特許第5808249号(P5808249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5808249プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いる抗体の単離および精製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808249
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いる抗体の単離および精製
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20151021BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20151021BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20151021BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20151021BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20151021BHJP
【FI】
   C07K1/16ZNA
   A61K39/395 K
   !C07K16/00
   !C07K16/24
   !C07K16/46
【請求項の数】27
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2011-532332(P2011-532332)
(86)(22)【出願日】2009年10月20日
(65)【公表番号】特表2012-506383(P2012-506383A)
(43)【公表日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】US2009061329
(87)【国際公開番号】WO2010141039
(87)【国際公開日】20101209
【審査請求日】2012年10月12日
(31)【優先権主張番号】61/196,753
(32)【優先日】2008年10月20日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒツクマン,ロバート・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン,チン
(72)【発明者】
【氏名】ウイード,シエリル・エル
(72)【発明者】
【氏名】エニス,スコツト・テイー
(72)【発明者】
【氏名】ペリリ−パーマー,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミン
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−509658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0178099(US,A1)
【文献】 米国特許第06955917(US,B1)
【文献】 国際公開第2007/117490(WO,A1)
【文献】 ISHIHARA, T. et al.,"ACCELERATED PURIFICATION PROCESS DEVELOPMENT OF MONOCLONAL ANTIBODIES FOR SHORTENING TIME TO CLINIC DESIGN AND CASE STUDY OF CHROMATOGRAPHY PROCESSES.",JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY A,2007年11月 7日,Vol.1176, No.1-2,P.149-156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体もしくはその抗原結合部位および少なくとも1つの宿主細胞タンパク質(HCP)を含んだ試料混合物から、宿主細胞タンパク質(HCP)減少型抗体またはその抗原結合部位を生成する方法であって、
(a)前記試料混合物をpHの調整に供し、これによって一次回収試料を形成するステップであり、前記試料混合物のpHが3から4の範囲に調節されることで前記一次回収試料を形成するステップ、
(b)前記一次回収試料を6.0から8のpHに調整し、続いて前記一次回収試料をアフィニティークロマトグラフィー樹脂に接触させ、アフィニティークロマトグラフィー試料を収集するステップ、
(c)前記アフィニティークロマトグラフィー試料をイオン交換樹脂に接触させ、イオン交換試料を収集するステップ、
(d)前記イオン交換試料を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂に接触させ、HIC試料を収集するステップであり、前記HIC試料が宿主細胞タンパク質(HCP)減少型抗体調製物またはその抗原結合部位を含むステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記pHの調節が、適した酸と前記試料混合物とを混合することによって達成され、前記適した酸が、クエン酸、酢酸、およびカプリル酸から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アフィニティークロマトグラフィー樹脂が、プロテインA樹脂である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロテインA樹脂が、架橋結合したアガロースビーズに結合したプロテインAを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン交換試料が陽イオン交換樹脂に適用され、かつ、陽イオン交換試料は、前記疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂への適用よりも前に収集される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記陽イオン交換樹脂が、置換されたマトリックスを含み、その置換基は、SO3−、カルボキシメチル、スルホエチル、スルホプロピル、リン酸、およびスルホン酸から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記置換基がSOである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記陰イオン交換樹脂が、置換されたマトリックスを含み、その置換基は、ジエチルアミノエチル、4級アミノエチル、および4級アミン基から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記置換基が4級アミン基である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン交換ステップが、第1のイオン交換ステップおよび第2のイオン交換ステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HIC樹脂が、置換されたマトリックスを含み、その置換基が1つまたは複数の疎水基からなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記置換基が、アルキル基、アリル基およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記置換基が、3-オクトキシプロパン-1,2-ジオール、エーテル、プロピル、メチル、フェニル、およびブチルから成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
樹脂が、フェニル置換基を含んだアガロースマトリックスを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記HIC試料を濾過に供してウイルス粒子を除去し、バッファー交換を促進させる、濾過ステップをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
調製物が、抗IL−12抗体もしくはこの抗原結合部分または抗TNFα抗体もしくはこの抗原結合部分を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
調製物が、抗IL−12抗体またはこの抗原結合部分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
調製物が、抗TNFα抗体またはこの抗原結合部分である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗IL−12抗体またはこの抗原結合部分が、ヒト化抗体、キメラ抗体または多価抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記抗TNFα抗体またはこの抗原結合部分が、ヒト化抗体、キメラ抗体または多価抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記抗IL−12抗体またはこの抗原結合部分がヒト化抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抗TNFα抗体またはこの抗原結合部分がヒト化抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記調製物がHCPを実質的に含まない、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
深層濾過をさらに含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記アフィニティークロマトグラフィー試料を収集する前に、前記アフィニティークロマトグラフィー樹脂を、下記
(i)pH6で、0.5M NaClおよび20mM クエン酸/クエン酸ナトリウムを含んだバッファー
(ii)pH5で、0.5M NaClおよび25mM 酢酸ナトリウムを含んだバッファー、ならびに
(iii)pH5.5で、0.5M NaClおよび25mM 酢酸ナトリウムを含んだバッファー
からなる群から選択されるバッファーで洗浄することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年10月20日に出願した米国仮出願第61/196,753号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
発酵培養により産生される医薬品グレードのモノクローナル抗体のための精製工程は、典型的に4つの基本ステップを含む。これらのステップは、(1)収集/清澄化−発酵培養からの宿主細胞の分離、(2)捕獲−清澄化した収集物中の大部分の成分からの抗体の分離、(3)高純度精製−残留の宿主細胞混入物および凝集体の除去ならびに(4)処方−安定性および寿命が最大限得られるように最適な担体中に抗体を配置するステップを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらのステップは、医薬的状況における使用に十分な純度の抗体組成物を必ずしももたらしていない場合が多い。医薬的使用に適する十分に純粋な形態で、対象とする抗体の製造方法および精製方法に対する現在のニーズが存在する。本発明は、このようなニーズに対処する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、試料マトリックスから抗体を単離および精製するための方法に関する。ある種の態様では、本発明は、アフィニティークロマトグラフィー、好ましくはプロテインAクロマトグラフィーを採用する抗体精製の方法に関する。具体的な態様では、本明細書における方法は、酸不活性化ステップ、アフィニティークロマトグラフィーステップおよび1つ以上の追加のクロマトグラフィーおよび/または濾過ステップを採用する。クロマトグラフィーステップは、イオン交換クロマトグラフィーおよび/または疎水性相互作用クロマトグラフィーの1つ以上のステップを含むことができる。さらに、本発明は、本明細書に記載の方法によって精製された1つ以上の抗体を含む医薬組成物に関する。
【0005】
1つの実施形態または本発明は、得られた抗体組成物が、宿主細胞タンパク質(「HCP」)を実質的に含まないように、試料マトリックスから抗体またはこれらの抗原結合部分を精製する方法に関する。1つの態様では、試料マトリックス(または単に「試料」)は、細胞株収集物を含み、前記細胞株は、本発明の特異抗体を産生するために採用する。特定の態様では、試料マトリックスは、抗IL−12抗体を産生するために使用した細胞株から調製し、別の態様では、試料マトリックスは、抗TNFα抗体を産生するために使用した細胞株から調製し、別の態様では、試料マトリックスは、抗IL−18抗体を産生するために使用した細胞株から調製する。
【0006】
本発明の1つの方法は、対象とする推定上の抗体またはこれらの抗原結合部分を含む試料マトリックスについて、pH調整するステップを含む。1つの態様では、pHを酸性pHに調整する。適したpHの例は、約3と5の間であり、好ましくは約3.5である。この一次回収は、1つには、pH感受性ウイルスを減少または不活性化するために実施される。ウイルスの減少および/不活性化に加えて、酸性条件は、細胞および細胞残骸の除去を促進し、こうして一次回収試料を形成する。適した期間経過後、pHは、より中性または塩基性pHに調整でき、一次回収試料を、アフィニティークロマトグラフィー、好ましくはプロテインAクロマトグラフィーに供する。1つの態様では、アフィニティークロマトグラフィー試料を収集し、イオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィーなどの続くクロマトグラフィーステップにさらに供する。
【0007】
1つの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーステップは、一次回収試料を、適したアフィニティークロマトグラフィー支持体を含むカラムに供するステップを含む。かかるクロマトグラフィー支持体の非限定的な例には、限定されるものではないが、プロテインA樹脂、プロテインG樹脂、対象とする抗体を産生した抗原を含むアフィニティー支持体およびFc結合タンパク質を含むアフィニティー支持体が挙げられる。プロテインA樹脂は、抗体(IgG)のアフィニティー精製および単離に有用である。1つの態様では、プロテインAカラムは、試料負荷の前に適したバッファーで平衡化する。適したバッファーの例は、pHおよそ7.2のトリス/NaClバッファーである。この平衡化に続いて、試料をカラム上に負荷することができる。カラムの負荷に続いて、カラムは、例えば平衡化バッファーを用いて、1回または複数回洗浄することができる。異なるバッファーを採用する洗浄を含む他の洗浄は、カラムを溶出する前に用いることができる。プロテインAカラムは、次いで適切な溶出バッファーを用いて溶出することができる。適した溶出バッファーの例は、pHおよそ3.5の酢酸/NaClバッファーである。溶出液は、当業者によく知られている技法を用いてモニターすることができる。例えば、OD280での吸光度にしたがうことができる。対象とする溶出画分(複数可)は、次いでさらなる処理のために調製することができる。
【0008】
1つの実施形態では、イオン交換ステップは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーに続く。このイオン交換ステップは、陽イオンもしくは陰イオン交換または両方の組合せのいずれかであってよい。このステップは、単一のイオン交換手順であってよく、または陽イオン交換ステップに続いて陰イオン交換ステップまたはその逆などの複数のイオン交換ステップを含むこともできる。1つの態様では、イオン交換ステップは、1つのステップの手順である。別の態様では、イオン交換ステップは、2つのステップのイオン交換工程を含む。適した陽イオン交換カラムは、固定相が陰イオン基を含むカラムである。かかるカラムの例は、Fractogel(商標)SOである。このイオン交換捕獲クロマトグラフィーステップにより、試料からの抗体の単離が促進される。適した陰イオン交換カラムは、固定相が陽イオン基を含むカラムである。かかるカラムの例は、Q Sepharose(商標)カラムである。1つ以上のイオン交換ステップは、宿主細胞タンパク質およびDNAならびに適用できる場合はアフィニティーマトリックスタンパク質などの不純物を減少させることによって抗体をさらに単離する。この陰イオン交換手順は、クロマトグラフィーのフロースルー様式であり、対象とする抗体は、陰イオン交換樹脂(または固定相)と相互作用または結合しない。しかし、多くの不純物は、陰イオン交換樹脂と相互作用および結合する。特定の態様では、イオン交換ステップは、陰イオン交換クロマトグラフィーである。
【0009】
アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、試料バッファーのpHおよびイオン強度を調整することによってイオン交換のために調製する。例えば、アフィニティー溶出液は、1Mトリスバッファー中で約6.0から約8.5のpHに調整することができる。試料(アフィニティー溶出液)をイオン交換カラム上に負荷する前に、カラムは、適したバッファーを用いて平衡化することができる。適したバッファーの例は、約6.0から約8のpHを有するトリス/NaClバッファーである。平衡化に続いて、カラムに、アフィニティー溶出液を負荷することができる。負荷に続いて、カラムは、適したバッファーを用いて1回または複数回洗浄することができる。適したバッファーの例は、平衡バッファー自体である。フロースルーの収集は、例えば、吸光度(OD280)が約0.2AU以上に上昇するときに開始することができる。
【0010】
ある種の実施形態では、本方法はさらなるステップを採用する。このステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)の使用を含む。適したカラムは、固定相が疎水基を含むものである。かかるカラムの例は、phenyl Sepharose(商標)カラムである。対象とする抗体が、単離/精製工程の間に凝集体を形成した可能性がある。この疎水性クロマトグラフィーステップにより、これらの凝集の排除が促進される。これはまた、不純物の除去にも役立つ。この手順は、抗体(またはこれらの凝集)と疎水性カラムとの相互作用を促進する高塩濃度バッファーを使用する。カラムは、より低い濃度の塩を用いて溶出する。
【0011】
別の実施形態では、HIC溶出液は、Ultipor DV20(商標)フィルターなどのウイルス除去フィルターを用いて濾過する。この手順は、フェニル溶出液からウイルス粒子を分離して、ウイルス(存在する場合)の量を安全レベルに減少させる。当業者によく知られているフィルターをこの実施形態に使用することができる。
【0012】
得られた試料産物における対象とする抗体の純度は、当業者によく知られている方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、Poros(商標)A HPLCアッセイ、HCP ELISA、プロテインA ELISAおよびウェスタンブロット解析を用いて解析することができる。
【0013】
さらなる別の実施形態では、本発明は、単離された抗体またはこれらの抗原結合部分および許容される担体を含む、1つ以上の医薬組成物に関する。別の態様では、組成物は、1つ以上の医薬品をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】抗IL−12抗体(ABT−847)の非限定的な例の重鎖および軽鎖可変領域の配列を開示する図である。
図2】抗IL−18抗体(ABT−325)の非限定的な例の重鎖および軽鎖可変領域の配列を開示する図である。
図3】抗TNFα抗体(アダリムマブ)の非限定的な例の重鎖および軽鎖可変領域の配列を開示する図である。
図4】抗IL−12抗体を捕獲し、一重および二重軽鎖のフラグメント、CHO宿主細胞タンパク質(HCP)ならびにDNAなどの産物および工程関連不純物を減少させるために、MabSelect(商標)プロテインAクロマトグラフィーを使用した後の、産物純度を示す、300Lのバイオリアクターから得た代表的なクロマトグラムを表す図である。
図5】MabSelect(商標)の洗浄条件の評価を表す図である。
図6】MabSelect(商標)溶出液をpH8および7mS/cmの伝導率に調整した後に得られた沈殿物のポリアクリルアミドゲルの写真である。
図7】300LのバイオリアクタースケールのQ Sepharose(商標)FFクロマトグラフィーカラムの代表的なフロースルー洗浄プロファイルを表す図である。
図8】300LのバイオリアクタースケールのPhenyl Sepharose(商標)HPクロマトグラフィーカラムの代表的な溶出プロファイルを表す図である。
図9】MabSelect(商標)樹脂について10%ブレークスルーポイントが、樹脂1Lにつき抗体37.4gのときであると同定される場合の動的結合容量アッセイの結果を表す図である。
図10】プロテインA方法とAY−04方法の間における中間産物の差を比較するために実施したポリアクリルアミドゲルの写真である。各試料の抗体2μgを負荷した。
図11】溶出pHに対するMabSelect(商標)アダリムマブ回収収率を表す図である。図は、2.5から3.8の範囲の溶出pHについて少なくとも90%の収率が得られ、収率の有意な低下がpH4で起こることを実際に示す。
図12】溶出pHおよびインキュベーション時間に対するアダリムマブ単量体の回収を比較するアッセイの結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、試料マトリックスから抗体を単離および精製するための方法に関する。本発明の1つの態様は、抗体精製の様々なステップで生成した試料のウイルスの減少/不活性化に関する。特定の態様では、本明細書における方法は、酸によるウイルスの減少/不活性化ステップに続き、1つ以上のクロマトグラフィーステップを採用する。クロマトグラフィーステップは、1つ以上の次のクロマトグラフィー手順:イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーを含むことができる。さらに、本発明は、本明細書に記載の方法によって精製された1つ以上の抗体を含む医薬組成物に関する。
【0016】
明確にするために、限定されるものではないが、この詳細な説明は、次の従属部に分割される:
1.定義、
2.抗体の生成、
3.抗体の産生、
4.抗体の精製、
5.試料純度をアッセイする方法、
6.さらなる修飾、
7.医薬組成物および
8.抗体の使用
【0017】
1.定義
本発明をより容易に理解するために、ある種の用語を最初に定義する。
【0018】
用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖から成る免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖の可変領域(本明細書でHCVRまたはVHと省略される)および重鎖の定常領域(CH)から成る。重鎖の定常領域は、3つのドメイン、すなわちCH1、CH2およびCH3から成る。各軽鎖は、軽鎖の可変領域(本明細書でLCVRまたはVLと省略される)および軽鎖の定常領域から成る。軽鎖の定常領域は、1つのドメイン、すなわちCLから成る。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存される領域が散在し、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。
【0019】
抗体の「抗原結合部分」(または「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、hIL−12、hTNFαまたはhIL−18)と特異的に結合する能力を保持する抗体のフラグメントを含む。抗体の抗原結合の機能は、完全長抗体のフラグメントによって果たせることが示された。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合性フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント、すなわちVL、VH、CLおよびCH1ドメインを含む1価のフラグメント、(ii)F(ab’)フラグメント、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント、(iii)VHおよびCH1ドメインを含むFdフラグメント、(iv)抗体の単一の腕のVLおよびVHドメインを含むFvフラグメント、(v)VHドメインを含むdAbフラグメント(Wardら(1989)Nature 341:544−546頁;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、すなわちVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて連結されることができ、合成リンカーによって、VLおよびVH領域対により一価の分子を形成できる単一タンパク質鎖としてそれらをつくることが可能になる(単一鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426頁およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883頁を参照されたい;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。かかる単一鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものとする。二重特異性抗体などの単一鎖抗体の他の形態も包含される。二重特異性抗体は、2価の二重特異的な抗体であり、VHおよびVLドメインが、単一ポリペプチド鎖上で発現するが、短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間で対にできないリンカーを用い、それによってドメインを別の鎖の相補性ドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位がつくられる(例えば、Holliger,P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448頁;Poljak,R.J.ら(1994)Structure 2:1121−1123頁を参照されたい;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。その上さらに、抗体またはこの抗原結合部分は、抗体または抗体部分と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドと共有または非共有結合によって形成される、より大きな免疫接着分子の一部であってよい。かかる免疫接着分子の例には、ストレプトアビジンのコア領域を用いて四量体のscFv分子をつくること(Kipriyanov,S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93−101頁;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)、およびシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグを用いて2価のビオチン化scFv分子をつくること(Kipriyanov,S.M.ら(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058頁;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)が挙げられる。FabおよびF(ab’)2フラグメントなどの抗体部分は、全抗体のそれぞれに、パパインまたはペプシン消化などの従来技法を用いて、全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、本明細書に記載のような標準的な組換えDNA技法を用いて得ることができる。1つの態様では、抗原結合部分は、完全ドメインまたは完全ドメインの対である。
【0020】
表現「ヒトインターロイキン12」(本明細書でhIL−12またはIL−12と省略される)は、本明細書で使用する場合、マクロファージおよび樹状細胞によって主に分泌されるヒトサイトカインを含む。用語は、ジスルフィド架橋により一緒になって連結される35kDのサブユニット(p35)および40kDのサブユニット(p40)を含むヘテロ二量体タンパク質を含む。ヘテロ二量体タンパク質は、「p70サブユニット」と呼ばれる。ヒトIL−12の構造は、例えば、Kobayashiら(1989)J.Exp Med.170:827−845頁;Sederら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:10188−10192;Lingら(1995)J.Exp Med.154:116−127;Podlaskiら(1992)Arch.Biochem.Biophys.294:230−237にさらに記載されており、それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする。IL−12をコードする核酸は、GenBankアクセッション番号NM_000882として利用可能であり、ポリペプチド配列は、GenBankアクセッション番号NP_000873.2として利用可能である。用語ヒトIL−12は、標準的な組換え発現方法によって調製できる、組換えヒトIL−12(rhIL−12)を含むものとする。
【0021】
表現「ヒトインターロイキン18」(本明細書でhIL−18またはIL−18と省略される)は、本明細書で使用する場合、193個のアミノ酸の生物学的に不活性な前駆体タンパク質が最初に合成され、156個のアミノ酸の成熟タンパク質が、例えば限定されるものではないが、例えばカスパーゼ1またはカスパーゼ4による前駆体タンパク質の切断により産生され、T細胞増殖の同時刺激、NK細胞の細胞傷害性の増強、T細胞およびNK細胞によるIFN−γ産生の誘導ならびに1型ヘルパーT(Th1)の分化の強化を含む生物活性を示すヒトサイトカインを含む。IL−18をコードする核酸は、GenBankアクセッション番号NM_001562として利用可能であり、ポリペプチド配列は、GenBankアクセッション番号NP_001553として利用可能である。ヒトIL−18という用語は、標準的な組換え発現方法によって調製できる組換えヒトIL−18(rhIL−18)を含むものとする。
【0022】
表現「ヒト腫瘍壊死因子α」(本明細書でhTNFαまたはTNFαと省略される)は、脂質代謝、凝固、インスリン抵抗性および内皮機能への影響を有する単球/マクロファージによって主に分泌される多機能性炎症誘発性サイトカインである。TNFαは、17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモ三量体である。膜結合性の26kDのTNFα前駆体形態も存在する。これは、滑膜細胞および組織中のマクロファージに見出される。単球またはマクロファージ以外の細胞も、TNFαを産生する。例えば、ヒト非単球腫瘍細胞株は、TNFαならびにCD4+およびCD8+末梢血Tリンパ球を産生し、いくつかの培養したTおよびB細胞株はTNFαを産生する。TNFαをコードする核酸は、GenBankアクセッション番号X02910として利用可能であり、ポリペプチド配列は、 GenBankアクセッション番号CAA26669として利用可能である。ヒトTNFαという用語は、標準的な組換え発現方法によって調製できる組換えヒトTNFα(rhTNFα)を含むものとする。
【0023】
用語「Kabatの番号付け」、「Kabatの規定」および「Kabatの標識化」は、本明細書では互換的に使用される。当技術分野で認識されるこれらの用語は、抗体またはこの抗原結合部分の重鎖および軽鎖の可変領域における他のアミノ酸残基より可変的(すなわち、超可変的)であるアミノ酸残基を番号付けるシステムを指す(Kabatら(1971)Ann.NY Acad,Sci.190:382−391頁およびKabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。重鎖の可変領域について、超可変領域は、CDR1についてはアミノ酸位置31から35、CDR2についてはアミノ酸位置50から65、およびCDR3についてはアミノ酸位置95から102に及ぶ。軽鎖の可変領域について、超可変領域は、CDR1についてはアミノ酸位置24から34、CDR2についてはアミノ酸位置50から65、およびCDR3についてはアミノ酸位置89から97に及ぶ。
【0024】
用語「ヒト抗体」は、Kabatらによって記載されたような、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列に対応する、可変および定常領域を有する抗体を含む(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242を参照されたい)。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含むことができる。変異は、「選択的変異誘発アプローチ」を用いて導入することができる。ヒト抗体は、アミノ酸残基、例えば、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列によってコードされない活性増強型アミノ酸残基と置換された、少なくとも1つの位置を有することができる。ヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列の一部ではないアミノ酸残基と置換された、最大20個の位置を有することができる。他の実施形態では、最大10、最大5、最大3または最大2つの位置が置換される。1つの実施形態では、これらの置換は、CDR領域内である。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、CDR配列が、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来し、ヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含まないものとする。
【0025】
表現「選択的変異誘発アプローチ」は、少なくとも1つの適した選択的変異誘発位置、高頻度変異および/または接触位置で、CDRアミノ酸を選択し、個々に変異させることによって、抗体の活性を改善する方法を含む。「選択的に変異させた」ヒト抗体は、選択的変異誘発アプローチを用いて選択された位置での変異を含む抗体である。別の態様では、選択的変異誘発アプローチは、抗体の重鎖可変領域のCDR1、CDR2もしくはCDR3(下文ではそれぞれH1、H2およびH3)または軽鎖可変領域のCDR1、CDR2もしくはCDR3(下文ではそれぞれL1、L2およびL3という)において、選択された個々のアミノ酸残基を優先的に変異させる方法を提供するものとする。アミノ酸残基は、選択的変異誘発位置、接触位置または高頻度変異位置から選択することができる。個々のアミノ酸は、軽鎖または重鎖の可変領域におけるそれらの位置に基づいて選択される。高頻度変異位置が、接触位置であってもよいことを理解されたい。1つの態様では、選択的変異誘発アプローチは、「標的指向アプローチ」である。言葉「標的指向アプローチ」は、標的法、例えば、「群に対する標的指向アプローチ」または「CDRに対する標的指向アプローチ」において、抗体の重鎖可変領域のCDR1、CDR2もしくはCDR3または軽鎖可変領域のCDR1、CDR2もしくはCDR3において選択された個々のアミノ酸残基を変異させる方法を含むものとする。「群に対する標的指向アプローチ」では、特定の群における個々のアミノ酸残基は、群I(L3およびH3を含む)、II(H2およびL1を含む)およびIII(L2およびH1を含む)を含む選択的変異について標的にされ、前記群は、標的の優先度の順番で載せる。「CDRに対する標的指向アプローチ」では、特定のCDRにおける個々のアミノ酸は、次のような標的の優先度の順番:H3、L3、H2、L1、H1およびL2で、選択的変異のための標的にされる。選択されたアミノ酸残基を、例えば、少なくとも2つの他のアミノ酸残基に変異させ、抗体の活性への変異の効果を決定する。活性は、抗体の結合特異性/親和性、および/または抗体の中和効力の変化として測定する。選択的変異誘発アプローチは、ファージ提示、ヒトIgG生殖系列遺伝子を有するトランスジェニック動物、ヒトB細胞から単離したヒト抗体が挙げられる任意の供給源に由来する任意の抗体の最適化に使用することができることを理解されたい。選択的変異誘発アプローチは、ファージ提示技術を用いてさらに最適化できない抗体に置いて使用することができる。ファージ提示、ヒトIgG生殖系列遺伝子を有するトランスジェニック動物、ヒトB細胞から単離したヒト抗体が挙げられる任意の供給源由来の抗体を、選択的変異誘発アプローチの前または後に逆突然変異に供することができることを理解されたい。
【0026】
表現「組換えヒト抗体」は、宿主細胞に形質移入した組換え発現ベクターを用いて発現した抗体、組換え体から単離した抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリ、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離した抗体(例えば、Taylor,L.D.ら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295頁を参照されたい;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライスを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成もしくは単離した抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作成または単離するヒト抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列に由来する可変および定常領域を有する(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH公開番号91−3242を参照されたい)。しかし、ある種の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニック動物を使用するときは、インビボでの体細胞変異誘発)に供し、したがって組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVHおよびVL配列に由来および関連するが、インビボにおいて生殖系列のヒト抗体レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。しかし、ある種の実施形態では、かかる組換え抗体は、選択的変異誘発アプローチもしくは逆突然変異または両方の結果である。
【0027】
「単離した抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を含む(例えば、hIL−12と特異的に結合する単離した抗体は、hIL−12以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。hIL−12と特異的に結合する単離した抗体は、他の種由来のIL−12分子と結合することができる。さらに、単離した抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含み得ない。本発明に関連して精製できる適した抗IL−12抗体は、米国特許第6,914,128号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする)に開示され、限定されるものではないが、その特許においてJ695と同定され、続いてABT−874と同定された抗IL−12抗体が挙げられる。本発明に関連して精製および単離できる適した抗IL−18抗体は、USSN09/780,035および10/988,360に開示され、続いてABT−325として同定された抗体が挙げられる。適した抗TNFα抗体は、アダリムマブ(Abbott Laboratories)である。
【0028】
「中和抗体」(またはhIL−12活性を中和した抗体)は、hIL−12との結合により、hIL−12の生物活性の阻害をもたらす抗体を含む。hIL−12の生物活性のこの阻害は、フィトヘマグルチニン芽細胞増殖アッセイ(PHA)におけるフィトヘマグルチニンのヒト芽細胞増殖の阻害またはヒトIL−12受容体結合アッセイにおける受容体結合の阻害などの、hIL−12の生物活性の1つ以上の指標を測定することによって評価することができる。hIL−12の生物活性のこれらの指標は、当技術分野で既知のインビトロまたはインビボにおける1つ以上のいくつかの標準的なアッセイによって評価することができる。
【0029】
「中和抗体」(または「hIL−18活性を中和する抗体」)は、hIL−18との結合により、hIL−18の生物活性の阻害をもたらす抗体を含む。hIL−18の生物活性のこの阻害は、T細胞またはNK細胞によるIFNγ産生の誘導またはヒトIL−18受容体結合アッセイにおけるIL−18受容体結合の阻害などの、hIL−18生物活性の1つ以上の指標を測定することによって評価することができる。hIL−18生物活性のこれらの指標は、当技術分野で既知の1つ以上のいくつかの標準的なインビトロまたはインビボのアッセイによって評価することができる。
【0030】
用語「活性」は、例えば、IL−12抗原に結合する抗hIL−12抗体などの抗体の抗原に対する結合特異性/親和性、および/または例えば、hIL−12との結合により、hIL−12の生物活性を阻害する抗hIL−12抗体などの抗体の中和効力、例えば、PHA芽細胞増殖の阻害またはヒトIL−12受容体結合アッセイにおける受容体結合の阻害などの活性を含む。用語「活性」は、その抗原に対する抗IL−18抗体、例えばIL−18抗原に結合する抗hIL−18抗体の結合特異性/親和性、および/または例えば、hIL−18との結合により、hIL−18の生物活性を阻害する抗hIL−18抗体などの抗体の中和効力などの活性も含む。用語「活性」は、その抗原に対する抗TNFα抗体、例えばTNFα抗原に結合する抗TNFα抗体の結合特異性/親和性、および/または例えば、hTNFαとの結合により、hTNFαの生物活性を阻害する抗TNFα抗体などの抗体の中和効力などの活性も含む。
【0031】
表現「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,SwedenおよびPiscataway,N.J.)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムの生体特異的相互作用の解析を可能にする光学現象を含む。さらなる説明については、Jonsson,U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26頁;Jonsson,U.ら(1991)Biotechniques 11:620−627頁;Johnsson,B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8:125−131頁およびJohnnson,B.ら(1991)Anal.Biochem.198:268−277頁を参照されたい。それらの全体の教示が本明細書に組み込まれるものとする。
【0032】
用語「Koff」は、本明細書で使用する場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての解離速度定数を指すものとする。
【0033】
用語「Kd」は、本明細書で使用する場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を指すものとする。
【0034】
表現「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を含む。核酸分子は、単一鎖または二重鎖でよいが、1つの態様では、二重鎖DNAである。
【0035】
表現「単離した核酸分子」は、抗体または抗体部分(例えば、VH、VL、CDR3)、例えばhIL−12、hTNFαまたはhIL−18と結合する抗体または抗体部分をコードする核酸に関して本明細書で使用する場合、hIL−12、hTNFαまたはhIL−18以外の抗原と結合する抗体または抗体部分をコードする他のヌクレオチド配列を、該抗体または抗体部分をコードするヌクレオチド配列が含まない核酸分子であって、該他の配列が、天然ではヒトゲノムDNAにおける該核酸に隣接し得る核酸分子を含む。したがって、例えば、抗IL−12h抗体、抗TNFα抗体または抗hIL−18抗体のVH領域をコードする本発明の単離した核酸は、例えばIL−12、hTNFαまたはhIL−18以外の抗原と結合する他のVH領域をコードする他の配列を含まない。表現「単離した核酸分子」は、VHおよびVL領域が当該ダイアボディの配列以外の他の配列を含まないダイアボディなどの2価の二重特異性抗体をコードする配列を含むことも意図する。
【0036】
表現「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を含む。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫もいうものとすると理解されたい。変異または環境の影響のいずれかにより、後の世代である種の改変が起こり得るため、かかる子孫は、実際には親細胞と同一でない可能性があるが、本明細書で使用する場合、これらもなお、用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0037】
用語「改変」は、本明細書で使用する場合、抗体またはこの抗原結合部分における1つ以上のアミノ酸の変更を指すものとする。変更は、1つ以上の位置でアミノ酸を付加、置換または欠失させることによって生じさせることができる。変更は、PCR変異誘発などの既知の技法を用いて生じさせることができる。
【0038】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、基準値よりおよそ10−20%大きいまたは小さい範囲を指すものとする。ある種の環境では、当業者は、基準値の性質のため、用語「約」は、その値から10−20%より多くまたは少なく逸脱することを意味できると理解する。
【0039】
表現「ウイルスの減少/不活性化」は、本明細書で使用する場合、特定の試料中のウイルス粒子の数の低下(「減少」)および例えば、限定されるものではないが、特定の試料中のウイルス粒子の感染力または複製能などの活性の低下(「不活性化」)を指すものとする。ウイルス粒子の数および/または活性のかかる低下は、およそ約1%から約99%、好ましくは約20%から約99%、より好ましくは約30%から約99%、より好ましくは約40%から約99%、さらにより好ましくは約50%から約99%、さらにより好ましくは約60%から約99%、さらにより好ましくは約70%から約99%、さらにより好ましくは約80%から約99%、さらにより好ましくは約90%から約99%程度であってよい。ある種の非限定的な実施形態では、ウイルスの量は、精製した抗体産物中に少しでも存在すれば、そのウイルスについてID50(標的集団の50%に感染するウイルスの量)より少なく、好ましくはそのウイルスについてID50より少なくとも10倍少ない、より好ましくはそのウイルスについてID50より少なくとも100倍少ない、さらにより好ましくはそのウイルスについてID50より少なくとも1000倍少ない。
【0040】
表現「接触位置」は、26の既知の抗体−抗原構造のうち1つにおいて、抗原と接触するアミノ酸によって占められる抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のCDR1、CDR2またはCDR3におけるアミノ酸位置を含む。26の既知の解明された抗体−抗原複合体の構造のいずれかにおいて、CDRアミノ酸が抗原と接触すれば、そのときそのアミノ酸は接触位置を占めると考えることができる。接触位置は、抗原と接触するアミノ酸によって占められる確率が、非接触位置より高い。1つの態様では、接触位置は、26の構造の3つより多い構造において抗原と接触するアミノ酸を含むCDR位置である(>1.5%)。別の態様では、接触位置は、25の構造のうち8つより多い構造において抗原と接触するアミノ酸を含むCDR位置である(>32%)。
【0041】
2.抗体の生成
用語「抗体」は、このセクションで使用するとき、完全な抗体またはこの抗原結合フラグメントを指す。
【0042】
本開示の抗体は、対象とする抗原による動物の免疫化を含む様々な技法に続き、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495頁の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法によって生成させることができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を産生するための他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルス性または発癌性形質転換を採用することができる。
【0043】
ハイブリドーマを調製するための1つの好ましい動物系は、マウス系である。ハイブリドーマの産生は、非常によく確立された手順である。免疫化プロトコールおよび融合のために免疫化した脾細胞を単離するための技法は、当技術分野で既知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順も既知である。
【0044】
抗体は、好ましくは、ヒト、キメラまたはヒト化抗体であってよい。本開示のキメラまたはヒト化抗体は、上記のように調製された非ヒトモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖の免疫グロブリンをコードするDNAは、対象とする非ヒトハイブリドーマから得ることができ、標準的な分子生物学的技法を用いて、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作成するために、当技術分野で既知の方法を用いて、マウス可変領域を、ヒト定常領域に連結させることができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。ヒト化抗体を作成するために、当技術分野で既知の方法を用いて、マウスCDR領域を、ヒトフレームワークに挿入することができる(例えば、Winterらの米国特許第5,225,539号明細書ならびにQueenらの米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0045】
1つの非限定的な実施形態では、本開示の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。IL−12、TNFαまたはIL−18に対するかかるヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を保有するトランスジェニックまたはトランスクロモソミックマウスを用いて生成させることができる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスは、HuMAb Mouse(登録商標)(Medarex,Inc.)、KM Mouse(登録商標)(Medarex,Inc.)およびXenoMouse(登録商標)(Amgen)として本明細書で称されるマウスを含む。
【0046】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的なトランスクロモソミック動物系は、当技術分野で利用可能であり、抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体などの本開示の抗体を産生させるために使用することができる。例えば、「TCマウス」として称される、ヒト重鎖トランスクロモソームおよびヒト軽鎖トランスクロモソームの両方を保有するマウスを使用でき、かかるマウスは、Tomizukaら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727頁に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖トランスクロモソームを保有する雌ウシは、当技術分野で記載されており(例えば、Kuroiwaら(2002)Nature Biotechnology 20:889−894頁およびPCT出願WO2002/092812)、本開示の抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体を産生するために使用することができる。
【0047】
本明細書で開示される、抗IL−12抗体もしくはその抗体結合性部分、抗TNFα抗体もしくはその抗体結合性部分または抗IL−18抗体もしくはその抗体結合性部分、または抗IL−12関連抗体、抗TNFα関連抗体もしくは抗IL−18関連抗体を含むがこれらに限定されない本発明の組換えヒト抗体は、コンビナトリアル組換え抗体ライブラリ、例えば、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製したヒトVLおよびVHcDNAを用いて調製したscFvファージ提示ライブラリの選別によって単離することができる。かかるライブラリを調製および選別するための方法論は、当技術分野で既知である。ファージ提示ライブラリを作成するための市販のキット(例えば、その全体の教示が本明細書に組み込まれる、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01およびStratagene SurfZAP(商標)ファージ提示キット、カタログ番号240612)に加えて、抗体提示ライブラリの作成および選別の使用に特に適した方法および試薬の例は、例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号明細書;KangらのPCT出願WO92/18619;DowerらのPCT出願WO91/17271;WinterらのPCT出願WO92/20791;MarklandらのPCT出願WO92/15679;BreitlingらのPCT出願WO93/01288;McCaffertyらのPCT出願WO92/01047;GarrardらのPCT出願WO92/09690;Fuchsら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372頁;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85頁;Huseら(1989)Science 246:1275−1281頁;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554頁;Griffithsら(1993)EMBO J 12:725−734頁;Hawkinsら(1992)J Mol Biol 226:889−896頁;Clacksonら(1991)Nature 352:624−628頁;Gramら(1992)PNAS 89:3576−3580頁;Garrardら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377頁;Hoogenboomら(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137頁およびBarbasら(1991)PNAS 88:7978−7982頁で見出すことができ、その全体の教示が本明細書に組み込まれるものとする。
【0048】
本開示のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫化において生成できるようにヒト免疫細胞を再構築したSCIDマウスを用いて調製することもできる。かかるマウスは、例えば、Wilsonらの米国特許第5,476,996および5,698,767号明細書に記載されている。
【0049】
ある種の実施形態では、本発明の方法は、抗IL−12抗体および抗体部分、抗TNFα抗体および抗体部分または抗IL−18抗体および抗体部分、抗IL−12関連抗体および抗体部分、抗TNFα関連抗体および抗体部分または抗IL−18関連抗体および抗体部分、ならびに解離速度が低いhIL−12、hTNFαまたはhIL−18との高親和性結合および高中和能などの、抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体と同等の特性を有するヒト抗体および抗体部分を含む。1つの態様では、本発明は、共に表面プラズモン共鳴による測定にて約1×10−8M以下のKd速度定数および1×10−3s−1以下のKoff速度定数でhIL−12、hTNFαまたはhIL−18から解離する単離されたヒト抗体またはこの抗原結合部分を用いる治療を提供する。具体的な非限定的な実施形態では、本発明に従って精製した抗IL12抗体は、生理的条件下で、ABT−874とIL12との結合を競合的に阻害する。具体的な非限定的な実施形態では、本発明に従って精製した抗IL−18抗体は、生理的条件下で、ABT−325とIL−18との結合を競合的に阻害する。具体的な非限定的な実施形態では、本発明にしたがって精製された抗TNFα抗体は、生理的条件下で、アダリムマブとTNFαとの結合を競合的に阻害する。
【0050】
本発明のさらなる別の実施形態では、限定されるものではないが、抗IL−12抗体もしくはこのフラグメント、抗TNFα抗体もしくはこのフラグメントまたは抗IL−18抗体もしくはこのフラグメントなどの抗体またはこのフラグメントは、変化させることができ、抗体の定常領域が、非改変の抗体と比較して、少なくとも1つの定常領域媒介性生物学的エフェクター機能を低下させるように改変される。本発明の抗体がFc受容体との低下した結合性を示すように、それを改変するために、抗体の免疫グロブリンの定常領域セグメントを、Fc受容体(FcR)相互作用に必要な特定の領域で変異させることができる(例えば、CanfieldおよびMorrison(1991)J.Exp.Med.173:1483−1491頁、ならびにLundら(1991)J.of Immunol.147:2657−2662頁を参照されたい;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。抗体のFcR結合能の低下により、オプソニン作用および食作用および抗原依存性細胞毒性などの、FcR相互作用に頼る他のエフェクター機能も低下させることができる。
【0051】
3.抗体の産生
本発明の抗体を発現させるために、遺伝子が、転写および翻訳調節配列に操作的に連結されるように、部分的または完全長軽鎖および重鎖をコードするDNAは、1つ以上の発現ベクターに挿入される(例えば、米国特許第6,914,128号明細書を参照されたい;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。この文脈では、用語「操作的に連結される」は、ベクター内の転写および翻訳調節配列が、それらが目的とする抗体遺伝子の転写および翻訳の制御機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中にライゲートされることを意味すると意図する。発現ベクターおよび発現調節配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体の軽鎖遺伝子および抗体の重鎖遺伝子は、別々のベクター中に挿入でき、またはより典型的には、両遺伝子は、同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位がなければ平滑末端のライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。抗体または抗体関連軽鎖または重鎖配列の挿入の前に、発現ベクターは、抗体の定常領域配列を既に保有することができる。例えば、抗IL−12抗体、抗TNFα抗体もしくは抗IL−18抗体または抗IL−12抗体関連VHおよびVL配列、抗TNFα抗体関連VHおよびVL配列もしくは抗IL−18抗体関連VHおよびVL配列を、完全長抗体遺伝子に転換する1つのアプローチは、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメント(複数可)に操作的に連結し、VLセグメントが、ベクター内のCLセグメントに操作的に連結するように、重鎖の定常および軽鎖の定常領域をそれぞれ既にコードする発現ベクター中にそれらを挿入することである。追加的または代替的には、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進させるシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクター中にクローニングさせることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンのシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってよい。
【0052】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を調節する1つ以上の制御配列を保有することができる。用語「制御配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。かかる制御配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されており、その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子によって決められることは、当業者に理解されよう。哺乳動物宿主細胞の発現に適した制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、サルウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞における高いタンパク質発現レベルを指示するウイルス性エレメントを含む。ウイルス性制御エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号明細書、Bellらによる米国特許第4,510,245号明細書およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号明細書を参照されたい。それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0053】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中のベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)などの1つ以上の追加の配列および/または選択可能なマーカー遺伝子を保有することができる。選択可能なマーカー遺伝子により、ベクターが導入された宿主細胞の選択が促進される(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216、4,634,665および5,179,017号明細書を参照されたい;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞において、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与える。適した選択可能なマーカー遺伝子には、(メトトレキサートの選択/増幅を用いるdhfr宿主細胞の使用については)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子および(G418の選択については)ネオ遺伝子が挙げられる。
【0054】
本発明の抗体または抗体部分は、宿主細胞における免疫グロブリンの軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することができる。組換えで抗体を発現させるために、軽鎖および重鎖が、宿主細胞中で発現され、宿主細胞を培養する培地中に分泌され、抗体が培地から回収できるように、宿主細胞に、抗体の免疫グロブリンの軽鎖および重鎖をコードするDNAフラグメントを保有する1つ以上の組換え発現ベクターを形質移入する。抗体の重鎖および軽鎖遺伝子を得て、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組込み、ベクターを宿主細胞中に導入するために、標準的な組換えDNA方法論が使用され、これらは、その全体の教示が本明細書に組み込まれる、Sambrook、FritschおよびManiatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1989)、Ausubelら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates、(1989)ならびに米国特許第4,816,397&6,914,128号明細書などに記載されている。
【0055】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)は、標準的な技法によって宿主細胞中に形質移入される。用語「形質移入」の様々な形態は、原核または真核宿主細胞中への外来性DNAの導入に一般的に使用される幅広い様々な技法、例えば、電気穿孔法、カルシウム−リン酸沈殿、DEAE−デキストラン形質移入などを包含するものとする。原核または真核宿主細胞のいずれかにおいて、本発明の抗体を発現させることは理論上可能であるが、かかる真核細胞、特に哺乳動物細胞は、原核細胞に比べて、正確にフォールドされた免疫学的な活性抗体を会合および分泌しやすいため、哺乳動物宿主細胞などの真核細胞中での抗体の発現が適している。抗体遺伝子の原核生物の発現は、活性抗体の高収率の産生に効果がないことが報告された(BossおよびWood(1985)Immunology Today 6:12−13頁;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0056】
本明細書でベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、上記の原核生物、酵母またはより高等な真核生物である。この目的に適した真核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例として、例えばE.コリ(E.coli)などのエシュリキア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、例えばサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)などのサルモネラ属(Salmonella)、例えばセラチア・マルセセンス(Serratia marcescans)などのセラチア属(Serratia)およびシゲラ属(Shigella)などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)ならびにB.サブチリス(B.subtilis)およびB.リケニフォルミス(B.licheniformis)(例えば、1989年4月12日に出版されたDD266,710に開示されたB.リケニフォルミス41P)などのバチルス属(Bacilli)、P.アエルギノーサ(P.aeruginosa)などのシュードモナス属(Pseudomonas)ならびにストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。E.コリB、E.コリX1776(ATCC31,537)およびE.コリW3110(ATCC27,325)などの他の菌株が適しているが、宿主をクローニングする1つの適したE.コリは、E.コリ294(ATCC31,446)である。これらの例は、限定というよりむしろ実例となるものである。
【0057】
原核微生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物が、ベクターをコードするポリペプチドに適したクローニングまたは発現宿主である。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパン酵母が、より下等な真核宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかし、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);K.ラクティス(K.lactis)、K.フラジリス(K.fragilis)(ATCC12,424)、K.ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC16,045)、K.ウィケラミ(K.wickeramii)(ATCC24,178)、K.ワルティ(K.waltii)(ATCC56,500)、K.ドロソフィララム(K.drosophilarum)(ATCC36,906)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)およびK.マルキシアナス(K.marxianus)などのクリベロミセス属(Kluyveromyces)宿主;ヤロウィア属(yarrowia)(EP402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP183,070);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia)(EP 244,234);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);スクワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)などのスクワニオミセス属(Schwanniomyces);ならびに例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)ならびにA.ニデュランス(A.nidulans)およびA.ニガー(A.niger)などのアスペルギルス属(Aspergillus)宿主などの糸状菌などの多くの他の属、種および菌株が一般的に利用可能であり、本明細書に有用である。
【0058】
グリコシル化された抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株および変異体ならびにスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、アエデス・アエギプティ(Aedes aegypti)(蚊)、アエデス・アルボピクタス(Aedes albopictus)(蚊)、ドロソフィラ・メラノガスタ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)およびボンビクス・モリ(Bombyx mori)などの対応する許容昆虫宿主細胞が同定された。形質移入のための様々なウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異体およびボンビクス・モリNPVのBm−5菌株が公的に利用でき、かかるウイルスは、本発明に従う本明細書でのウイルスとして、特に、スポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質移入のために使用することができる。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。
【0059】
本発明の組換え抗体の発現に適した哺乳動物宿主細胞には、(例えば、KaufmanおよびSharp(1982)Mol.Biol.159:601−621頁に記載のようなDHFR選択可能なマーカーを用いて使用される、UrlaubおよびChasin、(1980)PNAS USA 77:4216−4220頁に記載のdhfr−CHO細胞を含み、それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主細胞中に導入する場合、宿主細胞中での抗体の発現または宿主細胞を増殖させる培養液中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって、抗体は産生される。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されるサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(懸濁培養物中での増殖のためにサブクローニングした293または293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.36:59頁(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216頁(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.23:243−251頁(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳房腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68頁(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞種株(Hep G2)であり、その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
宿主細胞は、抗体産生のために上記の発現またはクローニングベクターで形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修正された従来の栄養培地で培養する。
【0061】
抗体を産生するために使用する宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。HamのF10(商標)(Sigma)、Minimal Essential Medium(商標)((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびDulbeccoのModified EagleのMedium(商標)((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.58:44頁(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255頁(1980)、米国特許第4,767,704;4,657,866;4,927,762;4,560,655または5,122,469号明細書;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許第Re.30,985号明細書に記載の任意の培地を、宿主細胞用の培養液として使用でき、その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれる。任意のこれらの培地は、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン薬など)、微量元素(通常マイクロモーラーの範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義する)およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補充することができる。任意の他の必要な補充も、当業者に既知である適切な濃度で含むことができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に以前に使用したものであり、当業者には明白である。
【0062】
宿主細胞は、FabフラグメントまたはscFv分子などの、完全な抗体の部分を産生するために使用することもできる。上記の手順のバリエーションが、本発明の範囲内であることは理解されよう。例えば、ある種の実施形態では、宿主細胞に、本発明の抗体の軽鎖または重鎖のいずれか(両方ではない)をコードするDNAを形質移入することが望ましい場合がある。抗IL−12抗体に関して、IL−12、具体的にはhIL−12との結合に必要ではない軽鎖および重鎖のいずれかもしくは両方をコードするいくつかもしくは全てのDNA、または抗IL−18抗体に関して、IL−18、具体的にはhIL−18との結合に必要ではないDNA、または抗TNFα抗体に関して、TNFα、具体的にはhTNFαとの結合に必要ではないDNAを除去するために、組換えDNA技術も使用することができる。かかる切断されたDNA分子から発現された分子も、本発明の抗体に包含される。さらに、標準的な化学的架橋法により、本発明の抗体と第2抗体を架橋することによって、一方の重鎖および一方の軽鎖が、本発明の抗体であり、他方の重鎖および軽鎖が、本発明の抗体の特異性に応じて、IL−12、TNFαまたはIL−18以外の抗原に特異的である二機能性抗体を、産生することができる。
【0063】
本発明の抗体またはこの抗原結合部分の組換え発現のための適した系では、抗体の重鎖および抗体の軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターは、リン酸カルシウム媒介型形質移入によって、dhfr−CHO細胞中に導入される。組換え発現ベクター内では、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子は、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーターの制御エレメントにそれぞれ操作的に連結して、遺伝子の高レベルの転写を駆動する。組換え発現ベクターは、DHFR遺伝子も保有し、これにより、メトトレキサートの選択/増幅を用いて、ベクターに形質移入したCHO細胞を選択することが可能になる。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体の重鎖および軽鎖の発現を可能にするために培養され、完全な抗体は、培養液から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に形質移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養液から抗体を回収するために、標準的な分子生物学的技法が用いられる。
【0064】
組換え技法を使用するとき、抗体は、細胞膜周辺腔中で細胞内に産生され得、または培地中に直接分泌され得る。1つの態様では、抗体が細胞内に産生されれば、第1ステップとして、(例えば、遠心分離の結果として生じた)粒状の残骸、宿主細胞または溶解した細胞のいずれかを、例えば、遠心分離または限界濾過によって除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合、かかる発現系からの懸濁液を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon(商標)またはMillipore Pellicon(商標)限界濾過ユニットを用いて、まず濃縮することができる。
【0065】
本発明の工程の前に、細胞の残骸から抗体を精製するための手順を、抗体の発現部位によって最初に決める。いくつかの抗体は、細胞から増殖培地の周辺に直接分泌され得、他の抗体は、細胞内につくられる。後者の抗体について、精製工程の第1ステップは、典型的には、機械的な剪断、浸透圧ショックまたは酵素処理が挙げられる様々な方法によって起こり得る細胞の溶解を伴う。かかる破壊により、細胞の全体の内容物が破砕物中に放出され、さらに、それらの小ささのために除去するのが難しい細胞内の断片が産生される。これらは、一般的に、異なる遠心分離によって、または濾過によって除去される。抗体が分泌される場合、かかる発現系からの懸濁液は、一般的に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon(商標)またはMillipore Pellicon(商標)限界濾過ユニットを用いて、まず濃縮される。抗体が培地中に分泌される場合、組換え宿主細胞は、例えば、接線流濾過によって、細胞培養液から分離することもできる。抗体は、本発明の抗体精製方法を用いて、培養液からさらに回収することができる。
【0066】
4.抗体の精製
4.1 一般的な抗体の精製
本発明は、抗体および少なくとも1つのHCPを含む混合物から精製された(または「HCP減少型」)抗体調製物を生成するための方法を提供する。本発明の調製工程は、上記の方法および当技術分野の従来の方法を用いて抗体を生成する場合、分離のステップで始まる。表1に、精製計画の1つの実施形態をまとめる。限定されるものではないが、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーステップを含まない、またはイオン交換ステップの順番を逆にするバリエーションが挙げられるこの計画のバリエーションが予想され、これは本発明の範囲内である。
【0067】
【表1】
【0068】
抗体を含む清澄化した溶液または混合物を得たらすぐに、細胞が産生したHCPなどの他のタンパク質からの抗体の分離を、イオン交換分離ステップおよび疎水性相互作用分離ステップを含む異なる精製技法の組合せを用いて行う。分離ステップにより、それらの電荷、疎水性の程度または大きさに基づいて、タンパク質の混合物が分離される。本発明の1つの態様では、分離は、陽イオン、陰イオンおよび疎水性相互作用が挙げられるクロマトグラフィーを用いて行う。いくつかの異なるクロマトグラフィー樹脂をこれらの各技法に利用でき、関連する特定のタンパク質に対する精製計画の正確な組立てを可能にする。各分離方法の本質は、タンパク質が、異なる速度でカラムを横切り落ちることにより、カラムをさらに通って落ちるにつれて物理的分離の増加が達成されること、または分離媒体に選択的に付着することにより、次いで異なる溶媒によって別個に抽出されることのいずれかをもたらせることである。いくつかの場合では、不純物がカラムに特異的に付着し、抗体が付着しない、すなわち抗体がフロースルー中に存在するとき、抗体は不純物から分離される。
【0069】
上述のように、精製計画の正確な組立ては、精製するタンパク質の濃度に依存する。ある種の実施形態では、本発明の分離ステップは、1つ以上のHCPから抗体を分離するステップが採用される。本明細書に記載の方法を用いてうまく精製できる抗体には、限定されるものではないが、ヒトIgA、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG、IgG、IgGおよびIgM抗体が挙げられる。ある種の実施形態では、本発明の精製戦略は、例えばIgG抗体の精製との関連において(IgG抗体がプロテインAに非効率に結合するため)、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーの使用を除外する。精製計画の具体的な組立てを可能にする他の因子には、限定されるものではないが、(例えば、抗体のFabフラグメントと比べて完全長抗体に関連する)Fc領域の存在または非存在(プロテインAがFc領域に結合するため)、対象とする抗体の生成に採用する特定の生殖系列の配列および抗体のアミノ酸組成(例えば、抗体の一次配列および分子の全体の変化/疎水性)が挙げられる。1つ以上の特徴を共有する抗体は、その特徴を利用するように組み立てた精製戦略を用いて精製することができる。
【0070】
4.2 一次回収
本発明の精製方法の最初のステップは、清澄化の第1相および試料マトリックスからの抗体の一次回収に関連する。さらに、一次回収工程は、試料マトリックス中に存在し得るウイルスを減少させる、または不活性化する時点であってもよい。例えば、米国特許第4,534,972号明細書(その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれる)のような、熱不活性化(低温殺菌)、pH不活性化、溶媒/洗剤処理、UVおよびγ線照射ならびにβ−プロピオラクトンまたは例えば銅フェナントリンなどの追加のある種の化学的不活性剤が挙げられる、任意の1つ以上の様々なウイルス減少/不活性化方法を、精製の一次回収相の間に使用することができる。本発明のある種の実施形態では、試料マトリックスは、一次回収相の間にpHウイルス減少/不活性化に供する。
【0071】
pHのウイルス減少/不活性化の方法には、限定されるものではないが、低pHである期間混合物をインキュベートするステップ、続いてpHを中和するステップ、および濾過によって粒子を除去するステップが挙げられる。ある種の実施形態では、混合物は、pH約2から5、好ましくはpH約3から4、より好ましくはpH約3.5でインキュベートする。試料マトリックスのpHは、限定されるものではないが、クエン酸、酢酸、カプリル酸が挙げられる任意の適した酸または他の適した酸によって低下させることができる。pHレベルの選択は、主として抗体産物の安定性プロファイルおよびバッファー成分に依存する。低pHのウイルス減少/不活性化の間の標的抗体の質は、pHおよび低pHインキュベーションの持続時間に影響を受けることが知られている。ある種の実施形態では、低pHインキュベーションの持続時間は、0.5時間から2時間、好ましくは0.5時間から1.5時間であり、より好ましくは、持続時間は1時間である。ウイルス減少/不活性化は、タンパク質濃度に加えて、高濃度で減少/不活性化を制限させ得るこれらのいくつかのパラメータに依存する。したがって、タンパク質濃度、pHおよび減少/不活性化の持続時間の適したパラメータは、ウイルス減少/不活性化の所望のレベルを達成するように選択することができる。
【0072】
ある種の実施形態では、ウイルス減少/不活性化は、適したフィルターの使用によって達成することができる。適したフィルターの非限定的な例は、Pall社のUltipor DV50(商標)フィルターである。本発明のある種の実施形態は、一次回収相の間にかかる濾過を採用するが、他の実施形態では、それは、精製の最後から2番目または最終ステップのいずれかが挙げられる、精製工程の他の相で採用する。ある種の実施形態では、限定されるものではないが、Viresolve(商標)フィルター(Millipore、Billerica、Mass.);Zeta Plus VR(商標)フィルター(CUNO;Meriden、Conn.)およびPlanova(商標)フィルター(旭化成ファーマ、Planova Division、Buffalo Grove、I11.)などの代替的なフィルターが、ウイルス減少/不活性化に採用される。
【0073】
それらの実施形態では、ウイルス減少/不活性化を採用する場合、必要に応じて、さらなる精製ステップのために、試料マトリックスを調整することができる。例えば、低pHのウイルス減少/不活性化に続いて、試料マトリックスのpHは、典型的には精製工程を続ける前に、より中性pH、例えば、約4.5から約8.5、好ましくは約4.9に調整する。さらに、混合物を注射用水(WFI)で流して、所望の伝導性を得ることができる。
【0074】
ある種の実施形態では、一次回収は、試料マトリックスをさらに清澄化し、それによって抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体の精製を助ける1つ以上の遠心分離ステップを含む。試料の遠心分離は、例えば、限定されるものではないが、7,000×gからおよそ12,750×gで実行することができる。大規模な精製に関して、かかる遠心分離は、例えば、限定されるものではないが、得られた懸濁液において150NTUの濁度レベルに達成する流速設定によりオンラインで行うことができる。かかる懸濁液は、次いでさらなる精製のために収集することができる。
【0075】
ある種の実施形態では、一次回収は、試料マトリックスをさらに清澄化し、それによって本発明の抗体の精製を助ける1つ以上の深層濾過ステップの使用を含む。深層濾過は、段階的密度を有する濾過媒体を含む。かかる段階的密度により、より大きい粒子はフィルターの表面付近で捕捉する一方、より小さい粒子はフィルターの表面のより大きく開いた部分を透過し、フィルターの中央により近い、より小さい開きのみで捕捉することが可能になる。ある種の実施形態では、深層濾過ステップは、脱脂深層濾過ステップであってよい。ある種の実施形態は、一次回収相の間のみ深層濾過ステップを用いるが、他の実施形態は、1つ以上の追加の精製の相の間に脱脂深層濾過を含む深層濾過を用いる。本発明に関して使用できる深層濾過の非限定的な例には、Cuno(商標)モデル30/60ZA深層フィルター(3M社)および0.45/0.2μmのSartopore(商標)二重層フィルターカートリッジが挙げられる。
【0076】
4.3 アフィニティークロマトグラフィー
ある種の実施形態では、一次回収試料は、HCPを除去して、対象とする抗体をさらに精製するためにアフィニティークロマトグラフィーで処理される。ある種の実施形態では、クロマトグラフィーの材料は、対象とする抗体に選択的または特異的に結合できる。かかるクロマトグラフィーの材料の非限定的な例には、プロテインA、プロテインG、対象とする抗体が結合する抗原を含むクロマトグラフィーの材料およびFc結合タンパク質を含むクロマトグラフィーの材料が挙げられる。具体的な実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーステップは、一次回収試料を、適したプロテインA樹脂を含むカラムで処理するステップを含む。プロテインA樹脂は、様々な抗体のアイソタイプ、特にIgG、IgGおよびIgGのアフィニティー精製および単離に有用である。プロテインAは、それらのFc領域を通して哺乳動物IgGに主に結合する細菌の細胞壁タンパク質である。天然の状態では、プロテインAは、5つのIgG結合ドメインの他、未知の機能を担うその他のドメインを有する。
【0077】
プロテインA樹脂にはいくつかの販売元がある。1つの適した樹脂は、GE Healthcareから得るMabSelect(商標)である。MabSelect(商標)を充填する適したカラムの非限定的な例は、直径約1.0cm×長さ約21.6cmのカラム(約17mLのベッドボリューム)である。この大きさのカラムは、小さいスケールの精製に使用でき、スケールアップのために使用する他のカラムと比較することができる。例えば、ベッドボリュームが約6.6Lである20cm×21cmのカラムは、より大きな精製に使用することができる。カラムにかかわらず、カラムは、MabSelect(商標)などの適した樹脂を用いて充填することができる。
【0078】
ある種の実施形態では、対象とする特定の抗体の精製に適合させるために、プロテインA樹脂の動的結合容量(DBC)を特定することが有利である。例えば、限定されるものではないが、MabSelect(商標)カラムのDBCは、単一流速負荷または二重流負荷の戦略のいずれかによって決定することができる。単一流速負荷は、全体の負荷時間にわたって約300cm/時の速度で評価することができる。二重流速負荷の戦略は、約300cm/時の線速度で最大約35mgタンパク質/mL樹脂でカラムに負荷することによって決定し、次いで線速度を半分に低下させて、負荷の最後の部分についてより長い滞留時間を可能にすることができる。
【0079】
ある種の実施形態では、プロテインAカラムは、試料の負荷の前に、適したバッファーで平衡化することができる。適したバッファーの非限定的な例は、約7.2のpHのトリス/NaClバッファーである。適した平衡化条件の非限定的な例は、約7.2のpHの、25mMトリス、100mM NaClである。この平衡化に続いて、試料をカラム上に負荷することができる。カラムの負荷に続いて、例えば、平衡化バッファーを用いて、1回以上カラムを洗浄することができる。異なるバッファーを用いた洗浄を含む他の洗浄も、カラムを溶出する前に利用することができる。例えば、カラムは、カラムの容積あたりに約6.0のpHで、20mMクエン酸/クエン酸ナトリウム、0.5M NaClを1回以上用いて洗浄することができる。この洗浄は、場合によって平衡化バッファーを用いて1回以上の洗浄を後続させることができる。プロテインAカラムは、次いで適切な溶出バッファーを用いて溶出することができる。適した溶出バッファーの非限定的な例は、約3.5のpHの酢酸/NaClバッファーである。適した条件は、例えば、約3.5のpHの0.1M酢酸である。溶出液は、当業者に周知の技法を用いてモニターすることができる。例えば、OD280における吸光度に基づくことができる。カラム溶出液は、約0.5AUの初期偏位に始まり、溶出ピークのテーリング末端部における約0.5AUの値まで収集することができる。対象とする溶出画分は、次にさらに処理するために調製することができる。例えば、収集した試料は、約10のpHでトリス(例えば1.0M)を用いて、約5.0のpHに滴定することができる。場合によって、この滴定した試料を濾過し、さらに処理することができる。
【0080】
4.4 イオン交換クロマトグラフィー
ある種の実施形態では、本発明は、抗体を含む溶出液が得られるように、少なくとも1つのイオン交換分離ステップに混合物を供することによって、抗体および少なくとも1つのHCPを含む混合物からHCP減少型抗体調製物を生成するための方法を提供する。イオン交換分離は、2つの基質を、それらのそれぞれのイオン電荷の差に基づいて分離する任意の方法を含み、陽イオン交換物質または陰イオン交換物質のいずれかを採用することができる。
【0081】
陽イオン交換物質対陰イオン交換物質の使用は、タンパク質の全体の電荷に基づく。したがって、陽イオン交換ステップの使用の前に陰イオン交換ステップ、または陰イオン交換ステップの使用の前に陽イオン交換ステップを採用することは、本発明の範囲内である。さらに、陽イオン交換ステップのみ、陰イオン交換ステップのみまたは2つの任意の連続的な組合せを採用することも、本発明の範囲内である。
【0082】
分離の実行において、最初の抗体混合物は、任意の様々な技法を用いて、例えば、バッチ精製技法またはクロマトグラフィー技法を用いて、イオン交換物質と接触させることができる。
【0083】
例えば、バッチ精製に関して、イオン交換物質は、所望の開始バッファー中で調製する、またはそれに平衡化する。調製または平衡化において、イオン交換物質のスラリーを得る。抗体溶液をスラリーに接触させて、分離する抗体をイオン交換物質に吸着させる。イオン交換物質に結合しないHCP(複数可)を含む溶液は、例えば、スラリーの定着を可能にし、懸濁液を除去することによって、スラリーから分離する。スラリーは、1つまたは複数の洗浄ステップに供することができる。必要であれば、スラリーを、より高い伝導性の溶液に接触させて、イオン交換物質に結合したHCPを脱着させることができる。結合したポリペプチドを溶出するために、バッファーの塩濃度を上昇させることができる。
【0084】
イオン交換クロマトグラフィーは、イオン交換分離技法として使用することもできる。イオン交換クロマトグラフィーは、分子の全体の電荷の間の差に基づいて分子を分離する。抗体の精製について、抗体は、結合するために、イオン交換物質、例えば樹脂に付着される官能基の電荷と反対の電荷をもたなければならない。例えば、一般的にそのpIより低いpHのバッファー中で、全体的に正電荷を有する抗体は、負に荷電した官能基を含む陽イオン交換物質によく結合する。
【0085】
イオン交換クロマトグラフィーにおいて、溶質の表面上の荷電したパッチは、クロマトグラフィーのマトリックスに付着した反対の電荷によって誘引され、これにより周囲のバッファーのイオン強度は低くなる。溶出は、一般的にイオン交換マトリックスの荷電部位について溶質と競合するようにバッファーのイオン強度(すなわち、伝導性)を増加させることによって達成される。pHを変更し、それにより溶質の電荷を変化させることは、溶質の溶出を達成する別のやり方である。伝導性またはpHの変更は、漸進的(勾配溶出)または段階的(段階溶出)であってよい。
【0086】
陰イオンまたは陽イオン置換基は、クロマトグラフィーのための陰イオンまたは陽イオン担体を形成するために、マトリックスに付着させることができる。陰イオン交換置換基の非限定的な例には、ジエチルアミノエチル(DEAE)、4級アミノエチル(QAE)および4級アミン(Q)基が挙げられる。陽イオン置換基には、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、リン酸(P)およびスルホン酸(S)が挙げられる。DE23(商標)、DE32(商標)、DE52(商標)、CM−23(商標)、CM−32(商標)およびCM−52(商標)などのセルロースイオン交換樹脂は、Whatman社、メイドストーン、ケント、U.K.から入手することができる。SEPHADEX(登録商標)ベースのおよびロクロスリンク型イオン交換体も既知である。例えば、DEAE−、QAE−、CM−およびSP−SEPHADEX(登録商標)ならびにDEAE−、Q−、CM−およびS−SEPHAROSE(登録商標)ならびにSEPHAROSE(登録商標)Fast Flowは、Pharmacia ABから全て入手することができる。さらに、TOYOPEARL(商標)DEAE−650SまたはMおよびTOYOPEARL(商標)CM−650SまたはMなどのDEAEおよびCM両方の誘導体化エチレングリコール−メタクリル酸コポリマーは、Toso Haas社、フィラデルフィア、Pa.から入手することができる。
【0087】
抗体および不純物、例えばHCP(複数可)を含む混合物は、陽イオン交換カラムなどのイオン交換カラム上に負荷する。例えば、限定されるものではないが、混合物は、使用するカラムに依存して、約80gのタンパク質/L樹脂の負荷で負荷することができる。適した陽イオン交換カラムの例は、ベッドボリュームが約116Lであり、直径80cm×長さ23cmのカラムである。この陽イオンカラム上に負荷された混合物は、続いて洗浄用バッファー(平衡バッファー)で洗浄することができる。抗体は、次いでカラムから溶出し、最初の溶出液を得る。
【0088】
このイオン交換ステップにより、対象とする抗体の捕獲が促進される一方、HCPなどの不純物が減少する。ある種の態様では、イオン交換カラムは、陽イオン交換カラムである。例えば、限定されるものではないが、かかる陽イオン交換カラムに適した樹脂は、CM HyperDF樹脂である。これらの樹脂は、Pall社などの販売元から入手することができる。この陽イオン交換手順は、室温または室温に近い温度で行うことができる。
【0089】
4.5 限界濾過/透析濾過
本発明のある種の実施形態は、抗体試料をさらに精製および濃縮するために、限界濾過および/または透析濾過ステップを採用する。限界濾過は、「Microfiltration and Ultrafiltration:Principles and Applications」、L.ZemanおよびA.Zydney(Marcel Dekker社、New York、N.Y.、1996)および「Ultrafiltration Handbook」、Munir Cheryan(Technomic Publishing、1986;ISBN No.87762−456−9)に詳細に記載されている。好ましい濾過方法は、Milliporeカタログの表題「Pharmaceutical Process Filtration Catalogue」、177−202頁(ベッドフォード、Mass.、1995/96)に記載のような接線流濾過である。限界濾過とは、一般的に0.1μmより小さい孔径を有するフィルターを用いる濾過を意味すると考えられる。かかる小さい孔径を有するフィルターを採用することによって、試料の体積が、フィルターを通る試料バッファーの透過により減少できる一方、抗体はフィルターの裏側に保持される。
【0090】
透析濾過は、塩、糖および非水溶媒の除去および交換、結合した種からの遊離した種の分離、低分子量の物質の除去ならびに/またはイオンおよび/もしくはpH環境の迅速な変化を引き起こすために、限界フィルターを用いる方法である。マイクロ溶質は、限界濾過速度とほぼ同等の速度で限界濾過する溶液に溶媒を添加することによって、最も効率的に除去される。これにより、一定体積で溶液から微細種が洗浄され、保持された抗体が効率的に精製される。本発明のある種の実施形態では、透析濾過ステップは、場合によってさらなるクロマトグラフィーまたは他の精製ステップの前に、および抗体調製物から不純物を除去するために、本発明に関連して使用される様々なバッファーを交換するために採用される。
【0091】
4.6 疎水性相互作用クロマトグラフィー
本発明は、疎水性相互作用分離ステップをさらに含み、抗体および少なくとも1つのHCPを含む混合物からHCP減少型抗体調製物を生成するための方法も取り上げる。例えば、減少したレベルのHCPを有する第2溶出液が得られるように、イオン交換カラムから得た最初の溶出液を、疎水性相互作用物質に供することができる。本明細書に記載されているものなどの疎水性相互作用クロマトグラフィーステップは、一般的に抗体凝集体などのタンパク質凝集体および工程関連不純物を除去するために行う。
【0092】
分離の実行において、試料混合物は、例えば、バッチ精製技法を用いて、またはカラムを用いてHIC物質と接触させる。HIC精製の前に、例えば、混合物をプレカラムに通すことによって、任意のカオトロピック剤または非常に疎水的な物質を除去することを所望することができる。
【0093】
例えば、バッチ精製に関して、HIC物質は、所望の平衡バッファー中で調製する、またはそれに平衡化する。HIC物質のスラリーを得る。抗体溶液をスラリーと接触させて、分離する抗体をHIC物質に吸着させる。HIC物質に結合しないHCPを含む溶液は、例えば、スラリーの定着を可能にし、懸濁液を除去することによって、スラリーから分離する。スラリーは、1つまたは複数の洗浄ステップに供することができる。必要であれば、スラリーをより低い伝導性の溶液と接触させて、HIC物質に結合した抗体を脱着させることができる。結合した抗体を溶出するために、塩濃度を低下させることができる。
【0094】
イオン交換クロマトグラフィーは、抗体の電荷に依存してそれらを単離する一方、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、抗体の疎水性特性を用いる。抗体上の疎水基は、カラム上の疎水基と相互作用する。より疎水的なタンパク質ほど、より強くカラムと相互作用する。したがって、HICステップにより、宿主細胞由来の不純物(例えば、DNAならびに他の高および低分子量産物関連種)が除去される。
【0095】
疎水性相互作用は、高いイオン強度で最も強く、したがって、この分離の形態は、塩析またはイオン交換手順に続いて便利に行われる。HICカラムへの抗体の吸着は、高い塩濃度が好ましいが、実際の濃度は、抗体の性質および選択された特定のHICリガンドに依存して、非常に広範にわたることができる。様々なイオンは、それらが疎水性相互作用を促進するか(塩析効果)、または水の構造を破壊し(カオトロピック効果)、疎水性相互作用の減退を引き起こすかどうかに依存する、いわゆる疎溶媒性系列において配置することができる。Ba++、Ca++、Mg++、Li+、Cs+、Na+、K+、Rb+、NH+のような陽イオンは、塩析効果の増加に関して位置づけられる一方、P0−−−、S04−−、CH3CO3−、Cl−、Br−、NO3−、ClO4−、I−、SCN−のような陰イオンは、カオトロピック効果の増加に関して位置づけることができる。
【0096】
一般的に、Na、KまたはNH4の硫酸塩は、HICにおけるリガンド−タンパク質相互作用を効果的に促進する。次の関係:(NH4)2SO4>Na2SO4>NaCl>NH4Cl>NaBr>NaSCNによって相互作用の強度に影響を与える塩を処方することができる。一般的に、約0.75から2Mの間の塩濃度の硫酸アンモニウムまたは約1から4Mの間のNaClが有用である。
【0097】
HICカラムは、通常、疎水性リガンド(例えば、アルキルまたはアリル基)が共役する基盤マトリックス(例えば、架橋結合したアガロースまたは合成コポリマー物質)を含む。適したHICカラムは、フェニル基で置換されたアガロース樹脂を含む(例えば、Phenyl Sepharose(商標)カラム)。多くのHICカラムが、商業的に入手可能である。例には、限定されるものではないが、低いまたは高い置換を有するPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、スウェーデン);Phenyl Sepharose(商標)High Performanceカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、スウェーデン);Octyl Sepharose(商標)High Performanceカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、AB、スウェーデン);Fractogel(商標)EMD PropylまたはFactogel(商標)EMD Phenylカラム(E.Merck、ドイツ);Macro−Prep(商標)MehylまたはMacro−Prep(商標)t−Butyl Supports(Bio−Rad、カリフォルニア);WP HI−Propyl(C3)(商標)カラム(J.T.Baker、ニュージャージー)およびToyopearl(商標)フェニルまたはブチルいずれかのカラム(TosoHaas、PA)が挙げられる。
【0098】
4.7 例示的な精製戦略
ある種の実施形態では、一次回収は、産生バイオリアクターの収集物から細胞および細胞残骸(HCPを含む)を除去するために、pHの低下、遠心分離および濾過のステップを連続的に採用することによって進行することができる。例えば、限定されるものではないが、抗体、培地および細胞を含む培養物は、およそ1時間、約3.5の酸性pHを用いてpH介在のウイルス減少/不活性化に供することができる。pHの低下は、クエン酸、例えば3Mクエン酸などの既知の酸調製を用いて促進することができる。pH感受性ウイルス混入物を完全に排除しない場合、酸性pHへの曝露により、この混入物を減少させ、いくらかの培地/細胞混入物を沈殿させる。このウイルス減少/不活性化ステップに続いて、水酸化ナトリウム、例えば3M水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて、約20から約40分間、pHを約4.9または5.0に調整する。この調整は、およそ20℃で行うことができる。ある種の実施形態では、pH調製した培養物を、次いでおよそ7000×gからおよそ11,000×gで遠心分離する。ある種の実施形態では、得られた試料懸濁液を、多数の深層フィルターを含むフィルタートレインに通す。ある種の実施形態では、フィルタートレインは、およそ12個の16インチのCuno(商標)モデル30/60ZA深層フィルター(3M社)および3つの30インチの0.45/2μmのSartopore(商標)2フィルターカートリッジ(Sartorius)を装着したおよそ3回転のフィルターハウジングを含む。清澄化した懸濁液は、事前に滅菌した収集容器などの容器中に収集し、およそ8℃で維持する。この温度は次いで、捕獲クロマトグラフィーステップまたは以下に概説するステップの前に、およそ20℃に調整する。当業者は、上述の条件を変えることができ、これも本発明の範囲内であることに注目されたい。
【0099】
ある種の実施形態では、一次回収に続いて、プロテインA樹脂を用いるアフィニティークロマトグラフィーを行う。プロテインA樹脂にはいくつかの販売元がある。1つの適した樹脂は、GE Healthcareから得るMabSelect(商標)である。MabSelect(商標)を充填する適したカラムの例は、直径約1.0cm×長さ約21.6cmのカラム(約17mLのベッドボリューム)である。この大きさのカラムは、ベンチスケールに使用することができる。これは、スケールアップのために使用する他のカラムと比較することができる。例えば、ベッドボリュームが約6.6Lである20cm×21cmのカラムは、商業的な生成に使用することができる。カラムにかかわらず、カラムは、MabSelect(商標)などの適した樹脂を用いて充填することができる。
【0100】
ある種の態様では、プロテインAカラムは、試料の負荷の前に、適したバッファーで平衡化することができる。適したバッファーの例は、約6から8、好ましくは約7.2のpHのトリス/NaClバッファーである。適した条件の具体的な例は、pH7.2の、25mMトリス、100mM NaClである。この平衡化に続いて、試料をカラム上に負荷することができる。カラムの負荷に続いて、例えば、平衡化バッファーを用いて、1回または複数回カラムを洗浄することができる。異なるバッファーを採用する洗浄を含む他の洗浄は、カラムを溶出する前に採用することができる。例えば、カラムは、約6.0のpHで、20mMクエン酸/クエン酸ナトリウム、0.5M NaClの1つまたは複数のカラム体積を用いて洗浄することができる。この洗浄に続いて、場合によって平衡化バッファーを用いて1つまたは複数の洗浄を行うことができる。プロテインAカラムは、次いで適切な溶出バッファーを用いて溶出することができる。適した溶出バッファーの例は、pHおよそ3.5の酢酸/NaClバッファーである。適した条件は、例えば、pH3.5の0.1M酢酸である。溶出液は、当業者によく知られている技法を用いてモニターすることができる。例えば、OD280での吸光度にしたがうことができる。カラム溶出液は、約0.5AUの最初のふれを有する開始から、溶出ピークのトレイリングエッジにおける約0.5AUの読み取りまで収集することができる。対象とする溶出画分(複数可)は、次いでさらなる処理のために調製することができる。例えば、収集した試料は、約10のpHでトリス(例えば1.0M)を用いて、約5.0のpHに滴定することができる。場合によって、この滴定した試料を濾過し、さらに処理することができる。
【0101】
MabSelect(商標)カラムの動的結合容量(DBC)は、単一流速負荷または二重流負荷の戦略のいずれかによって決定することができる。単一流速負荷は、全体の負荷時間にわたって約300cm/時の速度で評価することができる。二重流速負荷の戦略は、約300cm/時の線速度で最大約35mgタンパク質/mL樹脂でカラムに負荷することによって決定し、次いで線速度を半分に低下させて、負荷の最後の部分についてより長い滞留時間を可能にすることができる。
【0102】
プロテインA溶出液は、次いで陽イオン交換カラムを用いてさらに精製することができる。ある種の実施形態では、陽イオン交換カラムに使用する平衡化バッファーは、約5.0のpHを有するバッファーである。適したバッファーの例は、pH5.0の約210mM酢酸ナトリウムである。平衡化に続いて、カラムに、上記の一次回収ステップから調製した試料を負荷する。カラムに、GE HealthcareのCM Sepharose(商標)Fast Flowなどの陽イオン交換樹脂を充填する。カラムを、次いで平衡化バッファーを用いて洗浄する。カラムは、次に平衡化または洗浄用バッファーと比較して、より大きいイオン強度を有するバッファーを用いて、溶出ステップに供する。例えば、適した溶出バッファーは、pH5.0の約790mM酢酸ナトリウムであってよい。抗体を溶出し、OD280nmでセットしたUV分光光度計を用いてモニターすることができる。特定の実施例では、溶出収集物は、上側3OD280nmから下側8OD280nmであってよい。当業者は条件を変えることができ、これもさらに本発明の範囲内であることを理解されたい。
【0103】
ある種の実施形態では、プロテインA溶出液は、代わりに陰イオン交換カラムを用いてさらに精製する。このステップに適したカラムの非限定的な例は、ベッドボリュームが約85Lであり、直径60cm×長さ30cmのカラムである。カラムに、GE HealthcareのQ Sepharose(商標)Fast Flowなどの陰イオン交換樹脂を充填する。カラムは、約7つのカラム容積のトリス/塩化ナトリウムなどの適切なバッファーを用いて平衡化することができる。適した条件の例は、pH8.0の、25mMトリス、50mM塩化ナトリウムである。当業者は条件を変えられるが、これも本発明の範囲内である。カラムに、上記で概説したプロテインA精製ステップから収集した試料を負荷する。別の態様では、カラムは、陽イオン交換の間に収集された溶出液から負荷する。カラムの負荷に続いて、カラムを平衡バッファー(例えば、トリス/塩化ナトリウムバッファー)で洗浄する。抗体を含むフロースルーは、UV分光光度計を用いてOD280nmでモニターすることができる。この陰イオン交換ステップにより、核酸様DNAおよび宿主細胞タンパク質などの工程関連不純物が減少する。対象とする抗体が、カラムの固相、例えば、Q Sepharose(商標)と実質的に相互作用も結合もしないが、多くの不純物が、カラムの固相と相互作用および結合するという事実により、分離は起こる。陰イオン交換は、約12℃で行うことができる。
【0104】
ある種の実施形態では、イオン交換ステップが最初に採用されることに依存して、陽イオン交換または陰イオン交換溶出液は、次に例えば16インチのCuno(商標)脱脂フィルターを用いて濾過する。脱脂フィルターを用いるこの濾過に続いて、例えば、30インチの0.45/0.2μmのSartopore(商標)二重層フィルターカートリッジを用いることができる。イオン交換溶出バッファーは、フィルター中に残る残留量を流すために使用でき、限界濾過/透析濾過のために調製することができる。
【0105】
限界濾過/透析濾過ステップを遂行するために、濾過媒体は、適したバッファー、例えば、pH7.0の20mMリン酸ナトリウム中で調製する。塩化ナトリウムなどの塩、例えば100mM塩化ナトリウムを添加して、イオン強度を増加させることができる。この限界濾過/透析濾過ステップは、抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体の濃縮、酢酸ナトリウムの除去およびpHの調整に役立つ。商業的なフィルターが、このステップを達成するために利用可能である。例えば、Milliporeは、30kDの分子量のカットオフ(MWCO)セルロース限界フィルターメンブレンカセットを製造している。この濾過手順は、室温または室温に近い温度で行うことができる。
【0106】
ある種の実施形態では、上記の捕獲濾過ステップからの試料を、第2のイオン交換分離ステップに供する。好ましくは、この第2のイオン交換分離は、第1のイオン交換分離の反対の電荷に基づいた分離を含む。例えば、陰イオン交換ステップを一次回収後に採用すれば、第2のイオン交換クロマトグラフィーステップは、陽イオン交換ステップであってよい。反対に、一次回収ステップに続いて陽イオン交換ステップを行えば、そのステップに続いて陰イオン交換ステップを行う。ある種の実施形態では、第1のイオン交換の溶出液を、適切なバッファーの条件に調整する場合、第1のイオン交換の溶出液は、第2のイオン交換クロマトグラフィーステップに直接供することができる。適した陰イオンおよび陽イオン分離の物質および条件は、上記に説明する。
【0107】
本発明のある種の実施形態では、抗体を含む試料は、疎水性相互作用分離ステップを用いてさらに処理される。かかるステップに適したカラムの非限定的な例は、ベッドボリュームが約75Lである、直径80cm×長さ15cmのカラムであり、限定されるものではないが、Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデンのPhenyl HP Sepharose(商標)などのHICに使用される適切な樹脂を充填する。対象とする抗体を含む、前の陰イオン交換クロマトグラフィーステップから得たフロースルー調製物は、pH7.0の同等量のおよそ1.7M硫酸アンモニウム、50mMリン酸ナトリウムで希釈することができる。これを、次いで0.45/0.2μmのSartopore(商標)2二重層フィルターまたはその同等物を用いて、濾過に供することができる。ある種の実施形態では、疎水性クロマトグラフィー手順は、2つ以上のサイクルを含む。
【0108】
ある種の実施形態では、HICカラムは、適したバッファーを用いて最初に平衡化する。適したバッファーの非限定的な例は、pH7.0の、0.85M硫酸アンモニウム、50mMリン酸ナトリウムである。当業者は、緩衝剤の濃度を変化させることによって、および/または同等のバッファーを代用することによって、平衡化バッファーを変えることができ、これも本発明の範囲内である。ある種の実施形態では、カラムに、次いで陰イオン交換のフロースルー試料を負荷し、複数回、例えば3回、硫酸アンモニウム/リン酸ナトリウムなどの適した緩衝系で洗浄する。適した緩衝系の例には、およそ7.0のpHを有する、1.1M硫酸アンモニウム、50mMリン酸ナトリウムバッファーが挙げられる。場合によって、カラムは、さらなる洗浄サイクルを受けることができる。例えば、第2洗浄サイクルは、適切な緩衝系を用いて、例えば1から7回の複数のカラム洗浄を含むことができる。適した緩衝系の非限定的な例には、pH7.0の、0.85M硫酸アンモニウム、50mMリン酸ナトリウムが挙げられる。1つの態様では、負荷したカラムは、適切な緩衝系を用いて、第3洗浄をさらに受ける。カラムは、およそpH7.0で、1.1M硫酸アンモニウム、50mMリン酸ナトリウムなどの緩衝系を用いて、複数回、例えば1から3回洗浄することができる。再び当業者は緩衝条件を変えることができ、これも本発明の範囲内である。
【0109】
カラムは、適切な溶出バッファーを用いて溶出する。かかる溶出バッファーの適した例は、およそpH7.0の0.5M硫酸アンモニウム、15mMリン酸ナトリウムである。対象とする抗体は、ピークの上側3OD280nmから下側3OD280nmまで従来の分光光度計を用いて検出および収集することができる。
【0110】
本発明のある種の態様では、疎水性クロマトグラフィーステップからの溶出液は、存在すれば、完全なウイルスを含むウイルス粒子の除去のために、濾過に供する。適した濾過の非限定的な例は、Pall社のUltipor DV50(商標)フィルターである。他のウイルス用フィルターをこの濾過ステップに使用でき、当業者によく知られている。HIC溶出液は、約0.1μmの事前に湿らしたフィルターおよびおよそ34psigで2×30インチのUltipor DV50(商標)フィルタートレインに通す。ある種の実施形態では、濾過工程に続いて、フィルターハウジング中に保持された任意の抗体を除去するために、例えばHIC溶出バッファーを用いて、フィルターを洗浄する。フィルターは、およそ12℃で事前に滅菌した容器中に保管することができる。
【0111】
ある種の実施形態では、上記からの濾液を、再び限界濾過/透析濾過に供する。当業者の終点が、例えば医薬製剤における抗体の使用であれば、このステップは重要である。この工程を採用する場合、これにより、抗体の濃縮、事前に使用する緩衝塩の除去および特定の処方用バッファーとこれとの交換を促進することができる。ある種の実施形態では、処方用バッファーの複数の体積、例えば2つの体積を用いる連続的な透析濾過を行う。適した処方用バッファーの非限定的な例は、pH5.9の、5mMメチオニン、2%マンニトール、0.5%ショ糖のバッファー(Tweenは含まない)である。このダイアボリューム交換が完了すると、抗体は濃縮される。抗体が所定の濃度に達成されると、次いで当業者は、Tweenの最終濃度が約0.005%(v/v)に達するように添加するべきである10%Tweenの量を計算することができる。
【0112】
本発明のある種の実施形態は、さらなる精製ステップを含む。イオン交換クロマトグラフィー方法の前、間または後に行うことができる追加の精製手順の例には、エタノール沈殿、等電点電気泳動、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィー、ヘパリンSepharose(商標)におけるクロマトグラフィー、さらなる陰イオン交換クロマトグラフィーおよび/またはさらなる陽イオン交換クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインG、抗体、特異的な基質、リガンドまたは捕獲剤としての抗原を用いる)が挙げられる。
【0113】
本発明のある種の実施形態では、抗IL−12抗体は、図1に概略を示す重鎖および軽鎖の可変領域の配列を含むIgA、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG、IgG、IgGまたはIgMのアイソタイプの抗体である。好ましい実施形態では、抗IL−12抗体は、図1に概略を示す重鎖および軽鎖の可変領域の配列を含むIgG、IgG、IgGまたはIgGのアイソタイプの抗体であり、より好ましくは、抗IL−12抗体は、図1に概略を示す重鎖および軽鎖の可変領域の配列を含むIgG抗体である。本発明のある種の実施形態では、抗TNFα抗体は、図3に概略を示す重鎖および軽鎖可変領域の配列を含む、IgA、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG、IgG、IgGまたはIgMのアイソタイプの抗体である。好ましい実施形態では、抗TNFα抗体は、図3に概略を示す重鎖および軽鎖可変領域の配列を含む、IgG、IgG、IgGまたはIgGのアイソタイプの抗体であり、より好ましくは、抗TNFα抗体は、図3に概略を示す重鎖および軽鎖可変領域の配列を含むIgG抗体である。
【0114】
5.試料純度のアッセイ方法
5.1 宿主細胞タンパク質のアッセイ
本発明は、単離/精製した抗体組成物中の宿主細胞タンパク質(HCP)の残留レベルを決定するための方法も提供する。上記のように、HCPは、望ましくは最終標的物質産物、例えば抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体から排除される。典型的なHCPは、抗体産生の源から生じるタンパク質を含む。標的抗体からHCPを同定し、十分に除去できなければ、低下した有効性および/または被験者の有害な反応を引き起こし得る。
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「HCP ELISA」は、アッセイに使用する二次抗体が、抗体(例えば、抗IL−12抗体、抗TNFα抗体または抗IL−18抗体)を生成するために使用される細胞、例えばCHO細胞から産生されるHCPに特異的である場合のELISAを指す。二次抗体は、当業者に既知の従来の方法によって産生することができる。例えば、二次抗体は、見せかけの産生および精製の実行によって得られるHCPを用いて、産生することができる、すなわち、対象とする抗体を産生するために使用する同じ細胞株を使用するが、細胞株に抗体DNAを形質移入しない。典型的な実施形態では、二次抗体は、最適な細胞発現系、すなわち、標的抗体を産生するために使用する細胞発現系において発現するHPCと同様のものを用いて産生する。
【0116】
一般的に、HCP ELISAは、抗体の2つの層、すなわち一次抗体と二次抗体の間にHCPを含む液体試料をサンドイッチするステップを含む。試料中のHCPが一次抗体、例えば限定されるものではないが、アフィニティー精製したヤギ抗CHO(Cygnus)によって捕獲される時間の間、試料をインキュベートする。抗体を生成するために使用した細胞から精製したHCPに特異的な、標識した二次抗体または抗体のブレンド、例えばビオチン化した抗CHO HCPを添加し、試料内のHCPに結合させる。ある種の実施形態では、一次および二次抗体は、ポリクローナル抗体である。ある種の態様では、一次および二次抗体は、HCPに対して産生されたポリクローナル抗体のブレンド、例えば、限定されるものではないが、ビオチン化ヤギ抗宿主細胞タンパク質混合物599/626/748である。試料中に含まれるHCPの量は、二次抗体の標識に基づく適切な試験を用いて決定される。
【0117】
HCP ELISAは、上記に記載した方法を用いて得た溶出液またはフロースルーなどの抗体組成物中のHCPのレベルを決定するために使用することができる。本発明は、抗体を含む組成物も提供し、HCPの酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)によって決定するとき、前記組成物は、検出可能なレベルのHCPを有さない。
【0118】
5.2 アフィニティークロマトグラフィーの物質のアッセイ
ある種の実施形態では、本発明は、単離/精製した抗体組成物中のアフィニティークロマトグラフィーの物質の残留レベルを決定するための方法も提供する。ある種の状況では、かかる物質は、精製工程の間に抗体組成物中に浸出する。ある種の実施形態では、単離/精製した抗体組成物中のプロテインAの濃度を確認するためのアッセイを採用する。本明細書で使用する場合、用語「プロテインA ELISA」とは、アッセイに使用する二次抗体が、対象とする抗体、例えば、抗IL−12、抗TNFαまたは抗IL−18抗体の精製に採用するプロテインAに特異的である場合のELISAを指す。二次抗体は、当業者に既知の従来の方法によって産生することができる。例えば、二次抗体は、抗体の生成および産生のための従来の方法に関連して、自然に生じるまたは組換えプロテインAを用いて産生することができる。
【0119】
一般的に、プロテインA ELISAは、抗プロテインA抗体の2つの層、すなわち一次抗プロテインA抗体と二次抗プロテインA抗体の間にプロテインAを含む(またはプロテインAを含む可能性のある)液体試料をサンドイッチするステップを含む。抗プロテインA抗体、例えば、限定されるものではないが、ポリクローナル抗体またはポリクローナル抗体のブレンドの第1層に、試料をさらし、一次抗体が試料中のプロテインAを捕獲するのに十分な時間インキュベートする。標識した二次抗体、例えば、限定されるものではないが、プロテインAに特異的なポリクローナル抗体またはポリクローナル抗体のブレンドを次いで添加し、試料内の捕獲されたプロテインAに結合させる。本発明に関して有用な抗プロテインA抗体の追加の非限定的な例には、ニワトリ抗プロテインAおよびビオチン化抗プロテインA抗体が挙げられる。試料中に含まれるプロテインAの量は、二次抗体の標識に基づく適切な試験を用いて決定する。同様のアッセイを、代替のアフィニティークロマトグラフィーの物質の濃度を確認するために採用することができる。
【0120】
プロテインA ELISAは、上記の方法を用いて得た溶出液またはフロースルーなどの抗体組成物中のプロテインAのレベルを決定するために使用することができる。本発明は、抗体を含む組成物も提供し、前記組成物は、プロテインA酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)によって決定したときに、検出可能なレベルのプロテインAを有さない。
【0121】
6.さらなる修飾
本発明の抗体は、修飾することができる。いくつかの実施形態では、抗体またはこの抗原結合フラグメントを化学的に修飾し、所望の効果をもたらす。例えば、本発明の抗体または抗体フラグメントのペグ化は、例えば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる次の文献:Focus on Growth Factors3:4−10頁(1992);EP0154316およびEP0401384に記載のような、当技術分野で既知の任意のペグ化反応によって行うことができる。1つの態様では、ペグ化は、ポリエチレングリコール分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行う。本発明の抗体および抗体フラグメントのペグ化のための適した水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書で使用する場合、「ポリエチレングリコール」は、モノ(Cl−ClO)アルコキシまたはアリールオキシポリエチレングリコールなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの任意の形態を包含することを意味する。
【0122】
本発明のペグ化された抗体および抗体フラグメントを調製するための方法は、一般的に(a)抗体または抗体フラグメントが、1つまたは複数のPEG基に付着するのに適した条件下で、抗体または抗体フラグメントと、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコールとを反応させるステップおよび(b)反応生成物を得るステップを含む。既知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは、当業者に明らかである。
【0123】
IL−12、TNFαまたはIL−18に特異的なペグ化した抗体および抗体フラグメントは、一般的に本明細書に記載の抗IL−12抗体および抗体フラグメント、抗TNFα抗体および抗体フラグメントまたは抗IL−18抗体および抗体フラグメントを投与することによって、本発明のIL−12関連障害、TNFα関連障害またはIL−18関連障害を治療するために使用することができる。一般的に、ペグ化した抗体および抗体フラグメントは、非ペグ化抗体および抗体フラグメントと比較して、増加した半減期を有する。ペグ化した抗体および抗体フラグメントは、単独に、一緒にまたは他の医薬組成物との組合せで、採用することができる。
【0124】
本発明の抗体または抗体部分は、別の機能性分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に誘導体化または連結することができる。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、イムノアドへシン分子を含む、本明細書に記載の誘導体化および他のやり方で修飾したヒト抗hIL−12抗体、抗TNFα抗体または抗hIL−18抗体の形態を含むものとする。例えば、本発明の抗体または抗体部分は、別の抗体(例えば、二重特異的な抗体または二重特異性抗体)、検出可能な薬剤、細胞毒性薬、医薬品および/または抗体もしくは抗体分子と(ストレプトアビジンのコア領域またはポリヒスチジンタグなどの)他の分子との会合を媒介できるタンパク質もしくはペプチドなどの1つまたは複数の分子要素に、(化学的共役、遺伝子的融合、非共有結合または他のやり方によって)機能的に連結することができる。
【0125】
誘導体化した抗体の1つのタイプは、(例えば、二重特異的な抗体を作成する、同じタイプまたは異なるタイプの)2つ以上の抗体と架橋結合することによって生成する。適したクロスリンカーは、適切なスペーサーによって明瞭に分離される2つの反応基を有するヘテロ二重機能的(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはホモ二重機能的(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)なものが挙げられる。かかるリンカーは、Pierce Chemical Company、ロックフォード、IL.から入手することができる。
【0126】
本発明の抗体または抗体部分を誘導体化できる有用な検出可能な薬剤は、蛍光性化合物を含む。典型的な検出可能な蛍光性薬剤には、フルオレセン、フルオレセンイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルフォニルクロリド、フィコエリトリンなどが挙げられる。抗体は、アルカリンホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素で誘導体化することもできる。抗体を検出可能な酵素で誘導体化するとき、それは、酵素が検出可能な反応産物の生成に使用する追加の試薬を添加することによって検出される。例えば、検出可能な薬剤の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在するとき、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加により、検出可能な有色の反応生成物がもたらされる。抗体は、ビオチンを用いて誘導体化することもでき、アビジンまたはストレプトアビジン結合の直接的な測定によって検出することもできる。
【0127】
7.医薬組成物
本発明の抗体および抗体部分は、患者への投与に適した医薬組成物中に組み込むことができる。典型的に、医薬組成物は、本発明の抗体または抗体部分および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合性のある任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例には、1つまたは複数の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどおよびこれらの組合せが挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えばマンニトール、ソルビトールなどの糖、多価アルコールまたは塩化ナトリウムを含むことが望ましい。薬学的に許容される担体は、抗体または抗体部分の有効期間または効果を増強させる、少量の湿潤剤または乳化剤などの補助物質、保存剤またはバッファーをさらに含むことができる。
【0128】
本発明の抗体および抗体部分は、非経口投与に適した医薬組成物中に組み込むことができる。抗体または抗体部分は、例えば、0.1−250mg/mLの抗体を含む注射可能な溶液として調製することができる。注射可能な溶液は、フリントまたはアンバーバイアル中の液体または凍結乾燥型投与形態、アンプルまたは事前に満たしたシリンジのいずれかから構成することができる。バッファーは、pH5.0から7.0(最適はpH6.0)のL−ヒスチジンおよそ1−50mM(最適は5−10mM)であってよい。他の適したバッファーには、限定されるものではないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが挙げられる。塩化ナトリウムは、0−300mMの濃度(最適は液体型投与形態について150mM)で、溶液の毒性を修正するために使用することができる。抗凍結剤は、凍結乾燥型投与形態について、主に0−10%スクロース(最適は0.5−1.0%)を含むことができる。他の適した抗凍結剤には、トレハロースおよびラクトースが挙げられる。バルク剤は、凍結乾燥型投与形態について、主に1−10%マンニトール(最適は24%)を含むことができる。安定化剤は、液体および凍結乾燥型投与形態の両方で使用でき、主に1−50mM L−メチオニン(最適は5−10mM)である。他の適したバルク剤には、グリシン、アルギニンが挙げられ、0−0.05%ポリソルベート80(最適は0.005−0.01%)として含むことができる。追加の界面活性剤には、限定されるものではないが、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が挙げられる。
【0129】
1つの態様では、医薬組成物は、約0.01mg/kg−10mg/kgの投薬量で抗体を含む。別の態様では、抗体の投薬量には、1週間おきの投与でおよそ1mg/kgまたは毎週の投与でおよそ0.3mg/kgが挙げられる。当業者は、患者への投与のために適切な投薬量および投与計画を突き止めることができる。
【0130】
本発明の組成物は、様々な形態であってよい。これらには、例えば、液体溶液(例えば、注射および注入可能な溶液)、分散剤または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソームおよび坐薬などの液体、半固体および固体の投与形態が挙げられる。形態は、例えば目的とする投与様式および治療の適用に依存する。典型的な組成物は、他の抗体によるヒトの受動免疫化に使用するものと同様の組成物などの、注射および注入可能な溶液の形態である。1つの投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。1つの態様では、抗体は、静脈内注射または注入によって投与する。別の態様では、抗体は、筋肉内または皮下注射によって投与する。
【0131】
治療用組成物は、典型的に、製品および貯蔵の条件下で無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散剤、リポソームまたは高い薬物濃度に適した他の整った構造として処方することができる。無菌の注射可能な溶液は、適切な溶媒中で必要とされる量の活性化合物(すなわち、抗体または抗体部分)に、上記に列挙される成分の1つまたは組合せを組み込むことによって調製することができ、必要に応じて、続いて濾過滅菌する。一般的に、分散剤は、基本的な分散剤媒体および上記の列挙からの必要とされる他の成分を含む無菌媒介物中に、活性化合物を組み込むことによって調製する。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌の凍結乾燥した粉末の場合、調製方法は、前に滅菌濾過したその溶液から、活性成分の粉末に加えて任意の追加の所望の成分を生成する、真空乾燥および噴霧乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合に必要とされる粒子サイズの維持および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の遷延性吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアレート塩およびゼラチンを含むことによってもたらすことができる。
【0132】
本発明の抗体および抗体部分は、当技術分野で既知の様々な方法によって投与することができ、投与の1つの経路/様式は、皮下注射、静脈内注射または注入である。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変わる。ある種の実施形態では、活性化合物は、移植、経皮パッチおよびマイクロカプセル化した送達系が挙げられる放出調節した製剤などの、迅速な放出に対して化合物を保護する担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製するための多くの方法は、特許を取られている、または一般的に当業者に既知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson、編、Marcel Dekker社、New York、1978を参照されたい。その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0133】
ある種の態様では、本発明の抗体または抗体部分は、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体を用いて、経口的に投与することができる。化合物(および所望されれば他の成分)は、錠剤中に圧縮したまたは患者の食事の中に直接組み込んだ硬いまたは柔らかいゼラチンシェルカプセル中に封入することもできる。経口の治療用投与のために、組成物は、賦形剤とともに組み込むことができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハーなどの形態で使用することができる。非経口投与以外によって本発明の化合物を投与するために、その不活性化を防ぐ物質で化合物をコートするまたはそれと化合物とを共投与することが必要になり得る。
【0134】
補充的な活性化合物も、組成物中に組み込むことができる。ある種の態様では、本発明の抗体または抗体部分は、IL−12活性、TNFα活性またはIL−18活性が有害である障害を治療するのに有用である1つまたは複数の追加の治療剤と共処方および/または共投与する。例えば、本発明の抗hIL−12抗体もしくは抗体部分、抗TNFα抗体もしくは抗体部分または抗IL−18抗体もしくは抗体部分は、他の標的と結合する1つまたは複数の追加の抗体(例えば、他のサイトカインと結合するまたは細胞表面分子と結合する抗体)と共処方および/または共投与することができる。さらに、本発明の1つまたは複数の抗体は、2つ以上の前述の治療剤と組み合わせて使用することができる。かかる組合せ治療は、より低い投薬量の投与される治療剤を好都合に利用することができ、したがって可能性のある毒性または様々な単独治療に関連する合併症を回避することができる。本発明の抗体を、組合せ治療の一部として使用するとき、抗体を単独で患者に投与するときより、低い投薬量の抗体を所望することができることは当業者に理解される(例えば、相乗的な治療効果が、組合せ治療の使用によって達成でき、順により低い用量の抗体の使用により、所望の治療効果の達成が可能になる)。
【0135】
本発明の抗体またはこの抗原結合部分が、単独でまたは追加の薬剤、例えば治療剤と組み合わせて使用でき、前記追加の薬剤が、その意図する目的のために当業者によって選択されることは理解されたい。例えば、追加の薬剤は、本発明の抗体によって治療する疾患または状態を治療するのに有用であると当技術分野で認識されている治療剤であってよい。追加の薬剤は、治療用組成物に有益な貢献をもたらす薬剤、例えば、組成物の粘性に影響する薬剤であってもよい。
【0136】
本発明内に含まれ得る組合せが、それらの意図する目的に有用なそれらの組合せであることもさらに理解されたい。以下に示される薬剤は例示であり、限定することを意図していない。本発明の一部である組合せは、本発明の抗体および以下のリストから選択される少なくとも1つの追加の薬剤であってよい。組合せは、1つ以上の追加の薬剤、例えば、形成される組成物がその意図される機能を果たせるような組合せであれば、2または3つの追加の薬剤を含むこともできる。
【0137】
いくつかの組合せは、イブプロフェン様薬物を含むNSAIDSともいわれる非ステロイド性抗炎症薬(複数可)である。他の組合せは、プレドニゾロンを含む副腎皮質ステロイドであり、よく知られているステロイド使用の副作用は、本発明の抗体と組み合わせて患者を治療するときに必要とされるステロイド用量を減らすことによって、低下または排除することさえできる。本発明の抗体または抗体部分と組み合わせることができる、関節リウマチ用の治療剤の非限定的な例には、次のもの:サイトカイン抑制性抗炎症薬(複数可)(CSAID);他のヒトサイトカインまたは増殖因子、例えば、TNF、LT、IL−I、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGFに対する抗体またはこのアンタゴニストが挙げられる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90またはCD154を含むそれらのリガンド(gp39またはCD40L)などの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることができる。
【0138】
治療剤のいくつかの組合せは、自己免疫および続く炎症カスケードにおける異なる時点で干渉でき、例にはTNFアンタゴニスト様キメラ、ヒト化またはヒトTNF抗体、D2E7(1996年2月9日に出願された米国特許第08/599,226号明細書;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)、cA2(Remicade(商標))、CDP571、抗TNF抗体フラグメント(例えばCDP870)および可溶性p55またはp75TNF受容体、その誘導体、すなわちp75TNFRIgG(Enbrel(商標))またはp55TNFR1gG(Lenercept)、可溶性IL−13受容体(sIL−13)およびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤も挙げられ、同様にIL−1阻害剤(例えば、Vx740またはIL−1RAなどのインターロイキン1変換酵素阻害剤)は、同じ理由から効果的であり得る。他の組合せは、インターロイキン11、抗P7およびpセレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)を含む。さらなる他の組合せは、IL−12の機能に平行、依存または協調して働き得る自己免疫応答の他のキープレーヤーを含み、特に、IL−18抗体もしくは可溶性IL−18受容体またはIL−18結合タンパク質を含むIL−18アンタゴニストが含まれる。IL−12およびIL−18は、オーバーラップを有するが、両方に対するアンタゴニストの異なる機能および組合せは、最も効果的であり得ることが示された。さらなる別の組合せは、非枯渇性抗CD4阻害剤を含む。さらなる他の組合せは、抗体、可溶性受容体またはアンタゴニストのリガンドを含む、同時刺激経路CD80(B7.1)またはCD86(B7.2)のアンタゴニストを含む。
【0139】
本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、メトトレキサート、6−MP、アザチオプリンスルファサラジン、メサラジン、オルサラジンクロロキニン/ヒドロキシクロロキン、ペンシルアミン、金チオリンゴ酸(筋肉内および経口)、アザチオプリン、コチシン、副腎皮質ステロイド(経口、吸入および局所注射)、β−2アドレナリン受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテラル)、キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリク酸、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウムおよびオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル、レフルノミド、NSAIDs、例えば、イブプロフェン、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アデンソシンアゴニスト、抗血栓薬、補体阻害薬、アドレナリン系薬剤、TNFαまたはIL−1などの炎症誘発性サイトカインによってシグナル伝達に干渉する薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤(例えばVx740)、抗P7、pセレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75TNF受容体および誘導体p75TNFRIgG(Enbrel.TM.)およびp55TNFRIgG(Lenercept)、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R、可溶性IL−13受容体(sIL−13))および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)などの薬剤と組み合わせることができる。いくつかの組合せは、メトトレキサートまたはレフルノミドを含み、中等度または重度の関節リウマチの場合、シクロスプリンを含む。
【0140】
本発明の抗体または抗体部分と組み合わせることができる炎症性腸疾患用の治療剤の非限定的な例には、次のもの:ブデノシド、上皮増殖因子、副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、メトロニダゾール、リポキシゲナーゼ阻害薬、メサラミン、オルサラジン、バルサラジド、抗酸化薬、トロンボキサン阻害剤、IL−1受容体アンタゴニスト、抗IL−1αモノクローナル抗体、抗IL−16モノクローナル抗体、増殖因子、エラスターゼ阻害剤、ピリジニルイミダゾール化合物、他のヒトサイトカインまたは増殖因子、例えば、TNF、LT、IL−I、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGFに対する抗体またはこのアンタゴニストが挙げられる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD90などの細胞表面分子またはそれらのリガンドに対する抗体と組み合わせることができる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、メトトレキサート、シクロスプリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル、レフルノミド、NSAIDs、例えばイブプロフェン、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アデノシンアゴニスト、抗血栓薬、補体阻害薬、アドレナリン系薬剤、TNFαまたはIL−1などの炎症誘発性サイトカインによってシグナル伝達に干渉する薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤(例えばVx740)、抗P7、pセレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、TNFα変換酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R、可溶性IL−13受容体(sIL−13))および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)などの薬剤と組み合わせることができる。
【0141】
抗体または抗原結合部分と組み合わせることができるクローン病用の治療剤の例には、次のもの:TNFアンタゴニスト、例えば、抗TNF抗体、D2E7(1996年2月9日に出願された米国特許第08/599,226号明細書;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)、cA2(Remicade(商標))、CDP571、抗TNF抗体フラグメント(例えばCDP870)、TNFR−Ig構築物(p75TNFRIgG(Enbrel(商標))およびp55TNFRIgG(Lenercept)、抗P7、pセレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、可溶性IL−13受容体(sIL−13)およびPDE4阻害剤が挙げられる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、副腎皮質ステロイド、例えば、ブデノシドおよびデキサメタソンと組み合わせることができる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸およびオルサラジン、ならびにIL−1などの炎症誘発性サイトカインの合成または作用に干渉する薬剤、例えばIL−1変換酵素阻害剤(例えばVx740)およびIL−1raとも組み合わせることができる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、T細胞シグナル伝達阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤6−メルカプトプリンとも使用することができる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、IL−11と組み合わせることができる。
【0142】
本発明の抗体または抗体部分と組み合わせることができる多発性硬化症用の治療剤の非限定的な例には、次のもの:副腎皮質ステロイド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、4−アミノピリジン、チザニジン、IFNβ1a(Avonex;Biogen)、IFNβ1b(Betaseron;Chiron/Berlex)、コポリマー1(Cop−1、Copaxone、Teva Pharmaceutical Industries社)、高圧酸素、静脈内免疫グロブリン、クラブリビン、他のヒトサイトカインまたは増殖因子、例えば、TNF、LT、IL−I、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGFに対する抗体またはこのアンタゴニストが挙げられる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90またはそれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることができる。本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、メトトレキサート、シクロスプリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル、レフルノミド、NSAIDs、例えばイブプロフェン、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アデノシンアゴニスト、抗血栓薬、補体阻害薬、アドレナリン系薬剤、TNFαまたはIL−1などの炎症誘発性サイトカインによってシグナル伝達に干渉する薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤(例えばVx740)、抗P7、pセレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、TACE阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R、可溶性IL−13受容体(sIL−13))および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−13およびTGFβ)などの薬剤と組み合わせることもできる。
【0143】
抗体またはこの抗原結合タンパク質と結合することができる多発性硬化症用の治療剤の例には、IFNβ、例えばIFNβ1aおよびIFNβ1b、コパキソン、副腎皮質ステロイド、IL−1阻害剤、TNF阻害剤ならびにCD40リガンドおよびCD80に対する抗体が挙げられる。
【0144】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体または抗体部分の「治療的有効量」または「予防的有効量」を含むことができる。「治療的有効量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な投薬量および期間での効果的な量を指す。抗体または抗体部分の治療的有効量は、病態、年齢、性別および個人の体重などの因子ならびに個人において所望の応答を誘発する抗体または抗体部分の能力によって変えることができる。治療的有効量は、抗体または抗体部分の任意の毒性または有害な効果より、治療的に有益な効果が勝るものでもある。「予防的有効量」とは、所望の予防効果を達成するために必要な投薬量および期間での効果的な量を指す。典型的に、予防的用量は、疾患の初期段階より前またはそのときに患者において使用し、予防的有効量は、治療的有効量より少なくなる。
【0145】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば、治療または予防の応答)をもたらすように調整することができる。例えば、単回ボーラスを投与でき、いくつかの分割した用量を経時的に投与でき、または治療状況の緊急性が示されるとき、用量を比例的に減少または増加させることができる。ある種の実施形態では、各投与についての投薬単位形態および投与の均一性において、非経口組成物を処方することは特に好都合である。本明細書で使用する場合、投薬単位形態とは、治療する哺乳動物の患者に対する単一の投薬量として適した、物理的に別々の単位をいい、各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすために計算された、活性化合物の所定の量を含む。本発明の投薬単位形態に関する規格は、(a)活性化合物の独特の特徴および達成すべき特定の治療または予防効果ならびに(b)個人における感受性の治療のための、かかる活性化合物の配合の当技術分野における固有の制限によって決定され、およびこれに直接依存する。
【0146】
本発明の抗体または抗体部分の治療的または予防的有効量に関する典型的な非限定的範囲は、0.01−20mg/kgまたは1−10mg/kgまたは0.3−1mg/kgである。投薬量の値が、緩和すべき状態のタイプおよび重症度とともに変わり得ることに注目されたい。任意の特定の患者に関する具体的な投与計画は、個人の必要性および投与するまたは組成物の投与を監督する人の専門的な判断に従って、経時的に調整されるべきであり、本明細書に示される投薬量の範囲は、単に模範例であり、特許請求される組成物の範囲または実行を制限することを意図しないことをさらに理解されたい。
【0147】
8.本発明の抗体の使用
8.1 一般的な抗IL−12抗体の使用
IL−12に結合するそれらの能力を所与とし、本発明の抗IL−12抗体またはこの部分は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織の免疫組織化学などの従来のイムノアッセイを用いて、(例えば、試料マトリックス、1つの態様では血清または血漿などの生物試料中の)IL−12、1つの態様ではhIL−12を検出するために使用することができる。本発明は、本発明の抗体または抗体部分と試料を接触させるステップおよびIL−12に結合した抗体(もしくは抗体部分)または結合していない抗体(もしくは抗体部分)のいずれかを検出し、それによって試料中のIL−12を検出するステップを含む、生物試料中のIL−12を検出するための方法を提供する。抗体は、検出可能な物質で直接または間接的に標識し、結合したまたは結合していない抗体の検出を促進する。適した検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が挙げられる。適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリンホスファターゼ、βガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適した蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセン、フルオレセンイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例には、ルミノールが挙げられ、適した放射性物質の例には、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。試料中のIL−12の検出は、診断状況、例えば、増加したIL−12に関連する状態の診断に有用であり得、および/または抗IL−12抗体での治療から恩恵を受け得る患者を同定するのに有用であり得る。
【0148】
抗体の標識の代替として、例えば、検出可能な物質で標識したrhIL−12基準物質および標識していない抗hIL−12抗体などの抗IL−12抗体を利用して、競合的イムノアッセイによって試料中でIL−12をアッセイすることができる。このアッセイにおいて、試料、標識rhIL−12標準物質および抗hIL−12抗体を組み合わせ、非標識抗体に結合した標識rhIL−12標準物質の量を決定する。試料中のhIL−12の量は、抗hIL−12抗体に結合した標識rhIL−12標準物質の量に反比例する。
【0149】
本発明の抗体および抗体部分は、インビトロおよびインビボでのIL−12活性、1つの態様ではhIL−12活性を中和することができる。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、例えば、IL−12を含む細胞培養物中、ヒト患者中または本発明の抗体が架橋反応するIL−12を有する他の哺乳動物患者(例えば、ヒヒ、カニクイザルおよびアカゲザルなどの霊長類)中で、IL−12活性を阻害するために使用することができる。1つの態様では、本発明は、ヒトIL−12ならびにヒヒIL−12、マーモセットIL−12、チンパンジーIL−12、カニクイザルIL−12およびアカゲザルIL−12から成る群から選択される少なくとも1つの追加の霊長類IL−12の活性を中和するが、マウスIL−12の活性は中和しない、単離されたヒト抗体またはこの抗体結合部分を提供する。1つの態様では、IL−12は、ヒトIL−12である。例えば、hIL−12を含むまたは含む疑いのある細胞培養物中で、本発明の抗体または抗体部分を培養液に添加し、培養物中のhIL−12活性を阻害することができる。
【0150】
別の態様では、本発明は、IL−12活性が有害である障害に苦しむ患者において、IL−12活性を阻害するための方法を提供する。IL−12は、幅広い様々な障害の病態生理において関連付けられた(Windhagenら(1995)J.Exp.Med.182:1985−1996頁;Moritaら(1998)Arthritis and Rheumatism.41:306−314頁;Buchtら(1996)Clin.Exp.Immunol.103:347−367頁;Faisら(1994)J.Interferon Res.14:235−238頁;Pyrronchiら(1997)Am.J.Path.150:823−832頁;Monteleoneら(1997)Gastroenterology.112:1169−1178頁およびBerrebiら(1998)Am.J.Path 152:667−672頁;Pyrronchiら(1997)Am.J.Path.150:823−832頁;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。本発明は、かかる障害に苦しむ患者において、IL−12活性を阻害するための方法を提供し、方法は、患者においてIL−12活性を阻害するように、本発明の抗体または抗体部分を患者に投与するステップを含む。1つの態様では、IL−12はヒトIL−12であり、患者はヒトの患者である。あるいは、患者は、本発明の抗体が架橋反応するIL−12を発現する哺乳動物であってよい。よりさらなる患者は、(例えば、hIL−12の投与またはhIL−12導入遺伝子の発現によって)hIL−12を導入した哺乳動物であってよい。本発明の抗体は、治療目的のためにヒト患者に投与することができる。その上、本発明の抗体は、獣医学の目的のため、またはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が架橋結合するIL−12を発現する非ヒト哺乳動物に投与することができる。後者に関して、かかる動物モデルは、本発明の抗体の治療的有効性の評価に有用であり得る(例えば、投薬量の試験および投与の時間経過)。
【0151】
本明細書で使用する場合、表現「IL−12活性が有害である障害」は、障害に苦しむ患者においてIL−12の存在が、障害または障害の悪化に寄与する因子のいずれかの病態生理の原因であることが示された、またはその疑いがある疾患および他の障害を含むものとする。したがって、IL−12活性が有害である障害は、IL−12活性の阻害により、障害の症状および/または進行が緩和することが期待される障害である。かかる障害は、例えば、障害に苦しむ患者の体液中のIL−12濃度の増加(例えば、患者の血清、血漿、滑液などにおけるIL−12濃度の増加)によって証明でき、例えば、上記のような抗IL−12抗体を用いて検出することができる。IL−12活性が有害である障害の例は多数ある。1つの態様では、抗体またはこの抗原結合部分は、本明細書に記載の疾患または障害を扱う治療に使用することができる。別の態様では、抗体またはこの抗原結合部分は、本明細書に記載の疾患または障害を治療するための医薬品の製造に使用することができる。数種の非限定的で具体的な疾患の治療における本発明の抗体および抗体部分の使用は、以下にさらに議論する。
【0152】
インターロイキン12は、免疫および炎症の要素に関わる様々な疾患に関連する病理において、重要な役割を果たす。これらの疾患には、限定されるものではないが、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶、臓器移植に伴う急性または慢性免疫疾患、サルコイドーシス、粥状動脈硬化、播種性血管内凝固、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホシェーンライン紫斑、腎臓の顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ぶどう膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染症、寄生虫病、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性多腺性欠乏症I型および多腺性欠乏症II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節炎、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸疾患性滑膜炎、クラミジア、関節症に伴うエルシニアおよびサルモネラ、脊椎関節症、アテローム性疾患/動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、原因不明の自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全関連疾患、C型肝炎、一般変異型免疫不全(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、線維性肺疾患、原因不明の線維化肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、間質性肺疾患に伴う結合組織病、肺疾患に伴う混合性結合組織病、間質性肺疾患に伴う全身性硬化症、間質性肺疾患に伴う関節リウマチ、肺疾患に伴う全身性エリテマトーデス、肺疾患に伴う皮膚筋炎/多発性筋炎、肺疾患に伴うシェーグレン病、肺疾患に伴う強直性脊椎炎、血管炎性びまん性肺疾患、肺疾患に伴うヘモシデリン沈着症、薬剤性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性またはルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫媒介型低血糖、黒色表皮腫を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、骨関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎疾患NOS、糸球体腎炎、顕微鏡的腎血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、男性不妊特発性またはNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全サブタイプ)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病に対する二次的な肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状 、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性硬化症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、ぶどう膜炎、原発性血管炎ならびに白斑が挙げられる。本発明のヒト抗体および抗体部分は、自己免疫疾患、特にリウマチ性脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病および自己免疫性ぶどう膜炎が挙げられる、炎症を伴う疾患を治療するために使用することができる。
【0153】
ある種の態様では、本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病および乾癬を治療するために使用される。
【0154】
8.2 関節リウマチにおける抗IL−12抗体の使用
インターロイキン12は、関節リウマチなどの炎症性疾患に役割を果たすことが関連付けられた。誘発性IL−12p40のメッセージは、関節リウマチ患者由来の滑液中に検出され、IL−12は、関節リウマチを有する患者由来の滑液中に存在することが示された(例えば、Moritaら(1998)Arthritis and Rheumatism 41:306−314頁を参照されたい;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。IL−12陽性細胞は、関節リウマチの滑膜の下内層中に存在することが見出された。本発明のヒト抗体および抗体部分は、例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、ライム関節炎、リウマチ性脊椎炎、骨関節炎および痛風性関節炎を治療するために使用することができる。典型的に、抗体または抗体部分は、全身的に投与されるが、ある種の障害については、抗体または抗体部分の局所投与が有益であり得る。本発明の抗体または抗体部分は、自己免疫疾患の治療に有用な1つまたは複数の追加の治療剤とともに投与することもできる。
【0155】
関節リウマチ用のコラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデルにおいて、関節炎より前に、抗IL−12mAb(ラット抗マウスIL−12モノクローナル抗体、C17.15)でマウスを処置することにより、発症が大いに抑制され、疾患の発症率および重症度が低下した。関節炎の発症後、早期に抗IL−12mAbで処置することにより、重症度は低下したが、疾患発症後に抗IL−12mAbでマウスを処置する後者は、疾患重症度に最小の効果を有した。
【0156】
8.3 クローン病における抗IL−12抗体の使用
インターロイキン12は、炎症性腸疾患、すなわちクローン病にも役割を果たす。IFN−γおよびIL−12の増加した発現が、クローン病を有する患者の腸粘膜において起こる(例えば、Faisら(1994)J.Interferon Res.14:235−238頁;Pyrronchiら(1997)Amer.J.Pathol.150:823−832頁;Monteleoneら(1997)Gastroenterology 112:1169−1178頁;Berrebiら(1998)Amer.J.Pathol.152:667−672頁を参照されたい;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。抗IL−12抗体は、大腸炎のマウスモデル、例えば、TNBS誘導型大腸炎IL−2ノックアウトマウスおよび最近ではIL−10ノックアウトマウスにおいて、疾患を抑制することが示された。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、炎症性腸疾患の治療に使用することができる。
【0157】
8.4 多発性硬化症における抗IL−12抗体の使用
インターロイキン12は、多発性硬化症の主要なメディエーターとして関連付けられた。誘導性IL−12p40のメッセージまたはIL−12自体の発現は、多発性硬化症を有する患者の病変において実際に示すことができる(Windhagenら(1995)J.Exp.Med 182:1985−1996頁、Drulovicら(1997)J.Neurol.Sci.147:145−150頁;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。多発性硬化症を有する慢性進行性の患者は、IL−12の上昇した血中濃度を有する。多発性硬化症を有する患者由来のT細胞および抗原提示細胞(APC)を用いる研究により、Th1型免疫応答を引き起こす進行性多発性硬化症の基礎として、免疫相互作用の自己永続的な一連が明らかになった。T細胞からのIFN−γの増加した分泌により、APCによるIL−12の増加した産生が引き起こされ、Th1型免疫活性化および疾患の慢性状態を引き起こす循環が永続化した(Balashovら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.94:599−603頁;その全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。多発性硬化症におけるIL−12の役割は、マウスおよびラットの多発性硬化症の実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデルを用いて研究した。マウスにおける多発性硬化症の再発寛解型EAEモデルにおいて、抗IL−12mAbを用いて前処理することにより、麻痺が遅延され、臨床スコアが減少した。麻痺のピークで、または続く寛解期間の間に、抗IL−12mAbで処理することにより、臨床スコアが減少した。したがって、本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、ヒトにおいて多発性硬化症に関連する症状を緩和させる働きをし得る。
【0158】
8.5 インスリン依存性糖尿病における抗IL−12抗体の使用
インターロイキン12は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)の重要なメディエーターとして関連付けられた。IDDMは、IL−12の投与によってNODマウスにおいて誘発され、抗IL−12抗体は、IDDMの養子伝達モデルにおいて保護的であった。早期発症のIDDM患者は、いくつかの残りの島細胞機能が維持される、いわゆる「ハネムーン期間」をしばしば経験する。これらの残りの島細胞は、インスリンを産生し、インスリン投与より優れた血中グルコース濃度を制御する。抗IL−12抗体でこれらの早期発症患者を治療することにより、島細胞のさらなる破壊を防ぐことができ、それによってインスリンの内在性供給源が維持できる。
【0159】
8.6 乾癬における抗IL−12抗体の使用
インターロイキン12は、乾癬における主要なメディエーターとして関連付けられた。乾癬は、TH1型サイトカイン発現プロファイルに関連する急性および慢性皮膚病変に関わる(Hamidら(1996)J.Allergy Clin.Immunol.1:225−231頁;Turkaら(1995)Mol.Med.1:690−699頁;それらの全体の教示が参照により本明細書に組み込まれるものとする)。IL−12p35およびp40のmRNAは、罹患したヒトの皮膚試料中に検出された。したがって、本発明の抗体またはこの抗原結合部分は、慢性皮膚障害であるかかる乾癬を緩和させる働きをし得る。
【0160】
8.7 抗IL−18抗体の一般的な使用
IL−18に結合するそれらの能力を考慮すると、本発明の抗IL−18抗体またはこれらの部分は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織の免疫組織化学などの従来のイムノアッセイを用いて、(例えば、試料マトリックス中、1つの態様では血清または血漿などの生物試料中の)IL−18、1つの態様ではhIL−18を検出するために使用することができる。本発明は、本発明の抗体または抗体部分と試料を接触させるステップおよびIL−18に結合した抗体(もしくは抗体部分)または結合していない抗体(もしくは抗体部分)のいずれかを検出し、それによって試料中のIL−18を検出するステップを含む、生物試料中のIL−18を検出するための方法を提供する。抗体は、検出可能な物質で直接または間接的に標識し、結合したまたは結合していない抗体の検出を促進する。適した検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が挙げられる。適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリンホスファターゼ、βガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適した蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセン、フルオレセンイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例には、ルミノールが挙げられ、適した放射性物質の例には、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。試料中のIL−18の検出は、診断状況、例えば、増加したIL−18に伴う状態の診断に有用であり得、および/または抗IL−18抗体での治療から恩恵を受け得る患者を同定するのに有用であり得る。
【0161】
抗体の標識の代替として、例えば、検出可能な物質で標識したrhIL−18基準物質および標識していない抗hIL−18抗体などの抗IL−18抗体を利用して、競合的イムノアッセイによって試料中でIL−18をアッセイすることができる。このアッセイにおいて、試料、標識rhIL−18標準物質および抗hIL−18抗体を組み合わせ、非標識抗体に結合した標識rhIL−18標準物質の量を決定する。試料中のhIL−18の量は、抗hIL−18抗体に結合した標識rhIL−18標準物質の量に反比例する。
【0162】
本発明の抗体および抗体部分は、インビトロおよびインビボでのIL−18活性、1つの態様ではhIL−18活性を中和することができる。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、例えば、IL−18を含む細胞培養物中、ヒト患者中または本発明の抗体が架橋反応するIL−18を有する他の哺乳動物患者(例えば、ヒヒ、カニクイザルおよびアカゲザルなどの霊長類)中で、IL−18活性を阻害するために使用することができる。1つの態様では、本発明は、ヒトIL−18ならびにヒヒIL−18、マーモセットIL−18、チンパンジーIL−18、カニクイザルIL−18およびアカゲザルIL−18から成る群から選択される少なくとも1つの追加の霊長類IL−18の活性を中和するが、マウスIL−18の活性は中和しない、単離されたヒト抗体またはこれらの抗原結合部分を提供する。1つの態様では、IL−18は、ヒトIL−18である。例えば、hIL−18を含むまたは含む疑いのある細胞培養物中で、本発明の抗体または抗体部分を培養液に添加し、培養物中のhIL−18活性を阻害することができる。
【0163】
別の態様では、本発明は、IL−18活性が有害である障害に苦しむ患者において、IL−18活性を阻害するための方法を提供する。インターロイキン18は、免疫および炎症の要素に関わる様々な疾患に伴う病理において、重要な役割を果たす。
【0164】
本明細書で使用する場合、表現「IL−18活性が有害である障害」は、障害に苦しむ患者においてIL−18の存在が、障害または障害の悪化に寄与する因子のいずれかの病態生理の原因であることが示された、またはその疑いがある疾患および他の障害を含むものとする。したがって、IL−18活性が有害である障害は、IL−18活性の阻害により、障害の症状および/または進行が緩和することが期待される障害である。かかる障害は、例えば、障害に苦しむ患者の体液中のIL−18濃度の増加(例えば、患者の血清、血漿、滑液などにおけるIL−18濃度の増加)によって証明でき、例えば、上記のような抗IL−18抗体を用いて検出することができる。IL−18活性が有害である障害の例は多数ある。1つの態様では、抗体またはこれらの抗原結合部分は、本明細書に記載の疾患または障害を扱う治療に使用することができる。別の態様では、抗体またはこれらの抗原結合部分は、本明細書に記載の疾患または障害を治療するための医薬品の製造に使用することができる。数種の非限定的で具体的な疾患の治療における本発明の抗体および抗体部分の使用は、以下にさらに議論する。
【0165】
本発明は、IL−18活性の調節を必要とする疾患または状態の治療のための医薬組成物を提供する。これらの疾患または状態には、自己免疫疾患、I型糖尿病、関節リウマチ、移植片拒絶、炎症性腸疾患、敗血症、多発性硬化症、虚血性心疾患(心臓発作を含む)、虚血性脳障害、慢性肝炎、乾癬、慢性膵炎、急性膵炎などが挙げられる。
【0166】
したがって、抗IL−18抗体もしくはこれらの抗原結合部分またはインビボでこれを発現するベクターは、過剰なIL−18を引き起こすIL−18の異常な発現があるまたは外因的に投与されたIL−18による合併症の場合の自己免疫疾患、I型糖尿病、関節リウマチ、移植片拒絶、炎症性腸疾患、敗血症、多発性硬化症、急性心臓発作を含む虚血性心疾患、虚血性脳障害、慢性肝炎、乾癬、慢性膵炎および急性膵炎ならびに同様の疾患の治療のために必要である。
【0167】
8.8 肝損傷における抗IL−18抗体の使用
本発明の1つの態様は、肝損傷の治療および/または予防のための新規の手段を提供する。IL−18阻害剤は、肝傷害の予防および治療に効果的であることが見出された。本発明は、したがって肝損傷の治療および/または予防用薬剤を製造するためのIL−18阻害剤の使用にも関する。より具体的には、本発明は、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、免疫性肝炎、劇症肝炎、肝硬変および原発性胆汁性肝硬変により引き起こされる肝損傷の治療および/または予防に関する。
【0168】
8.9 関節炎における抗IL−18抗体の使用
IL−18の阻害剤は関節炎の治療に効果的であることも、本発明にしたがって見出された。治療効果には、疾患の重症度の低下および疾患の拡張の予防が挙げられる。本発明は、したがって関節炎の治療および/または予防のためのIL−18の阻害剤の使用に関する。上記に概説した当技術分野の状況から、関節炎に関与する1つの具体的な因子、すなわちインターロイキンIL−18の遮断が、関節炎の緩和または罹患した関節部の治癒さえ引き起こし得ると結論付けられ得なかったため、この発見は予想外である。
【0169】
用語「関節炎」は、例えばDepartment of Orthopaedics of the University of Washington on Arthritisのホームページに規定されるような、関節炎の異なる全タイプおよび関節炎の状態、急性および慢性両方の関節炎を含む。関節炎の状態についての例は、強直性脊椎炎、背部痛、手根骨析出症候群、エーラーダンロス症候群、痛風、若年性関節炎、エリテマトーデス、筋炎、骨形成不全症、骨粗鬆症、多発性動脈炎、多発性筋炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、強皮症、腸疾患に伴う関節炎、ベーチェット病、子供の関節炎、変性関節疾患、線維筋痛症、感染性関節炎、ライム病、マルファン症候群、骨関節炎、骨壊死、パジェット病、リウマチ性多発筋痛症、偽痛風、反射性交感神経性ジストロフィー、関節リウマチ、リウマチ、シェーグレン症候群、家族性大腸腺腫症などである。
【0170】
関節リウマチ(RA)は、関節部の裏打ち(滑膜、1層の細胞層上皮)および/または内臓に炎症を引き起こす。この疾患は長年持続する傾向があり、典型的には身体中の多くの異なる関節部に影響を及ぼし、最終的に、軟骨、骨、腱および靭帯に傷害をもたらし得る。RAによる影響を受け得る関節部は、例えば、首、肩、肘、臀部、手首、手、膝、足首および足に位置する関節部である。多くの場合、関節部は、RAにおいて対照的なパターンの炎症性である。
【0171】
RAは、合衆国の人口の約1%に蔓延し、全民族および年齢内に分布する。これは全世界中で起こり、RAを有するヒトのうち女性の数が男性を3対1で上回る。
【0172】
IL−18阻害剤の投与により、関節炎のマウスモデルにおいて軟骨びらんが顕著に減少することが見出された。本発明は、したがって軟骨破壊の治療および/または予防のための薬剤の製造におけるIL−18阻害剤の使用にも関する。
【0173】
8.10 抗TNFα抗体の一般的な使用
腫瘍壊死因子αは、脂質代謝、凝固、インスリン抵抗性および内皮機能への影響を有する単球/マクロファージによって主に分泌される多機能性炎症誘発性サイトカインである。TNFαは、17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモ三量体である。膜結合性の26kDのTNFα前駆体形態も存在する。これは、滑膜細胞および組織中のマクロファージに見出される。単球またはマクロファージ以外の細胞も、TNFαを産生する。例えば、ヒト非単球腫瘍細胞株は、TNFαならびにCD4およびCD8末梢血Tリンパ球を産生し、いくつかの培養したTおよびB細胞株はTNFαを産生する。これが唯一ではないが、それは関節リウマチに関与し、多くの炎症性疾患に起こる。TNFαに対する受容体は、滑膜ならびに末梢血および滑液中のいくつかの単核細胞上にある。TNFαは、関節リウマチにおける重要な炎症性のメディエーターであり、したがって特異的な免疫療法に有用な標的になり得る。
【0174】
TNFαは、軟骨および骨の分解、接着分子の誘導、血管内皮細胞へのプロコアグラント活性の誘導、好中球およびリンパ球の粘着性の増加ならびにマクロファージ、好中級および血管内皮細胞からの血小板活性化因子の放出の刺激などの組織損傷をもたらす炎症誘発作用を引き起こす。最近の証明により、感染症、免疫障害、腫瘍性病理、自己免疫病理および移植片対宿主病理とTNFαが関連付けられる。
【0175】
TNFαは、熱、倦怠感、食欲不振および悪液質を含むグラム陰性菌敗血症およびエンドトキシンショックに中心的役割を果たしていると考えられている。エンドトキシンは、単球/マクロファージ産生ならびにTNFαおよび他のサイトカインの分泌を強く活性化する。TNFαおよび他の単球由来のサイトカインは、エンドトキシンに対する代謝的な神経ホルモンの応答を媒介する。ヒトのボランティアへのエンドトキシンの投与により、熱、頻拍、上昇した代謝率およびストレスホルモンの放出が挙げられるインフルエンザ様症状を伴う急性の病気が発症する。循環型TNFαが、グラム陰性菌敗血症に苦しむ患者において増加する。
【0176】
したがって、TNFαは、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス、細菌および寄生虫感染症、悪性腫瘍および/または神経変性疾患に関連付けられ、関節リウマチおよびクローン病などの疾患における特異的生物学的療法に有用な標的である。TNFαに対するキメラモノクローナル抗体を用いる非盲検試験における有益な効果は、関節リウマチおよびクローン病において再発後の炎症の抑制および成功した再治療を有すると報告された。
【0177】
TNFαに対する抗血清またはmAbの中和により、実験的な内毒血症および菌血症において有害な生理的変化が抑止され、致死的攻撃後の死が予防されることが哺乳動物において示された。アダリムマブ(Abbott Laboratoriesから入手できるその商標HUMIRA(登録商標)としても知られている)は、TNFαに対して特異的な組換えヒトモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、TNFαに結合し、p55およびp75細胞表面TNFα受容体とその相互作用をブロックする。このモノクローナル抗体は、TNFβの活性を阻害しないようなとき、TNFαに対してかなり特異的である。補体の存在において、アダリムマブは、TNFαを発現する細胞の表面を溶解する。
【実施例】
【0178】
1. 抗IL−12抗体の単離および精製
1.1 精製の戦略
IL−12抗体を産生するように設計した産生細胞培養操作が完了すると、ブロスを1時間pH3.5にゆっくり調整して維持し、次いでpH5に再調整し、続いて遠心分離(11,000×g)して細胞および沈殿した不純物を除去した。遠心分離の上清を、2ステップの濾過トレイン(Cuno90ZA深層濾過に続いて0.45/0.2μmの濾過)によってさらに清澄化した。清澄化に続いて、抗体を捕獲し、5ステップの手順においてさらに精製した。
【0179】
清澄化および酸性化した細胞培養収集物を、30分の経過中に3N NaOHでpH7に滴定し、クロマトグラフィーの前に濾過した。
【0180】
直径1.0cm×長さ21.6cmのカラム(17mLのベッドボリューム)を、ベンチスケールでこの操作に使用した。1.0cm×15.1cmのカラム(11.9mLのベッドボリューム)を初期段階で使用し、高純度精製の展開のために物質を産生した。20cm×21cmのカラム(6.6Lのベッドボリューム)を300Lのスケールで使用した。カラムにMabSelect(商標)樹脂(GE Healthcare、カタログ#17−5199−04、ロット#302070)を充填し、非対称性および理論段相当高さ(HETP)を、充填の質を決定するために測定した。
【0181】
カラムをpH7.2の、25mMトリス、100mM NaClバッファーで事前に平衡化した。平衡化に続いて、カラムに清澄化した細胞培養収集物を負荷した(最初に35gAb/L樹脂の負荷のためにv=300cm/時、次いで負荷の最後まで150cm/時、最大40g/L)。カラムを次いで3カラム体積(CV)の平衡バッファーで洗浄し(v=300cm/時)、続いて3CVのpH6の20mMクエン酸/クエン酸Na、0.5M NaClバッファーで洗浄し、続いて追加の3CVの平衡バッファーで洗浄した。産物を次いでpH3.5の0.1M酢酸、100mM NaClで溶出した(v=300cm/時)。カラム溶出液を、0.1AUの最初のA280のふれから、溶出ピークのトレイリングエッジにおける0.1AUの読み取りまで収集し(2mmのフローセルのパス)、pH10の1.0MトリスバッファーですぐにpH5に滴定した。
【0182】
MabSelect(商標)カラムの動的結合容量(DBC)を、単一流速負荷または二重流速負荷の戦略のいずれかによって決定した。単一流速負荷は、完全な負荷により300cm/時で評価した。二重流速負荷の戦略は、300cm/時の線速度で最大35mgタンパク質/mL樹脂でカラムに負荷することにより行い、次いで線速度を半分に低下させて、負荷の最後の部分についてより長い滞留時間を可能にした。各実験において、カラムに過負荷し、所与の負荷条件でカラムの飽和を確実にした。ブレークスルー中に5%が検出される前に負荷された抗体の総量を決定するために、各実行についてのフロースルー物質を分画した。フロースルー(FT)画分の力価を、PorosA(商標)HPLCアッセイによって得た。
【0183】
回収を、溶出試料についての280nmでのUV分光光度測定によって計算した(1cmのパス長を用いる1mg/mLの溶液について1.42の消衰係数)。負荷の力価を、PorosA(商標)HPLCアッセイによって決定した。SEC−HPLC、HCP ELISAおよびプロテインA ELISAを、純度の評価、HCPの除去および浸出したプロテインAのレベルについて行った。
【0184】
MabSelect(商標)溶出液を、pH10の1Mトリスバッファーを用いてpH8±0.1に滴定し、次いで水で6.5±0.5mS/cmに希釈した。希釈した物質を1時間混合し、続いてCuno(商標)脱脂および0.45/0.22μmの濾過を行った。
【0185】
直径1.0cm×長さ29cmのカラム(22.8mLのベッドボリューム)を、ベンチスケールでのQ Sepharose(商標)Fast Flowクロマトグラフィーに使用した。20cm×29.5cmのカラム(9.27Lのベッドボリューム)を300Lのスケールで使用した。カラムにQ Sepharose(商標)FF樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ、カタログ#17−0510−04、300Lスケール用にはロット#296307、ベンチスケール用にはロット#303189)を充填し、非対称性およびHETPを、充填の質を決定するために測定した。
【0186】
樹脂の平衡化を、pH8の、25mMトリス、50mM NaClを用いて遂行した。クロマトグラフィーは、工程関連不純物が樹脂に吸着し、抗体がカラムを通って流れる場合、フロースルー様式で操作した。カラムの負荷を、150cm/時で行い、カラムのフロースルー(FTW)の収集を、A280が0.2AU以上に上昇したときに開始した。FTW物質の試料を、30、50、80、90および100gのタンパク質/L樹脂の負荷に対応する間隔で収集した。カラムを次いで平衡バッファーで洗浄し、FTWの収集を、A280が0.2AUのODに戻るまで続けた。Q Sepharose(商標)FTWを、同等体積、pH7の1.7M (NHSO、50mMリン酸Na(SR−343)ですぐに希釈し、Phenyl Sepharos(商標)eHPカラム上への負荷のために調製した。この溶液を、0.2μmで濾過し、Phenyl Sepharose(商標)HPの負荷に標識した。
【0187】
回収を、280nmでのUV分光光度測定によって計算した(1cmのパス長を用いる1mg/mLの溶液について1.42の消衰係数)。SEC−HPLC、HCP ELISAおよびプロテインA ELISAを、純度の評価、HCPの除去および浸出したプロテインAの除去について行った。
【0188】
直径1.0cm×長さ15.6cmのカラム(12.3mLのベッドボリューム)を、ベンチスケールでのPhenyl Sepharose(商標)HPクロマトグラフィーに使用した。20cm×15.5cmのカラム(4.87Lのベッドボリューム)を300Lのスケールで使用した。カラムにPhenyl Sepharose(商標)HP樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ、カタログ#17−1082−04、ロット#298138)を充填し、非対称性およびHETPを、充填の質を決定するために測定した。
【0189】
樹脂の平衡化を、pH7の、25mMリン酸ナトリウム、0.85M硫酸アンモニウムを用いて遂行した。このステップについて最大のタンパク質負荷は、樹脂1リットルにつきタンパク質<40g(v=75cm/時)であった。負荷に続いて、カラムを3カラム体積のpH7の20mMリン酸ナトリウム、1.1M (NHSO(SR−290)で洗浄した。pH7の15mMリン酸ナトリウム、0.5M硫酸アンモニウムを用いて、37.5cm/時の線速度で、ステップ勾配を行うことによって産物を溶出した。カラム溶出液を、1.0AUの最初のA280のふれから、溶出ピークのトレイリングエッジにおける0.2AUの読み取りまで収集した。凝集体および他の不純物の残りは樹脂に結合し、水または0.5M NaOHで洗浄することによってHICカラムから取り除いた。
【0190】
回収を、280nmでのUV分光光度測定によって計算した(1cmのパス長を用いる1mg/mLの溶液について1.42の消衰係数)。SEC−HPLC、HCP ELISAおよびプロテインA ELISAを、純度の評価、HCPの除去および浸出したプロテインAの除去について行った。
【0191】
Ultipor DV20(商標)フィルターを用いるウイルス濾過は、ベンチスケールでも、スケールアップ研究室でも、両スケールにおける大きさの制限のため、評価しなかった。その代わり、Ultipor DV50(商標)フィルターを300Lのスケールで使用して前臨床の物質を生成した。ベンチスケールで、Phenyl Sepharose(商標)HPクロマトグラフィーから溶出した産物を、最終限界濾過および透析濾過の操作に直接使用した。
【0192】
Milliporeの30kDの分子量カットオフ(MWCO)再生セルロース限界フィルターを、このステップ(UF/DF)に使用した。操作の前に、UF系を1M NaOHで衛生化し、水でリンスした。
【0193】
DV50(商標)濾過物を、最初に30mg/mLタンパク質に濃縮した。2体積(DV)のpH5.9の5mMヒスチジン、5mMメチオニン、0.5%ショ糖、2%(w/v)マンニトール(透析濾過バッファー)(SR−265)を用いる連続的な透析濾過を行った。残余分を40g/Lにさらに濃縮し、次いで追加の6DVの透析濾過バッファーを用いて透析濾過した。残余分を約75g/Lにさらに濃縮した。UF系から次いで産物を排出し、透析濾過バッファーでリンスして、系に維持された産物を回収した。濃縮および洗浄を組み合わせて、透析濾過した抗体産物を約65g/Lで生成した。この産物を0.2μmで濾過し、最終の瓶詰め用に準備した。
【0194】
1.2 試料純度の解析
SEC−HPLC。抗体産物の純度を、サイズ排除クロマトグラフィーSEC−HPLCによって評価した。
【0195】
PorosA HPLCアッセイ。収集物、MabSelect(商標)負荷およびフロースルー試料の抗体力価を、PorosA(商標)定量化捕獲アッセイによって決定した。
【0196】
HCP ELISA。宿主細胞タンパク質のレベルを、宿主細胞タンパク質−ELISAを用いて評価した。酵素結合免疫吸着測定(ELISA)において、HCPを2つの特異抗体の間にサンドイッチした。
【0197】
プレートを、100μL/ウェルのヤギ抗CHOアフィニティー精製抗体(pH9.4の50mM重炭酸ナトリウム中でそれぞれ6μg/mL)の混合物で、80rpmで振盪させながら37℃で1時間コートした。プレートの内容物を次いで注ぎ出し、非特異部位を、300μL/ウェルのカゼインで、80rpmで振盪させながら37℃で1時間ブロックした。ブロックの後、プレートを洗浄バッファー(1×PBS、0.1%トリトンX−100、pH9)で洗浄した。標準曲線のための試料を、5.2mg/mLのアリコートのCHO宿主細胞タンパク質の連続希釈から調製した。全試薬についての希釈剤は、他に記述しない限り、37℃に加熱し、2分間超音波処理したカゼインであった。標準曲線についての濃度は、300、200、133、89、59、40、26および18ng/mLであった。抗体標準物質を5×に希釈し、アッセイの対照として使用した。許容されるアッセイについて、対照について計算した値は、45−76ngHCP/mLの範囲でなければならない。計算値が標準曲線の範囲内に低下するように試料を希釈した。標準物質、対照および試料(100μL/ウェル)を、デュプリケートでプレート上に負荷した。プレートを、80rpmで振盪させながら1時間37℃でインキュベートした。試料のインキュベーションの後、プレートをバッファーで洗浄し、3μg/mLに希釈した100μL/ウェルのビオチン化ヤギ抗CHO抗体を負荷した。プレートを80rpmで振盪させながら1時間37℃でインキュベートし、次いで洗浄した。100μL/ウェルのニュートラアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を100μg/mLで添加し、プレートを80rpmで振盪させながら1時間37℃でインキュベートした。最終洗浄を行い、プレートを100μL/ウェルのK Blue HRP発色基質で7分間、室温でLab−lineの滴定プレート振盪機上でスピード3で振盪させながら展開した。100μL/ウェルの2Mリン酸の添加により反応を停止させ、プレートを450nmで読み取った。発色は、試験試料中に存在するHCPの量に比例する。
【0198】
プロテインA ELISA。プロテインAのクリアランスを、Cygnus Technologies社から得たアッセイキットを用いて評価した(ヒト免疫グロブリン含有試料中のプロテインAを測定するための免疫酵素アッセイ、カタログ#F050H)。標準物質、試薬およびプレートをキットにおいて実現した。試料を1×PBSで1mg/mLに希釈し、変性バッファーで100℃で5分間変性させた(50μLの変性バッファーを200μLの試料中に加えた)。試料を6000×gで5分間遠心分離し、変性した抗体をペレット化する。100μLのビオチン化抗プロテインAおよび変性した試料、対照および標準物質から得た50μLの上清を全ウェルに添加した。プレートを180rpmで振盪させながら室温で1時間インキュベートした。ウェルの内容物を吸引し、プレートを300μLの洗浄液で4回手動で洗浄した。ストレプトアビジン:アルカリンホスファターゼを各ウェルに添加し(100μL)、プレートを180rpmで振盪させながら1時間室温でインキュベートした。上記のようにプレートを洗浄した後、100μLのアルカリンホスファターゼ発色基質をウェルに添加し、プレートを180rpmで振盪させながら室温で30分間インキュベートした。プレートを405および492nmで読み取った。16ng/mLの試料についての吸光度が<1.2の場合、プレートを追加の30分インキュベートし、再度読み取った。発色は、試験試料中に存在するプロテインAの量に比例する。
【0199】
1.3 精製戦略の結果
プロテインAクロマトグラフィー。抗IL−12抗体を捕獲し、1および2本軽鎖フラグメント、CHO宿主細胞タンパク質(HCP)およびDNAなどの産物ならびに工程関連不純物を減少させるために、MabSelect(商標)プロテインAクロマトグラフィーを使用した。ベンチスケールおよび300Lのバイオリアクタースケールの両方から得たデータは、良いタンパク質回収率およびHCPクリアランスを示した(表1および2)。300Lのバイオリアクタースケールから得た代表的なクロマトグラムを図4に示した。
【0200】
【表2】
【0201】
【表3】
【0202】
表3に示したデータにより、MabSelect(商標)クロマトグラフィーの動的結合容量は、負荷の流速、具体的には滞留時間によって影響を受けることが実際に示された。300cm/時(3.4分の滞留時間)の一定線速度で負荷したとき、DBCは44.3mgタンパク質/mL樹脂であった。二重流速負荷の戦略のとき(300cm/時で最大35g/L、150cm/時に切り替える)、DBCは17%まで51.7mgタンパク質/mL樹脂に増加するという結果であった。DBCのこの増加は、負荷の終わりの部分について滞留時間を倍加することによって遂行した。理論上、カラム負荷の最初の段階では、結合は、ビーズの表面、すなわち容易に到達できる部位で主に起こる。これにより、結合速度への小さな影響を伴う、より速い流速の使用が許容される。容易に到達できる全ての部位が占領されると、タンパク質は孔中に拡散して、より容易に到達できない部位に結合する必要がある。動力学的にこれはより遅い工程であり、したがって結合を最大にすることによって流速を低下させるべきである。
【0203】
【表4】
【0204】
2本鎖軽鎖の量は、中間の洗浄ステップを実行することによって、(HPLC−SECに従い)0.5%から0.2%まで減少した。pH5.0またはpH5.5の、0.5M NaCl、25mM酢酸ナトリウム、0.5M NaClおよびpH6の、20mMクエン酸/クエン酸Na、0.5M NaClが挙げられるいくつかの洗浄バッファーを評価した。HPLC−SECおよびSDS−PAGEの両方から得たデータ(図5)は、全実験から低分子量(LMW)種の良いクリアランスを示した。洗浄をpH6で実行したとき、より低いpHの洗浄と比較して同じLMWのクリアランスが観察された一方、95%のタンパク質回収率は、中間の洗浄ステップなしの実行に匹敵した。
【0205】
Q Sepharose(商標)Fast Flowクロマトグラフィー。Q Sepharose(商標)FFカラムを、DNAおよび宿主細胞タンパク質などの負に荷電した工程および産物関連不純物を減少させるために使用した。このステップおよび続くステップは、全体の工程における高純度精製ステップを構成する。
【0206】
クロマトグラフィーの前に、負荷試料の調製を、MabSelect(商標)溶出液のpHおよび伝導率の調整により開始した。溶出液のpHを、pH10の1Mトリスを用いてpH5からpH8に調整し、すぐに続いて水を用いて伝導率を約15mSから7mSに低下させた。MabSelect(商標)溶出液の伝導率が7mS/cmに近づくと、沈殿が起こり始め、1時間続くことになった。沈殿した物質を、Cuno(商標)脱脂フィルターまたは30ZA深層フィルターによって除去し、続いて0.45/0.2μmの濾過を行った。この負荷調製ステップのタンパク質回収率は、280nmでのUV吸光度により96.3%であり、これは沈殿した物質の大部分が抗体ではなかったことを示す。これは、沈殿物のSDS−PAGE解析によっても確認した(図6)。
【0207】
Q Sepharose(商標)FFカラムを、フロースルー様式で操作した。代表的なクロマトグラフィーのプロファイルを図7に示す。300Lのバイオリアクタースケールで80gAb/L樹脂で負荷したとき、HCPの明らかなブレークスルーの出現は観察されなかった(表4)。負荷が90gAb/L樹脂に到達すると、HCPレベルはフロースルー洗浄(FTW)中で二倍になり、これは樹脂がその結合能に到達していたことを示す。HCPレベルは、100gAb/L樹脂の負荷で増加し続けた(表4)。これは、最近の抗体製造工程を超える顕著な改善を表す。最大の負荷は、50gAb/L樹脂である。この負荷は、Q Sepharose(商標)操作についての結合能の60%の増加を表す。負荷能の増加は、プロテインAなどのアフィニティー樹脂対捕獲ステップのための陽イオン交換の使用によるものであり、Q Sepharose(商標)ユニット操作についてさらにより浄化した供給ストリームをもたらす。
【0208】
タンパク質回収率は、典型的にこのステップについて高い。ベンチおよび300Lのバイオリアクターの両スケールの実行から得たデータは、匹敵するステップの回収率をもたらした(96%および93%)(表1および2)。HCPの減少(97%および85%)も両スケールで達成された(表1および2)。
【0209】
【表5】
【0210】
HICクロマトグラフィー。HICクロマトグラフィーを、それらの疎水性の差に基づいて完全な抗体から凝集体および断片化した抗体分子を除去するために使用した。抗IL−12抗体の場合、凝集体は単量体より疎水的であり、したがってHICカラムとよりしっかり結合する。カラムを0.5M硫酸アンモニウムで溶出するとき、単量体Abは溶出されるが、凝集体の残りはカラムに結合し、水で取り除いた中にのみ外れて落ちる。対照的に、断片化した抗体分子または低分子量種(LMW)は、完全な抗体より疎水的ではないため、HICクロマトグラフィー樹脂にしっかりと結合しない。ほとんどのLMWは、主要な溶出ピークの前にカラムから溶出される。上流のMabSelect(商標)洗浄ステップは、工程の流れから大部分のLMWを除去できるため、HIC工程は、凝集した抗体、浸出できるプロテインA、残留HCPならびに他の工程および産物関連不純物を除去して、最終産物規格を達成するように主に設計した。代表的なクロマトグラフィー溶出プロファイルは図8に示す。
【0211】
ベンチおよび300Lの両スケールから得たデータは、HICクロマトグラフィーによって、≧90%の回収率および良い凝集体除去(>99%純度)を示した(表1および2を参照されたい)。Q FTW物質中に浸出したプロテインAを、HICクロマトグラフィーの操作によって8.21から0.65ng/mgAb(ppm)に減少させた(表1を参照されたい)。
【0212】
最近の製造工程(例えば陽イオン交換捕獲)と比較すると、プロテインAアフィニティー捕獲ベースの工程は、より高い収率およびより良いHCP除去を有し、CHO細胞培養収集物から抗IL−12抗体を精製することができた。
【0213】
2 抗TNFα抗体の単離および精製
2.1 精製の戦略
細胞培養収集物の清澄化。細胞培養の13日目の発酵収集ブロスおよび清澄化した15日目の発酵収集物質を、この実施例の出発材料として使用した。細胞培養ブロスを、Beckman Coulter Allegra(商標)6R遠心機を用いて、3000rpmで30分間遠心分離した。収集した上清を、20mL/分の流速で脱脂フィルター(CUNO ZeraPlus(登録商標)BC0030A DELI−BioCap(商標)30使い捨てカプセル)に通して濾過した。清澄化した収集物を次いで等分し、−80℃で貯蔵した。凍結した収集物を解凍し、カラム上に負荷する前に0.22μmのCorning(登録商標)酢酸セルロースフィルターで濾過した。収集ブロスを、ディスクスタックの遠心機で遠心分離し、深層フィルターおよび脱脂フィルターに通してさらに濾過した。濾過物を、カラム上に負荷する前に4℃で貯蔵した。清澄化工程は室温で行った。
【0214】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー。10mL(1.6×5cm)のカラムおよび40.2mL(1.6×20cm)のカラムにMabSelect(商標)樹脂(GE Healthcare)を充填した。AKTA Explorer(商標)クロマトグラフィー系を操作に使用した。カラムは、0.5M NaClを用いて充填した。表5にクロマトグラフィーの条件を表示する。溶出ピーク画分を組み合わせ、3MトロラミンでpH8.0に中和する前に1時間維持した。工程は室温で行った。
【0215】
【表6】
【0216】
Q負荷物質の調製。2回のプロテインAの実行から得た中性化した溶出液を組み合わせ、MilliQ水でおよそ0.5−1.0倍に希釈して、4.5−5.5mS/cm(25℃)の伝導率を達成した。希釈した試料を、20mL/分の流速で深層フィルター(CUNO Zeta Plus BioCap(登録商標)BC0030A30ZA)、続いて0.45μmの酢酸セルロースフィルター(Corning社)および次いで0.22μmの酢酸セルロースフィルター(Corning社)に通して濾過した。試料を次いでQカラム上に負荷するために準備した。
【0217】
Q Sepharose(商標)陰イオンクロマトグラフィー。60.3mL(1.6×30m)および40.2mL(1.6×20m)のカラムにQ Sepharose(商標)Fast Flow樹脂(GE Healthcare)を充填し、AKTA Explorer(商標)クロマトグラフィー系によって操作した。表6にクロマトグラフィーの条件を表示する。工程は12℃で行った。カラムのフロースルーの試料を、フェニルHPクロマトグラフィー精製のために収集した。
【0218】
【表7】
【0219】
Phenyl Sepharose(商標)HPクロマトグラフィー。30.2mL(1.6×15cm)のカラムにPhenyl Sepharose(商標)HP樹脂(GE Healthcare)を充填し、AKTA Explorerクロマトグラフィー系によって操作した。Qフロースルーを2.2M (NHSO/40mM NaHPOバッファーで1:1の比率で希釈して、Phenyl Sepharose(商標)HPカラム上への負荷のために147±11mS/cmの伝導率を達成した。主要な溶出ピークを収集した。表7にクロマトグラフィーの条件を表示する。工程は12℃で行った。
【0220】
【表8】
【0221】
2.2 試料精製の解析
pH。使用する直前に、2つのpH標準溶液(pH4および7またはpH7および10)を用いて、pHメーターを較正した。測定した値は較正点内であった。Corning Pinnacle545pHメーターを使用した。
【0222】
伝導率。ラジオメーター解析用CDM210伝導率メーターを用いて、伝導率を25℃で測定した。
【0223】
UV分光測定A280。Agilent UV8453分光光度計を用いて、UV A280を測定した。アダリムマブに使用した消衰係数は1.39L/g・cmである。
【0224】
PorosA HPLC。抗体濃度を、PorosA(プロテインA)HPLCによって決定した。試料希釈物を、較正範囲内での読み取りを達成するようにアプライした。Shimadzu HPLC系を、PorosA ImmunoDetectionセンサーカートリッジ(Applied Biosystems、フォスターシティ、CA)で形成した。カラムを外気温で維持した。系を2mL/分で実行した。オートサンプラーのトレイ温度を4℃に設定した。吸光度を280nmでモニターした。バッファーAは1×PBSであった。バッファーBは0.1M酢酸および150mM塩化ナトリウムであった。試料を注入し、100%のバッファーBを用いてアダリムマブを溶出した。
【0225】
WCX−10HPLC。WCX−10HPLC(弱陽イオン交換)解析を行った。Shimadzu HPLC系をDionex ProPac WCX−10解析カラムおよびガードカラム(Dionex社、サニーベール、CA)で形成した。両カラムを30℃で維持した。系を1mL/分で実行した。オートサンプラーのトレイ温度を4℃で設定した。吸光度を280nmでモニターした。バッファーAはpH7.5の10mM二塩基性リン酸ナトリウムであり、バッファーBはpH5.5の10mM二塩基性リン酸ナトリウム/500mM塩化ナトリウムであった。試料を注入し、以下のように勾配方法を用いてアダリムマブを溶出した。
【0226】
【表9】
【0227】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)HPLC。SEC解析を行った。試料希釈物を、標準曲線内での読み取りを達成するようにアプライした。Shimadzu HPLC系を、Superose(商標)6 10/300GLカラム(GE Healthcare)で形成した。カラムを外気温で維持した。系を0.5mL/分で実行した。オートサンプラーのトレイ温度を4℃で設定した。吸光度を214nmでモニターした。バッファーAは、20mM二塩基性リン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウムであった。試料を注入し、100%のバッファーAを用いてアダリムマブを均一濃度で流した。
【0228】
HCP ELISA。HCP ELISAを上記の概説のように行った。試料希釈物を、較正範囲内での読み取りを達成するようにアプライした。
【0229】
プロテインA ELISAアッセイ。浸出できるプロテインAの濃度解析を、上記の概説のように行った。試料希釈剤(カタログ#I028)を含み、ヒト免疫グロブリンを含むプロテインA試料を測定するための免疫酵素アッセイの、事前にコートしたアッセイキット(カタログ#F050H)をCygnus Technologies社から購入した。ブロックヒーター(17600型のドライバス、Barnstead/Thermolyne)を試料の変性に使用した。インキュベータ(最大4000、Barnstead/Lab−line)を試料のインキュベーションに使用した。プレートリーダー(Spectramax Plus、Molecular Devices)を、405nmおよび495nmでの吸光度の読み取りに使用した。
【0230】
SDS−PAGE。試料を1×PBSバッファーで設計した濃度に希釈し、次いで同等体積の2×負荷バッファー(Invitrogen(商標)Novex(登録商標)トリス−グリシンSDS試料バッファー(2×)、カタログ#LC2676)を希釈した各試料に添加した。還元SDS−PAGEのために、10分の1の体積の還元剤(invitrogen(商標)NaPAGE(登録商標)試料還元剤(10×)、カタログ#NP0004)を各試料中に添加した。20μLの調製した各試料を、ゲル(invitrogen(商標)12%トリス−グリシンゲル)上の各ウェル中に負荷した。125Vの一定電位および35mAで108分間、(ABC貯蔵室から得た10×トリス−グリシン−SDSバッファーから希釈した)1×トリ−グリシン−SDS泳動バッファー下でゲルを泳動した。SimpleBlue(商標)SafeStain(invitrogen(商標)カタログ#LC6060)を、2時間ゲルの染色に使用し、明白な屈曲が現れるまでMilliQ水で脱染した。SeeBlue(登録商標)Plus染色済み標準物質(1×)(invitrogen(商標)カタログ#LC5925)をこの試験におけるマーカーとして使用した。調製した各試料を、同等総量の抗体のベース上に負荷した。
【0231】
2.3 精製戦略の結果
MabSelect(商標)動的結合容量。カラムに過負荷し、得られた産物のブレークスルーを解析することによって、所与の条件下の樹脂の動的結合容量を推定することができる。典型的に、最大結合能を設定するには、10%ブレークスルーに相当する負荷を決定することになり、次いでこれを安全域として10から20%に低下させ、その工程の測定の可変性およびカバーされる時間で浸出したプロテインAリガンドを保証する。MabSelect(商標)樹脂についての10%ブレークスルーポイントは、樹脂1Lにつき抗体37.4gである(図9)。これは、推奨される最大樹脂結合能が、試験した条件下で400cm/時の流速で32g/L樹脂であることを示唆した。32g/Lの負荷量をこの実施例に使用した。
【0232】
抗体回収収率。産物収率および質の試験のために2回の実行を行った。収集ブロスを上記のように清澄化した。濾過物をMabSelect(商標)カラム上に負荷し、上記のように実行した。溶出液のpH(pH4.06)は、十分なウイルス減少/不活性化のpH(pH3.5)より高く、したがって溶出液のプールを、10×希釈した氷酢酸(J.T.Baker 9522−03)でpH3.5に調整した。Q Sepharose(商標)クロマトグラフィーステップでは、実行1において30g/L、実行2において40g/Lを負荷し、本工程の不純物クリアランス能を検証した。
【0233】
表8は、これらの2回の実行による抗体回収ステップの収率およびプロテインAを採用しない精製のための工程(「AY−04」)を一覧にした。
【0234】
【表10】
【0235】
宿主細胞タンパク質(HCP)は、CHO細胞により生成する主要な不純物である。不純物が収集物質中に運ばれる上、プロテインAは、工程関連不純物としてプロテインA樹脂マトリックスから産物プール中に浸出し得る。良い工程により、HCPおよび浸出できるプロテインAを取り除くその能力が実際に示されなければならない。
【0236】
HCPクリアランス。バッチ収集物質をMabSelect(商標)(2.6×20cm)カラムにアプライした。溶出液中のHCPレベルを上記のように測定し、AY−04工程におけるFractogel(商標)S溶出液と比較した。データは、MabSelect(商標)クロマトグラフィーにより、負荷した99.9%のHCPが除去され、AY04のFractogel(商標)Sクロマトグラフィーにより、負荷した88−93%のHCPが除去されたことを実際に示した。期待した通り、プロテインAアフィニティー樹脂は、Fractogel(商標)S陽イオン交換樹脂より良いHCPクリアランス能を有した。
【0237】
浸出できるプロテインA。樹脂マトリックスから浸出したプロテインAを検出するために、市販のELISAキット(Cygnus Technologies社)を、プロテインA含有量を決定するために使用した。アフィニティーステップの間に浸出したプロテインAは、溶出液中でおよそ6ng/mg抗体であった。Q Sepharose(商標)およびフェニルHPによる高純度精製の後、浸出したプロテインAは、およそ0.02ng/mgに顕著に減少した。
【0238】
SDS−PAGE。変性還元SDS−PAGEを、プロテインA工程およびAY−04工程の間の中間の差を比較するために行った。各試料の抗体2μgを負荷した。ゲルにおいて明確な差は観察されない(図10)。
【0239】
MabSelect(商標)溶出pHの試験。プロテインAアフィニティー樹脂の場合、抗体は中性pHで結合し、酸性条件下で溶出する。低pHのウイルス減少/不活性化は非常に効率的であり、モノクローナル抗体の精製工程において幅広く使用されるため、ウイルス減少/不活性化ステップは、十分な時間、酸性のMabSelect(商標)溶出液を維持することによって単純化することができる。抗体回収収率および産物の質への溶出pHの影響を試験した。単量体の割合および全体のリジン変異体に関して、その最も高い回収収率および許容可能な産物の質に基づくMabSelect(商標)溶出pHとして、およそpH3.2の溶出を選択した。
【0240】
図11は、少なくとも90%の収率が、2.5から3.8の範囲の溶出pHについて得られ、収率の顕著な低下がpH4で起こることを実際に示す。これは、pH4より高い溶出バッファーpHでは、MabSelect(商標)樹脂から抗体を十分に溶出できないことを示唆する。
【0241】
抗体凝集への影響。MabSelect(商標)溶出液中の全ての抗体(アダリムマブ)単量体レベルは、92%より高かった(図12)。より高い溶出pHほどより少ない凝集体が生成されるが、それらは全て、2.5から3.8の範囲の溶出バッファーpHで、AY−04工程においてFractogel(商標)クロマトグラフィーの工程内の作用限界(SEC HPLC単量体≧92%)を満たした。1から3時間、酸性条件下での溶出液の保持時間により、抗体凝集に顕著な影響はなかった。
【0242】
3.抗IL−12抗体組成物における宿主細胞タンパク質濃度の決定
この手順では、抗IL−12抗体試料中の残留宿主細胞タンパク質濃度を決定するための試験方法論を記載する。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、特異抗体の2つの層の間に宿主細胞タンパク質(抗原)をサンドイッチする。これに続いて、カゼインを用いて非特異的部位をブロックする。宿主細胞タンパク質を、次いで抗原分子が一次抗体に捕獲される間、インキュベートする(抗原のコーティング)。抗原(宿主細胞タンパク質)に固定する二次抗体(ビオチン化した抗宿主細胞タンパク質)を次いで添加する。ビオチン化抗宿主細胞タンパク質に結合するHRPコンジュゲート型ニュートラアビジンを添加する。これに続いてKブルーサブストレートを添加する。青色を生成する発色性基質を、結合した酵素コンジュゲート型抗体によって加水分解する。色を黄色に変える2M HPOで反応を止める。色の強度は、ウェル中の結合した抗原の量に直接的に比例する。
【0243】
pH9.4の50mM重炭酸ナトリウム(コーティングバッファー)の調製。1Lのビーカーに、900mLのMilli−Q水;4.20g±0.01gの重炭酸ナトリウムを添加する。完全に溶解するまで撹拌する。1N NaOHでpH9.4まで調整する。1Lのメスフラスコに移し、Milli−Q水で体積を増やす。均一になるまで逆回転により混合する。0.22μmの無菌フィルターユニットに通して濾過する。調製の日から最大7日間、表示温度4℃で貯蔵する。
【0244】
0.104M NaHPO・7HO、1.37M NaCl、0.027M KCl、0.0176M KHPO、pH=6.8−6.9(10×PBS)の調製。およそ400mLのMilli−Q水をガラスビーカーに添加する。13.94g±0.01gのNaHPO・7HOを添加する。40.0g±0.1gのNaClを添加する。1.00g±0.01gのKClを添加する。1.20g±0.01gのKHPOを添加する。均一になるまで撹拌する。500mLのメスフラスコに移す。Milli−Q水でQSを500mLの体積にする。逆回転により混合する。0.2μmの無菌フィルターユニットに通して濾過する。室温で最大7日間貯蔵する。
【0245】
1×PBS+0.1%トリトンX−100、pH7.40(プレート洗浄バッファー)の調製。4Lのメスシリンダー中で、400mLの10×PBS(ステップ5.2)と3500mLのMilli−Q水を混合する。pHを確認し、必要に応じて1N HClまたは1N NaOHで7.40±0.05に調整する。Milli−Q水で体積を増やす。シリンダーをパラフィルムできつく覆い、均一になるまで逆回転により混合する。4Lのボトルに移す。4mLの1×PBSを除去し、捨てる。4mLのトリトンX−100を3996mLの1×PBSに添加する。撹拌プレート上に置き、完全に溶解するように撹拌する。希釈バッファーの調製に必要な量のプレート洗浄バッファーを、0.22μmの無菌フィルターユニットに通して濾過する。最大7日間、室温で貯蔵する。
【0246】
コーティング抗体混合物:アフィニティー精製したヤギ抗CHO599/626/748(ロット#G11201@1.534mg/mL)の調製。注意:バイアル中で表示温度−80℃で貯蔵した貯蔵物である。アリコートを調製する。使用時に1プレートにつき1アリコート取り出す。使用する前にすぐに、次のように冷たい50mM重炭酸ナトリウム中で最終濃度4μg/mLになるように抗体混合物を希釈する。例えば、31μLのコーティング抗体混合物を11969μLの冷たいコーティングバッファーに添加する。逆回転により穏やかに混合する。
【0247】
ビオチン化ヤギ抗宿主細胞タンパク質混合物、599/626/748(ロット#G11202@0.822mg/mL)の調製。注意:バイアル中で表示温度−80℃で貯蔵した貯蔵物である。アリコートを調製する。使用時に1プレートにつき1アリコート取り出す。使用する前にすぐに、次のように37℃±2℃のカゼイン中で最終濃度1μg/mLになるようにビオチン化抗体混合物を希釈する。例えば、14.6μLのビオチン化抗体混合物を11985μLの37℃±2℃のカゼインに添加する。逆回転により穏やかに混合する。
【0248】
ニュートラアビジン−HRPの調製。次のように新しいロット(2mg/バイアル)を1mg/mLに再構築する。400μLのMilli−Q水をバイアルに添加し、次いで1600μLの1×PBSを添加し、全体で2mLにする。混合するために穏やかにボルテックスする。表示温度−20℃で貯蔵する。1プレートにつき1アリコートを使用できるように、所望の体積のアリコートを調製する。ポリプロピレンチューブ中で調製する。新しいロットを限定して作業用濃度を決定する。調製の日から6カ月の終了を指定する。例えば、作業用濃度が0.2μg/mLと決定されれば、次のように調製する。使用する前にすぐに、室温でニュートラアビジン−HRPのアリコートを解凍する。1mg/mLのニュートラアビジン溶液を37℃±2℃のカゼインで0.1mg/mL(100μg/mL)に希釈する。例えば、×10希釈し、50μLのニュートラアビジンを450μLのカゼインに添加する。混合するために穏やかにボルテックスする。100μg/mL溶液を37℃±2℃のカゼインで0.2μg/mLにさらに希釈する。例えば、×500希釈し、24μLのニュートラアビジン(100μg/mL)を11976μLのカゼインに添加する。混合するために穏やかにボルテックスする。
【0249】
5.72Mリン酸(停止液)の調製。次のように濃縮したリン酸から2Mリン酸溶液を調製する。ラベル上に提示された%リン酸、密度(1.685g/mL)および式量(98g/モル)から、2Mリン酸500mLを調製するのに必要な濃縮したリン酸の体積を計算する。上記で計算した濃縮したリン酸の体積をフラスコに添加する。Milli−Q水で体積を増やし、均一になるまで逆回転により混合する。調製の日から最大6カ月間、外気温で貯蔵する。
【0250】
希釈溶液(pH7.4の1×PBS+0.1%トリトンX100中で×100希釈したカゼイン)の調製。(上記から得た)pH7.4の0.22μmの滅菌濾過した1×PBS+0.1%トリトンX100中で37℃±2℃のカゼインX100を希釈する。例えば、1mLの37℃±2℃のカゼインを99mLの0.22μmの滅菌濾過した1×PBS+0.1%トリトンX100、pH7.4に添加する。ウェルを混合する。各使用について新鮮に調製する。
【0251】
標準物質の調製。宿主細胞タンパク質標準物質(抗原標準物質)(ロット#G11203@1.218mg/mL)。注意:70μLアリコート中で表示温度−80℃で貯蔵した貯蔵物である。室温でアリコートを解凍する。希釈バッファーを用いて、ポリプロピレンチューブ中で連続希釈を行う。
【0252】
試料の調製。ポリプロピレンチューブにおいて、希釈バッファー中で最終バルク試料を24mg/mLに希釈する。濃度を記録する。注意:スパイクした試料の調製および以下に参照の12mg/mLの溶液の調製のために以下の溶液を使用する。ポリプロピレンマイクロチューブにおいて、希釈バッファー中で24mg/mLの溶液を12mg/mLにさらに希釈する。全部で6ウェルについて、プレート上に12mg/mLの各溶液をトリプリケートでウェルに負荷する。
【0253】
スパイクの調製。ポリプロピレンマイクロチューブにおいて、希釈バッファーで2×希釈することによって、上記で調製した20ng/mLの標準物質から10ng/mLの宿主細胞タンパク質スパイクを調製する。10ng/mLのスパイク溶液をプレート上の3ウェルに負荷する。スパイク試料について、ステップ6.1から得た20ng/mLの標準溶液を使用する。
【0254】
スパイクした試料の調製。ポリプロピレンマイクロチューブにおいて、24mg/mLの各最終バルク溶液300μLを、300μLの20ng/mLのスパイク溶液(6.1)でスパイクする。全部で6ウェルについて、スパイクした各試料溶液をトリプリケートでウェルに負荷する。
【0255】
対照の調製。対照の範囲は、通例の試験で使用する前に、新しい対照貯蔵溶液ごとに設定しなければならない。対照貯蔵物は、150μLのアリコートのバッチのABT−874薬物濃度を調製し、最大3年間、表示温度−80℃で凍結貯蔵する。
【0256】
作業用対照の調製。対照のアリコートを室温で解凍する。ポリプロピレンチューブ中で、希釈バッファーで対照を24mg/mLに希釈する。ポリプロピレンマイクロチューブ中で、24mg/mLの対照溶液を希釈バッファーで12mg/mLにさらに希釈する。単一の希釈液を調製し、プレートの3ウェル中に対照を負荷する。
【0257】
ELISAの手順。プレート洗浄ボトルをプレート洗浄バッファーで満たす(ステップ5.3を参照されたい。1×PBS+0.1%トリトンX−100)。プレートウォッシャーを用意する。次のパラメータを確認する。パラメータは、プレートタイプ:各サイクルについて1(全部で5サイクル)、体積:400μl、浸漬時間:10秒、吸入時間:4秒に設定すべきである。
【0258】
アッセイの手順。冷たい50mM重炭酸ナトリウム中の4μg/mLのヤギコーティング抗体混合物を100μL/ウェルでプレートにコートする。コーティング溶液が、ウェルの底を均一に覆うまで、プレートの側面をたたき、密封テープで覆い、プレートシェーカー(または同等物)上で、18時間±1時間、スピード3で振盪させながら、表示温度4℃でインキュベートする。一晩中インキュベートした後、冷蔵庫からプレートを取り出し、室温に平衡化することができる。コーティングを振り落とす。ペーパータオル上でプレートをブロットする。300μL/ウェルの37℃±2℃のカゼインでブロックし、密封テープで覆い、Lab−line Environプレートシェーカー(または同等物)上で80rpm±5rpmで1時間、振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。ブロッキングインキュベーションの間、標準物質、試料、対照、スパイクおよびスパイクした試料を調製する。洗浄バッファーで5回プレートを洗浄する。ペーパータオル上でプレートをブロットする。8チャンネルピペットを用いて、100μL/ウェルの標準物質、試料、スパイク、スパイクした試料およびコントロールを、プレートのトリプリケートのウェル中にピペットで入れる。100μL/ウェルの希釈バッファーを、プレートの全て空のウェル中にピペットで入れ、ブランクとして利用する。密封テープで覆い、Lab−line Environプレートシェーカー(または同等物)上で80rpm±5rpmで1時間、振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。鋳型を記入し、プレートに負荷するときにガイドとして使用する。
【0259】
プレートリーダーの設定。標準物質についての濃度を入力してテンプレートを設定する。試料、対照、スパイクまたはスパイクした試料についての希釈因子は入力しない。全ウェルから差し引く、ブランクとしての希釈液を含むウェルを指定する。プレートを洗浄バッファーで5回洗浄する。ペーパータオル上でプレートをブロットする。100μL/ウェルのビオチン化ヤギ抗体を添加する。密封テープで覆い、Lab−line Environプレートシェーカー(または同等物)上で80rpm±5rpmで1時間、振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。プレートを洗浄バッファーで5回洗浄する。ペータータオル上でプレートをブロットする。100μL/ウェルのニュートラアビジン−HRPコンジュゲート溶液を添加する。密封テープで覆い、Lab−line Environプレートシェーカー(または同等物)上で80rpm±5rpmで1時間、振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。プレートを洗浄バッファーで5回洗浄する。ペーパータオル上でプレートをブロットする。100μL/ウェルの冷たいKブルーサブストレートを添加し、密封テープで覆い、Lab−lineタイタープレートシェーカー(または同等物)上でスピード3で振盪させながら、室温で10分間インキュベートする(基質を最初の列に添加したらすぐにタイマーを始動させる)。100μL/ウェルの2Mリン酸を添加することによって反応を停止させる(ステップ5.7)。スピード3で3−5分間プレートシェーカー上にプレートを置く。450nmでプレートを読み込む。
【0260】
データ解析および計算。注意:光学密度が標準曲線の実際的な定量化の限界内に入り、後述の%CVまたは%差の基準を満たす、試料、スパイク、スパイクした試料および対照のみが許容可能である。試料のODが、2.5ng/mLの標準物質より下に入れば、結果は2.5ng/mL以下として報告すべきである。この値を次いで希釈した試料濃度(12mg/mL)で割って、ng/mgでの値を報告すべきである。上記の標準曲線となる非スパイクおよび/またはスパイクした試料を引き起こす宿主細胞濃度において試料が高ければ、>100ng/mLとして値を報告する。この値を次いで希釈した試料濃度(12mg/mL)で割って、ng/mgでの値を報告すべきである。試料が、2.5ng/mLの標準物質より下であるとき、スパイクリカバリー計算について試料の値をゼロと考える。
【0261】
標準曲線。標準物質の濃度は、プロトコールのテンプレート中に入力される必要がある。二次曲線適合を用いる。決定係数は=0.99でなければならず、トリプリケートのウェル間の%CVは=20%でなければならない。この基準が満たされなければ、1つの標準物質(1つのレベル、3ウェル)を除外できる。1.25ng/mLを除外する場合、2.5ng/mLおよび100ng/mL(残りの標準曲線の点)の光学密度の範囲内に入る光学密度を有する試料およびスパイクした試料のみが許容可能である。さらに、各標準物質レベルのトリプリケートについて、1つのウェルが明らかに汚染されているまたは低い結合性を示す場合、それを除外できる。あるウェルを標準物質レベルから除外する場合、残りのリプリケートは%差=20%でなければならない。プレートのバックグラウンド(ブランク)に近いOD値を示す最低レベルの標準物質の%CVは、=30%であるべきである。1つのウェルを除外する場合、残りのリプリケートの%差は=35%でなければならない。最低レベルの標準物質を除外する場合、残りの標準曲線レベルの光学密度の範囲内に入る光学密度を有する試料およびスパイクした試料のみが許容可能である。
【0262】
試料。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。トリプリケートのウェル間の%CVを報告する。各試料希釈からの1つのウェルを除外できる。残りのリプリケートは=20%の%差でなければならない。注意:非スパイク試料のODが、2.5ng/mLの標準物質のODを下回る場合、%差の基準は、非スパイクの結果に適用しない。上記の計算を参照されたい。
【0263】
実際の宿主細胞濃度(ng/mg)を、次のように平均値(ng/mL)から計算する:CHO宿主細胞タンパク質(ng/mg)=平均の「非スパイク試料の結果(ng/mL)」÷希釈した試料濃度(12mg/mL)。
【0264】
スパイク。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。%CVを記録する。スパイクからの1つのウェルを除外できる。残りの点は%差=20%でなければならない。上記の計算を参照されたい。ng/mLにおける宿主細胞濃度を報告する。この結果を、スパイクリカバリー計算に使用する。スパイクについての結果の濃度(ng/mL)は、理論上のスパイクの濃度の±20%でなければならない。結果を記録し合否を示す。スパイクの結果が、理論上の20%以内でなければ、アッセイは繰り返さなければならない。平均のスパイク濃度(ng/mL)÷10ng/mL×100は、=100%±20%でなければならない。
【0265】
スパイクした試料。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。トリプリケートのウェル間の%CVを記録する。スパイクした各試料希釈からの1つのウェルを除外できる。残りのリプリケートは、%差=20%でなければならない。上記の計算を参照されたい。各希釈についてng/mLで「スパイクした試料の結果」を報告する。デュプリケートの希釈物間での%差を記録する。希釈物間の%差は=25%でなければならない。これらの結果をスパイクリカバリー計算に使用する。
【0266】
以下の式を用いて、各希釈物セットについて%スパイクリカバリーを計算する:%スパイクリカバリー=スパイクした試料の値−非スパイク試料の値×100
スパイク値。注意:(1)非スパイク試料の値のODが、2.5ng/mLの標準物質を下回る場合、%スパイクリカバリー計算においてゼロと値を考える。%スパイクリカバリーは、各試料の各希釈について、100%±50%(50%−150%)でなければならない。結果および合否を記録する。
【0267】
対照。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。%CV結果を記録する。対照からの1つのウェルを除外できる。残りのリプリケートは%差=20%でなければならない。上記の計算を参照されたい。ng/mLにおける対照での宿主細胞濃度を報告する。次のように、ng/mgにおける宿主細胞濃度を計算する:宿主細胞タンパク質(ng/mg)=対照の宿主細胞タンパク質の結果(ng/mL)。
【0268】
4. 抗IL−12抗体組成物中のプロテインA濃度の決定
このELISAでは、プレートをニワトリ抗プロテインAでコートし、インキュベートする。非特異部位を、PBS中でカゼインを用いてブロックする。プレートを1×PBS+0.1%トリトンX−100中で洗浄して、結合しなかった物質を除去する。試料およびCys−プロテインA標準物質を、1×PBS+4.1%トリトンX+10%カゼイン中で希釈する。95℃±2℃で加熱することによって溶液を変性し、ABT−874からプロテインAを分離する。溶液を次いでプレートに添加し、インキュベートする。結合しなかった物質を、1×PBS+0.1%トリトンX−100で洗浄して流す。ビオチン化ニワトリ抗プロテインAをマイクロタイタープレートに添加し、インキュベートする。プレートを洗浄して結合しなかった物質を除去し、ニュートラアビジン−ペルオキシダーゼコンジュゲートを添加する。
【0269】
ニュートラアビジンは、ウェルに結合したビオチン化ニワトリ抗プロテインAに結合する。プレートを再び洗浄して、結合しなかったニュートラアビジンを除去し、K−Blue(テトラメチルベンジジン(TMB))基質をプレートに添加する。青色を呈する結合したニュートラアビジンによって基質を加水分解する。リン酸を用いて反応を停止させ、これにより色が黄色に変化する。ウェルにおける黄色の強度は、ウェル中に存在するプロテインAの濃度に直接比例する。
【0270】
試薬および溶液カゼインの調製瓶は、37℃±2℃に温め、2分間超音波処理し、等分しなくてはならない。アリコートは、表示温度4℃で貯蔵しなければならない。アッセイを実行するとき、必要な数のカゼインのアリコートを、37℃±2℃で置くべきである。コーティングバッファーおよび基質を冷却して(使用する直前に表示温度4℃から取り出して)使用する。
【0271】
pH9.4の50mM重炭酸ナトリウム(コーティングバッファー)。1Lのビーカーに、900mLのMilli−Q水4.20g±0.01g重炭酸ナトリウムを添加する。完全に溶解するまで撹拌する。1N NaOHでpHを9.4に調整する。1Lのメスフラスコに移し、Milli−Q水で体積を増やす。均一になるまで逆回転により混合する。0.22CAμmの無菌フィルターユニットに通して濾過する。調製の日から最大7日間、表示温度4℃で貯蔵する。
【0272】
104M NaHPO・7HO、1.37M NaCl、0.027M KCl、0.0176M KHPO、pH=6.8−6.9。(10×PBS):およそ400mLのMilli−Q水をガラスビーカーに添加する。13.94g±0.01gのNaHPO・7HOを添加する。40.0g±0.1gのNaClを添加する。1.00g±0.01gのKClを添加する。1.20g±0.01gのKHPOを添加する。均一になるまで撹拌する。500mLのメスフラスコに移す。Milli−Q水でQSを500mLの体積にする。逆回転により混合する。0.2CAμmの無菌フィルターユニットに通して濾過する。最大7日間、室温で貯蔵する。
【0273】
1×PBS+0.1%トリトンX−100、pH7.40:(プレート洗浄バッファー)。4Lのメスシリンダー中で、400mLの10×PBS(上記を参照されたい)と3500mLのMilli−Q水を混合する。pHを確認し、必要であれば1N HClまたは1N NaOHで7.40±0.05に調整する。Milli−Q水で体積を増やす。シリンダーにきつくパラフィルムをし、均一になるまで逆回転により混合する。4Lの瓶に移す。4mLの1×PBSを除去し、捨てる。4mLのトリトンX−100を3996mLの1×PBSに添加する。撹拌プレート上に置き、完全に溶解するまで撹拌する。最大7日間、室温で貯蔵する。
【0274】
ニワトリ抗プロテインAコーティング抗体。使用するときに、1つのプレートにつき1アリコートの抗体を取り出す。ニワトリ抗プロテインAの新しいロットを限定するために、(コーティングの試料ロットから調製した)一緒にコンジュゲートしたニワトリ抗プロテインA−ビオチンを使用および限定する必要があり得る。使用する直前に、冷たい50mM重炭酸ナトリウム中で、抗体混合物をコーティングの限定の間に決定した濃度に希釈する。例えば、限定の間に、プレート上に負荷するコーティングの濃度を6μg/mLと決定した場合、および貯蔵物の濃度が3000μg/mLである場合、次いで24μLのコーティング抗体を、11976μLの冷たいコーティングバッファーに添加する。逆回転により穏やかに混合する。
【0275】
ビオチン化ニワトリ抗プロテインA。使用するときに、1つのプレートにつき1アリコートの抗体を取り出す。コンジュゲートしたニワトリ抗プロテインA−ビオチンの新しいロットを限定するために、それを調製したニワトリ抗プロテインAの同じロットで、それを使用および限定する必要があり得る。使用する直前に、37℃±2℃のカゼイン中で、ビオチン化抗体の限定の間に決定した濃度にビオチン化抗体を希釈する。例えば、限定の間に、プレート上に負荷するビオチン化抗体の濃度を4μg/mLと決定した場合、および貯蔵物の濃度が1000μg/mLである場合、次いで48μLのビオチン化抗体を、11952μLの37℃±2℃のカゼインに添加する。逆回転により穏やかに混合する。
【0276】
ニュートラアビジン−HRP。新しいロット(2mg/バイアル)を次のように1mg/mLに再構成する。400μLのMilli−Q水をバイアルに添加し、次いで1600μlの1×PBSを添加し、全体で2mLにする。穏やかにボルテックスして混合する。表示温度−80℃で貯蔵する。1つのプレートにつき1アリコートを使用できるように、所望の体積でアリコートを調製する。ポリプロピレンチューブ中で調製する。調製の日から6カ月の有効期限を指定する。例えば、作用濃度を0.1μg/mLと決定したら、次のように調製する。使用する直前に、室温で1アリコートのニュートラアビジン−HRPを解凍する。1mg/mLのニュートラアビジン溶液を、37℃±2℃のカゼインで0.01mg/mL(10μg/mL)に希釈する。例えば、×10希釈し、50μLのニュートラアビジンを450μLのカゼインに添加する。穏やかにボルテックスして混合し、再び×10にし、100μLの×10のニュートラアビジンを900μLのカゼインに添加する。穏やかにボルテックスして混合する。10μg/mLの溶液を、37℃±2℃のカゼインで0.1μg/mLにさらに希釈する。例えば、×100希釈し、120μLのニュートラアビジン(10μg/mL)を11880μLのカゼインに添加する。数回穏やかにひっくり返して混合する。
【0277】
停止溶液(購入した1Nリン酸を使用する。)を、受け取った日から最大1年間、外気温で貯蔵する。希釈バッファー(1×PBS+4.1%トリトンX100+10%カゼイン、pH7.4)。(ステップ5.3から得た)pH7.4の86mLの1×PBS+0.1%トリトンX100をビーカーまたはフラスコに添加し、4mLのトリトンX−100および10mLのPBS中ブローカーカゼインを添加し、撹拌して溶解/混合する。トリトンを溶解するために20から30分かかり得る。これは、pH7.4の、1×PBS+4.1%トリトンX100+10%カゼイン溶液と同等である。0.22CAμmの無菌フィルターユニットに通して濾過する。使用毎に新鮮に調製する。これは1つのプレートに十分である。
【0278】
プロテインA標準物質(抗原標準物質)。注意:貯蔵物を70μLのアリコート中で、表示温度−20℃で貯蔵する。氷上で1アリコートを解凍する。製造業者COAにおいて提示された濃度を用いて、希釈バッファー(上記を参照されたい)を用いて、以下の表のポリプロピレンチューブ中で、実施例に従い連続希釈を行う。例えば、貯蔵物の濃度を2.1mg/mL(2100000ng/mL)とCOAが提示したら、氷上で試料を解凍する。ポリプロピレン微量遠心機チューブにおいて、希釈バッファー(上記)中で最終のバルク試料を20mg/mLに希釈する。2つの別々の希釈を行う。濃度を記録する。以下の溶液を使用し、スパイクした試料を調製し、10mg/mLの溶液を調製する。ポリプロピレン微量遠心機チューブにおいて、希釈バッファー中で20mg/mLの溶液を10mg/mLにさらに希釈する。
【0279】
スパイクの調製。ポリプロピレン微量遠心機チューブにおいて、希釈バッファーで2×にそれを希釈することによって、上記のステップ6.1で調製した0.593ng/mLの標準物質から得た0.296ng/mLのプロテインAのスパイクを調製する。単回の希釈を行う。0.296ng/mLのスパイク溶液についてのトリプリケートのウェルを、プレート上に負荷する。試料をスパイクするために、ステップ6.1から得た0.593ng/mLの標準溶液を使用する。
【0280】
スパイクした試料の調製。ポリプロピレン微量遠心機チューブにおいて、20mg/mLの各最終バルク溶液500μLに、0.593ng/mLのスパイク溶液500μLをスパイクする。変性のために維持する。スパイクした各試料溶液についてのトリプリケートのウェルを、計6ウェルについてプレート上に負荷する。
【0281】
対照の調製。多くのABT−874薬物を得る。150μLのアリコートを調製し、等分した日から3年間、表示温度−80℃で凍結して貯蔵する。
【0282】
対照の作動:氷上で1アリコートの対照を解凍する。ポリプロピレン微量遠心機チューブにおいて、希釈バッファーで対照を10mg/mLに希釈し、1000μLの最終体積にする。単回の希釈を調製する。変性のために維持する。対照のトリプリケートのウェルを、プレート上に負荷する。
【0283】
変性。プレートのブランクについて、1000μLの希釈バッファーを、プレート上に実行するブランクと同等数の微量遠心機チューブに添加する。チューブの蓋をパラフィルムで覆い、これらが加熱中に突発的に開くのを防ぐことができ、または蓋を閉めたままにするために第2ラックをそれらの上部に置くことができる。標準物質、非スパイク試料、スパイクした試料、スパイク、ブランクおよび対照を、95℃±2℃で15分間加熱する。使用した場合、冷却中にチューブからパラフィルムを除去する。15分間、冷却させ、およそ10000rpmで5分間遠心分離する。700μLの上清をマイクロチューブ中に移し、プレート上に負荷する。トリトン/タンパク質のペレットを乱さないように気をつける。
【0284】
プレートウォッシャーの指示およびウォーターバスの設定。プレート洗浄瓶をプレート洗浄バッファー(ステップ5.3を参照されたい、1×PBS+0.1%トリトンX−100)で満たす。プレートウォッシャーを用意する。次のパラメータを確認する。パラメータは、各サイクル(計4サイクル)についてプレート型:1:吸引スピード:10mm/秒、体積:400μL、浸漬時間:5秒、吸引時間:6秒に設定すべきである。ウォーターバスをオンにし、95℃に設定する。ウォーターバスの温度を、少なくとも30分間95℃±2℃に平衡化させる。
【0285】
アッセイの手順:ステップが完了するとき、これらを確認して印を付けることによって、チェックリストをガイドとして使用することができる。さらに、アッセイの間に使用した全機器を記録する。アッセイを実行する日毎に使用する量のカゼインのアリコートは、37℃±2℃で置かなければならない。コーティングバッファーおよび基質を冷却して使用する。ブロッキングインキュベーションの前または間に、標準物質、試料、対照、スパイクおよびスパイクした試料を調製する。希釈物を調製し、エッペンドルフチューブに移し、15分間変性し、15分間冷却し、5分間遠心分離し、マイクロチューブに移すために、1時間のブロックインキュベーションより長くかかってもよい。プレートをブロックする前に、少なくとも40分でもよい。試料、スパイクした試料、標準物質、対照、アッセイのスパイクおよびブランクを、12チャンネルピペットを用いて、列BからGにかけてプレート上に水平に負荷する。標準物質を、高濃度から低濃度に負荷する。プレートのコーティング、ビオチンの添加、ニュートラアビジンの添加、基質の添加および停止溶液の添加を、カラム2から11にかけて垂直に行う。
【0286】
冷たい50mM重炭酸ナトリウム中で、100μL/ウェルのコーティング抗体でプレートをコートする。コーティング溶液がウェルの底を均一に覆うまで、プレートの側面をたたき、シーリングテープで覆い、プレートシェーカー(または同等物)上でスピード3で振盪させながら、表示温度4℃でインキュベートする。
【0287】
一晩インキュベートした後、冷蔵庫からプレートを取り出し、室温に平衡化させる。コーティングを振って落とす。ペーパータオル上にプレートをブロットする。300μL/ウェルの37℃±2℃のカゼインでブロックし、シーリングテープで覆い、Lab−lineのEnvironプレートシェーカー(または同等物)上で、80rpm±5rpmで1時間±10分間振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。
【0288】
ブロッキングインキュベーションの前および間に、標準物質、試料、対照、スパイクおよびスパイクした試料を調製する。プレートを洗浄バッファーで4回洗浄する。プレートをペーパータオル上にブロットする。8チャンネルピペットを用いて、100μL/ウェルの変性した標準物質、試料、スパイク、スパイクした試料、ブランクおよび対照を、プレートのトリプリケートのウェル中にピペットで入れる。プレートの外側のウェルは使用せず、非処理の希釈バッファーをこれらのウェルに添加する。シーリングテープで覆い、Lab−lineのEnvironプレートシェーカー(または同等物)上で、80rpm±5rpmで2時間振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。プレートに負荷するときに、ガイドとして使用するためにテンプレートを充填する。
【0289】
プレートリーダーの設定。プレートを洗浄バッファーで4回洗浄する。プレートをペーパータオル上にブロットする。100μL/ウェルのビオチン化抗体を添加する。シーリングテープで覆い、Lab−lineのEnvironプレートシェーカー(または同等物)上で、80rpm±5rpmで1時間振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。
【0290】
プレートを洗浄バッファーで4回洗浄する。プレートをペーパータオル上にブロットする。100μL/ウェルのニュートラアビジン−HRPコンジュゲート溶液を添加する。ニュートラアビジンを最後の列に添加してすぐにタイマーを始動させる。シーリングテープで覆い、Lab−lineのEnvironプレートシェーカー(または同等物)上で、80rpm±5rpmで30分間振盪させながら、37℃±2℃でインキュベートする。プレートを洗浄バッファーで4回洗浄する。プレートをペーパータオル上にブロットする。100μL/ウェルの冷たいK−Blue基質を添加し、シーリングテープで覆い、Lab−lineの滴定プレートシェーカー(または同等物)上でスピード3で振盪させながら、室温で10分間インキュベートする(基質を最初の列に添加してすぐにタイマーを始動させる)。100μL/ウェルの1Nリン酸を添加することによって反応を停止させる。プレートをプレートシェーカー上にスピード3で3分間置く。プレートを450nmで読み取る。
【0291】
データ解析および計算。注意:標準曲線の実際の定量化限界内に入り、後述の%CVまたは%差の基準を満たす光学密度を有する試料、スパイク、スパイクした試料および対照のみが許容される。試料のODが標準曲線を下回る場合、結果は0.18ng/mL(アッセイLOQ)未満と報告すべきである。この値は、次いで希釈した試料濃度(10mg/mL)で割って、ng/mgの値を報告すべきである。試料のプロテインA濃度が高く、非スパイクのおよび/またはスパイクした試料が標準曲線を上回る場合(2ng/mL)、標準曲線内になるようにさらに希釈する。次いで、この値を、希釈した試料濃度で割って、ng/mgの値を報告すべきである。スパイクリカバリー計算について、非スパイク試料の値(ng/mL)が曲線を下回る場合でも、スパイクした試料の値(ng/mL)から非スパイク試料の値(ng/mL)を引く。値が負である場合、または「範囲」が得られた場合、スパイクリカバリー計算について、非スパイク試料をゼロと考える。
【0292】
標準曲線。標準物質の濃度は、プロトコールのテンプレート中に入力される必要がある。二次曲線適合を用いる。決定係数は=0.99でなければならず、トリプリケートのウェル間の%CVは=20%でなければならない。この基準が満たされなければ、1つの標準物質(1つのレベル、3ウェル)を除外できる。0.18ng/mLを除外する場合、0.26ng/mLおよび2ng/mL(残りの標準曲線の点)の光学密度の範囲内に入る光学密度を有する試料およびスパイクした試料のみが許容可能である。さらに、各標準物質レベルのトリプリケートについて、1つのウェルが明らかに汚染されているまたは低い結合性を示す場合、それを除外できる。あるウェルを標準物質レベルから除外する場合、残りのリプリケートは%差=20%でなければならない。プレートのバックグラウンド(ブランク)に近いOD値を示す最低レベルの標準物質についての%CVは、=30%であるべきである。1つのウェルを除外する場合、残りのリプリケートについての%差は=35%でなければならない。最低レベルの標準物質を除外する場合、残りの標準曲線レベルの光学密度の範囲内に入る光学密度を有する試料およびスパイクした試料のみが許容可能である。
【0293】
%差を次のように計算する。%差=(吸光度(結果の希釈物1−結果の希釈物2)/平均値)×100%。標準物質が上記の基準を満たさなければ、アッセイは繰り返さなければならない。%CVおよび/または%差の値および標準曲線の決定係数の結果を報告する。
【0294】
試料。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。トリプリケートのウェル間の%CVを報告する。各試料の希釈からの1つのウェルを除外できる。残りのリプリケートは=20%の%差でなければならない。注意:非スパイク試料のODが、最低レベルの標準物質のODを下回る場合、%差の基準は、非スパイクの結果に適用しない。上記の計算を参照されたい。
【0295】
各希釈についての「非スパイク試料の結果(ng/mL)」を報告する。これらの値は、スパイクリカバリー計算において使用する。平均の「非スパイク試料の結果(ng/mL)」および希釈物間の%差を計算する。結果を報告する。希釈物間の%差は、=25%でなければならない。実際のプロテインA濃度(ng/mL)を平均値(ng/mL)から次のように計算する。プロテインA(ng/mL)=平均の「非スパイク試料の結果(ng/mL)」÷希釈した試料濃度(10mg/mL)。結果を記録する。
【0296】
スパイク。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。%CVを記録する。スパイクからの1つのウェルを除外できる。残りの点は%差=20%でなければならない。上記の計算を参照されたい。ng/mLにおけるプロテインA濃度を報告する。この結果は、スパイクリカバリー計算に使用する。スパイクについての結果の濃度(ng/mL)は、理論上のスパイクの濃度の±20%でなければならない。結果を記録し、合否を示す。スパイクの結果が、理論上の20%以内でなければ、アッセイは繰り返さなければならない。平均のスパイク濃度(ng/mL)÷0.296ng/mL×100は、=100%±20%でなければならない。
【0297】
スパイクした試料。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。トリプリケートのウェル間の%CVを記録する。スパイクした各試料希釈物からの1つのウェルを除外できる。残りのリプリケートは、%差=20%でなければならない。上記の計算を参照されたい。各希釈物についてng/mLで「スパイクした試料の結果」を報告する。デュプリケートの希釈物間での%差を記録する。希釈物間の%差は=25%であるべきである。これらの結果はスパイクリカバリー計算に使用する。以下の式を用いて、各希釈物セットについて%スパイクリカバリーを計算する:%スパイクリカバリー=スパイクした試料の値−非スパイク試料の値×100
【0298】
スパイク値。注意:スパイクリカバリー計算について、非スパイク試料の値(ng/mL)が曲線を下回る場合でも、スパイクした試料の値(ng/mL)から非スパイク試料の値(ng/mL)を引く。値が負である場合、または「範囲」が得られた場合、スパイクリカバリー計算について、非スパイク試料をゼロと考える。%スパイクリカバリーは、各試料の各希釈について、100%±50%(50%−150%)でなければならない。結果および合/否を記録する。
【0299】
対照。%CVは、トリプリケートのウェル間で=20%であるべきである。%CV結果を記録する。対照からの1つのウェルを除外できる。残りのリプリケートは%差=20%でなければならない。
【0300】
様々な文献が本明細書に引用され、それらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]