特許第5808553号(P5808553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808553
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】マットレスとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   A47C27/15 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-60075(P2011-60075)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-192116(P2012-192116A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】501318556
【氏名又は名称】株式会社イノアックリビング
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】一尾 利通
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−031512(JP,U)
【文献】 特開2008−179716(JP,A)
【文献】 特開2006−341145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー材に芯材が収納されたマットレスにおいて、
前記カバー材は収納部を有し、
前記芯材は、接合剤の付着した除膜されていない六面体形状の弾性多孔体の複数が前記六面体形状の弾性多孔体間に隙間を有する不規則な配置位置で圧縮された状態で前記接合剤により接着しているものからなり、
前記カバー材の収納部に前記芯材が収納されたことを特徴とするマットレス。
【請求項2】
前記カバー材は、長手方向を三つに分割した収納部を有し、前記収納部間が折り曲げ可能部とされ、
前記カバー材の各収納部にそれぞれ前記芯材が収納され、前記折り曲げ可能部で折り畳み可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記弾性多孔体がポリウレタン発泡体またはポリオレフィン発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記芯材の通気性が50〜180L/min.であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のマットレス。
【請求項5】
カバー材に芯材が収納されたマットレスの製造方法において、
除膜されていない弾性多孔体を六面体形状に裁断する裁断工程と、
前記六面体形状の弾性多孔体の複数と接合剤を混合して前記六面体形状の弾性多孔体の表面に接合剤を付着させる接合剤付着工程と、
前記接合剤が付着した六面体形状の弾性多孔体の複数を金型に投入する金型投入工程と、前記金型へ投入された前記接合剤が付着した六面体形状の弾性多孔体の複数を圧縮し加熱することにより、前記接合剤を硬化させ、前記六面体形状の弾性多孔体の複数が圧縮された状態で、かつ前記六面体形状の弾性多孔体間に隙間を有するように接着してなる芯材を形成する圧縮・加熱工程と、
収納部を有する前記カバー材の前記収納部に、前記圧縮・加熱工程で得られた芯材を収納する芯材収納工程とを含むことを特徴とするマットレスの製造方法。
【請求項6】
前記カバー材は、長手方向を三つに分割した収納部を有し、前記収納部間が折り曲げ可能部とされ、
前記芯材収納工程で、前記カバー材の各収納部にそれぞれ前記芯材を収納し、前記折り曲げ可能部で折り畳み可能とすることを特徴とする請求項5に記載のマットレスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六面体形状の弾性多孔体の複数を接合剤で接着した芯材をカバー材に収納したマットレスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットレスとして、袋状のカバー材にクッション材を収納して形成した3つのボックス体を折り畳み自在に接合したものがある(特許文献1)。しかし、従来の折り畳み式マットレスは、クッション材が板状のスポンジ材単独、あるいはスポンジ材の両面に不織布の層や羽毛等の層を設けた構成とされ、通気性に劣る問題があった。
【0003】
また、シート状基材層とシート状表層との間に、反発弾性率が50〜80%の範囲にある多数の柱状体が所定間隔で立設された3層構造のマットレスがある(特許文献2)。しかし、そのマットレスは、シート状基材層とシート状表層の間に多数の柱状体を所定間隔で立設する作業が必要なため、作業に手間取り、マットレスのコストが嵩む問題がある。さらに、シート状基材層とシート状表層間に介在する多数の柱状体が所定間隔で立設されているため、柱状体間の部分で剛性が低くなり、マットレスを収納等する際に扱い難い場合がある。
【0004】
また、軟質ポリウレタンフォームのチップ状粉砕物をバインダーで結合したものがある(特許文献3)。しかし、軟質ポリウレタンフォームのチップ状粉砕物をバインダーで結合したものは、チップ状粉砕物が楕円形や凹凸形状等の不規則な形状をしたものの混ざり合ったものからなり、しかもチップ状粉砕物の粒径が一般的に2〜5mm程度と小さいため、チップが密に結合し、通気性に劣る問題がある。
【0005】
また、通気性を高めるため、セル膜の無い三次元網状の弾性発泡体からなるチップをバインダーで結合したマットレスがある(特許文献4)。しかし、セル膜の無い三次元網状弾性発泡体は、セル膜が無いため、セル膜のあるものと比べてチップの復元性に劣り、マットレスの長期使用によってマットレスの厚みが薄くなって戻らないへたり(塑性変形)を生じやすい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−89676号公報
【特許文献2】特開2002−283994号公報
【特許文献3】特開平6−87170号公報
【特許文献4】特開2003−145631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、長期間使用してもへたりが少なく、かつ適度な通気性があり、しかも1枚でも十分な剛性を有するマットレス及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、カバー材に芯材が収納されたマットレスにおいて、前記カバー材は収納部を有し、前記芯材は、接合剤の付着した除膜されていない六面体形状の弾性多孔体の複数が前記六面体形状の弾性多孔体間に隙間を有する不規則な配置位置で圧縮された状態で前記接合剤により接着しているものからなり、前記カバー材の収納部に前記芯材が収納されたことを特徴とする。
【0010】
請求項の発明は、請求項において、前記カバー材は、長手方向を三つに分割した収納部を有し、前記収納部間が折り曲げ可能部とされ、前記カバー材の各収納部にそれぞれ前記芯材が収納され、前記折り曲げ可能部で折り畳み可能となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項の発明は、請求項1または2において、前記弾性多孔体がポリウレタン発泡体またはポリオレフィン発泡体であることを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項1からの何れか一項において、前記芯材の通気性が50〜180L/min.であることを特徴とする。
【0013】
請求項の発明は、カバー材に芯材が収納されたマットレスの製造方法において、除膜されていない弾性多孔体を六面体形状に裁断する裁断工程と、前記六面体形状の弾性多孔体の複数と接合剤を混合して前記六面体形状の弾性多孔体の表面に接合剤を付着させる接合剤付着工程と、前記接合剤が付着した六面体形状の弾性多孔体の複数を金型に投入する金型投入工程と、前記金型へ投入された前記接合剤が付着した六面体形状の弾性多孔体の複数を圧縮し加熱することにより、前記接合剤を硬化させ、前記六面体形状の弾性多孔体の複数が圧縮された状態で、かつ前記六面体形状の弾性多孔体間に隙間を有するように接着してなる芯材を形成する圧縮・加熱工程と、収納部を有する前記カバー材の前記収納部に、前記圧縮・加熱工程で得られた芯材を収納する芯材収納工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項の発明は、請求項において、前記カバー材は、長手方向を三つに分割した収納部を有し、前記収納部間が折り曲げ可能部とされ、前記芯材収納工程で、前記カバー材の各収納部にそれぞれ前記芯材を収納し、前記折り曲げ可能部で折り畳み可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、芯材は、六面体形状の弾性多孔体の複数が不規則に配置され、かつ圧縮された状態で接合剤により接着したものからなるため、セル膜の無い三次元網状の弾性発泡体を接着したものとは異なり、圧縮後の復元性が良好であり、マットレスの長期使用によってもマットレスのへたりが少ない。また、芯材は、弾性多孔体が所定間隔で立設された場合のような弾性体間の隙間が整然と並んだものとは異なり、六面体形状の弾性多孔体の複数が不規則に配置され、かつ圧縮された状態で接合剤により接着したものからなるため、弾性多孔体間で剛性の低下が少ないことから、芯材の剛性低下を生じにくく、適度な剛性を芯材に持たせることができる。さらに、六面体形状の弾性多孔体を所定の大きさとしたため、従来のチップと比べて少量の接合剤で成形が可能となる。
【0016】
請求項の発明によれば、六面体形状の弾性多孔体の複数が不規則に配置され、かつ圧縮された状態で接合剤により接着し、六角形状の弾性多孔体間には隙間を有するため、弾性多孔体間の隙間が連通した状態となり、前記連通した隙間によってマットレスの通気性が良好なものとなる。
【0017】
請求項の発明によれば、カバー材を、長手方向を三つに分割した収納部を有するものとし、前記収納部間が折り曲げ可能部とされているため、マットレスを折り畳むことができ、容易に収納できる。
【0018】
請求項の発明によれば、弾性多孔体がポリウレタン発泡体またはポリオレフィン発泡体からなるため、圧縮後の復元性が高く、マットレスをへたりにくくできる。
【0019】
請求項の発明によれば、芯材の通気性が50〜180L/min.であるため、マットレスの通気性を良好なものにできる。
【0020】
請求項の発明によれば、長期間使用してもへたりが少なく、かつ適度な通気性があり、しかも適度な剛性を有するマットレスを容易に製造することができる。
【0021】
請求項の発明によれば、長期間使用してもへたりが少なく、かつ適度な通気性があり、しかも折り畳むのに適した剛性を有するマットレスを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るマットレスを一部切り欠いて示す斜視図である。
図2図1のマットレスを折り畳んだ状態の斜視図である。
図3図1に示したマットレスの芯材の一部を示す拡大断面図である。
図4】弾性多孔体を六面体形状に裁断する装置の一例の概略図である。
図5】第1カッターである一対のローラを示す横断面図である。
図6】第2カッターである一対のローラを示す縦断面図である。
図7】第1カッターによる弾性多孔体シートの切断過程を示す模式図である。
図8】接合剤が付着した六面体形状の弾性多孔体の断面図である。
図9】接合剤が付着した六面体形状の弾性多孔体を投入した金型の一例の断面図である。
図10】圧縮・加熱工程時の金型の一例の断面図及び得られた芯材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示す本発明の一実施形態に係るマットレス10は、カバー材11と、前記カバー材11に収納された芯材31とよりなり、折り畳み可能なものである。
前記カバー材11は、布材等からなり、長さ方向を三分割した三つの収納部13、14、15を有する。前記収納部13、14、15は、後述する長方形板状の芯材31を収納可能な袋状に縫製されたものであり、側面にはファスナー等の開閉手段で開閉可能とされた芯材収納用口17、18、19が形成されている。前記芯材収納用口17、18、19からそれぞれの収納部13、14、15に前記芯材31が収納される。また、隣り合う一方の収納部13と14は、互いに隣接する部分の上側が縫合等で連結され、前記連結部分が収納部13、14間の折り曲げ可能部21となっている。また隣り合う他方の収納部14と15は、互いに隣接する部分の下側が縫合等で連結され、前記連結部分が収納部14、15間の折り曲げ可能部22となっている。図2に前記マットレス10を折り曲げ可能部21、22で折り曲げて折り畳んだ状態を示す。
【0024】
前記収納部13、14、15に収納される芯材31は、図3に示すように、六面体形状の弾性多孔体33の複数が不規則に配置され、かつ圧縮された状態で弾性多孔体33の表面の接合剤34により接着した長方形の板状体からなる。前記六面体形状の弾性多孔体33を構成する材質としては、合成樹脂発泡体を挙げることができ、特にポリウレタン発泡体またはポリオレフィン発泡体が好適である。前記六面体形状の弾性多孔体33は、除膜処理の施されていない弾性多孔体で構成される。前記六面体形状の弾性多孔体33の物性は、密度25〜40kg/m(JIS K7222準拠)のものが好ましい。なお、除膜処理は、弾性多孔体におけるセル(気泡)膜を除去するための処理であり、爆発処理や溶解処理などがある。また、前記六面体形状としては、直方体あるいは立方体等を挙げることができる。六面体形状の大きさとしては、一辺の長さが6〜25mmのものが好ましい。
【0025】
前記接合剤34としては、一液性又は二液性のウレタン系接合剤が好適であり、中でも湿気等の水分で硬化する一液性タイプのウレタン系バインダーは特に好ましいものである。湿気等の水分で硬化する一液性タイプのウレタン系バインダーの例として、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)もしくはそのプレポリマー(MDIプレポリマー)を挙げることができる。前記接合剤34は、前記弾性多孔体33が除膜処理の施されていいないものであるため、主に弾性多孔体33の表面に付着しており、弾性多孔体33のセル内まで含浸硬化して弾性多孔体が硬くなるのを抑えることができる。
【0026】
前記芯材31は、前記六面体形状の弾性多孔体33が不規則に配置されて接合しているため、隣接する六面体形状の弾性多孔体33同士における近接する面が互いに異なる方向に傾斜等し、六面体形状の弾性多孔体33間に隙間36を連通して有する。前記隙間36によって芯材31の通気性が良好となる。前記芯材31の通気性は、50〜180L/min.(JIS K6400−7 A法準拠)が好ましい。また、前記各芯材31の外形サイズは適宜決定されるが、例として厚み30〜120mm、マットレスの幅方向に相当する辺の寸法800〜1400mm、マットレスの長さ方向に相当する辺の寸法(三つの芯材の合計寸法)1970〜2010mmを挙げる。マットレスを三つ折りすることで上記長さ方向に相当する辺の寸法は、ほぼ1/3になる。
【0027】
前記マットレス10の製造方法の実施形態について説明する。前記マットレス10の製造方法は、裁断工程、接合剤付着工程、金型投入工程、圧縮・加熱工程、芯材収納工程からなる。
【0028】
裁断工程では、前記ポリウレタン発泡体またはポリオレフィン発泡体等からなる弾性多孔体を裁断して前記六面体形状の弾性多孔体33を形成する。裁断方法は、特に限定されず、例えば格子状のプレス型で所定厚みの弾性多孔体シートを打ち抜く方法や、図4に示す裁断装置10を用いる方法を挙げることができる。
【0029】
図4に示す裁断装置40は、日本国特許公報、特開2006−341145号公報で示されているものであり、第1カッター41、第2カッター42及び集積装置43等から構成されている。
前記第1カッター41は、溝ローラ44及び第1刃付きローラ45を備える。図5は、前記溝ローラ44及び第1刃付きローラ45の回転軸を含む平面における溝ローラ44及び第1刃付きローラ45の断面を示す。前記溝ローラ44の外周面44aには、例えば10mmの幅を有する複数の周溝46が例えば8mmの等間隔に設けられている。前記第1刃付きローラ45の外周面には、前記溝ローラ44の各周溝46に対応する複数の刃部47が設けられている。前記刃部47の厚さは、例えば1mmとされている。前記溝ローラ44及び第1刃付きローラ45の両回転軸が含まれる平面内においては、各刃部47の先端部が各周溝46内に配置された状態となる。
【0030】
前記溝ローラ44及び第1刃付きローラ45が回転駆動されるとき、前記第1刃付きローラ45における各刃部47の刃先の周速は、前記溝ローラ44における外周面44aの周速よりも40〜60%高くなっている。これは、前記溝ローラ44の外径(外周面44a)と、前記第1刃付きローラ45の外径(刃先)とが等しくされるとともに、図示しない駆動装置により、前記第1刃付きローラ45の回転数が前記溝ローラ44の回転数よりも40〜60%高くなるように前記溝ローラ44及び第1刃付きローラ45が回転駆動されることによる。あるいは、前記第1刃付きローラ45の外径が前記溝ローラ44の外径よりも40〜60%大きくされるとともに、前記第1刃付きローラ45及び前記溝ローラ44の同一回転数で駆動されることによる。
【0031】
前記第1カッター41には、前記溝ローラ44側に配置されたシートロールRから弾性多孔体シートSが上方から連続的に供給される。この弾性多孔体シートSには、シートロールRと第1カッター41との間に設けられたテンショナー48によりその供給方向に張力が付与される。張力が付与された弾性多孔体シートSは、前記溝ローラ44に圧接された状態で前記溝ローラ44と第1刃付きローラ45との間に供給されるようになっている。前記テンショナー48は張力付与手段である。
【0032】
図4に示すように、前記第2カッター42は、平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51を備えている。前記平滑ローラ50は、前記溝ローラ44の下方に配置され、前記第2刃付きローラ51は、前記第1刃付きローラ45の下方に配置されている。前記第1カッター41の前記溝ローラ44及び第1刃付きローラ45の各回転軸と、前記第2カッター42の前記平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51の各回転軸とは全て互いに平行である。
【0033】
図6は、両回転軸に直交する平面での前記平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51の断面を示す。前記平滑ローラ50の外周面50aは、平滑面とされている。一方、前記第2刃付きローラ51の外周面には、軸線方向に延びる複数の刃部52が等角度間隔に設けられている。前記平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51の回転軸が含まれる平面内においては、前記第2刃付きローラ51の各刃部52の刃先が、前記平滑ローラ50の外周面に対して僅かに食い込むようになっている。
【0034】
前記平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51が回転駆動されるとき、前記第2刃付きローラ51における各刃部52の刃先の周速は、前記平滑ローラ50の外周面50aの周速よりも3〜45%高くなっている。これは、前記平滑ローラ50の外径と第2刃付きローラ51の外径(刃先)とが等しくされるとともに、駆動装置により、前記第2刃付きローラ51の回転数が前記溝ローラ44の回転数よりも3〜45%高くなるように前記平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51が回転駆動されることによる。あるいは、前記第2刃付きローラ51の外径が前記溝ローラ44の外径よりも3〜45%大きくされるとともに、前記平滑ローラ50及び第2刃付きローラ51が同一回転数で駆動されることによる。さらに、前記平滑ローラ50の周速は、前記溝ローラ44の周速と等しくされている。
【0035】
図4に示すように、集積手段としての前記集積装置43は、前記第2カッター42の下方に設けられた吸引用のダクト60、このダクト60の下流側が接続された吸引容器61、この吸引容器61の内部に設けられたかご62、このかご62内に配置された袋体63、吸引容器から空気を外部に排出するポンプ64等により構成されている。前記かご62は、例えば円形の孔が多数設けられたパンチングメタルにより形成されている。前記袋体63は、例えば網状とされた合成樹脂繊維からなり、高い通気性を有している。前記集積装置43は、ポンプ64によってかご62及び袋体63を通じてダクト60側の空気を吸い込み、前記第2カッター42から送り出された六面体形状の弾性多孔体33を前記吸引容器61内に吸い込む。前記集積装置43は、前記吸引容器61内に吸い込んだ六面体形状の弾性多孔体33を、前記袋体63内に集める。
【0036】
前記裁断装置40を用いる裁断工程について説明する。裁断工程は第1裁断工程と第2裁断工程からなる。
第1裁断工程について説明する。前記第1カッター41には、前記シートロールRから前記弾性多孔体シートSが連続的に供給される。前記弾性多孔体シートSの供給速度は、例えば8〜46m/min.である。前記第1カッター41に供給される弾性多孔体シートSには、前記テンショナー48によりその供給方向に張力が付与される。前記第1カッター41に供給された弾性多孔体シートSは、前記溝ローラ44及び第1刃付きローラ45の回転に伴い、図7(7A)に示すように、前記溝ローラ44の外周面44aに押し付けられる。前記第1刃付きローラ45の周速が前記溝ローラ44の周速よりも高いことから、図7(7B)に示すように、前記第1刃付きローラ45の各刃部47の刃先により弾性多孔体シートSの表面が引き切りされる。このとき、弾性多孔体シートSが前記溝ローラ44の外周面44aに張力を持った状態で密着されていることから、前記第1刃付きローラ45の各刃部47に対する弾性多孔体シートSの表面部分の逃げが抑制される。このため、図7(7C)に示すように、前記第1刃付きローラ45の各刃部47により、弾性多孔体シートSが円滑に切断される。これにより、前記第1カッター41により、弾性多孔体シートSはその供給方向に沿って切断され、複数の紐状発泡体Bとなる。
【0037】
次に、第2裁断工程について説明する。前記第1カッター41により生成された複数の紐状発泡体Bは、前記第2カッター42に連続的に供給される。前記第2カッター42に供給された紐状発泡体Bは、図6に示すように、前記平滑ローラ50の外周面50aと第2刃付きローラ51の各刃部52の刃先との間に挟まれていく。前記第2刃付きローラ51の各刃部52の周速が前記平滑ローラ50の外周面50aの周速よりも高いことから、各紐状発泡体Bにおける前記第2刃付きローラ51側の表面に張力が付与される。このため、前記第2刃付きローラ51の各刃部52の刃先に対する各紐状発泡体Bの表面部分の逃げが抑制される。このため、前記第2刃付きローラ51の各刃部52により、各紐状発泡体Bが円滑に切断される。これにより、各紐状発泡体Bは、その長さ方向において順次切断され、六面体形状の弾性多孔体33となる。このとき、各紐状発泡体Bがその長さ方向において切断される長さは、各紐状発泡体Bの幅とほぼ等しくなる。このため、六面体形状の弾性多孔体33はほぼ立方体状となる。これは、前記第2刃付きローラ51の各刃部52の間隔が、前記第1刃付きローラ45の各刃部47の間隔に基づいて設定されていることによる。そして、生成された六面体形状の弾性体発泡体33は、集積装置43により吸引され、ダクト60を通じてかご62内の袋体63に集められる。
【0038】
接合剤付着工程では、前記裁断工程で得られた六面体形状の弾性多孔体33と前記接合剤を所要割合で配合し、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等の混合装置で混練し、図8に示すように前記六面体形状の弾性多孔体33の表面に接合剤34を付着させた接合剤付着弾性多孔体35を得る。
【0039】
金型投入工程では、前記接合剤付着工程で得られた接合剤付着弾性多孔体35を計量して、図9に示す金型70内に投入する。前記金型70内に自然落下した接合剤付着弾性多孔体35は、不規則に配置されて堆積する。図示の金型70は、下面に水蒸気導入口73の形成された枠体74と、該枠体74内に配置固定された底板71と、該底板71に対して昇降可能とされた押型75(図10に示す)とよりなり、前記底板71と押型75にそれぞれ水蒸気通路72、77が上下方向に貫通形成されている。
【0040】
圧縮・加熱工程では、図10に示すように、前記押型75をプレス装置76により下降させて、前記底板71との間で接合剤付着弾性多孔体35を所要量圧縮する。また、前記圧縮時には、前記金型70における下面の水蒸気導入口73を介して、外部の水蒸気供給装置(図示せず)から水蒸気Vpを当該金型70内に供給する。このように供給された水蒸気Vpは、前記底板71の水蒸気通路72を通って底板71と押型75間に進入し、前記底板71と押型75間の接合剤付着弾性多孔体35間を通る際に、前記接合剤付着弾性多孔体35を加熱して接合剤を反応硬化させ、六面体形状の弾性多孔体33同士を接着させる。そして、前記水蒸気Vpは押型75の水蒸気通路77を経て外部へ放出される。前記六面体形状の弾性多孔体33同士の接着によって底板71と押型75間に、板状に賦形された前記芯材31が形成される。その後、前記金型70を開放して前記芯材31を取り出す。なお、前記金型70の形状及び大きさによっては、取り出した芯材を所定寸法に裁断することが行われる。
【0041】
前記圧縮・加熱工程において、圧縮の程度、六面体形状の弾性多孔体33の密度、六面体形状の弾性多孔体33における一辺の長さを所定の範囲とすることにより、得られる芯材31の通気性及び剛性を所定範囲のものとすることができる。例えば、前記圧縮の程度を40〜60%、六面体形状の弾性多孔体33の密度を25〜40kg/m(JIS K7222準拠)、六面体形状の弾性多孔体33における一辺の長さを6〜23mmとすることにより、得られる芯材の通気性を50〜180L/min.(JIS K6400−7A法準拠)とすることができる。また、加熱は前記接合剤の硬化速度を速めるために行われ、湿気等の水分で硬化する接合剤にあっては、水蒸気による加熱が好ましい。
【0042】
芯材収納工程では、前記圧縮・加熱工程で得られた芯材31を、図1に示した前記カバー材11の三つの収納部13、14、15に側面の芯材収納用口17、18、19から収納し、図1に示した記折り畳み可能なマットレス10を得る。
【実施例】
【0043】
弾性多孔体として除膜処理の施されていない軟質ポリウレタン発泡体((株)イノアックコーポレーション製、密度30kg/m、硬度117N、通気度38L/min.)を、図4に示した裁断装置40を用いて一辺の長さ6〜10mmの略立方体からなる六面体形状に裁断した。接合剤として、湿気等の水分で硬化する一液性熱硬化型のポリウレタン(ポリウレタンMDIプレポリマー)を用い、この接合剤を六面体形状の弾性多孔体100重量%に対して110重量%になるようにミキサー(黒木工業社製)により混合し、接合剤付着弾性多孔体を形成した。この接合剤付着弾性多孔体を、金型内の平面寸法が幅1100×長さ2100mmの長方形をした図9の構造の金型内に90kg投入し、自然落下により200mmの厚みに堆積させた。次に図10に示すように押型を下降させて高さ100mmに圧縮し、金型内に水蒸気を供給し、前記水蒸気の供給と押型による圧縮を10分間続けて接合剤を硬化させて成形体を形成した。その後、成形体を金型から取り出し、常温下自然乾燥させた後、長さを700mmに3分割して三つの芯材を形成した。前記芯材の一つに対して通気性をエア・リークテスター(コスモ計器社製)により測定した。測定結果は、130L/min.(JIS K6400−7A法準拠)であった。また、前記芯材の剛性を判断するため、一つの芯材に対して硬さ測定試験を行った。その結果は、70N(JIS K6400−2準拠)であった。ちなみに、従来の粒径のポリウレタンチップを圧縮した芯材の通気度は、8〜18L/min.であり、除膜処理したポリウレタンチップを圧縮した芯材の通気度は、200〜231L/min.であった。
【0044】
前記芯材を収納可能な大きさの収納部が横に三つ並び、各収納部の側面がファスナーにより開閉可能な芯材収納用口となったテトロン・コットン布地(ポリエステル80%、綿20%)からなるカバー材を用意し、前記芯材を前記芯材収納用口から各収納部に収納し、実施例の折り畳み可能なマットレスを製造した。実施例のマットレスの重量は、7kgであり、軽量なものであった。また、実施例のマットレスは、折り畳み等の際に芯材が容易に撓んだりすることがなく、扱い易い適度な剛性を有していた。さらに、実施例のマットレスにおける長期使用によるへたりを調べるため、圧縮残留ひずみ測定試験を行った。その結果は、9.4%(JIS K6400−4準拠)であり、実施例のマットレスは長期使用によってもへたりにくいものであることを確認できた。
【符号の説明】
【0045】
10 マットレス
11 カバー材
13、14、15 収納部
21、22 折り曲げ可能部
31 芯材
33 六面体形状の弾性多孔体
34 接合剤
40 裁断装置
70 金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10