(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱効率検出手段は、前記各加熱コイルに対応して設けられ、該加熱コイルに流れる出力電流を検出する出力電流検出手段と、前記各加熱コイルに対応して設けられた前記インバーター回路へ入力され、又は、該インバーター回路から出力される電力を検出する電力検出手段と、を備え、
前記制御回路は、前記出力電流検出手段によって検出された前記出力電流、及び、前記電力検出手段によって検出された前記電力に基づいて前記負荷抵抗を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
前記加熱口の下方に配置された複数の前記加熱コイルの電気的特性がそれぞれ異なる場合、前記各加熱コイルごとに、前記負荷抵抗と前記電流調整係数との前記関連付けが設定された
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
(誘導加熱調理器の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の全体構成図である。
図1で示されるように、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、被加熱物を載置するトッププレート1、及び、そのトッププレート1を上面に被せて内部構造を収納する本体筐体2によって構成されている。
【0011】
トッププレート1は、被加熱物を載置するための加熱口として、加熱口1a〜1dが形成されている。また、トッププレート1の手前側には、火力の強さ及び設定値等を表示するための表示手段6が設置されている。
【0012】
本体筐体2内部には、制御回路3及び加熱コイル群5a〜5dが収納されている。また、本体筐体2の手前側側面には、電源スイッチ4、操作部4a〜4d、及び、グリル調理するためのグリル部8が備えられている。
【0013】
電源スイッチ4は、誘導加熱調理器を起動させるための操作スイッチである。
【0014】
操作部4a〜4dは、それぞれ加熱コイル群5a〜5dによって、加熱口1a〜1dに載置された被加熱物への誘導加熱の強さを調整するものである。
【0015】
加熱コイル群5a〜5dは、それぞれトッププレート1の加熱口1a〜1dの下方に設置されており、高周波電流が流れることによって、各加熱口に載置された被加熱物を誘導加熱させるものである。また、加熱コイル群5a〜5dは、複数の加熱コイル7a〜7tによって構成されており、具体的には、次のように構成されている。加熱コイル群5aは、加熱コイル7a〜7eによって構成され、加熱コイル群5bは、加熱コイル7f〜7jによって構成され、加熱コイル群5cは、加熱コイル7k〜7oによって構成され、そして、加熱コイル群5dは、加熱コイル7p〜7tによって構成されている。
【0016】
なお、
図1で示されるように、4つの加熱口(加熱口1a〜1d)を構成するものとしたが、4つに限定されるものではない。
【0017】
(誘導加熱調理器の回路構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の回路構成図である。
図2で示されるように、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、商用交流電源11から電源が供給され、ダイオードブリッジ12、リアクトル13a〜13t、平滑コンデンサー14a〜14t、駆動回路15a〜15t、インバーター回路16a〜16t、共振コンデンサー19a〜19t、加熱コイル7a〜7t、出力電流検出手段21a〜21t、出力電圧検出手段22a〜22t、及び、制御回路3を備えている。また、インバーター回路16a〜16tは、それぞれ上側スイッチング手段17a〜17t、及び、下側スイッチング手段18a〜18tによって構成されている。ここで、例えば、加熱コイル7aを駆動動作及び各種物理量の検出動作をするための回路部品として、リアクトル13a、平滑コンデンサー14a、駆動回路15a、インバーター回路16a、共振コンデンサー19a、出力電流検出手段21a及び出力電圧検出手段22aが対応している。これは、その他の加熱コイルである加熱コイル7b〜7tの駆動動作及び各種物理量の検出動作についても同様であり、それぞれ、リアクトル13b〜13t、平滑コンデンサー14b〜14t、駆動回路15b〜15t、インバーター回路16b〜16t、共振コンデンサー19b〜19t、出力電流検出手段21b〜21t及び出力電圧検出手段22b〜22tが対応している。
【0018】
商用交流電源11から出力される交流電圧は、ダイオードブリッジ12によって整流され、平滑コンデンサー14aによって平滑され直流電圧が生成される。この際、ダイオードブリッジ12の出力側と平滑コンデンサー14aとの間に設置されたリアクトル13aによって力率が改善される。平滑コンデンサー14aの両端には、上側スイッチング手段17a及び下側スイッチング手段18aの直列回路が並列に接続されている。そして、下側スイッチング手段18aの両端には、加熱コイル7a及び共振コンデンサー19aの直列回路が並列に接続されている。上側スイッチング手段17a及び下側スイッチング手段18aのスイッチング動作をさせるための駆動信号を出力する駆動回路15aが設置されており、この駆動回路15aは制御回路3に接続されている。また、加熱コイル7aを流れる出力電流を検出する出力電流検出手段21a及び出力電圧を検出するための出力電圧検出手段22aが設置されており、それぞれ検出電流及び検出電圧を送信するために制御回路3に接続されている。
【0019】
上記のように、ダイオードブリッジ12から電力供給を受け、加熱コイル7aの加熱動作を実施するための回路と同様に、その他の加熱コイルである加熱コイル7b〜7tに対しても同様に構成されており、それぞれの回路は並列に接続されている。以下、加熱コイルの動作等を説明するために、基本的に加熱コイル群5aを対象に説明するものとし、その他の加熱コイル群の動作については必要時に適宜説明するものとする。また、リアクトル13a〜13t、平滑コンデンサー14a〜14t、駆動回路15a〜15t、インバーター回路16a〜16t、上側スイッチング手段17a〜17t、下側スイッチング手段18a〜18t、共振コンデンサー19a〜19t、出力電流検出手段21a〜21t、及び、出力電圧検出手段22a〜22tについて、それぞれ区別なく呼称又は総称する場合は、単に、リアクトル13、平滑コンデンサー14、駆動回路15、インバーター回路16、上側スイッチング手段17、下側スイッチング手段18、共振コンデンサー19、出力電流検出手段21及び出力電圧検出手段22と記載するものとする。
【0020】
なお、出力電流検出手段21及び出力電圧検出手段22は、本発明の「加熱効率検出手段」及び「電力検出手段」に相当する。
【0021】
(誘導加熱調理器の一般的な加熱動作)
次に、
図2を参照しながら、本実施の形態に係る誘導加熱調理器の一般的な加熱動作について説明する。
前述したように、商用交流電源11から出力される交流電圧は、ダイオードブリッジ12によって整流され、平滑コンデンサー14aによって平滑され直流電圧が生成され、この直流電圧はインバーター回路16aに供給される。インバーター回路16aを構成する上側スイッチング手段17a及び下側スイッチング手段18aは、制御回路3から出力される制御信号から駆動回路15aによって生成される駆動信号によってON/OFF動作を実施する。この駆動信号によって、上側スイッチング手段17a及び下側スイッチング手段18aは交互にON/OFF動作を実施し、直流電圧を高周波電圧(交流電圧)に変換し、加熱コイル7aに高周波電流が流れることになる。この加熱コイル7aに流れる高周波電流によって、加熱コイル7a(加熱コイル群5aの加熱コイルの一部)の上方に載置された鍋等の被加熱物は誘導加熱を受けて温められる。
なお、加熱コイル群5aを構成するその他の加熱コイル7b〜7eについても上記の動作と同様である。
【0022】
(加熱効率について)
図3は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱効率を説明する図である。
加熱コイル7aの上方に被加熱物31が載置されているものとすると、加熱コイル7aは、等価的に、加熱コイル抵抗71a、漏れインダクタンス72a及び結合インダクタンス73aの3つの要素によって概念的に構成される。
【0023】
加熱コイル抵抗71aは、加熱コイル7a自体の銅損等による抵抗を示す。
漏れインダクタンス72aは、被加熱物31によって加熱コイル7aが被さっていない領域から磁束が漏れ、被加熱物31の誘導加熱に寄与しない分のインダクタンスを示す。
結合インダクタンス73aは、被加熱物31によって加熱コイル7aが被さっている領域において、被加熱物31の誘導加熱に寄与する分のインダクタンスを示す。
【0024】
そして、被加熱物31及びその被加熱物31と磁気的に結合した結合インダクタンス73aは、抵抗である結合部抵抗74aに等価的に置換することができる。このとき、加熱コイル抵抗71aの抵抗をr1、そして、結合部抵抗74aの抵抗をr2とおくと、全体の負荷抵抗Rは、下記の式(1)で表される。
【0026】
この負荷抵抗Rは、インバーター回路16aの出力側の電力、及び、加熱コイル7aを流れる出力電流によって、下記の式(2)によって算出される。
【0027】
R=(電力)/(出力電流)
2 (2)
【0028】
ここで、加熱コイル7aの上方に被加熱物31がない場合、結合部抵抗74aの抵抗r2はゼロとなるので、この抵抗r2が大きいほど、磁気的な結合度が高くなり、インバーター回路16aへの入力電力の、被加熱物31に対するエネルギーの寄与分が多くなり、加熱効率が高くなることになる。したがって、本実施の形態において、加熱効率μを下記の式(3)で定義するものとする。
【0029】
加熱効率μ=r2/(r1+r2) (3)
【0030】
この式(3)において、加熱コイル7a自体の銅損等による抵抗である抵抗r1は略一定であるので、抵抗r2が大きくなるほど、すなわち、負荷抵抗Rが大きくなるほど、加熱効率μが大きくなり、加熱効率が改善される。
【0031】
(負荷抵抗Rに対する閾値について)
図4は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器において加熱口1aに被加熱物31が載置された状態の例を示す図であり、
図5は、
図4で示される態様で被加熱物31が載置された場合の各加熱コイルの負荷抵抗Rと閾値との関係を示す図である。このうち、
図4(a)は、加熱口1aに被加熱物31が載置された状態の正面図であり、
図4(b)は、その状態の平面図である。
【0032】
図4で示されるように、被加熱物31によって、加熱コイル7aは、その全体が被せられ、加熱コイル7b、7d及び7eは、その一部が被せられ、加熱コイル7cは、その全体が被せられていない。そして、加熱コイル7b、7d及び7eは、加熱コイル7bが最も大きい領域が被加熱物31によって被せられており、そして、加熱コイル7e、加熱コイル7dの順にその領域が小さくなる。以上のことから、加熱コイル7a、加熱コイル7b、加熱コイル7e、加熱コイル7d、そして、加熱コイル7cの順に、被加熱物31との磁気的な結合が小さくなり、負荷抵抗Rは小さくなる。ここで、
図5で示されるように、閾値R1及びR2を設けており、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、
図6及び
図7で後述するように、閾値R2以上の負荷抵抗Rを有する加熱コイル(
図5においては加熱コイル7a、7b)のみを駆動する第1加熱モード、及び、閾値R2より小さい閾値R1以上の負荷抵抗Rを有する加熱コイル(
図5においては加熱コイル7a、7b、7d、7e)のみを駆動する第2加熱モードを有している。これらの閾値R1及びR2は、記憶手段(図示せず)に記憶されているものとし、制御回路3がこの記憶手段から閾値R1及びR2を読み出すものとすればよい。
【0033】
なお、閾値R1は、本発明の「第2閾値」に相当し、閾値R2は、本発明の「第1閾値」に相当する。
【0034】
(誘導加熱調理器の加熱制御処理)
図6は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱口1aに対する加熱制御処理のフローチャートであり、
図7は、同加熱制御処理のうちの負荷検出処理のフローチャートであり、そして、
図8は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の各出力状態における上側スイッチング手段17及び下側スイッチング手段18のON/OFF波形図である。以下、
図6〜
図8を参照しながら、加熱制御処理について説明する。
【0035】
(S1)
ユーザーは、加熱口1aに被加熱物31を載置し、予め、後述する第1加熱モード又は第2加熱モードのいずれかで被加熱物31を加熱するかの設定をしておく。制御回路3は、ユーザーによって操作部4aの加熱開始操作がなされたか否かを判定する。その判定の結果、加熱開始操作がなされた場合、ステップS2へ進む。
【0036】
(S2)
制御回路3は、以下のステップS2−1〜ステップS2−5で示される負荷判定処理を実施する。
【0037】
(S2−1)
制御回路3は、まず、以下のステップS2−1−1〜ステップS2−1−10で示される加熱コイル7aについての負荷判定処理を実施する。
【0038】
(S2−1−1)
制御回路3は、駆動回路15aに対して、インバーター回路16aが所定電圧を出力するような駆動信号を出力させる。そして、ステップS2−1−2へ進む。
【0039】
(S2−1−2)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出された出力電流、及び、出力電圧検出手段22aによって検出された出力電圧を受信し、出力電流と出力電圧との位相差(力率)を考慮して電力を得る。そして、ステップS2−1−3へ進む。
【0040】
(S2−1−3)
制御回路3は、この出力電流及び電力から、式(2)によって、負荷抵抗Rを算出する。そして、ステップS2−1−4へ進む。
【0041】
(S2−1−4)
制御回路3は、加熱モードが、第1加熱モード又は第2加熱モードのいずれに設定されているか判定する。その判定の結果、第1加熱モードに設定されている場合、ステップS2−1−8へ進み、第2加熱モードに設定されている場合、ステップS2−1−5へ進む。
【0042】
(S2−1−5)
制御回路3は、第2加熱モードを実施し、記憶手段(図示せず)から閾値R1を読み出し、負荷抵抗Rが閾値R1以上であるか否かを判定する。その判定の結果、負荷抵抗Rが閾値R1以上である場合、ステップS2−1−7へ進み、閾値R1未満である場合、ステップS2−1−6へ進む。ここで、第2加熱モードは、前述のように閾値R2よりも小さい閾値R1以上の負荷抵抗Rを有する加熱コイル(
図4及び
図5における加熱コイル7a、7b、7d及び7e)を駆動する加熱モードであり、被加熱物31を全体的に加熱することができ、加熱ムラを抑制することができる。
【0043】
(S2−1−6)
制御回路3は、「負荷無し」、すなわち、加熱コイル7aの上方には被加熱物31がないものと判定し、加熱コイル7aは駆動させないものと決定する。そして、ステップS2−2へ進む。
【0044】
(S2−1−7)
制御回路3は、「負荷あり」、すなわち、加熱コイル7aの上方には被加熱物31が存在するものと判定し、加熱コイル7aを駆動させるものと決定する。そして、ステップS2−2へ進む。
【0045】
(S2−1−8)
制御回路3は、第1加熱モードを実施し、記憶手段(図示せず)から閾値R2を読み出し、負荷抵抗Rが閾値R2以上であるか否かを判定する。その判定の結果、負荷抵抗Rが閾値R2以上である場合、ステップS2−1−10へ進み、閾値R2未満である場合、ステップS2−1−9へ進む。ここで、第1加熱モードは、前述のように閾値R1よりも大きい閾値R2以上の負荷抵抗Rを有する加熱コイル(
図4及び
図5における加熱コイル7a及び7b)を駆動する加熱モードであり、負荷抵抗Rが大きい、すなわち、加熱効率が高い加熱コイルのみを駆動する加熱モードであり、漏れインダクタンスを抑制することができ、加熱動作の加熱効率を向上させることができる。
【0046】
(S2−1−9)
制御回路3は、「負荷無し」、すなわち、加熱コイル7aの上方には被加熱物31がないものと判定し、加熱コイル7aは駆動させないものと決定する。そして、ステップS2−2へ進む。
【0047】
(S2−1−10)
制御回路3は、「負荷あり」、すなわち、加熱コイル7aの上方には被加熱物31が存在するものと判定し、加熱コイル7aを駆動させるものと決定する。そして、ステップS2−2へ進む。
【0048】
(S2−2〜S2−5)
制御回路3は、加熱コイル7b〜7eについても、ステップS2−1と同様の処理を実施する。そして、ステップS3へ進む。
【0049】
(S3)
制御回路3は、加熱コイル7a〜7eについて、いずれかが適正に負荷が検出されたか否か、すなわち、駆動させるものと決定された加熱コイル(以下、「適正負荷検出加熱コイル」という)が存在するか否かを判定する。その判定の結果、適正負荷検出加熱コイルが存在する場合、ステップS4へ進み、適正負荷検出加熱コイルが存在しない場合、ステップS1へ戻る。
【0050】
(S4)
制御回路3は、適正負荷検出加熱コイルに流す出力電流の初期の目標電流(初期目標電流)を設定する。そして、ステップS5へ進む。
【0051】
(S5)
制御回路3は、その適正負荷検出加熱コイルに対応する駆動回路15に対して、適正負荷検出加熱コイルに初期目標電流が流れるように、駆動信号を出力させてインバーター回路16を駆動させる。そして、ステップS6へ進む。
【0052】
(S6)
制御回路3は、適正負荷検出加熱コイルが含まれる回路の出力電流検出手段21によって検出された出力電流、及び、出力電圧検出手段22によって検出された出力電圧を受信する。そして、ステップS7へ進む。
【0053】
(S7)
制御回路3は、ユーザーによって操作部4aの加熱停止操作がなされたか否かを判定する。その判定の結果、加熱停止操作がなされた場合、ステップS16へ進み、加熱停止操作がなされていない場合、ステップS8へ進む。
【0054】
(S8)
制御回路3は、各適正負荷検出加熱コイルにおいて、ステップS6において検出された出力電流及び出力電圧から電力を算出して、その和である検出電力和を算出する。そして、制御回路3は、その検出電力和と、予め設定してある設定電力(例えば、目標とする電力)との大小比較を実施する。その比較の結果、検出電力和が設定電力よりも小さい場合、ステップS9へ進み、大きい場合、ステップS10へ進み、そして、略等しい場合、ステップS11へ進む。
【0055】
(S9)
制御回路3は、各適正負荷検出加熱コイルについて、出力電流検出手段21によって検出された出力電流である検出電流に所定量αを加算した値を、新たに目標電流として設定する。そして、ステップS11へ進む。
【0056】
(S10)
制御回路3は、各適正負荷検出加熱コイルについて、出力電流検出手段21によって検出された出力電流である検出電流から所定量αを減算した値を、新たに目標電流として設定する。そして、ステップS11へ進む。
【0057】
(S11)
制御回路3は、以下のステップS11−1〜ステップS11−5で示される加熱コイル7aの出力制御処理を実施する。
【0058】
(S11−1)
制御回路3は、加熱コイル7aが駆動しているか否か、すなわち、加熱コイル7aが適正負荷検出加熱コイルであるか否か判定する。その判定の結果、加熱コイル7aが駆動している場合、ステップS11−2へ進み、駆動していない場合、ステップS12へ進む。
【0059】
(S11−2)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出される出力電流、すなわち、加熱コイル7aに流れる出力電流が過大であるか否かを判定する。過大であるか否かを判定するには、出力電流に対する所定の閾値を設け、その閾値との比較によって行えばよい。その判定の結果、出力電流が過大である場合、ステップS11−5へ進み、出力電流が過大ではない場合、ステップS11−3へ進む。
【0060】
(S11−3)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出される出力電流である検出電流と、目標電流との大小比較を実施する。その比較の結果、目標電流が検出電流よりも大きい場合、ステップS11−4へ進み、小さい場合、ステップS11−5へ進み、そして、略等しい場合、ステップS12へ進む。
【0061】
(S11−4)
制御回路3は、駆動回路15aに対して、加熱コイル7aに流れる出力電流が目標電流まで上がるような駆動信号を、インバーター回路16aに出力させる。具体的には、
図8(a)で示されるように、制御回路3は、上側スイッチング手段17aのON/OFF動作のデューティー比が大きくなるように、かつ、下側スイッチング手段18aのON/OFF動作のデューティー比が小さくなるように駆動信号を出力すればよい。これによって、出力電圧が大きくなるので、加熱コイル7aを流れる出力電流を増加させることができる。そして、ステップS12へ進む。
【0062】
(S11−5)
制御回路3は、駆動回路15aに対して、加熱コイル7aに流れる出力電流が目標電流まで下がるような駆動信号を、インバーター回路16aに出力させる。具体的には、
図8(c)で示されるように、制御回路3は、上側スイッチング手段17aのON/OFF動作のデューティー比が小さくなるように、かつ、下側スイッチング手段18aのON/OFF動作のデューティー比が大きくなるように駆動信号を出力すればよい。これによって、出力電圧が小さくなるので、加熱コイル7aを流れる出力電流を低下させることができる。そして、ステップS12へ進む。
【0063】
(S12〜S15)
制御回路3は、加熱コイル7b〜7eについても、ステップS11と同様の処理を実施する。そして、ステップS6へ進む。
【0064】
(S16)
制御回路3は、駆動回路15a〜15eの駆動信号の出力を停止させ、インバーター回路16a〜16eの動作を停止させる。そして、ステップS1へ戻る。
【0065】
以上の加熱制御処理は、被加熱物31が載置された加熱口1aに対応する加熱コイル群5a(加熱コイル7a〜7e)について説明したが、加熱口1b〜1dにそれぞれ対応する加熱コイル群5b〜5d(加熱コイル7f〜7t)についても同様であることは言うまでもない。
【0066】
(実施の形態1の効果)
以上のような構成及び動作のように、負荷抵抗Rの閾値を高く設定して、加熱効率の高い加熱コイルのみを駆動させる第1加熱モードを実施することによって、駆動する加熱コイルの漏れインダクタンスを減少させることができ、総合的に加熱効率の高い加熱動作を実施することができる。
【0067】
また、第1加熱モードにおける負荷抵抗Rに対する閾値よりも小さく設定した第2加熱モードを実施することによって、駆動する加熱コイルを増やすことができ、加熱口に載置された被加熱物を全体的に加熱することができ、加熱ムラを抑制することができる。
【0068】
なお、
図1で示されるように、各加熱口の下方に設置される加熱コイルとして、
図1及び
図4(a)で示されるように、5つの加熱コイルを十字形状となるように配置しているが、これに限定されるものではない。例えば、
図9で示されるような加熱コイルの配置構成としてもよい。
図9(a)は、7つの加熱コイルを六角形状に配置した例を示す図であり、
図9(b)は、9つの加熱コイルを正方形状に配置した例を示す図である。
【0069】
また、
図6で示されるステップS8で電力を算出するのに、出力電流検出手段21によって検出された出力電流、及び、出力電圧検出手段22によって検出された出力電圧から算出するものとしているがこれに限定されるものではない。すなわち、インバーター回路16aに入力される入力電圧及び入力電流から電力を算出して用いるものとしてもよい。
【0070】
実施の形態2.
本実施の形態に係る誘導加熱調理器について、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成及び動作と相違する点を中心に説明する。
【0071】
(誘導加熱調理器の回路構成)
図10は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の回路構成図である。
図10で示されるように、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、加熱コイル7a〜7tにそれぞれ対応するダイオードブリッジ12a〜12tを備えている。また、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、このダイオードブリッジ12a〜12tに入力する入力電流をそれぞれ検出する入力電流検出手段23a〜23t、及び、ダイオードブリッジ12a〜12tが整流した電圧(インバーター回路16aに印加される電圧の基となるので入力電圧というものとする)を検出する入力電圧検出手段24a〜24tを備えている。また、本実施の形態に係る誘導加熱調理器は、実施の形態1と異なり、出力電圧を検出する出力電圧検出手段22a〜22tは備えられていない。
【0072】
なお、出力電流検出手段21、入力電流検出手段23及び入力電圧検出手段24は、本発明の「加熱効率検出手段」に相当し、入力電流検出手段23及び入力電圧検出手段24は、本発明の「電力検出手段」に相当する。
【0073】
(誘導加熱調理器の加熱制御処理)
図11は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱制御処理のフローチャートであり、
図12は、同加熱制御処理のうちの負荷検出処理のフローチャートであり、
図13は、同加熱制御処理のうちの加熱コイルの出力制御処理のフローチャートであり、そして、
図14は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の負荷抵抗Rと電流調整係数との関係グラフである。以下、
図11〜
図14を参照しながら、加熱制御処理について説明する。なお、本実施の形態に係る加熱制御処理について、実施の形態1に係る加熱制御処理と相違する点を中心に説明する。
【0074】
(S2a)
制御回路3は、以下のステップS2−1a〜ステップS2−5aで示される負荷判定処理を実施する。
【0075】
(S2−1a)
制御回路3は、まず、以下のステップS2−1−1、ステップS2−1−2a、ステップS2−1−3a、ステップS2−1−4〜ステップS2−1−10で示される加熱コイル7aについての負荷判定処理を実施する。
【0076】
(S2−1−2a)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出された出力電流、入力電流検出手段23aによって検出された入力電流、及び、入力電圧検出手段24aによって検出された入力電圧を受信する。そして、ステップS2−1−3aへ進む。
【0077】
(S2−1−3a)
制御回路3は、この出力電流、入力電流及び入力電圧から、式(2)によって、負荷抵抗Rを算出する。そして、ステップS2−1−4へ進む。
【0078】
(S2−2a〜S2−5a)
制御回路3は、加熱コイル7b〜7eについても、ステップS2−1aと同様の処理を実施する。そして、ステップS3へ進む。
【0079】
(S6a)
制御回路3は、適正負荷検出加熱コイルが含まれる回路の出力電流検出手段21によって検出された出力電流、入力電流検出手段23によって検出された入力電流、及び、入力電圧検出手段24によって検出された入力電圧を受信する。そして、ステップS7へ進む。
【0080】
(S8a)
制御回路3は、各適正負荷検出加熱コイルにおいて、ステップS6aにおいて検出された入力電流及び入力電圧から電力を算出して、その和である検出電力和を算出する。そして、制御回路3は、その検出電力和と、予め設定してある設定電力(例えば、目標とする電力)との大小比較を実施する。その比較の結果、検出電力和が設定電力よりも小さい場合、ステップS9へ進み、大きい場合、ステップS10へ進み、そして、略等しい場合、ステップS11aへ進む。
【0081】
(S11a)
制御回路3は、以下のステップS11a−1〜ステップS11a−8で示される加熱コイル7aの出力制御処理を実施する。
【0082】
(S11a−1)
制御回路3は、加熱コイル7aが駆動しているか否か、すなわち、加熱コイル7aが適正負荷検出加熱コイルであるか否か判定する。その判定の結果、加熱コイル7aが駆動している場合、ステップS11a−2へ進み、駆動していない場合、ステップS12aへ進む。
【0083】
(S11a−2)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出される出力電流、すなわち、加熱コイル7aに流れる出力電流が過大であるか否かを判定する。過大であるか否かを判定するには、出力電流に対する所定の閾値を設け、その閾値との比較によって行えばよい。その判定の結果、出力電流が過大である場合、ステップS11a−7へ進み、出力電流が過大ではない場合、ステップS11a−3へ進む。
【0084】
(S11a−3)
制御回路3は、加熱モードが、第1加熱モード又は第2加熱モードのいずれに設定されているか判定する。その判定の結果、第1加熱モードに設定されている場合、ステップS11a−4へ進み、第2加熱モードに設定されている場合、ステップS11a−8へ進む。
【0085】
(S11a−4)
制御回路3は、
図14で示される負荷抵抗Rと電流調整係数との関係に基づいて、加熱コイル7aの負荷抵抗Rから電流調整係数を導出し、その電流調整係数と現状の目標電流との積を調整後目標電流として算出する。ここで、電流調整係数は、負荷抵抗Rが大きくなるほど、すなわち、加熱効率が大きくなるほど大きくなる係数である。したがって、負荷抵抗Rが大きくなるほど大きくなる電流調整係数と目標電流との積を新たな目標電流(調整後目標電流)とすることによって、加熱効率が高い加熱コイルに、加熱効率が低い加熱コイルよりも大きな出力電流を流すことができるようになる。また、上記の負荷抵抗Rと電流調整係数との関係情報は、記憶手段(図示せず)に記憶されているものとし、制御回路3がこの記憶手段から関係情報を読み出すものとすればよい。
【0086】
(S11a−5)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出される出力電流である検出電流と、調整後目標電流との大小比較を実施する。その比較の結果、調整後目標電流が検出電流よりも大きい場合、ステップS11a−6へ進み、小さい場合、ステップS11a−7へ進み、そして、略等しい場合、ステップS12aへ進む。
【0087】
(S11a−6)
制御回路3は、駆動回路15aに対して、加熱コイル7aに流れる出力電流が調整後目標電流まで上がるような駆動信号を、インバーター回路16aに出力させる。そして、ステップS12aへ進む。
【0088】
(S11a−7)
制御回路3は、駆動回路15aに対して、加熱コイル7aに流れる出力電流が調整後目標電流まで下がるような駆動信号を、インバーター回路16aに出力させる。そして、ステップS12aへ進む。
【0089】
(S11a−8)
制御回路3は、出力電流検出手段21aによって検出される出力電流である検出電流と、現状の目標電流との大小比較を実施する。その比較の結果、目標電流が検出電流よりも大きい場合、ステップS11a−6へ進み、小さい場合、ステップS11a−7へ進み、そして、略等しい場合、ステップS12aへ進む。
【0090】
(S12a〜S15a)
制御回路3は、加熱コイル7b〜7eについても、ステップS11aと同様の処理を実施する。そして、ステップS6aへ進む。
【0091】
以上の加熱制御処理は、被加熱物31が載置された加熱口1aに対応する加熱コイル群5a(加熱コイル7a〜7e)について説明したが、加熱口1b〜1dにそれぞれ対応する加熱コイル群5b〜5d(加熱コイル7f〜7t)についても同様であることは言うまでもない。
【0092】
(実施の形態2の効果)
以上のような構成及び動作のように、実施の形態1における効果を有することに加え、第1加熱モードにおいて、駆動する加熱コイルのうち、負荷抵抗が大きい、すなわち、加熱効率が高い加熱コイルに大きな出力電流を流すことができる。これによって、加熱効率の低い加熱コイルの被加熱物の加熱に対する寄与の割合よりも、加熱効率の高い加熱コイルの被加熱物の加熱に対する寄与の割合をさらに大きくすることができ、入力電力から被加熱物の加熱に寄与するエネルギーの割合を向上させることができる。
【0093】
なお、
図14で示されるように、負荷抵抗Rと電流調整係数との関係が右上がりの直線グラフとなっているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図15で示されるように、負荷抵抗Rの増加に伴い、電流調整係数が所定量だけ階段状に増加していく関係としてもよい。
【0094】
また、
図11で示されるステップS8aで電力を算出するのに、入力電流検出手段23によって検出された入力電流、及び、入力電圧検出手段24によって検出された入力電圧から算出するものとしているがこれに限定されるものではない。すなわち、加熱コイル7を流れる出力電流及び出力電圧から電力を算出して用いるものとしてもよい。
【0095】
実施の形態3.
本実施の形態に係る誘導加熱調理器について、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成及び動作と相違する点を中心に説明する。
【0096】
(誘導加熱調理器の回路構成)
図16は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の回路構成図である。
図16で示されるように、
図10で示される実施の形態2に係る誘導加熱調理器の回路構成とほぼ同一であるが、
図17で後述するように、加熱コイルの形状が異なっている。
【0097】
(誘導加熱調理器の加熱コイルの構成及び加熱制御処理)
図17は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器における加熱コイルの形状の例を示す図であり、
図18は、同誘導加熱調理器における加熱コイルに応じた負荷抵抗に対する閾値を示す図であり、そして、
図19は、同誘導加熱調理器における加熱コイルに応じた負荷抵抗Rと電流調整係数との関係グラフである。
図17で示されるように、加熱コイル群5aは、加熱コイル7aは円形状の呈しており、加熱コイル7b〜7eは楕円形状を呈しており、加熱コイル7aの周りを囲むように配置されている。この場合、加熱コイル7a(ここでは「内加熱コイル」という)と、加熱コイル7b〜7e(ここでは「外加熱コイル」という)とは、電気的特性が異なり、加熱口1aに被加熱物31が載置されて、内加熱コイルと、外加熱コイルとが同一の負荷抵抗Rとなっても、被加熱物31に対する加熱の度合いが同一であるとは限らない。そこで、
図18で示されるように、内加熱コイルの場合に、駆動させるか否かを判定するための閾値R1及びR2と、外加熱コイルの場合に、駆動させるか否かを判定するための閾値R3及びR4とを別々に設定し、記憶手段(図示せず)に記憶されているものとする。さらに、
図19で示されるように、内加熱コイルの場合と、外加熱コイルの場合とで、電流調整係数を決定するための負荷抵抗Rと電流調整係数との関係を別々に設定し、記憶手段(図示せず)に記憶されているものとする。そして、本実施の形態に係る誘導加熱調理器が実施する加熱制御処理は、
図10〜
図12で示される実施の形態2における加熱制御処理と同様であるが、
図12で示されるステップS2−1−5及びS2−1−8においては、対象となる加熱コイルに対応する閾値によって負荷の有り無しを判定する。また、
図13で示されるステップS11a−4においては、対象となる加熱コイルに対応する負荷抵抗Rと電流調整係数との関係に基づいて、電流調整係数を導出する。
【0098】
(実施の形態3の効果)
このように、各加熱コイルの形状によって異なる電気的特性に応じた閾値の設定、及び、負荷抵抗と電流調整係数との関係の選択によって、各加熱モードで駆動すべき加熱コイルを適切に選択することができ、かつ、その加熱コイルの電気的特性に応じた目標電流(調整後目標電流)を設定することができる。
【0099】
なお、
図17で示されるように、加熱コイルの形状として2種類を示し、それぞれに対応する負荷抵抗の閾値、及び、負荷抵抗と電流調整係数との関係をそれぞれ2種類としたが、これに限定されるものではない。すなわち、加熱コイルの形状の数だけ、負荷抵抗の閾値、及び、負荷抵抗と電流調整係数との関係を備える構成としてもよい。
【0100】
また、上記の加熱制御処理を、実施の形態1に係る誘導加熱調理器に適用するものとし、電気的特性が異なる加熱コイルごとに、駆動させるか否かを判定するための2つの閾値を別々に設定し、記憶手段に記憶されているものとしてもよい。