特許第5808255号(P5808255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808255
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】パスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/16 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   A23L1/16 E
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-1542(P2012-1542)
(22)【出願日】2012年1月6日
(65)【公開番号】特開2013-141416(P2013-141416A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 大祐
(72)【発明者】
【氏名】長坂 真理
(72)【発明者】
【氏名】上野 加奈江
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−344871(JP,A)
【文献】 特開2000−050825(JP,A)
【文献】 特開2011−036172(JP,A)
【文献】 特開2007−089403(JP,A)
【文献】 市販のカルボナーラソースにひと手間で 美味しさUP レシピ・作り方, [retrieved on 2015-02-12],楽天レシピ,2010年,<URL:http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1600000350/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/16 − 1/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩と食品用増粘物質とチーズとを含み、前記チーズの含有量が35〜85重量%である粉末調味材を、茹でたパスタに添加混合し、その後、当該パスタに生の卵を添加して更に混合することを特徴とするパスタの製造方法。
【請求項2】
前記チーズが、チェダチーズ、ゴーダチーズ、パルメザンチーズ、ゴルゴンゾーラチーズのうちの1種又は2種以上を含むものである、請求項に記載のパスタの製造方法。
【請求項3】
前記食品用増粘物質が、α化澱粉、パン粉、デキストリンの1種又は2種以上を含むものである、請求項1又は2に記載のパスタの製造方法。
【請求項4】
前記粉末調味材が、更に乾燥卵黄を含むものである、請求項1〜のいずれか1項に記載のパスタの製造方法。
【請求項5】
前記粉末調味材が、更に炭酸カルシウムを含むものである、請求項1〜のいずれか1項に記載のパスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも食塩と食品用増粘物質を含む粉末調味材を、茹でたパスタと混合してパスタの表面に付着させた後、当該パスタに生の卵を添加して更に混合することによって、滑らかなソースの食感とフレッシュな卵の風味が感じられるパスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スパゲティや焼きそば等の麺類等の食品に、振り掛けて混ぜ合わせるだけで均一に分散、付着するような粉末ソースが知られている。例えば、特許文献1には、粉末ソースベース及び粉末油脂を主体とする粉末ソース組成物であって、該粉末油脂由来の油脂分が、粉末ソース組成物全体重量中の2.0重量%以上であることを特徴とする粉末ソース組成物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、チーズ及び卵黄の凝集が発生せず、滑らかな食感を有するカルボナーラソースの製造方法として、(a)澱粉を含まず、卵黄およびチーズを含有する水分散液を加熱する工程と、(b)工程(a)を経た前記水分散液を均質化処理する工程と、(c)工程(b)で得られた均質化処理液と澱粉とを混合する工程と、(d)工程(c)で得られた混合物を加熱する工程と、を含むことを特徴とする、カルボナーラソースの製造方法が開示されている。このカルボナーラソースはペースト状のものであり、実施例1に記載されているように長期保存のためにはレトルト殺菌処理がなされている。
【0004】
また、特許文献3には、レトルト処理されているにも拘らず、卵黄及びナチュラルチーズを高濃度(チーズをナチュラルチーズ換算で1.0%以上)に含有させたとしても比較的低粘度を示し、しかも滑らかな状態が維持されたカルボナーラ用レトルトソース及びその製造方法が開示されている。しかし、このカルボナーラ用ソースは、レトルト処理された比較的低粘度のペースト状のものであり、レトルト処理による過度の加熱で風味、食感への影響が全くないとは言い切れず、更に使用時には加熱して温めるという手間が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−344871号公報
【特許文献2】特開2007−166959号公報
【特許文献3】特開2005−198549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、滑らかなソースの食感とフレッシュな卵の風味が感じられるパスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、以下の発明を包含する。
(1)食塩と食品用増粘物質とを含む粉末調味材を、茹でたパスタに添加混合し、その後、当該パスタに生の卵を添加して更に混合することを特徴とするパスタの製造方法。
(2)前記粉末調味材がチーズを含むものである、(1)に記載のパスタの製造方法。
(3)前記チーズが、チェダチーズ、ゴーダチーズ、パルメザンチーズ、ゴルゴンゾーラチーズのうちの1種又は2種以上を含むものである、(2)に記載のパスタの製造方法。
(4)前記食品用増粘物質が、α化澱粉、パン粉、デキストリンの1種又は2種以上を含むものである、(1)〜(3)のいずれかに記載のパスタの製造方法。
(5)前記粉末調味材が、更に乾燥卵黄を含むものである、(1)〜(4)のいずれかに記載のパスタの製造方法。
(6)前記粉末調味材が、更に炭酸カルシウムを含むものである、(1)〜(5)のいずれかに記載のパスタの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記粉末調味材を茹でたパスタと混合してパスタの表面に付着させた後、当該パスタに生の卵を添加して更に混合することにより、当該粉末調味材が卵の水分を取り込んで滑らかな食感のソースが生成されると共に、レトルト殺菌等の加熱殺菌処理による臭みがなく、フレッシュな卵の風味が感じられるパスタを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、食塩と食品用増粘物質を含む粉末調味材を用いる。この粉末調味材には、食塩と食品用増粘物質以外に、例えばチーズを含ませることができる。チーズを含ませる場合には、例えば、乾燥パスタ100g当たり10〜20gであることが、チーズ風味の豊かなカルボナーラ風パスタを得ることができるという面から好ましい。また、粉末調味材中のチーズの含有量としては、チーズがダマにならず、パスタに適度に付着させるという観点から、35〜85重量%であることが好ましい。なお、乾燥パスタを茹で上げると概ね2.5倍の量になるということからすると、乾燥パスタ100gを茹で上げると250g程度、即ち1人前量のパスタになる。
【0010】
チーズの種類としては、チェダチーズ、エダムチーズ、ゴーダチーズ、パルメザンチーズ、ゴルゴンゾーラチーズ、カマンベールチーズ、ストロングチーズ、モッツァレラチーズ、クリームチーズ等を例示することができる。これらの中から1種又は2種以上を適宜選択すればよいが、濃厚なチーズ風味を醸し出すという点からはチェダチーズ、ゴーダチーズ、パルメザンチーズ、ゴルゴンゾーラチーズの中から1種又は2種以上を選択することが好ましく、更にはチェダチーズ、ゴーダチーズ、パルメザンチーズ、ゴルゴンゾーラチーズの4種を混合して使用することが更に好ましい。
【0011】
また、チーズは、粉末調味材として含ませることから、粉末状に加工した粉末状チーズであることが好ましい。2種以上のチーズを用いる場合は、各チーズを夫々別々に粉末に加工してもよいし、全てのチーズを予め混合溶融させた後に粉末状に加工してもよい。
【0012】
本発明において粉末調味材に含ませる食塩はパスタの調味に不可欠のものであるが、他方、生の卵を加えて混合すると卵液の粘性を低下させてしまう作用がある。卵液の粘性の低下は、得られるソースがパスタに絡み難くなってしまうという問題をもたらす。この問題を解消するために、本発明においては粉末調味材に食品用増粘物質を含ませる。
【0013】
食品用増粘物質としては、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉等のα化澱粉、パン粉粉砕物、デキストリンがあり、これ以外にカルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、カラギーナン、アラビアガム等の増粘剤を掲げることができる。これらのうち、α化澱粉、パン粉、デキストリンの1種又は2種以上を含有させることが好ましく、更に好ましくはα化澱粉を含有させることである。
【0014】
食品用増粘物質を粉末調味材に含ませることにより、卵を含むソースがパスタに絡んでパスタ全体にフレッシュな卵の風味を付与することができる。そのための食品用増粘物質の量としては、その種類によって異なるが、例えばα化澱粉の場合には、粉末調味材中に1.0〜2.0重量%、好ましくは1.2〜1.6重量%含有させるのがよい。また、α化澱粉としては小麦澱粉であることが好ましい。他の食品用増粘物質についても、前記量のα化澱粉を含有させることによるソースの粘性に近い状態にするのに必要な量を前記粉体調味材に含有させればよい。
【0015】
また、粉末調味材には、上記以外に、乳加工粉末や酸味料等を含有させてもよく、乳加工粉末としては、具体的には全粉乳、脱脂粉乳、クリーミングパウダー、醗酵乳粉末、カゼイン粉末等を掲げるとができる。但し、前記チーズ粉末は乳加工粉末には含まれないものとする。
【0016】
酸味料は、特にチーズを用いる場合に、ソースに酸味を付与することによりチーズ風味を強調するという作用を有しており、こうした酸味料としては、具体的には、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸等を掲げることができる。これらの中でも、リンゴ酸はマイルドな酸味を有しており、前記チーズ風味にクリーミー感を付与することができるという点から好ましい。
【0017】
また、カルボナーラ風のパスタを得ようとする場合には、粉末調味材に乾燥卵黄を更に含ませてもよい。この場合、カルボナーラらしい色調と風味を醸し出すという点において有効に作用させることができる。更に、粉末調味材に炭酸カルシウムを含有させることにより、粉末調味材に流動性を付与することができる。したがって、粉末調味材を包装袋に密封した形態とし、パスタを製造するときに、包装袋を開封して粉末調味材を茹でたパスタに振りかけて添加する場合に有効である。
【0018】
また、粉末調味材には、粒状固形食材を含有させてもよい。これによって、カルボナーラ風食品を喫食する際に食感の変化を楽しむことができる。当該粒状固形食材としては、粒状大豆蛋白、ネギやニンジン等の乾燥野菜類、ベーコンや焼き豚等の乾燥畜肉類、アサリやエビ、昆布等の乾燥魚介類があり、これらから選択される1種又は2種以上を添加混合する。これら粒状固形食材の大きさは、見た目の具材感を付与することができる程度の大きさであれば、特に限定されるものではない。
【0019】
その他の粉末原料として、黒コショウなどの香辛料粉末、グラニュー糖、旨味調味料、エキス類、香料等を前記粉末調味材に適宜添加含有させてもよい。この場合、グラニュー糖については、必要に応じて前記α化澱粉と混合してピンミル等の粉砕機で微粒状に粉砕してもよく、これによって粉体混合物中における比重分離を解消することができる。また、前記した食塩についても粉体混合物中における比重分離の恐れがある場合には、前記グラニュー糖の場合と同様の方法で微粒状に粉砕すればよい。
【0020】
本発明では、上記のようにして得られた粉末調味材を、乾燥パスタを茹で上げて得たパスタに添加し混合する。
上記パスタとしては、スパゲッティ、スパゲッティーニ、リングイネ、フェットチーネ、ブカティーニ、ラザニエのようなロングパスタやマカロニ、ペンネ、ファルファレ、フジッリのようなショートパスタ等を掲げることができる。
【0021】
粉末調味材を茹でたパスタに添加混合して当該パスタに絡めてパスタの表面に付着させた後、生の卵を添加してパスタ全体に卵液が広がるように混合する。これによって、パスタの表面に付着した粉末調味材が卵の水分を取り込んで滑らかなソースが生成される。
【0022】
なお、本発明において、生の卵としては、鶏卵に代表される卵の全卵、卵黄、卵白でもよい。また、生の部分を含んでいるのであれば、全く非加熱の卵に限らず、半熟の茹で卵、温度卵等も包含するものとする。卵の量は、乾燥パスタ100gに対して鶏卵1ケ又はそれに相当する量を好ましい量として掲げることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1〜4、比較例1)
表1の配合に基づき粉体混合して粉末調味材を得た。これとは別に、太さが1.8mmの乾燥スパゲッティ500gを熱湯中に入れ5分間茹でた後、熱湯から取り出し、5つの皿に250gずつ入れた。そのうち4つの皿のスパゲッティに前記実施例1〜4の粉末調味材を夫々14gずつ振り掛けて混合した。その後、夫々鶏卵1ケずつを割り入れ、パスタ全体に広がるように混合してカルボナーラ風スパゲッティを得た。比較例1として、残りの1皿のスパゲッティにはレトルトタイプのカルボナーラソース(市販品)を温めてから添加し、よく掻き混ぜた。
【0024】
実施例1〜4のカルボナーラ風スパゲッティは、スパゲッティの表面に付着した粉末調味材が卵の水分を取り込んで滑らかなソースが生成されていた。また、実施例1〜4及び比較例1のカルボナーラ風スパゲッティについて、ソースの付着性とフレッシュな卵の風味を有するかどうかについて評価を行い、その結果を表1に示している。表1に示す通り、実施例1〜4のカルボナーラ風スパゲッティは、ソースがパスタにしっかり付着しており、チーズの風味の強さ、均一性及び持続性のいずれも良好であり、また、フレッシュな卵の風味を有するものであった。
また、ソースの付着性については、スパゲッティの一部を流水に晒す前と晒した後、ヨウ素溶液に浸漬し染色程度を観察した。比較例1のスパゲッティはヨウ素溶液で完全に染色されたが、これはソースがスパゲッティにしっかり付着していないことを意味している。これに対し、実施例1〜4のスパゲッティは、ソースがスパゲッティにしっかり付着しているため、ほとんど染色されない。
【0025】
【表1】