特許第5808235号(P5808235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5808235-内容物付着防止蓋材 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808235
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】内容物付着防止蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20151021BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   B65D77/20 L
   B65D65/40 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-263722(P2011-263722)
(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公開番号】特開2013-116744(P2013-116744A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】唐津 誠
(72)【発明者】
【氏名】羽野 隆之
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184082(JP,A)
【文献】 特開2010−184454(JP,A)
【文献】 特開2002−225175(JP,A)
【文献】 特開2006−076594(JP,A)
【文献】 特開2007−153385(JP,A)
【文献】 特開2008−100736(JP,A)
【文献】 特開平07−207074(JP,A)
【文献】 特開2012−180118(JP,A)
【文献】 特開2009−241943(JP,A)
【文献】 特開平06−297657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と熱封緘層とを有する蓋材において、
前記熱封緘層の外面に付着防止層を有し、
該付着防止層が、疎水性無機微粒子からなり、
前記熱封緘層が、数平均分子量8〜20万の酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる第1樹脂成分30〜90重量%と、数平均分子量1〜8万未満の酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂成分5〜30重量%と、粘着性付与剤5〜50重量%と、ブロッキング防止剤1〜15重量%とを含む混合樹脂組成物からなることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
【請求項2】
前記第1樹脂成分および第2樹脂成分に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量が、0.001〜3重量%である請求項1に記載の内容物付着防止蓋材。
【請求項3】
前記粘着性付与剤の融点又は軟化点が80℃以上である請求項1または2に記載の内容物付着防止蓋材。
【請求項4】
前記ブロッキング防止剤が融点80℃以上のワックス、無機微粒子、および有機微粒子の少なくとも1種または2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【請求項5】
前記疎水性無機微粒子が疎水性シリカである請求項1〜4のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【請求項6】
前記疎水性無機微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【請求項7】
前記付着防止層が、疎水性無機粒子と、熱可塑性樹脂微粒子との混合組成物からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として食品類の包装用容器に適用されるヒートシール蓋材、更に具体的には、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム、ポーションミルク、コーヒー飲料等の包装用のカップ状容器に適用される内容物付着防止性を備えた蓋材に関する。
【0002】
特に、被着体である容器として、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、あるいはポリスチレン製等の合成樹脂製成形容器が用いられる場合に好適に使用しうる蓋材の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の熱封緘用の蓋材は、一般に紙と金属蒸着フィルムとの積層からなる基材層のフィルム面に、ヒートシール層、即ち熱封緘層を設けたものとなされ、あるいは基材フィルムとアルミニウム箔との積層からなる基材層のアルミ箔面側に、必要に応じて中間樹脂層を介して熱封緘層を設けたものとなされている。そして、該蓋材をヨーグルト等の被包装物を充填したポリエチレン製、ポリスチレン製あるいは紙/ポリエチレン製等のカップ状の容器本体の上面開口に被せて、周縁部を容器本体の上縁フランジ部上に熱融着することによって密封包装体を形成するものとなされている。
【0004】
従って、かかる蓋材においては、良好なヒートシール性、密封性と、開封のための適当な易剥離性が求められるのと同時に、内容物の非付着性、即ち容器の内面側の蓋材裏面に内容物が付着するのを防止しうるものであることが望まれる。蓋材の裏面に内容物が付着すると、開封時に手指や衣服、あるいは周辺を汚すおそれがあると共に、内容物の棄損による無駄を生じ、あるいは付着物を剥がし取る手間がかかり、更には不潔感を催す等の不利益を生じるためである。
【0005】
このような要請に対し、従来、内容物付着防止性能の付与ないし向上手段として下記特許文献1(特許第4348401号公報)に示されるような提案がなされている。
【0006】
この先行提案に係る公知技術は、熱封緘層の外面に極めて微細な疎水性シリカ等の疎水性酸化物微粒子による三次元網目状構造の多孔質層を形成するというものであり、内容物付着防止効果の点では優れた効果を奏し得るものの、付着防止層が熱安定性(耐熱性)に劣り、好ましくない熱履歴を受けた場合に付着防止効果が損なわれ易いという難点があった。即ち、疎水性酸化物微粒子として、合成シリカ、なかでも特に乾式法で製造されるシリカ微粒子を代表例とする一次粒子平均径が3〜100nmというような超微細な疎水性酸化物微粒子を用いるものであり、これを最も一般的なラッカータイプやホットメルトタイプの熱封緘層を備えた蓋材の内容物付着防止層に適用した場合、付着防止層の形成工程における微粒子分散液の塗工後の乾燥時において、加熱温度が高すぎたり乾燥時間が長くなると、内容物付着防止効果が著しく損なわれる。また微粒子分散液の塗布ムラにより乾燥状態に差が生じることに基因して、塗布量の多いところが乾燥するまでの間に塗布量の少ない領域部分が過度に熱せられることになり、その部分の内容物付着防止効果が部分的に損なわれるおそれがあった。
【0007】
更にまた、ヨーグルト等の内容物の容器への充填後のシール時においても、待機中あるいはヒートシール中に蓋材が熱板から受けるいささか過酷な熱影響によって、内容物付着防止効果が損なわれる恐れがあり、特にヒートシール部周辺、即ち容器のフランジ部近傍領域において内容物付着防止効果が他の部分に較べて相対的に著しく低下してしまうことが懸念されていた。このため、蓋材の製造時及びヒートシール時の工程管理がいささか厄介であり、取扱いが困難であるという難点があった。
【0008】
さらに、付着防止層は、熱封緘層上に、疎水性酸化物微粒子をアルコール等の分散媒を用いた分散液として塗布したのち、乾燥させることによって疎水性酸化物微粒子による多孔質層に形成したものであるから、概して隣接する熱封緘層に対する結合力ないし密着力が弱く、殊に熱封緘層がラッカータイプのものである場合には疎水性酸化物微粒子と熱封緘層に対する結合力不足が強く懸念され、結果的に付着防止層が容易に脱落しやすく、付着防止効果が安定しない恐れがあった。
【0009】
一方、上記のような特許文献1による先行技術の特に熱安定性の問題に対して、この問題の解決をはかりつつ更に一段と優れた非付着性の確保をも可能とする改善技術として、本発明者らは先に特許文献2(特許第4668352号公報)に記載の発明を提案した。
【0010】
この先行提案技術は、付着防止層の形成材料として、従来公知の疎水性乾式シリカの使用に代えて、疎水性の湿式シリカ粒子を用いることを主たる特徴点とするものであり、上記特許文献2の段落[0023]および[0037]に記載されているような機序によって、熱安定性(耐熱性)の改善をはかりながら同時に内容物付着防止効果の向上をもはかり得るものである。
【0011】
しかしながら、一方で、湿式シリカ粒子はその粒径がミクロンサイズの比較的大きいものであるために、隣接する熱封緘層に対する接点が少なく、超微細な一次粒子の凝集体からなる乾式シリカ粒子を使用する場合に較べて更に一層熱封緘層に対する密着性が劣るという難点があり、実用化のためには更にこの点の改善が強く求められるところであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4348401号公報
【特許文献2】特許第4668352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術における上記のような諸問題に鑑み、それらの更なる改善をはかること、具体的には、安定した良好なヒートシール性能を維持しつつ、内容物付着防止性能、特に熱封緘層が溶融するような高温にさらされても優れた内容物付着防止性能を維持しうる良好な耐熱性を有し、しかも該付着防止効果を発現する疎水性粒子の熱封緘層との密着性を高めて上記内容物付着防止効果の安定持続性を向上しうる改善技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的において、特に前記のような付着防止層の熱的な影響による性能劣化の問題、疎水性微粒子と熱封緘層との密着性不良の問題に対し、その原因の解明と解決のために鋭意実験と研究を重ねたところ、付着防止層の下地層である熱封緘層の成分組成に1つの重大な原因があることを突きとめるに至り、更なる研究の結果、熱封緘層を特定組成のヒートシールラッカー組成物で構成することにより、熱安定性を改善しながら同時に疎水性無機微粒子と熱封緘層との密着性不良の問題も画期的に改善できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0015】
そこで、本発明は、熱封緘層を特定組成の混合樹脂組成物で構成する点を主たる特徴とする下記の構成の付着防止蓋材を提供するものである。
【0016】
なお、本発明において、「軟化点」は、環球法(JIS K6863 に準拠)により、また「融点」はDSC法(JIS K7121 に準拠)により求めたものである。
【0017】
[1] 少なくとも基材層と熱封緘層とを有する蓋材において、
前記熱封緘層の外面に付着防止層を有し、
該付着防止層が、疎水性無機微粒子からなり、
前記熱封緘層が、数平均分子量8〜20万の酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる第1樹脂成分30〜90重量%と、数平均分子量1〜8万未満の酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂成分5〜30重量%と、粘着性付与剤5〜50重量%と、ブロッキング防止剤1〜15重量%とを含む混合樹脂組成物からなることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
【0018】
[2]前記第1樹脂成分および第2樹脂成分に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量が、0.001〜3重量%である前項[1]に記載の内容物付着防止蓋材。
【0019】
[3]前記粘着性付与剤の融点又は軟化点が80℃以上である前項[1]または[2]に記載の内容物付着防止蓋材。
【0020】
[4]前記ブロッキング防止剤が融点80℃以上のワックス、無機微粒子、および有機微粒子の少なくとも1種または2種以上である前項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【0021】
[5]前記疎水性無機微粒子が疎水性シリカである前項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【0022】
[6]前記疎水性無機微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである前項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【0023】
[7]前記付着防止層が、疎水性無機微粒子と、熱可塑性樹脂微粒子との混合組成物からなる前項[1]〜[6]のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、前記[1]項の構成において、熱封緘層の外面に疎水性シリカ等の疎水性無機微粒子による内容物付着防止層を形成したものであることにより、それ自体が前記特許文献1,2に記載されているような固有の優れた内容物付着防止性能を有する。
【0025】
また、該付着防止層の下面側に位置する熱封緘層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂を主要な必須成分として含むものであり、しかも特に数平均分子量Mnが1〜8万未満の低分子量の酸変性ポリオレフィン樹脂を一定量含む樹脂組成物からなるものであることにより、該酸変性ポリオレフィン樹脂のもつ固有の異種被着体に対する優れた接着性により疎水性無機微粒子からなる付着防止層と熱封緘層との密着性を飛躍的に向上できる。加えて、上記混合組成物中に必須成分として含まれる一定量の粘着性付与剤も、疎水性無機微粒子との密着性の向上に貢献する。従って、付着防止層の密着性を顕著に高めることができ、該付着防止層の脱落、部分剥離を生じることがなく、付着防止効果を安定維持しうるのはもとより、付着防止層から離脱した疎水性無機微粒子が内容物内に取り込まれて衛生上の問題を生じるというようなおそれもない。
【0026】
また、熱封緘層の上記の組成は、付着防止層の耐熱性を向上し、その付着防止性能の熱安定性を顕著に向上し得て、容器本体へのヒートシール後においても上記の優れた内容物付着防止効果を良好に維持する。すなわち、熱封緘層を構成する混合樹脂組成物は、数平均分子量Mnが8〜20万の高分子量の酸変性ポリオレフィン系樹脂を30〜90重量%含むのものであることにより、付着防止層の形成のための疎水性無機微粒子分散液の塗工後の乾燥時の加熱、あるいは内容物充填後の蓋材のヒートシール時の待機中に受ける熱板からの輻射熱、更にはヒートシール時に直接熱板から受ける熱影響等によって、熱封緘層が早期かつ過度に溶融して高い流動性を発現するのを抑制ないし防止しうる。加えてまた、粘着付与剤を比較的少量添加することで、疎水性無機微粒子との密着性を高めることができる。その結果、付着防止層の疎水性無機微粒子が、不本意に熱封緘層中に沈み込んだり、あるいは微粒子間の隙間に熱封緘層の溶融成分が毛細管現象で入り込んで上記隙間を埋めてしまうのを防止しうる。従って、上記微粒子の疎水性表面の露出面積の極端な減少を防いで、良好な内容物付着防止効果を維持しうる。
【0027】
また、熱封緘層は、上記のように高分子量の酸変性ポリオレフィン系樹脂と粘着付与剤を一定量含むことにより、付着防止層の存在がヒートシール夾雑物となるにも拘わらず、必要かつ十分なヒートシール強度を安定に確保することができる。殊に、被着体がポリエチレン製、ポリスチレン製、ポリプロピレン製等の合成樹脂製の成形容器である場合にあっても、安定したシール性能を発揮することができる。一方、酸変性ポリオレフィン系樹脂はアルミニウムなどの金属に対する接着性も良好であるので、基材にアルミニウム箔を使用する蓋材においては、アンカーコート剤を使用することなく熱封緘層をアルミニウム箔面上に直接設けるものとしても十分な密着強度を確保することができ、蓋材の積層構成の簡素化をはかる上でも有利である。もとより、蓋材の基材にポリエチレンテレフタレートフィルムを使用するような場合には、アンカーコート剤を用いることで、基材に対する十分な密着力を確保することができる。
【0028】
また、熱封緘層を形成する前記混合樹脂組成物は、粘着性付与剤を一定量含むことで、疎水性無機微粒子との密着性を向上しうる。
【0029】
更にまた、ブロッキング防止剤を一定量含むことで、蓋材本体の製造工程の円滑化をはかりうる。即ち、蓋材基材上に熱封緘層を形成する工程では、熱封緘層を形成する前記混合樹脂組成物が溶剤に溶解または分散された状態で基材に塗布され、乾燥後巻き取られるが、ブロッキング防止剤が含まれないと、次工程である付着防止層形成工程で熱封緘層と基材の裏面が密着し蓋材本体の円滑な繰り出しが困難になる現象を回避して、蓋材の製造工程を円滑に進めることが可能になる。
【0030】
次に前記[2]項に記載のように、酸変性ポリオレフィン系樹脂に含有される不飽和
カルボン酸又はその無水物の量が、0.001〜3重量%であることで、容器との良好なヒートシール特性を発現することができる。とくに疎水性の無機微粒子からなる付着防止層が熱封緘層とこれがヒートシールされる容器本体側の被着面との間に夾雑物として介在することにより、元来ヒートシール性を損なうことが予見されるが、上記不飽和カルボン酸又はその無水物による変性率を最適化することにより付着防止層の影響を考慮したヒートシール特性を容易に調節可能であり、最良のシール状態を実現できる。
【0031】
また、前記[3]項に記載のように粘着性付与剤として融点または軟化点が80℃以上であるものを使用し、更には前記[4]項に記載のようにブロッキング防止剤にもワックスを使用する場合には融点が80℃以上の高融点のものを使用し、あるいは無機微粒子、または有機微粒子の1種または2種以上を用いるものとすることにより、前記[1]項による耐熱性ないし熱安定性の向上効果を一層確実かつ良好に享受することができる。即ち熱封緘層の混合樹脂組成物に含まれる粘着性付与剤及びブロッキング防止剤が、ヒートシール前あるいはヒートシール時に受ける熱影響で早期かつ過度に溶融して高い流動性を発現し、付着防止層中に含浸してその撥水性能を低下してしまう現象の発現を抑制することができる。
【0032】
また、前記[5]項に記載のように、疎水性無機微粒子に疎水性シリカを選択使用するときは、市場から入手し易い比較的安価な材料をもって、優れた内容物付着防止効果を達成することができる。
【0033】
また、前記[6]項に記載のような平均粒径を有する疎水性無機微粒子を用いることにより、愈々市場から入手しやすい比較的安価な材料を用いて、前記のような内容物付着防止効果を一層確実に実現することができる。
【0034】
更にまた、前記[7]項に記載のように、付着防止層を主成分である疎水性無機微粒子と、熱可塑性樹脂微粒子との混合組成物からなるものとすることにより、熱可塑性樹脂微粒子によって疎水性無機微粒子相互間の結合力を補うと同時に、それの熱封緘層に対する密着性をも向上し、不本意な粒子の脱落、付着防止層の剥落を防いで長期に亘り安定した内容物付着防止効果を維持しうる。加えて、付着防止層への上記熱可塑性樹脂微粒子の含有により、これが熱封緘層のヒートシール性を補うべく作用し、疎水性無機微粒子群の介在にかかわらず蓋材の容器本体に対する良好で安定した、適度なヒートシール性、つまり易開封性と封緘性とが調和した好適な密封性を確保しうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は本発明による内容物付着防止蓋材の積層構成の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に係る内容物付着防止蓋材の積層構成の一例を示す。該蓋材は、基材フィルム層(2)と金属箔層(3)との積層からなる基材層(1)と、該基材層(1)の金属箔(3)側の外面、即ち施蓋使用時に容器本体の内部に向く側の面に中間樹脂層(4)を介して熱封緘層(5)が設けられている。上記の積層構成は従来の蓋材のそれと同様であり、基材層(1)と熱封緘層(5)とを含む積層体をここでは「蓋材本体」と呼称することとする。
【0037】
本発明に係る内容物付着防止蓋材は、上記蓋材本体の熱封緘層(5)の外面に、更に付加的に付着防止層(6)を有するものである。
【0038】
基材フィルム層(2)は、包装容器の表側に配置されるもので、その材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハンなどの単層または複合フィルム、あるいはこれらのフィルム、樹脂を紙などにラミネートしたり、コーティングしたものなどを例示することができる。基材フィルム層(2)は通常適宜印刷(7)が施されて意匠性が付与される。
【0039】
金属箔層(3)は、ガスバリヤ性、遮光性などを付与するものであり、多くはアルミニウム箔が用いられる。特にヨーグルトの容器用の蓋材にあっては、遮光性、軽量性を満足するものとして厚さ5〜50μm程度のアルミニウム箔が好適に用いられる。また、基材フィルム層(2)との積層接着には一般的な接着剤が用いられる。
【0040】
なお、基材層(1)として、金属箔層(3)を使用せずに、シリカやアルミナ等の金属を基材フィルム層(2)に蒸着した金属蒸着フィルムを使用することも可能である。
【0041】
中間樹脂層(4)は、基材層(1)と熱封緘層(5)との間に介在して、蓋材に所定の剛性やヒートシール時のクッション性を付与するものであり、適宜必要に応じて設けられる。一般的には厚さ5〜40μmのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
【0042】
熱封緘層(5)は、金属箔層(3)または中間層樹脂層(4)および容器側との接着性が良好なものでなくてはならない。本発明において該熱封緘層は、数平均分子量Mn8〜20万の酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる第1樹脂成分(A)を30〜90重量%と、数平均分子量Mn1〜8万未満の酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂成分(B)を5〜30重量%と、粘着性付与剤5〜50重量%と、ブロッキング防止剤1〜15重量%とを含む混合樹脂組成物からなるものである。
【0043】
本発明における上記混合樹脂組成物は、特に好ましくは、被着体容器がポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製等の合成樹脂成形容器である場合に好適するラッカータイプのヒートシール剤として使用されるが、無溶剤形の100%固形分からなるホットメルト接着剤としての使用も排除されるものではない。
【0044】
上記第1樹脂成分(A)即ち数平均分子量Mnが8〜20万の相対的高分子量の酸変性ポリオレフィン系樹脂は、主として所要の安定したシール性能の確保および付着防止層(6)の熱安定性の確保のために必須とする成分であり、平均分子量Mnが8万未満、あるいは配合量が30重量%未満では十分なシール強度を得ることが困難になる。逆に平均分子量Mnが20万を超え、あるいはその配合量が90重量%を超えて過多である場合には、低温ヒートシール性が阻害されるのみならず、開封時における安定的な易剥離性が損なわれるおそれが生じる。第1樹脂成分(A)の好ましい数平均分子量Mnは概ね9〜15万、特に好ましくは10〜12万の範囲である。また、配合量の好ましい範囲は30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%である。
【0045】
一方、上記第2樹脂成分(B)である数平均分子量Mnが1〜8万未満の低分子量酸変性ポリオレフィン系樹脂は、主として疎水性無機微粒子との密着性の向上に貢献し、付着防止層の剥離、脱落を防ぐ役割を担うものであるが、平均分子量Mnが1万未満、あるいはその配合量が30重量%を超えて過多に含有するときは、付着防止層の耐熱性ないし熱安定性を阻害するおそれがある。逆に上記数平均分子量Mnが8万を超えて、あるいは配合量が5重量%未満では、第2樹脂成分(B)の配合による上記の所期の作用効果の達成が不十分なものとなる。第2樹脂成分(B)の好ましい数平均分子量Mnの範囲は3〜8万、特に好ましくは4〜8万であり、またその配合量の好ましい範囲は8〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
【0046】
ところで、上記の第1樹脂成分(A)および第2樹脂成分(B)に用いられる酸変性ポリオレフィン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸またはその無水物等の酸で変性したもので、具体的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系樹脂を挙げることができ、特に、酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、より具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
【0047】
このときの酸変性ポリオレフィン系樹脂の変性率、即ち酸変性ポリオレフィン系樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.01〜2重量%、特に好ましくは0.03〜1重量%である。該変性ポリオレフィン系樹脂中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。
【0048】
他の必須成分である粘着性付与剤は、付着防止層(6)を形成する疎水性無機微粒子との密着性の向上に寄与するが、ヒートシール強度の要求レベルに合わせて、5〜50重量%の範囲で添加される。5重量%未満ではその添加効果を十分に得ることができない。逆に50重量%を超えると、十分な安定したシール強度の確保が困難になる。好ましい配合割合は5〜40重量%特に好ましくは10〜30重量%である。
【0049】
尚、上記粘着性付与剤としては、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂あるいはそれらの水添付加されたもの、テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)等が挙げられるが、好ましくは芳香族系石油樹脂の水添付加されたものを用いるのが最適である。
【0050】
更にまた他の必須成分であるブロッキング防止剤は、具体的には例えばシリカ、アルミナ、タルク、アクリル樹脂、シリコン樹脂等の平均粒径1〜10μm程度の無機または有機の微粒子、ワックス、脂肪酸アミドなど、ブロッキング防止剤としての一般的な汎用品を任意の選択とそれらの1種または2種以上の組み合わせにおいて使用できるが、ワックスをはじめとする熱溶性の物質を用いる場合には、後述するように融点が80℃以上のものを選択使用することが望ましい。ブロッキング防止剤は、前述のように蓋材の製造工程の円滑な遂行のために必須とするものであるが、その配合量が1重量%未満ではその効果が乏しく、15重量%を超えると、ヒートシール性を阻害したり、付着防止層の性能の熱安定性を阻害する恐れがある。好ましい配合割合は概ね3〜12重量%、特に好ましくは5〜10重量%程度である。
【0051】
熱封緘層(5)を形成する混合樹脂組成物中に必須成分として含有する前記粘着性付与剤およびブロッキング防止剤としては、特に融点80℃以上、好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上のものを用いることが望ましい。このような比較的高融点の粘着性付与剤およびブロッキング防止剤を含有する樹脂組成物を熱封緘層に用いることにより、前述したように熱封緘層の外面側に付加形成される疎水性無機微粒子による付着防止層の撥水性、ひいては付着防止性の熱安定性を向上しうる。
【0052】
しかしながら、あまりに融点の高すぎる粘着性付与剤やブロッキング防止剤における特にワックスの使用は、樹脂組成物の粘度が高くなり加工適性が低下する恐れがあり、熱封緘層の安定した良好なヒートシール性を阻害する恐れがある。このため、いずれも融点150℃以下のものを使用すべきであり、好ましくは融点140℃以下のものを用いることが望ましい。
【0053】
熱封緘層(5)の厚みは特に限定されるものではないが、コスト、密封性、生産性等の点から、厚さ3〜100μm程度とするのが一般的であり、好適には、5〜50μmの範囲とするのが良い。
【0054】
付着防止層(6)は、疎水性無機微粒子、または熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子との混合組成物からなるものである。
【0055】
疎水性無機微粒子は、蓋材の内容物付着防止性能の支配的役割を担うものであり、20mN/m以上の表面エネルギーを有する疎水性物質からなるものであればその材料は特に限定されない。具体的に例示すれば、疎水性のシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等の疎水性無機微粒子を挙げることができる。なかでも、疎水性能、コスト、超微粒子材料の市場からの入手のし易さ等の観点から、疎水性シリカやアルミナの使用が好適である。疎水性シリカは、乾式法シリカ及び湿式法シリカのいずれでも好適に用いることができる。疎水性無機微粒子の平均粒径は、1〜5,000nmの範囲のものを用いるべきである。平均粒径1nmの未満の超微粒子は、市場からの入手が困難であり、またコストの面からも不利である。他方、平均粒径5,000nmを超えるものでは、ヒートシール性を阻害するおそれがあると共に、付着防止効果が低下するおそれがあるため不適である。好ましい平均粒径は3〜3000nm、特に好ましくは3〜1000nmの範囲である。
【0056】
熱可塑性樹脂微粒子は、その材料が特に限定されるものではないが、熱封緘層(5)及び疎水性無機微粒子とのなじみが良く、容器本体の表面層と良好な接着性を有する熱可塑性樹脂を選択して用い、少なくとも該熱可塑性樹脂を主成分として含むものを用いることが望ましい。かかる熱可塑性樹脂を例示すれば、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の単独重合体、または2種以上の共重合体等を挙示しうる。特に好ましい熱可塑性樹脂の種類としては、オレフィン系樹脂の1種または2種以上を少なくとも主成分として含む熱可塑性樹脂を用いることにより最も好ましい結果を得ることができる。
【0057】
具体的には、オレフィン系樹脂の具体例としてポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−不飽和エステル共重合体を挙げることができる。またエチレン−不飽和エステル共重合体としてエチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、および酢酸ビニル−塩化ビニル−マレイン酸共重合体を挙げることができる。
【0058】
上記熱可塑性樹脂は、微粒子に粉砕または溶剤に溶解させた後微粒子として析出させた状態で使用する。熱可塑性樹脂微粒子の平均粒径は、1nm〜5000nmが好ましい。5000nmより大きい場合は、熱封緘層から脱落し易くなり好ましくない。1nmより小さい場合は、工業的に得難いという問題が生じる。好ましい平均粒径は、50nm〜1000nm、さらに好ましくは、100nm〜500nmである。
【0059】
熱可塑性樹脂微粒子は、一般的なプラスチックの粉砕機で粉砕できるが、粉砕時に樹脂を軟化溶融させないように低温状態に維持しうる冷却手段を具備する粉砕機を用いることが好ましい。
【0060】
次に、熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子との好ましい配合割合は、熱可塑性樹脂微粒子(固形分):疎水性無機微粒子の重量比において、0〜50重量%:100〜50重量%である。疎水性無機微粒子の配合量は、好ましくは50重量%以上含有されておれば、比較的良好な付着防止性能を得ることができる。熱可塑性樹脂微粒子を配合することで容器とのシール性、熱封緘性が良くなる点で好ましい。
【0061】
本発明に係る付着防止蓋材の製造において、上記付着防止層(6)の形成方法もまた、蓋材の内容物付着防止性能に重大な影響をもつ。
【0062】
付着防止層(6)の形成は、液体分散媒中に疎水性無機微粒子、または熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子の所定量を均一に分散させてコート液を調製し、これを蓋材本体の熱封緘層の外面に塗布し、乾燥させることによって行われる。
【0063】
コート液の調製は、熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子を水または有機液体分散媒を用いて分散させて所定濃度のコロイド溶液とするものであるが、分散媒には比較的低沸点の有機分散媒を用いるのが好ましい。なかでもコスト、安全性、撥水性の発現効果等の面からメタノール、エタノールが好ましく、熱封緘層と疎水性無機微粒子との密着性を高める目的でシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、トルエン等の使用も可能であり、これらの有機溶媒を2種類以上混合して使用することができる。シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、トルエン等は、熱封緘層を溶解させる可能性があるが、分散媒中の上記微粒子の分散濃度、および前記コート液の塗布後乾燥までの時間(液体分散媒の熱封緘層との接触時間)を調節することにより、疎水性無機微粒子の表面の付着防止性を維持しながら、その熱封緘層に対する密着性をより一層向上することができる利点がある。
【0064】
コート液の塗工は、公知の任意の方法を採用しうる。例えば、グラビアコート法、吹き付け、バーコート法等を任意に採用しうる。
【0065】
コート液の塗布量は、付着防止層の前記の厚みに応じて設定すればよいが、乾燥後重量で0.1〜5.0g/m程度が好ましく、0.2〜1.2g/mがより好ましく、更には0.4〜0.8g/mの範囲に設定するのが最適である。0.1g/m未満の場合には、内容物付着防止効果が不十分になるおそれがある。他方、5.0g/mを超えるとコストアップを招くほか、無機微粒子の脱落の恐れが生じるため好ましくない。
【0066】
塗布後の乾燥工程も重要な要素をなす。もとより自然乾燥させても良いが、生産性、熱封緘層との密着性を高めるためには加熱乾燥させるべきであり、その場合の乾燥条件としては、温度80〜170℃、時間5〜60秒の範囲に設定するべきである。温度が上記下限値80℃より低いと乾燥工程に時間がかかり、時間が5秒未満では乾燥が不十分なものとなり、その後の取扱いにおいて付着防止層の部分的剥離や脱落を生じ易い。反面、乾燥温度を170℃を超える高い温度に設定したり、あるいは時間を60秒を超える時間に設定すると、殊に疎水性無機微粒子に疎水性乾式シリカを用いている場合、それのもつ疎水性、撥水性が損なわれ易い傾向がみられる。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の効果を確認するために、その各種の実施例を比較例および対照例との対比において示す。
【0068】
(蓋材本体の作製)
基材フィルム(2)として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に厚さ50μmのアルミニウム箔(3)をポリウレタン系ドライラミネート接着剤により貼合わせ、基材層(1)とした。
【0069】
次に、上記基材層(1)のアルミニウム箔(3)側の表面に直接、下記の混合樹脂組成物をグラビアコート法により塗工して、塗布量(固形分)5g/mの熱封緘層(5)を形成した。これによって得られた基材フィルム層(2)/印刷(7)/アルミニウム箔(3)/熱封緘層(5)の積層体をもって蓋材本体とした。
【0070】
ここに、上記熱封緘層(5)としては、下記の材料により、後記表1に示すような各種配合の混合樹脂組成物を使用した。
【0071】
・第1樹脂成分(A)
酸変性ポリオレフィン樹脂
酸変性PO(I):酸変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn11万、無水 マイレン酸グラフト変性 変性率0.5%)
酸変性PO(II):酸変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn11万、無水 マイレン酸グラフト変性 変性率1.0%)
酸変性PO(III) :酸変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn14万、無水 マイレン酸グラフト変性 変性率2.0%)
未変性PO :未変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn11万、変性 率0%)
【0072】
・第2樹脂成分(B)
酸変性ポリオレフィン樹脂
酸変性PO(IV):酸変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn6万、無水マ イレン酸グラフト変性 変性率1.0%)
酸変性PO(V):酸変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn4万、無水マ イレン酸グラフト変性 変性率0.5%)
未変性PO :未変性ポリプロピレン樹脂(数平均分子量Mn6万、変性率 0%)
【0073】
・ブロッキング防止剤
ワックス(WX)
WX(I):融点125℃のポリエチレンワックス
WX(II):融点108℃のポリエチレンワックス
WX(III) :融点94℃のポリエチレンワックス
WX(IV):融点80℃のマイクロワックス
WX(V):融点68℃のパラフィンワックス
無機・有機微粒子
シリカ(平均粒径3μm)
【0074】
・粘着付与剤(TF)
TF(I)石油系水添樹脂 融点115℃
TF(II)石油系水添樹脂 融点100℃
TF(III) ロジン 軟化点 68℃
【0075】
(付着防止層の形成)
付着防止層の材料として、下記の疎水性無機微粒子と熱可塑性樹脂微粒子を用意した。
・疎水性無機微粒子(SP)
SP(I) :疎水性乾式シリカ 一次粒子平均粒径 7nm
SP(II) :疎水性湿式シリカ 平均粒径 2700nm
SP(III):疎水性湿式シリカ 平均粒径 3900nm
【0076】
・熱可塑性樹脂微粒子(MP)
MP(I):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル20%、エチレン80% 、 平均粒径 100nm)
MP(II):酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(酢酸ビニル20%、塩化ビニル
80%、平均粒径 100nm)
【0077】
上記各疎水性無機微粒子(SP)、または疎水性無機微粒子(SP)と熱可塑性微粒子(MP)の混合物をエタノール中に均一分散させてコート液を作製した。疎水性無機微粒子の配合量、または、熱可塑性微粒子と疎水性無機微粒子の配合割合を表1に示す。
【0078】
そして、これらの各種コート液を、蓋材本体(1)の前記熱封緘層(5)の外面にグラビアコート法により、塗布し、かつ強制乾燥して付着防止層を形成した。なお、塗布量は、いずれも乾燥後重量において、試料No.1〜16および19〜20は0.5g/mに設定し、試料No.17、18は0.8g/mに設定した。また、強制乾燥は、いずれも温度100℃×時間15秒の乾燥条件で行った。
【0079】
(作製試料の種類)
上記により得た表1に示す各種蓋材の試料No.1〜20のうち、試料No.1〜6、9〜11は、熱封緘層における酸変性ポリオレフィン系樹脂、ブロッキング防止剤、粘着性付与剤の種類を変えて、その影響を調べたものである。試料No.7、8、12〜16は、熱封緘層の各成分の配合割合を変えてその影響を調べたものである。試料No.17、18は、付着防止層を疎水性無機微粒子と熱可塑性微粒子との混合物からなるものとし、かつ塗布量を0.8g/mに変えてその影響を調べたものである。試料No.19、20は、疎水性無機微粒子の粒径を変えてその影響を調べたものである。
【0080】
(評価試験)
(1)付着防止性能
各試料No.1〜20の蓋材の裏面、即ち付着防止層の外面上に、アロエヨーグルト(森永乳業株式会社製 商標「森永アロエヨーグルト」)を約0.5ccの液滴として滴下し、試料をゆっくりと傾けたときに上記液滴が「転がりはじめたときの傾斜角度」を測定して、次の基準で判定評価した。
◎・・・15度以下
○・・・16度以上30度以下
×・・・31度以上
【0081】
(2)熱処理後の付着防止性能
各試料No.1〜20の各蓋材について、第1の耐熱試験は「温度100℃×時間30秒」の加熱条件で、第2の耐熱試験は「温度100℃×時間10分」の加熱条件で、第3の耐熱試験は「温度100℃×時間30分」の加熱条件で、それぞれ各試料を加熱零囲気中に保管後、常温まで冷却した各試料について前記(1)と同様の付着防止性能評価試験を行った。
【0082】
(3)シール性
試料No.1〜20の蓋材を、200℃×90kgf(882N)×1.0秒のシール条件で容器本体(ポリプロピレン製成形容器)のフランジ面上にヒートシールした。
【0083】
(3)−1 封緘強度
そして、「封緘強度」は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)の封緘強度試験法に準じて測定し、封緘強度が13.3kPa以上であるものを合格(◎印)、13.3kPa未満のものを不合格(×印)として判定した。
【0084】
(3)−2 開封強度
次に、「開封強度」は、仰角45°、100mm/分の速度で蓋材を引っ張り、開封時の最大荷重を開封強度(N)とした。そして最適な開封強度の範囲を8〜15Nとし、この範囲内のものを合格(◎印)、範囲外のものを不合格(×印)として評価した。
【0085】
(3)−3 ヒートシール強度
試料No.1〜20の蓋材を15mm幅に切り出し、180℃×0.2MPa×1.0秒のシール条件で容器本体(ポリプロピレン製成形容器)から切り出した15mm幅の短冊にヒートシールした。次いで、この蓋材を180°の方向に100mm/分の速度で引っ張り、剥離時の最大荷重をヒートシール強度とした。
【0086】
そして、付着防止層を設けていない蓋材本体のままの蓋材におけるヒートシール強度(蓋材の耐剥離強度・密封性)を基準値として、ヒートシール強度の低下率または増加率を下記の基準で判定評価した。
◎・・・強度低下又は増加10%未満
○・・・強度低下又は増加10%〜20%未満
×・・・強度低下又は増加20%以上
【0087】
(4)密着性
試料No.1〜20の各蓋材の付着防止層の面に、黒い布を巻き付けた重り(500g)を垂直に載せ、ゆっくりと長さ200mm擦り、布の表面に付着した微粒子の有無を目視で検査した。
【0088】
そして、黒い布における疎水性無機微粒子及び熱可塑性樹脂微粒子の転移付着量(剥離量)により下記の評価基準で評価した。
◎・・・ほとんど付着なし
○・・・許容範囲と認められる僅かな付着あり
×・・・明らかに多くの付着あり
【0089】
上記(1)〜(4)の各評価試験の結果を、表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表2の「付着防止性能」の試験結果に示すように、本発明による内容物付着防止蓋材においては、試料を僅かに傾けるだけでヨーグルト液滴が転がり移動を始める。しかもこの付着防止効果は、「熱処理後の付着防止性能」試験の結果に見られるように100℃×10分間、更には100℃×30分間のかなり過酷な熱履歴をうけたのちもほとんど低下することなく良好に維持される。このことは、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の粘稠な液体成分を含むような内容物を充填した容器に蓋材を熱封緘したのちにおいても、蓋材裏面への該内容物の付着防止効果に優れたものであることを示す。しかも「シール性」試験の結果に示すように、付着防止層の存在によって封緘強度、ヒートシール性(シール強度)及び易開封性をいずれも大きく損なうことなく、適度な密封性を維持しつつ、上記付着防止性能を付与しうる。加えて、「密着性」試験の結果に見られるように、疎水性無機微粒子及びそれを含む付着防止層の密着性が良好で、不本意な疎水性無機微粒子等の分離脱落、付着防止層の部分剥離等のおそれがなく、長期に亘って内容物付着防止性能を安定に維持しうると共に、容器内への異物混入のおそれもない。
【符号の説明】
【0093】
1・・・基材層
2・・・基材フィルム
3・・・金属箔
5・・・熱封緘層
6・・・付着防止層
図1