(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生地(3)を切断可能な先端部(11a)を備える円筒状のポスト(11)及び前記ポスト(11)の基端から前記ポスト(11)の半径方向外側へ向けて延びるフランジ(12)を備えるアイレット本体(1)と、前記アイレット本体(1)と接合するための穴部(21)を有するハトメ用ワッシャー(2)との間に生地(3)を挟んでハトメを形成するハトメ取付方法であって、
前記穴部(21)の周囲に立ち上がり、前記穴部(21)を囲む内周面(221)に沿って互いに離間して配置された複数の薄肉部(24)を有するライザー部(22)及び前記ライザー部(22)の周囲に配置される周縁部(23)を備えるハトメ用ワッシャー(2)と前記アイレット本体(1)との間に前記生地(3)を挟むステップと、
前記ポスト(11)を前記穴部(21)内に挿入し、前記ポスト(11)の外周面(112)と前記ライザー部(22)の内周面(221)との間に前記生地(3)を保持した状態で前記ポスト(11)の先端で前記生地(3)を切断させるステップと、
前記ポスト(11)の外周面(112)と前記ライザー部(22)の内周面(221)との間に前記生地(3)を保持した状態で前記アイレット本体(1)と前記ハトメ用ワッシャー(2)とを押圧して前記ライザー部(22)を半径方向外側へ変形させ、前記複数の薄肉部(24)の少なくとも一部を破断させるステップと、
前記アイレット本体(1)と前記ハトメ用ワッシャー(2)とを前記生地(3)を前記内周面(221)と前記外周面(112)との間に保持した状態で接合して固定するステップと
を含むハトメ取付方法。
【背景技術】
【0002】
衣料品等に設けられる穴の周囲を補強するために「ハトメ」と呼ばれる環状の補強具が用いられている。従来、このようなハトメを薄い生地や伸縮性のある生地に取り付けるときは、生地に厚みを出すか或いは編目等を塞ぐために、パッキン等の補強材を挿入してから加締めることが行われてきた。しかしながら、パッキンを挿入することにより部品点数が増え、加締め作業が複雑になる場合があった。また、ハトメ取り付け後は長期間の使用により取り付け位置でゆるみが生じる場合があった。
【0003】
そこで、薄い生地や伸縮性のある生地に取り付ける場合に、長期間の使用によるゆるみの発生を抑制するために、例えば、特開2007−222220号公報では、アイレット本体と接合されるワッシャーの係合面に、頂部が平坦な台形状の生地押圧片を設けたハトメ用ワッシャーが記載されている。これによれば、生地押圧片の台形の頂部でアイレット本体との間に狭持された生地を幅広く押圧することができるため、薄い生地や伸縮性のある生地に穴を開けることなく、より安定的に固定することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたハトメを用いた場合でも、生地の挟み方又は生地の種類によっては、まだゆるみが生じる可能性があり、薄い生地や伸縮性のある生地に対してより確実にハトメを固定させるためには、未だ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、薄い生地や伸縮性のある生地に対して、より確実に且つ長期間安定的にハトメを固定させることが可能なハトメ用ワッシャー及びこれを用いたハトメ取付方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明は一側面において、アイレット本体と接合するための穴部を有するハトメ用ワッシャーであって、穴部の周囲に立ち上がるライザー部と、ライザー部の周囲に配置される周縁部と、を備え、ライザー部が、穴部を囲む内周面に沿って互いに離間して配置された複数の薄肉部を有するハトメ用ワッシャーである。
【0008】
本発明の一実施形態に係るハトメ用ワッシャーは、複数の薄肉部が、内周面に形成された溝部を含む。
【0009】
本発明の別の一実施形態に係るハトメ用ワッシャーは、複数の薄肉部が、内周面からライザー部の外周面方向に向かってV字状に形成された溝部を含み、溝部が、ライザー部の高さ方向(H)に沿って延在している。
【0010】
本発明の更に別の一実施形態に係るハトメ用ワッシャーは、周縁部が、ライザー部の外周において環状に突出する凸部及び凸部の裏面に形成された第1凹部を有し、アイレット本体との接合時にはアイレット本体の一端を第1凹部内に収容するとともに、凸部の表面上で生地を支える第1周縁部と、第1周縁部の外周側に配置され、凸部と連続する面を有し、アイレット本体の接合時には凸部と連続する面と凸部との間に形成された第2凹部(27b)にアイレット本体の他端を収容する第2周縁部とを備える。
【0011】
本発明の更に別の一実施形態に係るハトメ用ワッシャーは、ライザー部が、アイレット本体との接合時に、半径方向外側へ弾性変形してなる。
【0012】
本発明は別の一側面において、生地を切断可能な先端部を備える円筒状のポスト及びポストの基端からポストの半径方向外側へ向けて延びるフランジを備えるアイレット本体と、アイレット本体と接合するための穴部を有するハトメ用ワッシャーとの間に生地を挟んでハトメを形成するハトメ取付方法であって、(a)穴部の周囲に立ち上がり、穴部を囲む内周面に沿って互いに離間して配置された複数の薄肉部を有するライザー部及びライザー部の周囲に配置される周縁部を備えるハトメ用ワッシャーとアイレット本体との間に生地を挟むステップと、(b)ポストを穴部内に挿入し、ポストの外周面とライザー部の内周面との間に生地を保持した状態でポストの先端で生地を切断させるステップと、(c)アイレット本体とハトメ用ワッシャーとを押圧してライザー部を半径方向外側へ変形させ、複数の薄肉部の少なくとも一部を破断させるステップと、(d)アイレット本体とハトメ用ワッシャーとを固定するステップとを含むハトメ取付方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薄い生地や伸縮性のある生地に対して、より確実に且つ長期間安定的にハトメを固定させることが可能なハトメ用ワッシャー及びこれを用いたハトメ取付方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るアイレット本体、生地及びハトメ用ワッシャーを示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るハトメ用ワッシャーの上面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係るハトメ用ワッシャーの側面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るハトメ用ワッシャーの薄肉部の部分拡大図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施の形態に係るハトメ取付方法の一例を示す工程断面図(その1)であり、アイレット本体及びハトメ用ワッシャーをパンチ及びダイにそれぞれ取り付けた場合の例を表す。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施の形態に係るハトメ取付方法の一例を示す工程断面図(その2)であり、アイレット本体の先端部で生地を切断する状態を表す。
【
図5C】
図5Cは、本発明の実施の形態に係るハトメ取付方法の一例を示す工程断面図(その3)であり、アイレット本体の先端部で生地を切断した後の状態を表す。
【
図5D】
図5Dは、本発明の実施の形態に係るハトメ取付方法の一例を示す工程断面図(その4)であり、アイレット本体の先端部とハトメ用ワッシャーとの接合前の状態を表す。
【
図6】
図6は、ハトメ用ワッシャーとアイレット本体とを接合させてハトメを形成した場合の概略図である。
【
図7】
図7は、ハトメ用ワッシャーとアイレット本体との接合状態の詳細を示す部分拡大図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係るハトメ用ワッシャーの変形例を表す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すハトメ用ワッシャーを生地に取り付けた後の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るハトメは、アイレット本体1とアイレット本体1と接合するための穴部21を有するハトメ用ワッシャー2とを備える。アイレット本体1及びワッシャー2の材料としては市販の様々な部品が使用できる。例えば、アイレット本体1は、金属板をプレス加工したものが好適に用いられる。
【0017】
アイレット本体1は、生地3を切断可能な先端部11aを備える円筒状のポスト11と、ポスト11の基端11bからポスト11の半径方向外側へ向けて延びるフランジ12とを備える。ワッシャー2は、穴部21の周囲に立ち上がるライザー部22と、ライザー部22の周囲に配置され、生地3を挟んでアイレット本体1と接合する周縁部23とを備える。周縁部23は、ライザー部22と一体で、半径方向外側に向かう鍔状に備えられている。
【0018】
ライザー部22は、
図2に示すように平面形状が環状であり、
図3に示すように、紙面上方に向かって周縁部23よりも高く、周縁部23から立ち上がり、その内周に穴部21が形成されている。ライザー部22は、
図2に示すように、穴部21を囲む内周面221に沿って互いに離間して配置された複数の薄肉部24を有する。ライザー部22の内周面221の表面上には、生地3とポスト11との摩擦力又は生地3の保持力を高めるために、微細な凹凸加工等が施されていても良い。
【0019】
薄肉部24の数に制限はないが、例えば3〜36個程度設けるのが好ましい。薄肉部24が2個以下では、アイレット1とワッシャー2との接合時にライザー部22を十分に弾性変形させることが難しい場合がある。一方、薄肉部24が37個以上では、加工が困難であるとともに生地を押さえる面積が小さくなり、接合時の変形によりライザー部22が生地3を破り、固定が十分にならない場合がある。
【0020】
図4に示すように、薄肉部24には、内周面221に沿って形成された溝部241を含む。この溝部241は、
図3に示すように、ライザー部22の高さ方向(H方向)に沿って延在している。
図4に示す例では、ライザー部22の内周面221から外周面222方向に向かって略V字状に形成された断面が三角形状の切り欠きによって形成されている。溝部241の形状は、
図1〜
図4に示す例には制限されず、様々な形状が用いられる。例えば、内周面221から外周面222方向に向かって略U字状に形成された、断面が半円状、半楕円状或いは台形状の溝部241であってもよい。或いは、断面が矩形状又は多角形状の溝部241であってもよい。但し、溝部241の形状は、アイレット本体1とワッシャー2とを加締める際に溝部241の一部を破断させるために好ましい形状であるのが好ましい。そのため、溝部241には、
図4に示すように、ライザー部22に所定の圧力が加わった場合に破断の基点となる頂点241aが形成されているのが好ましい。
図4の例では、V字を構成する2つの面の交点であって、内周面221から外周面222方向に向かって最も深くなる位置に頂点241aが形成されている。
【0021】
ここでライザー部22の厚みをL、頂点241aの深さをL1とした場合に、深さL1を深くしすぎると、加締め時にライザー部22を押圧する場合に、溝部241の全てが破断され、場合によってはライザー部22の一部が欠ける場合がある。逆に、深さL1を浅くしすぎると、加締め時にライザー部22を押圧する場合に、溝部241に破断が生じず、ワッシャー2が上手く弾性変形せずに、アイレット1とワッシャー2の加締めが上手く行われない場合がある。溝部241の頂点241aの深さ及び位置に特に制限はないが、例えば、深さL1は厚みLに対して1/2〜5/6程度であるのが好ましい。なお、加締め時により効率的に破断を生じさせるためには、頂点241aを形成する2つの面の対向する角度は30°〜60°程度であればよい。
【0022】
図3に示すように、周縁部23は、第1周縁部26と第2周縁部27とを備える。第1周縁部26は、ライザー部22の外周において、紙面上方に向かって環状に突出する凸部26aと、凸部26aの裏面に形成された第1凹部26bを有する。第2周縁部27は、第1周縁部26の外周側に配置され、凸部26aと連続する面27aを有する。面27aと凸部26aとの間には、第2凹部27bが形成されている。アイレット本体1とワッシャー2との接合後は、
図7に示すように、第1凹部26b内にアイレット本体1の一端(ポスト11の先端部11a)が収容される。第2凹部27b内には、アイレット本体1の他端(フランジ12の先端部12a)が収容される。アイレット本体1の先端部11aと先端部12aがそれぞれ第1凹部26b及び第2凹部27b内に収容されることにより、アイレット本体1とワッシャー2とが長期間より安定して固定される。
【0023】
アイレット本体1とワッシャー2を加締めて生地3上にハトメを形成する場合には、
図5Aに示すように、アイレット本体1とワッシャー2とをそれぞれ金型(パンチ4、ダイ5)上に配置し、アイレット本体1とワッシャー2との間に生地3を挟む。ここで、パンチ4には、フランジ12をパンチ4上に固定するための溝41が形成されている。ダイ5には、その上にワッシャー2のライザー部22が支持される中央支持部51と、中央支持部51の外周に配置された作用面52と、作用面52の更に外周側に配置され、その上にワッシャー2の周縁部23が支持される周縁支持部53とが形成されている。
【0024】
次に、アイレット本体1を保持するパンチ4とワッシャーを保持するダイ5とを近づけて、アイレット本体1のポスト11を穴部21内に挿入する。これにより、
図5Bに示すように、ポスト11の外周面112とライザー部22の内周面221との間に生地3を挟み込む。アイレット本体1の先端部11aを作用面52上にスライドさせながら更に2つの金型同士を更に近づけていくことにより、
図5Cに示すように、ポスト11の先端部11aで生地3を切断する。切断後、アイレット本体1とワッシャー2とを更にパンチ4及びダイ5で押圧し続け、アイレット本体1のポスト11及びフランジ12でライザー部22を押圧することにより、
図5Dに示すように、生地3をライザー部22とポスト11との間に巻き込ませながらライザー部22を半径方向外側へ弾性変形させる。このとき、ライザー部22の弾性変形により、薄肉部24(図示せず)の少なくとも一部が破断し始める。
【0025】
更に、アイレット本体1とワッシャー2とを押圧すると、
図6及び
図7に示すように、ライザー部22の内周面221とポスト11の外周面112との間に生地3を挟み込んだ状態で、ポスト11の先端部11aが第1凹部26b内に収容され、フランジ12の先端部12aが生地3を介して第2凹部27bに収容され、アイレット本体1とワッシャー2との固定が完了する。その結果、薄肉部24の破断は、ライザー部22の立ち上がりの先端側(加締め前の状態で、アイレット本体1に対面する頂部側)から、H方向に沿って、その途中(中間)まで破断する。なお、複数の薄肉部24の全てが、それぞれ同様に破断する必要はなく、アイレット本体1との接合後に、破断しない薄肉部24が残ってもよい。また、薄肉部24は破断せず、延びた状態となることもある。ただし、破断しない薄肉部24は、破断した薄肉部24よりも少ないことが好ましい。
【0026】
ライザー部22は、加締め後、加締め時に受けた半径方向外側への弾性変形を復帰させる方向(半径方向内側)に生地3を押圧するため、薄い生地や伸縮性のある生地を用いたであっても、より確実に且つ長期間安定的にアイレット本体1とワッシャー2との間に固定させることが可能となる。この際、ライザー部22に形成された薄肉部24の少なくとも一部が破断することにより、破断部分が平面とはならず比較的鋭利な形状が放射状に生成され、特に薄い生地に対して引っ掛かる事になり、アンカー効果が期待される。また、
図7に示すように、生地3は、ライザー部22、凸部26aの表面上及び面27a上の少なくとも3つの面によって支持できるため、取り付け位置でのゆるみが発生しにくくなる。アイレット本体1のポスト11の先端部11a及びフランジ12の先端部12aは、周縁部23の第1凹部26b及び第2凹部27b内にそれぞれ収容されるため、加締め時の位置ずれも抑制され、アイレット本体1とワッシャー2との固定をより確実に行うことができる。つまり、
図7において、フランジ12の先端部12aは、第2周縁部27の外周端よりも、H方向下方に位置しており、第2周縁部27の外周端は、弾性変形状態のライザー部22の先端よりもH方向下方に位置する。
図7に示す状態では、ライザー部22は、その周縁部23側から折曲されて、半径方向外側へ弾性変形している。
【0027】
上記のように本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、
図8に示すように、円筒状のライザー部22bの円周方向にそって互いに離間する複数の溝部24bが、ライザー部22bのH方向の途中(中間位置)まで形成されていても構わない。
図8に示すワッシャー2bにおいても、
図9に示すように、ライザー部22bの半径方向内側へ働く弾性力により、ライザー部22bの内周面221bから生地3をアイレット本体1に押しつける力が働くため、従来のワッシャーに比べて、薄い生地や伸縮性のある生地の保持力に優れている。このように、本発明はここでは明示していない様々な態様を含むことは勿論であり、実施段階においてはその要旨を逸脱しない範囲において変形して具体化され得る。