(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記ビームの集束及び残留エネルギー汚染を制御するステップを、さらに有する、請求項1に記載の方法。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記イオンビームの上流の電子抑制を制御し、電子が前記イオンビームから奪われるのを抑えるステップを、さらに有する、請求項1に記載の方法。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記イオンビームの偏向を制御し、前記レンズの出口で前記ビームを中心に置くステップを、さらに有する、請求項1に記載の方法。
ビームを中心に置くことを決定するために、前記レンズの出口アパーチャー内に垂直に中心のあるコリメート光センサを供給するステップを、さらに有する、請求項4に記載の方法。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記イオンビームの最終偏向角を制御し、前記レンズの出口で前記イオンビームの位置を制約するステップを、さらに有する、請求項1に記載の方法。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記ビームの集束及び残留エネルギー汚染を制御するステップを、さらに有する、請求項11に記載のシステム。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記イオンビームの上流の電子抑制を制御し、電子が前記イオンビームから奪われるのを抑えるステップを、さらに有する、請求項11に記載のシステム。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記ビームの偏向を制御し、前記レンズの出口で前記ビームを中心に置くステップを、さらに有する、請求項11に記載のシステム。
ビームを中心に置くことを決定するために、前記レンズの出口アパーチャー内に垂直に中心のあるコリメート光センサを供給するステップのための命令を、さらに有する、請求項14に記載のシステム。
前記グレーディング及び前記偏向因子を調整するために電圧を得るステップは、前記イオンビームの最終偏向角を制御し、前記レンズの出口で前記イオンビームの位置を制約するステップを、さらに有する、請求項11に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
イオン注入機は、半導体製造において、材料の導電率を選択的に変えるために広く用いられる。典型的なイオン注入機では、イオン源から生成されるイオンを、1つ以上のアナライザマグネット及び複数の電極を備えることができる一連のビームラインコンポーネント中を通過させる。アナライザマグネットは、所望のイオン種を選択し、汚染種及び所望しないエネルギーを有するイオンをろ過して除去し、ターゲットウエハーでのイオンビーム品質を調整する。適切に形成した電極は、イオンビームのエネルギー及び形状を修正することができる。
【0003】
図1は、従来のイオン注入機100を示し、イオン注入機100は、イオン源102、引き出し電極104、90°マグネットアナライザ106、第1の減速(D1)ステージ108、70°マグネットアナライザ110、第2の減速(D2)ステージ112を含む。D1及びD2の減速ステージ(「減速レンズ」としても知られる)は、各々、イオンビームを通過させる規定のアパーチャーを有する多数の電極を備える。電位の異なる組み合わせを多数の電極に印加することにより、D1及びD2の減速レンズは、イオンエネルギーを操作して、イオンビームを所望のエネルギーでターゲットウエハーに当てることができる。
【0004】
上記のD1又はD2の減速レンズは、典型的に静電トライオード(triode)(又はテトロード(tetrode))減速レンズである。
図2は、従来の静電トライオード減速レンズ200の斜視図を示す。静電トライオード減速レンズ200は、3セットの電極、すなわち、入り口電極202(「ターミナル電極」ともいう)、抑制電極204(又は「集束電極」)及び出口電極206(必ずしも接地しないけれども、「接地電極」ともいう)を備える。従来の静電テトロード減速レンズは、テトロードレンズが、抑制電極204と出口電極206との間に、追加の1セットの抑制電極(又集束電極)を有することを除いて、静電トライオード減速レンズ200に類似している。静電トライオード減速レンズ200では、各セットの電極は、イオンビーム20が(例えば、ビームの方向に沿って+zの方向に)そこを通過することを可能にするスペース/ギャップを有することができる。
図2に示すように、各セットの電極は、同じ電位を共有するように互いに電気的に結合した2つの導電ピースを備えることができる。その代わりに、各セットの電極は、イオンビーム20がそこを通過するアパーチャーを有する1ピースの構造にすることができる。このため、各セットの電極は、事実上、単一の電位を有する単一の電極である。簡単にするために、各セットの電極は、本明細書では、単数として見なされる。すなわち、(複数の)入り口電極202は「(単数の)入り口電極202」といい、(複数の)抑制電極204は「(単数の)抑制電極204」といい、(複数の)出口電極206は「(単数の)出口電極206」という。
【0005】
動作中、入り口電極202、抑制電極204及び出口電極206には、イオンビーム20のエネルギー及び/又は形状を以下の方法で操作するように、独立にバイアスをかける。イオンビーム20は、入り口電極202を通って静電トライオード減速レンズ200に入ることができ、例えば、10−20keVの初期エネルギーを有することができる。イオンビーム20内のイオンは、入り口電極202と抑制電極204との間で加速することができる。抑制電極204に到達すると、イオンビーム20は、例えば、約30keV以上のエネルギーを有することができる。抑制電極204と出口電極206との間で、イオンビーム20内のイオンは、典型的に、ターゲットウエハーのイオン注入のために用いるものにより近いエネルギーに減速することができる。一例では、イオンビーム20は、静電トライオード減速レンズ200から出る時に、約3〜5keV以下のエネルギーを有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来のレンズ構成の課題を解決するために、改善した静電レンズ構成は、1つ以上の可変制御抑制/集束電極を含むことができる。これらの電極は、互いに対して独立に又は分離して制御され/バイアスをかけられる、様々な形状、曲率、位置、材料及び/又は構成を含むことができ、それにより、ビームの形状及びエネルギーの柔軟性のある効果的な操作を提供する。
【0013】
図3は、例示的なグレーデッド形レンズ構成300の側面図である。グレーデッド形レンズ構成300は、数セットの電極を含むことができる。例えば、グレーデッド形レンズ構成は、1セットの入り口電極302、1以上のセットの抑制/集束電極304及び1セットの出口電極306を含むことができる。各セットの電極は、イオンビーム30(例えば、リボンビーム)がそこを通過することを可能にするスペース/ギャップを有することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、これらの電極(例えば、入り口電極302、抑制/集束電極304及び出口電極306)は、ハウジング308内に備えることができる。ポンプ310を直接的に又は間接的にハウジング308に接続することができる。一実施形態では、ポンプ310は、高真空環境又は他の制御環境を供給するための真空ポンプにすることができる。他の実施形態では、ハウジング308は、1つ以上のブッシング312を含むことができる。これらのブッシング312は、ハウジング308を他のコンポーネントから電気的に絶縁するために、用いることができる。他の様々な実施形態も提供することができる。
【0015】
図3に示すように、各セットの入り口電極302及び出口電極306は、互いに電気的に結合した2つの導電ピースを備えることができ、又は、イオンビーム30がそこを通過するアパーチャーを有する1ピースの構造にすることができる。いくつかの実施形態では、抑制/集束電極304の上部及び下部は、そこを通過するイオンビーム30を偏向するために、(例えば、別個の導電ピース内で)異なる電位を有することができる。簡単にするために、各セットの電極は、単数として見なすことができる。すなわち、(複数の)入り口電極302は「(単数の)入り口電極302」といい、(複数の)抑制/集束電極304は「(単数の)抑制/集束電極304」といい、(複数の)出口電極306は「(単数の)出口電極306」という。グレーデッド形レンズ構成300は、(例えば、5セットの抑制/集束電極304を有する)7つの要素のレンズ構成として示されるけれども、任意の数の要素(又は電極)を利用することができることを認識すべきである。例えば、いくつかの実施形態では、グレーデッド形レンズ構成300は、3セットから10セットの範囲の電極を利用することができる。他の様々な実施形態も提供することができる。いくつかの実施形態では、電極を通過するイオンビーム30は、ボロン又は他の元素を含むことができる。イオンビーム30の静電集束は、イオンビームの経路又はビームライン30に沿っての電位の勾配を制御するいくつかの薄い電極(例えば、抑制/集束電極304)を用いることにより達成することができる。グレーデッド形レンズ構成300では、オーバー集束を避ける間に、高減速比率も提供することができる。
【0016】
その結果、入力イオンビーム30の使用は、非常に低いエネルギーの出力ビームに対してさえ、より高い品質のビームを可能にするエネルギーの範囲で使用することができる。一実施形態では、イオンビーム30がレンズ構成300の電極を通過する時に、イオンビーム30は、6keVから0.2keVに減速させることができ、グレーデッド形レンズ構成300の電極により15°で偏向させることができる。この例では、エネルギー比率は30/1にすることができる。他の様々な実施形態も提供することができる。
【0017】
なお、減速、偏向及び/又は集束を分離して独立に制御することは、以下の(1)及び(2)により達成することができる。
(1)イオンビーム30の中心光線軌跡(CRT)について電極(例えば、入り口電極302、抑制/集束電極304及び出口電極306)の対称性を維持すること。
(2)偏向角35でCRTに沿っての各点でのビームエネルギーを反射するために、イオンビーム30のCRTに沿って偏向電圧を変化させること。
イオンビーム30のCRTについての電極の対称性により、イオンビーム30に最も近い上部及び下部の電極の端部は、イオンビーム30のCRTから等しい(又はほとんど等しい)垂直距離に保持することができる。例えば、イオンビーム30の上部及び下部の電極の電圧の差(例えば、V
def(z)=V
upper(z)-V
lower(z))は、電界の偏向成分(例えば、(V
upper(z)-V
lower(z))/gap(z))がその点でのビームエネルギーの一定の比率/係数(電極又はレンズに沿って変化し得る)(例えば、factor
*E
beam(z))になるように構成することができる。例えば、これは、以下の式1のように表すことができる。
V
def(z)/gap(z)=factor
*E
beam(z) 式1
【0018】
いくつかの実施形態では、この偏向電圧を上部及び/又は下部に対して非対称に印加することができる(例えば、zでCRTでの電位に対して+/-V
def(z))。他の実施形態では、例えば、偏向電圧をイオンビーム30の片側だけに2倍の偏向電圧を印加することができる。なお、頂部及び底部の電極の電圧の間の関係は、一定の配置に対して一定にできるため、この関係を回路ネットワーク又は他の同様のネットワークに実装することができる。従って、電源の数を2倍にする必要性、及び/又は、この関係をハードウェアに設定することは、完全に除外しないけれども、低減することができる。他の様々な実施形態も提供することができる。
【0019】
図4A〜4Dは、
図3の例示的実施形態によるグレーデッド形レンズ構成での偏向、減速及び/又は集束の例示的グラフ400A〜400Dを示す。これらの例示的グラフ400A〜400Dでは、イオンビーム30を、様々な集束条件を生成する各電極で、異なる放射率及び電圧/バイアスで、示すことができる。なお、各例示的グラフは、(式1で上記したように)0.16の偏向係数を用いることができ、同一の又は類似の偏向(例えば、20°の偏向)を生成することができる。例えば、
図4Aは、0の放射率のイオンビームを用いたグレーデッド形レンズ構成での偏向、減速及び/又は集束の例示的グラフ400Aを示し、
図4Bは、0でない放射率のイオンビームを用いたグレーデッド形レンズ構成での偏向、減速及び/又は集束の例示的グラフ400Bを示し、
図4Cは、0でない放射率の収束するイオンビームを用いたグレーデッド形レンズ構成での偏向、減速及び/又は集束の例示的グラフ400Cを示し、
図4Dは、異なる集束電圧を用いたグレーデッド形レンズ構成での偏向、減速及び/又は集束の例示的グラフ400Dを示す。大抵の状況では、式1の偏向係数は、0.16として保持することができる。他の様々な実施形態も提供することができる。
【0020】
その出願の全体が本明細書に参照により組み込まれる、ドケット番号2008−109の発明の名称”Techniques for Independently Controlling Deflection, Deceleration and Focus of an Ion Beam”(イオンビームの偏向、減速及び集束を独立に制御するための技術)の2009年1月2日に出願された同時係属出願番号12/348,091に開示された他のグレーデッド形レンズ構成が提供されることも認識される。
【0021】
上述の通り、グレーデッド形減速−偏向静電レンズは、各々が別個の電源に接続された多くの電極を含む。例えば、7段レンズは、典型的に、(主減速供給に加えて)10個の高電圧電源を必要とする。電極の電圧は、以下の(1)〜(4)を一緒に達成するように、変化させなければならない。(1)ビームの集束を制御するための減速のグレーディング、(2)レンズのセンターライン上のビームの中心光線軌跡(CRT)のセンタリング、(3)ビームの最終偏向角の調整、(4)エネルギー汚染の最小化。
【0022】
全ての電極の電圧は、電子電流を防ぐために、上流のビームラインに対し負のままであるという制約を維持する間に、上記を達成すべきである。
【0023】
この多数の電源を制御することは、重要な制御課題である。従って、上記の目的を直接、反映する少数の「仮想ノブ」を生じるためのこれらの電源制御を組み合わせる方法を開示する。そのようなパラメータ化は、この複雑な装置の制御を単純化し可能にする。
【0024】
開示方法は、独立にイオンビームを減速し偏向することができる静電レンズ(「垂直静電エネルギーフィルタ」又はVEEFとも呼ぶ)の電極に電圧を与えることに言及する。
図5に概略的に示すこの配置は、約20°の偏向アークθを中心とする7つの内側の電極及び外側の電極(0から6まで番号付けされる)を含む。この例では、(入力ビームからの高エネルギー中性物が高電圧電極に当たらないように、)電極の位置を扇形に広げ、電極の角度の間隔は均一である。最初の電極「0」(内側及び外側)は、上流(高エネルギー)ビームラインにかかわり、最後の電極「0」(内側及び外側)は、下流(低エネルギー)ビームラインにかかわる。上流ビームラインと下流ビームラインとの間の電位の差は、レンズの減速電圧である。開示の実施形態では、追加的に、他の電極に接続された10個の他の電源がある。(偏向アークに沿っての特定の位置での)内側の電極と外側の電極との間の電圧の差は、その点でのビームのCRTのエネルギーに比例する。偏向電圧の差とCRTのエネルギーとの間の比例定数を、偏向因子F
deflと呼ぶ。
【0025】
そのようなグレーデッド形偏向/減速静電レンズ又はVEEFに電圧を与える技術は、以下のいくつかの側面を含む。
【0026】
1.電極電圧を与えるための方法(少数の「仮想ノブ」に基づいて)
【0027】
a.レンズに沿ってのビームのCRTのエネルギーを計算することを伴う、減速をグレーディングすること。
【0028】
b.(レンズ形状の幾何学的角度を超えて)角度補正を得るために、レンズに沿っての偏向因子関数を計算すること。
【0029】
c.全ての電圧を(下流ビームラインに対して)負に維持する間に、ビームのCRTがレンズのセンターに近いままであるような方法での、角度補正で、グレーデッド形の減速及び偏向を得るために、電極電圧を計算すること。
【0030】
2.VEEFの出口でビームの垂直位置を、識別するための装置
【0031】
3.ビームのCRTをレンズ内の中心に維持する間に、所望の偏向及び集束を得るために、これらの「仮想ノブ」を調整するための方法。
【0032】
上記の各々を以下に、順次、説明する。
【0035】
入力ビームラインにかかわらない最初の電極(
図5で1が番号付けされる)は、上流のビームプラズマ電子がビームから奪われるのを抑えるので、抑制電極として知られる。この抑制電極と最終の接地電極との間で、ビームのエネルギーは、電極2〜5の電位に従って、減少する。この減速電界のグレーディングは、ビームの正味集束の他に残留エネルギー汚染(EC)にも影響する。開示方法により、このグレーディングは、以下の式2により定義されるように、単一のパラメータαにより具体化される、べき法則により説明される。
【数1】
ここで、i=レンズに沿っての位置を説明するインデックス、E
crt=各点IでのCRT上のイオンのエネルギー、E
f=ビームの最終のエネルギー、E
0=ビームの最初のエネルギー、V
s=抑制電極の位置でのCRT上の電位、及びe=電子の電荷である。
【0036】
従って、式2から、
図6に例示するように、α=1の場合、CRT上のイオンのエネルギーは、E
0+eV
sからE
fへ直線的に変化し、α>1の場合、そのエネルギーは、もっと速く減少する。一般的に、大きいαはビームを速く減速し、高エネルギー中性化イオンのウエハーに到達することからの変化を減少し(すなわち、低ECという結果になる)、一方、小さいαはビームのより大きい集束という結果になる。
【0039】
内側の電極と外側の電極との間の電圧の差は、粒子の動きに垂直な電界を与え、従って、局所的な円形又はアーチ形の動きを生成する(
図7を参照)。ビームが内側の電極と外側の電極との間の中心にあるように、曲率半径及びアークの長さ(及び従って正味偏向角)は、レンズの形状に適合させなければならず、それにより、収差及び集束と偏向との間の結合を最小化する。
【0040】
F
deflがVEEFの長さにわたって一定である場合、ビームの中心光線軌跡(CRT)は完全に円形であり、その長さLにわたって正味偏向角θという結果になる。このアーチ形の動きからの最小の偏差を引き起こす間に、入力ビームアラインメントの変化及び空間電荷の効果に適合させるために、正味偏向角を微調整することができることが望ましい。本発明の方法により、ビームの偏向の曲率半径をレンズの長さに沿って直線的に調整することによって、これが行われる。従って、単一のパラメータF
deflを、F
deflの平均値f
av及び勾配βの2つのパラメータで置き換える(
図8及び以下の式3を参照)。
【数2】
【0041】
偏向経路に沿って各点で、差分偏向は、
【数3】
【0042】
これを0とzとの間で積分すると、正味の偏向θ(z)を生じる。
【数4】
【0043】
垂直変位は、式6により、角偏向と関係している。
【数5】
【0044】
従って、(長さLの)レンズの出口で、
【数6】
【0045】
図9A及び9Bは、長さL=150mmのレンズにわたり変化するf
av及びβの影響を実証する、VEEFの中を通ってのイオンビームの軌跡を示す。変化するf
av単独では、最終角度の他にビームの位置にも影響を及ぼし、一方、変化するβ単独では、最終角度は変わらないままで、位置のみに影響を及ぼす。
【0046】
f
av及びβを共に変化させることにより、垂直位置をビームの軌跡Z
cに沿うある点で不変のままにする間に、正味の偏向角を変化させることができる。これを実現するために必要なf
avとβとの間の制約は、式9の全微分を考慮することにより、見出すことができる。
【数7】
【0047】
レンズの出口での位置(dy(L)=0)を制約して、正味の偏向角θ(dθ)の所望の変化とf
av及びβ(df
av, df
av) の必要な変化との間の関係を得る。
【数8】
【0048】
従って、偏向がVEEF(
図4)内の電極2〜6の間で起こる場合に、これらの電極の位置での偏向因子F
defl (i) が以下の式となるように、F
0 (=「β=0の時のf
av」)及びθ
cor(=式11のdθ)を規定することができる。
【数9】
【0049】
図10は、VEEF出口(図でL=300mm)に制約されるyで、変化するθ
cor(
図10のdθ)によって異なるビームの経路を示す。
【0050】
あるいは、VEEF内の正味の偏向をdθだけ変化させる間に、その位置をVEEF出口からさらに下流に(例えば、距離D)制約することができ、VEEF出口での位置を−dθDだけ平行移動させる。
【数10】
【0051】
従って、式13のβのθ
corへの依存は、式15のように変わる。
【数11】
【0052】
図11は、レンズ出口からの距離Dで、制約されるyで、変化するdθによって異なるビームの経路を示す。
【0054】
(出口のy又はウエハーのyでの適切な制約と共に、)F
0及びθ
corを規定した後に、所望のアーチ形の動きを達成するために、上部及び下部電極に電極電圧を与える。
図7で示したように、電極電圧は、式16により、ビームのCRTに沿う位置で、偏向因子により決定される。
【数12】
ここで、V
crtは、式2により、V
crt=E
f−E
crtを用いて計算される。しかしながら、式16により、外側電極は正になることができ、これにより、
図12に例示するように、電子抑制の失敗を引き起こすことができ、(減速レンズの前に又は後に、ビームの爆発を引き起こし、)
図12は、VEEFの端部で、外側電極電位がどのようにして正になり、それにより、下流のビームプラズマから電子を奪うかを示す。
【0056】
1.全ての外側電極電圧は、下流のビームライン電位より下のままである(通常0)。
【0057】
2.外側抑制電極は、上流のビームライン電位より下のままである。(抑制供給の基準は、通常、上流のビームラインとするため、これは、電源構造の要件にもなり得る。)
【0058】
制約1は、CRTに沿って(至る所で)、一定の電位δVを差し引くことにより、満たすことができる。δVは、ビームのエネルギーを増加させるため、以下の式を満たすように計算される。
【数13】
【0059】
δVは、式2から得られるV
crtから差し引かれ、上部及び下部電極の電圧が式13により計算される。
【0060】
制約2は、抑制電圧をCRT上に規定するよりも、外側抑制電圧を0より大きく規定することにより、満たすことができる。すなわち、規定されたV
s,upperからV
s,crtを計算するために、式13を用いることができる。なお、基準をV
0(上流ビームラインの電位)とする、(正の)抑制電源値V
S,VFを、通常、規定する。
すなわち、V
S,VF≡V
0−V
s,upper
【数14】
【0061】
E
crt(なお、V
s,crt=V
crt(1)=V
0−E
crt(1))を規定するために、この計算したV
s,crtをαアルゴリズムで用いる。
【0063】
減速/偏向レンズへの規定した入力ビーム及びレンズの規定したエネルギー減速に対して、レンズ内の電極上の電位を制御する電源は、ビームの集束及び偏向を制御する。開示方法によって、以下の「仮想ノブ」によりこれらの電源を制御する。
【0064】
(1)α−ビームの集束の他に残留エネルギー汚染も制御する。
【0065】
(2)V
S−上流の電子抑制を制御し、電子が上流ビームから奪われるのを防ぐ。
【0066】
(3)F
0−レンズの出口でビームを中心に置くために用いられて(θ
cor=0で)、ビームの偏向を制御する。
【0067】
(4)θ
cor−位置をレンズの出口に制約する間に、ビームの最終偏向角の微調整を提供する。
【0068】
2.
偏向レンズの出口でビームを中心に置くための装置
【0069】
偏向レンズの出口でビームを中心に置くために、F
0を調整することができることは、有利である。入力ビームのアラインメント及び空間電荷の効果のわずかな変化により、そのような動的調整は重要であり得る。
【0070】
アプローチ1:電流センサとしての最終接地電極の使用
【0071】
内側及び外側の最終接地電極の電流の測定により、I
iとI
0とが等しくなるまで、F
0を変化させることにより、ビームを中心に置くことができる(
図13を参照)。両方の最終接地電極に電流を生じるには、ビームが狭すぎる場合、電極に同一電流を達成するF
0の2つの値に到達するまで、F
0を変化させることができ、次いで、これらの2つの値の間にF
0を設定する。
【0072】
アプローチ2:出口アパーチャー内に垂直に中心のあるコリメート光センサの使用
残留ガス中を通過するイオンビームは、光を生成する(残留ガス分子は、励起されて、その基底状態に戻るので)。ビームの垂直位置を測定するために、これを用いることができる。
【0073】
図14に示すように、「単一光子」の検出ができるCCD(電荷結合素子)又はICCD(強化電荷結合素子)の使用により、光センサを非常に精度を高くすることができる。ビームの垂直プロファイルを得るために、CCDの一次元アレイを用いることができる。ビームのない画像を撮ることにより、任意の背景光(例えば、下流のプラズマ・フラッド・ガンからの)を差し引くことができる。
【0074】
3.
「仮想ノブ」を調整するための方法
【0075】
方法1:VEEFの出口の制約された位置でθ
corを用いること
【0076】
最終ビームの所望のエネルギー、電流及び集束を達成するために、減速比率α及びV
sを設定する。これらの値を決定するプロセスは、2009年1月2日に出願された、発明の名称”Techniques for Independently Controlling Deflection, Deceleration and Focus of an Ion Beam”(イオンビームの偏向、減速及び集束を独立に制御するための技術)の米国特許出願番号12/348,091に記載されている。VEEFの出口で中心ビームを達成するために、F
θパラメータを設定する。
【0077】
上記の2つのアプローチ(最終接地電極の電流センサ、又は中心にある光センサ)の内の1つを用いて、VEEFの出口でのビームの垂直位置を識別する間に、これは、F
θを調整することにより、なされる。一旦、これがなされると、次いで、θ
corを用いて、ビームをウエハー表面で中心に置くことができる(VEEFの出口で制約された垂直位置で)。ビームをVEEFの出口で両方とも中心に置き、VEEFを正しい角度(すなわち、ビームラインが設定される曲げ角度)で起動することを、これが確実にする。ウエハー平面でのビームのセンタリングは、二次元プロファイラ又はビームの垂直位置を検知するための他の周知技術を用いて達成される。
【0078】
方法1a:VEEFの出口の制約された位置でθ
corを用いて、ウエハー平面での位置及び角度の両方を測定すること
【0079】
ビームの垂直位置が、たとえ、VEEFの出口で直接、識別されなくとも、ビームの位置を調整するために、(VEEFの出口で制約された位置で)パラメータθ
corを用いることは、有利である。θ
cor及びF
0の両方を最適値に設定することができるように、2つのパラメータを測定する。本方法では、ビームの、平均垂直位置Y及び平均垂直角度Y′の両方をウエハー平面で測定する。これらのパラメータの変動するθ
cor及びF
0に対する応答又は感度を、特定のケースに対し、
図15のA及びBに示し、直線状であることを明らかに理解することができる。
【0080】
丁度3点を用いて実験的に偏微分を決定することができる。
【数15】
【0081】
これらを用いてY(F,θ)及びY′(F,θ)の一般的表現を得ることができる。
【数16】
【0082】
設定=0のとき、どれもが、ウエハーで及びVEEFの出口で、ビームを中心にするのに必要なF及びθの値を生じさせる。
【数17】
【0083】
F及びθに対しこれらを解くと、
【数18】
【0084】
方法2:ウエハー平面の制約された位置でθ
corを用いること
【0085】
最終ビームの所望のエネルギー、電流及び集束を達成するために、減速比率α及びV
sを設定する。次いで、ウエハー平面でビームを中心にするために、V
0を調整する(二次元プロファイラ又はビームの垂直位置を検知する他の周知手段を用いて達成される。)。次いで、(ウエハー平面の制約された垂直位置と共に)θ
corを変化させることにより、ビームの角度をウエハー平面で規定の曲げ角度になるように調整することができる。ビームをVEEFの出口で中心に置くこと、かつ、ビームがVEEFから正しい角度で出ることの両方を、これが確実にする。
【0086】
1.
開示した調整方法の他のレンズの他の幾何学的配置への適用
【0087】
なお、開示した方法は、任意の特定のレンズの幾何学的配置への適用に限定されない。むしろ、様々な異なるレンズの幾何学的配置を用いるアプリケーションに適用することができる。
【0088】
減速及び偏向を組み合わせる任意の静電レンズに対し、曲げが単一であろうと、多重であろうと、(集束が最大である)レンズの出口で、ビームが中心にあることは、以下のいくつかの理由から、重要である。
【0090】
(2)それは、角度調整と集束との間の相互作用を減少する。
【0091】
(3)それは、整合的な調整を維持し、整合的な残留エネルギー汚染をもたらす。
【0092】
図16に例示する「ごまかしレンズ」の例を考慮する。ビームがなお偏向される間に、最終の減速が起こるため、最終の曲げ内に形成する中性物により、常に、残留エネルギー汚染が存在する。出口ビームの角度の調整を行うために、最終の曲げの曲率半径を調整する必要がある。ビームを出口位置に保持する間に、これを行うことが望ましく、これにより、ウエハーに到達する中性物の軌跡の変化を最小化する。いくつかの最終電極に独立電位を加えることにより、(かつ、おそらく、もっと多くの電極を加えることにより、)同時にビームのグレーディング及び偏向を成し遂げることにより、かつ、本明細書で説明する調整方法を適用できるようにすることにより、これを達成することできる。
【0093】
本発明をある実施形態を参照して開示したが、添付の特許請求の範囲で規定しているような本発明の範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に対する多くの修正及び変更は可能である。従って、本発明は説明した実施形態に限定されず、本発明は以下の特許請求の範囲及びその均等物の言語により規定される全範囲を有することを意図している。
【0094】
例えば、命令を実行することができるコンピュータにより読み込むことができるコンピュータ可読記憶媒体に、命令のプログラムを具体的に体現することにより、本明細書で説明した方法を自動化することができる。汎用コンピュータは、そのようなコンピュータの一例である。技術的に周知の適切な記憶媒体の限定されない例示的なリストは、読み込み可能又は書き込み可能CD、フラッシュメモリチップ(例えば、サムドライブ)、様々な磁気記憶媒体等のような装置を含む。
【0095】
本明細書の機能及びプロセスステップは、ユーザコマンドに応じて、自動的に、又は全体的に、又は部分的に、実行することができる。自動的に行われるアクティビティ(ステップを含む)は、ユーザのアクティビティの直接の始動なしに、実行可能な命令又は装置の動作に応じて行われる。
【0096】
なお、開示したシステム及び方法は、限定されるものではない。他のシステム及び方法は、同一の目的を達成するための本発明の原理に従って、導くことができる。本発明を特定の実施形態を参照して説明したけれども、本明細書で示し説明した実施形態及び変形は、例示的目的のみのためであると、理解すべきである。現在の設計に対する変更は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者により実行することができる。代替の実施形態では、プロセス及びアプリケーションは、開示システムの要素をつなぐネットワークにアクセスする1つ以上の(例えば、分散した)処理装置に置くことができる。さらに、図で与えた任意の機能及びステップは、ハードウェア、ソフトウェア又は両方の組合せに実装することができ、開示システムの要素をつなぐネットワーク又はインターネットを含む別のリンクさせたネットワークの任意の位置に配置した1つ以上の処理装置に存在することができる。