(54)【発明の名称】取り付け器具、そのような取り付け器具を用いた建築用板の取り付け構造、そのような取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造、そのような取り付け器具に建築用板を固定する方法、及びそのような取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定基板と、前記固定基板上に対向して配置された、一の建築用板の端部が固定される第1固定部及び他の建築用板の端部が固定される第2固定部と、を有する固定部材と、
前記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を前記第1固定部側に押圧し且つ前記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を前記第2固定部側に押圧する押さえ部材と、
前記固定基板に対して前記押さえ部材が位置する側とは反対側から作業を行うことにより、前記押さえ部材を前記固定部材に固定する外れ止め部材と、
を備え、
前記押さえ部材は、
一の建築用板及び他の建築用板に対して前記第1固定部及び第2固定部が位置する側とは反対側から、前記第1固定部に固定された一の建築用板の端部の屋外側の部分を前記第1固定部側に押圧し且つ前記第2固定部に固定された他の建築用板の端部の屋外側の部分を前記第2固定部側に押圧する押さえ基板と、
前記外れ止め部材に固定される押さえ固定部であって、対向する前記第1固定部と前記第2固定部との間に配置されて、前記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を前記第1固定部側に押圧し且つ前記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を前記第2固定部側に押圧する押さえ固定部とを有する取り付け器具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、取り付け器具を用いて、外壁材等の建築用板を建物の構造材に取り付ける作業を行う場合には、作業を行うための足場が組み立てられる。
【0008】
足場は、外壁材等が固定される建物の構造材に対して、屋内側及び屋外側の両方に組み立てられる場合もあるが、屋内側にのみに足場が組み立てられる場合も多い。
【0009】
上述した特許文献1に記載の取り付け器具を用いて、外壁材等の建築用板を建物の構造材に取り付ける際には、キャップ材のガッターとは反対側の面から、即ち屋外側の面から、外れ止め部材をキャップ材及びガッターに固定しなくてはならない。
【0010】
従って、足場が屋内側のみにしかない場合には、外れ止め部材を用いてキャップ材とガッターとを固定することは、非常に困難な作業となり得る。このような取り付け作業は、屋内側の足場からも容易であることが望まれる。
【0011】
そこで、本明細書では、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することのできる取り付け器具を提供することを目的とする。
【0012】
また、本明細書では、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することのできる建築用板の取り付け構造を提供することを目的とする。
【0013】
また、本明細書では、取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付けることが、屋内側から容易に行える取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造を提供することを目的とする。
【0014】
また、本明細書では、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することのできる方法を提供することを目的とする。
【0015】
更に、本明細書では、取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付けることが、屋内側から容易に行える方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に開示する取り付け器具の一形態によれば、固定基板と、上記固定基板上に対向して配置された、一の建築用板の端部が固定される第1固定部及び他の建築用板の端部が固定される第2固定部と、を有する固定部材と、上記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を上記第1固定部側に押圧し且つ上記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を上記第2固定部側に押圧する押さえ部材と、上記固定基板に対して上記押さえ部材が位置する側とは反対側から、上記押さえ部材を上記固定部材に固定する外れ止め部材と、を備える。
【0017】
また、本明細書に開示する建築用板の取り付け構造の一形態によれば、第1建築用板と、第2建築用板と、固定基板と、上記固定基板上に対向して配置された、上記第1建築用板の端部が固定される第1固定部及び上記第2建築用板の端部が固定される第2固定部と、を有する固定部材と、上記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を上記第1固定部側に押圧し且つ上記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を上記第2固定部側に押圧する押さえ部材と、上記固定基板に対して上記押さえ部材が位置する側とは反対側から、上記押さえ部材を上記固定部材に固定する外れ止め部材と、を有する取り付け器具と、を備える。
【0018】
また、本明細書に開示する取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造の一形態によれば、建物の構造材と、第1建築用板と、第2建築用板と、上記建物の構造材に固定される固定基板と、上記固定基板上に対向して配置された、上記第1建築用板の端部が固定される第1固定部及び上記第2建築用板の端部が固定される第2固定部と、を有する固定部材と、上記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を上記第1固定部側に押圧し且つ上記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を上記第2固定部側に押圧する押さえ部材と、上記固定基板に対して上記押さえ部材が位置する側とは反対側から、上記押さえ部材を上記固定部材に固定する外れ止め部材と、を有する取り付け器具と、を備える。
【0019】
また、本明細書に開示する取り付け器具に建築用板を固定する方法の一形態によれば、上述した取り付け器具に建築用板を固定する方法であって、一の建築用板の端部を上記第1固定部に固定し、他の建築用板の端部を上記第2固定部に固定し、上記押さえ部材が、上記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を上記第1固定部側に押圧し且つ上記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を上記第2固定部側に押圧するように、上記固定基板に対して上記押さえ部材が位置する側とは反対側から、上記外れ止め部材を用いて、上記押さえ部材を上記固定部材に固定する。
【0020】
更に、本明細書に開示する取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法の一形態によれば、上述した取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法であって、上記固定基板を建物の構造材に固定し、一の建築用板の端部を上記第1固定部に固定し、他の建築用板の端部を上記第2固定部に固定し、上記押さえ部材が、上記第1固定部に固定された一の建築用板の端部を上記第1固定部側に押圧し且つ上記第2固定部に固定された他の建築用板の端部を上記第2固定部側に押圧するように、上記固定基板に対して上記押さえ部材が位置する側とは反対側から、上記外れ止め部材を用いて、上記押さえ部材を上記固定部材に固定する。
【発明の効果】
【0021】
上述した本明細書に開示する取り付け器具の一形態によれば、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することができる。
【0022】
上述した本明細書に開示する建築用板の取り付け構造の一形態によれば、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することができる。
【0023】
上述した本明細書に開示する取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造の一形態によれば、取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付けることが、屋内側から容易に行える。
【0024】
上述した本明細書に開示する取り付け器具に建築用板を固定する方法の一形態によれば、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することができる。
【0025】
上述した本明細書に開示する取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法の一形態によれば、取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付けることが、屋内側から容易に行える。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本明細書で開示する取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造の好ましい実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0028】
図1は、本明細書に開示する取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造の第1実施形態を示す正面図である。
図2は、
図1の背面図である。
図3は、
図2のA−A線拡大断面図である。
【0029】
本実施形態の取り付け構造50は、建築用板30a、30bと、建築用板30a、30bが固定される取り付け器具10と、建築用板30a、30bが固定された取り付け器具10が固定される建物の構造材51とを備える。建築用板30a、30bは、例えば、外壁材又は屋根材等の建築で用いられ得る板材であり得る。本実施形態では、建築用板30a、30bとして外壁材を用いている。
【0030】
図1は、取り付け構造50を建物の屋外側から見た正面図を示している。
図2は、取り付け構造50を建物の屋内側から見た背面図を示している。
【0031】
図1〜
図3に示すように、取り付け構造50では、取り付け器具10を用いて、建築用板30a、30bが建物の構造材51に取り付けられている。
【0032】
建築用板30a、30bは、
図1及び
図2に示すように、縦長の矩形形状を有しており、その長手方向と直交する幅方向に並べて配置される。一方の建築用板30aの幅方向の一方の端部32aと、他方の建築用板30bの幅方向の一方の端部32bとは、対向した状態で、取り付け器具10に固定される。一方の建築用板30aの幅方向の一方の端部32aには、取り付け器具10に固定される被固定部31aが設けられている。同様に、他方の建築用板30bの幅方向の一方の端部32bには、取り付け器具10に固定される被固定部31bが設けられている。
【0033】
図示していないが、建築用板30a、30bそれぞれの幅方向の他方の端部が、図示しない取り付け器具に固定されていても良い。
【0034】
建物の構造材51は、建物の躯体、又は、建築用板と建物の躯体との間に配置される下地材等であり得る。
図2に示す例では、長尺状の2本の建物の構造材51が、間隔をあけて建築用板30a、30bの幅方向に沿って配置される。
【0035】
図2に示すように、取り付け器具10は、ビス11fを用いて、2本の建物の構造材51それぞれに固定されている。
【0036】
次に、取り付け器具10について、以下に更に説明する。
【0037】
取り付け器具10は、建物の構造材51に固定される固定基板11aと、固定基板11a上に間隔をあけて対向して配置された、一方の建築用板30aの端部32aが固定される第1固定部11b及び他方の建築用板30bの端部32bが固定される第2固定部11cと、を有する固定部材11を備える。
【0038】
固定部材11は、後述する押さえ部材12と組み合わせて用いることで建築用板を建物の構造材に取り付けるためのものであり、建築用板と構造材との間に配置され、構造材に固定されると共に、建築用板を係止手段等によって簡易に固定するものである。
【0039】
また、取り付け器具10は、第1固定部11bに固定された一方の建築用板30aの端部32aを第1固定基板11a側に押圧し、且つ第2固定部11cに固定された他方の建築用板30bの端部32bを第2固定部11c側に押圧する押さえ部材12を備える。
【0040】
押さえ部材12は、固定部材11と組み合わせて用いることで、建築用板を建物の構造材に取り付けるためのものであり、固定部材11に簡易に固定された建築用板を、第1固定部材11b側及び第2固定部11c側に押圧するためのものである。
【0041】
更に、取り付け器具10は、固定基板11aに対して押さえ部材12が位置する側とは反対側から、押さえ部材12を固定部材11に固定して、押さえ部材12並びに一方の建築用板30aの端部32a及び他方の建築用板30bの端部32bが固定部材11から外れることを防止する外れ止め部材20を備える。
【0042】
取り付け器具10は、長尺状であり、一方の建築用板30aの縦長の端部32a及び他方の建築用板30bの縦長の端部32bを固定する長さを有する。固定部材11及び押さえ部材12も、長尺の形状を有し、共に同じ長さを有することが好ましい。
【0043】
このように、固定部材11及び押さえ部材12が、長尺で同じ長さであると、安定的に建築用板を固定できる観点から好ましい。特に、押さえ部材12が建築用板と同じ長さに形成されていると、押さえ部材12が建築用板30aと建築用板30bとの隙間を全体にわたって隠すことができるので、屋外側から建築用板を見たときの美観を保持することができる。
【0044】
なお、固定部材11及び押さえ部材12は必ずしも長尺である必要はなく、建築用板が脱落せずに固定できれば、固定部材11及び押さえ部材12は間隔を開けて複数設けてもよい。例えば、固定部材11及び押さえ部材12は、
図2において、取り付け器具10が構造材51と交差する部分のみに設けてもよい。
【0045】
次に、取り付け器具10の固定部材11について、以下に更に説明する。
【0046】
図4(A)は、
図3の取り付け構造に用いられる取り付け器具の固定部材の正面図であり、
図4(B)は
図4(A)のB−B線断面図である。
【0047】
固定基板11aは、長尺の板状の形状を有する。固定基板11aには、固定部材11を建物の構造材51に固定するためのビス穴11eが形成される。固定基板11aは、ビス穴11eにビス11fを螺合させて、建物の構造材51に固定される。構造材51には、ビス11fが螺合する図示しないビス穴が設けられている。
【0048】
固定基板11a及び建物の構造材51のビス穴は、あらかじめ形成しておかなくてもよい。例えば、ドリルビス等を用いて、施工時に穴あけと固定基板の固定とを同時に行っても良い。
【0049】
また、固定基板11aは、外れ止め部材12を挿通する固定穴11dを有する。
【0050】
第1固定部11b及び第2固定部11cは長尺状であり、固定基板11aと同じ長さを有する。
【0051】
固定部11b、11cは、必ずしも長尺状である必要はなく、長尺状の固定基板に対して、間隔を開けて複数箇所に形成してもよい。建築用板が脱落せずに固定できればよい。
【0052】
第1固定部11bと一方の建築用板30aの端部32aとの固定手段は、公知の固定手段を用いることができる。この固定手段としては、例えば、係止、係合又は嵌合等の手段を用いることができる。第2固定部11cと他方の建築用板30bの端部32bとの固定手段についても、同様に、公知の固定手段を用いることができる。
【0053】
第1固定部11bと一方の建築用板30aの端部32aとの固定手段と、第2固定部11cと他方の建築用板30bの端部32bとの固定手段とは、同じで有っても良いし、異なっていても良い。
図3に示す例では、2つの固定手段が同じである場合が示されている。
【0054】
図3に示す例では、第1固定部11bに、一方の建築用板30aの端部32aが係止されて固定される場合が示されている。具体的には、第1固定部11bの先端部に、一方の建築用板30aの端部32aの被固定部31aの突起部が係止されて、一方の建築用板30aの端部32aが第1固定部11bに固定される。同様に、第2固定部11cには、他方の建築用板30bの端部32bが係止されて固定される。
【0055】
固定部材11の形成材料としては、例えば、金属又は合成樹脂等を用いることができる。固定部材11の形成材料として金属を用いる場合には、例えば、アルミニウムを用いることができる。固定部材11の形成材料として合成樹脂を用いる場合、ポリカーボネート、塩化ビニル、AES(アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン)樹脂などが用いられるが、耐候性や耐衝撃強度を考慮すると、ポリカーボネート樹脂が好ましい。また、固定部材11は、合成樹脂を用いて押し出し成形によって得られる押し出し成形品であってもよいし、射出成形によって得られる射出成形品であってもよい。
【0056】
次に、取り付け器具10の押さえ部材12について、以下に更に説明する。
【0057】
図5(A)は、
図3の取り付け構造に用いられる取り付け器具の押さえ部材の正面図であり、
図5(B)は、
図5(A)のC−C線断面図である。
【0058】
押さえ部材12は、一方の建築用板30a及び他方の建築用板30bに対して第1固定部11b及び第2固定部11cが位置する側とは反対側から、第1固定部11bに固定された一方の建築用板30aの端部32aを第1固定部11b側に押圧し且つ第2固定部11cに固定された他方の建築用板30bの端部32bを第2固定部11c側に押圧する押さえ基板12aを有する。押さえ基板12aは、第1固定部11bに固定された一方の建築用板30aの端部32a及び第2固定部11cに固定された他方の建築用板30bの端部32bを、固定基板11a側に向かって押圧する。
【0059】
また、押さえ部材12は、押さえ基板12a上に配置され、外れ止め部材20に固定される押さえ固定部12bを有する。押さえ固定部12bは、間隔を空けて対向する第1固定部11bと第2固定部11cとの間に配置される。
【0060】
押さえ固定部12bの幅は、建築用板30aと建築用板30bの隙間と略同じ幅であるか、それよりも少し大きい幅に形成されている。押さえ固定部12bの幅が、建築用板30aと建築用板30bの隙間と同じ幅であると、この隙間に対して略隙間なく挿入されるため建築用板ががたつくことなく固定されるので好ましい。また、押さえ固定部12bの幅が、建築用板30aと建築用板30bの隙間よりも少し大きい幅に形成されていると、押さえ固定部12bを隙間に挿入する際に、建築用板が押さえ固定部12bを中心にして外側へ押されることで、建築用板の端部32a、32bが第1及び第2固定部11b、11cに押し付けられ、建築用板の端部32a、32bの被固定部31a、31bの突起部がより深く係止されることになるので、より強固に建築用板30a、30bが第1及び第2固定部11b、11cに固定される。このようにして、押さえ固定部12bは、第1固定部11bに固定された一方の建築用板30aの端部32aを第1固定部11b側に押圧し且つ第2固定部11cに固定された他方の建築用板30bの端部32bを第2固定部11c側に押圧する。
【0061】
押さえ基板12aは、長尺の板状の形状を有する。押さえ基板12aが長尺であると、建築用板30aと建築用板30bとの隙間を隠すことができるので、屋外側から建築用板を見たときの美観を保持することができる。
【0062】
押さえ固定部12bは、中空の長尺の形状を有する。押さえ基板12aと押さえ固定部12bとは、同じ長さを有することが好ましい。押さえ固定部12bは、押さえ基板12aとは反対側の端部に、後述する外れ止め部材20のボルト頭部21aが嵌め込まれる嵌め込み部12cを有する。嵌め込み部12cにボルト頭部21aが嵌め込まれたボルト部21は、押さえ部材12の長手方向に移動可能であるが、回転しないように形成されている。
【0063】
押さえ固定部12bが長尺状であると、押さえ固定部12bに対する外れ止め部材20の位置が長尺状の長さ方向にずれたとしても押さえ固定部12bから外れ止め部材が脱落することがないので好ましい。
【0064】
また、押さえ基板12aと押さえ固定部12bとは、同じ長さでなくてもよく、押さえ固定部12bは少なくとも外れ止め部材20に固定される箇所に形成されていればよい。
【0065】
押さえ部材12の形成材料としては、例えば、金属又は合成樹脂等を用いることができる。押さえ部材12の形成材料として金属を用いる場合には、例えば、アルミニウムを用いることができる。押さえ部材12の形成材料として合成樹脂を用いる場合、ポリカーボネート、塩化ビニル、AES(アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン)樹脂などが用いられるが、耐候性や耐衝撃強度を考慮すると、ポリカーボネート樹脂が好ましい。押さえ部材12は、合成樹脂を用いて押し出し成形によって得られる押し出し成形品であってもよいし、射出成形によって得られる射出成形品であってもよい。
【0066】
次に、取り付け器具10の外れ止め部材20について、以下に更に説明する。
【0067】
外れ止め部材20は、ボルト頭部21aと、ボルト頭部21aから延出するボルト軸部21bを有するボルト部21を備える。ボルト軸部21bは、固定基板11aの固定穴11dに挿通する。また、外れ止め部材20は、ボルト軸部21bと螺合するナット部22を備える。
【0068】
ボルト部21(具体的にはボルト軸部21b)は押さえ部材12と固定部材11とを結び付けて一体化するためのものである。ナット部22は、ボルト軸部21bの軸線方向に対するボルト頭部21aの位置を調整し、また外れ止め部材20を固定するためのものである。
【0069】
ボルト頭部21aは、偶数の角を有する多角形の形状を有しており、対向する辺が嵌め込み部12cの長手方向と一致するように、嵌め込み部12c内に嵌め込まれる。
【0070】
外れ止め部材20は、ボルト頭部21aが嵌め込み部12cに嵌め込まれた状態で、固定穴11dに挿通したボルト軸部21bに、固定基板11aに対して押さえ部材12が位置する側とは反対側から、ナット部22を螺合させて、押さえ部材12と固定部材11とを固定する。ここで、固定基板11aの押さえ部材12とは反対側は、固定基板11aの建物の屋内側を意味する。
【0071】
図3に示すように、ボルト部21のボルト頭部21aは、押さえ固定部12bの嵌め込み部12cに嵌め込まれている。従って、外れ止め部材20は、建物の屋外側からは視認できない。このように、外れ止め部材20が、屋外側から視認できないので、屋外から見た取り付け構造50の外観はすっきりし、美観が損なわれない。
【0072】
外れ止め部材20の形成材料としては、各種公知の材料を用いることができるが、例えば、金属等を用いることが好ましい。
【0073】
次に、取り付け器具10を用いて固定される建築用板について、以下に更に説明する。
【0074】
取り付け構造50では、一方の建築用板30aと他方の建築用板30bとは、同じ形状を有している。
図1〜
図3に示す取り付け構造50では、2枚の建築用板が建物の構造材51に取り付けられているが、取り付けられる建築用板の数は、2枚よりも多くても良い。
【0075】
建築用板30a、30bは、
図3に示すように、その断面構造が、2つの面材、及びこれらの面材を連結する複数のリブとから形成される。建築用板30a、30bは、2つの面材とリブとで囲まれた多数の中空部を有しており、軽量であると共に、高い剛性及び断熱性を有する。
【0076】
建築用板30a、30bを形成する材料としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びこれらの樹脂にガラス繊維を含有させた強化樹脂等の光透過性の合成樹脂を用いることができる。また、建築用板30a、30bを形成する材料としては、セメント、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、セラミックス等の無機材料及びこれらの無機材料に鉄筋、ガラス繊維又はアラミド繊維を含有させた材料を用いることもできる。また、建築用板30a、30bを形成する材料としては、鉄やアルミニウムなどの金属材料を用いることもできる。
【0077】
次に、上述した本実施形態の取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法の一例を、
図6(A)〜(C)を参照して以下に説明する。
【0078】
図6(A)〜
図6(C)は、
図3に示す取り付け器具を用いて建築用板を構造材に固定する方法の各工程を示す図である。
【0079】
まず、
図6(A)に示すように、押さえ部材12の嵌め込み部12cに、外れ止め部材20におけるボルト部21のボルト頭部21aを嵌め込む。そして、固定部材11における固定基板11aのビス穴11eと建物の構造材51のビス穴(図示せず)とを一致させて、ビス11fをこれらのビス穴に螺合して、固定部材11を、建物の構造材51の屋外側の面に固定する。また、固定部材11の構造材51への固定は、ビス穴をあらかじめ開けずに、ドリルビスを用いて固定してもよい。また、押さえ部材12と固定部材11を外れ止め部材20で仮止めした後、固定部材11を建物の構造材51に固定してもよい。
【0080】
そして、ボルト部21のボルト軸部21bの先端部が、固定基板11aの屋内側に突出するように、ボルト軸部21bを固定基板11aの固定穴11dに挿通した後、ボルト軸部21bの先端部にナット部22を螺合してボルト軸部21bとナット部22とを仮止めし、ボルト部21が固定穴11dから外れないようにする。ここで、押さえ部材12と固定部材11の間に、建築用板の端部32a、32bの被固定部31a、31bが挿入可能となるような間隔を開けた状態で押さえ部材12と固定部材11とを仮止めする。
【0081】
次に、
図6(B)に示すように、一方の建築用板30aにおける一方の端部32aの被固定部31aを、固定部材11の第1固定部11bに固定する。具体的には、第1固定部11bの先端部に、一方の建築用板30aの一方の端部32aの被固定部31aの突起部を係止して、一方の建築用板30aの一方の端部32aを第1固定部11bに固定する。同様にして、他方の建築用板30bにおける端部32bの被固定部31bを、固定部材11の第2固定部11cに固定する。この際、一方の建築用板30aの他方の端部を、同様に、図示しない固定部材に固定しても良い。
【0082】
次に、
図6(C)に示すように、押さえ部材12が、第1固定部11bに固定された一方の建築用板30aの端部32aを第1固定部11b側に押圧し且つ第2固定部11cに固定された他方の建築用板30bの端部32bを第2固定部11c側に押圧するように、ボルト頭部21aが嵌め込み部12cに嵌め込まれて回転不能になっているボルト部21に対して、建物の屋内側からナット部22を回転し、押さえ固定部12bを、間隔をあけて対向する第1固定部11bと第2固定部11cとの間に挿入させながら、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せる。
【0083】
そして、
図3に示すように、更にナット部22を回転して、押さえ部材12の嵌め込み部12cが固定基板11aに当接するまで、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せて、固定基板11aに対して押さえ部材12が位置する側とは反対側である屋内側から、外れ止め部材20を用いて、押さえ部材12と固定部材11とを固定することで、建築用板の構造材への固定が完了する。
【0084】
ここで、
図3において、建築用板30a、30bの端部の厚みL、第1及び第2固定部11b、11cの高さM、及び押さえ部材12の高さNは、L+M≧Nなる関係を満たす寸法を有することが好ましい。L+M=Nの場合には、押さえ部材12の嵌め込み部12cが固定基板11aに当接するまでナット部22を回転して押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せればよい。L+M>Nの場合には、押さえ基板12aと固定部11a、11bの上端との間の距離がL以下となるまで、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せればよい。ここで、建築用板30a、30bの端部の厚みLは、建築用板の端部における被固定部が設けられている部分を除く部分の厚さである。
【0085】
また、
図3において、建築用板の端部の被固定部31a、31bの厚みK及び押さえ部材12の高さNは、K≧Nなる関係を満たす寸法を有することが好ましい(ただし、L+M≧K)。K=Nの場合には、嵌め込み部12cが固定基板11aに当接するまで、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せればよい。K>Nの場合、押さえ基板12aと固定基板11aとの間の距離がK以下となるまで、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せればよい。
【0086】
上述した本実施形態の建築用板の取り付け構造によれば、取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付けることが屋内側から容易に行える。また、建築用板を取り付け器具に屋内側から容易に固定することができる。
【0087】
次に、上述した建築用板の取り付け構造の第2実施形態を、
図7及び
図8を参照しながら以下に説明する。他の実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0088】
図7は、本明細書に開示する取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造の第2実施形態を示す断面図である。
図8(A)は、
図7の取り付け構造に用いられる取り付け器具の押さえ部材の正面図であり、
図8(B)は、
図8(A)のD−D線断面図である。
【0089】
本実施形態の取り付け構造50は、取り付け器具10における押さえ部材12の押さえ固定部12bの構造が、上述した第1実施形態とは異なっている。
【0090】
図8に示すように、押さえ固定部12bは、中空の構造を有する。押さえ固定部12bは、押さえ基板12aと対向する部分に、外れ止め部材20におけるボルト部21のボルト軸部21bが螺合する押さえ穴12dを有する。押さえ穴12dは、押さえ固定部12bの長手方向において、固定基板11aの固定穴11dと一致する位置に設けられる。
【0091】
本実施形態では、押さえ固定部12bは、外れ止め部材20のボルト頭部21aが嵌め込まれる嵌め込み部を有していない。
【0092】
外れ止め部材20は、ボルト頭部21aを、固定基板11aの押さえ部材12とは反対側の面に露出した状態で、固定穴11dにボルト軸部21bを挿通させ且つ押さえ穴12dにボルト軸部21bを螺合させて、押さえ部材12と固定部材11とを固定する。
【0093】
図7に示すように、ボルト軸部21bは、中空の押さえ固定部12bの内部に配置される。従って、外れ止め部材20は、建物の屋外側からは視認できない。このように、外れ止め部材20が、屋外側から視認できないので、屋外から見た取り付け構造50の外観はすっきりし、美観が損なわれない。
【0094】
本実施形態では、外れ止め部材20は、ナット部を有していない。
【0095】
次に、上述した本実施形態の取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法の一例を、
図9(A)〜(C)を参照して以下に説明する。
【0096】
図9(A)〜図(C)は、
図7に示す取り付け器具を用いて建築用板を構造材に固定する方法の各工程を示す図である。
【0097】
まず、
図9(A)に示すように、固定基板11aの固定穴11dと押さえ固定部12bの押さえ穴12dとの押さえ固定部12bの長手方向における位置を一致させて、固定基板11aの屋内側の面から、ボルト部21のボルト軸部21bを固定穴11dに挿通する。そして、ボルト軸部21bの先端部が、押さえ固定部12bの中空部内に突出するように、ボルト軸部21bを押さえ固定部12bの押さえ穴12dに螺合させて、ボルト部21を介して、固定部材11と押さえ部材12とを仮止めする。
【0098】
そして、固定部材11における固定基板11aのビス穴11eと建物の構造材51のビス穴(図示せず)とを一致させて、ビス11fをこれらのビス穴に螺合して、固定部材11を建物の構造材51の屋外側の面に固定する。
【0099】
次に、
図9(B)に示すように、一方の建築用板30aにおける端部32aの被固定部31aを、固定部材11の第1固定部11bに固定する。同様にして、他方の建築用板30bにおける端部32bの被固定部31bを、固定部材11の第2固定部11cに固定する。
【0100】
次に、
図9(C)に示すように、押さえ部材12が、第1固定部11bに固定された一方の建築用板30aの端部32aを第1固定部11b側に押圧し且つ第2固定部11cに固定された他方の建築用板30bの端部32bを第2固定部11c側に押圧するように、建物の屋内側からボルト頭部21aを回転して、押さえ部材12の押さえ固定部12bを、間隔をあけて対向する第1固定部11bと第2固定部11cとの間に挿入させながら、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せる。
【0101】
屋内側からボルト頭部21aを回転させると、押さえ部材12がボルト頭部21aの回転方向と同じ方向に回転しようとするが、押さえ部材12の押さえ固定部12bが2枚の建築用板30a、30bの間に挿入されているので、押さえ部材12の回転が止められ、屋内側からボルト頭部21aを回転させることで押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せることができる。また、2箇所以上の位置で、押さえ部材12と固定部材11とを外れ止め部材20で仮止めしていれば、押さえ部材12の押さえ固定部12bが2枚の建築用板の間に挿入される前であっても、押さえ部材12の回転が防止される。
【0102】
そして、
図7に示すように、更にボルト頭部21aを回転し、押さえ固定部12bの先端部が固定基板11aに当接するまで、押さえ部材12を固定基板11a側に引き寄せて、固定基板11aに対して押さえ部材12が位置する側とは反対側である屋内側から、外れ止め部材20を用いて、押さえ部材12と固定部材11とを固定することで、建築用板の構造材への固定が完了する。
【0103】
上述した本実施形態の建築用板の取り付け構造によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0104】
次に、上述した第2実施形態の取り付け構造の他の例を、図面を参照して以下に説明する。
【0105】
図10は、本明細書に開示する建築用板の取り付け構造の他の例を示す断面図である。
【0106】
図10に示す例の取り付け構造50では、押さえ部材12の押さえ基板12aには、ボルト軸部21が挿通する第2の押さえ穴12eが設けられている。屋内側から、固定穴11dに挿通し且つ押さえ部材12の押さえ穴12dに螺合したボルト軸部21の先端部は、第2の押さえ穴12eを挿通して屋外側に突出している。
【0107】
また、本例の取り付け構造50では、外れ止め部材20は、ナット部22を有している。第2の押さえ穴12eから屋外側に突出したボルト軸部21の先端部には、ナット部22が螺合して、押さえ部材12と固定部材11とを固定する。
【0108】
また、押さえ基板12aの屋外側の面には、ナット部22の回転を防止する回り止め部12fが設けられている。
【0109】
図11は、本明細書に開示する建築用板の取り付け構造のまた他の例を示す断面図である。
【0110】
図11に示す例の取り付け構造50は、
図10に示す例とは、ボルト部21の長手方向の向きが反対側になって配置されている。
図10に示す例では、ボルト部21は、ボルト頭部21aが屋内側に配置されていたが、
図11に示す例では、ボルト部21は、ボルト頭部21aが屋外側に配置されている。
【0111】
ボルト軸部21bの先端部は、固定基板11aの固定穴11dから屋内側に突出しており、ナット部22が螺合されている。
【0112】
また、ボルト頭部21aは、押さえ基板12aの回り止め部12fに嵌め込まれており、ボルト頭部21aが回転することが防止されている。
【0113】
本発明では、上述した実施形態の取り付け器具、そのような取り付け器具を用いた建築用板の取り付け構造、そのような取り付け器具を用いた建築用板の建物の構造材への取り付け構造、そのような取り付け器具に建築用板を固定する方法、及びそのような取り付け器具を用いて建築用板を建物の構造材に取り付ける方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0114】
例えば、上述した各実施形態では、押さえ部材と固定部材とを固定するために、外れ止め部材は、ナット部又は固定部材と螺合していた。しかし、外れ止め部材は、押さえ部材と固定部材とを固定するために、係止、係合又は嵌合等の他の固定手段を有していても良い。
【0115】
また、上述した各実施形態では、固定部材の長手方向における固定穴の位置が、ビス穴の位置とは異なっていたが、固定部材の長手方向における固定穴の位置を、ビス穴の位置と一致させても良い。この場合には、建物の構造材にも、固定穴と一致する位置に穴を設ければ良い。
【0116】
また、押さえ部材は、一の建築用板及び他の建築用板に対して第1固定部及び第2固定部が位置する側とは反対側から、第1固定部に固定された一の建築用板の端部を第1固定部側に押圧し且つ第2固定部に固定された他の建築用板の端部を第2固定部側に押圧する押さえ基板を有していれば、押さえ固定部を有していなくても良い。この場合、外れ止め部材は、押さえ基板を固定部材に固定する。
【0117】
更に、押さえ部材は、外れ止め部材に固定される押さえ固定部であって、対向する第1固定部と第2固定部との間に配置されて、第1固定部に固定された一の建築用板の端部を第1固定部側に押圧し且つ第2固定部に固定された他の建築用板の端部を第2固定部側に押圧する押さえ固定部を有していれば、押さえ基板を有していなくても良い。この場合、外れ止め部材は、押さえ固定部を固定部材に固定する。