【実施例1】
【0020】
[ヘッド・サスペンションの半製品]
図1は、本発明の実施例1に係る位置決め方法を適用して得られたヘッド・サスペンション半製品を示す平面図である。
【0021】
図1のヘッド・サスペンション半製品1(以下、単に「サスペンション半製品1」と称する)は、ビーム半製品3とフレキシャ半製品5とを重ね合わせ接合することで形成され、製品外フレーム7にヘッド・サスペンション9が一体に結合されている。このサスペンション半製品1からは、製品外フレーム7の切除と、ヘッド部である磁気ヘッド・スライダ(図示せず)の取り付けとによってヘッド・サスペンション9の完成品が得られる。
【0022】
サスペンション半製品1では、複数のヘッド・サスペンション9を製品外フレーム7に結合して連設してもよい。ただし、本実施例では、
図1のように、明確性のために単一のヘッド・サスペンション9が製品外フレーム7に結合されたものとして説明する。
【0023】
ビーム半製品3は、ロード・ビーム11と、ビーム・フレーム13とを備えている。
【0024】
ロード・ビーム11は、スライダに負荷荷重を与えるもので、剛体部15及びばね部17を備えている。
【0025】
剛体部15は、例えばステンレス鋼等の金属製薄板からなっている。剛体部15の幅方向両縁は、曲げ部19a,19bを備えて剛性を向上している。剛体部15の先端側には、支持部としてのディンプル23が設けられ、中間部には、基準孔25が貫通形成され、基端には、ばね部17が一体に設けられている。
【0026】
ばね部17は、一対の脚部27a,27bからなり、その中間部からロード・ビーム11の基端側端部にわたってベース・プレート31に重ね合わせ接合されている。この接合は、レーザー溶接による各4箇所の接合部W1によって行われている。
【0027】
ベース・プレート31は、例えばステンレス鋼等の金属製薄板からなる。ベース・プレート31の幅方向一側縁部には、基準孔33が設けられている。ベース・プレート31の中央部には、略円形形状のボス部35が設けられている。このボス部35を介して、ベース・プレート31は、図示しないキャリッジ側に取り付けられボイス・コイル・モータによって旋回駆動されることになる。
【0028】
ビーム・フレーム13は、ロード・ビーム11のばね部17に一体に結合され、ロード・ビーム11同様にステンレス鋼等の金属製薄板からなっている。このビーム・フレーム13は、ビーム基端側フレーム37a,37bと、ビーム側部フレーム39a,39bと、ビーム先端側フレーム41とを備えている。
【0029】
ビーム基端側フレーム37a,37bは、ばね部17の脚部27a,27bの端部からロード・ビーム11の幅方向に沿って延設されている。ビーム基端側フレーム37a,37bには、ビーム側部フレーム39a,39bが一体に結合されている。ビーム側部フレーム39a,39bは、ロード・ビーム11の両側で延設方向に沿って設けられている。ビーム側部フレーム39a,39bには、ロード・ビーム11の先端に対向配置されたビーム先端側フレーム41が一体に結合されている。このビーム先端側フレーム41には、基準孔43が貫通形成されている。
【0030】
ビーム・フレーム13は、これらのビーム基端側フレーム37a,37b、ビーム側部フレーム39a,39b、及びビーム先端側フレーム41によって区画されたスペースS内にロード・ビーム11を位置させている。
【0031】
フレキシャ半製品5は、フレキシャ45と、フレキシャ・フレーム47とを備えている。
【0032】
フレキシャ45は、可撓性(ばね性)を有する薄いステンレス鋼圧延板(SST)等の導電性基板50に、電気絶縁層を介して導体パターン51が形成されている。
【0033】
フレキシャ45は、ベース・プレート31側からロード・ビーム11の先端側にかけて配索されて重ね合わせ接合されている。フレキシャ45の接合は、ロード・ビーム11及びベース・プレート31に対し、レーザー溶接による接合部W2〜W8によって行われている。
【0034】
フレキシャ45の先端側には、スライダの取付部であるタング部49が片持ち状に設けられている。タング部49の表面基端側には、導電パターン51のパッド(電極)53が配置されている。タング部49の裏面側は、ロード・ビーム11のディンプル23に当接支持されている。
【0035】
フレキシャ45の中間部には、ロード・ビーム11の剛体部15の基準孔25に対応して基準孔55が形成されている。この基準孔55は、フレキシャ45の導電性基板50によって区画されている。基準孔55の延設方向両側には、接合部W2,W3が位置している。
【0036】
また、フレキシャ45の中間部には、剛体部15の基端部に対応して幅方向の張出部57a,57bが設けられている。張出部57a,57bには、それぞれ接合部W4,W5が位置している。
【0037】
ロード・ビーム11のばね部17の脚部27a,27b間では、ベース・プレート31の端部に対応した中間露出部59が設けられている。中間露出部59では、導体パターン51が迂回して導電性基板50が露出している。この中間露出部59には、接合部W6が位置している。
【0038】
ベース・プレート31上では、フレキシャ45が幅方向に変位して端部がベース・プレート31の一側縁部上に位置している。このフレキシャ45の端部には、導体パターン51が迂回による端部露出部61が設けられている。端部露出部61には、ベース・プレート31の基準孔33に対応して基準孔63が設けられている。基準孔63の延設方向両側には、接合部W7,W8が位置している。
【0039】
フレキシャ・フレーム47は、ビーム・フレーム13と共に製品外フレーム7を構成するものであり、フレキシャ45の先端側に一体に結合されている。このフレキシャ・フレーム47は、一対のフレキシャ側アーム65a,65bと、フレーム本体67とを備えている。
【0040】
フレキシャ側アーム65a,65bは、フレキシャ45の延設方向の軸線に対する両側でフレキシャ45の先端側に一体に結合されている。この結合部分は、フレキシャ45先端側のパッド53に対応した位置となっている。フレキシャ側アーム65a,65bは、フレキシャ45の延設方向に沿って設けられて、フレーム本体67が一体に結合されている。
【0041】
フレーム本体67は、フレキシャ45の先端に対向配置されている。フレーム本体67の端部は、ビーム・フレーム13のビーム先端側フレーム41に重なる重なり部69を形成している。重なり部69には、ビーム・フレーム13の基準孔43に対応した基準孔71が設けられている。基準孔71の幅方向両側には、フレキシャ・フレーム47とビーム・フレーム13との間の接合部W9,W10がレーザー溶接によって形成されている。
[位置決め方法]
図2は、本発明の実施例1に位置決め方法を示すフローチャート、
図3は、
図2の位置決め方法の工程を示す概略図である。なお、
図3のフレキシャ45及びロード・ビーム11は、
図1のものと若干異なる部分があるが、基本的には同構造である。これらの
図2のフローチャート及び
図3の工程図に基づき、
図1をも参照しながら本実施例の位置決め方法について説明する。
【0042】
本実施例の位置決め方法は、
図1及び
図3のようにフレキシャ45とロード・ビーム11とを製品外フレーム7上で重ね合わせ接合する際に、フレキシャ45のタング部49をロード・ビーム11のディンプル23に対して高精度に位置決める。
【0043】
具体的には、
図3(a)のように、まずフレキシャ半製品5とビーム半製品3とを重ね合わせておく。この状態で、
図2のステップS1において、フレキシャ45をロード・ビーム11に対して位置決め保持する。
【0044】
位置決めは、
図3(a)及び
図1のように、位置決めピン73,75,77を用いて行われる。すなわち、位置決めピン73,75,77を、フレキシャ・フレーム47及びビーム・フレーム13の基準孔71,43間、フレキシャ45及びロード・ビーム11の剛体部15の基準孔55,25間、フレキシャ45及びベース・プレート31の基準孔63,33間に各別に挿入する。
【0045】
この位置決めにより、フレキシャ45とロード・ビーム11との全体としての位置決めが完了する。同時に、フレキシャ45のタング部49が、ロード・ビーム11のディンプル23に対して大凡位置決められる。
【0046】
位置決め状態の保持は、
図1の位置決めピン73,75,77の挿入状態の維持及び
図3(a)のレーザー照射L1によるフレキシャ45とロード・ビーム11との間の仮接合の何れか一方又は併用で行われる。
【0047】
仮接合は、例えば
図1の接合部W4〜W8の何れか一つ或いは組み合わせによって行わせることができる。なお、後述する本接合は、接合部W2〜W5によって行われる。このため、仮接合は、少なくともタング部49に最も近接した本接合の接合部W2よりもフレキシャ45の先端側から離れた位置で行われる。
【0048】
こうしてステップS1が完了してステップS2に移行する。
【0049】
ステップS2では、
図3(a)のように、レーザー照射L2,L3によって製品外フレーム7の接続を行う。具体的には、フレキシャ・フレーム47とビーム・フレーム13との重なり部69をレーザー溶接による接合部W9,W10で接合する。
【0050】
なお、上記仮接合を行う場合は、フレキシャ45とロード・ビーム11との仮接合と同時に、重なり部69での接合を行うことができる。
【0051】
こうしてステップS2が完了してステップS3に移行する。
【0052】
ステップS3では、ロード・ビーム11のディンプル23に対するフレキシャ45のタング部49の位置決め精度を測定する。この位置決め精度の測定では、ディンプル23に対するタング部49のずれ量が測定される。このずれ量は、基準孔43,71,25,55,33,63と位置決めピン73,75,77とのクリアランスや、フレキシャ45のパッド位置に応じたスライダの取付位置に基づく数ミクロンの誤差等である。測定は、コンピュータ等の情報処理装置を用い、撮像画像の重ね合わせのような周知の画像処理等を通じて行うことができる。
【0053】
こうしてステップS3が完了してステップS4に移行する。
【0054】
ステップS4では、位置決め精度が許容範囲内か否かの判定が行われる。具体的には、ステップS3の測定結果から、タング部49の位置決め精度が許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲外である場合は、ステップS5へ移行し、許容範囲内である場合は、ステップS6へ移行する。
【0055】
ステップS5では、
図3(b)のように、フレキシャ45のタング部49の位置調整を、レーザー照射L4,L5によるフレキシャ・フレーム47の塑性変形によって行う。
【0056】
図4は、製品外フレームの変形領域を示す要部拡大図である。
【0057】
図4の斜線で示すように、フレキシャ・フレーム47の変形領域79,81は、フレキシャ側アーム65a,65b上に位置している。この変形領域79,81に対するレーザー照射により、フレキシャ側アーム65a,65bが曲げ変形して、フレキシャ45の先端側を引っ張ることになる。この引っ張りに応じてフレキシャ45の先端側が撓み、タング部49がロード・ビーム11のディンプル23に対して位置調整される。
【0058】
なお、ステップS1において仮接合が行われていても、上記のように本接合の接合部W2よりもフレキシャ45の先端側から離れた位置で仮接合が行われているので、フレキシャ45の先端側の撓みを許容することができタング部49の位置調整を行わせることができる。
【0059】
位置調整量は、変形領域79,81内でのレーザー照射位置やレーザー強度等との関係に応じたものとなる。このため、その関係を調整テーブルとして用意しておくことで、測定された位置決め精度(ずれ量)に応じた位置調整量とすることが可能になる。
【0060】
位置調整後は、ステップS3に戻って再度タング部49の位置決め精度の測定が行われ、以降の処理が繰り返される。これにより、タング部49の位置決め精度が許容範囲内になるまで位置調整が行われることになる。
【0061】
繰り返しの結果、位置決め精度が許容範囲内となった場合は、上記同様、ステップS4からステップS6へ移行する。
【0062】
ステップS6では、
図3(c)のように、レーザー照射L6,L7によるフレキシャ45とロード・ビーム11との本接合が行われる。具体的には、フレキシャ45とロード・ビーム11とを、
図1の接合部W2〜W5において接合する(仮接合に用いられた接合部W4又はW5を除く)。このとき、仮接合がされていない場合や仮接合に用いられなかった接合部W4〜W8においても接合が行われる。
【0063】
本接合が行われると、フレキシャ45のタング部49の位置調整状態を保持することができる。
【0064】
こうして、ロード・ビーム11及びフレキシャ45の全体としての位置決めのみでは調整不能な上記誤差等に対する数ミクロンの位置調整が完了する。また、フレキシャ45のタング部49の位置調整が完了と同時に、サスペンション半製品1の製造も完了する。
[実施例1の効果]
本実施例の位置決め方法では、先端側が製品外フレーム7に結合されたフレキシャ45をロード・ビーム11に重ね合わせて位置決め保持し、製品外フレーム7の塑性変形によりフレキシャ45の先端側を撓ませロード・ビーム11のディンプル23に対するフレキシャ45のタング部49の位置調整を行い、ロード・ビーム11とフレキシャ47との間を接合してタング部49の位置調整状態を保持する。
【0065】
従って、本実施例では、ロード・ビーム11及びフレキシャ45の全体としての位置決めのみでは調整不能な微少量のタング部49の位置調整を行うことができ、位置決め精度を向上させることができる。
【0066】
特に、ロード・ビーム11及びフレキシャ45の全体としての位置決め状態では、基準孔43,71,25,55,33,63と位置決めピン73,75,77とのクリアランスやパッド位置に応じたスライダの取付位置等による数ミクロンの誤差が存在するが、本実施例では、このような誤差に対する数ミクロンの位置決め精度を詰めることができる。
【0067】
また、本実施例では、最終製品であるヘッド・サスペンション9の製造時に切除される不要な製品外フレーム7を塑性変形させるので、ヘッド・サスペンション9側の加工が不要となり動特性の変動等を抑制することができる。
【0068】
本実施例の位置決め方法では、製品外フレーム7の塑性変形を、レーザー照射によって容易且つ確実に行わせることができる。
【0069】
本実施例では、製品外フレーム7が、フレキシャ45の先端側に結合されたフレキシャ・フレーム47とロード・ビーム11に結合されたビーム・フレーム13とからなり、フレキシャ・フレーム47とビーム・フレーム13とが、フレキシャ45とロード・ビーム11との位置決め保持状態で相互に重なる重なり部69において接合され、タング部49の位置調整が、フレキシャ・フレーム47の塑性変形によって行われる。
【0070】
従って、本実施例では、フレキシャ・フレーム47及びビーム・フレーム13によってフレキシャ45及びロード・ビーム11の取り扱いを容易にすることができながら、フレキシャ・フレーム47及びビーム・フレーム13を利用してタング部49の位置調整を行わせることができる。
【0071】
フレキシャ・フレーム47は、フレキシャ45の延設方向の軸線に対する両側でフレキシャ45の先端側に結合された一対のフレキシャ側アーム65a,65bを備え、タング部49の位置調整は、フレキシャ側アーム65a,65bの塑性変形により行われる。
【0072】
従って、本実施例では、より確実にフレキシャ45の先端側を変位させてタング部49の位置調整を行わせることができる。
【0073】
本実施例の位置決め方法では、フレキシャ・フレーム47及びビーム・フレーム13間とフレキシャ45及びロード・ビーム11間に基準孔43,71,25,55,33,63を備え、フレキシャ45とロード・ビーム11との位置決め保持が、基準孔43,71,25,55,33,63に対する位置決めピン73,75,77の挿入によって行うことができる。
【0074】
この場合は、タング部49の位置調整を行わせることができながら、フレキシャ45とロード・ビーム11との位置決め保持を容易に行わせることができる。
【0075】
また、本実施例の位置決め方法では、フレキシャ45とロード・ビーム11との位置決め保持が、位置決め状態で重ね合わされたフレキシャ45とロード・ビーム11との間を、本接合の接合部W2よりもフレキシャ45の先端側から離れた位置での仮接合によって行うことができる。
【0076】
この場合は、タング部49の位置調整を行わせることができながら、フレキシャ45とロード・ビーム11との位置決め保持を確実に行わせることができる。
【0077】
本実施例では、フレキシャ45とロード・ビーム11とを仮接合する場合、フレキシャ・フレーム47とビーム・フレーム13との重なり部分での接合及びフレキシャ45とロード・ビーム11との仮接合を、レーザー溶接によって同時に行うことができる。
【0078】
この場合は、フレキシャ45とロード・ビーム11とを仮接合しながらも、タング部49の位置決め及びサスペンション半製品1の製造のタクト・アップを図ることができる。
【0079】
本実施例の位置決め方法(ヘッド・サスペンション半製品の製造方法)では、フレキシャ45とロード・ビーム11との本接合により、製品外フレーム7にヘッド・サスペンション9が結合されたサスペンション半製品1を製造することができる。
【0080】
従って、タング部49の位置調整完了と同時にサスペンション半製品1を製造することができる。
【0081】
こうして製造されたサスペンション半製品1は、フレキシャ45のタング部49がロード・ビーム11のディンプル23に対して高精度で位置決められているので、スライダとディンプル23との高精度の位置決めを行わせることができる。
【0082】
このため、サスペンション半製品1では、その後の製品外フレーム7の切除と、スライダの取り付けとにより、精度の高いヘッド・サスペンション9の完成品を得ることができる。