【実施例】
【0092】
以下、実施例
、参考例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(
参考例1)
縦10cm×横10cm×厚さ1mmのソーダライムガラスを洗浄、乾燥した後、Mo単体から構成される膜状の裏面電極をDCスパッタリング法によりソーダライムガラス上に形成した。裏面電極の膜厚は1μmとした。
【0094】
なお、
参考例1において、「基板」とは、各工程における被蒸着体または被測定物を意味する。
【0095】
引き続き、第一のp型光吸収層の形成を真空蒸着法によりPhysical Vapor deposition(物理蒸着、以下PVDと呼ぶ)装置にて行った。なおPVD装置における各工程の成膜前に、あらかじめ各原料元素のフラックス比と得られる膜に含まれる組成の関係を測定しておくことで、膜組成の調整を行った。各元素のフラックスは各Kセルの温度を調整することにより適宜変更した。
参考例1の第一のp型光吸収層形成工程においては成膜直後のIb族/IIIb族組成比が1.01となるように各元素のフラックスを設定した。
【0096】
ソーダライムガラス上に形成された裏面電極をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8torrとした。
【0097】
その後、基板を540℃まで加熱し温度が安定した後に、Cu、In、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Cu、In、及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約2μmの厚さの層が形成された時点で、Cu及びInの各Kセルのシャッターを閉じた。その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第一のp型半導体層の成膜を終了した。
【0098】
第一のp型光吸収層が含む各元素の組成分析をエネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive Spectroscopy:EDX)法により行った。成膜直後における第一のp型光吸収層のCu/In組成比は1.01であった。
【0099】
第一のp型光吸収層の形成後、基板をシアン化カリウム水溶液(10wt%)に5分間浸漬し、第一のp型光吸収層に含まれる異相であるIb族−VIb族化合物の除去を行った。
【0100】
異相除去処理後の第一のp型光吸収層が含む各元素の組成分析をエネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X−Ray Spectroscopy:EDX)法により行った。異相除去処理後のp型光吸収層のCu/In組成比は0.98であった。
【0101】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層を第一のp型光吸収層上に形成した。以下、第二の光吸収層形成について説明する。
【0102】
基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8 torr とした。
【0103】
その後、基板を300℃まで加熱し温度が安定した後に、In、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、In、及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約20nmの厚さの層が形成された時点で、InのKセルのシャッターを閉じた。
【0104】
本工程では第一のp型光吸収層から膜表面方向に拡散するIb族元素と本蒸着工程による表面からのIIIb族元素およびVIb族元素の供給によりIb族、IIIb族、VIb族の化合物からなる第二の光吸収層を形成した。
【0105】
その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第二の光吸収層の成膜を終了した。
【0106】
第二の光吸収層が含む各元素の組成分析をオージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy:AES)法により行った。第二の光吸収層のCu/In組成比は0.35であった。
【0107】
第二の光吸収層の形成後、50nmの厚さのn型半導体層であるCdSバッファ層を第二の光吸収層上に化学溶液成長(Chemical Bath Deposition:CBD)法により形成した。
【0108】
n型半導体層の形成後、50nmの厚さのi−ZnO層(半絶縁層)をn型半導体層上に形成した。引き続き同一のチャンバー内において0.5μmの厚さのZnO:Al層(窓層)をi−ZnO層上に形成した。
【0109】
窓層形成後に、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンス測定を行った。測定に用いる励起光源には514.5nmの波長を持つArイオンレーザを用いるとともに、測定時にはクライオスタッドにより基板を10K(ケルビン)まで冷却した。励起光強度を1mW/cm
2から100mW/cm
2まで変化させフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性の測定を行った。
【0110】
10mW/cm
2測定時に得られたフォトルミネッセンススペクトルにおいて最も半値幅が狭い発光の半値幅は15meVであった。
【0111】
測定により得られたフォトルミネッセンス強度I
PLと励起光強度I
exkの関係を下式(2)で表したとき、kの値は1.03であった。
【数4】
【0112】
さらに、基板の一部を切断し、破断面から第一のp型光吸収層のカソードルミネッセンス測定を行った。測定はフォトルミネッセンス同様10K(ケルビン)において行った。測定により得られたカソードルミネッセンススペクトルにおいて最も半値幅が狭い発光の半値幅は15meVであった。
【0113】
窓層形成後に50nmの厚さのNi、およびその上の1μmの厚さのAlから構成される上部電極を、ZnO:Al層上に形成した。i−ZnO層、ZnO:Al層及び上部電極は、それぞれスパッタリング法により形成した。これにより、
参考例1の薄膜型太陽電池を得た。
【0114】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表1に示す。
【0115】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表2に示す。
【0116】
(比較例1)
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比が1.25になるようにフラックスを設定した。また第二の光吸収層は設けなかった。
【0117】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により比較例1の太陽電池を作製した。
【0118】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表1に示す。
【0119】
(比較例2)
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比が0.90となるようにフラックスを設定した。また異相除去処理を行わなかった。
【0120】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により比較例2の太陽電池を作製した。
【0121】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表1に示す。
【0122】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表2に示す。
【0123】
(実施例2〜
5、参考例6)
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比が表1に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0124】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により実施例2〜
5および参考例6の太陽電池を作製した。
【0125】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表1に示す。
【0126】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表2に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
(実施例7〜11、比較例3)
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表3に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0130】
第二の光吸収層成膜工程において、成膜温度を表4に示す値に設定した。
【0131】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により実施例7〜11および比較例3の太陽電池を作製した。
【0132】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表3に示す。
【0133】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表4に示す。
【0134】
(実施例12〜14、比較例4)
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表3に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0135】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層を第一のp型光吸収層上に形成した。
【0136】
基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8 torr とした。
【0137】
第二の光吸収層のIb族/IIIb族組成比が表4に示した値になるようにあらかじめ各元素のフラックスを設定した。
【0138】
その後、基板を表4に示す温度まで加熱し温度が安定した後に、Cu、In、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Cu、In、及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約20nmの厚さの層が形成された時点で、CuおよびInのKセルのシャッターを閉じた。
【0139】
その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第二の光吸収層の成膜を終了した。
【0140】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により実施例12〜14および比較例4の太陽電池を作製した。
【0141】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表3に示す。
【0142】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表4に示す。
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
(実施例15〜21)
第一のp型光吸収層として表5に示す材料を用いた。
【0146】
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表5に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0147】
第一のp型光吸収層が複数のIIIb族元素を含む場合、その組成が表5に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0148】
基板を540℃まで加熱した後に、表5に示す第一のp型光吸収層材料の元素のシャッターをそれぞれ開き、基板上に蒸着させた。
【0149】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により実施例15〜21の太陽電池を作製した。
【0150】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表5に示す。
【0151】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表6に示す。
【0152】
(比較例5〜11)
p型光吸収層として表5に示す材料を用いた。
【0153】
第二の光吸収層は設けなかった。
【0154】
以上の事項以外は実施例15〜21と同様の方法により比較例5〜11の太陽電池を作製した。
【0155】
p型光吸収層に用いた化合物、成膜直後におけるp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、p型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表5に示す。
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
(実施例22)
第一のp型光吸収層として表7に示す材料を用いた。
【0159】
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表7に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0160】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により実施例22の太陽電池を作製した。
【0161】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表7に示す。
【0162】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表8に示す。
【0163】
(実施例23)
第一のp型光吸収層として表7に示す材料を用いた。
【0164】
第一のp型光吸収層成膜工程において、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表7に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0165】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層をp型光吸収層上に形成した。
【0166】
基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8 torr とした。
【0167】
その後、基板を300℃まで加熱し温度が安定した後に、Ga、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Ga、及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約20nmの厚さの層が形成された時点で、GaのKセルのシャッターを閉じた。
【0168】
本工程では第一のp型光吸収層から膜表面方向に拡散するIb族元素と本蒸着工程による表面からのIIIb族元素およびVIb族元素の供給により第二の光吸収層を形成した。
【0169】
その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第二の光吸収層の成膜を終了した。
【0170】
以上の事項以外は
参考例1と同様の方法により実施例23の太陽電池を作製した。
【0171】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表7に示す。
【0172】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表8に示す。
【0173】
(実施例24)
第一のp型光吸収層として表7に示す材料を用いた。
【0174】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層をp型光吸収層上に形成した。
【0175】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8torr とした。
【0176】
その後、基板を300℃まで加熱し温度が安定した後に、Cu、In、及びSeの各Kセルのシャッターを開き、Cu、In、及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約20nmの厚さの層が形成された時点で、Cu、InのKセルのシャッターを閉じた。
【0177】
本工程では第一のp型光吸収層から膜表面方向に拡散するIb族元素と本蒸着工程による表面からのIIIb族元素およびVIb族元素の供給により第二の光吸収層を形成した。
【0178】
その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第二の光吸収層の成膜を終了した。
【0179】
以上の事項以外は実施例15と同様の方法により実施例24の太陽電池を作製した。
【0180】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表7に示す。
【0181】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表8に示す。
【0182】
(実施例25)
第一のp型光吸収層として表7に示す材料を用いた。
【0183】
以上の事項以外は実施例15と同様の方法により実施例25の太陽電池を作製した。
【0184】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、p型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表7に示す。
【0185】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表8に示す。
【0186】
(実施例26)
第一のp型光吸収層として表7に示す材料を用いた。表7に示す組成になるように各元素のフラックスを設定した。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表7に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0187】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層をp型光吸収層上に形成した。
【0188】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8torr とした。
【0189】
In、Gaの各フラックスの比を第一のp型光吸収層成膜工程と同じになるように各Kセルの温度を設定した。その後、基板を表8に示す温度まで加熱し温度が安定した後に、In、Ga、Seの各Kセルのシャッターを開き、In、Ga,及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約20nmの厚さの層が形成された時点で、InおよびGaのKセルのシャッターを閉じた。
その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第二の光吸収層の成膜を終了した。
【0190】
以上の事項以外は実施例15と同様の方法により実施例26の太陽電池を作製した。
【0191】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表7に示す。
【0192】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表8に示す。
【0193】
(実施例27)
第二の光吸収層形成工程におけるIn、Gaの各フラックスの比を、第二の光吸収層における組成比Ga/(In+Ga)が0.3になるように設定した。
【0194】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例27の太陽電池を作製した。
【0195】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表7に示す。
【0196】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表8に示す。
【0197】
【表7】
【0198】
【表8】
【0199】
(実施例28〜29)
第一のp型光吸収層として表9に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表9に示す値になるようにフラックスを設定した。複数のIIIb族元素の比が表9に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0200】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例28〜29の太陽電池を作製した。
【0201】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表9に示す。
【0202】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表10に示す。
【0203】
【表9】
【0204】
【表10】
【0205】
(
参考例30
、実施例31〜35、参考例36)
第一のp型光吸収層として表11に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表11に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0206】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層を第一のp型光吸収層上に形成した。
【0207】
基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8 torr とした。
【0208】
In、Gaの各フラックスの比を第一のp型光吸収層成膜工程と同じになるように各Kセルの温度を設定した。その後、基板を表12に示す温度まで加熱し温度が安定した後に、In、Ga、Seの各Kセルのシャッターを開き、In、Ga及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に表12に示す厚さの層が形成された時点で、In、GaのKセルのシャッターを閉じた。
その後基板を200℃まで冷却した後、SeのKセルのシャッターを閉じて、第二の光吸収層の成膜を終了した。
【0209】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により
参考例30
、実施例31〜35、および参考例36の太陽電池を作製した。
【0210】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表11に示す。
【0211】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表12に示す。
【0212】
【表11】
【0213】
【表12】
【0214】
(実施例37)
第一のp型光吸収層として表13に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表13に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0215】
第一のp型光吸収層の形成後、異相除去処理は行わず、第一のp型光吸収層の上に第二の光吸収層を形成した。
【0216】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例37の太陽電池を作製した。
【0217】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表13に示す。
【0218】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表14に示す。
【0219】
(実施例38)
第一のp型光吸収層として表13に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表13に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0220】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例38の太陽電池を作製した。
【0221】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表13に示す。
【0222】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表14に示す。
【0223】
(実施例39)
第一のp型光吸収層として表13に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表13に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0224】
第一のp型光吸収層成膜後、基板を急速加熱熱処理炉の中に設置した。フォーミングガス(H
295%、N
25%)を200sccmの流速で炉内に供給しながら加熱処理を行った。温度は400℃、昇温速度は400℃/min、熱処理時間は30sとした。熱処理後50℃/minの速度で50℃まで冷却し、基板を取り出した。この処理により、第一のp型光吸収層に含まれる異相であるIb族−VIb族化合物の除去を行った。
【0225】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例39の太陽電池を作製した。
【0226】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表13に示す。
【0227】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表14に示す。
【0228】
(実施例40)
第一のp型光吸収層として表13に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表13に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0229】
第一のp型光吸収層成膜後、基板を3電極セルを備えた電解槽内に設置した。Pt板をカウンター電極、飽和カロメル電極を基準電極、基板上に露出させたMo裏面電極を作用極とした。電解槽内に0.1MのH
2SO
4溶液(pH=1.2)を満たし、電位を−0.5Vから+0.5Vまで10mV/sのスキャンレートで変化させ電気化学エッチングを行った。この処理により、第一のp型光吸収層に含まれる異相であるIb族−VIb族化合物の除去を行った。
【0230】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例40の太陽電池を作製した。
【0231】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、p型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表13に示す。
【0232】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表14に示す。
【0233】
(実施例41)
第一のp型光吸収層として表13に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表13に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0234】
第一のp型光吸収層成膜後、基板はそのまま同一のPVD装置の真空チャンバーに設置したままにし、基板温度を300度まで下げた。In、Gaの各フラックスの比を第一のp型光吸収層成膜工程と同じになるように各Kセルの温度を設定した。その後、In、Ga、Seの各Kセルのシャッターを開き、In、Ga,及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により第一のp型光吸収層に存在する異相であるCuxSe相とInおよびGaを反応させ、異相を除去した。異相がなくなった時点で、InおよびGaのKセルのシャッターを閉じた。異相の存在のモニタリングはレーザ光による表面粗さ測定により行った。
【0235】
異相除去工程後、引き続きPVD装置において第二の光吸収層の成膜を行った。
【0236】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例41の太陽電池を作製した。
【0237】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、p型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表13に示す。
【0238】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表14に示す。
【0239】
【表13】
【0240】
【表14】
【0241】
(実施例42)
第一のp型光吸収層として表15に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表15に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0242】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例42の太陽電池を作製した。
【0243】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後の第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表15に示す。
【0244】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表16に示す。
【0245】
(実施例43)
第一のp型光吸収層として表15に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表15に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0246】
第一のp型光吸収層の形成後、基板をシアン化カリウム水溶液(10wt%)に5分間浸漬し、第一のp型光吸収層に含まれる異相であるIb族−VIb族化合物の除去を行った。
【0247】
その後第一のp型光吸収層が形成された基板をスパッタリング装置に設置し、スパッタリング法により第二の光吸収層の形成を行った。
【0248】
以下スパッタリング法による第二の光吸収層形成の詳細を説明する。
【0249】
スパッタリング装置内に基板を設置し、装置内を脱気した。到達圧力は1.0×10
−6 torrとした。脱気後、基板を300℃に加熱した。その後Arガスをチャンバー内に供給し続けながら、チャンバー内で(In
0.5Ga
0.5)
2Se
3から構成されるターゲットをスパッタし対向して設置された基板に成膜した。成膜中はチャンバー内の気圧が1PaとなるようにArガスの流量を設定した。p型光吸収層から膜表面方向に拡散するIb族元素と本スパッタリング工程による(In
0.5Ga
0.5)
2Se
3の供給により第二の光吸収層を形成した。第二の光吸収層の厚さが20nmになったところでスパッタリングを終了した。この工程により、第二の光吸収層を形成した。
【0250】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例43の太陽電池を作製した。
【0251】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表15に示す。
【0252】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表16に示す。
【0253】
(比較例12)
第一のp型光吸収層をスパッタリング法およびそれに引き続く熱処理により形成した。以下に詳細を示す。
【0254】
裏面電極が形成された基板をスパッタリング装置に設置し、スパッタリング法により前駆体層形成を行った。その後アニール炉に基板を設置し、加熱処理をすることにより第一のp型半導体層の形成を行った。以下スパッタリング法およびそれに引き続く熱処理による第一のp型半導体層形成の詳細を説明する。
【0255】
スパッタリング工程において、Arガスをチャンバー内に供給し続けながら、チャンバー内でCu−Ga合金(Cu50%Ga50at%)から構成されるターゲットをスパッタした後、Inメタルから構成されるターゲットをスパッタした。このスパッタリング工程により、Cu−Ga合金層、In層が順に積層する前駆体層を得た。なお、スパッタリング工程では、Cu−Ga層の厚さを670nm、In層の厚さを330nmとした。また、スパッタリング工程では、基板温度を200℃とし、チャンバー内の気圧が1PaとなるようにArガスの流量を設定した。
【0256】
スパッタリング工程後の熱処理工程では、550℃のH
2Se雰囲気中で前駆体層を1時間加熱することにより、前駆体層のセレン化を行い、厚さが2μmである第一のp型半導体層を形成した。
【0257】
異相除去処理後、第二の光吸収層は設けなかった。
【0258】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により比較例12の太陽電池を作製した。
【0259】
p型光吸収層に用いた化合物、成膜直後におけるp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、p型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表15に示す。
【0260】
(実施例44)
第一のp型光吸収層を比較例12と同様にスパッタリング法およびそれに引き続く熱処理により形成した。
【0261】
第二の光吸収層を実施例43と同様にスパッタリング法により形成した。
【0262】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例44の太陽電池を作製した。
【0263】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表15に示す。
【0264】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表16に示す。
【0265】
【表15】
【0266】
【表16】
【0267】
(実施例45〜49)
第一のp型光吸収層として表17に示す材料を用いた。p型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表17に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0268】
第一のp型光吸収層の形成後、基板をシアン化カリウム水溶液(10wt%)に5分間浸漬し、第一のp型光吸収層に含まれる異相であるIb族−VIb族化合物の除去を行った。
【0269】
第一のp型光吸収層の異相除去処理後、真空蒸着法により第二の光吸収層を第一のp型光吸収層上に形成した。
【0270】
基板をPVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内を脱気した。真空装置内の到達圧力は1.0×10
−8 torr とした。
【0271】
その後、基板を200℃まで加熱し温度が安定した後に、In、Ga及びSeの各Kセルのシャッターを開き、In、Ga及びSeを基板上に蒸着させた。この蒸着により基板上に約20nmの厚さの層が形成された時点で、In及びGaのKセルのシャッターを閉じた。Seは引き続き供給を続けた。
【0272】
その後チャンバー内で基板を表18に示す熱処理温度まで加熱し熱処理を行った。熱処理時間は2minとした。その後基板を200℃まで冷却した後にSeのKセルのシャッターを閉じて、第二の層の形成を終了した。
【0273】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例45〜49の太陽電池を作製した。
【0274】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表17に示す。
【0275】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表18に示す。
【0276】
(実施例50〜54)
第一のp型光吸収層として表17に示す材料を用いた。第一のp型光吸収層成膜工程においては、成膜直後におけるIb族/IIIb族組成比が表17に示す値になるようにフラックスを設定した。
【0277】
第一のp型光吸収層の形成後、基板をシアン化カリウム水溶液(10wt%)に5分間浸漬し、第一のp型光吸収層に含まれる異相であるIb族−VIb族化合物の除去を行った。
【0278】
その後第一のp型光吸収層が形成された基板をスパッタリング装置に設置し、スパッタリング法により第二の光吸収層の形成を行った。
【0279】
以下スパッタリング法による第二の光吸収層形成の詳細を説明する。
【0280】
スパッタリング装置内に基板を設置し、装置内を脱気した。到達圧力は1.0x10
−6 torrとした。脱気後、基板温度は室温(30℃)に保った。その後Arガスをチャンバー内に供給し続けながら、チャンバー内で(In
0.5Ga
0.5)
2Se
3から構成されるターゲットをスパッタし対向して設置された基板に成膜した。
【0281】
成膜終了後、基板を熱処理炉に移し熱処理を行った。熱処理工程では、H
2Se雰囲気中で表18に示す温度で基板を2min加熱することにより、厚さが20nmである第二の光吸収層を形成した。熱処理後基板を50℃まで冷却し取り出し第二の光吸収層形成工程を終了した。
【0282】
以上の事項以外は実施例26と同様の方法により実施例50〜54の太陽電池を作製した。
【0283】
第一のp型光吸収層に用いた化合物、成膜直後における第一のp型光吸収層のIb族/IIIb族組成比、異相除去処理後のIb族/IIIb族組成比、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルおよびカソードルミネッセンススペクトルにおける最も半値幅の狭い発光の半値幅の値、およびフォトルミネッセンス強度の励起光強度依存性測定におけるkの値、異相除去方法、を表17に示す。
【0284】
第二の光吸収層に用いた化合物、AES測定により得られた第二の光吸収層に含まれるIb族/IIIb族組成比、第二の光吸収層の膜厚、第二の光吸収層の製法および成膜温度を表18に示す。
【0285】
【表17】
【0286】
【表18】
【0287】
(薄膜型太陽電池の評価)
参考例1
、実施例2〜5、参考例6、実施例7〜29、参考例30、実施例31〜35、参考例36、実施例37〜54、および比較例1〜12の各太陽電池の特性を表19および表20に示す。
【0288】
第一の光吸収層と、第二の光吸収層と、を有し、前記第一の光吸収層は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層であり、前記第二の光吸収層は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、前記Ib族元素と前記IIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満であり、前記第一の光吸収層の光入射面側に設けられている
参考例1
、実施例2〜5、参考例6、実施例7〜29、参考例30、実施例31〜35、参考例36、および実施例37〜54の太陽電池の変換効率は、前記第一のp型光吸収層または第二の光吸収層を備えない比較例1〜12に比べ、大きいことが確認された。
【0289】
第一の光吸収層と、第二の光吸収層と、を有し、前記第一の光吸収層は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層であり、前記第二の光吸収層は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、前記Ib族元素と前記IIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満であり、前記第一の光吸収層の光入射面側に設けられている
参考例1
、実施例2〜5、および参考例6の太陽電池の開放電圧および変換効率は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含む第一のp型半導体層を備えるものの、第二の光吸収層を備えていない比較例1の太陽電池、およびIb族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、該Ib族元素と該IIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満である第二の光吸収層を前記第一のp型光吸収層上に備えるものの、第一のp型光吸収層のフォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が前記範囲1meV以上15meV以下の範囲外の40meVである比較例2の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0290】
第一の光吸収層と、第二の光吸収層と、を有し、前記第一の光吸収層は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Ib族元素/IIIb族元素比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である実施例2〜5、および実施例7〜
29、参考例30、実施例31〜35、参考例36、および実施例37〜54の太陽電池の開放電圧および変換効率は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層であるものの、Ib族元素/IIIb族元素比が1.00でない
参考例1および
参考例6に比べ大きいことが確認された。
【0291】
第一の光吸収層と、第二の光吸収層と、を有し、前記第一の光吸収層は、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Ib族元素/IIIb族元素比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である第一のp型光吸収層と、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Ib族元素とIIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満である第二の光吸収層を前記第一のp型光吸収層上に備える実施例7〜14の太陽電池の開放電圧および変換効率は、第二の層が含むIb族元素と該IIIb族元素の組成比が前記範囲外である比較例3〜4の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0292】
種々のIb族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含みIb族元素/IIIb族元素比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である第一のp型光吸収層と、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Ib族元素とIIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満である第二の光吸収層を前記第一のp型光吸収層上に備える実施例15〜21の太陽電池の開放電圧および変換効率は、それぞれ同一の組成、同一のフォトルミネッセンスまたはカソードルミネッセンススペクトルの発光半値幅を持つ第一のp型光吸収層を備えるものの、第二の光吸収層を持たない比較例5〜11の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0293】
種々のIb族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含みIb族元素/IIIb族元素比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である第一のp型光吸収層と、前記第一のp型光吸収層と同一のIb族元素、IIIb族元素を第二の光吸収層に用いた実施例22、25の太陽電池の開放電圧および変換効率は、それぞれ同一の組成、同一のフォトルミネッセンスまたはカソードルミネッセンススペクトルの発光半値幅を持つ第一のp型光吸収層を備えるものの前記第一のp型光吸収層と異なるIb族元素、またはIIIb族元素を第二の光吸収層に用いた実施例23、24の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0294】
Ib族元素/IIIb族元素比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である第一のp型光吸収層と、前記第一のp型光吸収層と同一のIb族元素、IIIb族元素を第二の光吸収層に用い、なおかつ複数のIIIb族元素の組成比を第一のp型光吸収層と同一にした第二の光吸収層を備える実施例26の太陽電池の開放電圧および変換効率は、第二の層に含まれる複数のIIIb族元素の組成比が、第一のp型光吸収層と異なる実施例27に比べ、大きいことが確認された。
【0295】
Cu、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、CuとIIIb族元素の組成比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である第一のp型光吸収層と、Cu、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Cuと該IIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満である第二の光吸収層を前記第一のp型光吸収層上に備える実施例28の太陽電池の変換効率は、光吸収層および第二の層に含まれるIb元素がCuでない実施例29の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0296】
Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Ib族元素とIIIb族元素の組成比が1.00であり、フォトルミネッセンススペクトルまたはカソードルミネセンススペクトルにおいて半値幅が1meV以上15 meV以下の発光ピークを含むp型半導体層である第一のp型光吸収層と、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含み、Ib族元素とIIIb族元素の組成比が0.1以上1.0未満である第二の光吸収層を前記第一のp型光吸収層上に備え、前記第二の光吸収層の膜厚が1nm以上100nm以下である実施例31〜35の太陽電池の開放電圧および変換効率は、膜厚が前記範囲外である
参考例30、36の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0297】
前記フォトルミネッセンス測定において励起光依存性または励起電子線強度依存性を測定したとき
に励起光強度または励起電子線強度I
exkとフォトルミネッセンス強度I
PLの関係を下式(2)
【数5】
で表したとき kの値が1<k<2の範囲内である
参考例1
、実施例2〜5、および参考例6の太陽電池の開放電圧および変換効率は、前記範囲外である比較例2の太陽電池にくらべ、大きいことが確認された。
【0298】
前記第一のp型光吸収層の形成工程において、いったんIb族元素とIIIb族元素の比が1.0より大きくなるように成膜した後に、異相であるIb族−VIb族化合物を除去する工程を含む実施例38〜41の太陽電池の開放電圧、変換効率は、異相除去工程を含まない実施例37の太陽電池に比べ、大きいことが確認された。
【0299】
【表19】
【0300】
【表20】