特許第5808682号(P5808682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5808682高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808682
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 7/28 20060101AFI20151021BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20151021BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   B65B7/28 D
   B65B57/00 D
   B65B51/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-17637(P2012-17637)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154918(P2013-154918A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100085707
【弁理士】
【氏名又は名称】神津 堯子
(72)【発明者】
【氏名】小野 公裕
(72)【発明者】
【氏名】仁木 しほり
(72)【発明者】
【氏名】鶴澤 勝男
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−318955(JP,A)
【文献】 特開2003−307505(JP,A)
【文献】 実開昭55−016256(JP,U)
【文献】 特開平11−162419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 7/28
B65B 51/10
B65B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を搬送しながら該容器の口部に施蓋し、次いで、高周波誘導加熱装置で内蓋を容器の口部に接着させる工程を含む容器施蓋ラインにおいて、
前記高周波誘導加熱装置の加熱温度の調整の際に、内蓋に非可逆のサーモラベルを貼着する工程と、
次いで前記容器施蓋ラインで、該容器施蓋ラインの通常の動作状態の下で前記高周波誘導加熱装置により前記内蓋を加熱して容器の口部に接着させる工程と、
前記高周波誘導加熱装置で加熱が完了した前記容器を前記容器施蓋ラインから取り出す工程と、
前記容器施蓋ラインから取り出した前記内蓋に貼着した前記サーモラベルの色に基づいて前記高周波誘導加熱装置の出力調整の適否を判定する工程とを含むことを特徴とする高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法。
【請求項2】
前記内蓋を容器の口部に接着させるのに適した加熱温度又はこれに近い温度が感応温度とされた第1の適温サーモラベルと、
前記内蓋を容器の口部に接着させるのに適した加熱温度に近い温度であるが、この適した加熱温度よりも低い温度が感応温度とされた第2の低温サーモラベルと、
前記内蓋を容器の口部に接着させるのに適した加熱温度に近い温度であるが、この適した加熱温度よりも高い温度が感応温度とされた第3の高温サーモラベルとの三種類のサーモラベルを用意し、
前記第1〜第3のサーモラベルを使って実行される、請求項1に記載の高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法。
【請求項3】
容器を搬送しながら該容器の口部に施蓋し、次いで、高周波誘導加熱装置で内蓋を加熱して容器の口部に接着させる工程を含む容器施蓋ラインの前記高周波誘導加熱装置の出力を調整する際に、
前記内蓋を容器の口部に接着させるのに適した加熱温度又はこれに近い温度が感応温度とされた第1の非可逆の適温サーモラベルと、
前記内蓋を容器の口部に接着させるのに適した加熱温度に近い温度であるが、この適した加熱温度よりも低い温度が感応温度とされた第2の非可逆の低温サーモラベルと、
前記内蓋を容器の口部に接着させるのに適した加熱温度に近い温度であるが、この適した加熱温度よりも高い温度が感応温度とされた第3の非可逆の高温サーモラベルとの三種類のサーモラベルを用意し、
前記内蓋に前記第1〜第3のサーモラベルを貼着した状態で、前記高周波誘導加熱装置により、前記容器施蓋ラインの通常の動作状態の下で前記内蓋を加熱して容器の口部に接着させ、前記三種類のサーモラベルの変色によって前記高周波誘導加熱装置の出力調整の適否を判定することを特徴とする高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱による内蓋加熱の適否を判定する方法に関し、より詳しくは高周波誘導加熱装置の調整に簡便性を提供することのできる高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に粉体、液体、ペーストを収容する容器のねじ込み式又は圧着式の蓋として、外蓋と、この外蓋と容器の口部との間に介装される内蓋とを備え、この内蓋を構成するアルミニウムシール材料(以下、「アルミシール材料」という)を容器の口部に接着させて容器を密封する合成樹脂製の蓋が知られている。この種の蓋は、特許文献1に詳しく説明されているとおりであり、熱溶融性樹脂フィルムとアルミニウム箔との積層材料で構成されたアルミシール材料で容器の口部を覆い、そしてその上から外蓋を容器の口部にねじ込む又は圧着した後に高周波誘導加熱装置を通過させることで、アルミシール材料の熱溶融性樹脂フィルム層が溶融して容器の口部に接着し、これにより容器が密封された状態になる。
【0003】
食品製造ラインでは、内容物を充填する前後に容器を蓋で密封する工程が自動化されており、所定のライン速度で次々と送られてくる容器に対して施蓋及び高周波誘導加熱装置による内蓋の接着が行われる。この種の高周波誘導加熱装置による内蓋の接着は、非接触で行われるため高速化が可能であるという利点を備えているが、内蓋のシール状態の適否つまり内蓋加熱温度の適否を把握するのが難しいという問題を有している。
【0004】
上記の特許文献1は、高周波誘導加熱による内蓋の接着に関する適否を検出する発明を開示している。具体的には、特許文献1に開示の発明は、高周波誘導加熱装置を出た容器に対して、その蓋の上面を赤外線熱画像カメラで撮影して、得られた画像の形状又はこれを処理して得たヒストグラムに基づいてアルミシール材料の接着の適否を判定することを特徴とする。
【0005】
特許文献2は、特許文献1の赤外線熱画像に基づく解析の問題点として、蓋の熱容量が小さいことに伴って測定環境に変動があると、異常高温の値が変動したり、接着異常の形状やアルミシール材料の温度分布などが変動することを指摘して、測定温度環境に変動があってもアルミシール材料の接着不良の発見率が変化しない検査方法を提案している。具体的には、特許文献2の発明は、温度センサで測定環境の温度を検出して基準からの温度偏差に基づいて補正することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−318955号公報
【特許文献2】特開2003−307505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、食品製造ラインでは、内容物を充填した容器を蓋で密封する工程が自動化されており、所定のライン速度で次々と送られてくる容器に対して施蓋及び高周波誘導加熱装置による内蓋の加熱が行われる。内蓋の適切な接着のためには、適温で内蓋を加熱することが要求され、加熱温度が低すぎると内蓋は接着不良となり、逆に、加熱温度が高すぎると内蓋の焦げや内蓋の接着が強くなりすぎて、この内蓋を開封するときに内蓋を剥がすのが難しくなるという問題がある。
【0008】
高周波誘導加熱装置による接着は、前述した特許文献2でも指摘しているとおり環境温度によって変化する。環境温度としては季節的な要因、夜間と昼間の別、生産ラインの雰囲気温度、容器内の内容物や包装材料(容器、シール材)の温度などを挙げることができる。従って、ライン管理者は様々な要因を加味して高周波誘導加熱装置の出力を調整することになるが、その際、設定した出力が果たして適正であるか否かを直ちに客観的なデータに基づいて確認したいという要請がある。
【0009】
本発明の目的は、ライン管理者の上記の要請に応じることのできる高周波誘導加熱による内蓋の接着の適否判定方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、所定のライン速度で容器を搬送しながら高周波誘導加熱により内蓋を容器の口部に接着する食品製造ラインにおいて高周波誘導加熱装置の出力調整の作業に簡便性を与えることのできる高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
容器を搬送しながら該容器の口部に施蓋し、次いで、高周波誘導加熱装置で内蓋を容器の口部に接着させる工程を含む容器施蓋ラインにおいて、
前記高周波誘導加熱装置の加熱温度の調整の際に、内蓋に非可逆のサーモラベルを貼着する工程と、
次いで前記容器施蓋ラインで、該容器施蓋ラインの通常の動作状態の下で前記高周波誘導加熱装置により前記内蓋を加熱して容器の口部に接着させる工程と、
前記高周波誘導加熱装置で加熱が完了した前記容器を前記容器施蓋ラインから取り出す工程と、
前記容器施蓋ラインから取り出した前記内蓋に貼着した前記サーモラベルの色に基づいて前記高周波誘導加熱装置の出力調整の適否を判定する工程とを含むことを特徴とする高周波誘導加熱による内蓋加熱温度の適否判定方法を提供することにより達成される。
【0012】
典型的にはライン管理者が高周波誘導加熱装置の出力を調整する際に本発明を適用して高周波誘導加熱装置の出力の設定が行われる。ライン管理者は、容器施蓋ラインを実際に動作させた状態でサーモラベルを使った試験を行い、このサーモラベルの色に基づいて高周波誘導加熱装置の出力の適否を判定することができる。
【0013】
現在入手可能なサーモラベルは可逆性と非可逆性の2種類に分類できる。非可逆性のサーモラベルはその雰囲気温度が一番高い温度に感応して変色し、この色は雰囲気温度が低くなっても維持する特性を有している。本発明では、非可逆性のサーモラベルを採用することで、このサーモラベルの色に基づいて高周波誘導加熱装置により加熱された内蓋の最高温度を知ることができる。
【0014】
現在入手可能な非可逆性のサーモラベルは5℃刻みで区分けされ、ガラス瓶への内蓋の接着の場合には、例えば105℃、110℃、115℃の三種類のサーモラベルを使用することで高周波誘導加熱装置の出力調整を簡便化することができる。具体的に説明すると、被加熱物体である蓋の加熱温度として110℃が最適温度だとすると、105℃、110℃、115℃の3種類のサーモラベルの全てが変色したときには、高周波誘導加熱装置の出力が高すぎることを意味していることから、ライン管理者は高周波誘導加熱装置の出力を低下させる操作を行うことになる。
【0015】
逆に、105℃のサーモラベルだけが変色し、110℃及び115℃のサーモラベルが変色しなかったときには、高周波誘導加熱装置の出力が低すぎることを意味していることから、ライン管理者は高周波誘導加熱装置の出力を高める操作を行うことになる。
【0016】
105℃及び110℃のサーモラベルが変色し、115℃のサーモラベルが変色しなかったときには、高周波誘導加熱装置の出力が適正であることを意味していることから、ライン管理者は高周波誘導加熱装置のこの出力を設定することで高周波誘導加熱装置の出力調整を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例が適用される容器の口部及びこれに螺着された蓋を断面した図である。
図2】食品製造ラインに含まれる容器施蓋ラインを示す図であって、内容物を充填した容器の蓋締め工程及びこれに続く高周波誘導加熱による内蓋の接着工程を説明するための図である。
図3】3つの検知温度の異なるサーモラベルを使った判定の考え方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0019】
図1は、内蓋による合成樹脂製の容器の密封を説明するための図である。図1を参照して、符号1は容器の口部を示す。容器の口部1は、その外周面にネジ山2を有し、このねじ山2を利用してキャップつまり蓋3が螺着される。蓋3は、合成樹脂製の外蓋5と、容器口部1の開口端1aとの間に位置する内蓋6とで構成されている。内蓋6は、従来と同様に、熱溶融性樹脂フィルム8とアルミニウム箔9との積層材料で構成されており、熱溶融性樹脂フィルム8を下にし、アルミニウム箔9を上にした状態で容器口部1の開口端1aに位置決めされる。
【0020】
図2は、食品製造ライン10の一部を示す図である。食品製造ライン10は、内容物を充填した容器12に蓋3を装着して、この蓋3を容器口部1に螺合させる蓋締め工程と、次の工程で高周波誘導加熱装置14を使って容器12の蓋3の部分を非接触状態で加熱する密封工程とを有している。この密封工程では、高周波誘導加熱装置14の出力によって内蓋6のアルミニウム箔9が加熱され、この熱で熱溶融性樹脂フィルム8が溶けて容器口部1の開口端1aに内蓋6が溶着され、これにより容器12は密封状態になる。なお、高周波誘導加熱装置14の出力はマニュアル式のダイアルを操作することにより高出力から低出力まで段階的に調整することができる。
【0021】
典型的にはライン管理者が、季節の変わり目や特に寒い日など高周波誘導加熱装置14の周囲の温度が変化して高周波誘導加熱装置14の出力調整が必要であるときには、蓋3に三種類の検知温度の異なるサーモラベル又は一種類の検知温度のサーモラベル16(図1)を複数箇所に貼着して高周波誘導加熱装置14により加熱処理を行う。この加熱処理は、食品製造ライン10の通常の作動状態の下で行われる。
【0022】
ここに容器口部1の開口端1aに内蓋6を溶着させる最適加熱温度が110℃であるとして、図3を参照して、サーモラベル1による判定方法を以下に説明する。一般論として、入手可能なサーモラベルは可逆性と非可逆性に大別される。実施例では非可逆性のサーモラベルが採用され、感応温度が105℃、110℃、115℃の三種類のサーモラベル16が用意される。説明の都合上、105℃のサーモラベル16を低温ラベルと呼び、110℃のサーモラベル16を適温ラベルと呼び、115℃のサーモラベル16を高温ラベルと呼ぶことにする。
【0023】
一つのやり方として、例えば4枚の低温ラベル16を内蓋6の上面、より具体的には内蓋6が容器の開口端1aと接する部分に貼着し且つ高周波誘導加熱装置14の出力を「高」に設定して加熱した結果、図3に示すように、この4枚の低温ラベル16の全てが変色したとする。次に、4枚の適温ラベル16を同じように内蓋6の上面に貼着して高周波誘導加熱装置14による試行を行った結果、図3に示すように、この4枚の適温ラベル16の全てが変色したとする。次に、4枚の高温ラベル16を同じように内蓋6の上面に貼着して高周波誘導加熱装置14による試行を行った結果、図3に示すように、この4枚の高温ラベル16の全てが変色したとする。この状態は、高周波誘導加熱装置14の出力が高すぎることを意味しているから、高周波誘導加熱装置14の出力を下げる操作を行うことになる。
【0024】
高周波誘導加熱装置14の出力を「中」に下げる操作を行った後に、再度、低温ラベル16、適温ラベル16、高温ラベル16を貼着して上記の試行を夫々行った結果、4枚の低温ラベル16の全てが変色し、4枚の適温ラベル16の全てが変色したが、4枚の高温ラベル16は変色しなかったとすれば、この出力状態(「中」の出力)が最適である判定できる。
【0025】
さらに、念のために、高周波誘導加熱装置14の出力を「低」に設定して、再度、低温ラベル16、適温ラベル16、高温ラベル16を貼着して上記の試行を行った結果、4枚の低温ラベル16の全てが変色し、4枚の適温ラベル16及び4枚の高温ラベル16が変色しなかったとすれば、この出力状態は弱いと判定でき、その結果、高周波誘導加熱装置14の出力「中」が最適であると確信できる。
【0026】
如上のように設定したい加熱条件に適した高周波誘導加熱装置14の出力調整は、この設定したい加熱温度又はその近傍の温度と、その上下の温度の合計3種類のサーモラベルを用意し、更に、食品製造ラインの実際の運転状態でサーモラベルを使って試行することで出力調整の最適化を簡便に行うことができる。
【0027】
なお、変形例として、内蓋6の表面つまり内蓋6が容器の開口端1aと接する部分に低温、適温、高温の3つのサーモラベル16を複数枚、貼着し、そして実際のライン速度で高周波誘導加熱装置14により加熱したときに、三種類のサーモラベル16の夫々の色の変化によって、上述した考え方に基づいて高周波誘導加熱装置14の出力調整が最適であるか否かを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 容器口部
3 蓋(キャップ)
5 外蓋
6 内蓋
8 熱溶融性樹脂フィルム
9 アルミニウム箔
10 食品製造ライン(容器施蓋ライン)
12 容器
14 高周波誘導加熱装置
16 サーモラベル
図1
図2
図3