特許第5808486号(P5808486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808486
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16D 37/02 20060101AFI20151021BHJP
   F04B 17/05 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   F16D37/02 Z
   F04B17/05
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-517529(P2014-517529)
(86)(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公表番号】特表2014-521022(P2014-521022A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012051006
(87)【国際公開番号】WO2013004401
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】11425176.2
(32)【優先日】2011年7月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514005113
【氏名又は名称】ピールブルグ パンプ テクノロジー イタリー ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology Italy S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ スクワルチーニ
(72)【発明者】
【氏名】エリーザ バルタレージ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモ アルメニオ
(72)【発明者】
【氏名】パオラ フォルテ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ フレンド
(72)【発明者】
【氏名】ロッコ リッツォ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ブッキ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア フェッリ
【審査官】 小野 孝朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−294425(JP,A)
【文献】 特開昭61−248924(JP,A)
【文献】 特開昭55−020916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F04B 17/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ(10)において、
燃焼機関(12)によって直接に駆動される入力軸(20)と、
ポンプロータ(19)を備えたポンピングユニット(18)と、
前記入力軸(20)と前記ポンプロータ(19)との間のクラッチ(16)であって、該クラッチ(16)は、2つのクラッチボディ(22,24)の間の流体間隙(26)と、シフト可能な永久磁石素子(30)とを有する磁気粘性クラッチ(16)であり、前記流体間隙(26)は、磁気粘性流体(28)で満たされており、前記永久磁石素子(30)は、前記永久磁石素子の磁界が高い磁束で前記間隙(26)を透過する係合位置と、前記磁石素子の磁界透過束が係合位置におけるものよりも小さい解離位置との間をシフト可能である、クラッチ(16)と、
前記永久磁石素子(30)を係合位置と解離位置との間で移動させるためのアクチュエータ(42)を備えており、前記クラッチボディ(22,24)は、カップ形であり、かつそれらの間にカップ形の間隙(26)を形成しており、係合位置における前記永久磁石素子(30)は、前記カップ形の間隙(26)によって形成されたカップ形のキャビティ(27)の内部に位置決めされていることを特徴とする、機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ(10)。
【請求項2】
前記永久磁石素子(30)は、軸方向にシフト可能である、請求項1記載の機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ(10)。
【請求項3】
前記永久磁石素子(30)は、受動的な付勢素子(44)によって係合位置へ付勢されている、請求項1又は2記載の機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ(10)。
【請求項4】
前記アクチュエータ(42)は、電磁アクチュエータである、請求項1からまでのいずれか1項記載の機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ(10)。
【請求項5】
前記アクチュエータは、真空アクチュエータである、請求項1からまでのいずれか1項記載の機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関によって駆動されかつ自動車ユニットに液体、加圧気体又は真空を提供する機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプに関する。
【0002】
流体ポンプは、潤滑油ポンプ、冷却液ポンプ、真空ポンプ、又は加圧気体、例えば加圧空気を提供するポンプであってよい。機械的な流体ポンプは、電気ロータによって駆動されるのではなく、燃焼機関に直接に接続されている。その結果、流体ポンプの回転速度は、燃焼機関の回転速度に比例し、流体ポンプは、流体供給又は真空を生じさせるための吸引作用が必要とされない場合にも常に回転している。
【0003】
米国特許第7422093号明細書には、液圧式パワーステアリング用の加圧液体を提供するための流体ポンプが記載されている。流体ポンプには、磁気粘性クラッチが設けられており、これにより、パワーステアリングの流体要求及び圧力要求に応じてポンプ性能を制御することができる。磁気粘性流体の粘性を高めるための磁界は、電磁コイルによって提供される。電磁コイルが故障すると、磁気粘性クラッチを係合させることができず、これにより、流体ポンプは作動しなくなる。このような故障のリスクは、潤滑油ポンプ、冷却液ポンプ又はブレーキ補助システム用の真空ポンプのような、生命に関わる流体ポンプにとって許容できない。
【0004】
本発明の課題は、磁気粘性クラッチを備えたフェイルセーフの機械的な燃焼機関駆動式燃料ポンプを提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1記載の特徴によって解決される。
【0006】
本発明による流体ポンプには、燃焼機関によって直接に駆動される入力軸と、液体又は気体である流体をポンピングするためのポンプロータを備えたポンピングユニットとが設けられている。「直接に駆動される」という文言は、機関の回転エレメントと、ポンプの入力軸との間にクラッチが設けられていないことを意味する。ポンプの入力軸は、ベルト又は歯車を介して又は機関のカムシャフト又はクランクシャフトと直接に連結することによって、機関によって駆動することができる。磁気粘性クラッチは、入力軸とポンプロータとの間に設けられており、2つのクラッチボディの間に流体間隙を有する。一方のクラッチボディは入力軸に直接に接続されており、他方のクラッチはポンプロータに直接に接続されている。2つのクラッチボディの間の流体間隙は、磁気粘性流体によって満たされている。
【0007】
磁気粘性流体の粘性を高めるための磁界は、電磁的手段によって発生されるのではなく、永久磁石素子によって発生され、この永久磁石素子は、間隙における磁石素子の磁界透過束が低い解離位置と、間隙における磁界束透過が高い係合位置との間でシフト可能である。係合位置において、永久磁石は間隙の近くに位置しており、解離位置において、永久磁石は間隙からより離れて位置している。磁石素子は、別個の磁石素子アクチュエータによって、係合位置と解離位置との間を移動させられる。
【0008】
間隙及び間隙における磁気粘性流体を透過するための磁界は電磁石によって発生されないので、ポンプの電気的制御が故障しても、磁気粘性クラッチを介して係合させることができる。
【0009】
発明の好適な実施の形態によれば、永久磁石素子は、受動的な付勢素子によって係合位置に付勢されている。アクチュエータが故障すると、付勢素子は永久磁石素子を係合位置へ押し付ける。この構成は、クラッチ概念を完全にフェイルセーフにする。受動的な付勢素子は、例えば、ばね又は別の永久磁石であってよい。しかしながら、受動的な付勢素子は、付勢力を提供するためにいかなる外部エネルギも必要としない。
【0010】
発明の好適な実施の形態によれば、クラッチボディはカップ形であり、クラッチボディの間にカップ形の間隙を形成している。永久磁石は、係合位置において、カップ形間隙によって形成された環状のキャビティ内に位置決めされる。2つのクラッチボディの間の間隙は、ディスク状であるだけでなく、円筒状部分をも含むので、間隙の表面積全体が、クラッチの全直径を増大することなく高いトルク値を伝達するように、大幅に増大されている。
【0011】
好適には、アクチュエータを真空アクチュエータとして提供することができる。真空アクチュエータは、磁気的に中立であり、磁気粘性流体で満たされたクラッチ間隙を透過し得るいかなる磁界も発生しない。
【0012】
これに代えて、アクチュエータは、電磁コイルの形態の電磁アクチュエータである。電磁アクチュエータが作動させられると、シフト可能な永久磁石素子が、解離位置へ、すなわちクラッチ間隙から離れるように引っ張られる又は押し付けられる。好適には、永久磁石素子は、軸方向に磁化され、軸方向にシフト可能である。
【0013】
発明の1つの実施の形態は図面を参照することによって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】機械的な燃焼機関駆動式流体ポンプを係合状態において長手方向断面図で示す図である
図2図1の流体ポンプを解離した状態で示す図である。
【0015】
図面は、内燃機関12と、燃焼機関12によって直接に駆動される機械的な流体ポンプ10と、真空駆動式ブレーキ補助ユニット14とから成る典型的な自動車配列を示す。流体ポンプ10は、真空ポンプ10として設計されており、空圧式ブレーキ補助ユニット14に低圧を提供する。
【0016】
燃焼機関12は、真空ポンプ10のクラッチ16の入力軸20に機械的に直接に接続されており、これにより、入力軸20は、燃焼機関12の回転速度に正比例した回転速度で常に回転している。
【0017】
クラッチ16は、入力軸20と出力軸21との間に配置されており、磁気粘性クラッチ16である。クラッチ16は、係合クラッチ状態において入力軸20を出力軸21に接続し、解離状態において出力軸21を入力軸20から切断する。クラッチ16には、2つのクラッチボディ22,24であって、これらの間に磁気粘性流体が満たされた流体間隙26を形成している2つのクラッチボディ22,24と、軸方向にシフト可能な永久磁石素子30と、ばねとして設計された付勢素子44と、リングコイル43として設計された電磁アクチュエータ42とが設けられている。
【0018】
クラッチボディ22,24は両方ともカップ形であり、これにより、クラッチボディ22,24は、それらの間に小さなカップ形の間隙26を形成しており、この間隙26は、ディスクリング状部分と、円筒状部分とを有する。永久磁石素子30は、円形の磁石リングボディ32として形成されており、軸方向にシフト可能であり、入力軸側クラッチボディ24と一緒に回転する。磁石リングボディ32は、図1に示された永久磁石素子30の係合位置においてカップ形間隙26によって形成されたカップ形キャビティ27の内部に位置決めされている。この係合位置において、永久磁石ボディ32は、内部に磁気粘性流体28を含んだ流体間隙26の両方の部分の近くに位置し、これにより、永久磁石素子30によって発生された磁界は、最大磁束で、流体間隙26内の磁気粘性流体28を透過する。
【0019】
軸方向にシフト可能な永久磁石素子30は、付勢素子44によって、図1に示された係合位置へ付勢されている。この配列はクラッチ16をフェイルセーフにする。なぜならば、アクチュエータ42が故障すると永久磁石素子30は常に係合位置へ押し付けられるからである。この実施の形態において、アクチュエータ42は、リングコイル43が電気的に活性化されると永久磁石素子30を軸方向で引き付ける電磁リングコイル43である。
【0020】
電磁アクチュエータ42は、信号ラインを介してブレーキ補助ユニット14の圧力センサ15にも接続されている制御ユニット40によって制御される。制御ユニット40は、空圧式ブレーキ補助ユニット14の作動チャンバ内の空圧に応じてクラッチを係合及び解離させる。ブレーキ補助ユニット14の作動チャンバ内の空圧が臨界値よりも低い限り、クラッチ16は、電磁アクチュエータ42に連続的に通電することにより解離されたままであり、これにより、シフト可能な磁石素子30は、図2に示したように、解離位置へ引っ張られ、保持される。永久磁石素子30の解離位置において、流体間隙26を透過する磁界は、比較的低い束を有し、これにより、磁気粘性流体の粘性は比較的低い。その結果、クラッチの滑りは高く、これにより、クラッチは多かれ少なかれ解離される。
【0021】
ブレーキ補助ユニット14の作動チャンバ内の空圧が臨界圧力値を超えると、電磁アクチュエータ42に通電しないことによってクラッチ16は係合状態に切り替えられ、これにより、シフト可能な磁石素子30は、図1に示したように、付勢素子44によって係合位置へ押し付けられる。この状態において、流体間隙26を透過する磁界束は比較的強く、これにより、磁気粘性流体の粘性は比較的高い。その結果、クラッチの滑りは低く、これにより、クラッチは多かれ少なかれ係合される。この係合状態において、出力軸21は、入力軸20と同じ回転速度で回転する。出力軸21は、ポンピングユニット18のポンプロータ19を駆動し、これにより、作動チャンバ内の空圧が臨界圧力値よりも低くなるまで、ブレーキ補助ユニット14の作動チャンバは排気される。
図1
図2