(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のタイプの無機セラミック形成粉末が、コージエライト形成無機粉末およびチタン酸アルミニウム形成無機粉末からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
前記第1および第2の細孔形成粉末が、グラファイト、活性炭、デンプン、発泡樹脂、アクリル系ビーズ、メタクリル酸ビーズ、小麦粉、およびフェノール樹脂からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
前記第3の細孔形成粉末が、グラファイト、活性炭、デンプン、発泡樹脂、アクリル系ビーズ、メタクリル酸ビーズ、小麦粉、およびフェノール樹脂からなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では「基準」の細孔形成剤材料という用語は、「粗い」細孔形成剤と特定され、より粗いまたは細かい細孔形成材料(すなわち、平均粒径が基準の細孔形成剤のものより大きいまたは小さい材料)を、基準の(粗い)細孔形成剤に加えて、ハニカム製品の細孔径分布を調整する。細孔形成材料は、焼成プロセスの間に燃焼し、焼成完了時には、最終製品中に本質的に存在しない。表1には、本明細書に示す実施例に用いた、粗いおよび細かいグラファイトの細孔形成材料、およびジャガイモデンプンの細孔形成材料の粒径分布およびメジアン粒径が記載されている。
【表1】
【0011】
本明細書に記載の方法は、材料が異なる粒径分布を有することを条件として、任意の種類の細孔形成材料、または2種類以上の異なる細孔形成材料を用いることができる。
【0012】
本開示の実施に使用することができるコージエライトを形成するためのセラミックバッチ材料組成の例は、米国特許第3,885,977号、同第4,950,628号、同第RE38,888号、同第6,368,992号、同第6,319,870号、同第6,210,626号、同第5,183,608号、同第5,258,150号、同第6,432,856号、同第6,773,657号、同第6,864,198号の各明細書、および米国特許出願公開第2004/0029707号、同第2004/0261384号、および同第2005/0046063号の各明細書に開示される。コージエライト基板は、タルク、カオリン、酸化アルミニウムおよび非晶質のシリカ粉末の形態で供給することができる、シリカ、アルミナおよびマグネシアを含めた無機材料から形成され、引例に示される他の材料を含めてもよい。粉末は、コージエライト基板の形成に適している、当技術分野で列挙されるような比率で混合される。
【0013】
無機コージエライトセラミック形成原料(無機粉末として供給される、シリカ、タルク、粘土およびアルミナなど)、有機結合剤、および細孔形成剤を一緒に液体と混合して、セラミック前駆体バッチを形成して差し支えない。液体は、溶解する結合剤に媒体を提供し、バッチに可塑性を提供し、粉末の湿潤性をもたらす。液体は、通常、水または水混和性の溶媒でありうる水性系、または有機系であって差し支えない。水性の液体は、結合剤と粉末粒子の水和を提供することができる。一部の実施の形態では、液体量は上乗せ添加として加えられ、無機セラミック形成粉末の約20重量%〜約50重量%である。バッチ材料は、セラミック形成無機材料、有機結合剤、および細孔形成剤を含み、さらに、滑剤および、本明細書に記載される、当技術分野で既知の選択された液体を含んでいてもよい。
【0014】
本開示の実施に使用することができる、チタン酸アルミニウムおよび誘導体(例えば、限定はしないが、ムライトチタン酸アルミニウムおよびストロンチウム長石チタン酸アルミニウムなど)を形成するためのセラミックバッチ材料組成物の例は、米国特許第4,483,944号、同第4,855,265号、同第5,290,739号、同第6,620,751号、同第6,942,713号、同第6,849,181号、同第7,001,861号、同第7,259,120号、同第7,294,164号の各明細書;米国特許出願公開第2004/0020846号および同第2004/0092381号の各明細書;および、国際公開第2006/015240号、同第2005/046840号、および、同第2004/011386号の各パンフレットに記載されている。上記の特許および特許文献には、さまざまな組成のチタン酸アルミニウム基板が開示されており、そのすべてが、本開示の実施に使用することができる。組成物として、無機材料のアルミナおよびチタニアから形成される、さまざまなチタン酸アルミニウム基板が開示され、随意的に、シリカ、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物および酸化鉄のうち、1種類または複数種類をさらに含めてもよい。これらの随意的な材料は、さまざまな追加のチタン酸アルミニウム含有基板の形成に適した、上記分野で挙げられている比率で混合して差し支えない。ここでは、チタン酸アルミナ基板の製造に使用される無機材料は、「無機セラミック形成粉末」と称される。バッチ材料には、セラミック形成無機材料、有機結合剤、および細孔形成剤が含まれ、さらには、滑剤および、本明細書に記載される、当技術分野で既知の選択された液体も含めることができる。
【0015】
無機チタン酸アルミニウムセラミック形成原料(例えば、限定はしないが、アルミナ、チタニアおよび本明細書および引用文献に示す他の材料)、有機結合剤および細孔形成剤を液体と一緒に混合して、セラミック形成前駆体バッチを形成して差し支えない。液体は、結合剤が溶解するための媒体を提供し、それによって、バッチに可塑性を与え、粉末の湿潤性をもたらしうる。液体は、通常は水または水混和性の溶媒でありうる水性系、または有機系であって差し支えない。水性の液体は、結合剤および粉末粒子の水和を提供することができる。一部の実施の形態では、液体の量は、無機セラミック形成材料の約20重量%〜約50重量%である。
【0016】
有機結合剤は、セラミック物品を生産するための当技術分野で既知の任意の結合剤でありうる。典型的な実施の形態では、結合剤は、限定はしないが、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびそれらの混合物などのセルロースエーテル結合剤であって差し支えない。メチルセルロースなどの好ましいセルロース系の結合剤の特性は、水分保持性、水溶性、表面活性または湿潤能力、混合物の増粘、未焼成体への湿潤生強度および乾燥生強度の提供、熱ゲル化、および水性の環境における疎水性会合でありうる。
【0017】
随意的に、界面活性剤および油滑剤などの他の添加剤が、無機セラミック形成原料に上乗せ添加されて、製造工程を促進してもよい。本開示の実施に用いて差し支えない界面活性剤の非限定的な例として、C
8−C
22脂肪酸および/またはそれらの誘導体がある。これらの脂肪酸と共に用いられうる追加の界面活性剤成分として、C
8−C
22脂肪酸エステル、C
8−C
22脂肪アルコール、およびこれらの組合せが挙げられる。典型的な界面活性剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、およびそれらの誘導体、ステアリン酸とラウリル硫酸アンモニウムの組合せ、およびこれらのすべての組合せが挙げられる。実例となる実施の形態では、界面活性剤は、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、またはこれらの組合せでありうる。界面活性剤の量は、無機セラミック形成原料の重量に基づいて、約0.5重量%〜約2重量%でありうる。
【0018】
滑剤の非限定的な例としては、軽油、コーン油、高分子量のポリブテン、ポリオールエステル、軽油とワックスエマルションの混合、コーン油中におけるパラフィンワックスの混合、およびこれらの組合せが挙げられる。典型的には、油滑剤の量は、無機セラミック形成材料の約1重量%〜約10重量%でありうる。典型的な実施の形態では、油滑剤は、約3重量%〜約6重量%で存在して差し支えない。
【0019】
細孔形成剤の非限定的な例としては、グラファイト、活性炭、アクリル系またはアクリル酸ビーズなどの発泡樹脂、小麦粉、デンプン(例えばジャガイモデンプン)、フェノール樹脂、および当技術分野で既知の他の細孔形成剤が挙げられる。
【0020】
一部の実施の形態では、本開示は、経時による、ほぼ均一な多孔性マトリクスを有する、例えば、限定はしないが、ディーゼル・フィルタとして使用できるコージエライトまたはチタン酸アルミニウム基板などのハニカム基板、および、このようなほぼ均一な多孔性マトリクスを有するハニカム基板の製造方法を対象とする。このような多孔性を達成するため、ハニカム基板の製造に用いられる、バッチ化されたままの組成物は、経時による、単一の細孔形成剤の特性、または、最終製品の細孔径分布に影響を有する他のバッチ材料の特性の変更を目的として調整するために選択される、異なる粒径分布の2種類以上の細孔形成剤を選択された比で使用して差し支えない。複雑性を低減するためには、2種類または3種類の細孔形成剤を使用することが好ましいが、多数の細孔形成剤の使用を妨げるものは何もない。一例として、2種類の細孔形成剤が用いられる場合、細孔形成剤は、(1)異なる粒径を有する同一の材料のもの、または(2)異なる粒径を有する異なる材料のもののいずれかでありうる。別の例では、本方法は、粗い細孔径の調整である1つの比、および微調整である他の比を有する、3種類の細孔形成剤の使用にも及びうる。この事例では、3種類の細孔形成剤は、異なる粒径または粒径分布を有する同一の材料であるか、または、細孔形成剤は2種類または3種類の異なる材料であって差し支えなく、各材料は、異なる粒径または粒子分布、または異なる粒子形態を有する。多数の細孔形成剤を、本開示の実施に用いることもできる。
【0021】
本方法はまた、細孔の形成の目的だけに留まらず、例えば、2種類の異なる粒径のタルクまたはシリカを使用する、例えば、コージエライト結晶構造などのセラミック微細構造の形成などの他の目的にも使用される他のバッチ材料の粒径の変更も含みうる。
【0022】
2種類以上の細孔形成剤の比の変更の誘因は、製品を形成した生産から得たデータを用いて結果をより早く得るために焼成プロセスの促進を使用する、必要なデータを得るために実験室規模の材料予見プロセスを使用する、または原料およびプロセス属性に基づいた予測アルゴリズムを使用する、生産方法から得られた物理的特性の測定に基づくことができる。
【0023】
時間と共に、一貫して一定の多孔性を有するフィルタは、コーティング(ウォッシュコートおよび/または、これらの金属を使用する場合の触媒金属)において、および、現場使用または試験における実際のエンジン上で、製品をさらに予想通りに機能できるようにする。セル型のセラミックの製造に用いられる天然の原料には、自然変動が存在し、また存在し続ける。この自然変動は、得られる製品の多孔性に変動を生じうる。原料は、任意の変化が、最終製品において事実上無視できる程度まで制御されることが望ましいが、これは、供給メーカーにおける装置能力の欠如、経時における一貫性のある原料の欠如、法外な費用、または、最終的な製品特性に影響を及ぼしうるすべての原料変化の理解の欠如に起因して、実現できるとは限らない。しかしながら、粒径または粒径分布において十分な差異を有する2種類以上の細孔形成剤を使用することにより、および、これらの細孔形成剤の比を変化させることにより、最終製品の細孔径分布を、バッチ化された材料における自然変動の影響を相殺するのに十分に変化させることができることが判明した。
【0024】
例として、コージエライト組成物のタルク、粘土、シリカ、およびアルミナ(ならびに、可塑剤、滑剤、および当技術分野で既知の他の材料などの随意的に追加の材料)を含む組成物への粗いグラファイト細孔形成剤[90μmのメジアン粒径(「MPS」)]の20%の上乗せ添加を用いて、多孔質のセル型のセラミック構造を製造する先行技術では、バッチ構成原料の属性が変化するにつれて、経時による製品多孔性の変動性を生じる結果となった。
【0025】
図1は、本開示に従って、粗いグラファイト細孔形成剤(「C」、90μmのMPS)の一部を、細かいグラファイト細孔形成剤(「F」、40μmのMPS)で置換する場合を例証している。得られた製品細孔径は、
図1に示すように、縮小されうる。
図1では、全細孔形成材料は、全無機セラミック形成材料に基づいて20重量%の上乗せ添加である。最終製品のメジアン細孔の大きさの調整は、異なる粒径の細孔形成剤と比較して、1つの粒径細孔形成剤のレベルを減少または増大すること、すなわち、C/F比を変化させることによって行うことができる。
図1は、粗い/細かいグラファイト細孔形成粒子の比が、0/100の粗/細比から、100/0の粗/細比まで変化する(比は、それぞれ、文字A〜Eで、縦軸上に示されている)場合に、メジアン細孔径およびCTE(25℃〜800℃の温度で測定した焼成製品の膨張率)に生じる変化を例証している。
図1は、メジアン細孔径が、粗い粒子の量が増大するにつれて増大することを示している。しかしながら、CTEは、粗い/細かい細孔形成剤の比が変化する際に、比較的一定に保たれている。
【0026】
図2に例証されるように、それらの粒径が顕著に異なる限り、異なる細孔形成剤材料(例えば、グラファイトおよびジャガイモデンプン)を使用して、同様の結果を達成することができる。
図2では、粗いグラファイトのジャガイモデンプン(細かい粒径材料)に対する比を変更した。デンプン/グラファイト細孔形成剤の比を、10/0から5/10に、また0/10に(横軸上に、それぞれ、A、CおよびEで表される)変更して(無機セラミック形成材料のバッチ重量%における上乗せ添加)、バッチからサンプルを調製した。粗いグラファイトの量が増大するにつれて、メジアン細孔径も増大したことが分かった。5/10のバッチ製品が、0/10の製品よりも小さいメジアン細孔径を有するという事実は、細かい細孔形成剤の使用により、メジアン細孔径を低下させることができることを示している。
図2に示すCTE値(25℃〜800℃の温度で測定)間の差異は小さいが、2種類の異なる材料を細孔形成剤として使用する場合には、最終製品のCTEが目標としたレベル内に保持されていることをよく確かめることが常に必要とされる。
【0027】
図3〜6は、異なる粒径の炭素系の細孔形成バッチ材料の比を変化させた結果、破壊係数(「MOR」、製品の物理的強度の測定、
図3);弾性係数(「EMOD」、力が印加されたときに物質の弾性的に(すなわち一時的に)変形する傾向の測定、
図4);全水銀侵入(多孔性の測定、
図5);およびメジアン細孔径などの他の因子(
図6)など、他の製品特性において小さい変動を生じたことを示している。全水銀侵入とD−因子は、比較的安定した状態を保持した。D−因子は、第1の選択された細孔径「x」を有する粒子のパーセンテージおよび第2の選択された粒径「y'」を有する粒子のパーセンテージの比であり、一般に、(D
x−D
y)÷D
xとして示される。例えば、(D
50−D
10)÷D
50の表現において、D
50はメジアン細孔径(50パーセント値)であり、D
10は、10パーセント値における細孔径である。本明細書に記載の方法を使用して、上記の他の特性に影響を与えることなく、メジアン細孔径をシフトさせることができる。
図3〜5では、すべての「c/f」および「c/ps」値は、バッチ化された無機セラミック形成材料の重量%における上乗せ添加としてのものである。
【0028】
図3は、製品バッチの調製に用いた、重量パーセントにおける、粗い/細かい(「c/f」)グラファイトおよび/または粗いグラファイト/ジャガイモデンプン(「c/ps」)の関数としての破壊係数(「MOR」)を例証している。基準製品は、20重量%の粗いグラファイトを細孔形成剤(c/f=20/0)として使用した、同一の製品の2種類の異なるバッチから調製した。
図3は、MORが、粗いおよび細かいグラファイトのさまざまな比において、安定を保っていることを例証している。5%の粗いグラファイトの2.5%のジャガイモデンプンへの置換(すなわち、c/ps=15/2.5と標示されたサンプル)では、基準製品と類似するMORを有する製品を生じる。最大、最小およびメジアンMOR値は、左側の垂直な区画に示されている。
図3〜5では、すべての「c/f」および「c/ps」の値は、バッチ化した製品の重量%である。
【0029】
図4は、製品バッチの調製に用いられる、重量パーセントにおける、粗い/細かい(「c/f」)グラファイトおよび粗いグラファイト/ジャガイモデンプン(「c/ps」)の関数としてのEMODを例証している。製品は、20重量%の粗いグラファイトを細孔形成剤として使用した(c/f=20/0)、同一の製品の2種類の異なるバッチから調製した。
図4は、EMODが、粗いおよび細かいグラファイトをさまざまな比で用いて、比較的安定に保たれることを例証している。粗いグラファイト/ジャガイモデンプン製品(c/ps=15/2.5;5%の粗いグラファイトを2.5%のジャガイモデンプンで置換)は、EMODが基準製品のものと同様の製品を生じる。図における数値は、各サンプルの平均EMOD値である。
【0030】
図5は、製品バッチの調製に用いられる、重量パーセントにおける、粗い/細かい(「c/f」)グラファイトおよび粗いグラファイト/ジャガイモデンプン(「c/ps」)の関数としての全水銀侵入、多孔性の測定を例証している。製品は、20重量%の粗いグラファイトの上乗せ添加を細孔形成剤(c/f=20/0)として用いた、同一の配合の2種類の異なるバッチから調製した。
図5は、Hg侵入が、粗いおよび細かいグラファイトのさまざまな比において安定に保たれていることを例証している。粗いグラファイト/ジャガイモデンプン製品(c/ps=15/2.5、5%の粗いグラファイトを2.5%のジャガイモデンプンで置換)は、多孔性がわずかに減少した製品を生じ、これは、追加の量のジャガイモデンプンの使用(約1〜3重量%)によって補正することができる。図における数値は、各サンプルの平均全水銀侵入の値である。
【0031】
図7は、市販の細孔形成剤を使用して製造した典型的な商用に生産されたハニカム製品、粗い細孔形成剤のみを使用して製造したハニカム、および、粗い細孔形成剤と細かい細孔形成剤の両方を使用して製造したハニカムについてのハニカム細孔容積と細孔径の関係を例証するグラフである。
図7において、参照番号20は、12.1μmのメジアン細孔径(「MPS」)を有する市販のハニカムコージエライト製品の曲線を表している(薄い灰色で示す)。曲線30は、細孔形成材料として、本明細書に記載の粗いグラファイトのみの20重量パーセントの上乗せ添加を用いて製造した、12.9μmのMPSを有するコージエライト製品を表している。曲線40は、15重量パーセントの粗いグラファイト(曲線30の製品の製造に使用するものと同一)および、5重量パーセントの本明細書に記載する細かいグラファイトからなる上乗せ添加した細孔形成剤の混合物を用いて製造した、12.1μmのMPSを有するコージエライト製品を表している。
図7における曲線は、粗いグラファイトの一部を細かいグラファイトに置き換えることによって、細孔径分布を、MPS=12.9(曲線40)からMPS=12.1(曲線30)に移動することができることを示している。データは、細孔形成材料の粗い粒子含量が高い場合には、細かい細孔形成剤のバッチへの添加は、製品における細孔径分布を調整し、所望のMPSを得るために用いることができることを示唆している。その逆もまた当てはまる。細孔形成材料の細かい粒子の含量が高い場合には、必要に応じて、粗い細孔形成材料を添加することにより、細孔径分布を調整することができる。
【0032】
さらなる実施の形態では、3つのレベルの細孔形成剤の粒径を用いて、細孔径を制御することができる。この実施の形態は、対象を、製品の細孔径分布の細かいまたは粗い末端の方向にシフトさせることができる。この実施の形態は、製造手順の修正を可能にし、それによって、第1の比の2種類の細孔形成剤を選択することにより、細孔形成剤の粒子分布を稀に調整し、かつ、第1の比の2種類の細孔形成剤を第3の細孔形成剤と比演算または混合することによって、または細孔形成剤の第2の組合せの使用によって、さらに頻繁に微調整することによりシフトさせる。この第2の取り組みの実用性の一例は、粗いグラファイトとジャガイモデンプンの比を選択して、製品Bとは異なる製品Aの細孔構造を作り出すことであり、ここで、両製品は同一の焼成スケジュールで焼成される。両方とも、細孔形成剤としてグラファイトを有すると仮定すれば、微調整は、両製品の粗いおよび細かいグラファイトの比を変更しつつ、行うことができよう。
図6は、3つの細孔形成剤系を使用して製造することができる調整の一例である。サンプルの種類を下記表2に示す。
【表2】
【0033】
この例では、ジャガイモデンプン(「ps」)の添加は、基本的事例について、異なるメジアン細孔径を創出することによって、メジアン細孔径を低下させて、基準材料Aのメジアン細孔径とさらに厳密に適合させることを目的として、マスターバッチ材料B(基準の材料)に第1の調整を行うために用いられる。その後、D〜Gでラベルした細孔形成剤組成物のメジアン細孔径を、異なるレベルにさらに適合させるために、粗いおよび細かいグラファイトの比を変化させた。
図6は、表2の3種類の細孔形成剤系では、粗いグラファイトを細かいグラファイトで置換することから、ジャガイモデンプンは依然として変化せず、メジアン細孔は直線的に応答し、MPSは微粒子グラファイトの置換の増大に伴って低下することを例証している。上記系の使用は、さらに、異なる粒径分布の3種類以上の細孔形成材料を使用し、少なくとも2種類の細孔形成剤の比およびレベルを変化させることによって、さまざまな製品を作り出すことが可能であることを例証している。
【0034】
上記のように、2種類以上の細孔形成剤の比の変化は、製品を形成した生産からより早く結果を得るために焼成プロセスの促進を使用する、より早い応答時間を得るために実験室規模の材料予見プロセスを使用する、または、原料およびプロセス属性に基づいた予測アルゴリズムを使用する、生産方法の間の物理的特性の測定を基礎とすることができる。最初の取り組みは、全製造時間がおよそ数週間でありうる、応答時間が最も遅い大型部品の不利点を有する。別の方法は、細孔形成剤の比の変化が要求されることを示唆する結果を得て、変化方法を決定することによって、時間を短縮する方法である。実験室規模のプロセスを用いて、市販製品の製造に使用されるものと同一の原料を用いたときより早く、材料バッチを調製することができる。さらなる実施の形態では、実験室規模の工程において、寸法的に、より小さいサイズの製品サンプルを作り、未焼成体から最終製品へと焼成することができる。寸法的に小さいサンプルは、その小さい寸法に起因して、商業的に使用しているものと同一であるが、より短時間の温度プロファイルを使用した未焼成体の焼成を可能にし、結果として、実験室規模の方法を使用して、商業生産工程におけるリアルタイム調整を可能にする。
【0035】
ハニカム製品における細孔径分布は、製品の製造に使用するすべての材料の結果である。製品の製造に使用する材料(タルク、結合剤および無機材料、ならびに細孔形成剤)の1つ以上の粒径分布を変化させ、これが製品における細孔径分布を変化させうることから、細孔径分布は、しばしば、変化しうる。より細かい、またはより粗い細孔形成剤の添加による、製品の製造に使用する混合物中の細孔形成剤の調整は、場合によっては、製品を所望の値に戻す。細孔形成材料の比の利用は、変動の原因を決定するために、すべての材料の時間のかかる高価な解析を行う代わりに、主要な細孔形成剤のみの調整を可能にする。結果として、上述の方法は、CTE、MOR、E−mod、全水銀侵入およびD−因子などの他の重要なパラメータに実質的に影響を与えることなく、ハニカム基板のメジアン細孔径についての望ましい結果を得ることができる。本明細書に記載の方法を使用して、上記のように、他の特性に影響を及ぼすことなく、所望のメジアン細孔径を得ることができる。
【0036】
よって、多孔質のセラミック物品の製造方法であって、
複数のセラミック形成材料の第1の混合物を押出機に導入し、
ここで、前記第1の混合物は、第1の細孔形成剤の粒径分布を有する第1の細孔形成粉末(重量%A)、第2の細孔形成剤の粒径分布を有する第1の量の第2の細孔形成粉末(重量%B)、および粉末粒径分布を有する第1の量の第1のタイプの無機セラミック形成粉末(重量%C)を含み、
ここで、第1および第2の細孔形成粉末は、前記第1の混合物における第1の重量比(重量%A/重量%B)で存在し、前記第1および第2の粒径分布は互いに異なり;
前記第1の混合物を押出機内に導入し;
前記第1の混合物の少なくとも一部を第1の押出成形物へと押出成形し;
前記第1の押出成形物の少なくとも一部を焼成して第1の多孔質のセラミック体を形成し;
前記第1の多孔質のセラミック体の細孔径分布を測定し、前記細孔径分布が調整を必要とする場合には、
前記第1および第2の細孔形成粉末を、それぞれの量(重量%D、重量%E)で提供することによって前記第1の混合物を改質し、結果的に、前記第1の重量比とは異なる第2の重量比(重量%D/重量%E)を生じ、第1の無機セラミック形成粉末に対する重量%D/重量%Eの比で細孔形成剤を添加および混合して第2の混合物を形成し;
前記第2の混合物を前記押出機に導入し;
前記第2の混合物の少なくとも一部を第2の押出成形物へと押出成形し;
前記第2の押出成形物の少なくとも一部を焼成して第2の多孔質のセラミック体を形成し;
前記第2の多孔質のセラミック体の細孔径分布を測定して前記細孔径分布を決定する、各工程を有する、多孔質のセラミック物品の製造方法が記載される。前述の方法を使用して、第1および第2のセラミック体のCTE、MOR、EMOD、D−因子および全多孔性は、実質的に互いに不変でありうる。結合剤、滑剤および液体(例えば、水)などの他の材料は、押出成形されたバッチ組成物内に存在していて構わない。
【0037】
第1のタイプの無機セラミック形成粉末は、それぞれ、コージエライトおよびチタン酸アルミニウム基板を形成するのに用いられる、コージエライト形成無機粉末およびチタン酸アルミニウム形成粉末からなる群より選択される。コージエライトおよびチタン酸アルミニウム基板を製造するのに用いられる無機材料の種類は前述の通りであり、その中に含まれる参考文献および他の参考文献は、当業者には周知であろう。ここで教示される細孔径を調節する方法および分布は、参照することによりその教示が本明細書に取り込まれる米国特許第6,238,618号明細書に記載されるような多孔質のムライトセラミック体の製造にも用いることができる。ムライトセラミック体は、シリカ(SIO
2)、アルミナ(Al
2O
3)および水膨潤粘土(マグネシア(MgO)源)、結合剤(例えば、限定はしないが、ヒドロキシメチルセルロースなどのメチルセルロースおよびメチルセルロース誘導体からなる群より選択されるセルロースエーテル結合剤)、および米国特許第6,238,618号明細書に教示される他の物質を含む、無機粉末から形成される。シリカおよびアルミナを混合およびか焼してムライトを形成し、これを粉末化する。ムライト粉末を、次に、水で膨潤させた粘土(例えば、限定はしないが、ベントナイト型のモンモリロナイト粘土)と水で混合し、得られた配合物を緊密混合する。結合剤、界面活性剤(例えば限定はしないが、ステアリン酸またはステアリン酸ナトリウム)および水をムライト−粘土混合物に加えて、ムライトバッチ混合物の形態で完全に混合し、これを任意の従来のセラミック成形法(例えば、押出成形、圧力鋳造、射出成形など)によって未焼成体へと成形し、焼成して、ムライトセラミック材料を形成することができる。
【0038】
製造方法では、第1の多孔質のセラミック体の全多孔性を測定し、必要に応じて、細孔形成剤の第2の混合物、重量%D/重量%Eを、第1の混合物の無機材料に加えて、バッチ材料の第2の混合物を形成し、これを次に押出成形および焼成して、第2の多孔質のセラミック体を形成する。第2の多孔質のセラミック体の細孔径分布を決定し、分布が所望の限度である場合には、押出成形を続ける。加えて、第1の無機粉末の粒径分布が変化した場合には、無機粉末の粒径分布における変化は、第2の重量比、重量%D/重量%Eの決定に使用することができる。焼成した第2の多孔質のセラミック体の細孔径分布が、第2の混合物の添加後においても、目標とした細孔径分布の範囲外にある場合には、選択された重量比における細孔形成剤のさらなる添加、および必要な場合には無機粉末の添加も行うことができる。第1および第2の細孔形成粉末は、グラファイト、活性炭、デンプン、発泡樹脂、アクリル系ビーズ、メタクリル酸ビーズ、小麦粉、およびフェノール樹脂からなる群より選択される。1つの実施の形態では、第1および第2の細孔形成粉末は、グラファイトおよびジャガイモデンプンからなる群より選択される。
【0039】
CTE、MOR、E−MOD、全水銀侵入およびD−因子を実質的に変化させることなく、ハニカム基板における細孔径を調整する方法もまた本明細書に開示される。本方法は、
選択原料をバッチ化して、選択されたハニカム基板を形成するのに適した材料バッチを形成し;
前記バッチ材料から未焼成体を形成し;
前記未焼成体を焼成してハニカム基板を形成する;
各工程を有してなり、ここで、
前記バッチは、選択された粒径分布を有する炭素系の基準の細孔形成材料を含み、
少なくとも1つの追加の細孔形成材料は、ハニカム基板における細孔径分布を制御するために異なる粒径分布を有し、
前記選択された基準の細孔形成材料および少なくとも1つの追加の細孔形成材料は、選択された比でバッチに加えられる。基準の細孔形成剤および少なくとも1種類の追加の細孔形成剤を含むハニカム基板のCTE、MOR、EMOD、全侵入およびD−因子は、少なくとも1種類の追加の細孔形成剤の存在なしに、同一の選択されたバッチ化原料から調製されたハニカム基板と比較して実質的に不変であることが判明した。この方法に従って製造されたハニカム基板およびフィルタは、コージエライト基板およびチタン酸アルミニウム基板からなる群より選択される。コージエライトおよびチタン酸アルミニウム・ハニカム基板は、当業者に既知のコージエライトおよびチタン酸アルミニウム基板に関する引用文献および他の参考文献を含む、本明細書に記載される任意の組成物のものでありうる。本明細書に開示される方法は、ムライトの生産に使用することもできる。
【0040】
細孔形成材料は、グラファイト、活性炭、発泡樹脂、アクリル系ビーズ、メタクリル酸ビーズ、小麦粉、デンプン、フェノール樹脂、および当技術分野で既知の他の細孔形成剤からなる群より選択される。特定の実施の形態では、細孔形成材料は、グラファイトおよびジャガイモデンプンからなる群より選択される。細孔径を調節する方法の1つの実施の形態では、バッチは、異なる粒径の2種類の細孔形成剤を含み、前記細孔形成剤はグラファイト細孔形成剤であり;第1の、または基準の細孔形成剤は、選択された粒径分布を有する粗い粒子の細孔形成剤であり、第2の細孔形成剤は、基準のコア形成剤の粒径分布に応じて、基準のコア形成剤より小さい粒子からなる細かい粒子の細孔形成剤、または、基準の細孔形成剤より大きい粒子からなる細孔形成剤のいずれかである。細孔径を調節する方法の別の実施の形態では、バッチは異なる粒径の3種類の細孔形成剤を含み、前記細孔形成剤はグラファイト細孔形成剤であり;第1の、または基準の細孔形成剤は選択された粒径分布を有する粗い粒子の細孔形成剤であり、第2の細孔形成剤は、基準のコア形成剤より小さい粒子からなるより細かい粒子の細孔形成剤であり、第3の細孔形成剤は、基準の細孔形成剤より大きい粒子からなるより粗い細孔形成剤である。
【0041】
本開示の1つの実施の形態では、異なる粒径の材料の使用は、極端な場合には、バッチ中の各成分を含む、多様なバッチ材料のそれぞれの比の管理にまで及ぶ場合がある。この実施の形態は、最終製品における細孔径の変動を、個々の製品バッチに必要とされる正確な範囲内で存在するように、管理することの利点を提供する。しかしながら、この取り組みによって、他の重要な製品の特性が望ましくない方向に向かわないことに留意が必要である。一例として、
図8および9は、それぞれ、シリカおよびタルクの粒径の変化の影響を例証している。表3は、それぞれ、
図8および9において使用した、粗いおよび細かい、シリカおよびタルクの粒径分布を示している。
【表3】
【0042】
両方の事例において、シリカおよびタルクの粒径への変化は、焼成した製品のメジアン細孔径に強い影響を与えたが、それらは、製品のCTEに与える望ましくないであろう影響も有していた。粗粒子から微粒子へとシリカの比を変えた
図3は、強い線形のメジアン細孔径の応答(破線)および強い線形のCTEの応答(実線)を示している。0/100の粗シリカまたはタルクは、それぞれの材料についての「対照」である。シリカの粗さが増大するにつれて、メジアン細孔径は増大し、CTEは低下する。
図4は、粗粒子から微粒子へとタルクの比が変化する場合に、同様の結果を示し、強い線形のメジアン細孔径の応答(破線)および強い線形のCTEの応答(実線)も存在し、タルク粗さが増大するにつれてメジアン細孔径も増大することから、CTEは低下する。本明細書に詳細に記載される細孔形成剤を調整する方法を使用して、細かいおよび粗いシリカまたはタルクの比を使用して、製品を製造するために通常用いられるよりも大きいまたは小さい粒径分布を有する原料について補正を行うことによって、CTEを調整することができる。
【0043】
本開示の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および変形が本開示になされうることは、当業者には明らかであろう。よって、本開示は、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入ることを条件に、本開示の変更および変形にも及ぶことが意図されている。