特許第5808192号(P5808192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5808192樹脂製容器,樹脂製容器の製造方法,及び樹脂製容器の溶接不良検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808192
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】樹脂製容器,樹脂製容器の製造方法,及び樹脂製容器の溶接不良検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   G01M3/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-173744(P2011-173744)
(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-36879(P2013-36879A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100102783
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 高明
(72)【発明者】
【氏名】松浦 隆明
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−236505(JP,A)
【文献】 特開平06−122997(JP,A)
【文献】 特開2004−239785(JP,A)
【文献】 特開2005−185987(JP,A)
【文献】 特開2005−335218(JP,A)
【文献】 特開2003−001214(JP,A)
【文献】 特開2001−066217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂製板材が溶接により接合形成されてなる気体又は液体を収容する収容部を備えた樹脂製容器であって、
前記収容部は、一の前記樹脂製板材の端面が他の前記樹脂製板材の表面に対し導電性塗料で形成された導電層を介在させて突き当てられると共に、前記一の樹脂製板材と前記導電層の端部と前記他の樹脂製板材とを跨って覆うよう設けられた溶接部により箱状に接合形成されており、
前記他の樹脂製板材における前記一の樹脂製板材に対応した位置に設けられた貫通孔と、
導電性を有する棒状部材であって、一端側が前記貫通孔に差し込まれて前記導電層に導通接触し他端側が外側に突出するよう取り付けられた接続部と、
備えていることを特徴とする樹脂製容器。
【請求項2】
前記一の樹脂製板材は、前記端面に開口する穴を有し、
前記接続部は前記一端側が前記穴に進入して設けられると共に、前記導電層が前記穴の内部にも充填形成されて前記導電層と前記接続部とが導通接触していることを特徴とする請求項1記載の樹脂製容器。
【請求項3】
気体又は液体を収容する収容部を備えた樹脂製容器を、複数の樹脂製板材を溶接して接合形成する樹脂製容器の製造方法であって、
接合する一方の前記樹脂製板材の端面に導電性塗料を塗布して導電層を形成する導電層形成ステップと、
接合する他方の前記樹脂製板材に貫通孔を形成する貫通孔形成ステップと、
前記一方の樹脂製板材の前記端面を、前記他方の樹脂製板材の表面における前記貫通孔に対応した位置に前記導電層を介在させて突き当て、前記一方の樹脂製板材と前記導電層の端部と前記他方の樹脂製板材とに跨るようにすみ肉溶接によって溶接部を形成する接合ステップと、
前記接合ステップの前に、前記貫通孔形成ステップで形成した前記貫通孔に導電性を有する棒状部材を差し込んでおき、前記接合ステップにおける前記端面の突き当てにより前記棒状部材の先端部を前記導電層に導通接触させる棒状部材導通ステップと、前記接合ステップの後に、前記貫通孔形成ステップで形成した前記貫通孔に導電性を有する棒状部材を差し込み、前記棒状部材の先端部を前記導電層に導通接触させる棒状部材導通ステップと、のいずれか一方を含むことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
複数の樹脂製板材が溶接により接合形成されてなる気体又は液体を収容する収容部を備えた樹脂製容器の溶接不良検出方法であって、
前記樹脂製容器は、
前記収容部が、一の前記樹脂製板材の端面が他の前記樹脂製板材の表面に対し導電性塗料で形成された導電層を介在させて突き当てられると共に、前記一の樹脂製板材と前記導電層の端部と前記他の樹脂製板材とを跨って覆うよう設けられた溶接部により箱状に接合形成されると共に、
前記他の樹脂製板材における前記一の樹脂製板材に対応した位置に設けられた貫通孔と、
導電性を有する棒状部材であって、前記貫通孔に差し込まれて一端側が前記導電層に導通接触し他端側が外側に突出するよう取り付けられた接続部と、
を備えており、
前記収容部に導電性を有する液体を収容し、
前記液体に電極を浸し、
前記電極と前記接続部との間に電圧を印加して漏れ電流又は絶縁抵抗を測定し、
測定した前記漏れ電流又は前記絶縁抵抗の値に基づいて不良の判定を行うことを特徴とする樹脂製容器の溶接不良検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器,樹脂製容器の製造方法,及び樹脂製容器の溶接不良検出方法に係る。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を用いて形成され気体や液体を貯蔵又は収容する樹脂製容器が知られている。
樹脂製容器は、樹脂材の射出成形により形成したり、樹脂製の板材同士を樹脂溶接(以下、単に溶接と称する)によって接合して形成する。
後者の一例が図8の斜視的断面図で示される樹脂製容器110である。
【0003】
樹脂製容器110は、天板101,底板102,及び複数の側板103を溶接で接合して箱状に形成されている。側板103同士の接合及び底板102と側板103とを接合する溶接は、容器内面の入隅部分に溶接部Y101として施されている。
液体の注入孔104は、特に貯蔵用途の場合、収めた液体が容易にこぼれ出ないように、また、排出時の利便性を考慮し、天板101の端に近い位置に小径で設けられる場合が多い。
複数の樹脂板を溶接により接合して容器化した樹脂製容器は、溶接した部分にピンホールやクラックなどの不良が生じていると、収容した液体等がその不良箇所から漏れ出る可能性がある。
そのため、使用前に溶接部の不良検出を非破壊で行うのが一般的である。
【0004】
樹脂製容器における溶接部の不良検出方法としては、いわゆる浸透探傷検査法が知られている。
また、容器の構造を、溶接した部位に対応した位置に水路を備えたものとし、その水路に所定の圧力で注水した際の漏水の状況を確認することで溶接部の不良検出を行う方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−66217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
浸透探傷検査法は、溶接部に浸透液や現像液などの液剤を塗布する作業、溶接部に残留した浸透液の有無を目視により観察する作業、などを行う。
この方法は、開口部が十分に大きく、溶接部に対する各液の塗布作業や目視観察作業が容易に行える容器に対しては好適である。
しかしながら、図8に示したような、注入口が狭く内部が奥深い容器では、これらの作業を行うことは大変難しく、容器形状によっては、検査自体が行えない場合があり得る。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法は、例えば、樹脂製容器110の図8に示される溶接部Y101の不良検査をする場合、図8のA部拡大である図9に示されるような水路105を形成するために削り加工が必要となる。
さらに、溶接部Y101以外からの漏水がないように、底板102の下側の入隅にも溶接部Y102を不良なく設ける必要がある。
また、水路105が設けられることにより、樹脂製容器110の強度が低下するので、水路105がない場合と同等の強度を得るために、板厚を厚くするなどの手当をしなければならない。
従って、樹脂製容器110の製作コスト及び容器自体のコストが顕著にアップしてしまう。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、溶接不良検出の作業が容易で、容器製作及び容器自体のコストアップを抑制できる樹脂製容器,樹脂製容器の製造方法,及び樹脂製容器の溶接不良検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の構成又は手順を有する。
1) 複数の樹脂製板材が溶接により接合形成されてなる気体又は液体を収容する収容部を備えた樹脂製容器であって、 前記収容部は、一の前記樹脂製板材の端面が他の前記樹脂製板材の表面に対し導電性塗料で形成された導電層を介在させて突き当てられると共に、前記一の樹脂製板材と前記導電層の端部と前記他の樹脂製板材とを跨って覆うよう設けられた溶接部により箱状に接合形成されており、
前記他の樹脂製板材における前記一の樹脂製板材に対応した位置に設けられた貫通孔と、
導電性を有する棒状部材であって、一端側が前記貫通孔に差し込まれて前記導電層に導通接触し他端側が外側に突出するよう取り付けられた接続部と、
備えていることを特徴とする樹脂製容器である。
2) 前記一の樹脂製板材は、前記端面に開口する穴を有し、
前記接続部は前記一端側が前記穴に進入して設けられると共に、前記導電層が前記穴の内部にも充填形成されて前記導電層と前記接続部とが導通接触していることを特徴とする1)に記載の樹脂製容器である。
3) 気体又は液体を収容する収容部を備えた樹脂製容器を、複数の樹脂製板材を溶接して接合形成する樹脂製容器の製造方法であって、
接合する一方の前記樹脂製板材の端面に導電性塗料を塗布して導電層を形成する導電層形成ステップと、
接合する他方の前記樹脂製板材に貫通孔を形成する貫通孔形成ステップと、
前記一方の樹脂製板材の前記端面を、前記他方の樹脂製板材の表面における前記貫通孔に対応した位置に前記導電層を介在させて突き当て、前記一方の樹脂製板材と前記導電層の端部と前記他方の樹脂製板材とに跨るようにすみ肉溶接によって溶接部を形成する接合ステップと、
前記接合ステップの前に、前記貫通孔形成ステップで形成した前記貫通孔に導電性を有する棒状部材を差し込んでおき、前記接合ステップにおける前記端面の突き当てにより前記棒状部材の先端部を前記導電層に導通接触させる棒状部材導通ステップと、前記接合ステップの後に、前記貫通孔形成ステップで形成した前記貫通孔に導電性を有する棒状部材を差し込み、前記棒状部材の先端部を前記導電層に導通接触させる棒状部材導通ステップと、のいずれか一方を含むことを特徴とする樹脂製容器の製造方法である。
4) 複数の樹脂製板材が溶接により接合形成されてなる気体又は液体を収容する収容部を備えた樹脂製容器の溶接不良検出方法であって、
前記樹脂製容器は、
前記収容部が、一の前記樹脂製板材の端面が他の前記樹脂製板材の表面に対し導電性塗料で形成された導電層を介在させて突き当てられると共に、前記一の樹脂製板材と前記導電層の端部と前記他の樹脂製板材とを跨って覆うよう設けられた溶接部により箱状に接合形成されると共に、
前記他の樹脂製板材における前記一の樹脂製板材に対応した位置に設けられた貫通孔と、
導電性を有する棒状部材であって、前記貫通孔に差し込まれて一端側が前記導電層に導通接触し他端側が外側に突出するよう取り付けられた接続部と、
を備えており、
前記収容部に導電性を有する液体を収容し、
前記液体に電極を浸し、
前記電極と前記接続部との間に電圧を印加して漏れ電流又は絶縁抵抗を測定し、
測定した前記漏れ電流又は前記絶縁抵抗の値に基づいて不良の判定を行うことを特徴とする樹脂製容器の溶接不良検出方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶接不良検出の作業が容易で、容器製作及び容器自体のコストアップを抑制できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の樹脂製容器の実施例を説明するための外観斜視図である。
図2図1におけるS1−S1断面図である。
図3図1におけるS2−S2断面図である。
図4】本発明の樹脂製容器の溶接不良検出方法を説明するための模式図である。
図5】本発明の樹脂製容器の実施例における変形例1を説明するための部分断面図である。
図6】本発明の樹脂製容器の実施例における変形例2を説明するための部分断面図である。
図7】本発明の樹脂製容器の実施例における変形例2を説明するための部分斜視図である。
図8】従来の樹脂製容器を示す斜視的断面図である。
図9】従来の樹脂製容器の一部を示す斜視的部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1図7を用いて説明する。
【0013】
実施例の樹脂製容器は、例えばメッキなどの表面処理装置に使用する薬液を収容する容器51である。
図1は、容器51の外観斜視図であり、図2は、図1におけるS1−S1断面図である。図2において、容器51は、床面FL上に設置された状態で示されている。
【0014】
図1及び図2に示されるように、容器51は、左側板1L,右側板1R,前側板1M,後側板1U,及び底板1Bの溶接接合により、天側が開放された箱状に形成されている。
詳しくは、左側板1Lと右側板1Rとが同じサイズ及び形状の樹脂板で形成されて平行に配置され、また、前側板1Mと後側板1Uとが同じサイズ及び形状の樹脂板で形成されて平行に配置されている。
底板1Bは、床面FLから所定の距離H1だけ離れた位置において各側板1L,1R,1M,1Uに接合されている。
ここで示される「左、右、前、後」の方向は、図1に示された姿勢に基づいて便宜的に定めたものである。
【0015】
隣接する側板1L,1R,1M,1U同士は、入隅において溶接部Y1〜Y4で溶接接合されている。
各側板1L,1R,1M,1Uと底板1Bとは、入隅において溶接部Y5〜Y8(Y6は隠れ位置につき図示せず)で溶接接合されている。
【0016】
容器51は、各側板1L,1R,1M,1Uと底板1Bとで、気体又は液体を収容する収容部SYが形成されている。この収容部SYの内部は、直方体に相当する空間Vとなる。収容部SYに、液体である薬液LQが、例えば図2の一点鎖線の位置を液面の上限として収容される。
【0017】
右側板1Rには、貫通孔1Rhが設けられている。貫通孔1Rhには、接続部2が、その一部が外側に突出するように差し込まれて取り付けられている。
接続部2は導電性を有する部材であって、棒状に形成されている。接続部2の材質例は銅である。
接続部2が設けられた天地方向の位置は、底板1Bの位置に対応している。
【0018】
図3は、図1におけるS2−S2断面の部分断面図である。詳しくは、底板1Bと右側板1Rとの突き合わせ部分を接続部2を含めて説明するための断面図である。
【0019】
図3に示されるように、底板1Bと右側板1Rとの接合部である突き合わせ部分において、底板1Bと右側板1Rとの間に導電層3が介在している。
導電層3は導電性を有する材料で形成される。この材料としては、塗布により板材の端面全体にもれなく付着させることができる程度の粘性を有するものが好適であり、市販の導電性塗料を用いることができる。
導電層3は、少なくとも収容部SYに面した接合部(溶接部Y1〜Y8が形成された突き合わせ部)に設けられている。
【0020】
接続部2は、右側板1Rを貫通し、先端部が導電層3と接触して取り付けられている。すなわち、導電層3と接続部2とは、導通状態となっている。
他端側は右側板1Rから外部に突出して露出している。
接続部2は、右側板1Rにおける収容部SY以外の部分(例えば外表面)から外部に露出している。
溶接は所謂すみ肉溶接を行う。
従って、溶接部7は、底板1Bの内面における入隅近傍の範囲AR1と、右側板1Rの内面における入隅近傍の範囲AR2と、入隅の導電層3の端部AR3と、を跨って覆うように断面が略三角形状となるように設けられる。
【0021】
底板1B及び右側板1Rの板厚は、例として、5〜10mmである。
溶接部Y7の高さHy及び幅Wyは、共に2〜3mmであり、最大でも5mm程度とされる。他の溶接部Y1〜Y6,Y8も同様である。
導電層3の厚さtdは、例えば最大で約0.5mmを想定するが、各板材の端面を相手板材の表面へ突き当てる際にこれより薄い膜厚となっても支障はなく、両面間に介在していれば十分である。
【0022】
図3において、容器51の製作の際には、導電層3を底板1Bの端面1Btに予め塗布などにより設けておき、空間Vの内表面となる右側板1Rの内表面1Rsに端面1Btを突き当てた状態で溶接部Y7を形成するように溶接する。
他の溶接部Y1〜Y6,及びY8についても、同様にそれらの溶接部に対応して導電層3が設けられている。
すなわち、各側板1L,1R,1M,1U同士の突き当て部,及び各側板1L,1R,1M,1Uと底板1Bとの突き当て部に導電層3が設けられている。
接続部2は、右側板1Rに設けた貫通孔1Rhに予め差し込んでおき、導電層3を端面1Btに塗布した底板1Bを突き当てて溶接する。
接続部2の貫通孔1Rhへの差し込みは、溶接の後でもかまわない。
溶接後に接続部2の位置がずれないように、貫通孔1Rhに接着剤等で固着しておくことが好ましい。
【0023】
図1における底板1Bの角隅部KSの導電層3は、天地方向の溶接部Y1と、水平方向の溶接部Y5,Y8と、に対応する3辺の導電層3が交わって導通状態となるように設けられている。底板1Bの残りの3つの角隅部でも同様とされている。
従って、容器51の、収容部SYを形成するすべての入隅部分、すなわち、溶接部Y1〜Y8が設けられた部分に対応する導電層3は互いに導通状態にあり、接続部2とも導通状態にある。
【0024】
上述した容器51の溶接不良検出は、次の方法で行うことができる。
図4は、容器51の溶接不良検出方法を説明するための模式図である。
容器51には、溶接不良検出が必要な収容容積を越えた容積の水WTを入れておく。すなわち、設定した液面の上限位置を越える量の水WTを入れておく。
入れた水WTに電極4を浸し、電極4と接続部2との間に電源5により直流電圧を印加する。印加電圧は交流でもよい。
これにより、接続部2と導通状態となっている導電層3が電極として機能して、電圧は、電極4と容器51に設けられた導電層3全体との間に印加されることになる。
電圧が印加された状態で、漏れ電流を測定し、電流値が所定値以上の場合、容器51を不良と判断する。これは、溶接部Y1〜Y8にピンホールやクラック等の不良部位があると、その不良部位に水が浸入し漏れ電流が増加することによる。
【0025】
漏れ電流の替わりに絶縁抵抗計などで絶縁抵抗を測定してもよい。
溶接部Y1〜Y8に不良部位が全くない場合、絶縁抵抗値は、通常、無限大か100MΩ以上の値を示すので、100MΩ未満に所定値を設定し、その所定値を閾値として検査を行えばよい。
所定値は、容器51に求める品質,収容する液体,使用する環境などに応じて任意に設定してよい。設定例としては、印加電圧をDC500V、所定値4MΩである。電極4と接続部2との間に直流500Vを印加した際の、絶縁抵抗値が4MΩ未満となる容器を不良品と判定する。
【0026】
上述した容器51及び容器51の溶接不良検出方法によれば、作業は、容器51内に導電性を有する液体(例えば水)を入れ、その液体に浸した電極4と容器51に設けた接続部2との間に電圧を印加するだけであり、容器の形状によらず、かつ、容易に行える。例えば、図8に示される容器110でも溶接不良の検出が可能となる。
【0027】
容器51を構成する板材(例えば、底板1Bと各側板1L,1R,1M,1U)に対する加工は、接続部2を通す貫通孔1Rhを開けるのみであるから、加工が容易であり、容器製造のコストアップが抑制される。
容器51を構成する板材に溝部は形成されず、接続部2を通す貫通孔1Rhが開けられるのみであるから、容器51の強度低下はほとんど無視できる。
従って、強度維持のためにその分厚い板を用いる必要がないので、容器自体のコストアップが抑制される。
【0028】
導電層3の材料として市販の導電性塗料を用いれば、汎用剤であることから顕著なコストアップにはならない。また、その塗布作業も各側板1L,1R,1M,1U及び底板1Bの組みつけ前に行えるので極めて容易である。
【0029】
底板1Bと各側板1L,1R,1M,1Uとの溶接は、収容部SY(空間V)側の入隅部だけに施してあれば不良検出ができるので、容器51の製造コストはその分抑制される。
【0030】
図5は、上述した実施例における変形例1を示しており、図3に対応した図で示されている。
【0031】
図5において、底板1Bの端面1Btには、穴1Bhが形成されている。
接続部2は、その先端が穴1Bh内に進入して設けられている。
穴1Bhを形成した後に、導電層3となる導電性塗料を塗布するので、穴1Bh内には導電性塗料が充填される。
右側板1Rの内表面1Rsから接続部2の先端迄の距離をDtとすると、接続部2と導電層3とが接触する接触面積は、上述した実施例(図3参照)に対し、この変形例1の方が少なくとも距離Dtの範囲の周面の分だけ多くなる。
従って、接続部2と導電層3との導通がより確実に確保できる。
また、接続部2の配置位置(図5の左右方向の位置)も高精度に決めなくてもよいので、容器51の組み立て作業が容易になる。
【0032】
図6は、上述した実施例における変形例2を示しており、図3に対応した図で示されている。図7は、変形例2において、容器51の前側板1Mと右側板1Rと底板1Bとの接合部付近を、下方斜め手前側から見上げた部分斜視図である。
【0033】
図6図7に示されるように、変形例2は、容器51に接続部2を備えず、導電層3を、右側板1Rと底板1Bとの接合部位の間から右側板1Rの内面における底板1Bの下方側へ部分的に延長して外部に露出させたものである。外部に露出した部分を電極部3aと称する。
また、右側板1Rの下端部において、電極部3aに対応した範囲に切り欠き部1Rkを形成するとよりよい。
また、電極部3aの近傍に孔1Rk2を開けてもよい。
変形例2によれば、接続部2を設けることなく直接電極部3aを例えばクリップ状の電極で挟んで電気的接続を得ることができる。
従って、容器51は構成部材が減ってその分コストダウンとなる。
また、切り欠き部1Rkを設けることで、クリップ状の電極が取り付け易くなる。
切り欠き部1Rk又は孔1Rk2を設けると、電極部3aに直接半田などでコードを接続した場合に、そのコードを右側板1Rの外側へ引き出すための経路となり、コード引き出し作業が容易になる。
【0034】
本発明の実施例及び各変形例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてさらに別の変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0035】
容器51の形状は上述のものに限定されない。天板が設けられていてもよい。図8に示される容器110の形状であってもよい。
溶接で接合される板材は平板でなくてもよく、曲板であってもよい。
容器は図1で示されたような常に開放部を有するものでなくてよく、例えば、空気より軽い気体の貯蔵などのために、使用状態で密閉されるものでもよい。
接続部2を設ける位置は導電層3に接続できる位置であれば限定されない。接続部2を複数設けてもよい。
電極部3aを設ける位置は限定されない。電極部3aは複数設けてもよい。
検出時に空間Vに収容する液体は水でなくてもよく、導電性を有する液体であればよい。
【0036】
底板1Bと各側板1L,1R,1M,1Uとの突き当て、又は各側板1L,1R,1M,1U同士の突き当てにおいて、一方の板の表面に他方の板の端面を突き当てる形態に限らず、双方の板の端面を例えば45°にカットして、そのカット面同士を突き当てる形態であってもよい。
この場合も、収容部SYに面した接合部における各カット面間に導電層3が介在するようにする。
この形態で接続部2を用いて導電層3と導通状態とする場合は、導通をより確実に得るため、変形例2のように、接続部2が導電層3を貫通して相手側の板材に設けた穴に先端が進入する構成にすることが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
1L 左側板、1R 右側板、1M 前側板、1B 底板、1U 後板
1Bh 穴、1Bt 端面、1Rh 貫通孔、1Rs 内表面
2 接続部
3 導電層
4 電極
5 電源
51 容器(樹脂製容器)
Dt 距離
FL 床面
Hy (溶接部の)高さ、Wy (溶接部の)幅
LQ 液体(薬液)
SY 収容部
td (導電層の)厚さ
Y1〜Y8 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9