特許第5808519号(P5808519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許58085192つの測定ユニットを有する表面測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808519
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】2つの測定ユニットを有する表面測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/55 20140101AFI20151021BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   G01N21/55
   G01N21/47 Z
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-232065(P2009-232065)
(22)【出願日】2009年10月6日
(65)【公開番号】特開2010-133934(P2010-133934A)
(43)【公開日】2010年6月17日
【審査請求日】2012年6月13日
(31)【優先権主張番号】10 2008 051 513.2
(32)【優先日】2008年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509278634
【氏名又は名称】ビック−ガードナー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BYK−Gardner GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】コンラート レクス
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−153802(JP,A)
【文献】 特開昭63−295945(JP,A)
【文献】 特開昭61−145436(JP,A)
【文献】 特開2007−033099(JP,A)
【文献】 特開2003−329586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00,21/01
G01N 21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の光学的特性を特定する装置であって、第1の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射する第1の放射装置と、前記材料に対して第1の受光角度で配置され、前記第1の放射装置により前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光する第1の放射線検出装置とを有する第1の測定装置を備え、前記第1の放射線検出装置は、前記第1の放射線検出装置に入射した前記放射線の強度に特有の第1の特徴信号を発し、
前記装置は、第2の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射する第2の放射装置と、前記材料に対して第2の受光角度で配置され、前記第2の放射装置により前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光する第2の放射線検出装置とを有する第2の測定装置を備え、
前記第2の放射線検出装置は、入射した前記放射線の局所的分解による評価を可能にし、入射した前記放射線の局所的分解による評価による信号であるとともに、前記第2の放射線検出装置へ到達した前記放射線の散乱成分に特有の信号である少なくとも1つの第2の特徴信号を発し、
前記装置は、屈折率の違いにより発生する、屈折率が異なる以外は同じ光学的印象を有する別の材料に関して前記第1の特徴信号の値の違いとして定義される歪みを考慮できるように、前記材料の屈折率に依存する前記第1の特徴信号および前記第2の特徴信号を考慮することによって一方の測定で他方の測定の結果を検証し、前記材料に特有の値を出力する処理手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の放射角度および前記第1の受光角度は、前記材料に対して伸びる平均垂線に対して実質的に鏡面反転とされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記材料は表面であることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記第1の測定装置および前記第2の測定装置の一部である放射線検出装置を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記第1の測定装置および前記第2の測定装置の一部である放射装置を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の放射線検出装置の上流に絞りユニットが配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、いくつかの異なる要素を特定して前記第2の特徴信号を分析する評価ユニットを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記第1の特徴信号および前記第2の特徴信号を考慮して前記材料の屈折率に特有の値を発する処理手段を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の放射装置および前記第2の放射装置は、前記材料の同じ領域に前記放射線を照射することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記第1の測定装置および前記第2の測定装置に異なる時点で測定を行わせる制御ユニットを備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記第1の放射装置、前記第2の放射装置、前記第1の放射線検出装置および前記第2の放射線検出装置がともに内部に配置される筐体を備え、前記筐体は、前記第1の放射装置および前記第2の放射装置が前記材料に照射を行う開口を1つのみ有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
材料の光学的特性を特定する方法であって、第1の測定装置は、第1の放射装置を用いて第1の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射し、前記材料に対して第1の受光角度で配置された第1の放射線検出装置を用いて、前記第1の放射装置より前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光し、前記第1の放射線検出装置は、前記第1の放射線検出装置に入射した前記放射線の強度に特有の第1の特徴信号を発し、
第2の測定装置は、第2の放射装置を用いて第2の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射し、前記材料に対して第2の受光角度で配置された第2の放射線検出装置を用いて、前記第2の放射装置により前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光し、前記第2の放射線検出装置は、入射した前記放射線の局所的分解による評価を可能にし、入射した前記放射線の局所的分解による評価による信号であるとともに、前記第2の放射線検出装置へ到達した前記放射線の散乱成分に特有の信号である少なくとも1つの第2の特徴信号を発し、
屈折率の違いにより発生する、屈折率が異なる以外は同じ光学的印象を有する別の材料に関して前記第1の特徴信号の値の違いとして定義される歪みを考慮できるように、前記材料の屈折率に依存する前記第1の特徴信号および前記第2の特徴信号を考慮することによって一方の測定で他方の測定の結果を検証し、前記材料に特有の少なくとも1つの値が出力されることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記第1の測定装置による測定および前記第2の測定装置による測定が異なる時点で行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の測定装置による測定および前記第2の測定装置による測定が前記材料の実質的に同じ領域に対して行われることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の放射線検出装置に入射した放射線の局所的分解による評価において、少なくとも2つの検出器領域が少なくとも1つの方法により評価され、所定の比において互いに関連して測定値を求めるのに用いられることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記出力される少なくとも1つの値は、前記材料の光学的印象を示す請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記処理手段によって出力される値は、前記材料の光学的印象を示す請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の光学的な特性、特に材料の光学的な表面特性を特定する装置に関する。本発明に係る装置および本発明に係る方法について、特に車両の塗料被膜の表面特性を特定する装置を参照して説明する。ただし、家具など他の表面に本発明を用いてもよい。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、表面特性を特定するさまざまな装置や測定方法が知られている。公知の測定方法のひとつによれば、たとえば絞りなどある特定の物体を、表面を介して検出器に投影する。ここで検出角度は放射角度に対応することが好ましい。好ましくはカメラを用いて記録された画像から、対象となる表面の画像の明瞭性(無光沢性)などの性質に関する結論を導くことができる。
【0003】
別の測定方法によれば、評価対象となる表面を介して照明絞りを検出器に投影し、反射された放射線をある特定の角度、好ましくは反射角度で受光することができる。このために、特に絞りが用いられ、放射および受光強度の比に基づいて表面の性質を評価することができる。このように、この方法によれば検出器側に絞りが用いられる。この原理は、光沢測定技術としても知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006032404A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし後者の測定方法は、対象となる表面の湾曲にも依存する。表面の湾曲に対しては、前者の測定方法の方がより影響を受けない。
【0006】
上述の測定方法は、ユーザが知覚する光学的印象をできるだけ客観的に検出することを目的として用いられる。ここで、人間の目は主観的にしか光学的な違いを知覚できず、したがって客観的な測定装置および測定方法が求められている点に留意すべきである。しかし上述の第2の方法は、特に屈折率などの表面の物性にも依存する。
【0007】
屈折率が異なる表面では、屈折率の違いだけで測定結果が異なってくる。しかし、光学的に全く同じ印象を与える2つの表面であっても、測定結果が異なることがある。前者の測定方法は、少なくともある特定の評価方法によれば屈折率には依存しないとされるが、画像を受光するのに十分な光が表面から反射または散乱される必要がある。これは、特に艶消し面の場合には非常に困難である。
【0008】
したがって本発明の目的は、検査対象となる表面をより客観的に評価できる光学的特性の特定装置および方法を提供することにある。本発明によれば、これは独立請求項の主題により達成される。有利な実施形態やさらなる改良は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
材料、特に表面の光学的特性を特定する本発明に係る装置は、第1の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射する第1の放射装置と、前記材料に対して第1の受光角度で配置され、前記第1の放射装置により前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光する第1の放射線検出装置とを有する第1の測定装置を備える。同時に、前記第1の放射線検出装置は、前記第1の放射線検出装置に入射した前記放射線の強度に特有の第1の特徴信号を発する。
【0010】
本発明によれば、前記装置は、第2の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射する(第2の)放射装置と、前記材料に対して第2の受光角度で配置され、前記第2の放射装置により前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光する(第2の)放射線検出装置とを有する第2の測定装置を備え、前記第2の放射線検出装置は、入射した前記放射線の局所的分解による評価を可能にし、前記第2の放射線検出装置に当たる前記放射線に特有の少なくとも1つの第2の特徴信号を発する。
【0011】
このように本発明によれば、2つの測定方法を用いて対応する測定を行うことが提案され、それにより一方の測定で他方の測定の結果を検証することができ、その結果、たとえば、第1の測定方法のある特定の結果が異なるのは表面の屈折率の違いのみが原因であると判断することができる。これに関連して、以下に詳述するように、一方の測定装置の1つまたは複数の部材を他方の測定装置において用いてもよい。
【0012】
後方散乱された放射線は、特に反射された放射線である。したがって、第1の放射線検出装置は、強度値のみを出力することが好ましい。それゆえこの場合、必ずしも入射した放射線を局所的に分解した画像を受光する必要はなく、放射線検出器に入射した強度と出射強度とが比較される。この比に基づいて、上述したように表面の性質に関する結論が導かれる。
【0013】
一方、本発明に係る後者の測定方法では、測定装置に入射した放射線を局所的に分解した画像が発せられ、特にこの画像より表面に関する結論を導くことができる。より具体的には、表面を介して検出装置上に絞りを投影し、この画像を局所的に分解して調べることができる。このようにすることにより、表面の光学的特性に関する結論を導くことができる。
【0014】
別の有利な実施形態において、前記装置は、前記第1の特徴信号および前記第2の特徴信号を考慮して前記表面に特有の少なくとも1つの値を出力する処理装置を備える。ここで、ある特定の測定において、第1の信号または第2の信号のみを考慮して特徴値を発してもよい。一方、たとえば上述したように、屈折率の違いにより発生する歪みを考慮するため、ある特定の測定において、両信号を考慮して特徴値を出力してもよい。
【0015】
また逆に、この屈折率の違いにより、ある特定の表面で光学的印象が異なることもある。この場合、特に始めに説明した(本発明の文脈では最初に述べた)第2の測定方法では、上述したように屈折率に依存しないためうまくいかない。しかしこの場合、それぞれ第2の測定方法を用いて実際の結果の値を得ることができる。
【0016】
別の有利な実施形態において、前記第1の放射角度および前記第1の受光角度は、前記材料の1つの平均垂線に対して実質的に鏡面反転とされる。これは、第1の測定装置が実質的に反射光を受光することを意味する。材料が表面であり、したがって放射線検出装置が少なくとも反射された放射線を受光することが有利である。また、第2の放射角度および第2の受光角度も互いに実質的に鏡面反転とされることが好ましい。
【0017】
別の有利な実施形態において、前記装置は、前記両測定装置の一部である放射線検出装置を備える。この場合、2つの放射装置を設けることが好ましく、同じ角度で材料に照射を行うことが好ましい。したがって放射線検出装置は、両放射装置に対して表面より後方散乱された光を受光する。
【0018】
別の有利な実施形態において、前記装置は、前記両測定装置の一部である放射装置を備える。この実施形態は、両測定プロセスにおいて検査対象となる表面の全く同じ領域に照射が可能であるという利点を有する。この場合、2つの放射線検出装置を設け、表面より後方散乱された光を異なる角度で受光することが好ましい。
【0019】
別の好ましい実施形態では、放射装置と放射線検出装置がともに両測定装置に含まれる。この場合、一方の測定方法により、ソフトウェア絞りを生成して光全体を検出し、他方の測定方法により、画像評価を用いて絞り画像を局所的に分解して分析することができる。対応するCCDチップの検出領域は測定領域に比べてかなり大きいため、傾斜または湾曲した表面の場合でもカメラチップ上で画像を検出することができ、CCDチップ上のベース領域から外れた領域において評価を行うことができる。
【0020】
このように、全体測定と局所分解測定との組み合わせは、本発明に係るすべての装置または方法に共通することが好ましい。
【0021】
別の有利な実施形態においては、前記第1の放射線検出装置の上流に絞りユニットが配置される。この絞りユニットを用いることで、表面に入射する光のうち、放射線検出装置上の区画された領域、すなわち絞りの内側に入る割合を設定することができる。この絞りユニットは、固定配置されることが好ましい。
【0022】
一方、この絞りはソフトウェアで実装してもよく、たとえばCCDチップ上のある特定の領域のみを評価に用いたり、ある特定数の画素のみを評価したりするように設定してもよい。このようにして、特に簡易な方法で異なる絞りを実装することができる。
【0023】
このように、湾曲が大きい場合に光の一部が放射線検出装置でなく絞りに当たることから、あるいは全空間方向に散乱されることから、表面のいかなる誤差や湾曲も特定することができる。表面が艶消しであるほど、全空間方向に散乱される入射光の割合は高くなる。
【0024】
別の有利な実施形態において、前記装置は、いくつかの異なる要素を特定して前記第2の特徴信号を分析する評価手段を備える。たとえば、ある特定の画像をフーリエ分析などにより分析してもよく、このために異なるフィルタを用いてもよい。たとえば、ある特定の表面においていくつかの測定値を取得してもよく、これらは検査対象となる表面の異なる空間領域または距離ごとにさらに細分化される。これらの各測定値に対して、それぞれの場合について標準偏差などの統計値を出力し、この細分化に基づいて表面を評価することができる。この方法は独国特許出願公開第102006032404A1号明細書に詳述されており、その内容全体が本出願の開示において参照により包含される。ここで上記装置は、いくつかの異なる要素、特に局所的なフィルタ要素を特定して第2の信号を分析する評価手段を備えることができる。
【0025】
それに加え、上記装置は、異なる角度で表面に照射を行う別の放射装置を備えてもよく、また必要に応じて、異なる角度で表面に対向配置されるいくつかの放射線検出装置を備えてもよい。ここで、特に表面で散乱された光についても検出または評価することができる。このようにして、特に色効果を測定することができる。
【0026】
別の有利な実施形態において、前記装置は、前記第1の特徴信号および前記第2の特徴信号を考慮して前記材料の屈折率に特有の値を出力する処理手段を備える。たとえば、ある特定の第1の信号に対応する屈折率を割り当てる表を作成またはベースとして用いてもよく、それぞれ第2の信号を割り当てに考慮し、たとえば、これは2つの異なる表面で変わらないと判定され、光学的印象は同じであるが屈折率は異なるという結論を導くことができる。
【0027】
より具体的には、たとえば2つの異なる表面を検出することができる。第2の信号が同じである場合、これら2つの表面は光学的に同じであるという結論を導くことができる。2つの第1の信号が互いに継続してずれる場合、屈折率が異なるという結論を導くことができる。このようにして、各表面の屈折率に関する結論をいくつかの測定に基づいて導くことができる。
【0028】
別の実施形態では、両測定装置が同じ放射装置および同じ放射線検出装置を用いることができる。ただしこのアプローチでは、使用する特定の測定方法により、局所分解受光器の場合には、異なる絞りまたは異なる位置に配置された絞りが使用または異なって設定される。
【0029】
前記第1の放射装置および前記第2の放射装置は、前記材料または表面の同じ領域に前記放射線を照射することが好ましい。これにより、2つの測定結果の正確な比較性を得ることができる。
【0030】
別の好ましい実施形態において、前記装置は、前記第1の測定装置および前記第2の測定装置に異なる時点で測定を行わせる制御ユニットを備える。ここで、第1および第2の測定装置により、たとえば2つの異なる測定値のうち一方を取得した直後に他方を取得してもよく、そのようにして測定結果の正確な比較性を得ることができる。
【0031】
また、検査対象となる表面に対して装置全体を移動可能とし、表面に対して装置が静止している間に2つの測定を連続して行ってもよい。別の有利な実施形態において、前記装置は、前記放射装置および前記放射線検出装置をともに収容する筐体を備え、この筐体は、前記両放射装置が前記材料に照射を行う開口を1つのみ有する。この実施形態では、外部から混入する光による測定結果の歪みを最小限にすることができる。
【0032】
別の有利な実施形態においては、両測定装置による測定が同一平面内で行われるように放射線検出装置が配置される。言い換えれば、第1の放射装置により表面に照射され放射線検出装置に戻ってきた光線の光路の面が、第2の放射装置より表面に当たり第2の放射線検出装置上に表面より後方散乱された光線が形成する光路の面と同一とされる。ただし、異なる平面で測定を行ってもよい。
【0033】
表面と放射線検出装置との間の光路内に、vλ関数に対応するフィルタを配置することが好ましい。
【0034】
さらに本発明は、材料の光学的特性を特定する方法に関し、第1の測定装置は、第1の放射装置を用いて第1の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射し、前記材料に対して第1の受光角度で配置された第1の放射線検出装置を用いて、前記第1の放射装置より前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部を受光する。この際、前記第1の放射線検出装置は、前記第1の放射線検出装置に入射した前記放射線の強度に特有で、好ましくは前記表面の撮像性質を示す第1の特徴信号を発する。
【0035】
本発明によれば、第2の測定装置は、第2の放射装置を用いて第2の特定の放射角度で前記材料に放射線を照射し、前記材料に対して第2の受光角度で配置された第2の放射線検出装置により、前記第1の放射装置により前記材料に照射され前記材料より後方散乱された前記放射線の少なくとも一部が受光され、第2の放射線検出装置は、入射した前記放射線の局所的分解による評価を可能にし、前記第2の放射線検出装置に入射した前記放射線に特有の少なくとも1つの第2の特徴信号を発する。
【0036】
ここで用いられる「前記放射線の局所的分解による観察」という用語は、強度値を全体の値として出力するのみならず、ある特定の領域を介して放射線を区分すること、または強度の異なる少なくとも2つの地点もしくは領域が区別可能であることを意味すると理解すべきである。これは、たとえばカメラのCCDチップを放射線検出装置として用いて局所的に分割された画像を出力することで行うことができる。このようにして、一次絞り(放射装置と表面との間の絞り)の画像の歪み、拡大、縮小、または傾斜を調べることができる。
【0037】
放射線は、可視光であることが好ましく、標準白色光であることが特に好ましい。ただし、波長の異なる光を出力する2つの放射装置を設けてもよく、その場合、たとえば一部同時であっても2つの測定が互いに影響を与えることはない。
【0038】
別の好ましい方法においては、前記第1の信号および前記第2の信号を考慮して前記材料に特有の少なくとも1つの値が出力される。
【0039】
前記第1の測定装置による測定および前記第2の測定装置による測定は、異なる時点で行われることが好ましい。このようにすることで、測定が互いに影響を与えたり干渉したりするのを避けることができる。このために、クロック制御の光源を用いたり、放射装置と放射線検出装置とを常に互いに同期して作動させたりしてもよい。
【0040】
別の有利な方法によれば、前記第1の測定装置による測定および前記第2の測定装置による測定が前記材料または表面の実質的に同じ領域に対して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
さらなる利点や実施形態は、以下の添付図面より明らかとなる。
図1図1は、第1の測定方法の概略図である。
図2a図2aは、第2の測定方法の概略図である。
図2b図2bは、第2の測定方法により得られる画像の図である。
図3図3は、本発明に係る装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、第1の測定方法、より正確にはいわゆる光沢測定の概略図を示す。この場合、第1の放射装置4が配置され、これにより放射線が表面10に照射される。表面10より後方散乱された放射線S1は、第1の放射線検出装置6に投影される。この第1の放射線検出装置6は、入射強度の全体値を出力する。この第1の放射線検出装置の上流には、絞り9が配置されている。この測定方法は、実質的に平行光である光路を備え、光沢測定とすることが好ましい。それに応じて、参照番号32は絞り、参照番号34は絞り32の下流に配置されたレンズを示し、これらを併用して平行光が生成される。受光側にも、レンズ36が配置されている。
【0043】
ここで、絞りまたは絞り画像は、表面およびレンズを介して放射線検出装置6に投影され、絞り9を透過する放射線が全体として検出される。この光沢測定方法は、20°、60°、および85°で行うことが好ましい。絞りの開口は、対応する標準において設定される。
【0044】
当然ながら、表面の特性により、すべての光が放射線検出装置6に到達するわけではなく、放射線領域Kに示されるように、あらゆる方向に散乱される。このように、放射線検出装置に到達する放射線と表面10に入射する放射線との比に基づいて、表面10の性質または光沢に関する結論を導くことができる。上述のように、絞り9はソフトウェア絞りとして実装してもよい。
【0045】
図2aは第2の測定方法を示す。ここで、放射装置14が配置され、これにより放射線S2が表面10または検査対象となる材料に照射される。この放射線S2は、表面10で反射され、放射線検出装置または画像受光装置16に到達する。参照番号38は、レンズを示す。
【0046】
参照番号8は絞りユニットを示し、ここでは第2の放射装置14の下流に配置されている。この絞りユニット8は、表面10を介して放射線検出装置16に投影される。表面に構造がある場合、表面10に照射された光の一部が正確に反射されないため、不鮮明な画像が受光される。
【0047】
放射線検出装置16の外側領域に到達した散乱成分と放射線検出装置16に到達した全放射線との比に基づいて、表面10の無光沢性の値を出力することができる。この比を図2bに示す。散乱成分D1は、外側の環状区域に入る成分であり、成分D2は、画像の中心に位置し、その領域の周囲では全く散乱されない、または散乱の度合いが低い成分である。
【0048】
このように、ここでの放射線検出装置は、放射線を局所的に分解し、少なくとも領域D1およびD2を区別することができる放射線検出装置である。ただし、この評価に画素輝度のヒストグラムを用いてもよい。
【0049】
このようにして得られる無光沢性の値は、表面10のDOI(Distinctness of Image:画像の明瞭性)を示す値に用いてもよい。ここで、表面の表面構造を特定する別の方法を用いることができ、上述のように、異なる波長帯の関数として構造を決定してもよい。その後、ここで示される無光沢性および近接領域における2つの波長帯の関数としてDOIが得られる。その詳細については、上述の独国特許出願公開第102006032404A1号明細書に説明されている。
【0050】
このDOI測定は、観察距離が異なると表面が異なって知覚される場合があるという認識に基づいている。このように、たとえばわずかなむらは、非常に近い距離でしか知覚されない場合がある。対照的に、たとえば比較的大きな波長で現れる構造は、観察する距離が近いと知覚されず、観察する距離が遠くなるとよく知覚される場合がある。異なる波長帯を考慮することで、このような異なる距離をシミュレートすることができる。このようなDOI測定は、カメラやCCDチップなどの局所分解検出装置を用いても行われる。
【0051】
一方、図1に示される方法は、上述のように、表面10の湾曲の影響を比較的受けやすい。対照的に、DOI測定に用いられる方法は、表面の湾曲の影響を比較的受けにくい。
【0052】
図1に示される測定方法において後方散乱される放射線の割合は、各材料の屈折率にも依存する。対照的に、図2に示される測定は屈折率には依存しない。
【0053】
さらに、水性または溶剤型塗料など、先行技術において知られる異なる塗料系では、屈折率も異なる場合があり、光学的に同等であっても図1に示した測定に影響を与える場合がある点を考慮すべきである。図2aにおいて、カメラまたはCCDチップの代わりに2つのセンサを設置し、一方のセンサをたとえば内側に円形に形成し、この第1のセンサを第2のセンサで環状に囲ってもよい。ただしこの場合、傾きがあると、絞りのトラッキングができなくなる。図2aに示される測定方法では、検査対象となる表面からの反射光の比較的大きな割合を調べる必要がある。
【0054】
図3は、本発明に係る装置1の概略図を示す。この装置は、一般的に2として識別される第1の測定装置と一般的に12として識別される第2の測定装置とが内部に配置される筐体20を備える。この筐体20は実質的に封止され、表面10を検査可能な開口22を1つのみ有する。
【0055】
第1の測定装置2は、ここでは第1の放射装置4と第1の放射線検出装置とを有する。第1の放射装置4と第1の放射線検出装置は、ここでは平均垂線Mに対して対称に配置される。すなわち、表面10に当たり表面10より反射された光は、放射線検出装置に到達する。
【0056】
参照番号14は、第2の測定装置12の一部である第2の放射装置を示す。第2の測定装置12は、さらに第2の放射線検出装置16を有し、ここでも第2の放射装置14と第2の放射線検出装置16が平均垂線Mに対して対称に配置される。ただし第2の放射線検出装置16は、第2の放射装置14に対して反射角度内に配置せず、それに対して外すこともできる。ここで、異なる角度で得られる測定結果を推測してもよい。より正確には、ここで評価のために絞りをトラッキングしてもよい。
【0057】
急峻な測定角度は第1の測定方法よりも第2の測定方法に適しているため、図3に示される配置では、平均垂線Mに対して第1の測定装置の内側に第2の測定装置12が配置される。
【0058】
ただし、各放射装置4、14および各放射線検出装置6、16は、各測定が互いに影響を与えないように配置されることが好ましい。すなわち、第1の放射装置からの光が第2の放射線検出装置16に到達せず、また第2の放射装置14からの光が第1の放射線検出装置に到達しないことが好ましい。
【0059】
参照番号24は、2つの放射線検出装置6、16から出力された信号または測定値を記憶し、その測定値に基づいて表面10の特徴測定値を出力する処理装置を示す。さらに装置は、異なる屈折率に特有の第1の信号値を記憶できる記憶装置26を備える。このように、第1および第2の放射線検出装置6、16からの間の比較に基づいて、各材料の屈折率に関する結論を導くことができる。
【0060】
制御装置28を用いることで、時間差を設けて互いに影響を与えないように2つの測定装置2、12により測定を行うことができる。
【0061】
さらに、一般的に1として識別される装置には、車体などの表面に対して装置を移動させるため、車輪などの移動要素を備えてもよい。またこのために、表面に対して装置が移動した距離を求める距離測定装置を設けてもよい。また、本発明に係る装置をロボットアームなどに配置し、検査対象となる表面上を移動させてもよい。
【0062】
また、2つの測定装置2、12により得られる測定値を距離測定装置より出力される距離値と関連付けてもよい。このように、第1の測定装置2および第2の測定装置12により求められた値を表面10上のある特定の位置に割り当てることができ、これにより、表面10に対して装置1を移動させる際の測定も容易となる。たとえば、表面10に対する装置1のある特定の位置、たとえば互いに等間隔の位置から測定を開始することができる。
【0063】
それに加え、2つの測定装置2、12は、特に各光路上に配置されるレンズなどの光学要素をさらに備えてもよい。参照番号8は、第2の測定装置の一部である絞りユニットを示す。この絞りユニット8は、開口を調節可能としてもよい。参照番号9は、第1の測定装置の一部である別の絞りユニットを示す。原理的に、両測定装置2、12は共通の放射装置および/または共通の放射線検出装置を使用してもよい。これに関連して、測定方法により絞り8の位置を変えることが好ましい。絞り9がソフトウェアで実装される絞りである場合、図2で説明した測定方法において容易に「除去」することができる。
【0064】
本出願書類において開示された特徴は、先行技術に対して単独または組み合わせで新規である限りにおいて、そのすべてが本発明に必須のものとして請求される。
【符号の説明】
【0065】
1 装置
2 第1の測定装置
4 第1の放射装置
6 第1の放射線検出装置
8 絞りユニット
9 絞りユニット
10 表面
14 第2の放射装置
16 第2の放射線検出装置
20 筐体
22 筐体の開口
24 処理手段
26 記憶装置
28 制御ユニット
32 絞りユニット
34 レンズ
36、38 レンズ
S1、S2 放射線、光路
D1、D2 距離
K 放射線領域
M 平均垂線
図1
図2a
図2b
図3