特許第5808303号(P5808303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808303
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】放射性物質輸送貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/14 20060101AFI20151021BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20151021BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   G21F5/00 T
   G21C19/32 R
   G21F9/36 501H
   G21F9/36 501G
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-211036(P2012-211036)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-66567(P2014-66567A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 章人
(72)【発明者】
【氏名】下条 純
(72)【発明者】
【氏名】梅原 啓介
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】谷内 広明
(72)【発明者】
【氏名】赤松 博史
【審査官】 林 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−249526(JP,A)
【文献】 特開2000−009890(JP,A)
【文献】 特開昭55−022182(JP,A)
【文献】 特開昭63−285494(JP,A)
【文献】 特表平08−507381(JP,A)
【文献】 特開平09−080196(JP,A)
【文献】 特開平09−236691(JP,A)
【文献】 特開2003−270385(JP,A)
【文献】 特開2005−274237(JP,A)
【文献】 特開2010−008224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00−7/06
G21C 19/00−19/50
G21C 23/00
G21F 9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の格子で形成されて使用済燃料を収めるバスケットと、
前記バスケットを収納する有底筒形の本体胴と、
前記本体胴の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒と、
前記空間内に配置された中性子遮蔽体と、
前記本体胴の上部開口を閉塞する蓋部と、
前記本体胴の側面に取り付けられたトラニオンと、を備え、
前記複数の格子は、前記バスケットの周縁部に配置され、前記トラニオンが取り付けられる前記本体胴の側面部分に対向する外側格子と、前記外側格子以外の格子である他の格子とを含み、前記外側格子の厚みが前記他の格子の厚みよりも大きく形成されることを特徴とする放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項2】
前記外側格子の厚みは、前記バスケットの軸方向において、前記使用済燃料の構造材部の領域のみ、前記他の格子の厚みよりも大きく形成されることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項3】
複数の格子で形成されて使用済燃料を収めるバスケットと、
前記バスケットを収納する有底筒形の本体胴と、
前記本体胴の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒と、
前記空間内に配置された中性子遮蔽体と、
前記本体胴の上部開口を閉塞する蓋部と、
前記本体胴の側面に取り付けられたトラニオンと、を備え、
前記複数の格子は、前記バスケットの周縁部に配置され、前記トラニオンが取り付けられる前記本体胴の側面部分に対向する外側格子と、前記外側格子以外の格子である他の格子とを含み、前記外側格子の密度が前記他の格子の密度よりも大きく形成されることを特徴とする放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項4】
前記外側格子の密度は、前記バスケットの軸方向において、前記使用済燃料の構造材部の領域のみ、前記他の格子の密度よりも大きく形成されることを特徴とする請求項3に記載の放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項5】
複数の格子で形成されて使用済燃料を収めるバスケットと、
前記バスケットを収納する有底筒形の本体胴と、
前記本体胴の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒と、
前記空間内に配置された中性子遮蔽体と、
前記本体胴の上部開口を閉塞する蓋部と、
前記本体胴の側面に取り付けられたトラニオンと、を備え、
前記複数の格子は、前記バスケットの周縁部に配置され、前記トラニオンが取り付けられる前記本体胴の側面部分に対向する外側格子と、前記外側格子以外の格子である他の格子とを含み、前記外側格子の外周面に補助遮蔽体設置されていることを特徴とする放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項6】
前記補助遮蔽体は、前記バスケットの軸方向において、前記使用済燃料の構造材部の領域にのみ設置されていることを特徴とする請求項5に記載の放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項7】
前記補助遮蔽体は、その主な材質が、金属材料、セラミックス、或いは、金属材料及びセラミックスを組み合わせた材料からなることを特徴とする請求項5または6に記載の放射性物質輸送貯蔵容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済燃料等の放射性物質の放射性物質輸送貯蔵容器に関する。特に、放射性物質輸送貯蔵容器を把持するために外周部に固定されるトラニオンを備える放射性物質輸送貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などで発生した使用済燃料等の放射性物質は放射性物質輸送貯蔵容器に収納される。そして、貯蔵施設や処理施設に輸送されて、所定年数、貯蔵されたり処理されたりする。このような放射性物質輸送貯蔵容器は、使用済燃料を収容したバスケットと、上部が開口してバスケットを内部に収納する有底筒形状をなす容器本体と、容器本体の上部に固定される蓋部と、容器本体の外周部に固定され放射性物質輸送貯蔵容器を把持するための複数のトラニオンとから構成されている。ここで、トラニオンは、移送用クレーンなどにより、容器を縦起こし、横倒し、吊り上げて移動し、或いは、輸送時或いは貯蔵時に固縛するために取り付けられている。
【0003】
そして、例えば、特許文献1〜3に示すような、放射性物質輸送貯蔵容器が開発されている。特許文献1に示す技術は、放射性物質輸送貯蔵容器のバスケットである。このバスケットはアルミニウム合金の押出材により構成されている。バスケットの主な目的の1つは未臨界維持である。バスケットに、断面形状が略H型のアルミニウム押出材を用いている。これにより、未臨界を維持しつつ、軽量化、コンパクト化することができる。特許文献2に示す技術は、放射性物質輸送貯蔵容器のバスケットである。このバスケットはBWR用バスケットであり、アルミの板材で構成されている。特許文献3に示す技術は、放射性物質輸送貯蔵容器である。この放射性物質輸送貯蔵容器において、トラニオンを含む放射性物質輸送貯蔵容器の外周面の外径(以下、「トラニオン外径」と称する。)を小さくするために、トラニオンが設置される容器本体の外周面を平らな構造にしている。
【0004】
ここで、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン外径には、原子力発電所の設備で運用可能とするために制限が設けられている。即ち、放射性物質輸送貯蔵容器にトラニオンを設置するためには、トラニオン外径を小さくして制限内に設計する必要性が生じてくる。通常、トラニオンは構造強度上の観点から、放射性物質輸送貯蔵容器の本体容器を構成する外筒に設置されるのではなく、放射性物質輸送貯蔵容器の本体容器を構成する外筒及び中性子遮蔽の内側にある本体胴に対して、嵌め込まれたり、複数のボルトで締結されたりすることにより固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−117774号公報
【特許文献2】特開2007−212385号公報
【特許文献3】特開2006−275730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に示すような従来の放射性物質輸送貯蔵容器において、トラニオンが固定されている本体胴の部分(以下、「トラニオン部」と称する。)は、使用済燃料の構造材放射化によるガンマ線強度が高くなる。そのため、放射性物質輸送貯蔵容器の遮蔽設計の観点から、トラニオン部は、ガンマ線に対する十分な遮蔽体厚さが必要となる。ところが、放射性物質輸送貯蔵容器の設計には重量制限が設けられている。そして、通常、使用済燃料の収納体数を最大化するように設計するため、外径も大きくなり、重量制限に対してはほとんど余裕のない限界の設計を行っている。また、上述のように、トラニオン外径には制限があるため、通常、トラニオン部の容器本体の外周面を平らな構造としている。そのため、トラニオン部の十分な遮蔽体厚さを確保することが難しくなり、ガンマ線及び中性子の線量当量率が高くなってしまう。この問題を解決するため、遮蔽設計上の設計基準値を満たすために必要な遮蔽体厚さを、主要なガンマ線遮蔽体である本体胴や外筒で確保しようとすると、トラニオン部以外の領域も一律に遮蔽厚さが厚くなる。そのため、総重量が大幅に増加してしまい、使用済燃料の収納体数を維持しようとすると設計的に重量制限を超えてしまう。更に、主要なガンマ線遮蔽体である外筒等の板厚を増やすと、外径の寸法制限があることから、内部の中性子遮蔽の厚さを減らさなければならなくなり、中性子遮蔽の観点からも不利である。このような重量制限及び設計制限により、寸法制限を満足させるためには、トラニオン部における遮蔽体厚さが小さくなるためガンマ線及び中性子の線量当量率が増えることから遮蔽設計が成立しなくなり、一方、遮蔽設計を成立させるためには、重量制限を超えることになる。その結果として、使用済燃料の収納体数を減らす対策が必要となり、放射性物質輸送貯蔵容器の設計競争力が低減されてしまう。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、トラニオン部において、構造材放射化によるガンマ線及び中性子の遮蔽に必要な遮蔽体厚さを確保しつつ、総重量の増加を最小限にとどめ、使用済燃料の収納体数を最大化する放射性物質輸送貯蔵容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器は、複数の格子で形成されて使用済燃料を収めるバスケットと、前記バスケットを収納する有底筒形の本体胴と、前記本体胴の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒と、前記空間内に配置された中性子遮蔽体と、前記本体胴の上部開口を閉塞する蓋部と、前記本体胴の側面に取り付けられたトラニオンと、を備え、前記複数の格子は、前記バスケットの周縁部に配置され、前記トラニオンが取り付けられる前記本体胴の側面部分に対向する外側格子と、前記外側格子以外の格子である他の格子とを含み、前記外側格子の厚みが前記他の格子の厚みよりも大きく形成されることを特徴とする。
【0009】
これによると、バスケットを形成する複数の格子のうち、バスケットの周縁部に配置され、トラニオンが取り付けられる本体胴の側面部分に対向する外側格子の厚みを、他の格子の厚みよりも大きくしている。これにより、寸法制限を守りつつ、厚い外側格子でガンマ線を遮蔽するための遮蔽厚さを十分に確保することができる。また、重量増加が必要最小限にとどめられ、重量制限を守ることができる。更に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽の厚さを維持することができる。以上により、寸法制限及び重量制限を守り、且つ、遮蔽設計に有利な放射性物質輸送貯蔵容器を設計できる。
【0010】
ここで、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、前記外側格子の厚みは、前記バスケットの軸方向において、前記使用済燃料の構造材部の領域のみ、前記他の格子の厚みよりも大きく形成されて良い。
【0011】
これにより、使用済燃料の構造材部は燃料有効部からの中性子によるCo−59の放射化により、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出し、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン部における線量当量率に対する寄与が大きい。そこで、バスケットの軸方向において、バスケットの周縁部に配置される外側格子の使用済燃料の上下端部に位置する構造材部の領域のみ厚く形成することにより、この放射化によるガンマ線を効率的に遮蔽することができる。
【0012】
本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器は、複数の格子で形成されて使用済燃料を収めるバスケットと、前記バスケットを収納する有底筒形の本体胴と、前記本体胴の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒と、前記空間内に配置された中性子遮蔽体と、前記本体胴の上部開口を閉塞する蓋部と、前記本体胴の側面に取り付けられたトラニオンと、を備え、前記複数の格子は、前記バスケットの周縁部に配置され、前記トラニオンが取り付けられる前記本体胴の側面部分に対向する外側格子と、前記外側格子以外の格子である他の格子とを含み、前記外側格子の密度が前記他の格子の密度よりも大きく形成されることを特徴とする。
【0013】
これによると、バスケットを形成する複数の格子のうち、バスケットの周縁部に配置され、トラニオンが取り付けられる本体胴の側面部分に対向する外側格子の密度を、他の格子の密度よりも大きくしている。これにより、寸法制限を守りつつ、密度の大きい外側格子でガンマ線を十分に遮蔽することができる。また、重量増加が必要最小限にとどめられ、重量制限を守ることができる。更に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽の厚さを維持することができる。以上により、寸法制限及び重量制限を守り、且つ、遮蔽設計に有利な放射性物質輸送貯蔵容器を設計できる。
【0014】
ここで、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、前記外側格子の密度は、前記バスケットの軸方向において、前記使用済燃料の構造材部の領域のみ、前記他の格子の密度よりも大きく形成されて良い。
【0015】
これにより、使用済燃料の構造材部は燃料有効部からの中性子によるCo−59の放射化により、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出し、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン部における線量当量率に対する寄与が大きい。そこで、バスケットの軸方向において、バスケットの周縁部に配置される外側格子の使用済燃料の上下端部に位置する構造材部の領域のみ密度を大きく形成することにより、構造材部の放射化によるガンマ線を効率的に遮蔽することができる。
【0016】
本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器は、複数の格子で形成されて使用済燃料を収めるバスケットと、前記バスケットを収納する有底筒形の本体胴と、前記本体胴の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒と、前記空間内に配置された中性子遮蔽体と、前記本体胴の上部開口を閉塞する蓋部と、前記本体胴の側面に取り付けられたトラニオンと、を備え、前記複数の格子は、前記バスケットの周縁部に配置され、前記トラニオンが取り付けられる前記本体胴の側面部分に対向する外側格子と、前記外側格子以外の格子である他の格子とを含み、前記外側格子の外周面に補助遮蔽体設置されていることを特徴とする。
【0017】
これによると、バスケットの周縁部に配置される外側格子の内、トラニオン部に対向する外側格子のみの外周面に補助遮蔽体を設置している。これにより、寸法制限を守りつつ、補助遮蔽体でガンマ線を遮蔽する遮蔽厚さを十分に確保することができる。また、重量増加が必要最小限にとどめられ、重量制限を守ることができる。更に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽の厚さを維持することができる。以上により、寸法制限及び重量制限を守り、且つ、遮蔽設計に有利な放射性物質輸送貯蔵容器を設計できる。
【0018】
ここで、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、前記補助遮蔽体は、前記バスケットの軸方向において、前記使用済燃料の構造材部の領域にのみ設置されて良い。
【0019】
使用済燃料の構造材部は燃料有効部からの中性子によるCo−59の放射化により、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出し、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン部における線量当量率に対する寄与が大きい。そこで、バスケットの軸方向において、バスケットの周縁部に配置される外側格子の使用済燃料の上下端部に位置する構造材部の領域のみ補助遮蔽を設置することにより、この放射化によるガンマ線を効率的に遮蔽することができる。
【0020】
更に、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、前記補助遮蔽体は、その主な材質が、金属材料、セラミックス、或いは、金属材料及びセラミックスを組み合わせた材料からなって良い。
【0021】
ガンマ線の遮蔽効果は、遮蔽する材質の密度が大きくなるほど有効である。従って、金属材料、セラミックス、或いは、金属材料及びセラミックスを組み合わせた材料を主な材質として補助遮蔽体を形成することにより、補助遮蔽体の材質の密度が大きくなる。これにより、ガンマ線遮蔽に有効な効果が得られる。更に、金属材料は、加工が比較的簡単にできるという利点もある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の放射性物質輸送貯蔵容器は、寸法制限及び重量制限を守りつつ、トラニオン部における構造材放射化によるガンマ線及び中性子の遮蔽に必要な遮蔽体厚さを確保する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の概要構成を示す斜視図である。
図2】第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。
図3】第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケットの図2におけるA−A断面図である。
図4】第二の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。
図5】第二の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケットの図4におけるA−A断面図である。
図6】第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。
図7】第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケットの図6におけるA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器を実施するための形態について、具体的な一例に即して説明する。
【0025】
尚、以下に説明するものは、例示したものにすぎず、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器の適用限界を示すものではない。すなわち、本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。
【0026】
[第一の実施形態]
まず、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の概要構成を示す斜視図である。図2は、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。尚、図1に示す本実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の概要構成を示す斜視図は、第一〜第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器に共通である。
【0027】
図1及び図2に示すように、第一の実施形態に係る放射性物質の放射性物質輸送貯蔵容器10は、上部が開口して放射性物質である使用済燃料20を収容したバスケット1を内部に収納する有底筒形状をなす容器本体41と、容器本体41の上部に固定される蓋部42と、容器本体41の外周部に固定され放射性物質輸送貯蔵容器10を把持するための複数のトラニオン55とから構成されている。
【0028】
ここで、放射性物質輸送貯蔵容器10の容器本体41の構成について、以下でより詳細に説明する。容器本体41は、複数の格子で形成されて使用済燃料20を収めるバスケット1と、バスケット1を収納する有底筒形の本体胴47と、本体胴47の外側に空間を開けて設けられた有底筒形の外筒45と、本体胴47と外筒45の間の空間内に配置された中性子遮蔽体46と、から構成される。
【0029】
本体胴47は、ガンマ線遮蔽機能と構造強度を確保するための炭素鋼からなる。本体胴47は、円筒状に形成されており、バスケット1が挿入される。そして、バスケット1の内部には放射性物質として使用済燃料20が装荷されている。本体胴47の外周部には、樹脂やゴム等の材料を主としてなる中性子遮蔽46が炭素鋼或いはステンレス鋼からなる円筒状の外筒45に覆われて配置されて、遮蔽層が形成されている。中性子遮蔽46の中には、使用済燃料20の崩壊熱を除熱するべく、本体胴47から外筒45に伝熱するための銅からなる伝熱フィ46aが設けられている。
【0030】
そして、外筒45の外周面には、放射性物質輸送貯蔵容器10を把持するための複数のトラニオン55が設けられている。ここで、トラニオン55は、移送用クレーンなどにより放射性物質輸送貯蔵容器10を縦起こし、横倒し、吊り上げて移動し、或いは、輸送時或いは貯蔵時に固縛するために取り付けられている。本実施形態では、トラニオン55は、本体胴47の側面であって、本体胴47の上部及び下部にそれぞれの本体胴47の径方向の0°、90°、180°及び270°の位置の合計8箇所に嵌め込まれている。尚、トラニオン55の設置箇所はこれに限らない。また、トラニオン55は、複数のボルトで締結されても良い。
【0031】
次に、放射性物質輸送貯蔵容器10の蓋部42の構成について、以下でより詳細に説明する。蓋部42は、容器本体41の上部開口を閉塞するように構成されている。本体胴47の上方に設けられた開口部には、本体胴47と同じ材質の円盤状の一次蓋43が取り付けられる。一次蓋43の外側には、円盤状の二次蓋44が取り付けられている。
【0032】
一次蓋43は、炭素鋼或いはステンレス鋼からなる。一次蓋43の外周部は、ガスケットを介して放射性物質輸送貯蔵容器10の端面に圧着され、ボルト止めにて固定されている。また、二次蓋44は、炭素鋼或いはステンレス鋼からなる外部構造材44bの内部に、水素を多く含む樹脂やゴムなどの材料からなる中性子遮蔽材44cが配置されて、遮蔽層が形成されている。そして、二次蓋44の鏡板の外周には、フランジが取り付けられている。二次蓋44は、このフランジを介して放射性物質輸送貯蔵容器10の端面に圧着される。そして、二次蓋44は、ボルト止めにて固定されて、シール構造として、放射性物質輸送貯蔵容器10に取り付けられている。
【0033】
尚、一次蓋43及び二次蓋44の間には、密閉監視装置52が設けられている。密閉監視装置52は、1気圧よりも高い圧力がかかった状態で密閉されている一次蓋43と二次蓋44の間の圧力を長期間に渡る貯蔵期間中モニタリングする。そして、密閉監視装置52は、圧力が低下することにより、一次蓋43或いは二次蓋44に何らかのリークが発生したことを認知する。
【0034】
次に、放射性物質輸送貯蔵容器10の底部の構成について、以下でより詳細に説明する。放射性物質輸送貯蔵容器10の本体胴47の下方には、本体胴47と同一材質の円盤状の底板53が、本体胴47と一体となるように溶接固定して取り付けられる。底板53の外側には、中性子遮蔽材53aが底部レジンカバー54に覆われて取り付けられて、遮蔽層が形成されている。
【0035】
次に、放射性物質輸送貯蔵容器10の使用済燃料20の構成について、以下でより詳細に説明する。図2に示すように、使用済燃料20は、構造材部21の領域と、燃料有効部22の領域とを有する。構造材部21の領域は、大きく分けて、バスケット1の軸方向において、燃料有効部22の下部に存在する構造材(例えば、BWR燃料における下部タイプレート部等)と、燃料有効部22の上部に存在する構造材(例えば、BWR燃料におけるハンドル部、上部グリッド部、上部プレナム部等)とを領域とする。尚、放射性物質輸送貯蔵容器10に収納される使用済燃料20のタイプ(例えば、BWR燃料とPWR燃料)により、構造材部21の領域の対象となる構造材が異なる。また、燃料有効部22の領域は、バスケット1の軸方向において、下部に存在する構造材部21と上部に存在する構造材部21との間の領域であって、使用済みの燃料ペレットが収容されている領域である。尚、構造材部21は、燃料有効部22から放出された中性子により中性子核反応が生じることにより、Co−59が放射化し、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出する。
【0036】
次に、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケット1について、図3に基づいて説明する。図3は、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケットの図2におけるA−A断面図である。
【0037】
第一の実施形態に係るバスケット1は、BWR燃料用のバスケットであり、図1及び図2に示すように、容器本体41の本体胴47内に収容されている。バスケット1は、板材が格子状に縦横に組まれることで、多数のバスケット格子(格子)5を備えるように形成されている。板材は、ボロンが添加されたアルミニウム合金やステンレス鋼からなり、平板状に形成される。このバスケット格子5には、使用済燃料20が収納される。本実施形態において、バスケット格子5は、縦9列、横9列で並べられている。尚、バスケット格子5の並び方はこれに限定されない。また、バスケット1のバスケット格子5の端部の外側には、コーナープロファイル4が配置されて、バスケット1の外周を本体胴47の内周に合わせた形状になるように形成されている。本実施形態に係るバスケット1は、図3に示すように、周方向における、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°の計8箇所にコーナープロファイル4が設置されている。尚、コーナープロファイル4は設置されていなくても良い。
【0038】
そして、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分(即ち、トラニオン部)に対向する外側格子2の外周面には、補助遮蔽体3が設置される。本実施形態に係るバスケット1は、図3に示すように、周方向における0°、90°、180°、270°の計4箇所において、外側格子2の外周面に補助遮蔽体3が設置される。
【0039】
更に、補助遮蔽体3は、バスケット1の軸方向において、使用済燃料20の上下2つに存在する構造材部21の領域のみに設置される。尚、補助遮蔽体3は、バスケット1の軸方向において、構造材部21の全領域に設置しても良いし、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分に対向する一部の領域のみに設置しても良い。
【0040】
補助遮蔽体3は、炭素鋼、ステンレス鋼の他、アルミニウム或いはアルミニウム合金、タングステン、鉛、銅或いは銅合金等の金属材料を主な材質として、形成される。または、補助遮蔽体3は、金属材料以外の密度の高い材料を主な材質として形成されても良く、例えば、セラミックスであっても良い。更に、補助遮蔽体3は、金属材料と金属材料以外の密度の高い材料との組み合わせて主な材質として形成されても良い。
【0041】
ここで、第一の実施形態に係るバスケット1は、補助遮蔽体3を、バスケット1の外側格子2又はその他構造材に対して、ネジ止め、リベット、かしめ、圧着、FSW、拡散接合、ロウ付け、溶接及びはめ込み等により取り付けることにより製造する。
【0042】
このように、第一の実施形態の放射性物質輸送貯蔵容器10によれば、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン部に対向する外側格子2のみの外周面に補助遮蔽体3を設置している。これにより、寸法制限を守りつつ、補助遮蔽体3でガンマ線を遮蔽する遮蔽厚さを十分に確保することができる。また、重量増加が必要最小限にとどめられ、重量制限を守ることができる。更に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽46の厚さを維持することができる。以上により、寸法制限及び重量制限を守り、且つ、遮蔽設計に有利な放射性物質輸送貯蔵容器10を設計できる。
【0043】
また、使用済燃料20の構造材部21は燃料有効部から22の中性子によるCo−59の放射化により、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出し、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン部における線量当量率に対する寄与が大きい。そこで、バスケット1の軸方向において、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の使用済燃料20の構造材部21の領域のみ補助遮蔽3を設置することにより、この放射化によるガンマ線を効率的に遮蔽することができる。
【0044】
また、ガンマ線の遮蔽効果は、遮蔽する材質の密度が大きくなるほど有効である。従って、金属材料、金属材料以外の密度の高い材料、或いは、金属材料及び金属材料以外の密度の高い材料を組み合わせた材料を主な材質として補助遮蔽体3を形成することにより、補助遮蔽体3の材質の密度が大きくなる。これにより、ガンマ線遮蔽に有効な効果が得られる。更に、金属材料は、加工が比較的簡単にできるという利点もある。
【0045】
[第二の実施形態]
次に、第二の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は、第二の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。図5は、第二の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケットの図4におけるA−A断面図である。
【0046】
尚、第二の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器10を構成する容器本体41と、蓋部42と、トラニオン55と、使用済燃料20の構成は、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器10と同じ構成であるため、その説明を省略し、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器10と異なる構成であるバスケット1について、以下で説明する。
【0047】
第二の実施形態に係るバスケット1は、BWR燃料用のバスケットであり、図4及び図5に示すように、容器本体41の本体胴47内に収容されている。バスケット1は、板材が格子状に縦横に組まれることで、多数のバスケット格子(格子)5を備えるように形成されている。板材は、ボロンが添加されたアルミニウム合金やステンレス鋼からなり、平板状に形成される。このバスケット格子5には、使用済燃料20が収納される。本実施形態において、バスケット格子5は、縦9列、横9列で並べられている。尚、バスケット格子5の並び方はこれに限定されない。また、バスケット1のバスケット格子5の端部の外側には、コーナープロファイル4が配置されて、バスケット1の外周を本体胴47の内周に合わせた形状になるように形成されている。本実施形態に係るバスケット1は、図5に示すように、周方向における、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°の計8箇所にコーナープロファイル4が設置されている。尚、コーナープロファイル4は、設置されていなくても良い。
【0048】
そして、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分(即ち、トラニオン部)に対向する外側格子2の厚みが厚くなるように形成される。本実施形態に係るバスケット1は、図5に示すように、周方向における0°、90°、180°、270°の計4箇所において、外側格子2の厚みが他のバスケット格子5で通常用いられる厚みよりも厚くなるように形成される。
【0049】
更に、外側格子2は、バスケット1の軸方向において、使用済燃料20の上下2つに存在する構造材部21の領域のみの厚みが厚くなるように形成される。尚、外側格子2は、バスケット1の軸方向において、構造材部21の全領域において厚くなるように形成しても良いし、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分に対向する一部の領域のみが厚くなるように形成しても良い。
【0050】
そして、第二の実施形態に係るバスケット1の製造方法について説明する。まず、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分に対向する外側格子2を構成する板材についてのみ、他のバスケット格子5に通常用いる板材よりも厚みが厚くなるように形成する。特に、バスケット1の軸方向において、使用済燃料20の上下2つに存在する構造材部21の領域の外側格子2についてのみ、他のバスケット格子5に通常用いる板材よりも厚みが厚くなるように形成する。他のバスケット格子5については、通常用いる板材の厚みで板材を形成する。そして、形成された板材を用いて、格子状に縦横に組みこんで、第二の実施形態に係るバスケット1を製造する。
【0051】
このように、第二の実施形態の放射性物質輸送貯蔵容器10によれば、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン部に対向する外側格子2のみの厚みを厚くしている。これにより、寸法制限を守りつつ、厚い外側格子2でガンマ線を遮蔽するための遮蔽厚さを十分に確保することができる。また、重量増加が必要最小限にとどめられ、重量制限を守ることができる。更に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽46の厚さを維持することができる。以上により、寸法制限及び重量制限を守り、且つ、遮蔽設計に有利な放射性物質輸送貯蔵容器10を設計できる。
【0052】
また、使用済燃料20の構造材部21は燃料有効部22からの中性子によるCo−59の放射化により、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出し、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン部における線量当量率に対する寄与が大きい。そこで、バスケット1の軸方向において、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の使用済燃料の構造材部21の領域のみ厚みを厚く形成することにより、この放射化によるガンマ線を効率的に遮蔽することができる。厚みを厚くすることで、厚い外側格子でガンマ線を遮蔽しつつ重量増加が必要最小限にとどめられ、かつ、中性子を遮蔽する中性子遮蔽の厚さを維持することができ、遮蔽設計に有利な容器を設計できる。
【0053】
[第三の実施形態]
次に、第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器について、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。図7は、第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器を構成するバスケットの図6におけるA−A断面図である。
【0054】
尚、第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器10を構成する容器本体41と、蓋部42と、トラニオン55と、使用済燃料20の構成は、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器10と同じ構成であるため、その説明を省略し、第一の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器10と異なる構成であるバスケット1について、以下で説明する。
【0055】
第三の実施形態に係るバスケット1は、BWR燃料用のバスケットであり、図6及び図7に示すように、容器本体41の本体胴47内に収容されている。バスケット1は、板材が格子状に縦横に組まれることで、多数のバスケット格子(格子)5を備えるように形成されている。板材は、ボロンが添加されたアルミニウム合金やステンレス鋼からなり、平板状に形成される。このバスケット格子5には、使用済燃料20が収納される。本実施形態において、バスケット格子5は、縦9列、横9列で並べられている。尚、バスケット格子5の並び方はこれに限定されない。また、バスケット1のバスケット格子5の端部の外側には、コーナープロファイル4が配置されて、バスケット1の外周を本体胴47の内周に合わせた形状になるように形成されている。本実施形態に係るバスケット1は、図7に示すように、周方向における、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°の計8箇所にコーナープロファイル4が設置されている。尚、コーナープロファイル4は、設置されていなくても良い。
【0056】
そして、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分(即ち、トラニオン部)に対向する外側格子2の密度が大きくなるように形成される。本実施形態に係るバスケット1は、図7に示すように、周方向における0°、90°、180°、270°の計4箇所において、外側格子2の密度が他のバスケット格子5で通常用いられる密度よりも大きくなるように形成される。
【0057】
更に、外側格子2は、バスケット1の軸方向において、使用済燃料20の上下2つに存在する構造材部21の領域のみの密度が大きくなるように形成される。尚、外側格子2は、バスケット1の軸方向において、構造材部21の全領域において密度が大きくなるように形成しても良いし、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分に対向する一部の領域のみが密度が大きくなるように形成しても良い。
【0058】
外側格子2の密度が大きくなるように形成するには、炭素鋼、ステンレス鋼の他、アルミニウム或いはアルミニウム合金、タングステン、鉛、銅或いは銅合金等の金属材料を主な材質とする。または、金属材料以外の密度の高い材料を主な材質としても良く、例えば、セラミックスであっても良い。更に、金属材料と金属材料以外の密度の高い材料との組み合わせて主な材質としても良い。
【0059】
そして、第三の実施形態に係るバスケット1の製造方法について説明する。まず、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン55が取り付けられる本体胴47の側面部分に対向する外側格子2を構成する板材についてのみ、他のバスケット格子5に通常用いる板材の材質よりも密度が大きい材質により形成する。特に、バスケット1の軸方向において、使用済燃料20の上下2つに存在する構造材部21の領域の外側格子2についてのみ、他のバスケット格子5に通常用いる板材の材質よりも密度が大きい材質により形成する。他のバスケット格子5については、通常用いる材質により板材を形成する。そして、形成された板材を用いて、格子状に縦横に組みこんで、第三の実施形態に係るバスケット1を製造する。
【0060】
このように、第三の実施形態の放射性物質輸送貯蔵容器10によれば、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の内、トラニオン部に対向する外側格子2のみの密度を大きくしている。これにより、寸法制限を守りつつ、密度の大きい外側格子2でガンマ線を十分に遮蔽することができる。また、重量増加が必要最小限にとどめられ、重量制限を守ることができる。更に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽46の厚さを維持することができる。以上により、寸法制限及び重量制限を守り、且つ、遮蔽設計に有利な放射性物質輸送貯蔵容器10を設計できる。
【0061】
また、使用済燃料20の構造材部21は燃料有効部22からの中性子によるCo−59の放射化により、比較的エネルギーの高いガンマ線を放出し、放射性物質輸送貯蔵容器のトラニオン部における線量当量率に対する寄与が大きい。そこで、バスケット1の軸方向において、バスケット1の周縁部に配置される外側格子2の使用済燃料の構造材部21の領域のみ密度を大きく形成することにより、この放射化によるガンマ線を効率的に遮蔽することができる。密度を大きくすることで、密度が大きい外側格子でガンマ線を遮蔽しつつ重量増加が必要最小限にとどめられ、かつ、中性子を遮蔽する中性子遮蔽の厚さを維持することができ、遮蔽設計に有利な容器を設計できる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。
【0063】
例えば、上述の第一〜第三の実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器は、BWR燃料用のバスケット10に適用しているが、それに限らない。本発明に係る放射性物質輸送貯蔵容器は、様々な種類のバスケットに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 バスケット
2 外側格子
3 補助遮蔽体
5 バスケット格子(格子)
10 放射性物質輸送貯蔵容器
20 使用済燃料
42 蓋部
45 外筒
46 中性子遮蔽体
47 本体胴
55 トラニオン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7