(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の測定装置、およびその測定プローブには、以下の解決すべき問題点がある。すなわち、従来の測定装置において採用されている測定プローブは、第1電極および第2電極が絶縁部材を介して一体化されている。一方、この種の
測定装置の用途としては、上記の例のようなシート部材を対象とする表面抵抗の測定だけではなく、例えば、床面などの各種測定対象体の表面抵抗の測定が存在する。この場合、平坦なステージの上に載置した薄手のシート部材を測定対象体として、その表面抵抗を測定する際には、測定対象体の表面が平坦であるため、前述したように、測定用プローブにおける第1電極および第2電極の両導電性弾性部材を測定対象体に対してそれぞれ接触させることができる。
【0006】
しかしながら、例えば床面を測定対象体として、その表面抵抗を測定する際には、床面が凹凸していることがあるため、床面の凸状部における突端に第1電極の導電性弾性部材が接触している状態では、第2電極の導電性弾性部材が床面に対して非接触状態となり、床面の凹状部の底部の周囲に第2電極の導電性弾性部材が接触している状態では、第1電極の導電性弾性部材が凹状部の底部に対して非接触状態となることがある。このため、従来の測定装置(抵抗測定システム)における測定プローブ(抵抗測定用電極装置)では、表面が凹凸している測定対象体に対して第1電極(中心電極)および第2電極(外部電極)のいずれかが非接触状態となることがあり、これに起因して、測定対象体の表面抵抗を正確に測定できないことがあるという問題点が存在する。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、中心電極および外部電極の双方を測定対象体に対して確実に接触させ得る抵抗測定用電極装置、および測定対象体の表面抵抗を正確に測定し得る抵抗測定システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の抵抗測定用電極装置は、中心電極と、当該中心電極の周囲に配置された筒状の外部電極と、前記中心電極および前記外部電極を支持する電極支持部とを備えた抵抗測定用電極装置であって、前記電極支持部は、当該電極支持部に対する前記外部電極の筒長方向への前記中心電極および当該外部電極の少なくとも一方の移動を許容しつつ当該両電極を支持
可能に構成され、当該抵抗測定用電極装置を水平平面上に載置したときに、前記中心電極から前記水平平面に加わる圧力と、前記外部電極から前記水平平面に加わる圧力とが等しくなるように構成されている。
【0009】
また、請求項2記載の抵抗測定用電極装置は、請求項1記載の抵抗測定用電極装置において、
前記電極支持部に対する前記筒長方向への前記中心電極および前記外部電極の少なくとも一方の移動時に当該中心電極と共に当該外部電極に対して相対的に移動する部材および当該中心電極の総重量を当該中心電極の面積で除した値と、前記少なくとも一方の移動時に前記外部電極と共に前記中心電極に対して相対的に移動する部材および当該外部電極の総重量を当該外部電極の面積で除した値とが等しくなるように、当該中心電極、当該外部電極および当該各部材の重量および大きさを規定することで前記両圧力が等しくなるように構成されている。
【0010】
さらに、請求項3記載の抵抗測定用電極装置は、請求項1または2記載の抵抗測定用電極装置において、前記電極支持部は、前記筒長方向への少なくとも前記中心電極の移動を許容し、前記電極支持部および前記中心電極のいずれかには、当該電極支持部を持ち上げることで当該電極支持部に対して当該中心電極が相対的に下方に移動したときに押圧されて当該中心電極の当該相対的な移動を検出する電極移動検出素子が取り付けられている。
【0011】
さらに、請求項4記載の抵抗測定用電極装置は、請求項1または2記載の抵抗測定用電極装置において、前記電極支持部は、前記筒長方向への少なくとも前記外部電極の移動を許容し、前記電極支持部および前記外部電極のいずれかには、当該電極支持部を持ち上げることで当該電極支持部に対して当該外部電極が相対的に下方に移動したときに押圧されて当該外部電極の当該相対的な移動を検出する電極移動検出素子が取り付けられている。
【0012】
また、請求項5記載の抵抗測定システムは、請求項1または2記載の抵抗測定用電極装置と、当該抵抗測定用電極装置に接続された測定装置とを備えて構成された抵抗測定システムであって、前記測定装置は、前記抵抗測定用電極装置における前記中心電極と前記外部電極との間に測定用電圧を印加すると共に、当該中心電極と当該外部電極との間を流れる電流の電流値および前記測定用電圧の電圧値に基づいて、当該中心電極および当該外部電極が接している測定対象体の表面抵抗を測定可能に構成されている。
【0013】
また、請求項6記載の抵抗測定システムは、請求項3または4記載の抵抗測定用電極装置と、当該抵抗測定用電極装置に接続された測定装置とを備えて構成された抵抗測定システムであって、前記測定装置は、前記抵抗測定用電極装置における前記中心電極と前記外部電極との間に測定用電圧を印加すると共に、当該中心電極と当該外部電極との間を流れる電流の電流値および前記測定用電圧の電圧値に基づいて、当該中心電極および当該外部電極が接している測定対象体の表面抵抗を測定する測定部と、当該測定部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記抵抗測定用電極装置の前記電極移動検出素子によっていずれかの前記電極の前記相対的な移動が検出されていないときに前記測定部による前記測定用電圧の印加を許容すると共に、前記電極移動検出素子によっていずれかの前記電極の前記相対的な移動が検出されたときに前記測定部による前記測定用電圧の印加を規制する。
【0014】
さらに、請求項7記載の抵抗測定システムは、請求項6記載の抵抗測定システムにおいて、前記抵抗測定用電極装置は、電圧印加規制解除スイッチが設けられて構成され、
前記制御部は、前記電極移動検出素子が押圧されている状態において前記電圧印加規制解除スイッチが操作されたときに前記測定用電圧の印加を許容する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の抵抗測定用電極装置では、電極支持部が、電極支持部に対する外部電極の筒長方向への中心電極および外部電極の少なくとも一方の移動を許容しつつ、両電極を支持する。また、請求項5記載の抵抗測定システムでは、請求項1記載の抵抗測定用電極装置、および抵抗測定用電極装置における中心電極と外部電極との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極と外部電極との間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極および外部電極が接している測定対象体の表面抵抗を測定可能に構成された測定装置を備えている。
【0016】
したがって、請求項1記載の抵抗測定用電極装置、および請求項5記載の抵抗測定システムによれば、測定対象体の表面が凹凸している状態であったとしても、中心電極および外部電極の少なくとも一方が電極支持部に対して外部電極の筒長方向に移動することで、中心電極および外部電極の双方を測定対象体の表面に確実に接触させることができる。これにより、測定対象体の表面抵抗を正確に測定することができる。
【0017】
また、請求項
1,2記載の抵抗測定用電極装置、および請求項5記載の抵抗測定システムによれば、抵抗測定用電極装置を水平平面上に載置したときに、中心電極から水平平面に加わる圧力と、外部電極から水平平面に加わる圧力とが等しくなるように構成したことにより、測定対象体に対する中心電極の接触抵抗と、測定対象体に対する外部電極の接触抵抗とが均一となるため、測定対象体の表面抵抗を一層正確に測定することができる。
【0018】
さらに、請求項3記載の抵抗測定用電極装置では、電極支持部が筒長方向への少なくとも中心電極の移動を許容する構成において、電極支持部を持ち上げることで電極支持部に対して中心電極が相対的に下方に移動したときに押圧されて中心電極の相対的な移動を検出する電極移動検出素子が電極支持部および中心電極のいずれかに取り付けられている。また、請求項6記載の抵抗測定システムでは、請求項3記載の抵抗測定用電極装置および測定装置を備え、測定装置は、抵抗測定用電極装置における中心電極と外部電極との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極と外部電極との間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極および外部電極が接している測定対象体の表面抵抗を測定する測定部と、抵抗測定用電極装置の電極移動検出素子によって中心電極の相対的な移動が検出されていないときに測定部による測定用電圧の印加を許容すると共に、電極移動検出素子によって中心電極の相対的な移動が検出されたときに測定部による測定用電圧の印加を規制する制御部とを備えて構成されている。
【0019】
したがって、請求項3記載の抵抗測定用電極装置、および請求項6記載の抵抗測定システムによれば、抵抗測定用電極装置が持ち上げられている状態(中心電極や外部電極に人体が接触する可能性がある状態)において、測定用電圧が印加されないため、感電事故の発生を確実に防止することができる。
【0020】
さらに、請求項4記載の抵抗測定用電極装置では、電極支持部が筒長方向への少なくとも外部電極の移動を許容する構成において、電極支持部を持ち上げることで電極支持部に対して外部電極が相対的に下方に移動したときに押圧されて外部電極の相対的な移動を検出する電極移動検出素子が電極支持部および外部電極のいずれかに取り付けられている。また、請求項6記載の抵抗測定システムでは、請求項4記載の抵抗測定用電極装置および測定装置を備え、測定装置は、抵抗測定用電極装置における中心電極と外部電極との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極と外部電極との間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極および外部電極が接している測定対象体の表面抵抗を測定する測定部と、抵抗測定用電極装置の電極移動検出素子によって外部電極の相対的な移動が検出されていないときに測定部による測定用電圧の印加を許容すると共に、電極移動検出素子によって外部電極の相対的な移動が検出されたときに測定部による測定用電圧の印加を規制する制御部と備えて構成されている。
【0021】
したがって、請求項4記載の抵抗測定用電極装置、および請求項6記載の抵抗測定システムによれば、抵抗測定用電極装置が持ち上げられている状態(中心電極や外部電極に人体が接触する可能性がある状態)において、測定用電圧が印加されないため、感電事故の発生を確実に防止することができる。
【0022】
また、請求項7記載の抵抗測定システムによれば、制御部が、抵抗測定用電極装置に設けられた電極移動検出素子が押圧されている状態において電圧印加規制解除スイッチが操作されたときに測定用電圧の印加を許容することにより、中心電極や外部電極に人体が接触する可能性がある状態であったとしても、利用者が、その事実、および感電事故が発生する可能性がないことを認識しているときには、測定用電圧の印加の規制を強制的に解除して(印加を許容して)、中心電極および外部電極の間に測定用電圧を印加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る抵抗測定用電極装置および抵抗測定システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1に示す抵抗測定システム10は、「抵抗測定システム」の一例であって、測定装置1および電極装置2,3を備えて、各種測定対象体X(
図5,6参照)の表面抵抗および体積抵抗を測定可能に構成されている。
【0026】
この場合、電極装置2は、「抵抗測定用電極装置」の一例であって、
図2,3に示すように、筐体21、中心電極22、外部電極23、スペーサ24、圧電素子25および解除スイッチ26を備えて構成されている。筐体21は、
図2に示すように、一例として、ポリアセタール樹脂等の絶縁材料で円筒状に形成された外筒31と、外筒31の上側開口部を閉塞可能にアルミニウム等の金属材料で円板状に形成されると共に強化ナイロン等の絶縁材料で形成された取っ手32aが取り付けられた蓋体32と、ポリアセタール樹脂等の絶縁材料で円板状に形成されて外筒31の内側に固定された支持板33とを備えている。この場合、本例の電極装置2では、上記の支持板33が外筒31および蓋体32と相まって「電極支持部」を構成する。
【0027】
中心電極22は、
図2,3に示すように、一例として、ステンレススチール等の金属材料で円柱状に形成された柱状部41と、導電性ゴム等の弾性材料によって円板状に形成されて柱状部41の底面に取り付けられた電極本体42と、この中心電極22を筐体21(支持板33)に取り付けるための取付け用ねじ43とを備えている。この場合、取付け用ねじ43は、いわゆる[段付きねじ]であって、柱状部41のねじ穴Hに対してねじ込み可能なねじ山が形成されている部位と、ねじ頭43hとの間が円柱状に形成されている。また、外部電極23は、一例として、ステンレススチール等の金属材料で円筒状に形成された筒状部51と、導電性ゴム等の弾性材料によってリング状に形成されて筒状部51の底面に取り付けられた電極本体52と、この外部電極23を筐体21(支持板33)に取り付けるための取付け用ねじ53とを備えている。
【0028】
この場合、本例の電極装置2では、柱状部41が取付け用ねじ43によって支持板33にねじ止めされることで中心電極22が筐体21(支持板33)に対して矢印A,Bの向きに移動自在に支持板33によって支持されている(「電極支持部に対する外部電極の筒長方向への中心電極の移動」が許容された構成の一例)。また、本例の電極装置2では、筒状部51が取付け用ねじ53によって支持板33にねじ止めされることで外部電極23が支持板33によって固定的に支持されている。
【0029】
スペーサ24は、一例として、ポリアセタール樹脂によって円筒状に形成されると共に、中心電極22および外部電極23の間に挟み込まれるようにして外筒31内に収容されている。この場合、スペーサ24は、その内径が中心電極22における柱状部41の外径とほぼ同径で、その外径が外部電極23における筒状部51の内径とほぼ同径で、かつ、その筒長が柱状部41の長さと同程度になるように形成されると共に、一例として、柱状部41に対して固着されて柱状部41と一体化されている。
【0030】
圧電素子25は、「電極移動検出素子」の一例であって、一例として、リング状に形成されると共に、
図2に示すように、支持板33を挿通させた状態の取付け用ねじ43におけるねじ頭43hと支持板33の上面との間に配設された状態で支持板33に取り付けられている。この圧電素子25は、後述するように、取っ手32aに手を掛けて電極装置2を持ち上げる(矢印Aの向きに移動させる)ことで筐体21(支持板33)に対して中心電極22が相対的に下方(矢印Bの向き)に移動したときに、取付け用ねじ43のねじ頭43hと支持板33との間に挟まれて押圧されて、中心電極22の相対的な移動を検出する。解除スイッチ26は、「電圧印加規制解除スイッチ」の一例であって、一例として、プッシュスイッチで構成されている。
【0031】
一方、電極装置3は、この抵抗測定システム10によって測定対象体の体積抵抗を測定する際に使用する装置であって、ステンレススチール等の導電性材料によって平板状に形成された電極(図示せず)を備えて構成されている。また、測定装置1は、電極装置2を用いた表面抵抗の測定処理、および電極装置2,3を用いた体積抵抗の測定処理を実行可能に構成された装置であって、
図1に示すように、測定部11、操作部12、表示部13および制御部14を備えている。
【0032】
測定部11は、制御部14の制御に従って、上記の表面抵抗や体積抵抗の測定処理を実行する。具体的には、測定部11は、表面抵抗の測定処理に際して、電極装置2の中心電極22と外部電極23との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22と外部電極23との間を流れる電流の電流値を測定し、測定した電流値と、印加した測定用電圧の電圧値とに基づいて、中心電極22および外部電極23が接している測定対象体の表面抵抗を測定する。また、測定部11は、体積抵抗の測定処理に際して、電極装置2の外部電極23をガード電極として使用しつつ、電極装置2の中心電極22と電極装置3との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22と電極装置3との間を流れる電流の電流値を測定し、測定した電流値と、印加した測定用電圧の電圧値とに基づいて、中心電極22および電極装置3が接している測定対象体の体積抵抗を測定する。
【0033】
操作部12は、測定装置1の動作条件を設定するための操作スイッチや、測定処理の開始・停止を指示するための操作スイッチなどを備え(図示せず)、これらのスイッチ操作に応じて制御部14に操作信号を出力する。表示部13は、一例として、LCDパネルを備えて構成されて、制御部14の制御に従って、測定装置1の動作条件を設定する設定用画面や、測定部11による測定結果などを表示する。
【0034】
制御部14は、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部14は、測定部11を制御して上記の表面抵抗や体積抵抗の測定処理を実行させると共に、測定部11による測定結果を表示部13に表示させる。この場合、制御部は、後述するように、電極装置2が測定対象体X上に載置されて圧電素子25が押圧されていないとき(中心電極22の「相対的な移動」が検出されていないとき)に測定部11による測定用電圧の印加を許容すると共に、電極装置2が持ち上げられて中心電極22が筐体21(支持板33)に対して下方に移動することで圧電素子25が押圧されているとき(中心電極22の「相対的な移動」が検出されたとき)に測定部11による測定用電圧の印加を規制する。また、制御部14は、圧電素子25が押圧されている状態において解除スイッチ26が操作されたときに測定部11による測定用電圧の印加を許容する。
【0035】
この場合、この抵抗測定システム10を使用した表面抵抗の測定処理としては、JIS−C2170に規定された「静電気電荷蓄積を防止する固体平面材料の抵抗および抵抗率試験方法」に従って実行する測定処理(以下、「JIS−C2170の測定処理」ともいう)が存在する。この「JIS−C2170の測定処理」では、使用する「抵抗測定用電極装置」の総重量(すなわち、中心電極や外部電極における測定対象体との接触面に加わる圧力)や、中心電極および外部電極における測定対象体との接触面を構成する部材の硬度が規定されており、本例の抵抗測定システム10において採用された電極装置2においても、この規格に準じて電極装置2の重量、電極装置2の各部の大きさおよび電極本体42,52の硬度等が規定されている。
【0036】
また、本例の抵抗測定システム10における電極装置2では、水平平面上に載置したときに、中心電極22における電極本体42から水平平面に加わる圧力と、外部電極23における電極本体52から水平平面に加わる圧力とが等しくなるように構成されている。具体的には、本例の電極装置2では、中心電極22およびスペーサ24の総重量を、中心電極22における電極本体42の面積で除した値と、外部電極23および筐体21の総重量を、外部電極23における電極本体52の面積で除した値とが等しくなるように各部の重量や大きさが規定されている。
【0037】
上記の電極装置2の組み立てに際しては、一例として、まず、柱状部41の底部に電極本体42を貼付すると共に、筒状部51の底部に電極本体52を貼付し、かつ、柱状部41の外側にスペーサ24を接着する。次いで、外筒31の内側に支持板33を固定すると共に、支持板33に対して筒状部51を固定する。この際には、支持板33に設けられた挿通孔(図示せず)を挿通させた取付け用ねじ53を、筒状部51の上端部に形成されたねじ穴Hにねじ込むことにより、筒状部51の上端部を支持板33の底部(下面)に当接させるようにして、筒状部51を支持板33に対して固定する。これにより、支持板33によって外部電極23が支持される。
【0038】
続いて、柱状部41と一体化されているスペーサ24を筒状部51の内側に挿通させると共に、圧電素子25、および支持板33に設けられた挿通孔(図示せず)をこの順で挿通させた取付け用ねじ43を、柱状部41の上端部に形成されたねじ穴Hにねじ込む。これにより、外部電極23に対して絶縁された状態で、中心電極22がスペーサ24と共に支持板33によって支持される。次いで、取っ手32aおよび解除スイッチ26を蓋体32に取り付けると共に、解除スイッチ26および圧電素子25に、図示しない接続用ケーブルの一端部をそれぞれ接続した後に、外筒31における上側開口部を閉塞するようにして外筒31に対して蓋体32を取り付ける。これにより、
図2に示すように、電極装置2が完成する。
【0039】
一方、この抵抗測定システム10を使用して、例えば床面等の測定対象体Xの表面抵抗を測定する際には、上記の接続用ケーブルを測定装置1の測定部11に接続すると共に、電極装置2を測定対象体Xの上に載置する。この際には、
図4に示すように、取っ手32aに手を掛けて電極装置2を持ち上げたとき(すなわち、筐体21を矢印Aの向きに移動させたとき)に、支持板33(筐体21)に対して移動自在に支持されている中心電極22およびスペーサ24が、外部電極23および筐体21(支持板33)に対して、自重によって矢印Bの向きに相対的に移動する。この結果、取付け用ねじ43のねじ頭43hと支持板33の上面との間に配設されている圧電素子25が、ねじ頭43hおよび支持板33によって挟まれるようにして押圧されて、圧電効果によって発生した信号が圧電素子25から出力される(「いずれかの電極(本例では「中心電極」)の相対的な移動が検出されたとき」の一例)。
【0040】
この際に、この抵抗測定システム10では、仮に、測定装置1に電源が投入されて、表面抵抗の測定処理が開始されていたとしても、制御部14は、圧電素子25からの信号に基づき、圧電素子25が押圧されている(すなわち、電極装置2が持ち上げられており、中心電極22および外部電極23の電極本体42,52に人体が接触する可能性がある)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22および外部電極23の間への測定用電圧の印加を規制する(具体的には測定用電圧の印加を停止させる)。これにより、電極装置2が持ち上げられた状態において電極本体42,52に人体が接触したとしても、感電事故が発生する事態が回避される。
【0041】
また、電極装置2を載置する測定対象体Xの表面が平坦なときには、電極装置2をこの測定対象体Xの上に載置する際に、まず、中心電極22の電極本体42が測定対象体Xの表面に接触する。次いで、その状態において筐体21(取っ手32a)を下降させたときには、筐体21および外部電極23が中心電極22およびスペーサ24に対して矢印Bの向きに移動させられ、
図2に示すように、中心電極22の電極本体42および外部電極23の電極本体52の双方が測定対象体Xに対して接触した状態となる。
【0042】
この際に、この電極装置2では、前述したように、中心電極22およびスペーサ24の総重量を、中心電極22における電極本体42の面積で除した値と、外部電極23および筐体21の総重量を、外部電極23における電極本体52の面積で除した値とが等しくなるように各部の重量や大きさが規定されている。このため、この電極装置2では、中心電極22における電極本体42から測定対象体Xの表面に加わる圧力と、外部電極23における電極本体52から測定対象体Xの表面に加わる圧力とが等しくなる。
【0043】
また、筐体21および外部電極23が中心電極22およびスペーサ24に対して矢印Bの向きに移動させられた状態(すなわち、中心電極22およびスペーサ24が、筐体21および外部電極23に対して矢印Aの向きに移動させられた状態)においては、取付け用ねじ43におけるねじ頭43hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されて、圧電効果によって発生した信号の圧電素子25からの出力が停止する(「いずれかの電極(本例では「中心電極」)の相対的な移動が検出されていないとき」の一例)。したがって、制御部14は、圧電素子25からの信号の出力停止に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22および外部電極23の電極本体42,52が測定対象体Xに接触しており、これらに人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22および外部電極23の間への測定用電圧の印加を許容する。
【0044】
これに応じて、測定部11は、中心電極22と外部電極23との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22と外部電極23との間を流れる電流の電流値を測定し、測定した電流値と、印加した測定用電圧の電圧値とに基づいて、中心電極22および外部電極23が接している測定対象体Xの表面抵抗を測定する。また、測定部11は、測定した結果を制御部14に出力する。これに応じて、制御部14は、測定部11から出力された測定結果(測定対象体Xの表面抵抗)を表示部13に表示させる。これにより、表面抵抗の測定処理が完了する。
【0045】
この場合、この抵抗測定システム10によって表面抵抗を測定する測定対象体X(例えば、床面)は、その表面が平坦ではないことがある。例えば、表面が凹凸している測定対象体Xの表面抵抗を測定する際に、測定対象体Xにおける凸状部の上に電極装置2を載置したときには、まず、中心電極22の電極本体42が測定対象体Xの凸状部における突端部に接触する。次いで、その状態において筐体21(取っ手32a)を下降させたときには、筐体21および外部電極23が中心電極22およびスペーサ24に対して矢印Bの向きに移動させられ、
図5に示すように、中心電極22の電極本体42および外部電極23の電極本体52の双方が測定対象体Xに対して接触した状態となる(中心電極22の電極本体42が外部電極23の電極本体52よりも上側に位置した状態)。
【0046】
このような状態においても、取付け用ねじ43におけるねじ頭43hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されるため、制御部14は、圧電素子25からの信号に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22および外部電極23の電極本体42,52に人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22および外部電極23の間への測定用電圧の印加を許容する。この結果、測定部11による表面抵抗の測定処理が実行されて、制御部14に測定結果が表示される。
【0047】
また、表面が凹凸している測定対象体Xの表面抵抗を測定する際に、測定対象体Xにおける凹状部の上に電極装置2を載置したときには、まず、中心電極22の電極本体42が測定対象体Xの凹状部における底面に接触する。次いで、その状態において筐体21(取っ手32a)を下降させたときには、筐体21および外部電極23が中心電極22およびスペーサ24に対して矢印Bの向きに移動させられ、
図6に示すように、中心電極22の電極本体42および外部電極23の電極本体52の双方が測定対象体Xに対して接触した状態となる(外部電極23の電極本体52が中心電極22の電極本体42よりも上側に位置した状態)。
【0048】
このような状態においても、取付け用ねじ43におけるねじ頭43hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されるため、制御部14は、圧電素子25からの信号に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22および外部電極23の電極本体42,52に人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22および外部電極23の間への測定用電圧の印加を許容する。この結果、測定部11による表面抵抗の測定処理が実行されて、制御部14に測定結果が表示される。
【0049】
また、この抵抗測定システム10を使用して、例えば導電フィルム等の測定対象体Xの体積抵抗を測定する際には、まず、電極装置2の接続用ケーブル、および電極装置3の接続用ケーブル(図示せず)を測定装置1の測定部11に接続する。次いで、電極装置3を水平面(作業台や床面等)の上に水平に設置すると共に、その電極装置3の上に測定対象体Xを載置する。続いて、測定対象体Xの上に電極装置2を載置する。これにより、測定対象体Xを挟み込むようにして、電極装置2,3が設置される。この場合、測定対象体Xの上に電極装置2を載置したときに、筐体21および外部電極23が中心電極22およびスペーサ24に対して矢印Bの向きに移動させられる(中心電極22およびスペーサ24が、筐体21および外部電極23に対して矢印Aの向きに移動させられる)ことにより、取付け用ねじ43におけるねじ頭43hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されて、圧電効果によって発生した信号の圧電素子25からの出力が停止する(「いずれかの電極(本例では「中心電極」)の相対的な移動が検出されていないとき」の一例)。
【0050】
したがって、制御部14は、圧電素子25からの信号の出力停止に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22および外部電極23の電極本体42,52が測定対象体Xに接触しており、これらに人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22と電極装置3との間への測定用電圧の印加を許容する。これに応じて、測定部11は、中心電極22と電極装置3との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22と電極装置3との間を流れる電流の電流値を測定し、測定した電流値と、印加した測定用電圧の電圧値とに基づいて、電極装置2,3が接している測定対象体Xの体積抵抗を測定する。また、測定部11は、測定した結果を制御部14に出力する。これに応じて、制御部14は、測定部11から出力された測定結果(測定対象体Xの体積抵抗)を表示部13に表示させる。これにより、体積抵抗の測定処理が完了する。
【0051】
一方、この種の抵抗測定システム10の使用に際しては、測定部11によって印加する測定用電圧の電圧値が規定値に対して許容範囲内となっているかを定期的に検査するのが好ましい。この場合、この抵抗測定システム10では、前述したように、取付け用ねじ43のねじ頭43hと支持板33とによって圧電素子25が押圧されている状態において、測定部11による測定用電圧の印加が規制される構成が採用されている。したがって、検査に際して取っ手32aに手を掛けて電極装置2を持ち上げたときに、取付け用ねじ43のねじ頭43hと支持板33とによって圧電素子25が押圧され、その状態において、電極装置2を横倒しにしたときに、取付け用ねじ43のねじ頭43hと支持板33とによって圧電素子25が押圧された状態が維持されて、測定部11による測定用電圧の印加が規制された状態となることがある。
【0052】
このような状態において、この抵抗測定システム10では、解除スイッチ26を操作することにより、測定用電圧の印加の規制を強制的に解除することができるように構成されている。具体的には、横倒しした電極装置2において、取付け用ねじ43のねじ頭43hと支持板33とによって圧電素子25が押圧されている状態(圧電素子25から信号が出力されている状態)において、制御部14は、測定部11による中心電極22と電極装置3との間への測定用電圧の印加を規制するが、この状態において解除スイッチ26が操作されたときに、測定用電圧の印加の規制を強制的に解除する(測定用電圧の印加を許容する)。したがって、電極本体42,52に図示しない電圧計のテストリードを接触させた状態において解除スイッチ26を操作することにより、測定部11によって電極本体42,52の間に印加された測定用電圧の電圧値を測定することが可能となる。
【0053】
このように、この電極装置2では、筐体21(支持板33)が、筐体21に対する外部電極23の筒長方向への中心電極22および外部電極23の少なくとも一方(本例では、中心電極22)の移動を許容しつつ、中心電極22および外部電極23を支持する。また、この抵抗測定システム10では、上記の電極装置2、および電極装置2における中心電極22と外部電極23との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22と外部電極23との間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極22および外部電極23が接している測定対象体Xの表面抵抗を測定可能に構成された測定装置1を備えている。
【0054】
したがって、この電極装置2、および電極装置2を備えた抵抗測定システム10によれば、測定対象体Xの表面が凹凸している状態であったとしても、中心電極22が筐体21(支持板33)に対して外部電極23の筒長方向に移動することで、中心電極22の電極本体42および外部電極23の電極本体52の双方を測定対象体Xの表面に確実に接触させることができる。これにより、測定対象体Xの表面抵抗を正確に測定することができる。
【0055】
また、この電極装置2、および電極装置2を備えた抵抗測定システム10によれば、電極装置2を水平平面上に載置したときに、中心電極22(電極本体42)から水平平面に加わる圧力と、外部電極23(電極本体52)から水平平面に加わる圧力とが等しくなるように構成したことにより、測定対象体Xに対する中心電極22(電極本体42)の接触抵抗と、測定対象体Xに対する外部電極23(電極本体52)の接触抵抗とが均一となるため、測定対象体Xの表面抵抗を一層正確に測定することができる。
【0056】
さらに、この電極装置2では、筐体21(支持板33)を持ち上げることで筐体21(支持板33)に対して中心電極22が相対的に下方に移動したときに押圧されて中心電極22の相対的な移動を検出する圧電素子25が筐体21(支持板33)に取り付けられている。また、この抵抗測定システム10では、上記の電極装置2および測定装置1を備え、測定装置1は、電極装置2における中心電極22と外部電極23との間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22と外部電極23との間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極22および外部電極23が接している測定対象体Xの表面抵抗を測定する測定部11と、電極装置2の圧電素子25によって中心電極22の相対的な移動が検出されていないときに測定部11による測定用電圧の印加を許容すると共に、圧電素子25によって中心電極22の相対的な移動が検出されたときに測定部11による測定用電圧の印加を規制する制御部14とを備えて構成されている。
【0057】
したがって、この電極装置2、および電極装置2を備えた抵抗測定システム10によれば、電極装置2が持ち上げられている状態(中心電極22の電極本体42や外部電極23の電極本体52に人体が接触する可能性がある状態)において、測定用電圧が印加されないため、感電事故の発生を確実に防止することができる。
【0058】
また、この抵抗測定システム10によれば、制御部14が、電極装置2に設けられた圧電素子25が押圧されている状態において解除スイッチ26が操作されたときに測定用電圧の印加を許容することにより、中心電極22の電極本体42や外部電極23の電極本体52に人体が接触する可能性がある状態であったとしても、利用者が、その事実、および感電事故が発生する可能性がないことを認識しているときには、測定用電圧の印加の規制を強制的に解除して(印加を許容して)、電極本体42,52の間に測定用電圧を印加させることができる。
【0059】
次に、本発明に係る抵抗測定用電極装置および抵抗測定システムの他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、前述した電極装置2および抵抗測定システム10と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
図1に示す抵抗測定システム10Aは、「抵抗測定システム」の他の一例であって、前述した電極装置2に代えて電極装置2Aを備えて構成されている。電極装置2Aは、「抵抗測定用電極装置」の他の一例であって、
図7,3に示すように、筐体21、中心電極22a、外部電極23a、スペーサ24、圧電素子25および解除スイッチ26を備えて構成されている。
【0061】
中心電極22aは、一例として、ステンレススチール等の金属材料で円柱状に形成された柱状部41aと、導電性ゴム等の弾性材料によって円板状に形成されて柱状部41aの底面に取り付けられた電極本体42と、この中心電極22aを筐体21(支持板33)に取り付けるための取付け用ねじ43aとを備えている。また、外部電極23aは、一例として、ステンレススチール等の金属材料で円筒状に形成された筒状部51aと、導電性ゴム等の弾性材料によってリング状に形成されて筒状部51aの底面に取り付けられた電極本体52と、この外部電極23aを筐体21(支持板33)に取り付けるための取付け用ねじ53aとを備えている。この場合、取付け用ねじ53aは、いわゆる[段付きねじ]であって、筒状部51aのねじ穴Hに対してねじ込み可能なねじ山が形成されている部位と、ねじ頭53hとの間が円柱状に形成されている。
【0062】
この場合、本例の電極装置2Aでは、柱状部41aが取付け用ねじ43aによって支持板33にねじ止めされることで中心電極22aが支持板33によって固定的に支持されている。また、本例の電極装置2Aでは、筒状部51aが取付け用ねじ53aによって支持板33にねじ止めされることで外部電極23aが筐体21(支持板33)に対して矢印A,Bの向きに移動自在に支持板33によって支持されている(「電極支持部に対する外部電極の筒長方向への外部電極の移動」が許容された構成の一例)。
【0063】
スペーサ24は、一例として、ポリアセタール樹脂によって円筒状に形成されると共に、中心電極22aおよび外部電極23aの間に挟み込まれるようにして外筒31内に収容されている。この場合、本例の電極装置2Aでは、一例として、スペーサ24が柱状部41aに対して固着されて柱状部41aと一体化されている。圧電素子25は、支持板33を挿通させた状態の取付け用ねじ53aにおけるねじ頭53hと支持板33の上面との間に配設された状態で支持板33に取り付けられている。この圧電素子25は、後述するように、取っ手32aに手を掛けて電極装置2Aを持ち上げる(矢印Aの向きに移動させる)ことで筐体21(支持板33)に対して外部電極23aが相対的に下方(矢印Bの向き)に移動したときに、取付け用ねじ53aのねじ頭53hと支持板33との間に挟まれて押圧されることで、外部電極23aの相対的な移動を検出する。
【0064】
この場合、本例の抵抗測定システム10Aにおいて採用された電極装置2Aにおいても、前述した「JIS−C2170」の規定に準じて電極装置2Aの重量、電極装置2Aの各部の大きさ、および電極本体42,52の硬度等が規定されている。また、本例の抵抗測定システム10Aにおける電極装置2Aでは、電極装置2Aを水平平面上に載置したときに、中心電極22aにおける電極本体42(水平平面との接触面)に加わる圧力と、外部電極23aにおける電極本体52(水平平面との接触面)に加わる圧力とが等しくなるように構成されている。具体的には、本例の電極装置2Aでは、外部電極23aの重量を、外部電極23aにおける電極本体52の面積
で除した値と、中心電極22a、スペーサ24および筐体21の総重量を、中心電極22aにおける電極本体42の面積で除した値とが等しくなるように各部の重量や大きさが規定されている。
【0065】
上記の電極装置2Aの組み立てに際しては、一例として、まず、柱状部41aの底部に電極本体42を貼付すると共に、筒状部51aの底部に電極本体52を貼付し、かつ、柱状部41aの外周部にスペーサ24を接着する。次いで、外筒31の内側に支持板33を固定すると共に、支持板33に対して柱状部41aを固定する。この際には、支持板33に設けられた挿通孔(図示せず)を挿通させた取付け用ねじ43aを、柱状部41aの上端部に形成されたねじ穴Hにねじ込むことにより、柱状部41aの上端部を支持板33の底部(下面)に当接させるようにして、柱状部41aを支持板33に対して固定する。これにより、支持板33によって中心電極22aおよびスペーサ24が支持される。
【0066】
続いて、スペーサ24を挿通させるようにして筒状部51aを外筒31内に挿通すると共に、圧電素子25、および支持板33に設けられた挿通孔(図示せず)をこの順で挿通させた取付け用ねじ53aを、筒状部51aの上端部に形成されたねじ穴Hにねじ込む。これにより、中心電極22aに対して絶縁された状態で、外部電極23aが支持板33によって支持される。この後、蓋体32に取り付けられている解除スイッチ26、および圧電素子25に、図示しない接続用ケーブルの一端部をそれぞれ接続すると共に、外筒31における上側開口部を閉塞するようにして外筒31に対して蓋体32を取り付ける。これにより、
図7に示すように、電極装置2Aが完成する。
【0067】
一方、この抵抗測定システム10Aを使用して、例えば床面等の測定対象体Xの表面抵抗を測定する際には、上記の接続用ケーブルを測定装置1の測定部11に接続すると共に、電極装置2Aを測定対象体Xの上に載置する。この際には、
図8に示すように、取っ手32aに手を掛けて電極装置2Aを持ち上げたとき(すなわち、筐体21を矢印Aの向きに移動させたとき)に、支持板33(筐体21)に対して移動自在に支持されている外部電極23aが、中心電極22a、スペーサ24および筐体21(支持板33)に対して、自重によって矢印Bの向きに相対的に移動する。この結果、取付け用ねじ53aのねじ頭53hと支持板33の上面との間に配設されている圧電素子25が、ねじ頭53hおよび支持板33によって挟まれるようにして押圧されて、圧電効果によって発生した信号が圧電素子25から出力される(「いずれかの電極(本例では「外部電極」)の相対的な移動が検出されたとき」の一例)。
【0068】
この際に、この抵抗測定システム10Aでは、前述した抵抗測定システム10と同様にして、仮に、測定装置1に電源が投入されて、表面抵抗の測定処理が開始されていたとしても、制御部14は、圧電素子25からの信号に基づき、圧電素子25が押圧されている(すなわち、電極装置2Aが持ち上げられており、中心電極22aおよび外部電極23aの電極本体42,52に人体が接触する可能性がある)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22aおよび外部電極23aの間への測定用電圧の印加を規制する(具体的には測定用電圧の印加を停止させる)。これにより、電極装置2Aが持ち上げられた状態において電極本体42,52に人体が接触したとしても、感電事故が発生する事態が回避される。
【0069】
また、電極装置2Aを載置する測定対象体Xの表面が平坦なときには、電極装置2Aをこの測定対象体Xの上に載置する際に、まず、外部電極23aの電極本体52が測定対象体Xの表面に接触する。次いで、その状態において筐体21(取っ手32a)を下降させたときには、筐体21、中心電極22aおよびスペーサ24が外部電極23aに対して矢印Bの向きに移動させられ、
図7に示すように、中心電極22aの電極本体42および外部電極23aの電極本体52の双方が測定対象体Xに対して接触した状態となる。
【0070】
この際に、この電極装置2Aでは、外部電極23aの重量を、外部電極23aにおける電極本体52の面積で除した値と、中心電極22a、スペーサ24および筐体21の総重量を、中心電極22aにおける電極本体42の面積で除した値とが等しくなるように各部の重量や大きさが規定されている。このため、この電極装置2Aでは、中心電極22aにおける電極本体42から測定対象体Xの表面に加わる圧力と、外部電極23aにおける電極本体52から測定対象体Xの表面に加わる圧力とが等しくなる。
【0071】
また、筐体21、中心電極22aおよびスペーサ24が外部電極23aに対して矢印Bの向きに移動させられた状態(すなわち、外部電極23aが、筐体21、中心電極22aおよびスペーサ24に対して矢印Aの向きに移動させられた状態)においては、取付け用ねじ53aにおけるねじ頭53hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されて、圧電効果によって発生した信号の圧電素子25からの出力が停止する(「いずれかの電極(本例では「外部電極」)の相対的な移動が検出されていないとき」の一例)。したがって、制御部14は、圧電素子25からの信号の出力停止に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22aおよび外部電極23aの電極本体42,52が測定対象体Xに接触しており、これらに人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22aおよび外部電極23aの間への測定用電圧の印加を許容する。
【0072】
これに応じて、測定部11は、中心電極22aと外部電極23aとの間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22aと外部電極23aとの間を流れる電流の電流値を測定し、測定した電流値と、印加した測定用電圧の電圧値とに基づいて、中心電極22aおよび外部電極23aが接している測定対象体Xの表面抵抗を測定する。また、測定部11は、測定した結果を制御部14に出力する。これに応じて、制御部14は、測定部11から出力された測定結果(測定対象体Xの表面抵抗)を表示部13に表示させる。これにより、表面抵抗の測定処理が完了する。
【0073】
一方、例えば、表面が凹凸している測定対象体Xの表面抵抗を測定する際に、測定対象体Xにおける凸状部の上に電極装置2Aを載置したときには、まず、外部電極23aの電極本体52が測定対象体Xの凸状部における突端部の周囲に接触する。次いで、その状態において筐体21(取っ手32a)を下降させたときには、筐体21、中心電極22aおよびスペーサ24が外部電極23aに対して矢印Bの向きに移動させられ、
図9に示すように、中心電極22aの電極本体42および外部電極23aの電極本体52の双方が測定対象体Xに対して接触した状態となる(外部電極23aの電極本体52が中心電極22aの電極本体42よりも下側に位置した状態)。
【0074】
このような状態においても、取付け用ねじ53aにおけるねじ頭53hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されるため、制御部14は、圧電素子25からの信号に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22aおよび外部電極23aの電極本体42,52に人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22aおよび外部電極23aの間への測定用電圧の印加を許容する。この結果、測定部11による表面抵抗の測定処理が実行されて、制御部14に測定結果が表示される。
【0075】
また、表面が凹凸している測定対象体Xの表面抵抗を測定する際に、測定対象体Xにおける凹状部の上に電極装置2Aを載置したときには、まず、外部電極23aの電極本体52が測定対象体Xの凹状部における底面に接触する。次いで、その状態において筐体21(取っ手32a)を下降させたときには、筐体21、中心電極22aおよびスペーサ24が外部電極23aに対して矢印Bの向きに移動させられ、
図10に示すように、中心電極22aの電極本体42および外部電極23aの電極本体52の双方が測定対象体Xに対して接触した状態となる(中心電極22aの電極本体42が外部電極23aの電極本体52よりも下側に位置した状態)。
【0076】
このような状態においても、取付け用ねじ53aにおけるねじ頭53hおよび支持板33による圧電素子25の押圧が解除されるため、制御部14は、圧電素子25からの信号に基づき、圧電素子25が押圧されていない(すなわち、中心電極22aおよび外部電極23aの電極本体42,52に人体が接触しない状態である)と判別し、測定部11を制御して、中心電極22aおよび外部電極23aの間への測定用電圧の印加を許容する。この結果、測定部11による表面抵抗の測定処理が実行されて、制御部14に測定結果が表示される。
【0077】
また、この抵抗測定システム10Aでは、前述した抵抗測定システム10と同様にして、例えば導電フィルム等の測定対象体Xの体積抵抗を測定することもできる。なお、体積抵抗の測定処理については、抵抗測定システム10による体積抵抗の測定処理についての上記の説明と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、解除スイッチ26の使用方法についても、抵抗測定システム10について説明した方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
このように、この電極装置2Aでは、筐体21(支持板33)が、筐体21に対する外部電極23aの筒長方向への中心電極22aおよび外部電極23aの少なくとも一方(本例では、外部電極23a)の移動を許容しつつ、中心電極22aおよび外部電極23aを支持する。また、この抵抗測定システム10Aでは、上記の電極装置2A、および電極装置2Aにおける中心電極22aと外部電極23aとの間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22aと外部電極23aとの間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極22aおよび外部電極23aが接している測定対象体Xの表面抵抗を測定可能に構成された測定装置1を備えている。
【0079】
したがって、この電極装置2A、および電極装置2Aを備えた抵抗測定システム10Aによれば、測定対象体Xの表面が凹凸している状態であったとしても、外部電極23aが筐体21(支持板33)に対してその筒長方向に移動することで、中心電極22aの電極本体42および外部電極23aの電極本体52の双方を測定対象体Xの表面に確実に接触させることができる。これにより、測定対象体Xの表面抵抗を正確に測定することができる。
【0080】
また、この電極装置2Aによれば、電極装置2Aを水平平面上に載置したときに、中心電極22a(電極本体42)から水平平面に加わる圧力と、外部電極23a(電極本体52)から水平平面に加わる圧力とが等しくなるように構成したことにより、測定対象体Xに対する中心電極22a(電極本体42)の接触抵抗と、測定対象体Xに対する外部電極23a(電極本体52)の接触抵抗とが均一となるため、測定対象体Xの表面抵抗を一層正確に測定することができる。
【0081】
さらに、この電極装置2Aでは、筐体21(支持板33)を持ち上げることで筐体21(支持板33)に対して外部電極23aが相対的に下方に移動したときに押圧されて外部電極23aの相対的な移動を検出する圧電素子25が筐体21(支持板33)に取り付けられている。また、この抵抗測定システム10Aでは、上記の電極装置2Aおよび測定装置1を備え、測定装置1は、電極装置2Aにおける中心電極22aと外部電極23aとの間に測定用電圧を印加すると共に、中心電極22aと外部電極23aとの間を流れる電流の電流値および測定用電圧の電圧値に基づいて、中心電極22aおよび外部電極23aが接している測定対象体Xの表面抵抗を測定する測定部11と、電極装置2Aの圧電素子25によって外部電極23aの相対的な移動が検出されていないときに測定部11による測定用電圧の印加を許容すると共に、圧電素子25によって外部電極23aの相対的な移動が検出されたときに測定部11による測定用電圧の印加を規制する制御部14とを備えて構成されている。
【0082】
したがって、この電極装置2A、および電極装置2Aを備えた抵抗測定システム10Aによれば、電極装置2Aが持ち上げられている状態(中心電極22aの電極本体42や外部電極23aの電極本体52に人体が接触する可能性がある状態)において、測定用電圧が印加されないため、感電事故の発生を確実に防止することができる。
【0083】
また、この抵抗測定システム10Aによれば、制御部14が、電極装置2Aに設けられた圧電素子25が押圧されている状態において解除スイッチ26が操作されたときに測定用電圧の印加を許容することにより、中心電極22aの電極本体42や外部電極23aの電極本体52に人体が接触する可能性がある状態であったとしても、利用者が、その事実、および感電事故が発生する可能性がないことを認識しているときには、測定用電圧の印加の規制を強制的に解除して(印加を許容して)、電極本体42,52の間に測定用電圧を印加させることができる。
【0084】
なお、「抵抗測定用電極装置」および「抵抗測定システム」の構成は、上記した電極装置2,2Aおよび抵抗測定システム10,10Aの構成に限定されない。例えば、支持板33(筐体21)に対して外部電極23が固定的に支持されると共に中心電極22が移動自在に支持された電極装置2、および支持板33(筐体21)に対して中心電極22aが固定的に支持されると共に外部電極23aが移動自在に支持された電極装置2Aを例に挙げて説明したが、「電極支持部」に対して「中心電極」および「外部電極」の双方が移動自在となるように支持させて「抵抗測定用電極装置」を構成することもできる(図示せず)。このような構成においても、前述した電極装置2,2Aと同様にして、「中心電極」および「外部電極」の両電極を各種の測定対象体Xに対して確実に接触させることができる。
【0085】
また、「電極移動検出素子」としての圧電素子25を備えた例について説明したが、圧電素子25に代えて、通常の接点型のスイッチを設けて、「電極支持部」に対する「中心電極(または、外部電極)」の移動を検出する構成を採用することもできる(図示せず)。さらに、「電圧印加規制解除スイッチ」として、プッシュスイッチで構成された解除スイッチ26を備えた例について説明したが、プッシュスイッチに代えて、トグルスイッチ、バラフライスイッチ、スライドスイッチ等を「電圧印加規制解除スイッチ」として配設することもできる。この場合、「電圧印加規制解除スイッチ」が操作された状態が維持されて、利用者の意図に反して測定用電圧の印加の規制が解除された状態が維持されるのを回避するために、「電圧印加規制解除スイッチ」については、非操作状態においてオフ状態に復帰するスイッチを採用するのが好ましい。加えて、「電極移動検出素子」や「電圧印加規制解除スイッチ」の配設を省略した構成を採用することもできる。
【0086】
また、中心電極22(22a)および外部電極23(23a)を支持する支持板33を絶縁材料で形成することで両電極22,23(22a,23a)を相互に絶縁する構成の電極装置2(2A)を例に挙げて説明したが、「中心電極」および「外部電極」を相互に絶縁するための構成(「中心電極」における測定対象体への接触部位と、「外部電極」における測定対象体への接触部位とを相互に絶縁するための構成)は、これに限定されない。例えば、「電極支持部」を非絶縁材料(導電性材料)で形成すると共に、「中心電極」と「電極支持部」との間、および「外部電極」と「電極支持部」との間の少なくとも一方に絶縁性材料で形成した絶縁部材(図示せず)を挟み込むことで、「中心電極」および「外部電極」を相互に絶縁することができる。
【0087】
また、電極装置2の支持板33を非絶縁材料(導電性材料)で形成すると共に、中心電極22の柱状部41、および外部電極23の筒状部51の少なくとも一方を絶縁材料で形成することで、中心電極22の電極本体42、および外部電極23の電極本体52を相互に絶縁することができる。さらに、電極装置2Aの支持板33を非絶縁材料(導電性材料)で形成すると共に、中心電極22aの柱状部41a、および外部電極23aの筒状部51aの少なくとも一方を絶縁材料で形成することで、中心電極22aの電極本体42、および外部電極23aの電極本体52を相互に絶縁することができる。