(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前後車輪(2)を縣架した走行機体(F)に、出力軸(M1)が縦向きの電動モータ(M)と、この電動モータ(M)の出力軸(M1)の動力を刈刃体(3)を設けた刈刃軸(4)と前後車輪(2)の前後軸(5)とに動力を伝達する駆動機構(K)とを設けるとともに、操縦ハンドル(H)の先端を取り付けており、
前記操縦ハンドル(H)の手元部に電動モータ(M)を始動する始動スイッチ(S)と、揺動することにより始動スイッチ(S)を操作する作業操作レバー(7)と、この作業操作レバー(7)の揺動を牽制する牽制及び解除自在な牽制手段(R)とを設けており、
前記操縦ハンドル(H)は、ハンドル本体(H1)の手元部にループハンドル部(H2)を有しており、
前記作業操作レバー(7)は、C字形状のパイプ材(7a)と、このパイプ材(7a)の両端に固着されていて前記ループハンドル部(H2)の両端に回動自在に嵌合したアーム材(7b)と、両端のアーム材(7b)間に亘って架設された作用片(8)とを有し、
前記牽制手段(R)は、前記作用片(8)と作業操作レバー揺動方向で係合する牽制部材(9)を有し、この牽制部材(9)は牽制位置から解除位置へ移動すべく基部が操縦ハンドル(H)に枢支されていて、先端側に牽制位置で作用片(8)と係合する係合部(9a)を有し、
前記始動スイッチ(S)は、接触片(10a)を有するスイッチ本体(10)と、ハンドル本体(H1)上に基部が枢支されかつ先端が接触片(10a)を押動可能に当接する連動部材(11)とを有し、この連動部材(11)の中途部は前記作用片(8)が作業操作レバー(7)の揺動によって押動可能な位置に配置されていることを特徴とする歩行型草刈機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術は、原動部にエンジンの代わりに電動モータを利用する技術も開示されているが、エンジンの代わりに電動モータを適用しただけでは、電動モータ駆動ではエンジンのようなアイドリング回転がなく、遠心クラッチによる動力接続がないため、アクセルレバーに相当する作業操作レバーの揺動で、電動モータが始動しかつ刈刃回転、走行を開始することになり、作業開始を喚起させるのが困難の構造になる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした歩行型草刈機を提供することを目的とする。
本発明は、刈刃駆動に電動モータを適用し、操縦ハンドルに電動モータを制御する作業操作レバーとこの作業操作レバーの揺動を牽制しておける牽制手段を設け、牽制手段の牽制解除によって作業開始意識を喚起させることができるようにした歩行型草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、前後車輪2を縣架した走行機体Fに、出力軸M1が縦向きの電動モータMと、この電動モータMの出力軸M1の動力を刈刃体3を設けた刈刃軸4と前後車輪2の前後軸5とに動力を伝達する駆動機構Kとを設けるとともに、操縦ハンドルHの先端を取り付けており、前記操縦ハンドルHの手元部に電動モータMを始動する始動スイッチSと、揺動することにより始動スイッチSを操作する作業操作レバー7と、この作業操作レバー7の揺動を牽制する牽制及び解除自在な牽制手段Rとを設けて
おり、前記操縦ハンドルHは、ハンドル本体H1の手元部にループハンドル部H2を有しており、前記作業操作レバー7
は、C字形状のパイプ材7aと、このパイプ材7aの両端に固着されていて前記ループハンドル部H2の両端に回動自在に嵌合したアーム材7bと、両端のアーム材7b間に亘って架設された作用片8とを有し、前記牽制手段Rは、前記作用片8と作業操作レバー揺動方向で係合する牽制部材9を有し、この牽制部材9は牽制位置から解除位置へ移動すべく基部が操縦ハンドルHに枢支されていて、先端側に牽制位置で作用片8と係合する係合部9aを有し、前記始動スイッチSは、接触片10aを有するスイッチ本体10と、ハンドル本体H1に基部が枢支されかつ先端が接触片10aを押動可能に当接する連動部材11とを有し、この連動部材11の中途部は前記作用片8が作業操作レバー7の揺動によって押動可能な位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
第2に、
前記ハンドル本体H1上に前記作用片8と平行に配置された横バー64を枢支し、前記横バー64の一端側に、前記係合部9aを前方に突出して設けるとともに、前記牽制部材9を牽制位置から解除位置に回動させるための解除レバー部9cを下方に突出して設け、前記横バー64の他端側に、前記連動部材11の基部を枢支していることを特徴とする。
【0009】
第3に、
前記牽制部材9は、当該牽制部材9を牽制位置から解除位置に回動させるための解除レバー部9cを有し、前記解除レバー部9cを有する牽制部材9は、前記両端のアーム材7bの間に配置されていることを特徴とする。
第4に、
前後車輪2を縣架した走行機体Fに、出力軸M1が縦向きの電動モータMと、この電動モータMの出力軸M1の動力を刈刃体3を設けた刈刃軸4と前後車輪2の前後軸5とに動力を伝達する駆動機構Kとを設けるとともに、操縦ハンドルHの先端を取り付けており、前記操縦ハンドルHの手元部に電動モータMを始動する始動スイッチSと、揺動することにより始動スイッチSを操作する作業操作レバー7と、この作業操作レバー7の揺動を牽制する牽制及び解除自在な牽制手段Rとを設けており、前記作業操作レバー7は、前記操縦ハンドルHに回動自在に嵌合したアーム材7bと、このアーム材7bに設けられた作用片8と、この作用片8とそれより操縦ハンドルHの先端側で当該操縦ハンドルHとの間に張設された引っ張りスプリング63とを有し、前記牽制手段Rは、前記作用片8と作業操作レバー揺動方向で係合する牽制部材9と、この牽制部材9を牽制位置から解除位置に回動させるための解除レバー部9cと、この解除レバー部9cと前記作用片8との間に張設されて前記牽制部材9を牽制位置へ付勢する戻し手段67とを有し、前記戻し手段67は、前記解除レバー部9cを回動して前記牽制部材9を解除位置としたとき、前記アーム材7bの回動中心より前記操縦ハンドルHの手元側に位置することを特徴とする。
第5に、前記解除レバー部9cには、前記戻し手段67の一端部を連結する連結ピン66が設けられ、前記牽制部材9が前記牽制位置にあるとき、前記作用片8が前記操縦ハンドルHの上面に当接するとともに、前記連結ピン66が前記作用片8より前記操縦ハンドルHの手元側の下面に当接する第1位置にあり、前記牽制部材9が前記解除位置にあるとき、前記連結ピン66は前記第1位置より更に手元側において前記操縦ハンドルHの下面に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、牽制手段Rによって作業操作レバー7の不用意な揺動が牽制でき、作業開始時に牽制手段Rの牽制解除を必要とすることによって作業開始意識を喚起させることができる。
即ち、請求項1に係る発明は、電動モータMを始動する始動スイッチSを操作する作業操作レバー7に対してその揺動を牽制する牽制及び解除自在な牽制手段Rとを設けているので、作業操作レバー7のみを揺動しょうとしても始動スイッチSが作動するのを阻止でき、これによって作業操作レバー7の不用意な揺動が牽制でき、作業操作レバー7の揺動前に牽制手段Rの牽制解除を必要とし、邪魔くささによって作業開始時に注意意識を喚起させることができる。
【0011】
また、請求項
1に係る発明は、牽制手段Rは、牽制位置で作業操作レバー7に設けた作用片8と作業操作レバー7揺動方向で
係合する牽制部材9を設けるだけで簡単に構成することができる。
請求項
4に係る発明は、牽制部材9は戻し手段67によって牽制位置に付勢されていて、作業操作レバー7の揺動操作が解消すれば、牽制部材9は人為的な操作をしなくても牽制位置へ戻すことができる。
【0012】
また、請求項
1に係る発明は、始動スイッチSは、作業操作レバー7に基部が枢支されかつ先端がスイッチ本体10の接触片10aを押動可能に接触している連動部材11を有し、この連動部材11の中途部
は作用片8が
作業操作レバー7の揺動によって押動可能な位置に配置されているので、作業操作レバー7の揺動による作用片8の移動軌跡を連動部材11の先端の押動運動に変換でき、スイッチ本体10の接触片10aの押動を適正にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜6において、法面の草を刈り取り可能な歩行型草刈機1は、大別して、前後車輪2を縣架した走行機体Fと、出力軸M1が縦向きの電動モータMと、この電動モータMの動力を刈刃体3を取り付けた刈刃軸4と前後軸5とに伝達する駆動機構Kと、走行機体Fに先端が取り付けられた操縦ハンドルHと、電動モータM用のバッテリB及びモータコントローラDとを備えている。
【0015】
尚、前記操縦ハンドルHの旋回姿勢を
図1に2点鎖線で示す向きにセットした状態が、作業者が伴走し易い標準作業状態であり、説明の便宜上、走行方向を前後方向(
図1左右方向)とし、操縦ハンドルHが偏在する側を走行機体Fの左側、その反対側を右側と呼称
する。
前記走行機体Fは、左右側壁20を連結板21及び前後取っ手22で連結し、連結板21に駆動ケース23を挿入配置する開口24を形成し、駆動ケース23を側方から跨ぐように平面視略V字状のパイプ枠25を連結板21の上面に固定して形成されている。連結板21は前後方向複数枚で形成してもよい。
【0016】
前記パイプ枠25は一方(左側)の側壁20から突出しており、この突出部に操縦ハンドルHを取り付ける支持台26が設けられている。
図3〜7において、駆動ケース23は上方から開口24に挿入して左右側壁20及び連結板21に取り付けており、その上部に電動モータMが取り付けられ、出力軸M1が内部に挿入されている。この電動モータMは例えば、インバータ制御の直流ブラシレスモータが採用されており、刈刃体3の回転数及び回転方向等の変更制御はモータコントローラDを介して行われる。
【0017】
この駆動ケース23には、出力軸M1の直下に駆動伝達軸13と刈刃軸4とが回転自在に支持されている。駆動伝達軸13は出力軸M1と筒カップリング27を介して直結され、刈刃軸4とは刈刃クラッチCを介して断接可能に連結されている。
前記刈刃クラッチCは、駆動伝達軸13の下部に固定された上クラッチ体C1と、刈刃軸4の上部に軸方向摺動自在に嵌合された下クラッチ体C2とを有し、刈刃シフタ28で下クラッチ体C2を上動させて上クラッチ体C1と咬合させることにより、動力伝達可能になるように構成されている。前記刈刃シフタ28はシフタ軸28Aに取り付けられており、シフタ軸28Aは駆動ケース23の外部から刈刃レバー28Bで回動可能になっている。
【0018】
刈刃軸4の下部には刈刃体3が着脱自在に取り付けられている。この刈刃体3は、刈刃軸4に嵌合する中央のボス部3aに円板3bを固着し、この円板3bの上面に周方向等間隔に複数枚の羽根3cを立設し、前記円板3bの外周部に周方向等間隔に複数本の刈刃31を設けている。
刈刃体3の上方は、駆動ケース23の下部に設けた刈取カバー29によって覆われており、羽根3cの上部径外側は、刈取カバー29の内側に侵入配置されている。
【0019】
前記刈刃31は、実施形態では、刈刃31は円板3bの外周に180度変位した2箇所にそれぞれ上下一対設けられており、円板3bの外周部に刈刃ピン30を上下に貫通し、この刈刃ピン30に回転自在に設けている。
各刈刃ピン30は上下一対の頭付きピンで構成されており、頭付きピンは先端側を半円形に削除し、そのピンを上下に対向させて半円形先端を咬み合わせ、抜け止めピン32を貫通して上下ピンを連結している。
【0020】
前記駆動伝達軸13、筒カップリング27、刈刃軸4及び刈刃クラッチCは出力軸M1の駆動力を刈刃体3に直に伝達する駆動機構Kの刈刃動力伝達手段K2を構成しており、電動モータMの出力軸M1から刈刃軸4までは同心でかつ直線的に動力を伝達する短絡的かつ簡潔な構造になっている。
前記駆動伝達軸13の上下中途部にはウオームギヤ13Aが設けられており、このウオームギヤ13Aに変速軸33に遊嵌したウオームホイール33Aが噛合し、同じく変速軸33に遊嵌した第1ギヤ33Bがウオームホイール33Aの側面に咬合しながらベベルピニオン軸34に設けた第2ギヤ34Aと噛合し、この第2ギヤ34Aを外嵌固定したベベルピニオン軸34の先端のベベルピニオン34Bは前後進軸35に遊嵌した一対のベベルギヤ35A、35Bと常時噛合している。
【0021】
前後進軸35には前後進咬合体36が一体回動自在にかつ軸方向摺動自在に嵌合しており、シフタ36Aを介して前後進咬合体36をベベルギヤ35A、35Bに対して択一的に咬合させることにより、ベベルピニオン軸34の回転を前後進軸35に前進方向又は後進方向に切り換えて伝達する。
シフタ36Aはシフタ軸36Bに取り付けられ、このシフタ軸36Bの端部にはワイヤ連結部材36Cが取り付けられ、ワイヤ連結部材36Cに連結される2本のワイヤの引っ張り操作によって、前後進咬合体36はベベルギヤ35A又はベベルギヤ35Bに咬合す
べく往復移動される。
【0022】
前記変速軸33、ベベルピニオン軸34及び前後進軸35は駆動ケース23に支持され、ウオームギヤ13A及びウオームホイール33A、第1ギヤ33B及び第2ギヤ34A、ベベルピニオン34B及びベベルギヤ35A、35B等は、駆動機構Kの走行動力伝達手段K1の減速手段K11を構成し、ベベルピニオン34B、一対のベベルギヤ35A、35B及び前後進咬合体36は走行動力伝達手段K1の前後進切換手段K12を構成している。
【0023】
前後進軸35の一端は駆動ケース23から突出して一方(右側)の側壁20を貫通しており、この側壁20は内部空洞のチェーン伝動ケースを形成しており、このチェーン伝動ケース(側壁20)内の前後進軸35に駆動スプロケット35Cが設けられている。
前記前後軸5は左右側壁20の前後に貫通支持され、それぞれの端部に前後車輪2が装着されており、前後軸5のチェーン伝動ケース(側壁20)内を貫通した部分には従動スプロケット37が設けられている。前記駆動スプロケット35C、従動スプロケット37及びテンションスプロケット38A及びアイドルスプロケット38Bにはチェーン39が巻き掛けられ、前後進軸35の動力を前後車輪2に伝達するチェーン伝動手段K13を構成している。
【0024】
駆動伝達軸13から減速手段K11及び前後進切換手段K12を経てチェーン伝動手段K13までは駆動機構Kの走行動力伝達手段K1となっており、この走行動力伝達手段K1は駆動伝達軸13の右側方に配置され、走行機体Fにおける操縦ハンドルHの配置とは反対側になっている。
図1〜3、8、9において、電動モータMの前方の左右側壁20及び連結板21上には載置台41が取り付けられ、この載置台41上に電動モータMへ電力を供給するバッテリBが載置され、止め具42によって止められている。
【0025】
載置台41及びバッテリBの左右幅(長手方向の寸法)は左右側壁20の内側に配置できる幅であり、前後車輪2の左右車輪の輪距以下であることが好ましく、バッテリBが前後車輪2から左右外方へ突出しない配置となっている。また、バッテリBの上部高さは電動モータMの上部と略同じになっており、機体重心を低くしている。さらに、バッテリBは電動モータMに可及的に近づけられている。
【0026】
電動モータMの後方の左右側壁20間でかつ連結板21上には電動モータMを作動するモータコントローラDが取り付けられている。このモータコントローラDは上下幅が薄いので、その上方にバッテリBを配置することも可能である。
前記バッテリB及びモータコントローラDの配置は前後逆にしてもよく、また、長時間の草刈作業を可能にするために、バッテリBを電動モータMの前後両方に搭載してもよい。
【0027】
電動モータMの前後のバッテリBとモータコントローラDとの配置、走行機体Fの左右の操縦ハンドルHと駆動機構Kの走行動力伝達手段K1との配置等は、走行機体Fの前後及び左右の部材配置バランスを良好にしている。
図1〜3、8〜14において、操縦ハンドルHは丸パイプ材からなるハンドル本体H1の手元部(遊端側)にループハンドル部H2を、先端部にヨーク部H3をそれぞれ有しており、ヨーク部H3は支持台26に縦軸45回り及び横軸46回り揺動自在に支持されている。
【0028】
前記支持台26に縦軸45が回動自在に支持され、この縦軸45の上部に横軸46を介してヨーク部H3が回動自在に支持され、縦軸45の外周面に略L字状の案内板47が固定されており、この案内板47に水平な旋回案内部47Aと、旋回案内部47Aの端部から立ち上がった円弧形状の揺動案内部47Bとが形成されている。
案内板47は
図8〜10に示すように、ヨーク部H3の内部空間に対向配置されていて、旋回案内部47Aは操縦ハンドルHを水平方向に旋回して走行機体Fに対する旋回角を設定する旋回角設定手段Uを構成し、揺動案内部47Bは操縦ハンドルHを上下方向に揺動して走行機体Fから外上向き傾斜した揺動角を設定する揺動角設定手段Yを構成している。
【0029】
旋回角設定手段Uは、旋回案内部47Aに上面側に下向き突出可能な旋回ロックピン49が設けられ、支持台26には旋回ロックピン49が係合可能な旋回ピン孔26aが縦軸45を中心に多数穿孔されており、旋回ロックピン49を旋回ピン孔26aに係脱することにより、操縦ハンドルHの旋回及び旋回ロックが可能としている。
前記旋回ロックピン49にはワイヤ50が連結されていてループハンドル部H2に設けた旋回レバー51によって係脱操作可能になっていて、旋回レバー51を握ることにより旋回ロックピン49を旋回ピン孔26aから抜いて、操縦ハンドルHを水平旋回し、旋回レバー51を離すことにより旋回ロックピン49を旋回ピン孔26aに係合して、操縦ハンドルHを旋回した位置でロックする。
【0030】
揺動角設定手段Yは、ヨーク部H3に横軸46に向けて突出可能な揺動ロックピン53が設けられ、揺動案内部47Bは横軸46を曲率中心と円弧形状であって、この揺動案内部47Bには揺動ロックピン53が係合可能な揺動ピン孔47Cが上下方向に多数穿孔されており、揺動ロックピン53を揺動ピン孔47Cに係脱することにより、操縦ハンドルHの上下揺動及び揺動ロックが可能としている。
【0031】
前記揺動ロックピン53にはワイヤ54が連結されていてループハンドル部H2に設けた揺動レバー55によって係脱操作可能になっていて、揺動レバー55を握ることにより揺動ロックピン53を揺動ピン孔47Cから抜いて、操縦ハンドルHを上下揺動し、揺動レバー55を離すことにより揺動ロックピン53を揺動ピン孔47Cに係合して、操縦ハンドルHを揺動した位置でロックする。なお、レバー51を揺動レバーとし、レバー55を旋回レバーとしてもよい。
【0032】
図11〜15において、前記操縦ハンドルHのハンドル本体H1は中途部で折畳み可能に形成され、このハンドル本体H1の手元側端部には取付板60が固定され、この取付板60の外面にループハンドル部H2を形成するC字形状のパイプ材の中央部が固着されており、取付板60に前記旋回レバー51及び揺動レバー55が枢支され、かつバッテリBの電池管理ユニット(BMU)61に接続された電源スイッチ62が設けられている。
【0033】
前記電源スイッチ62はオンすることにより電池管理ユニット61でバッテリBからモータコントローラDへの電力供給を行い、モータコントローラDから電動モータMへの制御電流は始動スイッチSで供給するようになっている。この始動スイッチSはループハンドル部H2の近傍でハンドル本体H1上に設けられ、同じくハンドル本体H1上に設けた連動部材11によって接触片10aが押動可能になっている。
【0034】
連動部材11は帯板を側面視S字状に屈曲して形成され、その基部はハンドル本体H1上に枢支された横バー64に枢支され、先端が接触片10aに下方から当接している。
ループハンドル部H2を形成するC字形状パイプ材の両端はハンドル本体H1を挟んで対向しており、この両端に作業操作レバー7が回動自在に支持されている。
作業操作レバー7は、ループハンドル部H2と略相似形のC字形状パイプ材7aと、このパイプ材7aの両端に固着されていてループハンドル部H2の両端に回動自在に嵌合したアーム材7bと、両端のアーム材7b間に亘って架設されたパイプ又は丸棒製の作用片8とを有し、前記作用片8は連動部材11の長手方向中途部の下方に位置している。
【0035】
ループハンドル部H2及び作業操作レバー7はそれぞれ外端側が作業者把持用の把持部となっており、作業操作レバー7は作用片8とハンドル本体H1との間に張設された引っ張りスプリング63によって、把持部がループハンドル部H2の把持部から離れた姿勢となっている。
作業操作レバー7は把持部をループハンドル部H2の把持部に近づけるように揺動することにより、アーム材7bがループハンドル部H2の両端部回りに回動し、作用片8が上向きに円弧移動し、そして連動部材11と当接してこれを押し上げ(
図13に2点鎖線で示す。)、連動部材11の先端で接触片10aを押動して始動スイッチSを作動させる。前記連動部材11は作用片8の小曲率円弧の移動を大曲率円弧の移動に変換し、その先端を垂直に近い上下移動として接触片10aを適正に押し上げるようになっている。
【0036】
前記ハンドル本体H1の上部には作業操作レバー7の揺動を牽制及び解除する牽制手段Rが設けられている。この牽制手段Rは、横バー64に設けられた牽制部材9と、牽制部
材9を牽制位置に付勢する戻し手段(戻しスプリング)67とを有する。
牽制部材9は、横バー64から前方突出していてその先端側が作用片8と係合する係合部9aと、この突出部分の上面側で作用片8の移動を許容する移動許容部9bと、横バー64から下方へ突出した解除レバー部9cとを有する。
【0037】
解除レバー部9cには戻しスプリング67を連結する連結ピン66が設けられ、この連結ピン66はハンドル本体H1の下側に延設され、解除レバー部9cの揺動範囲、即ち、牽制部材9の揺動範囲を設定する規制部材を兼ねている。
戻しスプリング67の付勢力によって規制部材(連結ピン)66がハンドル本体H1の下面に当接しているとき、牽制部材9は牽制位置にあって、係合部9aは作業操作レバー7の揺動方向の作用片8の円弧移動軌跡上に位置し、作業操作レバー7を回動しようとすると、係合部9aが作用片8と当接して作業操作レバー7の回動を規制する。
【0038】
戻しスプリング67に抗して解除レバー部9cで牽制部材9を牽制位置から下向きに回動すると、規制部材66はハンドル本体H1の下面から一旦は離れるが再び当接して牽制部材9を先端下向きで止め、牽制部材9を解除位置に配置する。
この解除位置で係合部9aは作用片8の円弧移動軌跡から外れて牽制を解除し、作業操作レバー7を回動すると、移動許容部9bが作用片8と対向し、作業操作レバー7の回動を許容して始動スイッチSの作動を可能にする。作業操作レバー7の回動操作の前に牽制部材9を解除するという邪魔くさい操作が入るために、作業者には「今から始動スイッチSを作動開始するのだ」という意識が喚起される。
【0039】
作用片8が移動許容部9bに対向しているとき、解除レバー部9cから手を離すと、牽制部材9は戻し手段(戻しスプリング)67によって牽制位置に付勢され、移動許容部9bが作用片8に当接するが、作用片8が邪魔して牽制位置まで移動することはない。
始動スイッチSをオフにするように作業操作レバー7を戻り回動させると、または、作業操作レバー7から手を離すと、作業操作レバー7は引っ張りスプリング63によって戻され、作用片8の邪魔が解消されて、牽制部材9は自動的にかつ無意識に牽制位置へ戻される。
【0040】
前記ハンドル本体H1の上部下面には、枢支軸70を介して前後進レバー71が設けられている。この前後進レバー71は、ハンドル本体H1の手元側端部の取付板60に形成されたガイド溝によって、前進位置と後進位置とその中間の中立位置とに位置するように案内されている。
前後進レバー71の基部材71Aの両端にはスプリングを介してワイヤが連結され、この各ワイヤは駆動機構Kの前後進切換手段K12のワイヤ連結部材36Cに連結されており、シフタ36Aを介して前後進軸35上の前後進咬合体36を摺動させることができる。
【0041】
ハンドル本体H1の中途部上面には、電動モータMの回転数を高低に有段的又は無段階に切り換える回転数切換スイッチ69が設けられており、モータコントローラDに接続されている。
図1、15において、モータコントローラDには、電動モータMへ電力を供給して起動させる基本機能の他に、電動モータMの正逆回転を切り換える正逆回転制御手段D1、回転数を高低又は無段階に切り換える高低切換制御手段D2、始動からゆっくり増速した後に一定回転数を維持する回転数制御手段D3及び停止するときに速やかに回転数を落とすブレーキ制御手段D4等を備えており、前記ブレーキ制御手段D4は接地制動回路又は回生制動回路を有する。これらの制御手段D1〜D4はいずれかひとつであってもよい。
【0042】
次に、歩行型草刈機1の草刈作業を説明する。
草刈機1を草地に搬入し、電源スイッチ62を入れて電池管理ユニット61を介してバッテリBからモータコントローラDへの電力供給を可能な状態にする。
ループハンドル部H2の作業操作レバー7は牽制部材9によって回動できない状態に牽制されており、解除レバー部9cを握って牽制部材9を解除位置に回動しながら作業操作レバー7を回動する。作業操作レバー7の回動により始動スイッチSが作動されてモータコントローラDが起動される。
【0043】
モータコントローラDの起動で、回転数制御手段D3によって電動モータMは始動からゆっくりと増速し、高低切換制御手段D2で設定された回転数まで達し、その後、その回転数を維持しながら駆動伝達軸13を駆動し、刈刃体3を一定回転数で回転させて草刈りを行い、かつ前後車輪2を駆動して一定速度で前進させる。
草刈り中に刈刃体3に草が巻き付くと、電動モータMの電流変化を検出して正逆回転制御手段D1が作動し、電動モータMを逆転させて巻き付いた草を解く。また、草刈り中に歩行型草刈機1が障害物に衝突して前進できなくなったときにも、正逆回転制御手段D1で電動モータMを逆転させて歩行型草刈機1を後進させる。
【0044】
作業操作レバー7を戻り操作して草刈り動作を停止するとき、又は前後進を切り換えるとき、電動モータMを草刈回転数から減速することになるが、そのときブレーキ制御手段D4の接地制動回路又は回生制動回路で制動し、刈刃体3の回転停止及び走行停止が速やかに行われる。
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、
図1〜15に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
【0045】
例えば、作業操作レバー7の作用片8は、連動部材11を押動する作用片と牽制部材9と係合する作用片とに兼用されているが、それを別個に形成してもよい。
前記牽制部材9は、L字形状の板材で形成して屈曲部に横バー64を固着し、一辺側に係合部9a及び移動許容部9bを形成し、他辺を解除レバー部9cにするとともに規制部材(連結ピン)66を固着してもよい。
【0046】
また、戻し手段67は戻しスプリングを用いる代わりに、係合部9a及び移動許容部9bに対して解除レバー部9cを重り等で重くして、係合部9aを牽制位置へ付勢するようにしてもよい。