【0011】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(特徴1)モジュールは、絶縁基板、接合層、及び半導体素子を備えている。絶縁基板は、絶縁層及び配線層を有していてもよい。配線層は、絶縁層の表面に設けられていてもよい。絶縁基板の配線層は、99.99重量%以上のアルミニウムであってもよい。接合層は、CuSn、AgSn、NiSn、AuSn、CuIn、AuIn、AuGeからなる群から選択される一種を含んでいてもよい。これら材料の金属化合物の0.2%耐力は、はんだに比して0.2%耐力が優位に大きい。
(特徴2)配線層の厚みは、接合層の厚みよりも厚くてもよい。
(特徴3)接合層がAuSnの金属化合物であってもよい。冷熱サイクルに対して高い信頼性が得られることが確認されている。
【実施例1】
【0012】
図1に示されるように、パワーモジュール1は、放熱器10、ロウ付け層20、絶縁基板30、接合層40、及び半導体素子50を備えている。
【0013】
放熱器10は、水冷式であり、冷却水が流動する複数の貫通孔を備えている。一例では、放熱器10の材料には、Al−Mn系のアルミニウム合金が用いられている。
【0014】
ロウ付け層20は、放熱器10と絶縁基板30の間に設けられており、放熱器10と絶縁基板30を接合している。一例では、ロウ付け層20には、Ag系のろう材が用いられている。
【0015】
絶縁基板30は、放熱器10と接合層40の間に設けられており、金属層31とセラミック絶縁層33と配線層35が積層した構造を備えている。金属層31とセラミック絶縁層33は、下側ロウ付け層32を介して接合されている。配線層35とセラミック絶縁層33は、上側ロウ付け層34を介して接合されている。一例では、下側ロウ付け層32と上側ロウ付け層34には、Ag系のろう材が用いられている。
【0016】
絶縁基板30の金属層31及び配線層35の材料には、純系のアルミニウムが用いられている。金属層31及び配線層35のアルミニウムの重量パーセントは、99.99%以上である(所謂、4N−Al)。金属層31及び配線層35の0.2%耐力は15MPaであり、柔らかい。金属層31の厚みは約200〜600μmであるのが望ましい。配線層35の厚みは約200〜2000μmであるのが望ましい。なお、必要に応じて、配線層35上にNi層が設けられていてもよい。
【0017】
絶縁基板30のセラミック絶縁層33の材料には、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、又はアルミナ(Al
2O
3)等のセラミックが用いられている。一例では、セラミック絶縁層33の材料に窒化アルミニウム(AlN)が用いられ、その厚みが約0.2〜2.0mmであるのが望ましい。
【0018】
接合層40は、絶縁基板30と半導体素子50の間に設けられており、絶縁基板30と半導体素子50を接合している。接合層40は、金属化合物である。一例では、接合層40の材料には、AuSnの金属化合物が用いられている。接合層40のAuの重量%は70〜90であり、Snの重量%は10〜30であるのが望ましい。一例では、接合層40のAuの重量%が80であり、Snの重量%が20である。接合層40の0.2%耐力は220であり、配線層35の10倍以上もあり、極めて硬い。また、接合層40の厚みは約2〜40μmであるのが望ましい。
【0019】
半導体素子50は、半導体材料にシリコンが用いられており、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のパワーデバイスである。
【0020】
次に、パワーモジュール1の特徴を説明する。パワーモジュール1では、窒化アルミニウムを材料とするセラミック絶縁層33の線膨張係数が約5×10
−6/Kであり、シリコンを材料とする半導体素子50の線膨張係数が約3×10
−6/Kであり、セラミック絶縁層33と半導体素子50の線膨張係数が大きく相違する。このため、パワーモジュール1の環境温度が大きく変動する場合には、熱膨張差に基づいて、セラミック絶縁層33と半導体素子50の間に熱応力が発生する。
【0021】
パワーモジュール1では、接合層40に金属化合物が用いられていることを1つの特徴としている。金属化合物は、0.2%耐力が大きい(すなわち、硬い)。また、パワーモジュール1では、配線層35に4N−Alが用いられていることを1つの特徴としている。4N−Alは、0.2%耐力が小さい(すなわち、柔らかい)。このため、パワーモジュール1では、金属化合物を材料とする硬い接合層40と4N−Alを材料とする柔らかい配線層35が接合している。この態様によると、セラミック絶縁層33と半導体素子50の熱膨張差に基づく熱応力が発生しても、硬い接合層40が柔らかい配線層35を拘束することにより、接合層40と配線層35の接合面が大きく波打つように変形することが抑制される。この結果、接合層40にボイドが形成されることが抑制され、熱伝導不良の問題が回避され、信頼性が向上する。
【0022】
また、パワーモジュール1では、配線層35の厚みが、接合層40の厚みよりも十分に厚い。このため、セラミック絶縁層33と半導体素子50の熱膨張差に基づく熱応力は、柔らかい配線層35で吸収されるので、接合層40に加わる熱応力が抑えられる。これにより、接合層40におけるボイドの発生が抑えられる。
【0023】
(冷熱サイクル試験)
実施試料では、絶縁基板の金属層(4N−Al)/セラミック絶縁層(AlN)/配線層(4N−Al)の各々の厚みが、0.6/0.635/0.6mmであり、接合層(AuSn)の厚みが25μmである。比較試料では、絶縁基板の金属層(Cu)/セラミック絶縁層(SiN)/配線層(Cu)の各々の厚みが、0.2/0.32/0.2mmであり、接合層(AuSn)の厚みが20μmである。なお、実施試料及び比較試料の配線層の表面にはNiをメッキした。これら絶縁基板上に、0.3mmの厚みのシリコン基板を接合した。また、シリコン基板の裏面には、Ti/Ni/Auのスパッタ膜を成膜した。冷熱サイクル試験では、−40℃の冷却(30分保持)と250℃の加熱(30分保持)を1サイクルとし、これを1000回繰返した後の断面観察を行った。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、実施試料では、冷熱サイクル試験後において、接合層(AuSn)と配線層(4N−Al)の接合面が概ね平坦であり、安定していた。また、接合層(AuSn)にはボイドが観察されなかった。一方、比較試料では、冷熱サイクル試験後において、接合層(AuSn)と配線層(Cu)の接合面が波打つように変形しており、この結果、接合層(AuSn)の内部にボイドが発生していた。この結果から、柔らかい配線層(4N−Al)と硬い接合層(AuSn)の組合わせが、冷熱サイクルに対して高い信頼性を示すことが示された。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。