(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エポキシ基を有する完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)が、エポキシ基を有するモノマーであって、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および3−ビニルシクロヘキセンオキシドの群から選択されるモノマーの繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【背景技術】
【0002】
「NBR」と略記されることも多いニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルと、少なくとも1種の共役ジエンと、任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーとのコポリマーまたはターポリマーであるゴムを意味するものと理解される。水素化ニトリルゴム(「HNBR」)は、共重合したジエン単位のC=C二重結合の一部またはすべてが水素化された対応するコポリマーまたはターポリマーを意味するものと理解される。
【0003】
長年の間、NBRおよびHNBRの両方は、特定のエラストマー分野において確たる地位を占めている。これらは、優れた耐油性、良好な熱安定性、オゾンおよび化学物質に対する優れた抵抗性(後者では、NBRよりもHNBRの方がさらに優れている)の形態で優れた性能プロファイルを有する。NBRおよびHNBRは、非常に良好な機械的性質および性能特性をも有する。この理由のため、これらは多種多様の様々な使用分野で広く使用されており、たとえば、自動車分野におけるガスケット、ホース、ベルト、および制振要素の製造のため、さらには石油生産分野におけるステーター、油井シール、およびバルブシールのため、さらには電気産業、機械工学、および造船における多数の部品のために使用されている。多くの異なる種類が市販されており、それらは、使用分野に応じて、様々なモノマー、分子量、多分散性、ならびに機械的性質および物理的性質を特徴とする。標準的な種類と同様に、特に、特定のターモノマーまたは特別な官能化を有することを特徴とする特定の種類への要求が増加している。
【0004】
(H)NBRゴムの実際の使用において、ゴムの加硫、すなわち特に架橋剤系および加硫条件もますます重要となってきている。したがって、数十年間にわたって既に存在している過酸化物または硫黄に基づく従来のゴム架橋系に加えて、最近の数年で、別の架橋のための種々の新しい概念が開発されている。このような架橋の概念は、ポリマーも含んでおり、その官能基のために、すべての形態の架橋および架橋剤に適用できるわけではなく、したがって特異な課題が生じる。
【0005】
(特許文献1)には、モノアミンおよびポリアミン、モノ無水物およびポリ無水物、ならびにモノカルボン酸およびポリカルボン酸を使用することによる、共役C
4〜C
10−共役ジエンと、任意選択でさらなるC
2〜C
14−オレフィンと、エポキシ基を含むモノマーとのコポリマーまたはターポリマーの架橋が記載されている。これらのコポリマーまたはターポリマーの調製に、アクリロニトリルはモノマーとして使用されない。
【0006】
(非特許文献1)には、メタクリル酸グリシジルがグラフトされたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS−g−GMA)の乳化重合による調製が記載されている。このABS−g−GMAポリマーは、後に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンドの製造に使用される。PBTマトリックス中のABS−g−GMA粒子の良好な分散性が報告されており、これはPBT鎖末端のカルボキシル基/ヒドロキシル基と、GMA単位のエポキシ基との間の界面における反応のためである。
【0007】
(特許文献2)には、共役ジエンと、ビニル置換された芳香族化合物と、オレフィン性不飽和のニトリルと、ヒドロキシル基またはエポキシ基を有するモノマーとを主成分とする官能化四元ポリマー、それを主成分とするゴム混合物、およびあらゆる種類のゴム成形品の製造のためのその使用が記載されている。ゴム混合物は、8ページ27行および9ページ18〜19行によると、従来の架橋剤を含むことができる。9ページ28〜30行に記載の架橋剤の例には、たとえば、元素硫黄および硫黄供与体、たとえばポリスルフィド、たとえばジチオカルバメート類およびチウラムポリスルフィド類が含まれる。総括的な表現で、架橋剤に加えて、加硫促進剤(たとえばアミン類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバメート類、キサントゲネート類、およびスルホンアミド類)を使用できると記載されている(9ページ25、26行)。これらの添加剤は従来量で使用されると明記されている(9ページ21行)。高温、および長期応力の場合の対応する成形品の圧縮永久歪みが、特定の組成物の架橋系による影響を受けうるかどうか、およびどのような影響を受けるかは、(特許文献2)からは推測できない。(特許文献2)の例によると、加硫可能な混合物中に存在するすべてのゴム100重量部を基準として1.5重量部の量で硫黄架橋剤が使用される。
【0008】
(特許文献3)には、不飽和ニトリルと、少なくとも1種のアクリルエステルと、エポキシモノマーと、少なくとも1種の非共役環状ポリエンと、任意選択でさらなる不飽和モノマー、たとえばブタジエンとの繰り返し単位を有するゴムに関する。明記されている架橋剤は、硫黄、有機過酸化物、あるいは芳香族カルボン酸または脂肪カルボン酸の金属塩またはその無水物である。
【0009】
(非特許文献2)には、ポリマー混合物中の相溶化剤として使用されるメタクリル酸グリシジルがグラフトされたニトリルゴムが記載されている。これらは、メタクリル酸グリシジルのNBRゴム上へのグラフト反応を過酸化物で開始することによって調製される。
【0010】
(特許文献4)には、高い使用温度、オゾンおよび酸性の石油またはガソホールに対する良好な安定性が必要とされる、特に自動車分野の用途のための、シアノ置換された(メタ)アクリル酸アルキルと、アクリル酸アルキルと、架橋性モノマーと、さらなる不飽和モノマーとを主成分とする四元ポリマーが記載されている。使用される架橋性モノマーは、エポキシ基を含むモノマーであってもよい。不飽和ポリマーの場合に明記されている架橋剤としては、硫黄、硫黄供与体、または過酸化物が挙げられており、エポキシド基の存在下では、ポリアミン類およびそれらの塩、アンモニウム化合物、または従来の架橋系との組み合わせによってその架橋が行われる。
【0011】
(非特許文献3)には、ブレンド中のポリブチレンテレフタレート(PBT)とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)との相溶性を増加させるための特定のメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル/アクリル酸エチルターポリマー(MGE)の使用が記載されている。乳化重合によって調製されたABS中に残留する残存量の酸によって、MGEのエポキシ官能基が関与する架橋反応が生じうると記載されている。後の反応でニトリル官能基およびエポキシド官能基がオキサゾリン類を形成したり、ニトリル類が加水分解されてカルボキシル基が生じたりすることがあり、これらも同様にエポキシ基と反応できると説明されている。これらの架橋が、ABSおよびブレンドの機械的性質に悪影響を与える証拠が示されており、さらに、MGEターポリマーが存在すると、強酸によって、SANマトリックス中でゲルまたは架橋網目構造を形成しうると結論づけている。
【0012】
(特許文献5)には、エポキシ基を有する加硫可能なエラストマー組成物が記載されている。これらの組成物は、エポキシ基を有するエラストマーと、(1)2つの構造要素−C(=X)−NH−C(=Y)−(式中、XおよびYは、それぞれ独立して酸素または硫黄である)を有する有機化合物、および(2)第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩から選択される第四級化合物を含む架橋剤系とを含む。有機化合物(1)は、好ましくは複素環式、芳香族、または脂肪族の化合物である。これらの複素環式化合物としては、好ましくはパラバン酸、アロキサン、アロキサンチン、アロキサン5−オキシム、バルビツール酸、5−ヒドロキシバルビツール酸、5−ベンザルバルビツール酸、5−アミノバルビツール酸、5−ヒドロキシイミノバルビツール酸、5,5−ジエチルバルビツール酸、5−エチル−5−フェニルバルビツール酸、5−(1−メチルブチル)−5−(アリル)バルビツール酸、5,5−ジアリルバルビツール酸、イソシアヌル酸、およびプソイド尿酸、ならびに前述の複素環式化合物中の酸素が硫黄原子で置換された化合物、たとえば2,4−ジチオバルビツール酸および2−チオバルビツール酸が挙げられる。好ましい芳香族化合物は、ピロメリット酸ジイミド、メリト酸トリイミド、および1,4,5,8−ナフタル酸ジイミド、ならびに対応するチオイミド類である。脂肪族化合物の例は、トリウレット、1−メチルトリウレット、1,1−ジエチルトリウレット、およびテトラウレット、ならびに対応するチオ尿素類である。実施例5において、エポキシ基を有するブタジエン/アクリロニトリルコポリマーエラストマーは架橋剤を使用して加硫される。(特許文献5)の表10によると、使用される架橋剤は、イソシアヌル酸(1.8phr)およびOTMeABr(臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム)(1.6phr)、5,5−ジエチルバルビツール酸(2.5phr)およびOTMeABr(1.6phr)、またはイソシアヌル酸(1.8phr)およびCePyBr(臭化セチルピリジニウム)(1.4phr)との混合物である。比較例によると、1phrの安息香酸アンモニウムだけが架橋剤として使用される。
【0013】
(特許文献6)は、架橋剤(たとえばナジックメチルアンヒドリド、すなわちメチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)を、100重量部のエポキシ樹脂と、エポキシ基を有する重合性モノマー(たとえばメタクリル酸グリシジル)をゴム(たとえばアクリロニトリル−ブタジエンコポリマー)上にグラフトすることによって得られる1〜40重量部のゴムと、典型的には液体または溶解させた固体のエポキシ樹脂を液体ゴム中に分散させることによって得ることができる1〜20重量部の固体ゴム微粒子とを含む主剤成分に加え、次にゴムを加硫させることによって得られる接着剤に関する。チウラム類、キサントゲネート類、チオ尿素類、ジチオカーボネート類の促進剤として使用を選択する場合などで、硫黄および硫黄化合物などの従来の架橋剤の使用が記載されている。
【0014】
(特許文献7)には、カルボン酸で変性されたニトリルコポリマーラテックスが開示されており、これは成形品の製造に使用され、硫黄および加硫促進剤が存在しないため、アレルギー反応を引き起こすことがなく、さらに好都合な性質を有する。架橋性不飽和モノマーとして、このコポリマーラテックスは(メタ)アクリル酸グリシジルを含有することができる。使用される架橋剤は、アレルギー反応を引き起こさないイオン性架橋剤であってよい。(特許文献7)の請求項16には、イオン性架橋剤として酸化亜鉛が明記されている。しかし、(特許文献7)には、好適な架橋剤系の選択によって、比較的高温および長い応力期間での圧縮永久歪みを改善できるかどうか、およびその方法は記載されていない。
【0015】
(特許文献8)には、エポキシ基を有するエラストマー(1)とともに、少なくとも2つのカルボキシル基を分子中に有するポリカルボン酸、(2)第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩からなる群から選択される第四級化合物、および(3)加工助剤を含む、エポキシ含有エラストマー組成物が開示されている。成分(1)および(2)の混合物は、架橋剤として使用される。実施例5において、ブタジエン、アクリロニトリル、およびメタクリル酸グリシジルを主成分とするターポリマーは、架橋剤系を使用して加硫される。使用される架橋剤系は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(2phr)/テトラデカン二酸(2.2phr)、または臭化テトラブチルホスホニウム(1.5phr)/テトラデカン二酸(2.2phr)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
架橋剤(ii):ルイス塩基および/またはブレンステッド塩基
使用されるルイス塩基またはブレンステッド塩基は、任意の好適な無機または有機の塩基であってよいが、これらは、加硫促進剤(iii)画定された群に含まれる一連の化合物から選択されてはならない。電子対供与体であるルイス酸、またはプロトン受容体であり、pK
Bが−12〜+13の範囲内、好ましくは−11〜+12の範囲内、より好ましくは−10.5〜+10の範囲内、さらにより好ましくは−10〜+9.5の範囲内、特に−10〜+8の範囲内であるブレンステッド塩基の使用が有用であることが分かった。
【0035】
本発明の加硫可能な組成物は好ましくは、架橋剤(ii)として、少なくとも1種の無機または有機のブレンステッド塩基および/またはルイス塩基を含む。
【0036】
ルイス塩基:
電子対供与体である、使用される任意のルイス塩基は、
(a)元素形態の遷移金属もしくは半金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、もしくは鉛、または
(b)アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、または半金属の、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、窒素、酸素、またはリンの、アルキルまたはアリール化合物、エステル、塩、錯体、または酸化物、
であってよい。
【0037】
電子対供与体である、使用される任意のルイス塩基は好ましくは、
(a)元素形態の遷移金属または半金属、アルミニウム、インジウム、またはスズ、あるいは
(b)アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、または半金属の、アルミニウム、インジウム、スズ、窒素、酸素、またはリンの、アルキルまたはアリール化合物、エステル、塩、錯体、または酸化物、
であってよい。
【0038】
使用されるルイス塩基は、より好ましくは、クラウンエーテル、特に12−クラウン−4、クリプタンド、特に[2.2.2]−クリプタンド、アンモニア、テトラアルキルアンモニウム塩、特に臭化テトラアルキルアンモニウム、ベンジルトリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩、ベンジルトリアルキルホスホニウム塩、トリフェニルホスフィン、シアン化ナトリウムまたはシアン化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ビピリジン、フェナントロリン、テトラヒドロフラン、シクロオクタジエン、ヒドラジン、またはジエチルエーテルである。
【0039】
ブレンステッド塩基:
使用されるブレンステッド塩基は、好ましくは、硫酸塩、亜硫酸塩、スルフィド、リン酸塩、炭酸塩、置換または非置換のアミン、置換または非置換の芳香族または非芳香族の窒素含有有機複素環、置換または非置換の尿素誘導体、グアニジン類およびそれらの誘導体、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機または有機のスルホン酸、カルボン酸、およびホスホン酸の塩、それらのモノエステルまたはジエステル、ならびにアルカリ金属のリチウム、ナトリウム、およびカリウムの有機金属化合物からなる群から選択される。
【0040】
好ましい炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、および炭酸リチウムである。
【0041】
好ましい置換または非置換のアミンは、アンモニア、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、およびトリエタノールアミンである。
【0042】
好ましい置換または非置換の芳香族または非芳香族の窒素含有有機複素環は、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラメチルエチレンジアミン、ピロリジン、ピラゾール、ピペリジン、ピロール、およびイミダゾールである。
【0043】
好ましい置換または非置換の尿素誘導体は、尿素、ビウレット、ジメチル尿素、およびN,N’−ジメチルプロピレン尿素である。
【0044】
好ましいスルホン酸塩は、アルキルベンジルスルホン酸ナトリウム、特にドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムである。
【0045】
好ましいホスホン酸塩は、1−ヒドロキシエタン(1,1−ジホスホン酸)、アミノトリメチレンホスホン酸、およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩またはカリウム塩である。
【0046】
好ましいカルボン酸塩は、アスコルビン酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、アビエチン酸、ならびに飽和および不飽和の脂肪酸、たとえばステアリン酸およびオレイン酸のナトリウム塩またはカリウム塩である。
【0047】
元素のリチウム、ナトリウム、およびカリウムの好ましい有機金属化合物は、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、およびカリウムエトキシドである。
【0048】
成分(iii):架橋促進剤
本発明の加硫可能な組成物中、使用される成分(iii)は、チウラム類、キサントゲネート類、チオ尿素類、ジチオカルバメート類、およびカルバメート類からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤である。
【0049】
好ましい一実施形態においては、加硫可能な組成物は、成分(iii)として、チウラム類、キサントゲネート類、ジチオカルバメート類、およびカルバメート類からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤を含む。
【0050】
これらの加硫性能は、多くの場合は速いので、それらの反応性のため、従来の架橋系では実質的に使用されない。
【0051】
有用なチウラム類としては好ましくは、チウラムモノスルフィド、チウラムジスルフィド、またはチウラムポリスルフィド類が挙げられる。好ましいチウラム類の例は、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(DPTH)、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド(DPTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、N,N’−ジエチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド(EPTDM)、またはジメチルジフェニルチウラムジスルフィド(MPTD)である。
【0052】
有用なキサントゲネート類としては好ましくは、キサントゲネート類およびキサントゲン酸アリールグアニジニウム類のアルカリ金属塩または亜鉛塩が挙げられる。好ましいキサントゲネート類の例は、キサントゲン酸アリールグアニジニウム類、ビスキサントゲネート類、またはポリキサントゲネート類、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、またはその水溶性ナトリウム塩(NaIX)である。
【0053】
有用なチオ尿素類としては好ましくは、エチレンチオ尿素(ETU)、ジフェニルチオ尿素(DPTU)、1,3−ジ−o−トリルチオ尿素(DTTU)、またはジエチルチオ尿素(DETU)が挙げられる。
【0054】
有用なジチオカルバメート類としては好ましくは、金属およびアンモニウムのジチオカルバメート類が挙げられる。好ましいジチオカルバメート類の例は、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ルペチジンジチオカルバミン酸亜鉛(ZLD)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDT)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)、ジノニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZNDNC)、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス(BIDD)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NDBC)、ジエチルジチオカルバミン酸セレン(SeEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸セレン(SeDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SEDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeDEC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SMDC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SBC)、またはシクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SHEC)である。
【0055】
有用なカルバメートの1つは、好ましくはヘキサメチレンジアミノカルバメートである。
【0056】
加硫可能な組成物であって、
(i)エポキシ基を有し、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)架橋剤としての、少なくとも1種のルイス塩基および/またはブレンステッド塩基と、
(iii)チウラム類、キサントゲネート類、ジチオカルバメート類、およびカルバメート類からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
ルイス塩基および/またはブレンステッド塩基(ii)は、架橋促進剤(iii)の画定された群とは異なる必要があり、また、(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として2.5重量部未満の量でのみ存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として2.5重量部未満の量でのみ存在する、加硫可能な組成物が好ましい。
【0057】
好ましい一実施形態においては、本発明の加硫可能な組成物は、
(i)エポキシ基を有し、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)架橋剤としての、クラウンエーテル、クリプタンド、臭化テトラアルキルアンモニウム、特に臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン、およびビピリジンからなる群から選択される少なくとも1種のルイス塩基、および/または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラメチルエチレンジアミン、ピロリジン、ピラゾール、ピペリジン、ピロール、イミダゾール、尿素、ビウレット、ジメチル尿素、 N,N’−ジメチルプロピレン尿素、およびドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されるブレンステッド塩基と、
(iii)ヘキサメチレンジアミノカルバメート、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド(DPTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド(MPTD)、キサントゲン酸アリールグアニジニウム類、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、エチレンチオ尿素(ETU)、ジフェニルチオ尿素(DPTU)、1,3−ジ−o−トリルチオ尿素(DTTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SMDC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SBC)、およびシクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SHEC)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として2.5重量部未満の量でのみ存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として2.5重量部未満の量でのみ存在する。
【0058】
架橋剤(ii)および架橋促進剤(iii)の量は、ニトリルゴム中のエポキシ基の濃度の関数として選択することができる。
【0059】
加硫可能な組成物は、通常、
(i)エポキシ基を有し、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)それぞれの場合で、ニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜25重量部、より好ましくは0.1〜15重量部、特に0.2〜10重量部の架橋剤としての少なくとも1種のルイス塩基および/またはブレンステッド塩基と、
(iii)それぞれの場合で、ニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、0.01〜10重量部、好ましくは 0.05〜7.5重量部、より好ましくは 0.075〜5重量部、特に0.1〜3重量部の、チウラム類、キサントゲネート類、チオ尿素類、ジチオカルバメート類、およびカルバメート類からなる群から選択され、好ましくはチウラム類、キサントゲネート類、ジチオカルバメート類、およびカルバメート類からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
ルイス塩基および/またはブレンステッド塩基(ii)は、架橋促進剤(iii)の画定された群とは異なる必要があり、また、(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として2.5重量部未満の量でのみ存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として2.5重量部未満の量でのみ存在する。
【0060】
本発明によると、ルイス塩基および/またはブレンステッド塩基、および架橋促進剤(iii)は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムに、ゴムの製造後に加えられる。したがって本発明の化合物は、任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムの製造の過程およびその配合の過程で放出されたりすでに存在したりする化合物ではなく、別個に塩基が計量供給されたり架橋促進剤が画定されたりする化合物である。これらは、ニトリルゴムの製造後にニトリルゴムに加えられる。これによって、早ければニトリルゴムの製造の過程における部分的な架橋および部分的なゲル化が回避される。
【0061】
エポキシ基を有するニトリルゴム:
本発明の加硫可能な組成物中に使用されるエポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)は、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まず、エポキシ基を有する、あらゆる好適な任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムであってよい。
【0062】
エポキシ基は、エポキシ基を有する化合物を後にグラフトすることによってニトリルゴムに取り付けることができ、ニトリルゴムの製造に追加で使用されるエポキシ基を有するモノマーの繰り返し単位から誘導することもできる。
【0063】
エポキシ基を有し、少なくとも1種のニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、エポキシ基を有する少なくとも1種のモノマー、および任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンの繰り返し単位は一切含まない、任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムを本発明の加硫可能な組成物中に使用することが好ましい。
【0064】
エポキシ基を有するニトリルゴムは、通常、前述のモノマーを互いに重合させて、エポキシ基を有するニトリルゴムを生成することによって製造される。これによって、エポキシ基を有するモノマーをグラフトさせたグラフトゴムが得られるのではなく、重合の過程で、エポキシ基を有するモノマーが繰り返し単位の形態でポリマー主鎖中に組み込まれたゴムが得られる。
【0065】
エポキシ基を有するモノマーであって、エポキシ基を有するニトリルゴムの製造に使用されるモノマーは、好ましくは、一般式(I)
【化1】
(式中、
mは0または1であり、
Xは、O、O(CR
2)
p、(CR
2)
pO、C(=O)O、C(=O)O(CR
2)
p、C(=O)NR、(CR
2)
p、N(R)、N(R)(CR
2)
p、P(R)、P(R)(CR
2)
p、P(=O)(R)、P(=O)(R)(CR
2)
p、S、S(CR
2)
p、S(=O)、S(=O)(CR
2)
p、S(=O)
2(CR
2)
p、またはS(=O)
2であり、これらの基中のRは、同一または異なり、R
1〜R
6に関して定義されるものであってよく、
Yは、共役または非共役のジエン、アルキン、およびビニル化合物を含む1種または複数種の一不飽和または多価不飽和モノマーの繰り返し単位を表すか、ポリエーテル、特にポリアルキレングリコールエーテルおよびポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリオール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイソシアネート、多糖、ポリエステル、およびポリアミドを含むポリマーから誘導される構造要素を表し、
nおよびpは、同一または異なるものであり、それぞれ0〜10,000の範囲内であり、
R、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、同一または異なるものであり、それぞれH、直鎖または分岐、飽和あるいは一不飽和または多価不飽和のアルキル基、飽和あるいは一不飽和または多価不飽和のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ、アミド、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、スルファニル、チオカルボキシル、スルフィニル、スルホノ、スルフィノ、スルフェノ、スルホン酸類、スルファモイル、ヒドロキシイミノ、アルコキシカルボニル、F、Cl、Br、I、ヒドロキシル、ホスホナト、ホスフィナト、シリル、シリルオキシ、ニトリル、ボレート類、セレネート類、カルボニル、カルボキシル、オキシカルボニル、オキシスルホニル、オキソ、チオキソ、エポキシ、シアネート類、チオシアネート類、イソシアネート類、チオイソシアネート類、またはイソシアニド類である)
で表される。
【0066】
任意選択で、一般式(I)のR、R
1〜R
6基および繰り返し単位Yに関して与えられる定義は、それぞれ一置換または多置換されている。
【0067】
R、R
1〜R
6の定義における以下の基は、好ましくはそのような一置換または多置換を有する:アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミド、カルバモイル、F、Cl、Br、I、ヒドロキシル、ホスホナト、ホスフィナト、スルファニル、チオカルボキシル、スルフィニル、スルホノ、スルフィノ、スルフェノ、スルファモイル、シリル、シリルオキシ、カルボニル、カルボキシル、オキシカルボニル、オキシスルホニル、オキソ、チオキソ、ボレート類、セレネート類、およびエポキシ。有用な置換基としては、結果として化学的に安定な化合物が得られるのであれば、Rを想定できるすべての定義のものが挙げられる。特に好適な置換基は、アルキル、カルボシクリル、アリール、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、ニトリル(CN)、およびカルボキシルである。
【0068】
エポキシ基を有するモノマーであって、X、R、R
1〜R
6、およびmは、それぞれ一般式(I)に関する定義の通りであり、pおよびnは、同一または異なるものであり、それぞれ0〜100の範囲内である一般式(I)のモノマーを使用することが特に好ましい。
【0069】
特に好ましくは、X、R、R
1〜R
6、およびmは、それぞれ一般式(I)に関する前述の定義の通りであり、pは0〜100の範囲内であり、nは0である。したがってエポキシ基を有するこのモノマーは、一般式(Ia)
【化2】
(式中、
X、R、R
1〜R
6、m、およびpは、それぞれ一般式(I)に関する前述の定義の通りである)
で表される。
【0070】
特に好ましくは、エポキシ基を有するモノマーであって、X、R、およびR
1〜R
6は、それぞれ一般式(I)に関する前述の定義の通りであり、mは1であり、pは1であり、nは0である一般式(I)のモノマーが使用される。
【0071】
エポキシ基を有するモノマーの好ましい例は、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3−ビニルシクロヘキセンオキシドである。
【0072】
使用されるエポキシ基含有モノマーは、好ましくはアクリル酸グリシジル(アルキル)である。アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが特に好ましい。
【0073】
好ましい一実施形態においては、本発明の加硫可能な組成物は、
(i)エポキシ基を有する少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムであって、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルと、エポキシ基を有し、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および3−ビニルシクロヘキセンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーとから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)架橋剤としての、クラウンエーテル、クリプタンド、臭化テトラアルキルアンモニウム、特に臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン、およびビピリジンからなる群から選択される少なくとも1種のルイス塩基、および/または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラメチルエチレンジアミン、ピロリジン、ピラゾール、ピペリジン、ピロール、イミダゾール、尿素、ビウレット、ジメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、およびドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のブレンステッド塩基と、
(iii)ヘキサメチレンジアミノカルバメート、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド(DPTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド(MPTD)、キサントゲン酸アリールグアニジニウム類、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、エチレンチオ尿素(ETU)、ジフェニルチオ尿素(DPTU)、1,3−ジ−o−トリルチオ尿素(DTTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SMDC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SBC)、およびシクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SHEC)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在する。
【0074】
特に好ましい一実施形態においては、本発明の加硫可能な組成物は、
(i)エポキシ基を有し、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、アクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジルと、任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーとから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)架橋剤としての、クラウンエーテル、クリプタンド、臭化テトラアルキルアンモニウム、特に臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、およびトリフェニルホスフィンからなる群から選択される少なくとも1種のルイス塩基、または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、尿素、ビウレット、ジメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、およびドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種のブレンステッド塩基と、
(iii)ヘキサメチレンジアミノカルバメート、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、エチレンチオ尿素(ETU)、1,3−ジ−o−トリルチオ尿素(DTTU)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SEDC)、およびシクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SHEC)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在する。
【0075】
エポキシ基を有するニトリルゴム中にはあらゆる共役ジエンが存在することができる。(C
4〜C
6)共役ジエンを使用することが好ましい。1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、またはそれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンおよびイソプレン、またはそれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンがさらにより好ましい。
【0076】
使用されるα,β−不飽和ニトリルは、あらゆる周知のα,β−不飽和ニトリルであってよく、(C
3〜C
5)−α,β−不飽和ニトリル、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはそれらの混合物が好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0077】
使用されるさらなる共重合性モノマーは、希望するなら、たとえば芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、およびビニルピリジン、フッ素化ビニルモノマー、好ましくはフルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−フルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、およびテトラフルオロエチレン、あるいは他の共重合性の老化防止性モノマー、好ましくはN−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、およびN−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリン、さらには非共役ジエン、たとえば4−シアノシクロヘキセンおよび4−ビニルシクロヘキセン、または他のアルキン、たとえば1−または2−ブチンであってよい。
【0078】
さらに、使用される共重合性ターモノマーは、ヒドロキシル基を有するモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであってよい。対応する置換(メタ)アクリルアミドを使用することもできる。
【0079】
好適なアクリル酸ヒドロキシアルキルモノマーの例は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジ(エチレングリコール)、イタコン酸ジ(プロピレングリコール)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシプロピル)、イタコン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、フマル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、マレイン酸ビス(2−ヒドロキシエチル)、およびヒドロキシメチルビニルケトンである。
【0080】
あるいは、使用されるさらなる共重合性モノマーは、カルボキシル基を有する共重合性ターモノマー、たとえばα,β−不飽和モノカルボン酸、そのエステル、α,β−不飽和ジカルボン酸、そのモノエスエルまたはジエステル、あるいはそれらの対応する無水物またはアミドであってよい。
【0081】
使用されるα,β−不飽和モノカルボン酸は、好ましくはアクリル酸およびメタクリル酸であってよい。
【0082】
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくはそのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することも可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC
1〜C
18アルキルエステルが好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、特にC
1〜C
18アルキルエステル、特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、n−アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルも好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸アルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸またはメタクリル酸C
2〜C
12−アルコキシアルキルエステルが特に好ましく、アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルがさらにより好ましい。前述のものなどのアルキルエステルと、前述の形態などのアルコキシアルキルエステルとの混合物の使用も可能である。シアノアルキル基中の炭素原子数が2〜12であるアクリル酸シアノアルキルおよびメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、およびメタクリル酸シアノブチルの使用も可能である。ヒドロキシアルキル基の炭素原子数が1〜12であるアクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル、好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびアクリル酸3−ヒドロキシプロピルの使用も可能であり、フッ素置換ベンジル基を有するアクリレートまたはメタクリレート、好ましくはアクリル酸フルオロベンジルおよびメタクリル酸フルオロベンジルの使用も可能である。フルオロアルキル基を有するアクリレートおよびメタクリレート、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチルおよびメタクリル酸テトラフルオロプロピルの使用も可能である。アミノ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステル、たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチルおよびアクリル酸ジエチルアミノエチルの使用も可能である。
【0083】
使用されるさらなる共重合性モノマーは、さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸であってよい。
【0084】
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸の使用が可能である。
【0085】
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルの使用も可能である。
【0086】
これらのα,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルまたはジエステルは、たとえば、アルキル、好ましくはC
1〜C
10−アルキル、特にエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、またはn−ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC
2〜C
12−アルコキシアルキル、より好ましくはC
3〜C
8−アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC
1〜C
12−ヒドロキシアルキル、より好ましくはC
2〜C
8−ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC
5〜C
12−シクロアルキル、より好ましくはC
6〜C
12−シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC
6〜C
12−アルキルシクロアルキル、より好ましくはC
7〜C
10−アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC
6〜C
14−アリールのモノエステルまたはジエステルであってよく、それらのジエステルは、それぞれの場合で混合エステルであってよい。
【0087】
α,β−不飽和モノカルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸2−プロピルヘプチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。特に、アクリル酸n−ブチルが使用される。
【0088】
α,β−不飽和モノカルボン酸の特に好ましいアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。特に、アクリル酸メトキシエチルが使用される。
【0089】
使用されるα,β−不飽和モノカルボン酸の他のエステルは、さらに、たとえば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびウレタン(メタ)アクリレートである。
【0090】
α,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルの例としては、
・マレイン酸モノアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノn−ブチル;
・マレイン酸モノシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;
・マレイン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・マレイン酸モノアリール、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・マレイン酸モノベンジル類、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・フマル酸モノアルキル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノn−ブチル;
・フマル酸モノシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・フマル酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・フマル酸モノアリール、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・フマル酸モノベンジル類、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・シトラコン酸モノアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノn−ブチル;
・シトラコン酸モノシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・シトラコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・シトラコン酸モノアリール、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・シトラコン酸モノベンジル類、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・イタコン酸モノアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノn−ブチル;
・イタコン酸モノシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・イタコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・イタコン酸モノアリール、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・イタコン酸モノベンジル類、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・メサコン酸モノアルキル、好ましくはメサコン酸モノエチル
が挙げられる。
【0091】
使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジエステルは、前述のモノエステル基に基づく類似のジエステルであってよく、それらのエステル基は化学的に異なる基であってもよい。
【0092】
有用なさらなる共重合性モノマーは、さらに、1分子当たり少なくとも2つのオレフィン性二重結合を有するフリーラジカル重合性化合物である。多価不飽和化合物の例は、ポリオールのアクリレート、メタクリレート、またはイタコネート、たとえばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオール1,4−ジアクリレート、プロパン−1,2−ジオールジアクリレート、ブタン−1,3−ジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリセリルジ−およびトリアクリレート、ペンタエリスリチルジ−、トリ−、およびテトラアクリレートまたは−メタクリレート、ジペンタエリスリチルテトラ−、ペンタ−、およびヘキサアクリレートまたは−メタクリレートまたは−イタコネート、ソルビチルテトラアクリレート、ソルビチルヘキサメタクリレート、ジアクリレートまたはジメタクリレートであって、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール、あるいは末端ヒドロキシル基を有するオリゴエステルまたはオリゴウレタンのジアクリレートまたはジメタクリレートである。使用される多価不飽和モノマーは、アクリルアミド類、たとえばメチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、またはアクリル酸2−アクリルアミドエチルであってもよい。多価不飽和のビニルおよびアリル化合物の例は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、またはリン酸トリアリルである。
【0093】
好ましい一実施形態においては、本発明の加硫可能な組成物は、
(i)エポキシ基を有する少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムであって、a)アクリロニトリルと、b)1,3−ブタジエンと、c)エポキシ基を有し、アクリル酸2−エチルグリシジル、メタクリル酸2−エチルグリシジル、アクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−プロピル)グリシジル、アクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸2−(n−ブチル)グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、メタクリル酸(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチル、アクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、メタクリル酸6’,7’−エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、アリル3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニル3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および3−ビニルシクロヘキセンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、
d)任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーとから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)架橋剤としての、クラウンエーテル、クリプタンド、臭化テトラアルキルアンモニウム、特に臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、およびトリフェニルホスフィンからなる群から選択される少なくとも1種のルイス塩基、および/または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、尿素、ビウレット、ジメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、およびドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されるブレンステッド塩基と、
(iii)ヘキサメチレンジアミノカルバメート、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、エチレンチオ尿素(ETU)、1,3−ジ−o−トリルチオ尿素(DTTU)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SEDC)、およびシクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SHEC)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在する。
【0094】
好ましい一実施形態においては、本発明の加硫可能な組成物は、
(i)エポキシ基を有し、a)アクリロニトリルと、b)1,3−ブタジエンと、c)アクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジルと、d)任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーとから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない、少なくとも1種の任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムと、
(ii)架橋剤としての、クラウンエーテル、クリプタンド、臭化テトラアルキルアンモニウム、特に臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、およびトリフェニルホスフィンからなる群から選択される少なくとも1種のルイス塩基、および/または炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、尿素、ビウレット、ジメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、およびドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されるブレンステッド塩基と、
(iii)ヘキサメチレンジアミノカルバメート、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)、エチレンチオ尿素(ETU)、1,3−ジ−o−トリルチオ尿素(DTTU)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SEDC)、およびシクロヘキシルエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SHEC)からなる群から選択される少なくとも1種の架橋促進剤とを含み、
(ii)に記載のもの以外の架橋剤は、加硫可能な組成物中に、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在し、(iii)に記載のもの以外の架橋促進剤は、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)の100重量部を基準として、2.5重量部未満の量でのみ、好ましくはわずか1重量部まで、より好ましくはわずか0.75重量部までの量で存在する。
【0095】
モノマーの比率:
エポキシ基を有し、本発明により使用される任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム中のそれぞれのモノマーの比率は、広範囲で変動させることができる。
【0096】
共役ジエンまたはその合計の比率は、全ニトリルゴムを基準として、通常39.75〜90重量%の範囲内、好ましくは44〜88重量%の範囲内、より好ましくは45.75〜87%の範囲内、特に47.5〜85重量%の範囲内である。
【0097】
α,β−不飽和ニトリルまたはその合計の比率は、全ニトリルゴムを基準として、通常5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは13〜53重量%、特に15〜51重量%である。
【0098】
エポキシ基を有するモノマーの比率は、全ニトリルゴムを基準として、好ましくは0.25〜35重量%、より好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1.25〜25重量%、特に1.5〜18重量%である。
【0099】
それぞれの場合で、すべてのモノマーの比率は合計100重量%となる必要がある。
【0100】
ニトリルゴム(i)中のエポキシ基を有するモノマーの量、架橋剤(ii)および架橋促進剤(iii)の量、ならびにエポキシ基の架橋剤(ii)および架橋促進剤(iii)に対する比率は、所望の程度の架橋に応じて設定される。エポキシ基の、架橋剤(ii)および架橋促進剤(iii)の量に対する比を設定することで、破断時伸びおよび引張強度を特定の要求に調整可能となる。
【0101】
任意選択的なさらなる共重合性モノマーは、それらの性質に応じて、全ニトリルゴム(i)を基準として0〜50重量%の量で存在することができる。この場合、共役ジエンおよび/またはα,β−不飽和ニトリルおよび/またはエポキシ基を有するモノマーの対応する比率は、追加のモノマーの比率で置き換えられてもよく、この場合もすべてのモノマーの比率の合計がそれぞれ100重量%となる必要がある。
【0102】
このようなエポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムの調製は、当業者には十分周知である。エポキシ基を有するニトリルゴムは、通常、乳化重合と呼ばれる方法で調製される。これは乳化剤の存在下で行われ、乳化剤は、通常、アニオン性乳化剤の水溶性の塩、または帯電していない乳化剤である。さらに、重合は、多くの場合、分子量調節剤と呼ばれるものの存在下で行われ、これらの分子量調節剤は、一般に12〜16個の炭素原子を含有するアルキルチオール、好ましくはtert−ドデシルメルカプタン(t−DDM)である。このようなアルキルチオール、またはアルキルチオールの(異性体)混合物は、市販されているか、文献で十分周知の方法で当業者が調製可能であるかのいずれかである。
【0103】
重合を行うためには、重合開始時および/または重合中に、開始剤系のすべてまたは個別の成分を計量供給する。重合中に、すべておよび個別の成分を数回に分けて加えることが好ましい。逐次添加を使用することで、反応速度を制御することができる。重合を均一に行うために、重合開始のために開始剤系の一部のみを使用し、残りを重合中に計量供給する。通常、重合は、開始剤の総量の10〜80重量%、好ましくは30〜50重量%で開始される。開始剤系の個別の成分を逐次計量供給することも可能である。化学的に不均一な生成物を調製しようと意図する場合は、それらのモノマーを計量供給で加える。組成がブタジエン/アクリロニトリルの共沸比から外れている場合は、特にアクリロニトリルおよびブタジエンが逐次計量供給で加えられる。アクリロニトリル含量が10〜34重量%であるNBR型の場合、および40〜50重量%のアクリロニトリルの場合は、逐次計量添加が好ましい(W.Hofmann,Rubber Chem.Technol.36(1963))。重合時間は5時間〜15時間の範囲内であり、特にモノマー混合物アクリロニトリル含量、および重合温度に依存する。重合温度は0〜30℃の範囲内であり、好ましくは5〜25℃の範囲内である。転化率が50〜90%の範囲内、好ましくは60〜85%の範囲内に到達すれば、一般に知られる停止剤を加えることによって重合を終了する。乳化重合に使用される水の量は、モノマー混合物の100重量部を基準として、100〜900重量部の範囲内、好ましくは120〜500重量部の範囲内、より好ましくは150〜400重量部の範囲内の水である。重合は、バッチ式、または撹拌タンクカスケードで連続的に行うことができる。未転化のモノマーおよび揮発性成分を除去するために、「反応停止させた」ラテックスの蒸気蒸留が行われる。この場合、70℃〜150℃の範囲内の温度が使用され、温度が<100℃の場合には圧力を低下させる。揮発性成分を除去する前に、乳化剤を使用して、ラテックスを後で安定化させることができる。この目的のためには、前述の乳化剤は、100重量部のニトリルゴムを基準として0.1〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の量で適宜使用される。
【0104】
メタセシスおよび水素化:
エポキシ基を有するニトリルゴムを調製した後、(a)ニトリルゴムの分子量を低下させるメタセシス反応、(b)メタセシス反応および引き続く水素化、または(c)水素化のみを行うこともできる。これらのメタセシスまたは水素化反応は、当業者に十分知られており、文献に記載されている。メタセシスは、たとえば国際公開第A−02/100941号パンフレットおよび国際公開第A−02/100905号パンフレットから周知となっており、分子量を低下させるために使用することができる。
【0105】
均一または不均一の水素化触媒を使用して水素化を行うことができる。使用される触媒は、通常、ロジウム、ルテニウム、またはチタンを主成分とするが、白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルト、または銅を、金属として、または好ましくは金属化合物の形態で使用することもできる(たとえば、米国特許第A−3,700,637号明細書、独国特許出願公開第A−25 39 132号明細書、欧州特許出願公開第A−0 134 023号明細書、独国特許出願公開第A−35 41 689号明細書、独国特許出願公開第A−35 40 918号明細書、欧州特許出願公開第A−0 298 386号明細書、独国特許出願公開第A−35 29 252号明細書、独国特許出願公開第A−34 33 392号明細書、米国特許第A−4,464,515号明細書、および米国特許第A−4,503,196号明細書を参照されたい)。
【0106】
均一相での水素化に好適な触媒および溶媒は、本明細書で以下に記載され、独国特許出願公開第A−25 39 132号明細書および欧州特許出願公開第A−0 471 250号明細書からも知られている。選択的水素化を、たとえばロジウム触媒またはルテニウム触媒の存在下で行うことができる。たとえば、一般式
(R
1mB)
lMX
n
の触媒を使用でき、式中、Mは、ルテニウムまたはロジウムであり、R
1は、同一または異なり、C
1〜C
8アルキル基、C
4〜C
8シクロアルキル基、C
6〜C
15アリール基、またはC
7〜C
15アラルキル基である。Bは、リン、ヒ素、硫黄、またはスルホキシド基S=Oであり、Xは、水素または陰イオンであり、好ましくはハロゲン、より好ましくは塩素または臭素であり、lは、2、3、または4であり、mは、2または3であり、nは、1、2、または3、好ましくは1または3である。好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、およびトリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、さらには式(C
6H
5)
3P)
4RhHのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヒドリド、およびトリフェニルホスフィンがトリシクロヘキシルホスフィンで完全または部分的に置換された対応する化合物である。触媒は少量で使用することができる。ポリマーの重量を基準として0.01〜1重量%の範囲内、好ましくは0.03〜0.5重量%の範囲内、より好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲内の量が好適である。
【0107】
通常、式R
1mB(式中、R
1、m、およびBのそれぞれは、触媒に関する前述の定義の通りである)の配位子である共触媒とともに触媒を使用することが推奨される。好ましくは、mは3であり、Bはリンであり、R
1基は同一でも異なっていてもよい。共触媒は、好ましくはトリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリールモノアルキル、ジアリールモノシクロアルキル、ジアルキルモノアリール、ジアルキルモノシクロアルキル、ジシクロアルキルモノアリール、またはジシクロアルキルモノアリール基を有する。
【0108】
共触媒の例は、たとえば米国特許第A−4,631,315号明細書に見ることができる。好ましい共触媒の1つはトリフェニルホスフィンである。共触媒は、水素化されるニトリルゴムの重量を基準として、好ましくは0.3〜5重量%の範囲内、好ましくは0.5〜4重量%の範囲内の量で使用される。好ましくは、さらに、ロジウム触媒と共触媒との重量比は、水素化される100重量部のニトリルゴムを基準として1:3〜1:55の範囲内、より好ましくは1:5〜1:45の範囲内であり;水素化される100重量部のニトリルゴムを基準として、好ましくは0.1〜33重量部の共触媒、より好ましくは0.5〜20重量部、さらにより好ましくは1〜5重量部、特に2重量部を超え5重量部未満の共触媒が使用される。
【0109】
水素化の実際の実施方法は、米国特許第A−6,683,136号明細書によって当業者に周知である。水素化させるニトリルゴムと水素とを、トルエンまたはモノクロロベンゼンなどの溶媒中、100〜150℃の温度、および50〜150バールの圧力で2〜10時間接触させることによって通常は行われる。
【0110】
本発明との関連においては、水素化は、少なくとも50%、好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜100%の程度で、出発ニトリルゴム中に存在する二重結合が転化することを意味するものと理解されたい。水素化の程度の測定は、当業者には周知であり、たとえば、ラマンまたはIR分光法によって行うことができる(たとえば、ラマン分光法による測定の場合は欧州特許出願公開第A−0 897 933号明細書、IR分光法による測定の場合は米国特許第A−6,522,408号明細書を参照されたい)。
【0111】
不均一触媒を使用する場合、これらは通常、たとえば木炭、シリカ、炭酸カルシウム、または硫酸バリウム上に担持される、パラジウムを主成分とする担持触媒である。
【0112】
これによって、エポキシ基を有する完全または部分水素化ニトリルゴムが得られる。これらは、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および任意選択で1種または複数種のさらなる共重合性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むが、非共役環状ポリエンから誘導される繰り返し単位を含まない。
【0113】
上記のエポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムは、通常10〜160、および好ましくは15〜150ムーニー単位、より好ましくは20〜150ムーニー単位、特に25〜145ムーニー単位の範囲内のムーニー粘度(ML(1+4、100℃))を有する。ムーニー粘度(ML1+4、100℃)の値は、DIN 53523/3またはASTM D 1646に準拠して100℃で剪断ディスク粘度計によって測定される。
【0114】
エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムは、通常、さらに多分散性PDI=M
w/M
n(ここでM
wは重量平均分子量であり、M
nは数平均分子量である)が1.0〜6.0の範囲内、好ましくは1.5〜5.0の範囲内である。
【0115】
エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムのガラス転移温度は、−80℃〜+20℃の範囲内、好ましくは−70℃〜+10℃の範囲内、より好ましくは−60℃〜0℃の範囲内である。
【0116】
本発明の好ましい一実施形態は、(iv)少なくとも1種のフィラーをさらに含む加硫可能な組成物に関する。このフィラーは、本発明の架橋剤(ii)または架橋促進剤(iii)にはまだ含まれていない化合物を排他的に含む。たとえば、カーボンブラック、シリカ、カーボンナノチューブ、Teflon(好ましくは粉末形態)、またはシリケートを使用することができる。
【0117】
さらなる実施形態においては、本発明の加硫可能な組成物は、ゴム分野の当業者によく知られている1種または複数種の添加剤も含むことができる。これらも、本発明の架橋剤(ii)または架橋促進剤(iii)の定義には含まれない排他的な化合物である。このような添加剤としては、フィラー活性化剤、老化安定剤、加硫戻り安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、鉱油、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、樹脂、増量剤、加硫遅延剤、ならびにゴム産業において周知のさらなるまたは別の添加剤が挙げられる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D−69451 Weinheim,1993,vol A 23 “Chemicals and Additives”,p.366−417)。
【0118】
有用なフィラー活性化剤としては、たとえば、有機シラン、好ましくはビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、または(オクタデシル)メチルジメトキシシランが挙げられる。さらなるフィラー活性化剤は、たとえば、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、および分子量が74〜10,000g/molのポリエチレングリコールなどの界面活性物質である。フィラー活性化剤の量は、エポキシド基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムの100重量部を基準として通常0〜10重量部である。
【0119】
加硫可能な組成物に添加することができる老化安定剤は、当業者に周知のあらゆるものであってよく、エポキシド基を有する任意選択で水素化されたニトリルゴムの100重量部を基準として通常0〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部の量で使用される。
【0120】
有用な離型剤としては、たとえば、油脂の飽和または部分不飽和酸、およびそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド)が挙げられる。さらに、金型表面に塗布可能な製品、たとえば低分子量シリコーン化合物を主成分とする製品、フルオロポリマーを主成分とする製品、およびフェノール樹脂を主成分とする製品を使用することが可能である。離型剤は、エポキシド基を有する任意選択で水素化されたニトリルゴムの100重量部を基準として、0〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の量で使用される。
【0121】
別の可能性は、米国特許第A−4,826,721号明細書の教示によるガラスでできた補強材(繊維)を用いた補強であり、もう1つは、脂肪族および芳香族のポリアミド(Nylon(登録商標)、アラミド(登録商標))、ポリエステル、および天然繊維製品でできたコード、織布、繊維による補強である。
【0122】
本発明は、少なくとも1種の、エポキシ基を有する完全または部分水素化されたニトリルゴム(i)を、少なくとも1種のルイス酸および/またはブレンステッド酸(ii)および少なくとも1種の架橋促進剤(iii)と混合することによって、加硫可能な組成物の製造方法をさらに提供する。この混合作業は、当業者によく知られたあらゆる混合装置中で行うことができる。通常、少なくとも1種の架橋剤(ii)および少なくとも1種の架橋促進剤(iii)はニトリルゴム(i)中に計量して添加される。1種または複数種のフィラーおよび1種または複数種のさらなるゴム添加剤が使用される場合、それらは任意の望ましい順序で混合することもできる。
【0123】
本発明は、前述の加硫可能な組成物を温度の上昇を伴わせながら架橋させることを特徴とする、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムを主成分とする加硫物の製造方法をさらに提供する。架橋は、好ましくは20〜250℃の範囲内、より好ましくは50〜230℃の範囲内の温度で行うことができる。架橋反応の時間は、1分から数日の範囲内である。
【0124】
本発明は、このようにして得ることができる加硫物をも提供する。これらの加硫物は、架橋した、エポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴムを含有する。これらは、室温、100℃、および150℃における圧縮永久歪み試験で非常に良好な値を示し、さらに、良好な破断時伸びに加えて高い引張強度を示す。
【実施例】
【0125】
本発明のエポキシ基を有する任意選択で完全または部分水素化されたニトリルゴム中のアクリロニトリル含量(「ACN含量」)を求めるための窒素含量は、DIN53625に準拠してケルダール法により求められる。極性コモノマーを含有するため、エポキシ基を有する任意選択で水素化されたニトリルゴムは、20℃においてメチルエチルケトンに対して>85重量%で可溶性となる。
【0126】
ガラス転移温度、ならびにその開始点および終了点と呼ばれるものは、ASTM E 1356−03またはDIN 11357−2に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0127】
個別のポリマーの微細構造およびターモノマー含量は、1H NMR(装置:XWIN−NMR 3.1ソフトフェアを有するBruker DPX400、測定周波数400MHz、溶媒CDCl3)により測定した。
【0128】
ムーニー粘度(ML1+4、100℃)の値は、それぞれの場合で、DIN 53523/3またはASTM D 1646により剪断ディスク粘度計によって100℃において測定する。MSR(ムーニー応力緩和)は、ISO 289−4:2003(E)により100℃において剪断ディスク粘度計によって測定される。
【0129】
MDRの加硫プロファイルおよびその分析データは、ASTM D5289−95によりMonsanto MDR 2000レオメーター上で測定した。
【0130】
指定の温度における圧縮永久歪み(「CS」)はDIN 53517により測定した。
【0131】
ショアA高度は、ASTM−D2240−81により測定した。
【0132】
変形の関数として応力を測定する引張試験は、DIN 53504またはASTM D412−80により行った。
【0133】
以下の表中に示される略語は以下の意味を有する:
「RT」:室温(23±2℃)
「TS」:RTで測定した引張強度
「EB」:RTで測定した破断時伸び
「M50」:RTで測定した50%伸びの時の弾性率
「M100」:RTで測定した100%伸びの時の弾性率
「M300」:RTで測定した300%伸びの時の弾性率
「S min」:架橋等温線の最小トルク
「S max」:架橋等温線の最大トルク
「デルタS」は、「S max−S min」である
「t
10」は、S maxの10%に到達したときの時間である
「t
50」は、S maxの50%に到達したときの時間である
「t
90」は、S maxの90%に到達したときの時間である
「t
95」は、S maxの95%に到達したときの時間である
「TS2」は、ムーニー粘度が開始時と比較して2単位だけ増加するまでの時間である
【0134】
実施例において以下の物質を使用した:
以下の化学物質は、それぞれの場合で明記される企業から商品として購入したか、または明記される企業の製造プラントから得られるものである。
【0135】
架橋剤(ii):
Lupragen(登録商標)N 700:1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7(BASF AGの商品)
【0136】
架橋促進剤(iii):
Vulkacit(登録商標)P Extra N:エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(Lanxess Deutschland GmbH)
VULCOFAC(登録商標)HDC:ヘキサメチレンジアミノカルバメート(Safic−Alcan Deutschland GmbH)
RHENOCURE(登録商標)SDT/S:30%の高活性シリカに結合した70%ホスホリルポリスルフィド(Lanxess Deutschland GmbH)
【0137】
重合中または加硫可能な組成物中に使用した他の物質:
Corax(登録商標)N550/30:カーボンブラック(Evonik Degussaの商品)
Diplast(登録商標)TM 8−10/ST:メリト酸トリオクチル(Lonza SpAの商品)
Luvomaxx(登録商標)CDPA:p−ジクミルジフェニルアミン(Lehmann & Vossの商品)
Wingstay(登録商標)29/Naugawhite混合物:25gのLambertiのSorbilene Mix(ソルビタンエステルおよびエトキシル化ソルビタンエステルの混合物)と、38gのChemturaのNauga−white(2,2’−メチレンビス(6−ノニル−p−クレゾール))と、125gのEliokemのWingstay(登録商標)29(スチレン化ジフェニルアミン)と、63gの水との混合物
「Fe(II)SO
4プレミックス溶液」は、0.986gのFe(II)SO
4・7H
2Oおよび2.0gのRongalit(登録商標)Cを400gの水中に含有する
Rongalit(登録商標)C:スルフィン酸誘導体のナトリウム塩(BASF SEの商品)
t−DDM:t−ドデシルメルカプタン(Lanxess Deutschland GmbH)
Texapon(登録商標)K−12:ラウリル硫酸ナトリウム(Cognis Deutschland GmbH & Co.KGの商品)
Trigonox(登録商標)NT 50:p−メンタンヒドロペルオキシド(Akzo−Degussaの商品)
【0138】
I.ニトリルゴムAの製造
以下の一連の実施例で使用したニトリルゴムAは、表1に示す基本配合により製造し、すべての供給原料は、100重量部のモノマー混合物を基準とした重量部の単位で示される。表1は、それぞれの重合条件も示している。
【0139】
【表1】
【0140】
ニトリルゴムは、撹拌システムを有する5lのオートクレーブ中でバッチ方式で製造した。オートクレーブのバッチにおいては、1.25kgのモノマー混合物、および2.1kgの総量の水を使用し、Fe(II)を基準とした等モル量でEDTAを使用した。この量の水の1.9kgを最初に乳化剤とともにオートクレーブ中に投入し、窒素流をパージした。その後、不安定化させたモノマー、および表1に記載の量のt−DDM分子量調節剤を加え、反応器を閉じた。反応器内容物を所定の温度にした後、Fe(II)SO
4プレミックス溶液およびパラ−メンタンヒドロペルオキシド(Trigonox(登録商標)NT50)を加えることによって重合を開始した。転化率を重量測定で求めることで、重合の進行を監視した。表1に記載の転化率に到達した後、ジエチルヒドロキシルアミン水溶液を加えて重合を停止させた。蒸気蒸留によって、未転化のモノマーおよび他の揮発性成分を除去した。
【0141】
ムーニー粘度、そのMSR、ACN顔料、およびガラス転移温度によって、乾燥させたNBRゴム特性決定を行った。ターモノマーの含量は、
1H NMR分析によって求めた。得られた固体ゴムは、表2に示す性質を有した。
【0142】
【表2】
【0143】
II.ニトリルゴムターポリマーAの加硫物の製造(比較例V1および本発明の実施例V2〜V4)
加硫物V1〜V4を製造するために、以下に記載のようにニトリルゴムターポリマーAを使用した。加硫可能な混合物の成分は、100部のゴムを基準としており、表3、7、および11に示している。
【0144】
バンバリーミキサー中で混合物を製造した。この目的のため、それぞれの場合で、表3、7、および11に記載のゴムおよびすべての添加剤を120℃までの最高温度で合計4分間混合した。この目的のため、最初にゴムをミキサー中に投入し、1分後にすべてのさらなる添加剤を加え、さらに2分後に反転ステップを行った。合計で4分後、ゴムをミキサーから取り出した。このコンパウンドを指定の温度で加硫させた。
【0145】
得られた加硫物V1は、表4〜6に示す性質が得られ、加硫物V2〜V4は、表8〜10に示す性質が得られた。
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
【表8】
【0152】
【表9】
【0153】
【表10】
【0154】
このように架橋促進剤を使用することで、ゴム混合物の加硫に必要な架橋時間を短縮でき、驚くべきことに、同時に、150℃における長期圧縮永久歪みを改善できる。