特許第5808405号(P5808405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5808405水素の存在下、ペルフルオロカーボンの熱分解によってペルフルオロオレフィンを製造するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808405
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】水素の存在下、ペルフルオロカーボンの熱分解によってペルフルオロオレフィンを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/361 20060101AFI20151021BHJP
   C07C 21/185 20060101ALI20151021BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   C07C17/361
   C07C21/185
   C07C21/18
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-518523(P2013-518523)
(86)(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公表番号】特表2013-529683(P2013-529683A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】US2011041971
(87)【国際公開番号】WO2012012113
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】1010958.5
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツァー, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ストレイター, アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ケンプ, ゲンサー, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロッチャス, カイ, ヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲンズ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シシコフ, オレグ
(72)【発明者】
【氏名】ジップリース, ティルマン, シー.
(72)【発明者】
【氏名】トロー, ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ルーザー, クラウス
【審査官】 品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−509831(JP,A)
【文献】 特表2012−504633(JP,A)
【文献】 特開平07−238041(JP,A)
【文献】 特表2003−522161(JP,A)
【文献】 特表2004−504283(JP,A)
【文献】 特開平02−262531(JP,A)
【文献】 特開昭63−267736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/361
C07C 21/18
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルフルオロオレフィンの前駆体としてジフルオロカルベンを生成するプロセスであって、
少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素、又は少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する材料を、580K〜2000Kの温度の熱分解領域において、水素の存在下で熱分解して、ジフルオロカルベンを含有する反応混合物を生成する工程を含み、前記水素が、ペルフルオロ炭化水素1モル当たり0.1〜8モル水素のモル比で前記熱分解領域に存在する、プロセス。
【請求項2】
前記熱分解領域が、マイクロ波反応器、流動床反応器、マイクロ波流動床反応器、又はマイクロ波活性粒子を含有するマイクロ波流動床反応器の一部である、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素の存在下、ペルフルオロカーボンの熱分解によって、ペルフルオロオレフィン、特にテトラフルオロエテンを製造するための無塩素プロセスに関する。本開示はまた、水素の存在下、ペルフルオロカーボンの熱分解によって、ペルフルオロオレフィン、特にテトラフルオロエテンの前駆体として、ジフルオロカルベンを生成するプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエテン(TFE)及びヘキサフルオロプロペン(HFP)は、プラスチック及びエラストマーフルオロポリマーの製造において、モノマーとして広く使用されている。例えば、J.Scheirs in Modern Fluoropolymers,Wiley,1996を参照されたい。世界のTFE消費は、10トン/年を超える。HFPは、熱可塑性及びエラストマーフルオロポリマーを製造するためのコモノマーとして、及びヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)を作製するための出発物質として使用される。世界のHFP消費は、30,000トン/年と推定される。
【0003】
TFE及びHFPを製造するためのいくつかの既知の方法がある。最も一般的な方法は、600℃〜1,000℃の間の温度での、CHCIF(R−22)の熱分解を伴う。そのようなプロセスは、例えば、米国特許第2,551,573号に説明されている。このプロセスは塩素化原材料を用いるため、部分的にフッ素化及び塩素化された低分子量生成物をもたらし、それらはTFE及びHFPから除去することが困難である。したがって、高純度TFEを提供することは、高価な精製工程を伴う。更に、不純物としてHFを含有する塩酸が、副生成物として大量に形成される。塩酸は、廃棄されるか、又は化学用途で使用するために、高い費用で精製される必要がある。
【0004】
そのために、塩素を含有する原材料を用いない代替プロセスが開発された。これらのプロセスは、高温でのフッ素化材料の熱分解を伴う。例えば、米国特許第5,611,896号は、フッ素元素が炭素と反応してCFを生成し、続いて炭素の存在下、プラズマトーチにおいてTFEに変換されるプロセスについて説明している。国際公開第WO 2004/061160 A1号は、ペルフルオロカーボン流を熱分解に続いて急冷に供する工程を含む、TFEを調製するためのプロセスを開示する。熱分解反応は、好ましくは、炭素を熱分解反応に添加することによって行われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本説明は、少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素、又は少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する材料を、約580K〜約2000K(307℃〜約1727℃)の温度の熱分解領域において、水素の存在下で熱分解して、ジフルオロカルベンを含有する反応混合物を生成する工程を含む、プロセスに関し、水素は、ペルフルオロ炭化水素1モル当たり約0.1〜8モル水素のモル比で該熱分解領域に存在する。
【0006】
本プロセスは、ジフルオロカルベンを含む該反応混合物を急冷して、テトラフルオロエテン及び/又はヘキサフルオロプロペンを含有する生成混合物を生成し、そこからテトラフルオロエテン及び/又はヘキサフルオロプロペンを除去した後、生成混合物の少なくとも一部を熱分解領域にフィードバックする工程を更に含み得る。
【0007】
更に別の態様では、少なくとも1つのフッ素化炭化水素を含有する材料は、(a)直鎖又は分枝鎖炭化水素、部分的にフッ素化された直鎖又は分枝鎖炭化水素、又はそれらの混合物を含む材料を、電気化学セル(ECFセル)内の電気化学フッ素化(ECF)によってペルフルオロ化して、少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する混合物を含む、ECF流出物を生成する工程と、(b)少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する材料を、ECF流出物から分離する工程と、によって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
TFEを生成するためのフッ素化炭素の熱分解は、反応性フッ素化炭素フラグメント、ジフルオロカルベン(:CF)の発生を必要とする。急冷時に、ジフルオロカルベンを二量体化してTFE(C)を製造してもよい。高収率のTFEを有するには、TFE前駆体である:CFの良好な収率での形成を引き起こし、それらをTFEに変換するプロセスが必要である。したがって、:CFを良好な収率で比較的低温で生成し、エネルギーコストを減少させるプロセスの必要性がある。
驚くべきことに、ペルフルオロ材料、特にペルフルオロ炭化水素を、分子水素の存在下、低温で熱分解することによって、ジフルオロカルベンを形成できることが今では判明している。ジフルオロカルベンは、それらの条件下でテトラフルオロエテンに再結合される。したがって、本明細書に提供されるプロセスは、低いエネルギーコストで実行することができる。
本明細書に提供されるプロセスは、いくつかの実施形態において、塩素化原材料を使う必要性を排除し、したがって塩酸廃棄物のストリーム、及び塩素化副生成物を排除し得る。
他の実施形態において、プロセスは、ペルフルオロ材料を発生するユニットと、ペルフルオロ材料を熱分解するユニットと、を含む統合プロセスとして実行することができる。
尚も更なる実施形態において、プロセスは、廃棄物質を全く形成しないか、又はごく少量形成する、いわゆる閉じたループとして設計することもできる。したがって、閉じたループプロセスは、環境的に有益である。
本説明のプロセスは、テトラフルオロエテン(TFE)及び/又はヘキサフルオロプロペン(HFP)を製造し得るため、必要に応じてTFE及びHFPの両方を作製するために使用することができる。
図1は、プロセスが、ペルフルオロ出発物質を発生し、それを熱分解してTFE及び/又はHFPを形成する統合プロセスとして表される一実施形態を概略的に示す。図1に表されるプロセスもまた、閉じたループプロセスである。炭化水素原材料は、電気化学フッ素化(ECF)セル(10)内で電気化学的にフッ素化される。図1には示されないが、電気化学フッ素化の代わりに、炭化水素原材料の直接フッ素化が使用されてもよい。
低沸点フルオロカーボンは、オフガス、主に水素から分離(11)され(ストリーム10a)、任意に、熱分解炉(20)に送り込まれるペルフルオロ材料(ストリーム11a)、及びECFセル(10)に戻される部分的にフッ素化された化合物(ストリーム11b)に更に分離される。
高沸点フッ素化化合物は、ECF流出物又はECFセル(12)のいわゆるブラインから分離される(ストリーム10b)。これらのフッ素化化合物は、熱分解炉(20)にペルフルオロ原材料として送り込まれるペルフルオロ材料と、ECFセル(10)に戻される部分的にフッ素化された化合物とに更に分離される(ストリーム12b)。
水素は、熱分解炉に送り込まれる(ストリーム40)。水素は、外部ソースに由来し得るか、又はECF流出物からの水素オフガスを含有し得るか、又は更にはそれで構成されてもよい。熱分解で発生するフッ化水素酸は、ECFセルに戻すことができる(ストリーム(50))。
ストリーム11a及び12aのペルフルオロ化合物は、水素の存在下、熱分解室(20)内で熱分解される。熱分解領域(20)で生成された反応混合物を、後に急冷する。急冷した気体(ストリーム20a)を蒸留(30)に供して、TFE及び/又はHFPを生成し、任意の望ましくない副生成物を分離して、熱分解炉(20)に戻してもよい(ストリーム30b)。
図1】実物大ではなく、単に説明目的のものであって限定するものではない。
図2】実施例1に記載される、ジフルオロカルベン形成の時間プロファイル及びペルフルオロオレフィンを形成する後次反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明文に記載される構成の細部及び要素の配列に限定されない点は理解されるべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用する語法及び専門用語は、説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきでない点は理解するべきである。「からなる(consisting)」の使用と異なり、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「備える(comprising)」、又は「有する(having)」及びその変化形の使用は、これらの語の後に列記される要素を包含することを意味するものである。しかしながら、いずれの場合も、限定的用語「からなる(consisting)」又は非限定的用語「含む(including)」、「含有する(containing)」、「備える(comprising)」、又は「有する(having)」及びその変化形を使用することによって説明される技術に相当する語を包含することを意味するものである。「a」又は「an」の使用は、「1以上」を包含することを意味する。本明細書において記載される全ての数値範囲は、その範囲の下限値から上限値までの全ての値を含むものとする。例えば、1%〜50%の濃度範囲は略記であり、例えば、2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%などの1%〜50%の値を明確に開示するものとする。
【0010】
本明細書において使用する、用語「フッ素化化合物」は、フッ素によって置換された少なくとも1つの炭素結合水素を有する化合物を指し、具体的にはペルフルオロ化合物及び部分的にフッ素化された化合物を含む。本明細書において使用する、用語「ペルフルオロ炭化水素」は、炭化水素由来の化合物を指すが、本質的に全ての炭素結合水素がフッ素によって置換されている。例えば、CFは、ペルフルオロメタンを指し、−CF残基は、ペルフルオロメチル残基を指す。部分的にフッ素化された炭化水素は、炭化水素由来の化合物であり、全ての水素がフッ素によって置換されるとは限らないが、炭素結合水素原子の少なくとも1つが残留している。例えば、−CFH又は−CFH基はいずれも、部分的にフッ素化されたメチル基である。
【0011】
本明細書に提供されるプロセスは、水素の存在下、ペルフルオロ材料の熱分解によって、ジフルオロカルベンを提供する。このプロセスを実行して、反応に使用されるペルフルオロ炭化水素のモル量に基づいて、良好な収率のジフルオロカルベン、例えば、5%超、20%超、又は更には30%超のジフルオロカルベンを生成することができる。熱分解が約330℃(603K)の低温、好ましくは、約350℃(623K)の低温、又は約350℃(623K)〜約1400℃(1673K)若しくは約1,200℃(1473K)、500℃(773K)〜約1000℃(1273K)、約327℃(600K)〜約1727℃(2,000K)、約427℃(700K)〜約1022℃(1295K)の温度範囲で行われるとき、そのような収率に到達し得る。熱分解反応によって製造された反応混合物を急冷することによって、ペルフルオロオレフィン、特にテトラフルオロエテン及びヘキサフルオロプロペンから選択されるものが形成され得る。
【0012】
このプロセスはここで、更に詳しく説明される。
【0013】
ペルフルオロ出発物質
多様なペルフルオロ材料が熱分解に供されてもよい。材料は、固体、気体、液体、又はそれらの混合物であってもよい。好ましくは、材料は気体若しくは液体、又はそれらの混合物である。材料がペルフルオロ炭化水素化合物であるとき、いくつかの実施形態において、その沸点は250℃以下である。
【0014】
ペルフルオロ出発物質は、概ね少なくとも1つの直鎖若しくは分枝鎖環状若しくは非環状炭化水素化合物を含むか、又はそれで構成される。典型的に、出発物質は、2つ以上の異なるフッ素化炭化水素を含む混合物を含む。材料は、部分的にフッ素化された直鎖若しくは分枝鎖炭化水素化合物、又はそれらの化合物を含んでもよい。好ましくは、塩素、臭素、又はヨウ素を含有する材料は望ましくない廃棄物質を形成するため、ペルフルオロ出発物質は、それらを実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、出発物質が材料を含まないか(材料の0%を含有する)、又は出発物質の総重量に対して1又は2重量%以下の量で材料を含有するか、のいずれかであることを意味する。このプロセスは、出発物質として化合物の混合物の使用を提供し、これらの混合物は、多様な異なる化合物を含有する複合体であってもよい。
【0015】
ペルフルオロ出発物質は、直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルカンを含むか、又はそれで構成されてもよい。例としては、これに限定されないが、式C2n+2のアルカンが挙げられ、式中、nは、(i)1〜25、(ii)1、(iii)2〜10、(iv)3〜8、又は(v)2〜25から選択される。出発物質は、1つ以上の部分的にフッ素化されたその類似体を含んでもよい(例えば、式Cに従うアルカンであって、式中、xは少なくとも1並びにx+y=2n+2である)。しかしながら、出発物質中の部分的にフッ素化された化合物の量は、好ましくは、20重量%(wt.)未満又は10重量%(wt.)未満である。好ましくは、ペルフルオロ出発物質は、ペルフルオロ炭化水素の少なくとも50%(wt)、少なくとも60%(wt)、少なくとも90%(wt)、又は少なくとも95%(wt)を含有する。一実施形態において、ペルフルオロ出発物質は、式C2n+2の少なくとも50%(wt)、少なくとも60%(wt)、少なくとも90%(wt)、又は少なくとも95%(wt)からなり、式中、nは2〜10又は3〜10である。ペルフルオロ炭化水素の例としては、これらに限定されないが、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタンが挙げられる。
【0016】
ペルフルオロ出発物質は、例えば、直接フッ素化若しくは電気化合物フッ素化、又はそれらの両方によって、続いて任意に精製することによって得られてもよい。
【0017】
一実施形態において、ペルフルオロ出発物質は、以下で更に詳述されるように、電気化学フッ素化炭化水素の流出物である。流出物質を精製して、非フッ素化若しくは部分的にフッ素化された化合物の量を減少又は排除するか、又はオフガスを除去してもよい。別の実施形態において、直接フッ素化、例えば、炭素の直接フッ素化によって出発物質を得て、テトラフルオロメタンを生じる(例えば、米国特許第5,611,896号に記載のとおり)。
【0018】
熱分解
熱分解は、ペルフルオロ材料の熱破砕であり、熱クラッキングとも称される。熱分解は、熱分解反応器又は炉内((20)、図1)、又はより具体的には、クラッキング反応が起こるために必要な温度に到達したその領域内で行われる。
【0019】
熱分解反応器は、チャンバ、パイプ、炉等であってもよい。熱分解領域又は反応器の加熱は、電力又は過熱蒸気等の外部ソースから達成することができる。現代技術としては、マイクロ波を介した誘導加熱が挙げられる。必要とされる強力なマイクロ波生成器は、市販されている。周波数は、通常、約50〜3000kHzである。典型的に、最高約3000℃の範囲の温度は、マイクロ波加熱によって達成することができる。誘導加熱は、例えば、国際公開第WO 01/58584号に説明されている。マイクロ波反応器内の熱分解反応は、マイクロ波活性物質、すなわち、マイクロ波照射を吸収できる物質の存在下で行われてもよい。マイクロ波活性物質は、典型的に、マイクロ波照射を吸収することによって、マイクロ波の照射時に加熱される。例えば、マイクロ波活性粒子は、1gのマイクロ波活性材料を周囲温度(25℃、1バール)で0.7kWのマイクロ波照射を5分間供するとき、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも30℃加熱され得る。マイクロ波活性物質としては、これらに限定されないが、グラファイト、炭化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、特に金属塩化物、金属フッ化物が挙げられる。特定の例としては、これらに限定されないが、ケイ素炭化物、ホウ素炭化物、チタン炭化物、ジルコニウム炭化物、モリブデンケイ化物、チタンホウ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、フッ化コバルト、フッ化カリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。他の例としては、金属又は合金、例えば、これらに限定されないが、Ni、Pt、Co、Pt/Cu、Pt/Re合金、クロム酸塩、チタン酸塩、及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらの材料は、微粒子形態で使用されてもよく、例えば、反応が流動床反応器内で実行され得る場合は、流動床内の粒子として使用される。この粒子は、約100μm〜約5mmの平均寸法(平均数)を有してもよい。流動床は、反応成分若しくは混合物、又はキャリアガスによって生成されてもよい。
【0020】
熱分解を達成するための別の方法は、例えば、米国特許第5,611,896号に説明される、直流(DC)プラズマ技術である。キャリアガスは、電極間のフレームを維持するために必要である。
【0021】
熱分解は、水素の存在下で進行する。熱分解領域内の水素対ペルフルオロ炭化水素のモル比は、1モルペルフルオロ炭化水素当たり約0.1モル〜8モル水素、例えば、1モルペルフルオロ炭化水素当たり約0.5モル〜5モル水素、又は1モルペルフルオロ炭化水素当たり約0.8〜約2.5モル水素である。
【0022】
ペルフルオロ炭化水素の混合物がペルフルオロ材料として使用される場合、存在するペルフルオロ炭化水素のモル量の合計を使用して、水素対ペルフルオロ炭化水素の比を決定してもよい。存在する成分のモル量の平均(幾何平均)をペルフルオロ炭化水素のモル量として使用してもよい。
【0023】
熱分解領域に存在するモル比は、水素及びペルフルオロ材料を上述のモル比又はモル流量で供給することによって達成することができる。
【0024】
ペルフルオロ出発物質は、連続又は回分式で熱分解領域に送り込まれてもよい。1つ以上のキャリアガスを使用して、出発物質を熱分解領域の中(及びその外)に供給してもよい。そのようなキャリアガスは、不活性ガス、例えば、ノーブルガス(例えば、Ar、Kr、Xe、Ne、Rn、He)又は窒素であり得る。ペルフルオロ材料が、水素との混合流で反応器に供給され得る場合は、水素をキャリアガスとして使用してもよい。ペルフルオロ化合物は、好ましくは、主に大気圧より低い気圧下で、熱分解反応器及び熱分解領域内に気体として送り込まれる。
【0025】
水素を上述の量又はモル比で使用するとき、良好な収率(例えば、ペルフルオロ炭化水素のモル量に基づいて、少なくとも10モル%又は少なくとも30モル%の収率)でジフルオロカルベンを生成する熱分解反応は、既に約300℃(573K)の低温で起こることができる。したがって、熱分解反応は、好ましくは、約300℃(573K)及び約1400℃(1673K)、好ましくは約320℃(593K)及び約1300℃(1573K)、より好ましくは約350℃(623K)〜約900℃(1173K)、又は約600℃(873K)〜約1200℃(1473K)の温度で行われる。これらの条件下で、ペルフルオロ材料が熱分解される。ペルフルオロ化合物は、これらの条件下で、一般的にジフルオロカルベン(:CF)に破砕される。ジフルオロカルベンは反応種である。それらは、プラズマにおいて主にCに反応し得る。生成物のストリームがプラズマ領域を出た直後に生成物のストリームを急冷することによって、Cの脱破砕反応を停止して、TFEの収率を増加させることができる。好ましくは、反応は、反応物質が短時間だけプラズマ領域に存在する方法で行われる。これは、反応器若しくはプラズマ領域を適切に寸法記入することによって、又は反応物質の流量を適合することによって達成することができる。好ましくは、流量は、1分当たり約0.01〜約1000反応器/体積(若しくは1分当たりの熱分解領域の体積)、又は1分当たり0.05〜約100反応器/体積(若しくは1分当たりの熱分解領域の体積)である。
【0026】
水素を使用するプロセスの利点は、炭素の添加を必要とせずに熱分解が進行し得ることである。典型的に、先行技術のプロセスでは、炭素が、例えば、熱包装材として添加されるか、又は粉末として注入されて化学量論的不均衡に適合させるが、これは煩雑であり、プロセスコストも増加させる。これは、水素流を使用することによって回避することができる。
【0027】
熱分解は、触媒の存在下で行われてもよい。好適な触媒は、ラジカルを発生し得る材料を含む。例としては、プラチナが、又は水素の存在下、熱分解反応において使用される温度で、ラジカルを発生し得る他の金属が、挙げられる。そのような触媒は、反応器、例えば、反応器の内側に添加され得るか、又は組み込まれてもよい。
【0028】
急冷
熱分解反応によって得られる熱い反応混合物は、後に急冷される。典型的に、急速冷却に供される。熱分解に使用される温度に応じて、反応混合物を、400℃を下回る、概ね300℃を下回る、好ましくは100℃を下回る温度に急冷される(特に、約300℃の熱分解温度が使用されるとき)。典型的に、混合物は、熱分解領域を出た後、1秒未満以内、好ましくは0.1秒未満以内、これらの温度に供されるか、又は冷却される。10〜10K/秒(9,727〜99,727℃/秒)の冷却速度が使用され得る。これらの高い冷却速度は、熱い反応混合物を外部冷却されたパイプの束を通して伝導させることによって、又は反応混合物に冷却剤を注入することによって達成することができる。後者の技術は湿式急冷、前者は乾式急冷とも呼ばれる。冷たい気体、又は液体ペルフルオロ炭素若しくは水等の液体を、冷却剤として使用することができる。急冷は、TFEの形成をもたらす。急冷プロセスの効率は、概ねTFEの選択性を制御する。冷却速度が高いほど、選択性は高まり、コークス化が低下する。コークス化は、:CFの不均化を介して生じる炭素を、炭素及びCFに形成することである。コークス化は、急冷プロセスと干渉する。好適な急冷プロセスは、例えば、国際公開第WO 2004/061160 A1号に説明される。
【0029】
分離
TFE及び/又はHFPは、例えば、蒸留(30)によって、急冷した混合気体(ストリーム20a)から単離することができる。急冷した混合気体は、主にTFE及び/又はHFPを含有するが、ペルフルオロイソブチレン(PFIB)、及びCF、C等の飽和ペルフルオロアルカン、又はオクタフルオロシクロブタンを含有してもよい。一般的に使用されるR−22を介する「塩素」プロセスに対比して、水素及び塩素を含有する化合物は、実質上存在しない。これは、高次精製が望まれる、TFEが後次重合において使用されるPTFEを製造するときであっても、R−22プロセスと比較して、蒸留を介するTFE及びHFPの分離を比較的簡素にする。塩素化材料がないことに起因して、副生成物、例えば、CF、C、環状C等の「低沸点」成分、及びPFIB(ペルフルオロイソブチレン)等の高沸点成分からTFE及びHFPを精製するために、ごく少数の蒸留カラムが必要とされ得る。これらの副生成物の蒸留カットは、熱分解(例えば、図1のストリーム30b)に戻すことができる。
【0030】
電気化学フッ素化
特定の実施形態において、本明細書に記載のプロセスで使用される、ペルフルオロ出発物質、例えば、ペルフルオロ炭化水素は、炭化水素原材料の電気化学フッ素化(ECF)によって、例えば、電気化学セル(ECFセル)において、任意にいくらかの精製後に得られる。
【0031】
概ね電気化学フッ素化プロセスを使用して、出発物質をペルフルオロ化することができる。使用され得る様々なプロセスは、国際公開第WO 2004/061160 A1号に説明又は参照され、例えば、Simons電気化学フッ素化プロセス、断続電流プロセス、双極フローセル、SOLUTIA EHDプロセス等である。
【0032】
Simons電気化学フッ素化(Simons ECF)プロセスは、直接電流を電解質(すなわち、フッ素化可能な有機出発化合物、液体無水フッ化水素、及び場合によっては伝導率添加剤の混合物)に通して、所望のフッ素化化合物又はフッ素化物を製造する工程を含む。Simons ECFセルは、典型的に、単極電極アセンブリ、すなわち、低電圧(例えば、4〜8ボルト)で電極ポストを通して、直流のソースに平行に接続された電極を利用する。Simons ECFセルは、概ね未分割の単一区画セルであり、すなわち、セルは、典型的に、膜又は隔壁によって分離された陽極又は陰極を含有しない。
【0033】
Simons ECFは、本質的に以下のように行うことができる。出発物質及び光学伝導率添加剤を、無水フッ化水素に分散又は溶解して、「電界反応溶液」を形成する。1つ以上の陽極及び1つ以上の陰極を反応溶液中に入れ、電位(電圧)を陽極と陰極との間に確立して、反応溶液を通して陰極と陽極との間に電流を流し、陽極において酸化反応(主にフッ素化、すなわち、1つ以上の炭素結合した水素を炭素結合したフッ素と置き換える)、及び陰極において還元反応(主に水素発出)をもたらす。本明細書で使用する、「電流」は、電子の流れという表現の従来の意味において電流を指し、正又は負に帯電している化学種の流れも指す。概ねSimons ECFプロセスは、電解質を通過した定電流、すなわち、定電圧及び定電流を用いて実施される。電解質を通過する電流は、出発物質の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられるようにする。
【0034】
有用な電気化学フッ素化セルは、電気化学フッ素化の技術分野においてフローセルとして概ね知られているタイプを含む。フローセルは、陽極及び陰極の集合(それぞれ1つずつ)、積層体、又は直列を含み、反応溶液は、強制循環を使用して、陽極及び陰極の表面上を流れる。これらのタイプのフローセルは、概ね、単極フローセル(従来の電気化学フッ素化セルと同様に、単一の陽極及び単一の陰極を、任意に単一のプレートを超える形態で有する)、及び双極フローセル(一連の陽極及び陰極を有する)を指す。米国特許第5,322,597号(Childsら)は、強制対流によって、無水フッ化水素及びフッ素化可能な有機化合物を含む液体混合物を、実質的に連続する液相が、双極電極積層体の電極間で維持される温度及び圧力で、通過させる工程を含む、双極フローセル内での電気化学フッ素化プロセスの実施について説明している。双極極板積層体は、無水フッ化水素に対して本質的に不活性であり、陽極として使用されるときは、電気化学フッ素化に対して活性である、導電性材料(例えば、ニッケル)で作製された複数の実質的に平行な離間配置された電極を備える。積層体の電極は、1つ又は複数の直列電気構成で配置される。双極極板積層体は、フッ素化有機化合物の製造をもたらし得る直流を生じる、印加電圧差を有する。
【0035】
双極フローセルの別の例は、Solutia EHD(電気流体二量体化)セルである。断続電流電気化学フッ素化プロセスにおいて、概ね反応溶液は、フッ化水素及び出発物質を含む反応溶液が調製される。フッ化水素は、好ましくは、無水フッ化水素であり、多くても最小量の水、例えば、1重量パーセント(wt%)未満の水、好ましくは約0.1重量パーセント未満の水を含有することを意味する。ECFセル内の反応溶液は、HFを含む電解質相を含み、ある量の出発物質がそこに溶解される。広くは、出発物質は、好ましくは液体フッ化水素中で、ある程度可溶性又は分散性である。ガス状出発物質をフッ化水素を通じて発泡させて、反応溶液を調製するか、又は圧力下でセルに帯電させることができる。固体又は液体出発物質は、フッ化水素中に溶解又は分散し得る。フッ化水素中の可溶性が比較的低い出発物質は、フッ素化物流体に溶解された溶質としてセルに導入することができる。
【0036】
反応溶液は、出発物質のフッ素化をもたらすために十分な反応条件(例えば、温度、圧力、電圧、電流、及び電力)に曝露される。特定のフッ素化プロセスのために選択された反応条件は、ECFセルの寸法及び構成、反応溶液の組成、伝導率添加剤の有無、流量等の要因に依存する。反応温度は、有用な程度の出発物質のフッ素化を可能にする、任意の温度であり得る。この温度は、前述のパラグラフで論じられた要因、並びに出発物質の溶解度及び出発物質又はフッ素化生成物の物理状態に依存し得る。反応溶液を通過する電気は、出発物質のフッ素化をもたらす任意の量であり得る。電流は、好ましくは、出発物質の過剰な破砕をもたらすか、又はフッ素化中のフッ素ガスの遊離をもたらすために不十分である。
【0037】
ECF流出物は、例えば、蒸留等の従来技術を使用して分離することができる。典型的に、ECFによって発生されたオフガスは、概ね水素であり、例えば、膜プロセスによって分離される。ECF流出物のフッ素化成分は、更に精製されるか、又は得られたまま使用されてもよい。次いで、ペルフルオロ材料は熱分解に送り込まれる。不十分にフッ素化された化合物は、ペルフルオロ化のためにECFセルに戻されてもよい。
【0038】
膜プロセス/分離
ECFセルは、オフガスを捕獲するように、1つ以上の膜システムを有し得る。典型的に、オフガスは分子水素(H)である。いくつかのフッ素含有化合物(すなわち、ペルフルオロ及び非ペルフルオロ化合物)は、典型的に、オフガスによって運ばれる。膜プロセスを使用して、部分的にフッ素化及びペルフルオロ化された化合物を捕獲することができ、次いで部分的にフッ素化された化合物をECFセルに戻すことができる。膜分離を導入することによって、Hのみを全体プロセスから放出し、閉じたループプロセスを有利にもたらす。放出された水素ガスは、プロセスのためのエネルギーを生成すること、又は製造工場の他の場所でエネルギーを提供することにおいて更に使用され得るか、又はペルフルオロ材料の熱電界で使用されてもよい。
【0039】
膜は、膜壁にわたる選択的透過の原理によって、気体を分離する。ポリマー膜について、各気体の透過率は、膜材料中のその溶解度、及び膜壁において分子自由体積を通る拡散速度によって決定される。膜において他かい溶解度を呈する気体、及び分子寸法の小さい気体は、より大きく溶解度の低い気体よりも速く浸透する。
【0040】
ECFプロセスからの出力は、大量の水素、ペルフルオロ生成物、及び部分的にフッ素化された材料を含む。膜プロセスは、フッ素化材料を濃縮しながら、より小さく溶解度の高い水素を膜に通過させることによって(浸透)、水素をフッ素化種から分離する。好適な膜が市販されている。市販されている1つの膜は、Air Liquide(Houston,TX,USA)からのMEDALTM気体分離膜である。あるいは、低温蒸留プロセスを使用して、オフガス(H)を分離してもよい。フッ素化材料をペルフルオロ出発物質として熱分解反応に使用し得るか、又は例えば、蒸留によって更に精製して、ペルフルオロ炭化水素含有量を高め、部分的にフッ素化された材料を除去してもよい。部分的にフッ素化された材料は、ECFユニットに戻すことができる。
【0041】
EFCの出発物質
多様な材料をECFの出発物質として使用することができる。出発物質は、気体、液体、又はそれらの混合物であり得る。出発物質は、概ね、直鎖若しくは分枝鎖炭化水素化合物、部分的にフッ素化された直鎖若しくは分枝鎖炭化水素化合物、又はそれらの混合物を含む。直鎖又は分枝鎖炭化水素化合物は、概ね、炭素及び水素で構成されるが、ヒドロキシ、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、及びアミド基等の1つ以上の置換基を有する炭化水素化合物が使用されてもよい。しかしながら、好ましくは、出発物質は、塩素、臭素、又はヨウ素を含有する材料は望ましくない廃棄物質を形成するため、それらを実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、出発物質が材料を含まないか(0%を含有する)、又は出発物質の総重量に対して1又は2重量%以下の量で材料を含有するか、のいずれかであることを意味する。出発物質は、直鎖又は分枝鎖(部分的にフッ素化された)炭化水素化合物との混合物中に、環状炭化水素等の環状化合物を含有し得る。化合物の混合物を出発物質として使用してもよい。出発物質は、熱分解反応のための所望のペルフルオロ材料が十分な量で形成されるように選択される。好ましくは、出発物質は、全体的に炭化水素である直鎖又は分枝鎖アルカン(例えば、直鎖アルカン、C2n+2、式中、nは約1〜25、好ましくは約4〜約8又は約10であり、より好ましくは、nは4〜6である)、又はその部分的にフッ素化された類似体(例えば、C、式中、Xはフッ素であり、xは少なくとも1かつx+y=2n+2である)を含む。炭化水素化合物は、オレフィンを含む飽和及び不飽和化合物、並びにベンゼン、トルエン、又はキシレン等の芳香族化合物を含んでもよい。特に好ましい出発物質の例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン、最大10個の炭素を含む炭化水素及びその混合物、並びに炭化水素とオレフィンの混合物(例えば、イソブチレン等)を含む。特定の炭化水素出発物質は、原油及び石油留分、いわゆる原油の精製及びエチレン及びプロピレン等のオレフィンの作製から生じる蒸留カットを含む。好ましくは、これらの石油留分の沸点は、200℃以下、より好ましくは150℃又は100℃以下である。全体ECFセル厚を低く保つために、好ましくは、気体出発物質は、少なくとも−50℃の沸点を有し、例えば、プロパン(沸点−42℃)、プロペン(沸点−47℃)、ブタン(沸点0℃)、ブテン(沸点−6℃)、イソブチレン(沸点−7℃)を容易に液化する。迅速かつ完全なフッ素化を保証するために、液体出発物質は、好ましくは、10個以下の炭素原子を有する化合物であるか、そうでなければ、フッ素化はゆっくり進行し、広域の分枝化及び破砕が生じ得るため、分離工程をより困難にする。炭化水素とそれらの異性体、及びオレフィンの混合物は、出発物質としてECFに添加されてもよい。
【0042】
代替方法では、ペルフルオロ材料は、例えば、米国特許第US 5,611,896号に記載されるように、炭化水素の炭素を直接フッ素化することによって得ることが可能である。
【0043】
本発明のプロセスは、好ましくは、閉じたループプロセスとして設計され、全てのペルフルオロ化合物をフルオロオレフィンに変換することができ、全ての望ましくない副生成物(例えば、C−H含有/部分的にフッ素化された材料)を完了するまで再利用することができる。これは、プロセスコスト及び廃棄物流中のフッ素化化合物を減少させる。したがって、本発明のプロセスは環境配慮型である。
【0044】
このプロセスは、例えば、ECFセル、及びペルフルオロ材料を熱分解するユニット等のペルフルオロ材料を発生するユニットを備える、統合プロセスとして設計することができる。この統合プロセスは、閉じたループプロセスとして設計されてもよい。
【0045】
したがって、一実施形態では、ペルフルオロ材料を生成するユニット、及びジフルオロカルベン及びペルフルオロオレフィン(例えば、テトラフルオロエテン)を発生する熱分解ユニットを備えるプロセスが提供される。両方のユニットは、分離又は精製ユニットを含有してもよい。したがって、一実施形態では、
(1)直鎖、分枝鎖、環状炭化水素、又は炭化水素混合物を、直接フッ素化又は電気化学フッ素化(ECF)によってペルフルオロ化して、ペルフルオロ材料を含有する流出物のストリームを生成し、任意に、ペルフルオロ材料を流出物から少なくとも部分的に分離する工程と、(2)該ペルフルオロ材料を、水素の存在下、水素:ペルフルオロ材料のモル比約0.7:1.0〜約0.7:8.0で、約300℃を超えて最高約1,300℃までの温度で熱分解して、ジフルオロカルベンを含有する反応混合物を生成する工程と、(3)該反応混合物を急冷して、フッ素化オレフィンを含有する生成混合物を形成する工程と、(4)TFE/HFPを該生成混合物から回復し、任意にHFを生成混合物から分離して、それをECFセルに戻す工程と、を含む、TFE/HFPを製造するためのプロセスが提供され、反応条件、出発物質、精製工程、及び装置は、上述のように使用することができる。
【0046】
例えば、ペルフルオロ炭化水素を生成及び熱分解する統合プロセスは、ペルフルオロ炭化水素の例としてペルフルオロオクタンを使用して、以下のように行うことができる。そのようなプロセスは、図1に例示される。第1の工程では、ペルフルオロ材料が発生させる。これは、例えば、国際公開第WO2004/061160号の実施例1に記載されるように行うことができる、オクタンの電気化学フッ素化によって達成することができる。この部分は図1に示され、HF及び炭化水素原材料(ここではオクタン)がECFセル10に送り込まれる。次いで、オフガスのストリーム10aが膜プロセス(11)に送り込まれ得る。国際公開第WO2004/061160号に記載される膜プロセスが使用されてもよい。オフガスは他の目的で使用され得るか、又は後次の熱分解反応で使用されてもよい(ストリーム40)。オフガスから分離されたフッ素化材料は、熱分解チャンバの中に直接送り込まれ得るか(ストリーム11a)、又は熱分解反応に供される前に、更に精製されてもよい。ECF流出物10bは、ペルフルオロ材料(ペルフルオロオクタン)を部分的にフッ素化された材料から分離するための蒸留を含んでもよい、分離プロセス12に送り込まれ得る。部分的にフッ素化された副生成物を回収し、電気化学フッ素化ユニット(10)の中に戻してもよい(ストリーム12b)。次いで、ペルフルオロ材料は、熱分解チャンバ(20)の中に送り込まれ得る(ストリーム12a)。しかしながら、流出物を精製しないことも可能であり得るが、水素オフガスをこの目的で使用してもよいため、熱分解の場合と同様に使用することも可能であり得る。そのような実施形態では、更なる水素が添加され得るか、又はペルフルオロ材料が添加され得るか、又はオフガス水素が除去されて、熱分解反応のために望ましいモル比を生成し得る。ペルフルオロ材料は、水素の存在下(ストリーム40)、熱分解チャンバ(20)の熱分解領域内で熱分解される。供給速度は、ペルフルオロ材料に対して望ましいモル比で、水素が熱分解チャンバ内に存在するように調整する。国際公開第WO 01/58841号に記載される30kW直流プラズマトーチを使用して、熱分解チャンバ内でプラズマを発生することができる。炭素を添加する必要はない。あるいは、マイクロ波反応器を使用してもよい。熱分解領域内の温度を所望の範囲に調整する。熱分解領域を出た直後に、得られた反応混合物を乾式急冷する。乾式急冷は、国際公開第WO2004/061160号に記載されるように行うことができる。次いで、急冷によって得られた生成混合物は、典型的に単準な蒸留又は一連の蒸留である、分離プロセス30に送り込まれる(ストリーム20a)。所望の生成物TFE及び/又はHFPを分離する(30a)。望ましくないフッ素含有生成物30bを、更なる処理のために熱分解炉に戻す。熱分解によって生成されたHFを、ECFユニット(10)の中に戻すこともできる。
【0047】
以下の例示の実施形態のリストは、本発明の様々な特定の特徴、利点、及び他の詳細を示す。これらの例示の実施形態において引用される特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明の範囲を過度に限定する方法で解釈されてはならない。
1.少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素、又は少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する材料を、約600K〜約2000K(327℃〜約1727℃)の温度の熱分解領域において、水素の存在下で熱分解して、ジフルオロカルベンを含有する反応混合物を生成する工程を含み、水素が、ペルフルオロ炭化水素1モル当たり約0.1〜8モル水素のモル比で熱分解領域に存在する、プロセス。
2.熱分解が、約600K〜約1250K(327℃〜977℃)の温度の熱分解領域で行われる、実施形態1に記載のプロセス。
3.前記反応混合物を急冷して、テトラフルオロエテン及び/又はヘキサフルオロプロペンを含有する生成混合物を生成する工程を更に含む、実施形態1又は2に記載のプロセス。
4.テトラフルオロエテン及び/又はヘキサフルオロプロペンを前記生成混合物から分離する工程を更に含む、実施形態3に記載のプロセス。
5.前記少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素が、気体、液体、又はそれらの混合物である、実施形態1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
6.前記少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素が、式C2n+2によって表される(式中、nは、1〜25、1又は2〜10、2〜20、又は3〜8である)直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルカンを含む、実施形態1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
7.nが約4〜約10の整数である、実施形態6に記載のプロセス。
8.少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素が、250℃以下の沸点を有する、実施形態1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
9.少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素が直鎖である、実施形態1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
10.熱分解が添加炭素なしに行われる、実施形態1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
11.テトラフルオロエテン及び/又はヘキサフルオロプロペンを除去した後、生成混合物の少なくとも一部が、熱分解領域に戻される、実施形態1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
12.ジフルオロカルベンが、少なくとも30%の収率で生成される、実施形態1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
13.少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する材料が、
(a)直鎖又は分枝鎖炭化水素、部分的にフッ素化された直鎖又は分枝鎖炭化水素、又はそれらの混合物を含む材料を、電気化学セル(ECFセル)内の電気化学フッ素化(ECF)によってペルフルオロ化して、少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する混合物を生成する工程と、
(b)少なくとも1つのペルフルオロ炭化水素を含有する材料を、前記ECF流出物から分離する工程と、によって得られる、実施形態1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
14.前記直鎖又は分枝鎖炭化水素が、式C2n+2又はその混合物に対応し、式中、nが2〜25、2〜10、3〜20、又は3〜8の整数である、実施形態13に記載のプロセス。
15.前記直鎖又は分枝鎖炭化水素が、式C2n+2又はその混合物に対応し、nが4〜10の整数である、実施形態13に記載のプロセス。
16.前記ECF流出物が蒸留によって分離される、実施形態13〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
17.前記ECF流出物供給する工程を更に含む、実施形態13〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
18.前記ECF流出物が、部分的にフッ素化された材料を含み、前記部分的にフッ素化された材料が、前記オフガスから分離され、出発物質として前記ECFセルに再導入される、実施形態13〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
19.熱分解領域がマイクロ波反応器の一部である、実施形態1〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
20.熱分解領域が流動床反応器の一部である、実施形態1〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
21.熱分解領域が、マイクロ波流動床反応器の一部であり、マイクロ波活性粒子を含有する、実施形態1〜20のいずれか一項に記載のプロセス。
22.熱分解領域が、ラジカルの発生を触媒する1つ以上の触媒を含有する、実施形態1〜21のいずれか一項に記載のプロセス。
23.ペルフルオロ炭化水素に対する水素の存在が、水素及びペルフルオロ炭化水素を、実施形態1に定義されるモル比で、熱分解領域に送り込むことによって達成される、実施形態1〜22のいずれか一項に記載のプロセス。
【0048】
以下の実施例は、本発明の様々な特定の特徴、利点、及び他の詳細を示す。これらの実施例において引用される特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明の範囲を過度に限定する方法で解釈されてはならない。部、パーセント及び比は全て、特に明記されていない限り重量基準である。
【実施例】
【0049】
熱分解実験は、熱分解反応器のモデルシステムとして、内径10cmの衝撃波管内で行った。衝撃管を電気マントルによって加熱し、UVスペクトロメーターによって連続記録するための観測窓を含めた。衝撃管実験は、K.Glanzer and J.Troe,Helvetica Chimica Acta 1972,55,2884に記載されるように行った。衝撃管実験試験において、ペルフルオロ炭化水素、水素、及び不活性キャリアガス又は希釈剤(アルゴン)の反応混合物を衝撃管の低圧セクションに送り込んだ。高圧セクションは、励振ガスとして水素を含有した。励振ガスは、試験混合物の観察された部分内の低圧セクションで、反応混合物と接触しない。低圧及び高圧セクションは、アルミニウム隔壁によって分離される。励起ガスの圧力を増加させることによって、隔壁は破損し、衝撃波が生成されて、管の低圧セクションに伝播する(前側衝撃波)。衝撃波は、入射波内の反応混合物を加熱及び圧縮する。入射波は管の末端で反射し、反応混合物が2回加熱及び圧縮される、反射波を形成する。
【0050】
入射波及び反射波を通じて反応混合物に到達する温度及び圧力は、衝撃波の到着前の状態及び生成された衝撃波の超音波速度から計算することができる。
【0051】
ジフルオロカルベンの発生は、(:CF)の吸収信号を使用するUV分光法によって248nmで、高圧Xeランプを光源として使用し、衝撃管を通る光線の単一通過後に吸収信号を記録することによって監視した。濃度を決定するために、248nmでの:CFの1.5×10cmモル−1の吸光係数εを使用した。衝撃波の到着後、観測窓において、1.5ミリ秒間連続的に濃度測定を記録したところ、混合ガスの周期圧力及び温度は、本質的に一定であった。
【0052】
:CFの形成及び分解は、観測期間の間連続的に記録した。この分解を、所与の反応混合物中のジフルオロカルベンの可能な分解反応の既知の反応定数と比較して、分解反応をモデル化した。
【0053】
(実施例1)
ペルフルオロエタン(1.5モルパーセント)、水素(1.7モルパーセント)及びアルゴン(96.8モルパーセント)の混合物を、衝撃管の高圧セクションに送り込んだ(総ガス濃度は、5.6×10−5モルcm−3であった)。この混合物を、入射衝撃波において(図2の第1のピーク)、610K(337℃)の温度に加熱し、それによって、誘導時間後、反射した衝撃波が観測窓に到達する前に、:CFが形成された。反射波の到着は、図2の第2の明確なピークによって指示される。反射波の背後の温度は、1010K(737℃)であった。反射波の背後の総ガス濃度は、1.06×10−4モルcm−3であった。:CFの分解プロファイルは、1000K(727℃)での反応2:CF→Cの速度定数と良好に適合し、k=1.3×1017cmモル−2−1である。
【0054】
したがって、実施例1は、ジフルオロカルベンがこれらの反応条件下で形成され、大部分が定量的にTFEに変換されることを示す。
【0055】
(実施例2)(比較例)
水素を使用しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。:CFの形成のための信号を記録することはできなかった。
図1
図2