特許第5808304号(P5808304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5808304シート搬送装置、画像形成装置、シート搬送方法、帯電制御プログラム、記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808304
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】シート搬送装置、画像形成装置、シート搬送方法、帯電制御プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20151021BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   B65H5/00 D
   B41J11/02
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-239326(P2012-239326)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88241(P2014-88241A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】曽田 智久
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−324877(JP,A)
【文献】 特開2006−168973(JP,A)
【文献】 特開平6−278890(JP,A)
【文献】 特開平3−177242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H3/18、5/00−5/02
B41J11/02−11/13、11/16
G03G15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが載置される載置面を有する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの走行方向における異なる位置で前記搬送ベルトの前記載置面に接触する複数の帯電部材により前記載置面の同じ領域に同じ極性の電圧を印加して前記載置面に交番する電荷パターンを形成する帯電手段と、
を備えたシート搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトにおける前記帯電部材各々と前記載置面との接触位置の間隔が、前記電荷パターンの一周期に対応する前記載置面上における距離の整数倍になる位置に前記帯電部材各々が配置された請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記帯電手段が、複数の前記帯電部材に予め定められた一定の電圧を印加する一つの電源装置を含む請求項1又は2のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトの走行方向の上流側に配置された前記帯電部材の電気抵抗値が前記搬送ベルトの走行方向の下流側に配置された前記帯電部材の電気抵抗値より高い値である請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
複数の前記帯電部材のうち前記載置面に電圧を印加する前記帯電部材の数を予め設定された帯電条件に応じて変更する帯電制御手段を更に備えた請求項1〜4のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項6】
複数の前記帯電部材のいずれか一つ又は複数を前記載置面に対して接触及び離間させる移動機構を更に備え、
前記帯電制御手段が、前記帯電条件に応じて前記移動機構により前記載置面に接触する前記帯電部材の数を変更する請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記帯電条件が、前記シートの種別、前記シート搬送装置の環境温度、及び前記シート搬送装置の環境湿度のいずれか一つ又は複数が予め設定された条件を満たすことである請求項5又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送される前記シートに画像を形成する画像形成手段と、
を備えてなる画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成手段が、前記シート搬送装置により搬送される前記シートにインクを吐出して前記シートに画像を形成する記録ヘッドを有するインクジェット方式の記録部である請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
シートが載置される載置面を有する搬送ベルトの走行方向における異なる位置で前記搬送ベルトの前記載置面に複数の帯電部材を接触させ、
前記載置面の同じ領域に同じ極性の電圧を印加して前記載置面に交番する電荷パターンを形成するシート搬送方法。
【請求項11】
シートが載置される載置面を有する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの走行方向における異なる位置で前記搬送ベルトの前記載置面に接触する複数の帯電部材により前記載置面の同じ領域に同じ極性の電圧を印加して前記載置面に交番する電荷パターンを形成する帯電手段と、を備えたシート搬送装置を制御するコンピューターに、
複数の前記帯電部材のうち前記載置面に電圧を印加する前記帯電部材の数を予め設定された帯電条件に応じて変更するステップを実行させるための帯電制御プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の帯電制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送ベルトに静電吸着させて搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッドから用紙(記録媒体)にインクを吐出して、その用紙に画像を記録するインクジェット記録装置(画像形成装置の一例)が知られている。また、インクジェット記録装置のタイプの一つに、用紙搬送経路に沿って固定された各色の記録ヘッドを備える所謂ラインヘッド型インクジェット記録装置がある。このタイプのインクジェット記録装置では、用紙が搬送ベルトにより記録ヘッド各々のインク吐出面に対向した状態で搬送され、その搬送中の用紙に記録ヘッド各々からインクが吐出される。
このようなインクジェット記録装置において、記録ヘッドのインク吐出面と搬送ベルト上の用紙との間隔はごく僅か(例えば1mm以上2mm以下程度)である。そのため、搬送ベルトで搬送される用紙に浮き上がりが生じていると、用紙が記録ヘッドのインク吐出面に擦れてインク吐出面を傷つけるおそれがある。インク吐出面が傷つくと、インクの吐出口(ノズル)の目詰まりが生じて印字品質が低下する。具体的に、インク吐出面には、インク滴が垂直に吐出されるように撥水膜が設けられる。また、この撥水膜は、インク吐出面の吐出口近傍にインク滴が堆積し、そのインク滴が乾燥して固着することを抑制するなどの機能を有する。そのため、用紙の浮き上がり部がインク吐出面に接触して撥水膜が傷つくと、その撥水膜の本来の機能が発揮されずインク滴の吐出不良又は吐出口の目詰まりなどの問題が生じる。
また、インクの吐出口に用紙が接触した際にその吐出口近傍にインクが付着すると、その吐出口からインクが垂直方向に飛翔しなくなる飛翔曲りの問題が生じて画質が低下するおそれもある。さらに、搬送ベルト上の用紙と記録ヘッドとの間隔が均一でなければ、記録ヘッドから用紙へのインクの到達時間が変化することになり色ズレや画質低下の要因となる。
これに対し、搬送ベルトの載置面に帯電部材を接触させてその搬送ベルトの載置面に交番する電荷パターンを形成することにより用紙を搬送ベルトに静電吸着させて搬送する静電吸着タイプの用紙搬送装置が知られている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−256945号公報
【特許文献2】特開2004−131242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェット記録装置による印字速度を高めるには搬送ベルトによる用紙の搬送速度を高める必要がある。しかしながら、静電吸着タイプの用紙搬送装置では、搬送ベルトの走行速度を高めると、搬送ベルトの各領域に帯電部材が接触する時間が短くなり、搬送ベルトを十分に帯電させることができず吸着性能が低下する。そのため、静電吸着タイプの用紙搬送装置では、搬送ベルトの走行速度を高めることができないという問題がある。そして、静電吸着タイプの用紙搬送装置を備えるインクジェット記録装置では印字速度の高速化が阻害される。
従って、本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シートを静電吸着して搬送する搬送ベルトの走行速度を高めることが可能なシート搬送装置、画像形成装置、シート搬送方法、帯電制御プログラム、及び記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るシート搬送装置は、搬送ベルト及び帯電手段を備える。前記搬送ベルトは、シートが載置される載置面を有する。前記帯電手段は、前記搬送ベルトの走行方向における異なる位置で前記搬送ベルトの前記載置面に接触する複数の帯電部材により前記載置面の同じ領域に同じ極性の電圧を印加して前記載置面に交番する電荷パターンを形成する。
このような構成では、前記搬送ベルトの走行速度を高めても、複数の前記帯電部材を用いて前記搬送ベルトの前記載置面を十分に帯電させることができ、前記シートを前記搬送ベルトに吸着させることができる。
また、本発明に係る画像形成装置は、前記シート搬送装置と、前記シート搬送装置により搬送される前記シートに画像を形成する画像形成手段とを備える。
さらに、本発明に係るシート搬送方法は、シートが載置される載置面を有する搬送ベルトの走行方向における異なる位置で前記搬送ベルトの前記載置面に複数の帯電部材を接触させ、前記載置面の同じ領域に同じ極性の電圧を印加して前記載置面に交番する電荷パターンを形成する方法である。
また、本発明に係る帯電制御プログラムは、前記シート搬送装置を制御するコンピューターに、複数の前記帯電部材のうち前記載置面に電圧を印加する前記帯電部材の数を予め設定された帯電条件に応じて変更するステップを実行させるための帯電制御プログラムである。
さらに、本発明に係る記録媒体は、前記帯電制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シートを静電吸着して搬送する搬送ベルトの走行速度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す模式断面図。
図2】本発明の実施形態に係るシート搬送装置の概略構成を説明する模式図。
図3】搬送ベルトにおける帯電状態を説明する図。
図4】帯電制御処理の手順の一例を示すフローチャート。
図5】移動機構の一例を説明する要部模式図。
図6】本発明の実施例1〜3の実験結果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0009】
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置10(以下「記録装置10」と略称する)について説明する。
図1に示すように、前記記録装置10は、給紙カセット1、給紙部2、画像形成部3、インクタンク部4、シート搬送装置5、制御部6、排紙部7、及び本体フレーム8などを備えた画像形成装置の一例である。
前記記録装置10は、パソコン等の情報処理装置から入力される画像データに基づいて印刷処理を実行するプリンタ装置である。なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ装置に限らず、複写機、ファクシミリ装置、複合機などにも適用可能である。
また、本発明は、前記インクジェット記録装置10に限らず、感光体ドラム、帯電部、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置、及びトナーコンテナなどを備える電子写真方式の画像形成装置にも適用可能である。さらに、本発明に係るシート搬送装置は、例えば原稿から画像データを読み取る画像読取装置において前記原稿を自動搬送するシート搬送装置にも適用可能である。
【0010】
前記給紙カセット1には、誘電体である用紙Pが収容される。前記用紙Pは、前記シート搬送装置5により搬送されるシートの一例であって、前記記録装置10による印刷対象である。なお、前記シートは、紙に限らずOHPフィルム等の誘電体である他の記録媒体であってもよい。
【0011】
前記給紙部2は、ピックアップローラー21、搬送ローラー22、搬送路23、レジストローラー24、手差しフィーダ25、及び給紙ローラー26を備えている。前記ピックアップローラー21は、前記給紙カセット1から前記用紙Pを1枚ずつ取り出す。前記搬送ローラー22及び前記搬送路23は、前記ピックアップローラー21により取り出された前記用紙Pを前記レジストローラー24まで搬送する。前記レジストローラー24は、所定の搬送タイミング(画像の書き出しタイミング)で前記用紙Pを前記画像形成部3に搬送する。前記手差しフィーダ25及び前記給紙ローラー26は、外部から前記用紙Pを供給するために用いられる。
【0012】
前記画像形成部3は、K(ブラック)に対応する記録ヘッド31、C(シアン)に対応する記録ヘッド32、M(マゼンタ)に対応する記録ヘッド33、及びY(イエロー)に対応する記録ヘッド34を有するインクジェット方式の記録部である。なお、本実施の形態では、KCMYの4色に対応した4つの前記記録ヘッド31〜34を有する構成を例に挙げて説明するが記録ヘッドの数はこれに限らない。
前記記録ヘッド31〜34各々は、前記用紙Pの搬送方向に垂直な方向(用紙の幅方向)に長尺状を成しており、前記用紙Pの搬送方向に沿って所定間隔ごとに配置されている。また、前記記録ヘッド31〜34の下端部には、インクを吐出する多数のノズル(吐出口)を有するインク吐出面31A〜34Aがそれぞれ設けられている。
そして、前記画像形成部3は、前記シート搬送装置5により搬送される前記用紙Pに前記インク吐出面31A〜34Aからインクを吐出することにより前記用紙Pに画像を形成する。即ち、前記記録装置10は、所謂ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。なお、前記記録ヘッド31〜34のインクの吐出方式には、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式又は加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
【0013】
また、前記インクタンク部4は、K(ブラック)に対応するインクタンク41、C(シアン)に対応するインクタンク42、M(マゼンタ)に対応するインクタンク43、Y(イエロー)に対応するインクタンク44を備えている。前記インクタンク41〜44は、不図示のインクチューブにより同色の前記記録ヘッド31〜34にそれぞれ接続されており、前記記録ヘッド31〜34に各色のインクを補給する。
【0014】
前記シート搬送装置5は、前記記録ヘッド31〜34の下方に配置されている。そして、前記シート搬送装置5は、前記給紙部2から供給された前記用紙Pを前記インク吐出面31A〜34Aに対向させつつ前記排紙部7まで搬送する。
具体的に、前記シート搬送装置5は、搬送ベルト51、駆動ローラー52、張架ローラー53、54、55、押圧ローラー56、帯電装置57(帯電手段の一例)、及び温湿度センサー58などを備えている。なお、前記搬送ベルト51と前記インク吐出面31A〜34Aとの間隙は、前記搬送ベルト51で搬送される前記用紙Pと前記インク吐出面31A〜34Aとの間隔が例えば1mm以上2mm以下程度となるように定められている。
【0015】
前記搬送ベルト51は、前記用紙Pが載置される載置面(表面)51Aを有しており、誘電体で形成された無端状のベルトであって、前記駆動ローラー52及び前記張架ローラー53〜55によって所定のテンションで張架されている。
前記搬送ベルト51は、例えばウレタンゴム、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)樹脂、PI(ポリイミド)樹脂、PAI(ポリアミドイミド)樹脂などの誘電体で形成されている。例えば、前記搬送ベルト51は、電気抵抗値が5[logΩ]以上7[logΩ]以下の内層とその外周に設けられた電気抵抗値が14[logΩ]以上17[logΩ]以下の外層とを有する多層ベルトである。
【0016】
前記駆動ローラー52は、駆動モーター52Aの回転軸に連結されている。前記駆動ローラー52が前記駆動モーター52Aの駆動により反時計回り(図1の矢印R1方向)に回転されると、前記搬送ベルト51が図1に示す走行方向R2に走行する。このとき、前記張架ローラー53〜55は、前記駆動ローラー52の駆動により前記搬送ベルト51を介して伝達される駆動力により回転する。
ここで、前記張架ローラー53〜55各々は、導電性を有する金属製ローラー等であって、後述の前記帯電装置57に設けられた電源装置573と共通のグランドに接続されている。これにより、前記張架ローラー54は、前記帯電装置57による前記搬送ベルト51の帯電動作時に一つの電極として作用する。
【0017】
前記押圧ローラー56は、前記給紙部2から前記シート搬送装置5への前記用紙Pの給紙位置に設けられている。また、前記押圧ローラー56は、前記張架ローラー55の対向位置に配置されており、前記搬送ベルト51は前記張架ローラー55及び前記押圧ローラー56の間に挟まれている。そして、前記押圧ローラー56は、前記給紙部2から供給される前記用紙Pを前記搬送ベルト51に押しつけて前記用紙P全体を前記搬送ベルト51に密着させる。
【0018】
前記帯電装置57は、前記搬送ベルト51の前記走行方向R2における前記押圧ローラー56の上流側、即ち前記給紙部2からの前記用紙Pの給紙位置よりも上流側に配置されている。前記帯電装置57は、前記搬送ベルト51に交番する電圧を印加することにより前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに正負が交番する帯状の電荷パターンを形成する。これにより、前記給紙部2から前記搬送ベルト51に供給された前記用紙Pは前記搬送ベルト51に静電吸着されて搬送される。従って、前記記録装置10では、前記記録ヘッド31〜34の前記インク吐出面31A〜34Aと前記搬送ベルト51で搬送される前記用紙Pとの間隔が一定に保たれ、前記用紙Pが前記インク吐出面31A〜34Aに接触することもない。なお、前記帯電装置57の詳細については後段で説明する。
【0019】
前記温湿度センサー58は、前記シート搬送装置5の近傍に配置されており、前記シート搬送装置5の環境温度及び環境湿度を検出するセンサーであり、前記温湿度センサー58により検出された環境温度及び環境湿度は前記制御部6に入力される。なお、前記温湿度センサー58は、前記シート搬送装置5の環境温度及び環境湿度と同等の温度及び湿度を検出し得るものであれば、前記記録装置10内の他の箇所に設けられた他の温湿度センサーと兼用されるものであってもよい。
【0020】
前記制御部6は、演算装置であるCPU、一時記憶領域として用いられるRAM、EEPROM、及び各種の制御プログラムが予め記憶されたROMなどの制御機器を有している。そして、前記制御部6は、外部から入力される画像データに基づいて前記記録装置10の各構成要素を統括的に制御することにより、前記画像データに対応する画像を前記画像形成部3により前記用紙Pに記録させる画像形成処理などを実行する。
【0021】
前記排紙部7は、前記画像形成部3の用紙搬送方向下流側に設けられており、乾燥装置71、搬送路72、排紙ローラー73、及び排紙トレイ74などを有している。前記乾燥装置71は、例えば前記用紙Pに送風することにより、前記用紙Pに付着したインクを乾燥させる。そして、前記乾燥装置71で乾燥された前記用紙Pは、前記搬送路72を介して前記排紙ローラー73により前記排紙トレイ74に排出される。
【0022】
[帯電装置57]
以下、図2及び図3を参照しつつ、前記シート搬送装置5に設けられた前記帯電装置57について詳述する。
図2に示すように、前記帯電装置57は、帯電ローラー571、帯電ローラー572、及び電源装置573などを備えている。前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々は前記電源装置573に電気的に接続されている。なお、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、前記搬送ベルト51に電圧を印加する帯電部材の一例に過ぎず、前記帯電部材としてブレードなどが用いられる構成も他の実施形態として考えられる。
【0023】
前記電源装置573は、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々に予め定められた一定の電圧を印加する定電圧電源である。即ち、前記電源装置573は、複数の前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572に対応して設けられる共通の電源装置である。
具体的に、前記電源装置573は、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々に、図3(A)に示すように、予め設定された交番周期T1[s]で+2.5kV及び−2.5kVが交番する5k[Vp−p]の電圧を印加する。例えば、前記電源装置573は、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572に接続された出力端子から出力される前記一定電圧(2.5kV)の極性を前記交番周期T1[s]で交互に切り替える。
ここに、前記シート搬送装置5において、前記交番周期T1[s]と、前記搬送ベルト51の走行速度V1[mm/s]と、前記搬送ベルト51の全長L0[mm]とは、L0/(T1×V1)=N(Nは整数)の関係が成立する。これにより、前記搬送ベルト51の各領域には常に同じ極性の電荷が帯電することになり前記搬送ベルト51の長寿命化を図ることができる。
【0024】
前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、前記搬送ベルト51の前記載置面51Aにおける前記走行方向R2と垂直な方向(前記用紙Pの幅方向)に長尺状に形成されている。また、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、導電性又は半導電性を有しており、3[logΩ]以上9[logΩ]以下の電気抵抗値を有するローラーである。例えば、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、シリコン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、リノルボーネンゴムなどの樹脂材料の一つ又は複数の混合物により形成される。
具体的に、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の材料に前記EPDMを用いる場合、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値を低くするには、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の硬度が高くなることになる。しかし、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の硬度が高くなると、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々と前記張架ローラー54との間のニップが安定しないおそれがある。一方、前記電気抵抗値が高すぎると前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572による帯電性能が低くなる。そこで、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値は3[logΩ]以上9[logΩ]以下であることが望ましい。3[logΩ]以上9[logΩ]以下の範囲であれば、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の硬度が高くなり過ぎず、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の高い帯電性能を得ることができる。
さらに、前記搬送ベルト51の走行速度が800[mm/s]程度の高速になると、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572と前記載置面51Aの各領域との接触時間が短くなるためより高い帯電性能が必要となる。そのため、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値は、特に5[logΩ]以上7[logΩ]以下であることが望ましい。前記電気抵抗値が5[logΩ]以上の前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は帯電性能が高いため、前記搬送ベルト51の走行速度が高速である場合に好適である。
なお、例えば前記搬送ベルト51の走行速度が500[mm/s]程度である場合には、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値が3[logΩ]以上9[logΩ]以下程度であってもよい。即ち、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値は、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572に求められる硬度と帯電性能との関係に応じて予め設定すればよい。
ところで、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気特性は同一であっても異なるものであってもよい。但し、後述の実施例3に示すように、前記搬送ベルト51の長寿命化の観点からすると、前記帯電ローラー571の電気抵抗値が前記帯電ローラー572の電気抵抗値よりも高いことが望ましい。
【0025】
図2に示すように、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、前記搬送ベルト51の前記走行方向R2における異なる位置で、前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに接触した状態で配置されている。また、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、前記搬送ベルト51を挟んで前記張架ローラー54に対向する位置に配置されている。そして、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、前記搬送ベルト51の前記走行方向R2の走行に従動して時計回りに回転する。
ここで、前記帯電ローラー571は、前記帯電ローラー572よりも前記搬送ベルト51の前記走行方向R2の上流側に設けられている。即ち、前記帯電ローラー571と前記載置面51Aとの接触位置57Aは、前記帯電ローラー572と前記載置面51Aとの接触位置57Bよりも前記搬送ベルト51の前記走行方向R2の上流側に位置する。
また、前記シート搬送装置5では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572が一つの前記張架ローラー54との間で前記搬送ベルト51を圧接している。特に、前記帯電ローラー571は、前記帯電ローラー571と前記張架ローラー54との中心を結ぶ直線が前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに直交するように配置されている。同じく、前記帯電ローラー572は、前記帯電ローラー572と前記張架ローラー54との中心を結ぶ直線が前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに直交するように配置されている。即ち、前記搬送ベルト51の前記走行方向R2において、前記張架ローラー54と前記搬送ベルト51との接触範囲の終端が前記接触位置57Bと同じ又は前記接触位置57Bよりも下流側に位置する。これにより、前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの電荷が前記搬送ベルト51の裏面に移動して前記載置面51Aの電荷量が低下することが抑制される。また、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572によって前記搬送ベルト51の走行経路にうねりが生じて前記搬送ベルト51に不要な負荷が作用することを抑制することができる。
【0026】
そして、前記帯電装置57により前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572に交番する電圧が印加されると、前記搬送ベルト51の前記載置面51Aには交番する帯状の電荷パターンが形成される。
ここで、前記シート搬送装置5では、前記搬送ベルト51における前記接触位置57A及び前記接触位置57Bの間隔である離間距離L1が、前記電荷パターンの一周期に対応する前記載置面51A上における帯電距離L2の整数倍となる位置に前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572が配置されている。即ち、前記シート搬送装置5では、L1=L2×N(N:整数)の関係が成立する。これにより、前記帯電ローラー572は、前記帯電ローラー571により前記載置面51Aに形成された電荷パターンの極性と同じ極性の電圧を前記載置面51Aに印加することになる。
具体的に、例えば図3(B)に示すように、前記載置面51Aには、前記搬送ベルト51の幅方向(走行方向R2に直交する方向)に長尺状であって前記走行方向R2の長さが前記帯電距離L2の半分であるプラス電荷の領域51B及びマイナス電荷の領域51Cが前記走行方向R2に沿って交互に形成される。ここに、前記帯電距離L2は、前記交番周期T1[s]と前記搬送ベルト51の走行速度V1[mm/s]とにより定まる値であって、L2=T1×V1の算出式により算出可能である。例えば、前記交番周期T1が0.02[s]であり、前記搬送ベルト51の走行速度V1が500[mm/s]である場合、前記帯電距離L2は10[mm]である。
【0027】
以上説明したように、前記シート搬送装置5では、前記帯電装置57により、複数の前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572により前記載置面51Aの同じ領域に同じ極性の電圧が印加されて前記載置面51Aに交番する電荷パターンが形成される。
従って、前記シート搬送装置5では、複数の前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572を用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aを十分に帯電させることができ、前記用紙Pを前記搬送ベルト51に吸着させることができる。そのため、前記シート搬送装置5では、前記搬送ベルト51の走行速度を従来よりも高めることが可能である。さらに、前記シート搬送装置5では、前記電源装置573から複数の前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572に同じ電圧が印加されるため、複数チャンネルの電源回路を備える必要がなく構成を簡素化することができる。
なお、本発明は、前記用紙Pが載置される前記載置面51Aを有する前記搬送ベルト51の前記走行方向R2における異なる位置で前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに複数の前記帯電ローラー571、572を接触させるステップと、前記載置面51Aの同じ領域に同じ極性の電圧を印加して前記載置面51Aに交番する電荷パターンを形成するステップとを含むシート搬送方法として捉えてもよい。
【0028】
ところで、本実施の形態では、前記シート搬送装置5が、二つの前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572を備える構成を例に挙げて説明したが、三つ以上の帯電ローラーを有することも他の実施形態として考えられる。この場合には、前記三つ以上の帯電ローラー各々と前記搬送ベルト51との接触位置の間隔がそれぞれ前記帯電距離L2の整数倍になるように前記帯電ローラー各々が配置されていればよい。
また、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、前記張架ローラー54との間で前記搬送ベルト51を挟持する位置に限らない。具体的に、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572は、少なくとも前記給紙部2からの前記用紙Pの給紙位置より前記搬送ベルト51の前記走行方向R2の上流側の位置に配置されていればよい。
さらに、前記記録装置10が、例えば前記用紙Pの種類に応じて前記搬送ベルト51の走行速度を変化させる構成であれば、その変化に伴って前記帯電距離L2が変化する。そのため、前記制御部6が、前記搬送ベルト51の走行速度に応じて、前記離間距離L1が前記帯電距離L2の整数倍になるように前記電源装置57により前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572に印加される電圧の前記交番周期T1を変更することが考えられる。
【0029】
[他の実施形態]
前記シート搬送装置5では、前記帯電装置57による前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの帯電動作で常に前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方が用いられることが考えられる。
一方、前記シート搬送装置5において前記用紙Pの吸着に適した前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの帯電量は、例えば前記用紙Pの種別、前記シート搬送装置5の環境温度、及び環境湿度などの各種の条件によって異なる。そのため、前記記録装置10では、前記制御部6によって後述の帯電制御処理を実行することにより、前記帯電装置57による前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの帯電量を制御する構成が考えられる。
具体的に、前記制御部6では、前記CPUが前記ROMに記憶された帯電制御プログラムに従って前記帯電制御処理を実行する。ここに、前記帯電制御処理を実行するときの前記制御部6が帯電制御手段に相当する。なお、この場合、前記制御部6及び前記シート搬送装置5が本発明に係るシート搬送装置の一例である。また、本発明は、前記制御部6等のコンピューターに前記帯電制御処理を実行させるための帯電制御プログラム又は前記帯電制御プログラムが記録されたコンピューター読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【0030】
以下、図4のフローチャートを参照しつつ、前記帯電制御処理の手順の一例について説明する。ここに、前記制御部6によって実行される処理手順をステップS1、S2、・・・と称する。
【0031】
<ステップS1>
まず、ステップS1において、前記制御部6は、前記記録装置10に対して印刷要求が行われたか否かを判断する。具体的に、前記制御部6は、パソコン等の情報処理装置から画像データが入力された場合に前記印刷要求が行われたと判断する。
ここで、前記制御部6は、前記印刷要求が行われたと判断すると(S1のYes側)、処理をステップS2に移行させ、前記印刷要求が行われるまでの間は(S1のNo側)、処理を前記ステップS1で待機させる。
【0032】
<ステップS2>
ステップS2において、前記制御部6は、前記用紙Pの種別が予め設定された第1の帯電条件を満たすものであるか否かを判断する。
例えば、前記情報処理装置における前記記録装置10への前記印刷要求時には、前記給紙カセット1に収容された前記用紙Pの種別が指定される。そのため、前記制御部6は、前記印刷要求の内容に応じて前記用紙Pの種別を判定することが可能である。もちろん、前記記録装置10において不図示のタッチパネル等の操作表示部により前記給紙カセット1に収容された前記用紙Pの種別が選択され、その情報が前記制御部6の前記EEPROMに記憶されていることも考えられる。
そして、前記第1の帯電条件は、前記用紙Pの種別に適した前記搬送ベルト51の帯電量が、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方による帯電を要するものであるか否かを判断する指標として予め設定された条件である。具体的に、前記用紙Pの種別がOHPフィルムのように少ない帯電量で前記搬送ベルト51に吸着可能な種別として予め設定されたものであることが前記第1の帯電条件の一例として考えられる。
また、前記用紙Pの厚みが大きいほど前記用紙Pは前記搬送ベルト51に吸着されにくい。一方、前記用紙Pの厚みが小さい場合に前記搬送ベルト51の帯電量が大きすぎると、前記記録ヘッド31〜34から前記用紙Pに向けて垂直方向にインクが吐出されない飛翔曲りの問題が生じる。即ち、前記搬送ベルト51の帯電量は、前記用紙Pの厚みが大きいほど多く、前記用紙Pの厚みが小さいほど少ないことが望ましい。そこで、前記用紙Pの厚みが、前記搬送ベルト51の帯電量として予め設定された閾値以上の帯電量が必要な厚みであることが前記第1の帯電条件の一例として考えられる。
ここで、前記制御部6は、前記第1の帯電条件を満たすと判断した場合(S2のYes側)、処理をステップS5に移行させ、前記第1の帯電条件を満たさないと判断した場合(S2のNo側)、処理をステップS3に移行させる。
【0033】
<ステップS3>
次に、ステップS3において、前記制御部6は、前記温湿度センサー58で検出された前記シート搬送装置5の環境温度及び環境湿度が予め設定された第2の帯電条件を満たすものであるか否かを判断する。
前記第2の帯電条件は、前記シート搬送装置5の環境温度及び環境湿度に適した前記搬送ベルト51の帯電量が、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方による帯電を要するものであるか否かを判断する指標として予め設定された条件である。
具体的に、前記シート搬送装置5の環境温度及び環境湿度が高いほど前記用紙Pの電気抵抗値は低くなり、前記環境温度及び前記環境湿度が低いほど前記用紙Pの電気抵抗値は高くなる。そのため、前記搬送ベルト51の帯電量は、前記環境温度が高いほど少なく、前記環境温度が低いほど多いことが望ましい。また、前記搬送ベルト51の帯電量は、前記環境湿度が高いほど少なく、前記環境湿度が低いほど多いことが望ましい。
そこで、前記環境温度及び前記環境湿度各々が、前記搬送ベルト51の帯電量として予め設定された閾値温度及び閾値湿度以上であることが前記第2の帯電条件の一例として考えられる。なお、通常は前記環境温度及び前記環境湿度に相関があるため、前記環境温度及び前記環境湿度のいずれか一方を前記ステップS3の判断指標として用いることも他の実施形態として考えられる。
ここで、前記制御部6は、前記第2の帯電条件を満たすと判断した場合(S3のYes側)、処理をステップS5に移行させ、前記第2の帯電条件を満たさないと判断した場合(S5のNo側)、処理をステップS4に移行させる。
【0034】
<ステップS4>
そして、ステップS4において、前記制御部6は、前記電源装置573に対して前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572のうち一つの前記帯電ローラー572のみを用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに電圧を印加する旨の制御指示を与える。
これにより、前記電源装置573は、前記帯電ローラー572のみに電圧を印加し、前記帯電ローラー572のみを用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aを帯電させる。この場合、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方を用いる場合に比べて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの帯電量が減少する。従って、前記ステップS2及び前記ステップS3において前記第1の帯電条件及び前記第2の帯電条件を満たさないと判断された場合に適した前記搬送ベルト51の帯電量が得られる。
【0035】
ところで、前記ステップS4において、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572のうち上流側に配置された前記帯電ローラー571のみを用いて前記載置面51Aの帯電を行うことも考えられる。但し、前記帯電ローラー572が前記載置面51Aに接触した状態で、前記帯電ローラー571に電圧を印加すると、前記載置面51Aを介して前記帯電ローラー572に電圧が回り込み、前記載置面51Aの帯電状態が不安定になるおそれがある。この点について、前記ステップS4では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572のうち下流側の前記帯電ローラー572を用いている。そのため、仮に上流側の前記帯電ローラー571に電圧の回り込みが生じたとしても、その下流側の前記帯電ローラー572により前記載置面51Aの帯電状態が上書きされるため、前記載置面51Aを正常に帯電することができる。
【0036】
また、前記シート搬送装置5が、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572のいずれか一方又は両方を前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに対して接触及び離間させる移動機構を備える構成も考えられる。これにより、前記制御部6は、前記移動機構を制御して前記帯電ローラー571を前記搬送ベルト51の前記載置面51Aから離間させることにより、前記帯電ローラー572のみを用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aを帯電させることができる。もちろん、前記制御部6は、前記移動機構を制御して前記帯電ローラー572を前記搬送ベルト51の前記載置面51Aから離間させることにより、前記帯電ローラー571のみを用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aを帯電させることも可能である。
ここに、図5は、前記移動機構の一例である移動機構51を示す要部模式図である。図5に示すように、前記移動機構51は、フレーム591、レール592、ピニオンギア593、及び駆動モーター594を有するラック・アンド・ピニオン機構である。
前記フレーム591は、前記帯電ローラー571の回転軸571Aで前記帯電ローラー571を回転可能に支持する。また、前記フレーム591の端面591Aには、前記ピニオンギア593に噛合するラックが形成されている。前記レール592は、前記シート搬送装置5の筐体に設けられており、前記フレーム591を前記載置面51Aに対して接近及び離間する方向に摺動可能に支持する。前記ピニオンギア593は、前記フレーム591の側面591Aに形成されたラックに噛合されており、前記駆動モーター594に連結されている。このように構成された前記移動機構51では、前記駆動モーター594により前記ピニオンギア593が駆動されると、前記フレーム591が前記載置面51Aに対して接近及び離間する方向に摺動する。
従って、前記制御部6は、前記駆動モーター594を制御することにより前記帯電ローラー571を前記載置面51Aに対して接触及び離間させることが可能である。なお、前記移動機構51は移動機構の一例に過ぎず、前記移動機構は、例えばソレノイドなどの他の駆動手段を用いて前記帯電ローラー571を前記載置面51Aに対して接触及び離間させる機構であってもよい。
【0037】
<ステップS5>
一方、ステップS5において、前記制御部6は、前記電源装置573に対して前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方を用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに電圧を印加する旨の制御指示を与える。
これにより、前記電源装置573は、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方に電圧を印加し、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の両方を用いて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aを帯電させる。この場合、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の一方のみを用いる場合に比べて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの帯電量が増加する。従って、前記ステップS2又は前記ステップS3において前記第1の帯電条件又は前記第2の帯電条件を満たすと判断された場合に適した前記搬送ベルト51の帯電量が得られる。
【0038】
以上説明したように、前記記録装置10では、前記制御部6により、複数の前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572のうち前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに電圧を印加する帯電ローラーの数が前記第1の帯電条件及び前記第2の帯電条件に応じて変更される。従って、前記記録装置10によれば、前記記録装置10の使用条件に応じて前記搬送ベルト51に求められる吸着性能を発揮させることができる。また、前記記録装置10によれば、前記搬送ベルト51の帯電に要する消費電力の無駄が抑制され、過分な帯電量に起因する飛翔曲り等も抑制される。
さらに、前記記録装置10では、前記制御部6により前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに電圧を印加する際に用いられる帯電ローラーの数が変更されることにより前記搬送ベルト51の帯電量が調整される。従って、前記電源装置573は、可変の定電圧回路を有する必要がなく、常に一定の電圧を出力するものであればよいため、前記搬送ベルト51に精度の高い矩形波の電圧を印加することができる。これにより、前記載置面51Aに形成される前記電荷パターンにおける前記プラス電荷の領域51B及び前記マイナス電荷の領域51Cの境界が明確になり高い吸着性能を得ることができる。但し、前記電源装置573が可変の定電圧回路を有しており、前記ステップS4及びS5において、前記電源装置573から前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々に印加される電圧値が変更されることも他の実施形態として考えられる。
なお、前記帯電制御処理では、前記用紙Pの種別、前記シート搬送装置5の環境温度、及び前記シート搬送装置5の環境湿度のいずれか一つ又は複数に基づいて前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに電圧を印加する帯電ローラーの数が変更されればよい。
【実施例】
【0039】
図6に示す比較例1、2及び実施例1〜3は、前記電源装置573による印加電圧が5k[Vp−p]、前記搬送ベルト51の走行速度が800[mm/s]の条件の下で前記帯電装置57により前記搬送ベルト51を帯電させた結果である。なお、前記搬送ベルト51に前記用紙Pを密着させるには前記載置面51Aの電位が300[V]以上であることが望ましいものとする。
【0040】
<比較例1>
まず、比較例1は、前記帯電装置57が前記帯電ローラー572のみを備える構成であって、前記帯電ローラー572のみを用いて前記電源装置573により前記搬送ベルト51の帯電を行った結果である。ここに、前記帯電ローラー572の電気抵抗値は7[logΩ]である。
本比較例1では、前記帯電ローラー572の通過後の前記帯電ベルト51の前記載置面51Aの電位は270[V]であり、後述の実施例1〜3に比べて帯電量が少なく、前記搬送ベルト51への前記用紙Pの吸着性能が低いことがわかる。
【0041】
<比較例2>
比較例2は、前記帯電装置57が前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572を備える構成であって、前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572を用いて前記電源装置573により前記搬送ベルト51の帯電を行った結果である。
前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々の電気抵抗値は7[logΩ]である。また、前記搬送ベルト51に形成される一周期の前記電荷パターンに対応する前記帯電距離L2は10[mm]である。
但し、前記離間距離L1が、前記帯電距離L2である10[mm]の半整数倍である5.5倍の55[mm]となる位置に、前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572が配置されている。このような構成では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572により前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの同じ領域に同じ極性の電圧が印加されない。そのため、前記帯電ローラー571によって前記搬送ベルト51の前記載置面51Aに形成された前記電荷パターンが前記帯電ローラー572による帯電時に一部相殺される。
これにより、本比較例2では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の通過後の前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの電位は前記比較例1よりも低い224[V]であり、前記搬送ベルト51による前記用紙Pの吸着性能が低いことがわかる。
【0042】
<実施例1>
実施例1は、前記シート搬送装置5において、前記帯電装置57が前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572を備える構成であり、前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572を用いて前記電源装置573により前記搬送ベルト51の帯電を行った結果である。
前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々の電気抵抗値は7[logΩ]である。また、前記搬送ベルト51に形成される一周期の前記電荷パターンに対応する前記帯電距離L2は10[mm]である。
本実施例1では、前記比較例2と異なり、前記離間距離L1が前記帯電距離L2である10[mm]の整数倍である5倍の50[mm]となる位置に前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572が配置されている。このような構成では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572により前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの同じ領域に同じ極性の電圧が印加される。そのため、前記帯電ローラー571によって前記搬送ベルト51に形成された前記電荷パターンが前記帯電ローラー572による帯電時に相殺されない。
これにより、本実施例1では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の通過後の前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの電位が前記比較例1、2より高い346[V]であり、前記搬送ベルト51による前記用紙Pの吸着性能が高いことがわかる。従って、本実施例1の構成によれば、前記搬送ベルト51の走行速度を800[mm/s]まで高めることが可能である。
【0043】
<実施例2>
実施例2は、前記実施例1の条件において前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々の電気抵抗値が異なる条件で、前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572を用いて前記電源装置573により前記搬送ベルト51の帯電を行った結果である。具体的に、前記帯電ローラー571の電気抵抗値が7[logΩ]であり、前記帯電ローラー572の電気抵抗値が7.5[logΩ]である。即ち、前記搬送ベルト51の前記走行方向R2における下流側の前記帯電ローラー572の電気抵抗値が上流側の前記帯電ローラー571の電気抵抗値よりも高い。
本実施例2では、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の通過後の前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの電位は前記比較例1、2よりも高い346[V]であり、前記搬送ベルト51による前記用紙Pの吸着性能が高いことがわかる。従って、本実施例2の構成によっても、前記搬送ベルト51の走行速度を800[mm/s]まで高めることが可能である。
【0044】
<実施例3>
実施例3は、前記実施例1の条件において前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々の電気抵抗値が異なる条件で、前記帯電ローラ571及び前記帯電ローラー572を用いて前記電源装置573により前記搬送ベルト51の帯電を行った結果である。具体的に、前記帯電ローラー571の電気抵抗値が7.5[logΩ]であり、前記帯電ローラー572の電気抵抗値が7[logΩ]である。即ち、前記搬送ベルト51の前記走行方向R2における上流側の前記帯電ローラー571の電気抵抗値が下流側の前記帯電ローラー572の電気抵抗値よりも高い値である。
本実施例3においても、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の通過後の前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの電位は前記比較例1、2よりも高い342[V]であり、前記搬送ベルト51による前記用紙Pの吸着性能が高いことがわかる。従って、本実施例3の構成によっても、前記搬送ベルト51の走行速度を800[mm/s]まで高めることが可能である。
さらに、本実施例3では、前記帯電ローラー571の通過後の前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの電位が前記実施例1、2に比べて低い220[V]であり、前記帯電ローラー571による前記搬送ベルト51の帯電量が抑制されている。これにより、本実施例3の構成では、前記搬送ベルト51の前記載置面51Aの急激な帯電が抑制されるため、前記搬送ベルト51の劣化を抑制して長寿命化を図ることができる。
なお、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値は、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々に含まれる導電性材料の種類及び混合比率などによって変更可能である。また、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572各々の径を変更することによって、前記帯電ローラー571及び前記帯電ローラー572の電気抵抗値を任意に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 :給紙カセット
2 :給紙部
3 :画像形成部
31〜34:記録ヘッド
31A〜34A:インク吐出面
4 :インクタンク部
41A〜44A:インクタンク
5 :搬送ユニット
51:搬送ベルト
52:駆動ローラー
53〜55:張架ローラー
56:押圧ローラー
57:帯電装置(帯電手段の一例)
58:温湿度センサー
59:移動機構
591:フレーム
592:レール
593:ピニオンギア
594:駆動モーター
6 :制御部
7 :排紙部
8 :本体フレーム
10:インクジェット記録装置(画像形成装置の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6