特許第5808295号(P5808295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808295
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20151021BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20151021BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20151021BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20151021BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   H01L21/52 B
   H01L25/04 C
   H01L23/36 C
   H01L23/14 M
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-129764(P2012-129764)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-254856(P2013-254856A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏一
(72)【発明者】
【氏名】青島 正貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238892(JP,A)
【文献】 特開2010−093225(JP,A)
【文献】 特開2012−049379(JP,A)
【文献】 特開2011−119436(JP,A)
【文献】 特開2000−174166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60
H01L 23/14
H01L 23/36
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線層を有する絶縁基板と、
前記絶縁基板の前記配線層上に接合されている接合層と、
前記接合層上に接合されている半導体素子と、を備えており、
前記接合層は、CuSn、AgSn、NiSn、AuSn、CuIn、AuIn及びAuGeからなる群から選択される少なくとも一種を含む金属化合物であり、
前記絶縁基板の前記配線層は、99.99重量%以上のアルミニウムであるモジュール。
【請求項2】
前記接合層がAuSnの金属化合物である請求項1に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、半導体素子が搭載されたモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体素子が搭載されたモジュールの一例が開示されている。この種のモジュールでは、放熱器、絶縁基板、及び半導体素子がこの順で積層されている。放熱器は、半導体素子で発生した熱を放熱させるためのものであり、水冷又は空冷式であることが多い。絶縁基板は、半導体素子を流れる電流が放熱器に漏洩するのを防止するためのものであり、放熱器上に設けられている。絶縁基板は、セラミックを材料とする絶縁層、及び金属を材料とする配線層を有する。配線層は、絶縁層の表面に配設されており、配線パターンを構成する。半導体素子は、絶縁基板の配線層にはんだを介して接合されている。
【0003】
この種のモジュールは、様々な分野で必要とされており、例えば、直流電力を交流電力に変換して交流モータに供給する車載用のインバータ装置に用いられる。車載用のインバータ装置は、温度変動幅の大きい環境下で用いられるので、そのような環境下でも特性が維持される高信頼性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−93225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるように、従来技術では、例えば、Sn−Ag系、Sn−In系、又はSn−Ag−Cu系のPbフリーはんだを利用して、絶縁基板の配線層と半導体素子が接合されている。これらのPbフリーはんだは、0.2%耐力が小さく、柔らかい。従来技術では、柔らかいはんだを利用することで、絶縁基板と半導体素子の熱膨張差に起因する熱応力をはんだに吸収させている。
【0006】
しかしながら、絶縁基板の配線層にも、アルミニウム等の0.2%耐力が小さい材料が用いられている。このように、配線層とはんだの双方が柔らかいと、絶縁基板と半導体素子の熱膨張差に起因する熱応力によって、配線層とはんだの接合面が大きく波打つように変形する。配線層又ははんだにボイドが発生すると、熱伝導が著しく悪化し、熱破壊が問題となる。
【0007】
本明細書で開示される技術は、半導体素子が搭載されたモジュールの熱応力に対する信頼性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示されるモジュールは、配線層を有する絶縁基板、絶縁基板の配線層上に接合されている接合層、及び接合層上に接合されている半導体素子を備えている。接合層は、CuSn、AgSn、NiSn、AuSn、CuIn、AuIn、AuGeからなる群から選択される少なくとも一種を含む金属化合物である。絶縁基板の配線層は、99.99重量%以上のアルミニウム(以下、「4N−Al」という)である。
【0009】
上記態様のモジュールは、接合層に金属化合物が用いられ、絶縁基板の配線層に4N−Alが用いられていることを特徴としている。金属化合物は、はんだに比して0.2%耐力が優位に大きく、硬い特性を有している。4N−Alの配線層は、0.2%耐力が小さく、柔らかい特性を有している。上記モジュールでは、金属化合物を材料とする硬い接合層と4N−Alを材料とする柔らかい配線層の組合わせである。この態様によると、絶縁基板と半導体素子の熱膨張差に起因する熱応力が発生しても、硬い接合層が柔らかい配線層を拘束することにより、接合層と配線層の接合面が大きく波打つように変形することが抑制され、高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モジュールの概略構成を模式的に示す。
図2】実施試料の冷熱サイクル試験後の要部断面を示す。
図3】比較試料の冷熱サイクル試験後の要部断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(特徴1)モジュールは、絶縁基板、接合層、及び半導体素子を備えている。絶縁基板は、絶縁層及び配線層を有していてもよい。配線層は、絶縁層の表面に設けられていてもよい。絶縁基板の配線層は、99.99重量%以上のアルミニウムであってもよい。接合層は、CuSn、AgSn、NiSn、AuSn、CuIn、AuIn、AuGeからなる群から選択される一種を含んでいてもよい。これら材料の金属化合物の0.2%耐力は、はんだに比して0.2%耐力が優位に大きい。
(特徴2)配線層の厚みは、接合層の厚みよりも厚くてもよい。
(特徴3)接合層がAuSnの金属化合物であってもよい。冷熱サイクルに対して高い信頼性が得られることが確認されている。
【実施例1】
【0012】
図1に示されるように、パワーモジュール1は、放熱器10、ロウ付け層20、絶縁基板30、接合層40、及び半導体素子50を備えている。
【0013】
放熱器10は、水冷式であり、冷却水が流動する複数の貫通孔を備えている。一例では、放熱器10の材料には、Al−Mn系のアルミニウム合金が用いられている。
【0014】
ロウ付け層20は、放熱器10と絶縁基板30の間に設けられており、放熱器10と絶縁基板30を接合している。一例では、ロウ付け層20には、Ag系のろう材が用いられている。
【0015】
絶縁基板30は、放熱器10と接合層40の間に設けられており、金属層31とセラミック絶縁層33と配線層35が積層した構造を備えている。金属層31とセラミック絶縁層33は、下側ロウ付け層32を介して接合されている。配線層35とセラミック絶縁層33は、上側ロウ付け層34を介して接合されている。一例では、下側ロウ付け層32と上側ロウ付け層34には、Ag系のろう材が用いられている。
【0016】
絶縁基板30の金属層31及び配線層35の材料には、純系のアルミニウムが用いられている。金属層31及び配線層35のアルミニウムの重量パーセントは、99.99%以上である(所謂、4N−Al)。金属層31及び配線層35の0.2%耐力は15MPaであり、柔らかい。金属層31の厚みは約200〜600μmであるのが望ましい。配線層35の厚みは約200〜2000μmであるのが望ましい。なお、必要に応じて、配線層35上にNi層が設けられていてもよい。
【0017】
絶縁基板30のセラミック絶縁層33の材料には、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、又はアルミナ(Al)等のセラミックが用いられている。一例では、セラミック絶縁層33の材料に窒化アルミニウム(AlN)が用いられ、その厚みが約0.2〜2.0mmであるのが望ましい。
【0018】
接合層40は、絶縁基板30と半導体素子50の間に設けられており、絶縁基板30と半導体素子50を接合している。接合層40は、金属化合物である。一例では、接合層40の材料には、AuSnの金属化合物が用いられている。接合層40のAuの重量%は70〜90であり、Snの重量%は10〜30であるのが望ましい。一例では、接合層40のAuの重量%が80であり、Snの重量%が20である。接合層40の0.2%耐力は220であり、配線層35の10倍以上もあり、極めて硬い。また、接合層40の厚みは約2〜40μmであるのが望ましい。
【0019】
半導体素子50は、半導体材料にシリコンが用いられており、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のパワーデバイスである。
【0020】
次に、パワーモジュール1の特徴を説明する。パワーモジュール1では、窒化アルミニウムを材料とするセラミック絶縁層33の線膨張係数が約5×10−6/Kであり、シリコンを材料とする半導体素子50の線膨張係数が約3×10−6/Kであり、セラミック絶縁層33と半導体素子50の線膨張係数が大きく相違する。このため、パワーモジュール1の環境温度が大きく変動する場合には、熱膨張差に基づいて、セラミック絶縁層33と半導体素子50の間に熱応力が発生する。
【0021】
パワーモジュール1では、接合層40に金属化合物が用いられていることを1つの特徴としている。金属化合物は、0.2%耐力が大きい(すなわち、硬い)。また、パワーモジュール1では、配線層35に4N−Alが用いられていることを1つの特徴としている。4N−Alは、0.2%耐力が小さい(すなわち、柔らかい)。このため、パワーモジュール1では、金属化合物を材料とする硬い接合層40と4N−Alを材料とする柔らかい配線層35が接合している。この態様によると、セラミック絶縁層33と半導体素子50の熱膨張差に基づく熱応力が発生しても、硬い接合層40が柔らかい配線層35を拘束することにより、接合層40と配線層35の接合面が大きく波打つように変形することが抑制される。この結果、接合層40にボイドが形成されることが抑制され、熱伝導不良の問題が回避され、信頼性が向上する。
【0022】
また、パワーモジュール1では、配線層35の厚みが、接合層40の厚みよりも十分に厚い。このため、セラミック絶縁層33と半導体素子50の熱膨張差に基づく熱応力は、柔らかい配線層35で吸収されるので、接合層40に加わる熱応力が抑えられる。これにより、接合層40におけるボイドの発生が抑えられる。
【0023】
(冷熱サイクル試験)
実施試料では、絶縁基板の金属層(4N−Al)/セラミック絶縁層(AlN)/配線層(4N−Al)の各々の厚みが、0.6/0.635/0.6mmであり、接合層(AuSn)の厚みが25μmである。比較試料では、絶縁基板の金属層(Cu)/セラミック絶縁層(SiN)/配線層(Cu)の各々の厚みが、0.2/0.32/0.2mmであり、接合層(AuSn)の厚みが20μmである。なお、実施試料及び比較試料の配線層の表面にはNiをメッキした。これら絶縁基板上に、0.3mmの厚みのシリコン基板を接合した。また、シリコン基板の裏面には、Ti/Ni/Auのスパッタ膜を成膜した。冷熱サイクル試験では、−40℃の冷却(30分保持)と250℃の加熱(30分保持)を1サイクルとし、これを1000回繰返した後の断面観察を行った。
【0024】
図2及び図3に示されるように、実施試料では、冷熱サイクル試験後において、接合層(AuSn)と配線層(4N−Al)の接合面が概ね平坦であり、安定していた。また、接合層(AuSn)にはボイドが観察されなかった。一方、比較試料では、冷熱サイクル試験後において、接合層(AuSn)と配線層(Cu)の接合面が波打つように変形しており、この結果、接合層(AuSn)の内部にボイドが発生していた。この結果から、柔らかい配線層(4N−Al)と硬い接合層(AuSn)の組合わせが、冷熱サイクルに対して高い信頼性を示すことが示された。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
1:パワーモジュール
10:放熱器
30:絶縁基板
31:金属層
33:セラミック絶縁層
35:配線層
40:接合層
50:半導体素子
図1
図2
図3