断された食品10を受け取り部材8に円滑に受け渡すために設けられている。上記溝57は、食品10の前記何れの分割数にも対応できる位置に形成されていて、スリット58の縁部に刻まれているものもあり、スリット58相互間に刻まれているものもある。
【0029】
図3、
図16などに示すように、食品載置台5には、載置される食品10の長さ方向両端位置を規制する規制板56が背面受け52の両端部に設けられている。規制板56は金属板を折り曲げて成形したもので、その基部で背面受け52を上側から挟み込むように装着し、固定ねじ60で取り付け位置を固定するようになっている。固定ねじ60を緩めると規制板56の位置を上記背面受け52に沿ってずらすことができる。食品10が例えば海苔巻き寿司であるとすれば、海苔の寸法は205mm×185mmに規格化されているため、海苔を横長にして巻くか、縦長にして巻くかによって切断前の海苔巻き寿司の長さが変わる。そこで、固定ねじ60を緩めて一対の規制板56の間隔を海苔巻き寿司の長さに合致するように調整し、固定ねじ60を締めつけて規制板56を固定する。
【0030】
次に、前記駆動機構6について詳細に説明する。
図2ないし
図4において、左の側板4の内面側には駆動源としてのモータ61が固定され、モータ61の出力軸に固着されたギヤ62は、軸64に固着されたギヤ63と噛み合っている。軸64は左右の側板4にまたがって回転可能に支持されていて、左右の側板4を貫通した軸64の両端部にはそれぞれ駆動アーム65が固着されている。モータ61の回転駆動力は、ギヤ62,63を介して軸64に伝達され、軸64と一体の各駆動アーム65を各側板4の外側面と平行をなす面内において回転駆動するように構成されている。各駆動アーム65は軸64の回転中心を通る直線に沿って長孔66を有していて、この長孔66に、食品載置台5の前記二つのピン53,54のうち前側のピン53が嵌っている。したがって、各駆動アーム65が軸64とともに軸64を中心に回転駆動されると、長孔66を画する側面でピン53が押され、各駆動アーム65の回転に伴って食品載置台5も移動させられるようになっている。
【0031】
食品載置台5の左右両側にある上記二つのピン53,54はカム溝91に嵌っていてカムフォロワとして機能している。食品載置台5の高さ位置および姿勢は二つのピン53,54の高さ位置および相対的な高さの違いによって決まり、二つのピン53,54の相対的な高さ位置関係はカム溝91の形によって決まる。図示の例では、カム溝91はカム板9に形成されていて、カム板9が側板4に固定されている。カム溝91は、これを側板4に形成してカム板9を省略してもよい。
【0032】
カム溝91は、
図11、
図12などに示すように、食品10が切断刃3に接触し始めると食品10に対する切断刃3の進入角度が連続的に変化するように食品載置台10の姿勢を連続して変化させる円弧部93と、食品10に切断刃3が侵入した後は食品載置台5の姿勢を一定に保って食品載置台5を直線的に移動させる直線部94を有してなる。上記円弧部93を上記二つのピン53,54が通るとき、食品10に対する切断刃3の進入角度の連続的な変化が、食品10の切断刃3に対する相対速度を早めるように、上記二つのピン53,54が摺接する上記円弧部93の面(
図11、
図12において下側の面)が凸面に形成されている。
【0033】
切断刃3はほぼ垂直方向の姿勢を保って固定されているのに対し、カム溝91の上記直線部94は適宜の角度傾いていて、直線部94に沿って食品載置台5が上から斜め下に向かって移動するとき、食品載置台5はお辞儀をしたように傾斜した姿勢すなわち前傾姿勢をとっている。この傾斜した姿勢をとっている食品載置台5に保持された食品10に切断刃3が上記傾斜角度に対応した角度で接しながら食い込むようになっている。
【0034】
カム溝91は、上端部が上記円弧部93に続く円弧部92になっている。この円弧部92に上記二つのピン53,54があるとき、
図3、
図4に示すように食品載置台5は最も上位にあり、かつ、底面受け51が水平の姿勢よりも僅かに奥側が下がった姿勢になって、食品10の受け入れ姿勢をとるようになっている。駆動機構6は、モータ61からカム溝91に至る構成部分を含んでいる。
【0035】
ここで、上記二つのピン53,54がカム溝91に沿って移動するときの食品載置台5の姿勢および位置の変化について説明しておく。上記のように食品10の受け入れ姿勢をとっている食品載置台5に食品10を載置し、駆動機構6を作動させると、二つのピン53,54がカム溝91の円弧部92から円弧部93に移動し、さらに直線部94に移動する。ピン53,54が上記円弧部93を通るとき、ピン53の高さ位置がピン54の高さ位置よりも徐々に低くなり、食品載置台5の姿勢が前傾姿勢となるとともに前傾角度が徐々に大きくなる。食品載置台5が姿勢を変化させているとき、食品載置台5に載置されている食品10が切断刃3に接触し始めるように、切断刃3、食品載置台5、ピン53,54、カム溝91相互の位置関係が設定されている。ピン53,54は、上記円弧部93を通過した後はカム溝91の直線部94に導かれ、食品載置台5は上記の前傾姿勢のままで前述のように上から斜め下に向かって直線状に移動し、切断刃3で食品が切断される。切断された食品10は次に説明する受け取り部材8で受け取られ、続いて駆動機構6が逆向きに作動して食品載置台5を原位置に復帰させる。
【0036】
次に、前記受け取り部材8を含む切断後の食品10の受け取り部について詳細に説明する。
図2、
図3、
図4などに示すように、装置の前側下部に設けられている切断後の食品10の受け取り部の主な構成部材は受け取り部材8である。受け取り部材8は、斜め下に向かって滑り落ちてくる切断後の食品10を受け取る受け取り部81と、この受け取り部81の下端縁部に続いてほぼ直角に延び出て上記食品10の滑落を受け止める滑落阻止部82を有している。また、受け取り部材8は、受け取り部81の下面側にスライド部83を一体に有していて、スライド部83は側板4の内面側に固定された溝形のガイドレール12にスライド可能に嵌められている。上記受け取り部81は、前述のように前傾した食品載置台5の前傾角度に近い角度で傾斜しており、この傾斜角度と同じ角度でガイドレール12が固定されている。
【0037】
図2、
図3に示すように、上記受け取り部81の後端縁には、前記食品載置台5の底面受け51に形成されている溝57(
図16参照)と協働して切断後の食品10を円滑に受け取り部材8に放出させる突起85が、上記溝57に対応して複数形成されている。受け取り部材8は、図示されないばねなどの付勢部材により、
図2、
図3、
図4などに示すように、斜め上方に移動するように付勢されている。付勢力によって移動した受け取り部材8は適宜の規制手段により切断後の食品10の受け取り位置で移動が規制されている。上記付勢力は、受け取り部材8自体の荷重に打ち勝って斜め上方に移動することができる程度の比較的弱い付勢力であって、受け取り部材8が食品10を受け取ったとき受け取り部材8に加わる荷重が勝り、付勢力に抗して受け取り部材8が斜め下方に移動するようになっている。したがって、受け取り部材8から食品10を取り出すと、受け取り部材8は付勢力で原位置に戻る。
【0038】
各側板4の内面側には、受け取り部材8に近接してその上方にストッパ11が固定されている。ストッパ11は、食品載置台5とともに移動してきた位置規制部材7の後方に延びた腕71の移動軌跡内にあり、食品載置台5がカム溝91に沿って下降し、載置されている食品10が切断刃3で切断された直後、上記腕71がストッパ11の後面側に摺接するようになっている。位置規制部材7は前述のような重量配分によって、水平軸55を中心として回転付勢され、付勢力による回転が規制された姿勢をとるが、腕71がストッパ11に当たることにより、
図12、
図13に示すように位置規制部材7は強制的に時計方向に回転させられ、前記突起76,77,78が食品載置台5の底面受け51の上面より下に沈むようになっている。
【0039】
次に、以上のように構成されている実施例の動作を説明する。
図1乃至
図4は動作開始前の初期状態を示しており、食品載置台5は二つのピン53,54がカム溝91の上側終端部の円弧部92にあって切断前の食品10の載置姿勢をとっている。この態様の食品載置台5に食品10を載置する。載置される食品10が小サイズの食品であれば、食品載置台5は上記載置姿勢のままで食品10を受け入れ、
図19に示すように位置規制部材7の突起78が食品10の前方に進出している。既に述べたように、載置される食品10が中サイズであれば位置規制部材7が食品10の荷重により位置規制部材7自体の重量バランスに抗して回転し、突起77が食品10の前方に進出する。同様に、載置される食品10が大サイズであれば、
図18に示すように位置規制部材7がそれ自体の重量バランスに抗して回転し、突起76が食品10の前方に進出する。
【0040】
次に、スタートボタンを操作すると、モータ61が起動され、駆動機構6が作動を開始する。ギヤ列61,62、軸64を経て作動機構6の駆動アーム65が
図3において反時計方向に回転駆動され、その長孔66に嵌っている食品載置台5のピン53がカム溝91に沿って移動させられる。ピン53とともにピン54もカム溝91に沿って移動し、食品載置台5の高さ位置と姿勢が二つのピン53、54の高さ位置および相互の高さ位置の違いによって定まる。ピン53、54がカム溝91の円弧部93の位置にさしかかると、ピン53の高さ位置がピン54の高さ位置に対して連続的に低くなり、もって、食品載置台5が前傾姿勢をとるとともに前傾姿勢が徐々に深くなる。このように、食品載置台5が前傾姿勢をとり始める位置は、食品10が切断刃3に接触し始めるときである。食品10と切断刃3の接触開始当初は、食品10に対する切断刃3の進入角度を連続的に変化させて切断刃3と食品10の相対速度を速めるようになっている。
図5、
図10はこのときの動作態様示している。こうして切断開始当初の食品10への切断刃3の進入を容易にし、食品10の切断時に食品10に加わる圧力を小さくして食品10の変形を低減することができるように工夫されている。
【0041】
食品載置台5のピン53、54がカム溝91の直線部94に至ると、食品載置台5は最大の傾斜角度を保ったまま上記直線部94に沿って斜め下方に移動する。この間、食品載置台5に載置されている食品10は、その前方に進出している突起76,77,78のうちの一つで食品載置台5から滑落することが阻止されている。このようにして、垂直方向に両持ち状に固定された切断刃3に対し、食品載置台5とともに食品10が斜め下方に相対移動することにより、切断刃3が一定の相対速度によって一定の食い込み速度で食い込み、食品10が輪切り状に切断される。
図11はこの作動態様を示している。
【0042】
図6、
図12は、上記ピン53、54がカム溝91の直線部94に沿って斜め下方に降下し、食品載置台5が食品10の切断動作の終端近くに至った状態を示している。この状態では位置規制部材7の腕71がストッパ11の背面に接触し始めている。食品載置台5がさらに降下すると、
図7、
図13に示すように、食品10が切断刃3の位置を通り過ぎて食品10が切断される。また、位置規制部材7はその腕71がストッパ11に押されて重量バランスに抗して時計方向に回転させられ、前記突起76,77,78の全てが食品10の前方から下方に退避する。こうして突起76,77,78による食品10の滑落阻止態様が解除され、食品10は食品載置台5の底面受け51から放出され、受け取り部材8の受け取り部81に滑り落ち、滑落阻止部82で受け止められる。
【0043】
食品10を受け取った受け取り部材8には食品10の荷重がかかり、この荷重が受け取り部材8の前記付勢力に勝るため、受け取り部材8は食品10を保持したまま斜め下方にスライドする。こうして切断後の食品10は取り出し口に至り、切断後の食品10を取り出すことができる。上記受け取り部81および滑落阻止部82の両側部には食品10の両側を規制する板などは設けられておらず、上記両側部が開放されている。切断後の食品10の取り出し作業が容易になるように配慮したためである。
【0044】
上記のようにして、食品10が受け取り部材8に受け渡されることによって食品載置台5の移動軌跡から食品10が退避するので、駆動機構6を逆転させることにより全ての動作部を
図2、
図3、
図4に示すような原位置に復帰させることができる。駆動機構6を逆転させるタイミングは、例えば、受け取り部材8が斜め下方にスライドしたことを検知したとき、あるいは、受け取り部材8に食品10が滑落してきたことを検知したときにするとよい。また、食品載置台5が移動行程の終端まで下降して一定時間経過したら原位置に向かって復帰動作を開始させるように、駆動機構6の制御回路を構成してもよい。このように構成すれば、上記のような検知を行うためのセンサの類を設ける必要はない。
【0045】
以上説明した食品切断装置の実施例は、両持ち状に固定した切断刃3に対し、食品10を載せた食品載置台5を移動させて食品10を切断するようにした食品切断装置において、食品載置台5を移動させる駆動機構6にカム溝91を有してなるカム機構を用い、カム溝91の形状を工夫して、食品10が切断刃3に接触し始めるとき食品10に対する切断刃3の進入角度を連続的に変化させて切断刃3と食品10の相対速度を速めるようにした。よって、上記食品切断装置の実施例によれば、切断開始当初の食品10への切断刃3の進入を容易にすることができ、食品10の切断時に加わる圧力を小さくして食品10の変形を低減することができる。
【0046】
切断対象食品が巻き寿司のように柔らかく粘りのあるものの場合、切断刃3に飯粒が付着し、あるいは飯粒が糊状に変化したものが付着することにより、切断後の食品10が切断刃3に粘着し、受け取り部材8に受け渡すことができないことがあり得る。そこで図示の実施例では、受け取り部材8の後ろ側の縁部に複数の突起85を設け、位置規制部材7の底面受け51に上記各突起85と協働する溝57を設けている。
図6、
図12に示すような、食品10を切断し終わる直前に上記各溝57に突起85が進入し始め、食品10を切断し終わったときは食品10が突起85で掬われるようにして受け取り部材8に受け渡されるように工夫されている。このような工夫をしておけば、切断刃3に粘着しようとする切断後の食品10を強制的に引き剥がし、受け取り部材8に円滑に受け渡すことができる。特に、裏巻きと称して、寿司飯が外側にあるものを切断する場合に効果的である。
【0047】
上記実施例によればまた、切断後の食品10が自働的に食品載置台5の移動軌跡から退避するため、スタートボタンを1回操作して食品載置台5を往復動作させるだけでよく、従来のように、切断前の食品をセットしてスタートボタンを押し、切断された食品を取り出した後復帰ボタンを押すというような面倒な操作は不要である。また、例えば、装置の上側の食品供給部に食品をセットしてスタートボタンを操作し、切断された食品を装置の下側で取り出し、次に再び食品供給部に食品をセットしてスタートボタンを操作する、というように操作が簡単になり、切断作業の能率化を図ることができる。
【0048】
図10乃至
図13からわかるように、一連の切断動作で使用される切断刃3の範囲は、略上側の半分である。そこで、前述のように切断刃固定枠2は左右のガイド溝に落とし込んで固定するように構成し、ある程度稼働させると切断刃固定枠2を上下反転させて固定し、続けて稼働させることができるようになっている。こうすれば、一つの切断刃固定枠2の使用による稼働時間を延ばすことができ、この点からも切断作業の能率化を図ることができる。
【0049】
(変形例)
図示の実施例では、受け取り部材8が、切断後の食品10を受け取ることによって下方にスライドする構造になっていたが、切断後の食品10が受け取り部材8に沿って滑落するように構成しておけば、受け取り部材8は固定してもよく、スライドする構造にする必要はない。イメージとしては、
図14に示すような切断後の食品10を受け取って受け取り部材8がスライドした態様において、受け取り部材8の後端を切断刃3の近くまで伸ばし、受け取り部材8の後端縁部に形成されている複数の突起85が、食品載置台5の前記溝57に嵌るようにして受け取り部材8を固定した構成にする。食品載置台5から受け取り部材8が食品10を受け取ったことを確認した後に食品載置台5を復帰動作させるために、受け取り部材8への食品の滑落経路を左右から挟んで例えば発光部と受光部からなる光センサを配置し、光センサが受け取り部材8への食品の滑落を検知するようにするとよい。
【0050】
本発明に使用する切断刃3は、刃の部分の形状が直線状のものでも差し支えないが、海苔巻きなどへの刃の食い込みを良好にするために、
図20に示すような波形の刃の形状にするとよい。
図20(a)は曲線的な波形の刃の形状とした切断刃31を示す。
図20(b)は波の山の形が鋭角的に尖った刃形とした切断刃32を示す。何れの刃においても、波形のピッチを適宜設定することによって、切断対象とする食品の性質に合致した切れ味を得ることができる。
【0051】
図3、
図4などからわかるように、装置の側面から見た駆動アーム65は一方側が膨出した形になっているが、軽量化を図って駆動力をなるべく軽減するために、上記膨出部をなくした単純な形にしてもよい。また、位置規制部材7などの可動部材は、肉抜きなどを行うことによって軽量化を図るとよい。
【0052】
図示の実施例では、食品載置台の駆動機構がカムを用いて食品載置台の姿勢と移動軌跡を規制する構成になっていたが、カムを用いることなく、他の機構を用いてもよい。例えば、リンク機構を用いることによって、食品と切断刃の接触開始当初は食品に対する切断刃の進入角度を連続的に変化させて切断刃と食品の相対速度を速めるように構成してもよい。あるいは、一定の姿勢を保って直線移動する支持体に、食品載置台を回転可能に取り付け、上記支持体が移動を開始して対象食品と切断刃が接触を開始した当初、上記食品載置台を回転させ、食品に対する切断刃の進入角度を連続的に変化させるように構成してもよい。