(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808152
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20151021BHJP
F02B 37/12 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
F02B37/18 A
F02B37/12 302C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-117643(P2011-117643)
(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2012-246800(P2012-246800A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】森永 幸希
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健治
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−303330(JP,A)
【文献】
特開2002−195046(JP,A)
【文献】
特開昭59−180031(JP,A)
【文献】
特開2009−180112(JP,A)
【文献】
特開昭63−120821(JP,A)
【文献】
特開平04−287835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/12
F02B 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられたタービンと、
吸気通路に設けられ前記タービンにより駆動されるコンプレッサと、
前記排気通路における前記タービンの上流側と下流側とを接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられ電気的に開度制御可能なバイパス弁とを備えた内燃機関を制御する制御装置であって、
スロットル弁の開度が所定以上大きい状態で前記バイパス弁を所定開度以下に閉じており、その状態からスロットル弁の開度が全閉には至らない開度まで閉じられる際に、前記バイパス弁の開度を一時拡大させその後再び所定開度以下まで閉止する操作を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機が付帯した内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ターボ過給機を備える内燃機関には、ウェイストゲートを付設することが通例である。ウェイストゲートは、排気通路におけるタービンの上流側と下流側とを接続するバイパス通路を開閉するものであり、一般的には、吸気通路を流通する吸気の圧力を過過給とならないよう抑制する機能を発揮する。
【0003】
例えば、下記特許文献1に開示されているウェイストゲート弁は、ダイヤフラム室に供給される過給気の圧力を利用するダイヤフラム式アクチュエータによって駆動する。このアクチュエータには、ダイヤフラム室を大気に開放し得る制御弁(VSV)が付帯しており、VSVの開度をデューティ制御することを通じてウェイストゲートバルブの開度を調節し、以て過給圧の制御を実現することができる。
【0004】
しかし、アクセルペダルが踏み込まれスロットル弁が全開に近い高負荷運転から、アクセルペダルから足が離されてスロットル弁が閉止し減速するような場合において、VSVを操作したとしてもコンプレッサによる過給圧の低下が遅れ、減速しにくい、いわばエンジンブレーキが効きにくい状況が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−180112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高負荷運転から減速に転じる場合の過給圧の制御の適正化を図ることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、排気通路に設けられたタービンと、吸気通路に設けられ前記タービンにより駆動されるコンプレッサと、前記排気通路における前記タービンの上流側と下流側とを接続するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられ電気的に開度制御可能なバイパス弁とを備えた内燃機関を制御する制御装置であって、スロットル弁の開度が所定以上大きい状態で前記バイパス弁を所定開度以下に閉じており、その状態からスロットル弁の開度が
全閉には至らない開度まで閉じられる際に
、前記バイパス弁の開度を一時拡大させその後再び所定開度以下まで閉止する操作を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置を構成した
。これにより、過給圧の速やかなる低下を促す一方、ある程度の過給圧を確保して再加速の際の応答遅れを予防する。
【0008】
因みに、スロットル弁の開度が大きい高負荷運転から、スロットル弁の開度が全閉または全閉近くまで閉じられるときには、電動のバイパス弁を全開または全開に近い開度まで開放する操作を行い、気筒から排出される燃焼ガスをバイパス通路経由で流通させ、タービンを迂回させて過給圧を速やかに低下させる
ことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高負荷運転から減速に転じる場合の過給圧の制御の適正化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における内燃機関及び制御装置の構成を示す図。
【
図2】同実施形態におけるスロットル弁の開度とバイパス弁の開度との関係を示すタイミングチャート。
【
図3】同実施形態におけるスロットル弁の開度とバイパス弁の開度との関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関0の概要を示す。本実施形態の内燃機関0は、複数の気筒1(
図1には、そのうち一つを図示している)と、各気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ11と、各気筒1に吸気を供給するための吸気通路3と、各気筒1から排気を排出するための排気通路4と、吸気通路3を流通する吸気を過給する排気ターボ過給機5と、排気通路4から吸気通路3に向けてEGRガスを還流させる外部EGR通路2とを備えている。
【0013】
吸気通路3は、外部から空気を取り入れて気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、過給機5のコンプレッサ51、インタクーラ32、電子スロットル弁33、サージタンク34、吸気マニホルド35を、上流からこの順序に配置している。
【0014】
排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42、過給機5の駆動タービン52及び三元触媒41を配置している。加えて、タービン52を迂回する排気バイパス通路43、及びこのバイパス通路43の入口を開閉するバイパス弁であるウェイストゲート弁44を設けてある。ウェイストゲート弁44は、アクチュエータに制御信号lを入力することで高速に開閉操作することが可能な電動ウェイストゲート弁であり、そのアクチュエータとしてDCサーボモータを用いている。
【0015】
排気ターボ過給機5は、駆動タービン52とコンプレッサ51とを同軸で連結し連動するように構成したものである。そして、駆動タービン52を排気のエネルギを利用して回転駆動し、その回転力を以てコンプレッサ51にポンプ作用を営ませることにより、吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込む。
【0016】
外部EGR通路2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものである。外部EGR通路2の入口は、排気通路4におけるタービン52の上流の所定箇所に接続している。外部EGR通路2の出口は、吸気通路3におけるスロットル弁33の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク34に接続している。外部EGR通路2上にも、EGRクーラ21及びEGR弁22を設けてある。
【0017】
内燃機関0の運転制御を司る電子制御装置(ECU)6は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。入力インタフェースには、車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、エンジン回転数を検出する回転数センサから出力される回転数信号b、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサから出力されるアクセル開度要求信号c、吸気通路3(特に、サージタンク34)内の吸気圧(過給圧)及び吸気温を検出する圧力・温度センサから出力される吸気圧及び吸気温信号d、排気通路4内の排気圧を検出する背圧センサから出力される背圧信号e、吸気カムシャフトの端部にあるタイミングセンサから出力されるクランク角度信号及び気筒判別用信号f、排気カムシャフトの端部にあるタイミングセンサから所定クランク角度の回転毎に出力される排気カム信号g等が入力される。但し、背圧センサは必須ではない。出力インタフェースからは、インジェクタ11に対して燃料噴射信号h、点火プラグ(のイグニッションコイル)に対して点火信号i、EGR弁22に対して開度操作信号j、スロットル弁33に対して開度操作信号k、ウェイストゲート弁44に対して開度操作信号l等を出力する。アクセルペダルの踏込量は、運転者が指令する要求負荷(吸気量及び燃料噴射量、エンジン出力)と捉えることができる。
【0018】
ECU6のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行して、内燃機関0の運転を制御する。ECU6は、内燃機関0の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、gを入力インタフェースを介して取得し、それらに基づいて吸気量や要求燃料噴射量、点火時期、要求EGR量等を演算する。そして、演算結果に対応した各種制御信号h、i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0019】
本実施形態におけるウェイストゲート弁44は、内燃機関0の高負荷運転時の過過給を防止する役割を担うだけでなく、高負荷運転から減速がなされる場合における過給圧の制御にも用いられる。そのために、制御装置たるECU6は、運転者によって踏み込まれていたアクセルペダルの踏込量が減少する減速要求を検知した際、または所定開度以上に開いていたスロットル弁33の開度が減少する際に、その踏込量または開度の減少量に応じてウェイストゲート弁44の開度を拡大させる操作を行う。
【0020】
図2及び
図3はそれぞれ、スロットル弁33の開度とウェイストゲート弁44の開度との関係を示すタイミングチャートである。アクセルペダルが強く踏み込まれ、スロットル弁33の開度が所定以上に大きい(特に、全開または全開に近い)高負荷運転時、ウェイストゲート弁44の開度は所定以下に(特に、全閉または全閉に近い開度に)閉じている。
【0021】
上記の状態から、アクセルペダルから足が離れ、スロットル弁33の開度が全閉または全閉に近い開度まで閉じられる際には、
図2に示すように、ECU6がウェイストゲート弁44の開度を全閉または全閉に近い開度まで閉じる操作を実行する。これにより、タービン52及びコンプレッサ51が速やかに減速し、過給圧が速やかに低下する。
【0022】
あるいは、上記の状態から、スロットル弁33の開度が全閉には至らない中程度の開度まで絞られるハーフスロットルの際には、
図3に示すように、ECU6がウェイストゲート弁44を一旦中程度まで開放し、その後再び所定開度以下(特に、全閉または全閉に近い開度)まで閉止する操作を実行する。これにより、過給圧の低下を促す一方、ウェイストゲート弁44を再度閉じることである程度の過給圧を確保し、再加速の際の応答遅れを予防する。ウェイストゲート弁44を一時開弁するときの開度は、スロットル弁33のハーフスロットルの開度が小さいほど大きくする。換言すれば、ウェイストゲート弁44を一時開弁するときの開度は、気筒1に充填される吸入空気量がその目標となる要求負荷に追従するようにフィードバック制御する。
【0023】
ECU4が操作するウェイストゲート弁44の開閉の速度(開度の単位時間当たり変化量)は、スロットル弁33の開閉速度に応じる。即ち、スロットル弁の開度が大きい高負荷運転状態から当該スロットル弁33の開度が縮小する速度が速いほど、閉じていたウェイストゲート弁44の開放の速度も速くする。
【0024】
本実施形態では、排気通路4に設けられたタービン52と、吸気通路3に設けられ前記タービン52により駆動されるコンプレッサ51と、前記排気通路4における前記タービン52の上流側と下流側とを接続するバイパス通路43と、前記バイパス通路43に設けられ電気的に開度制御可能なバイパス弁44とを備えた内燃機関0を制御するものであって、スロットル弁33の開度が所定以上大きい状態で前記バイパス弁44を所定開度以下に閉じており、その状態からスロットル弁33の開度が閉じられる際にその閉じ量に応じて前記バイパス弁44の開度を拡大させる操作を行う制御装置6を構成した。
【0025】
本実施形態によれば、高負荷運転から減速に転じる場合の過給圧の制御の適正化を図ることができ、過給圧を速やかに低下させて内燃機関0を減速させることが可能である。また、EGRを併用する場合において、高負荷運転から減速するときにEGR通路2を還流するEGRガス量が急増して燃焼が不安定になる問題を回避できる。過給慣性による減速応答遅れが低減し、加えてEGRガス量の急増防止によりEGR量の上限を引き上げることが可能になるため、燃費の向上に寄与し得る。
【0026】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、車両等に搭載される過給機付きの内燃機関に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
0…内燃機関
3…吸気通路
4…排気通路
43…バイパス通路
44…バイパス弁(ウェイストゲート弁)
5…排気ターボ過給機
51…コンプレッサ
6…制御装置(ECU)