(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施例について詳説する。なお、発明の実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
最初に、本発明に係るMRI装置を
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体101の断層画像を得るもので、
図1に示すように、静磁場発生磁石102と、傾斜磁場コイル103及び傾斜磁場電源109と、RF送信コイル104及びRF送信部110と、RF受信コイル105及び信号処理部107と、計測制御部111と、全体制御部112と、表示・操作部113と、被検体101を搭載する天板を静磁場発生磁石102の内部に出し入れするベッド106と、を備えて構成される。
【0017】
静磁場発生磁石102は、垂直磁場方式であれば被検体101の体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば体軸方向に、それぞれ均一な静磁場を発生させるもので、被検体101の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0018】
傾斜磁場コイル103は、MRI装置の実空間座標系(静止座標系)であるX、Y、Zの3軸方向に巻かれたコイルであり、それぞれの傾斜磁場コイルは、それを駆動する傾斜磁場電源109に接続され電流が供給される。具体的には、各傾斜磁場コイルの傾斜磁場電源109は、それぞれ後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、それぞれの傾斜磁場コイルに電流を供給する。これにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzが発生する。
【0019】
2次元スライス面の撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス傾斜磁場パルス(Gs)が印加されて被検体101に対するスライス面が設定され、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード(リードアウト)傾斜磁場パルス(Gf)が印加されて、NMR信号(エコー信号)にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。
【0020】
RF送信コイル104は、被検体101に照射RF磁場パルス(以下、RFパルスと略記する)を照射するコイルであり、RF送信部110に接続され高周波パルス電流が供給される。これにより、被検体101の生体組織を構成する原子のスピンにNMR現象が誘起される。具体的には、RF送信部110が、後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、高周波パルスを振幅変調し、増幅した後に被検体101に近接して配置されたRF送信コイル104に供給することにより、RFパルスが被検体101に照射される。
【0021】
RF受信コイル105は、被検体101の生体組織を構成するスピンのNMR現象により放出されるエコー信号を受信するコイルであり、信号処理部107に接続されて受信したエコー信号が信号処理部107に送られる。
【0022】
信号処理部107は、RF受信コイル105で受信されたエコー信号の検出処理を行う。具体的には、後述の計測制御部111からの命令に従って、信号処理部107が、受信されたエコー信号を増幅し、直交位相検波により直交する二系統の信号に分割し、それぞれを所定数(例えば128、256、512等)サンプリングし、各サンプリング信号をA/D変換してディジタル量に変換する。 従って、エコー信号は所定数のサンプリングデータからなる時系列のデジタルデータ(以下、エコーデータという)として得られる。そして、信号処理部107は、エコーデータに対して各種処理を行い、処理したエコーデータを計測制御部111に送る。
【0023】
計測制御部111は、被検体101の断層画像の再構成に必要なエコーデータ収集のための種々の命令を、主に、傾斜磁場電源109と、RF送信部110と、信号処理部107に送信してこれらを制御する制御部である。具体的には、計測制御部111は、後述する全体制御部112の制御で動作し、ある所定のシーケンスの制御データに基づいて、傾斜磁場電源109、RF送信部110及び信号処理部107を制御して、被検体101へのRFパルスの照射及び傾斜磁場パルスの印加と、被検体101からのエコー信号の検出と、を繰り返し実行し、被検体101の撮像領域についての画像の再構成に必要なエコーデータの収集を制御する。繰り返しの際には、2次元撮像の場合には位相エンコード傾斜磁場の印加量を、3次元撮像の場合には更にスライスエンコード傾斜磁場の印加量も、変えて行なう。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれ、スライスエンコードの数は、通常16、32、64等の値が選ばれる。これらの制御により信号処理部107からのエコーデータを全体制御部112に出力する。
【0024】
全体制御部112は、計測制御部111の制御、及び、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等の制御を行うものであって、演算処理部(CPU)114と、メモリ113と、磁気ディスク等の内部記憶部115と、外部ネットワークとのインターフェースを行うネットワークIF116と、を有して成る。
【0025】
また、全体制御部112には、光ディスク等の外部記憶部117が接続されていても良い。具体的には、計測制御部111を制御してエコーデータの収集を実行させ、計測制御部111からのエコーデータが入力されると、演算処理部114がそのエコーデータに印加されたエンコード情報に基づいて、メモリ113内のk空間に相当する領域に記憶させる。以下、エコーデータをk空間に配置する旨の記載は、エコーデータをメモリ113内のk空間に相当する領域に記憶させることを意味する。
【0026】
また、メモリ113内のk空間に相当する領域に記憶されたエコーデータ群をk空間データともいう。そして演算処理部114は、このk空間データに対して信号処理やフーリエ変換による画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体101の画像を、後述の表示・操作部113に表示させ、内部記憶部115や外部記憶部117に記録させた、りネットワークIF116を介して外部装置に転送したりする。
【0027】
表示・操作部113は、再構成された被検体101の画像を表示する表示部と、MRI装置の各種制御情報や上記全体制御部112で行う処理の制御情報を入力するトラックボール又はマウス及びキーボード等の操作部と、から成る。この操作部は表示部に近接して配置され、操作者が表示部を見ながら操作部を介してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0028】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0029】
(T1ρイメージング法について)
最初に、T1ρイメージング法について説明する。
図2は、T1ρイメージング法を実現するためのパルスシーケンスの一例であって、その内のRFパルスの印加順序を詳細に示したシーケンスチャートである。
【0030】
T1ρイメージング法は、スピンを回転座標系の有効磁場回りにロックする(スピンロック)ためのスピンロックシーケンス部201と、スピンロック中に時定数T1ρで減衰した磁化からのエコー信号を計測する本計測シーケンス部211と、からなるT1ρシーケンスを繰り返し時間(TR)毎に繰り返して、T1ρ強調画像を取得するものである。
【0031】
スピンロックシーケンス部201は、位相が180°異なる一対の90°パルス(202,204)と、該一対の90°パルスの間に挟まれたスピンロックRFパルス203とを有して成る。
【0032】
一対の90°パルスは、例えば
図2に示すように、回転座標系において磁化を、x軸の周りに+90°励起する90°+xパルス202と、x軸の周りに-90°励起する90°-xパルス204と、で構成することができる。即ち、90°+xパルス202で励起された磁化と90°-xパルス204で励起された磁化とは反対方向を向くことになり、それ故、これら一対の90°パルス(202,204)の位相が互いに180°異なることになる。
【0033】
スピンロックRFパルス203は、その印加時間(スピンロック時間(T
SL))が数msから数十ms以上(被写体のT1ρ値程度、例えば50msec以下の値)のRFパルスであり、このスピンロック時間(T
SL)において磁化が回転座標系のT1緩和の時定数T1ρで減衰すること、磁化が重み付けされる。従来のT1ρイメージング法では、スピンロックRFパルスの照射強度は一定とする。
【0034】
そして、本計測シーケンス部211で、上記のように重み付けされた磁化からのエコー信号が計測されるので、この計測されたエコー信号の強度も時定数T1ρで重み付けされたものとなる。それ故、このエコー信号から再構成される画像が時定数T1ρで強調され、T1ρ強調画像を得ることができる。
【0035】
また、スピンロック時間(T
SL)を変更して、複数のT1ρ強調の程度が異なる画像を取得して、これら複数のT1ρ強調画像を用いて画素毎にT1ρ値を算出することができるので、画素毎のT1ρ値の分布を表すT1ρ値画像を取得することもできる。
【0036】
(照射RF磁場の空間的不均一の影響)
スピンロックにおいて、スピンは回転系でみると有効磁場回りに回転をする為、有効磁場の方向に影響を与える静磁場と照射RF磁場の両方の空間的不均一により磁化の振る舞いが空間的に変動する。このことにより静磁場と照射RF磁場の両方の空間的な均一性が十分でなく不均一がある場合には、これらの空間的不均一に依存してT1ρ強調画像に縞状のアーチファクトが発生してしまう場合がある。
【0037】
そこで、これらの影響の内で、照射RF磁場の空間的不均一を補償する第1の方法としては、
図3(a)に示すように、スピンロック中の照射RF磁場(スピンロックRFパルス)の位相をスピンロック時間(T
SL)のちょうど半分(T
SL/2)で180°反転させる技術がある。
図3(a)における+y,-yは、照射RF磁場の位相を示しており、それぞれ90°パルスに対しては90°位相が異なること、そして互いに180°位相が異なることを表している。具体的には、スピンロック時間を2分割して、回転座標系において磁化を、y軸の周りに回転させる+yパルス203-1をスピンロック時間の前半の半分(T
SL/2)印加した後に、y軸の周りに反回転させる-yパルス203-2をスピンロック時間の後半の半分(T
SL/2)印加する。これにより、照射RF磁場の空間的不均一があっても、前半の+yパルス203-1の印加中に生じた回転量(位相)の空間的不均一が、後半の-yパルス203-2の印加中に生じた反回転量(反極性位相)の空間的不均一でキャンセルされる。その結果、スピンロック時間(T
SL)の終了直後で90°-xパルス203の直前において、照射RF磁場の空間的不均一の影響が無くなることになる。
【0038】
また、照射RF磁場の空間的不均一を補償する第2の方法としては、
図3(b)に示すように、スピンロックRFパルスの照射時間の半分の時点で180°パルスを印加する技術がある。この第2の方法では、スピンロックRFパルス203の位相をスピンロック時間(T
SL)中に変えずに、
図3(b)の例では、+yパルスとしている。その代わりに、スピンロック時間(T
SL)の半分の時点(T
SL/2)で、180°パルスを印加する。スピンロック時間(T
SL)の半分の時点(T
SL/2)で180°パルスを印加することによって、スピンロック時間の前半の半分(T
SL/2)の+yパルス203-1の印加中に生じた回転量(位相)の空間的不均一が、180°パルスによりその極性が反転し、後半の半分(T
SL/2)の+yパルス203-2の印加中に生じた回転量(位相)の空間的不均一によってキャンセルされる。その結果、第1の方法と同様に、スピンロック時間(T
SL)の終了直後で90°-xパルス203の直前において、照射RF磁場の空間的不均一の影響が無くなることになる。
【0039】
(本願発明の課題とその解決方法の概要)
スピンロックRFパルスは、一般的に強度が強く印加時間の長いRFパルスとなる。一方、RFアンプは、その特性により、長時間に渡って高出力を一定に保つことが困難で、長時間に渡って高出力を続けると一般的に発熱などの影響によりドループと呼ばれるような次第に出力が低下してしまう場合がある。このRFアンプの出力低下がスピンロックRFパルスの印加中に発生した場合の例を
図4に示す。
図4では、スピンロックRFパルスの印加中にRFアンプの出力が次第に低下していくことにより、スピンロックRFパルス203-1,203-2の振幅が次第に減少していく様子を示している。
【0040】
このことから、照射RF磁場の均一性については、空間的不均一だけでなく時間的不均一をも考慮しなければならないことになる。このようなスピンロックRFパルスの時間的な強度の不安定性がある場合には、スピンロック時間(T
SL)の丁度半分で、位相の180°変更や180°パルスの印加を行っても照射RF磁場の空間的不均一を十分に補償することができない。
【0041】
そこで、本発明は、スピンロックRFパルスの位相を180°変更するタイミング又は180°パルスを印加するタイミングを、スピンロック時間の丁度半分(T
SL/2)とせずに、T
SL/2の前後に調整(時間的シフト)することで、照射RF磁場の空間的不均一をより精度よく補償することを基本とする。RFアンプの出力は、一般的に、時間経過とともに低下するので、スピンロックRFパルスの印加強度も時間とともに減少することになる。その場合には、スピンロック時間の半分(T
SL/2)より前に、180°位相変更や180°パルス印加となる。以下、スピンロックRFパルスの180°位相変更や180°パルス印加を該スピンロック時間の半分(T
SL/2)の前後で行う本発明の各実施例を詳細に説明する。
【0042】
(実施例1)
最初に、本発明のMRI装置及びT1ρイメージング法についての実施例1を説明する。本実施例1は、スピンロックRFパルスの印加時間の中心(半分)からΔtだけ増減したタイミングで、該スピンロックRFパルスの位相を180°変更する。以下、
図5(a)と
図6に基づいて、本実施例1を詳細に説明する。
【0043】
最初に、
図5(a)を用いて、本実施例1の概要を説明する。
図5(a)は、スピンロックRFパルス203の位相を180°変更するタイミングを、該スピンロックRFパルス203の印加時間の中心(T
SL/2)からΔtだけ増減した例を示す図である。具体的には、全体のスピンロック時間(T
SL)を同一にする条件の下で、前半の+yパルス203-1の印加時間をT
SL/2-Δtとし、後半の-yパルス203-2の印加時間をT
SL/2+Δtとする。
【0044】
このシフト時間Δtは、計測条件に応じて調整する必要があるが、主に、スピンロック時間(T
SL)やRFアンプの特性に依存する値である。
【0045】
一般的に、T1ρイメージング法は、照射RF磁場の周りの磁化の回転の速度(Hz)が数百Hz程度となるように、スピンロックRFパルスの印加強度(Hz)を固定して、このようにスピンロックされた磁化からのエコー信号を測定する。そして、被検体などの計測対象や受信コイルなどの計測条件が変更された場合にも、スピンロックRFパルスの印加強度(Hz)を同一に保つために、RFアンプの利得(ゲイン)が変更される場合が一般的である。RFアンプの利得(ゲイン)が変更されると、スピンロックRFパルスの印加強度の時間的変動の程度が変わる。よって、計測条件に応じて、シフト時間Δtの最適値を求めた方が良い。
【0046】
一方、RFアンプの利得とスピンロック時間(T
SL)が決まれば、RFアンプの出力の時間的変動とその結果であるスピンロックRFパルスの印加強度の時間的変動について、ある程度の再現性を期待できる。よって、RFアンプの利得とスピンロック時間(T
SL)をパラメータとして、これら2つのパラメータの値に対するシフト時間Δtの好適値又は最適値(以下、好適値の場合も含めて纏めて最適値という)を設定すればよいことになる。
【0047】
スピンロック時間(T
SL)は、所望のT1ρ強調度合いの画像を得るために、操作者が計測条件として設定入力する値であり、数msから数十msの値が入力設定される。一方、RFアンプの利得特性は、RFアンプ毎に異なり、且つ、計測条件に基づいて決定されるRFアンプの出力値(つまり、スピンロックRFパルスの印加強度)にも依存する。以上のことから、スピンロック時間(T
SL)やRFアンプの出力値が変わるような計測条件の変更がある度に、シフト時間Δtの最適値を求めることが望ましい。
【0048】
以下、シフト時間Δtの最適値として、事前に設定された値、例えば、内部記憶部115や外部記憶部117記憶された値、を用いるものとして、本実施例1を説明する。
【0049】
次に、本実施例1のT1ρイメージング法を実現するための演算処理部114の各機能を、
図6(a)に示す機能ブロック図に基づいて説明する。本実施例1に係る演算処理部114は、撮像条件設定部601と、スピンロック時間設定部602と、RFアンプ利得設定部603と、位相変更タイミング設定部604と、T1ρシーケンス設定部605と、を有して成る。
【0050】
撮像条件設定部601は、表示・操作部113の表示部に撮像条件の設定GUIを表示し、撮像条件に関する各種撮像パラメータの値の操作者による設定入力を受け付ける。特に、スピンロック時間(T
SL)の設定GUIの表示と、その設定入力を受け付ける。
【0051】
スピンロック時間設定部602は、撮像条件設定部601を介して入力設定された撮像条件に関する撮像パラメータの値に基づいて、スピンロック時間(T
SL)の値を設定する。
【0052】
RFアンプ利得設定部603は、撮像条件設定部601により設定された撮像条件に基づいて、スピンロックRFパルス203を所望の印加強度で被検体に照射するためのRFアンプ利得を設定する。例えば、基準RFパルス(例えば90°パルス)を出力するためのRFアンプ利得を基に、所定の係数を掛けて、スピンロックRFパルス203を所望の印加強度とするためのRFアンプ利得を求めても良い。
【0053】
位相変更タイミング設定部604は、スピンロック時間設定部602で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、RFアンプ利得設定部603で設定されたRFアンプ利得と、に基づいて、スピンロックRFパルス203の位相を180°変更するタイミングについてのシフト時間である、スピンロック時間の中心(T
SL/2)から増減させるシフト時間Δtを設定する。本実施例1では、スピンロック時間(T
SL)とRFアンプ利得に応じて事前に設定された値、例えば、内部記憶部115や外部記憶部117記憶された値、をシフト時間Δtとして用いる。
【0054】
T1ρシーケンス設定部605は、撮像条件設定部601で設定された撮像条件と、スピンロック時間設定部602で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、RFアンプ利得設定部603で設定されたRFアンプ利得と、位相変更タイミング設定部604で設定されたシフト時間Δtと、に基づいて、
図5(a)に示すT1ρシーケンスの各種制御値を具体的に生成して、計測制御部111に通知してT1ρシーケンスを実行させる。
【0055】
次に、上記各機能部が連携して行なう本実施例1の処理フローを
図6(b)に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理フローは、予めプログラムとして内部記憶装置115に記憶されており、演算処理部114が内部記憶装置115からそのプログラムを読み込んで実行することにより実施される。以下、各処理ステップの処理内容を詳細に説明する。
【0056】
ステップ651で、撮像条件設定部601は、表示・操作部113の表示部に撮像条件の設定GUIを表示し、撮像条件に関する各種撮像パラメータの値の操作者による設定入力を受け付ける。特に、撮像条件設定部601は、スピンロック時間(T
SL)の設定GUIを表示して、その設定入力を受け付ける。
【0057】
ステップ652で、スピンロック時間設定部602は、ステップ651で設定された撮像条件に基づいて、スピンロック時間(T
SL)を設定する。
【0058】
ステップ653で、RFアンプ利得設定部603は、ステップ651で設定された撮像条件に基づいて、スピンロックRFパルス203を所望の印加強度で被検体に照射するためのRFアンプ利得を設定する。具体的設定方法については前述したとおりである。
【0059】
ステップ654で、位相変更タイミング設定部604は、ステップ652で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、ステップ653で設定されたRFアンプ利得とに基づいて、スピンロックRFパルス203の位相を180°変更するタイミングについてのシフト時間Δtを設定する。具体的設定方法については前述したとおりである。
【0060】
ステップ655で、撮像条件設定部605は、ステップ651で設定された撮像条件と、ステップ652で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、ステップ653で設定されたRFアンプ利得と、ステップ654で設定されたシフト時間Δtと、に基づいて、
図5に示すT1ρシーケンスの各種制御値を具体的に生成して、計測制御部111に通知してT1ρシーケンスを実行させる。
【0061】
ステップ656で、計測制御部111は、ステップ655で生成されたT1ρシーケンスを実行して、前述のT1ρ強調画像を取得するためのエコー信号の計測制御を行う。
以上までが、本実施例1の処理フローの説明である。
【0062】
以上説明したように、本実施例1のMRI装置及びT1ρイメージング法は、スピンロックRFパルスの位相を180°変更するタイミングを、該スピンロックRFパルスの印加時間であるスピンロック時間(T
SL)の半分(T
SL/2)の前後にシフトするシフト時間を設定するタイミング設定部を備え、計測制御部は、スピンロックRFパルスの位相を、シフト時間で設定されたタイミングで180°変更する。つまり、スピンロックRFパルス203の印加時間の中心(T
SL/2)からΔtだけ増減したタイミングで、スピンロックRFパルス203の位相を180°変更する。
【0063】
これにより、スピンロックRFパルス203の印加強度が時間的に変動しても、スピンロックRFパルス203の印加強度の空間不均一を補償でき、T1ρ強調画像にアーチファクトが発生することを防ぐことが可能になる。
【0064】
具体的には、スピンロックするためには数十msを越えるような長時間のRFパルス出力が必要な為、RFアンプの出力特性によっては、一定の出力を長時間維持することが困難で出力に多少の変動があるような場合でも、この影響によるT1ρ値の変動を補償し、結果としてT1ρ強調画像においては高い再現性を保ち、T1ρ値画像においては定量性を向上させることができる。
【0065】
(実施例2)
次に、本発明のMRI装置及びT1ρイメージング法についての実施例2を説明する。本実施例2は、スピンロックRFパルス203の位相を途中で変更することなく、スピンロックRFパルス203の印加時間の中心(T
SL/2)からΔtだけ増減したタイミングで、180°パルスを印加する。以下、
図5(b)と
図7に基づいて本実施例2を詳細に説明する。
【0066】
最初に、
図5(b)を用いて、本実施例2の概要を説明する。
図5(b)は、スピンロックRFパルス203の印加時間の中心(T
SL/2)からΔtだけ増減したタイミングで180°パルスを印加する例を示す図である。具体的には、全体のスピンロックRFパルス(+yパルス)の印加時間T
SLを同一にする条件の下で、180°パルスを印加するタイミングを(T
SL/2)からΔtだけ早めて、前半の+yパルス203-1の印加開始から180°パルスの中心までの時間をT
SL/2-Δtとし、後半の180°パルスの中心から+yパルス203-2の印加終了までの時間をT
SL/2+Δtとする。
【0067】
このシフト時間Δtは、前述の実施例1と同様に、計測条件に応じて調整する必要があるが、主に、スピンロック時間(T
SL)やRFアンプの特性に依存する値である。
【0068】
次に、本実施例2のT1ρイメージング法を実現するための演算処理部114の各機能を
図7(a)に示す機能ブロック図に基づいて説明する。本実施例2の演算処理部114の各機能は、前述の実施例1で説明した
図6(a)に示した位相変更タイミング設定部604の代わりに、180°パルス印加タイミング設定部614を備える。他の機能は、前述の実施例1と同じである。以下、前述の実施例1と異なる機能のみ説明し、同一の機能の説明を省略する。
【0069】
180°パルス印加タイミング設定部614は、スピンロック時間設定部602で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、RFアンプ利得設定部603で設定されたRFアンプ利得と、に基づいて、スピンロック時間の中心(T
SL/2)の前後で180°パルスを印加するタイミングについてのシフト時間である、該スピンロック時間の中心(T
SL/2)から増減させる時間Δtを設定する。具体的設定方法は、前述の実施例1の位相変更タイミング設定部604での設定方法と同じである。
【0070】
次に、上記各機能部が連携して行なう本実施例2の処理フローを
図7(b)に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理フローは、予めプログラムとして内部記憶装置115に記憶されており、演算処理部114が内部記憶装置115からそのプログラムを読み込んで実行することにより実施される。本実施例2の処理フローは、前述の実施例1で説明した
図6(b)に示したステップ654の代わりに、ステップ664を備える。他のステップは、前述の実施例1と同じである。以下、前述の実施例1と異なるステップのみ説明し、同一のステップの説明を省略する。
【0071】
ステップ664で、180°パルス印加タイミング設定部614は、テップ652で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、ステップ653で設定されたRFアンプ利得とに基づいて、180°パルスを印加するタイミングについてのシフト時間Δtを設定する。具体的設定方法については前述したとおりである。
以上までが、本実施例2の処理フローの説明である。
【0072】
以上説明したように、本実施例2のMRI装置及びT1ρイメージング法は、180°パルスを印加するタイミングを、スピンロックRFパルスの印加時間であるスピンロック時間(T
SL)の半分(T
SL/2)の前後にシフトするシフト時間を設定するタイミング設定部を備え、計測制御部は、スピンロックRFパルスの印加中に、シフト時間で設定されたタイミングで前記180°パルスを印加する。つまり、スピンロックRFパルスの印加時間の中心(半分)(T
SL/2)からΔtだけ増減したタイミングで、180°パルスを印加する。
【0073】
これにより、前述の実施例1のスピンロックRFパルスの180°位相を変更することと同様に、スピンロックRFパルスの印加強度が時間的に変動しても、スピンロックRFパルスの印加強度の空間不均一を補償でき、T1ρ強調画像にアーチファクトが発生することを防ぐことが可能になる。
【0074】
(実施例3)
次に、本発明のMRI装置及びT1ρイメージング法についての実施例3を説明する。本実施例3は、シフト時間Δtの最適値を求める準備計測をT1ρシーケンス実行の前に実行する。この準備計測では、スピンロックRFパルス203の印加時間の中心(T
SL/2)の前後でシフト時間Δtを複数回変更して、それぞれエコー信号又はFID信号を取得し、その強度が最大になるΔtをシフト時間Δtの値とする。以下、前述の実施例1で説明したスピンロックRFパルスの位相を180°変更する場合を例に本実施例3を詳細に説明するが、前述の実施例2で説明した180°パルスを印加する場合にもついても同様である。
【0075】
最初に、準備計測について
図8に基づいて説明する。
図8は、スピンロック時間の中心(T
SL/2)の前後で、単位時間τを単位としてシフト時間Δtを複数回変更して、それぞれエコー信号又はFID信号を取得するシーケンスチャートを示す。
図8(a)は、シフト時間Δt=3τの場合、つまり、前半の+yパルス203-1の印加時間をT
SL/2-3τとし、後半の-yパルス203-2の印加時間をT
SL/2+3τとする例を示す。
図8(b)は、シフト時間Δt=2τの場合、つまり、前半の+yパルス203-1の印加時間をT
SL/2-2τとし、後半の-yパルス203-2の印加時間をT
SL/2+2τとする例を示す。
図8(c)は、シフト時間Δt=τの場合、つまり、前半の+yパルス203-1の印加時間をT
SL/2-τとし、後半の-yパルス203-2の印加時間をT
SL/2+τとする例を示す。いずれもこのようにシフト時間Δtが設定されたスピンロックシーケンス部201の後に、本計測シーケンス部211で、読み出し傾斜磁場801を印加してFID信号又は勾配エコー信号802が計測される。
【0076】
以上のようにして、計測された各FID信号又は勾配エコー信号の信号強度と、シフト時間Δtとの関係をグラフで示した例を
図9に示す。曲線901は、各実測値のプロット点を近似する曲線であり、この近似曲線901の最大値902に対応するΔt(
図9の例ではやく1.5τ)903をシフト時間Δtの最適値とする。
【0077】
次に、本実施例3のT1ρイメージング法を実現するための演算処理部114の各機能を、
図10(a)に示す機能ブロック図に基づいてを説明する。本実施例3の演算処理部114の各機能は、前述の実施例1と同様であり、
図6(a)に示す機能ブロック図と同じであるが、位相変更タイミング設定部604及びT1ρシーケンス設定部605の機能が異なる。その結果、位相変更タイミング設定部604、T1ρシーケンス設定部605及び計測制御部111間のデータの流れが双方向となる。以下、前述の実施例1と異なる機能のみ説明し、同一の機能の説明を省略する。
【0078】
位相変更タイミング設定部604は、シフト時間Δtの最適値を求めるために、以下の処理を行う。
【0079】
1)単位時間τの整数(m=0、±1、±2、‥)倍の値をシフト時間Δt=mτと仮設定して、T1ρシーケンス設定部605にこのシフト時間mτでの準備計測を実行させる。
2)計測されたFID信号又はエコー信号のデータからその信号強度を求める。
3)上記1)と2)の処理を、整数mを変更して繰り返す。
4)整数(m)値毎に得られた信号強度の変化を近似する曲線901を求め、該求めた曲線が最大となる値902に対応する時間903をシフト時間Δtの最適値とする。
【0080】
ここで、単位時間τは、予め内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶された時間をτとして用いても良い。或いは、前述の実施例1の位相変更タイミング設定部604でのシフト時間Δtの設定方法と同じ方法で求めたシフト時間を候補値Δt
cndとして、単位時間τをシフト時間の候補値Δt
cndの自然数n分の一としてもよい。すなわち、τ=Δt
cnd/nとしても良い。
【0081】
T1ρシーケンス設定部605は、位相変更タイミング設定部604により設定されたシフト時間Δtの仮設定値で、
図5(a)に示すT1ρシーケンスの各種制御値を具体的に生成して、計測制御部111に通知して準備計測シーケンスを実行させる。そして、計測して得られたFID信号又はエコー信号のデータを位相変更タイミング設定部604に通知する。また、位相変更タイミング設定部604より設定されたシフト時間Δtの最適値で、
図5(a)に示すT1ρシーケンスの各種制御値を具体的に生成して、計測制御部111に通知して本計測シーケンスを実行させる。
【0082】
次に、上記各機能部が連携して行なう本実施例3の処理フローを
図10(b)に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理フローは、予めプログラムとして内部記憶装置115に記憶されており、演算処理部114が内部記憶装置115からそのプログラムを読み込んで実行することにより実施される。本実施例3の本処理フローは、前述の実施例1で説明した
図6(b)に示したステップ654の代わりにステップ674を備え、さらにステップ676、ステップ677、ステップ678を備える。他のステップは、前述の実施例1と同じである。以下、前述の実施例1と異なるステップのみ説明し、同一のステップの説明を省略する。
【0083】
ステップ674で、位相変更タイミング設定部604は、ステップ652で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、ステップ653で設定されたRFアンプ利得とに基づいて、準備計測のための、スピンロックRFパルス203の位相を180°変更するタイミングについての単位時間τを設定する。具体的設定方法は前述したとおりである。そして、位相変更タイミング設定部604は、単位時間τの整数(m)倍の値をシフト時間Δt=mτと仮設定して、T1ρシーケンス設定部605に通知して、T1ρシーケンス設定部605にこのシフト時間mτでの準備計測を実行させる。
【0084】
ステップ675で、撮像条件設定部605は、ステップ651で設定された撮像条件と、ステップ652で設定されたスピンロック時間(T
SL)と、ステップ653で設定されたRFアンプ利得と、ステップ674で仮設定されたシフト時間Δt=mτと、に基づいて、
図5(a)に示すT1ρシーケンスを準備計測シーケンスとして、その各種制御値を具体的に生成して、計測制御部111に通知して準備計測シーケンスを実行させる。
【0085】
ステップ676で、計測制御部111は、ステップ675で設定された準備計測シーケンスを実行し、計測したFID信号又はエコー信号のデータを、T1ρシーケンス設定部605を介して位相変更タイミング設定部604に通知する。
【0086】
ステップ677で、位相変更タイミング設定部604は、シフト時間Δt=mτのmを変更して準備計測を繰り返す回数が、終了したか否か判定し、終了していなければ(No)、mを変えてステップ674に移行する。終了していれば(Yes)、ステップ656に移行する。
【0087】
ステップ678で、位相変更タイミング設定部604は、整数(m)値毎に計測されたFID信号又はエコー信号のデータからそれぞれ信号強度を求め、整数(m)値毎に得られた信号強度の変化を近似する曲線901を求め、該求めた曲線901が最大値902となる時間903をシフト時間の最適値とする。そして、求めたシフト時間Δtの最適値をT1ρシーケンス設定部605に通知する。
【0088】
ステップ656で、T1ρシーケンス設定部605は、ステップ658で算出されたシフト時間Δtの最適値を用いて、
図5(a)に示すT1ρシーケンスの各種制御値を具体的に生成して、計測制御部111に通知してT1ρシーケンスを実行させる。
【0089】
以上までが、本実施例3の処理フローの説明である。
【0090】
なお、T1ρ値画像を得る為には、スピンロックRFパルスを印加する時間であるスピンロック時間(T
SL)を変更して、T1ρ強調度の異なるT1ρ強調画像を複数回撮像する必要がある。スピンロック時間(T
SL)を変更するとスピンロックRFパルスの印加強度の時間的変動も変化するので、スピンロック時間(T
SL)を変化させる毎に本実施例3の準備計測を実行してシフト時間Δtの最適値を求めることによって、より最適なT1ρ値画像を得ることができる。
【0091】
以上説明したように、本実施例3のMRI装置及びT1ρイメージング法は、スピンロック時間の中心(T
SL/2)の前後でシフト時間Δtを複数回変更して、それぞれFID信号又はエコー信号を取得し、その強度が最大になるΔtをシフト時間Δtの最適値とする。これにより、照射RF磁場の空間不均一を最適に補償でき、T1ρ強調画像にアーチファクトが発生することを防ぐことが可能になる。
【0092】
(実施例4)
次に、本発明のMRI装置及びT1ρイメージング法についての実施例4を説明する。本実施例4は、T1ρシーケンスの撮像パラメータ値とシフト時間Δtの実測値との関係を予め記憶しておき、該関係に基づいて、設定入力されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に応じて、シフト時間Δtを求める。以下、前述の実施例1で説明したスピンロックRFパルスの位相を180°変更する場合を例に本実施例4を詳細に説明するが、前述の実施例2で説明した180°パルスを印加する場合にもついても同様である。
【0093】
最初に、T1ρシーケンスの撮像パラメータ値とシフト時間Δtの実測値との関係について説明する。
【0094】
前述の実施例1〜3により、T1ρシーケンスの撮像パラメータ値とシフト時間Δtの実測値との関係が、個別に撮像毎に求められる。これら個別に撮像毎に求められたシフト時間Δtの実測値をT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に関連付けて内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶しておく。
【0095】
そして、別の新規撮像時においては、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値を基に、内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶されたシフト時間Δtの値を検索し、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に一致する、或いは、最も近い撮像パラメータの値に対応するシフト時間Δtの値を取得する。この取得したシフト時間Δtの値を用いてT1ρシーケンスを生成して、実行する。
【0096】
なお、内部記憶部115又は外部記憶部117に、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に対応するシフト時間Δtの値が無い場合には、前述の実施例1〜3を実施して、該入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に対応するシフト時間Δtを新たに求める。そして、この求めた値を該入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に対応付けて内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶する。
【0097】
前述したように、シフト時間Δtに主に関連する撮像パラメータは、スピンロック時間(T
SL)とRFアンプ利得であるので、これらの値とシフト時間Δtの実測値とを対応付けて記憶しておく。
【0098】
次に、本実施例4のT1ρイメージング法を実現するための演算処理部114の各機能を、
図11(a)に示す機能ブロック図に基づいて説明する。本実施例4に係る演算処理部114は、前述の実施例1で説明した各機能の内で、スピンロック時間設定部602と、RFアンプ利得設定部603が無く、位相変更タイミング設定部604の処理内容が異なる。以下、前述の実施例1と異なる機能のみ説明し、同一の機能の説明を省略する。
【0099】
位相変更タイミング設定部604は、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値を基に、内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶されたシフト時間Δtの値を検索し、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に対応するシフト時間Δtの値を取得して、その値をシフト時間Δtとする。
【0100】
入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に一致する撮像パラメータの値が内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶されていない場合には、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に近い撮像パラメータの値に対応するシフト時間Δtの値を取得して、撮像条件の補間によりシフト時間Δtを求める。或いは、本実施例4を中断して、前述の実施例1〜4を実施して、新たにシフト時間Δtを求め、この求めた値を入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に対応付けて内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶する。
【0101】
次に、上記各機能部が連携して行なう本実施例4の処理フローを
図11(b)に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理フローは、予めプログラムとして内部記憶装置115に記憶されており、演算処理部114が内部記憶装置115からそのプログラムを読み込んで実行することにより実施される。本実施例4の処理フローは、前述の実施例1で説明した
図6(b)に示したステップ654の代わりに、ステップ684を備え、ステップ652,653が無い。他のステップは、前述の実施例1と同じである。以下、前述の実施例1と異なるステップのみ説明し、同一のステップの説明を省略する。
【0102】
ステップ684で、位相変更タイミング設定部604は、ステップ651で設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に基づいて、内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶されたシフト時間Δtの値を検索し、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に一致する、或いは、補間により求めた撮像パラメータ値に対応するシフト時間Δtの値を取得して、その値をシフト時間Δtとする。
【0103】
なお、入力設定されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に一致する撮像パラメータの値が内部記憶部115又は外部記憶部117に記憶されていない場合には、本処理フローを中断して、前述の実施例1〜3のいずれかに移行してもよい。
以上までが、本実施例4の処理フローの説明である。
【0104】
以上説明したように、本実施例4のMRI装置及びT1ρイメージング法は、T1ρシーケンスの撮像パラメータ値とシフト時間とを対応付けて記憶する記憶部を備え、タイミング設定部は、記憶部から、入力された前記T1ρシーケンスの撮像パラメータ値に対応するシフト時間を取得して、該取得したシフト時間を前記シフト時間とする。つまり、T1ρシーケンスの撮像パラメータ値とシフト時間Δtの実測値との関係を予め記憶しておき、該関係に基づいて、設定入力されたT1ρシーケンスの撮像パラメータ値に応じてシフト時間Δtを求める。これにより、別途シフト時間Δtを求める計算や準備計測を行う必要がなくなり、簡易に、照射RF磁場が時間的に変動しても、照射RF磁場の空間不均一を補償でき、T1ρ強調画像にアーチファクトが発生することを防ぐことが可能になる。
【0105】
以上、本発明の各実施例を説明したが、本発明はこれらの各実施例に限定されることは無い。例えば、RFアンプ利得の特性が、時間と共に増加する場合には、スピンロックパルスの位相を180°変更するタイミング又は180°パルスを印加するタイミングは、スピンロック時間の中心(T
SL/2)以後になる。つまり、シフト時間Δtはマイナスの値になる。