(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808267
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20151021BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20151021BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20151021BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20151021BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/08 Z
B23K26/064 A
B23K26/00 M
H05K3/00 N
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-33847(P2012-33847)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-169559(P2013-169559A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−053572(JP,A)
【文献】
特開平11−342485(JP,A)
【文献】
特表2006−503713(JP,A)
【文献】
再公表特許第2007/077630(JP,A1)
【文献】
特開2008−049398(JP,A)
【文献】
特開2008−246492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/046
B23K 26/00
B23K 26/064
B23K 26/08
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を保持するステージと、
パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したパルスレーザビームを走査するビーム走査器と、
前記ステージと前記ビーム走査器との間のレーザビームの経路上に配置されたテレセントリックfθレンズと、
前記ステージに保持された前記加工対象物の表面に対して、前記テレセントリックfθレンズのフォーカス面の高さを変化させるフォーカス面移動機構と、
前記レーザ光源、前記ビーム走査器、及び前記フォーカス面移動機構を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記ビーム走査器及び前記レーザ光源を制御して、前記加工対象物の表面に画定された複数の加工点の各々に、少なくとも1つの第1の加工点に入射するレーザパルスの中心光線が、前記加工対象物の表面に対して傾斜する条件で、複数のレーザパルスを入射させて穴を形成し、
前記第1の加工点に入射する複数の前記レーザパルスの中心光線の入射位置が、前記加工対象物の面内に関して同じ位置で、前記穴の底面に入射するように、前記加工点の各々に入射するレーザパルスの最初のショットから最後のショットまでの間に、少なくとも1回、前記フォーカス面移動機構を制御して、前記フォーカス面の高さを変えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記加工点の各々について、前記フォーカス面が低くなるように前記フォーカス面移動機構を制御する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記フォーカス面の移動量を記憶しており、前記加工点の各々に入射するレーザパルスのショット間で前記フォーカス面を移動させる距離を、記憶されている前記移動量と等しくする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記加工対象物の表面に、前記ビーム走査器で走査可能な大きさを有する複数のスキャンエリアが画定されており、
前記制御装置は、
前記ビーム走査器で走査可能な走査可能範囲内に、前記スキャンエリアの1つを配置して、前記走査可能範囲内に配置された前記スキャンエリアの前記複数の加工点に、1ショットずつレーザパルスを入射させ、
その後、前記フォーカス面を下降させ、
前記フォーカス面を下降させた後、前記走査可能範囲内に配置された前記スキャンエリア内の前記複数の加工点に、次のショットのレーザパルスを入射させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記スキャンエリア内の複数の前記加工点に、1ショットずつ順番にレーザパルスを入射させる処理を、複数の前記スキャンエリアについて順番に実行し、
その後、前記フォーカス面を下降させ、
前記フォーカス面を下降させた後、前記スキャンエリア内の複数の前記加工点に、次のショットのレーザパルスを1ショットずつ順番に入射させる処理を、前記複数のスキャンエリアについて順番に実行する請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
パルスレーザビームを、ビーム走査器及びテレセントリックfθレンズを経由して、加工対象物の加工点に、前記パルスレーザビームの中心光線が前記加工対象物の表面に対して傾斜する条件で入射させて凹部を形成する工程と、
前記凹部を形成した後、前記加工点に入射する前記パルスレーザビームの中心光線の入射位置が、前記加工対象物の面内に関して同じ位置で、既に形成されている前記凹部の底面に入射するように、前記テレセントリックfθレンズのフォーカス面を下降させる工程と、
前記フォーカス面を下降させた後、前記ビーム走査器及び前記テレセントリックfθレンズを経由して、前記凹部にレーザパルスを入射させて、前記凹部を深くする工程と
を有するレーザ加工方法。
【請求項7】
前記フォーカス面を下降させる工程において、前記フォーカス面を下降させる前の前記凹部の底面に前記フォーカス面が一致するように、前記フォーカス面を下降させる請求項6に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム走査器で走査されたレーザビームを、テレセントリックfθレンズを通して加工対象物に入射させて加工を行うレーザ加工装置、及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガルバノスキャナとテレセントリックfθレンズとを組み合わせたレーザドリルが、プリント基板の穴開け加工に用いられている。走査可能範囲内の任意の場所に、レーザビームが垂直入射するため、走査範囲の中心と周辺とで、形状のばらつきが少ない穴を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−301374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレセントリックfθレンズを使用すると、理想的には、走査可能範囲内のどの場所にも、レーザビームが垂直入射する。ところが、走査可能範囲の周辺部近傍において、テレセントリックエラーが発生することにより、レーザビームの入射角が90°からややずれる場合がある。形成する穴が浅い場合には、レーザビームの入射角が90°から僅かにずれても問題は顕在化しない。形成する穴が深くなると、レーザビームの入射角のずれの影響によって、形成される穴の中心軸が基板表面に対して傾斜する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、テレセンエラーの影響を軽減し、所望の形状の穴を形成することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
加工対象物を保持するステージと、
パルスレーザビームを出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したパルスレーザビームを走査するビーム走査器と、
前記ステージと前記ビーム走査器との間のレーザビームの経路上に配置されたテレセントリックfθレンズと、
前記ステージに保持された前記加工対象物の表面に対して、前記テレセントリックfθレンズのフォーカス面の高さを変化させるフォーカス面移動機構と、
前記レーザ光源、前記ビーム走査器、及び前記フォーカス面移動機構を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記ビーム走査器及び前記レーザ光源を制御して、前記加工対象物の表面に画定された複数の加工点の各々に
、少なくとも1つの第1の加工点に入射するレーザパルスの中心光線が、前記加工対象物の表面に対して傾斜する条件で、複数のレーザパルスを入射させ
て穴を形成し、
前記第1の加工点に入射する複数の前記レーザパルスの中心光線の入射位置が、前記加工対象物の面内に関して同じ位置で、前記穴の底面に入射するように、前記加工点の各々に入射するレーザパルスの最初のショットから最後のショットまでの間に、少なくとも1回、前記フォーカス面移動機構を制御して、前記フォーカス面の高さを変えるレーザ加工装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
パルスレーザビームを、ビーム走査器及びテレセントリックfθレンズを経由して、加工対象物の加工点に
、前記パルスレーザビームの中心光線が前記加工対象物の表面に対して傾斜する条件で入射させて凹部を形成する工程と、
前記凹部を形成した後、
前記加工点に入射する前記パルスレーザビームの中心光線の入射位置が、前記加工対象物の面内に関して同じ位置で、既に形成されている前記凹部の底面に入射するように、前記テレセントリックfθレンズのフォーカス面を下降させる工程と、
前記フォーカス面を下降させた後、前記ビーム走査器及び前記テレセントリックfθレンズを経由して、前記凹部にレーザパルスを入射させて、前記凹部を深くする工程と
を有するレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
レーザパルスのショットごとに、フォーカス面の高さを調節することにより、テレセンエラーが発生している場合でも、加工対象物の表面に対してほぼ垂直な穴を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1によるレーザ加工装置の概略図である。
【
図2】
図2Aは、加工対象物の平面図であり、
図2Bは、加工対象物の断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1によるレーザ加工方法のフローチャートである。
【
図4】
図4Aは、実施例1による方法で加工する加工対象物の断面図であり、
図4Bは、実施例1によるレーザ加工方法で形成された穴の断面図である。
【
図5】
図5は、比較例によるレーザ加工方法で形成した穴の断面図である。
【
図6】
図6は、実施例2によるレーザ加工方法のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施例3によるレーザ加工方法で形成される穴の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
図1に、実施例1によるレーザ加工装置の概略図を示す。基台10に、ステージ移動機構11を介してステージ12が支持されている。ステージ12の保持面の上に、プリント基板等の加工対象物13が保持されている。一般的には、ステージ12の保持面及び加工対象物13の表面が水平になるように、基台10の姿勢が決められる。ステージ12の保持面に平行で相互に直交する2方向をx方向及びy方向とし、保持面の法線方向をz方向とするxyz直交座標系を定義する。ステージ移動機構11は、ステージ12及び加工対象物13をx方向及びy方向に移動させる。
【0011】
レーザ光源20がパルスレーザビームを出射する。レーザ光源20として、例えば炭酸がスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等が用いられる。レーザ光源20から出射したパルスレーザビームがビームエキスパンダ21、マスク22、レンズ23、ベンディングミラー24、ビーム走査器25、及びfθレンズ26を経由して、加工対象物13に入射する。
【0012】
ビームエキスパンダ21が、レーザビームのビーム断面を拡大する。マスク22は、レーザビームのビーム断面形状を整形する。レンズ23は、マスク22を透過したレーザビームをコリメートする。ベンディングミラー24はレーザビームの進行方向を下方に向ける。ビーム走査器25は、加工対象物13の表面において、レーザビームの入射点がx方向及びy方向に移動するように、レーザビームを走査する。ビーム走査器25には、例えば一対のガルバノスキャナが用いられる。
【0013】
fθレンズ26が、ビーム走査器25とステージ12との間のレーザビームの経路上に配置されている。fθレンズ26は、マスク22の位置のビーム断面形状を加工対象物13の表面に結像させる。ビーム走査器25及びfθレンズ26は、像側テレセントリック光学系を構成する。すなわち、ビーム走査器25で走査されたレーザビームの主光線は、加工対象物13に垂直入射する。
【0014】
フォーカス面移動機構27が、fθレンズ26をステージ12に対して昇降させる(z方向に移動させる)。fθレンズ26をz方向に移動させると、加工対象物13の表面を基準として、フォーカス面の高さが変化する。ここで、フォーカス面とは、マスク22の位置のビーム断面形状が結像する面を意味する。
【0015】
制御装置30が、レーザ光源20、ビーム走査器25、フォーカス面移動機構27、及びステージ移動機構11を制御する。
【0016】
図2Aに、加工対象物13の平面図を示す。加工対象物13の表面が、複数のスキャンエリア14に区分されている。1つのスキャンエリア14は、ビーム走査器25で走査可能な範囲(以下、「走査可能範囲」という。)と同一か、走査可能範囲に内包される大きさ及び形状を有する。加工対象物13の表面に、穴を形成すべき複数の加工点45の座標が予め決められている。加工点45の座標は、制御装置30に登録されている。さらに、1つの加工点45に入射させるレーザパルスのショット数、及び各ショットに対応するレーザパルスのパルスエネルギに関する情報が制御装置30に登録されている。
【0017】
図2Bに、加工対象物13の1つの加工点45の近傍の断面図を示す。ガラスエポキシ等の基板40の上に、内層の銅パターン41が形成されている。基板40及び銅パターン41の上に、樹脂膜42が形成されている。樹脂膜の42の上に、表層の銅膜43が形成されている。加工対象物13の表面に、穴を形成すべき加工点45の位置が定義されている。
【0018】
図3に、実施例1によるレーザ加工方法のフローチャートを示す。以下の説明において、必要に応じて
図1、
図2A、
図2B、
図4A、
図4Bを参照する。ステップSA1において、制御装置30(
図1)がステージ移動機構11を制御して、未加工のスキャンエリア14(
図2A)を走査可能範囲内に配置する。ステップSA2において、制御装置30がフォーカス面移動機構27を制御して、フォーカス面の高さを調整する。例えば、フォーカス面を、加工対象物13の表面に一致させる。加工対象物13の厚さは、予め制御装置30に登録されている。このため、制御装置30は、加工対象物13の表面の高さ(z方向の位置)を算出することができる。
【0019】
ステップSA3において、制御装置30がビーム走査器25とレーザ光源20とを制御して、スキャンエリア14内の加工点45(
図2A)に、順番に、1ショットずつレーザパルスを入射させる。レーザパルスのパルス幅及び出力パワーは、予め制御装置30に登録されている。なお。必要に応じて、レンズ23とビームスキャナ25との間のレーザビームの経路上に、パルス幅調整器を配置してもよい。パルス幅調整器は、例えば、音響光学素子とビームダンパとにより構成することができる。
【0020】
図4Aに、1ショット目のレーザパルスLP1が加工点45に入射するときの断面図を示す。フォーカス面FS1が加工対象物13の表面と一致している。このため、加工対象物13の表面に、マスク22(
図1)の位置におけるビーム断面形状の像47が形成される。
図4Aでは、テレセンエラーが生じている場合を示している。すなわち、レーザパルスLP1の中心光線は、加工対象物13の表面の法線方向に対して傾斜している。レーザパルスLP1が入射した位置に穴46が形成される。
【0021】
図3のステップSA4において、各加工点45(
図2B)に、加工に必要なショット数のレーザパルスが入射したか否かを判定する。入射したショット数が、加工に必要なショット数に達するまで、ステップSA2及びステップSA3を繰り返す。
【0022】
図4Bに、2ショット目〜4ショット目のレーザパルスLP2〜LP4が加工点45に入射するときの断面図を示す。レーザパルスを入射させる前に、ステップSA2(
図3)において、2〜4ショット目のレーザパルスLP2〜LP4のそれぞれのフォーカス面FS2〜FS4の高さを、前回のショットのレーザパルスの入射によって形成されている穴46の底面に一致させる。
【0023】
穴46の深さは、予め同一のレーザ照射条件で評価実験を行うことにより、求めておくことができる。穴46の深さから算出されたフォーカス面の移動量は、制御装置30に登録されている。1ショット目〜3ショット目のレーザパルスLP1〜LP3を入射させる度に、穴46が破線で示したように深くなる。このため、相対的に後のショットのレーザパルスのフォーカス面LP1〜LP4を、相対的に前のショットのレーザパルスのフォーカス面LP1〜LP4より深い位置に配置すればよい。フォーカス面の移動量は、各ショット間で同一とは限らない。4ショット目のレーザパルスLP4を入射させた時点で、穴46が内層の銅パターン41に達する。
【0024】
穴46が深くなっても、各ショットのレーザパルスLP2〜LP4の中心光線は、xy面内に関して同じ位置で穴46の底面に入射する。このため、穴46が、加工対象物13の表面に対してほぼ垂直方向に掘り下げられる。
【0025】
穴46が深くなると、表層の銅膜43によってレーザパルスのケラレが発生する。ただし、レーザパルスの中心光線と、加工対象物13の表面の法線方向との成す角度はわずかであるため、ケラレによる影響は無視できる程度である。
【0026】
図3のステップSA4において、加工に必要なショット数分のレーザパルスが入射したと判定された場合には、ステップSA5において、すべてのスキャンエリア14の加工が終了したか否かを判定する。未加工のスキャンエリア14が残っている場合には、ステップSA1に戻って、制御装置30がステージ移動機構11を制御することにより、未加工のスキャンエリア14を走査可能範囲に配置する。すべてのスキャンエリア14の加工が終了すると、穴開け加工が終了する。
【0027】
図5に、比較例による方法で形成された穴の断面図を示す。比較例による方法では、フォーカス面の位置を固定して1ショット目〜4ショット目のレーザパルスを加工対象物13に入射させる。1ショット目〜4ショット目のレーザパルスの中心光線は一致し、マスク22の位置のビーム断面形状の像47は、加工対象物13の表面に固定される。このため、穴46は、レーザパルスの中心光線に沿って掘り進められる。中心光線が加工対象物13の表面の法線方向から傾斜している場合には、形成される穴46も、表面に対して傾斜する。本願の発明者の評価実験によると、形成された穴46の傾斜は、目視によって確認できる程度であった。
【0028】
実施例1によるレーザ加工装置を用いることにより、穴46を、加工対象物13の表面に対してほぼ垂直な方向に掘り進めることができる。このため、穴46の傾斜を防止または軽減することができる。
【0029】
実施例1では、
図4A及び
図4Bに示したように、フォーカス面FS2〜FS4の高さを、既に形成されている穴46の底面の位置に一致させたが、必ずしも厳密に一致させる必要はない。一例として、最終的に形成する穴46の深さ(表層の銅膜43の表面から内層の銅パターン41の上面までの深さ)を、加工に必要なショット数で等分した値を、フォーカス面の移動距離としてもよい。
【0030】
また、実施例1では、1つの加工点45(
図4A、
図4B)に4ショットのレーザパル
スを入射させる例を示したが、1つの加工点45に入射させるショット数は4ショットに限らない。加工に必要なショット数は、加工対象物13の材料及び厚さに依存する。フォーカス面を移動させる上述の実施例1は、1つの加工点45に複数ショットのレーザパルスを入射させる場合に有効である。
【0031】
[実施例2]
図6に、実施例2によるレーザ加工方法のフローチャートを示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成及び工程については説明を省略する。実施例1では、1つのスキャンエリア14の加工が終了した後に、次に加工すべきスキャンエリア14の加工を行った。実施例2では、すべてのスキャンエリア14に対して、1ショット目のレーザパルスを入射させる。すべてのスキャンエリア14に対して1ショット目のレーザパルスの入射が終了した後、次のショットのレーザパルスの入射を、すべてのスキャンエリア14に対して行う。
【0032】
まず、ステップSB1において、ショット番号を初期設定する。具体的には、ショット番号を「1」とする。ステップSB2において、フォーカス面の高さを調整する。1ショット目の加工を行う場合には、
図4Aに示したように、フォーカス面FS1の高さを加工対象物13の表面に一致させる。
【0033】
ステップSB3において、1ショット目のレーザパルスの入射が行われていないスキャンエリア14を走査可能範囲に配置する。ステップSB4において、走査可能範囲に配置されたスキャンエリア14内の加工点に、順番に1ショット目のレーザパルスを入射させる。ステップSB5において、すべてのスキャンエリア14への1ショット目のレーザパルスの入射が終了したか否かを判定する。未終了のスキャンエリア14が残っている場合には、ステップSB3に戻って、未終了のスキャンエリア14の処理を行う。
【0034】
すべてのスキャンエリア14への1ショット目のレーザパルスの入射が終了した場合には、ステップSB6において、必要ショット数の入射が終了したか否かを判定する。入射ショット数が、必要ショット数よりも少ない場合には、ステップSB7においてショット番号を更新した後、ステップSB2に戻る。ステップSB2からステップSB5までの工程において、すべてのスキャンエリア14のすべての加工点45に対して、次の1ショットのレーザパルスを入射させる。ステップSB7においては、具体的にはショット番号に「1」を加える。
【0035】
スッテプSB6で、必要ショット数の入射が終了したと判定された場合には、レーザ加工を終了する。
【0036】
実施例2においても、ステップSB2で、ショットごとにフォーカス面の高さを調整している。このため、実施例1と同様に、加工対象物13の表面に対してほぼ垂直な穴を形成することができる。
【0037】
[実施例3]
図7に、実施例3によるレーザ加工方法で加工される穴の断面図を示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成及び工程については説明を省略する。実施例1では、
図4Bに示したように、レーザパルスの1ショットごとにフォーカス面を下降させたが、必ずしも1ショットごとにフォーカス面を下降させる必要はない。
【0038】
図7に示したように、実施例3では、1ショット目と2ショット目のレーザパルスLP1、LP2を入射させるときには、フォーカス面FS1を、加工対象物13の表面に一致させる。3ショット目と4ショット目のレーザパルスLP3、LP4を入射させるときに
は、フォーカス面FS3を、2ショット目のレーザパルスLP2の照射後の穴46の底面に一致させる。
【0039】
2ショット目及び4ショット目のレーザパルスLP2、LP4の中心光線は、1ショット目のレーザパルスLP1の中心光線の入射位置からややずれた位置で、穴46の底面に達する。ただし、3ショット目のレーザパルスLP3の中心光線が穴46の底面に入射する位置は、1ショット目のレーザパルスLP1の中心光線の入射位置とほぼ一致する。このため、フォーカス面を加工対象物13の表面に固定して加工する場合に比べて、穴46の傾斜を程度を軽減することができる。
【0040】
より一般的には、最初のショットから最後のショットまでの間に、少なくとも1回、フォーカス面を下降させることにより、フォーカス面を固定して加工する場合に比べて、穴の傾斜の程度を軽減することができる。
【0041】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0042】
10 基台
11 ステージ移動機構
12 ステージ
13 加工対象物
14 スキャンエリア
20 レーザ光源
21 ビームエキスパンダ
22 マスク
23 レンズ
24 ベンディングミラー
25 ビーム走査器
26 fθレンズ
27 フォーカス面移動機構
30 制御装置
40 基板
41 内層の銅パターン
42 樹脂膜
43 表層の銅膜
45 加工点
46 穴
47 マスク位置のビーム断面形状の像