特許第5808690号(P5808690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808690
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】液体浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20151021BHJP
   B24B 57/00 20060101ALI20151021BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20151021BHJP
   B01D 21/18 20060101ALI20151021BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20151021BHJP
   B01D 21/06 20060101ALI20151021BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20151021BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20151021BHJP
   B01D 21/28 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   B23Q11/00 U
   B24B57/00
   B03C1/00 A
   B03C1/00 B
   B01D21/18 F
   B01D21/24 G
   B01D21/24 D
   B01D21/24 H
   B01D21/06 A
   B01D21/02 S
   B03C1/02 Z
   B01D21/24 T
   B01D21/28 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-36469(P2012-36469)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-169631(P2013-169631A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】593107362
【氏名又は名称】株式会社ジェイピーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100161229
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 豊
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−066393(JP,A)
【文献】 特開平03−135403(JP,A)
【文献】 特開昭53−073669(JP,A)
【文献】 特開2009−297676(JP,A)
【文献】 実開平05−044280(JP,U)
【文献】 実開平03−015648(JP,U)
【文献】 特開2003−094069(JP,A)
【文献】 特開2003−038984(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0577340(KR,B1)
【文献】 英国特許出願公開第02293988(GB,A)
【文献】 米国特許第03595391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B01D 21/02
B01D 21/06
B01D 21/18
B01D 21/24
B01D 21/28
B03C 1/00
B03C 1/02
B24B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジを含む液体を貯留する第一のタンクと、
前記第一のタンクの底面から適宜高さに維持されつつ該タンク内に配置された第二のタンクと、
前記第二のタンクの底面に設けられ、該第二のタンクの側壁から適宜間隔を有する位置で前記第一のタンクに連通する連通口と、
前記第一のタンク底面に対し複数の領域で磁場を発生させる磁場印加手段と、
前記第一のタンクの底面に摺接しつつスラッジを該第一のタンクの側壁に向かって案内する案内手段と、
前記第一のタンクの側壁の少なくとも1個所に設けられたスラッジ回収手段とを備えることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項2】
前記第一および第二のタンクは、ともに横断面形状円形に構成され、かつ、相互に同じ軸線上に設置された第一および第二のタンクであり、前記案内手段は、前記第二のタンク底面よりも下方において該第二のタンクの軸心を中心として回転可能に設けられた案内手段である請求項1に記載の液体浄化装置。
【請求項3】
前記案内手段は、回転の中心軸から前記第一のタンク側壁に到達し得る長尺な回転翼により構成され、該回転翼は、回転軸から先端に向かって、徐々に回転軸の法線方向よりも回転方向後方に傾斜または湾曲してなる回転翼である請求項2に記載の液体浄化装置。
【請求項4】
スラッジを含む液体を貯留する第一のタンクと、前記第一のタンクの底面から適宜高さに維持されつつ該タンク内に配置された第二のタンクと、前記第二のタンクの底面に設けられ、前記第一のタンクに連通する連通口と、前記第一のタンク底面に対し複数の領域で磁場を発生させる磁場印加手段と、前記第一のタンクの底面に摺接しつつスラッジを該第一のタンクの側壁に向かって案内する案内手段と、前記第一のタンクと前記第二のタンクの間において前記液体の液面付近を移動する浮遊物誘導手段と、前記第一のタンクの側壁の少なくとも1個所に設けられたスラッジ回収手段とを備え、
前記第一のタンクは、横断面形状円形に構成された第一のタンクであり、
前記第二のタンクは、横断面形状円形に構成され、かつ、前記第一のタンクと同じ中心軸上に設置された第二のタンクであり、
前記案内手段は、前記第二のタンク底面よりも下方において該第二のタンクの軸心を中心として回転可能に設けられ、その回転の中心軸から前記第一のタンク側壁に到達し得る長尺な回転翼により構成された案内手段であり、前記回転翼は、回転軸から先端に向かって、徐々に回転軸の法線方向よりも回転方向後方に傾斜または湾曲してなる回転翼であり、
前記浮遊物誘導手段は、前記第二のタンクの外部側面を周回する回転誘導部と、前記スラッジ回収手段の近傍において前記第一のタンクの内部側面に突設された固定誘導部とを備えた浮遊物誘導手段であり、
前記スラッジ回収手段は、前記第一のタンクの底部付近および前記液体の液面付近に連通する連通部を有するスラッジ回収手段であることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項5】
前記第二のタンクは、その中心軸回りの回転可能に設けられた第二のタンクであり、前記回転翼は、前記第二のタンクの回転軸と同軸によって回転可能に設けられた回転翼であり、前記浮遊物誘導手段の回転誘導部は、前記第二のタンクの外部側面に突設された回転誘導部である請求項4に記載の液体浄化装置。
【請求項6】
前記第二のタンクの底面に設けられる連通口は、該第二のタンクの側壁から適宜間隔を有する位置に設けられた連通口である請求項4または5に記載の液体浄化装置。
【請求項7】
前記スラッジ回収手段は、前記第一のタンクの底面近傍から該第一のタンクに貯留される前記液体の液面よりも上方に至る高さを有し、該第一のタンクの外部に配置された筒状の回収部本体と、前記回収部本体の内部において該回収部本体の下端近傍から上端近傍に至る範囲に配置されたスクリューと、前記回収部本体と前記第一のタンクとを連通する連通部と、前記回収部本体の側壁に併設され、該側壁に磁場を印加する第二の磁場印加手段とを備えたスラッジ回収手段である請求項1ないし6のいずれかに記載の液体浄化装置。
【請求項8】
前記連通部は、前記第一のタンクの底部近傍と前記回収部本体の底部近傍とを連通する第一の連通部と、第一のタンクに貯留される液体の液面付近において該第一のタンクと回収部本体とを連通する第二の連通部とを備える請求項7に記載の液体浄化装置。
【請求項9】
前記磁場印加手段は、前記第一のタンク底面の裏面側に、該底面に平行な平面に沿って点在させた複数の磁石を備える磁場印加手段である請求項1ないし8のいずれかに記載の液体浄化装置。
【請求項10】
前記磁場印加手段は、磁性体による板状のヨークと、このヨーク表面に複数の磁石を点在させてなる磁石層と、非磁性体による板状の保護層とを備え、前記保護層の表面を前記第一のタンクの底面の裏面側に設置してなる磁場印加手段である請求項1ないし8のいずれかに記載の液体浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体浄化装置に関し、特に、工作機械に使用するクーラント等の液体を浄化するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削装置等の工作機械に使用されるクーラント等の液体には、研削等の際に発生する金属屑が混入するため、この金属屑(磁性体)を磁力によって吸着することにより、液体中から除去することが試みられていた(特許文献1および2参照)。ところが、研削装置等に使用されたクーラント等の液体には、金属屑のほかに砥粒なども混入するため、さらに濾過することが必要とされていた。そこで、本願の出願人は、一次濾過と二次濾過との二段階により、細かなスラッジを除去する濾過装置を開発した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−285238号公報
【特許文献2】特開2007−237051号公報
【特許文献3】特開2011−650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献3に記載の技術は、一次濾過のためにコンベア方式を採用し、一次濾過槽にコンベアを設置するとともに、二次濾過のためにドラムフィルタ方式を採用し、二次濾過槽にはドラムフィルタを備える構成であった。この濾過装置は微細なスラッジまで除去できることから、非常に優れたものであったが、一次濾過槽と二次濾過槽とを並列に設置する構成となることから、設置場所に比較的広い面積を要するという問題点を有するものとなっていた。
【0005】
また、一般に、液体浄化においては、沈殿槽を設けて比重の大きいスラッジを沈殿させる固液分離方式は周知であるが、このような沈殿槽による固液分離方式を使用する場合は、沈殿槽に沈殿したスラッジを定期的に除去しなければならず、沈殿槽底面に付着したスラッジの除去のために、清掃作業をも要することとなっていた。
【0006】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、設置面積を小さくするとともに、スラッジの除去作業および清掃作業を省くことのできる液体浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本願の発明者が鋭意開発した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、スラッジを含む液体を貯留する第一のタンクと、前記第一のタンクの底面から適宜高さに維持されつつ該タンク内に配置された第二のタンクと、前記第二のタンクの底面に設けられ、前記第一のタンクに連通する連通口と、前記第一のタンク底面に対し複数の領域で磁場を発生させる磁場印加手段と、前記第一のタンクの底面に摺接しつつスラッジを該第一のタンクの側壁に向かって案内する案内手段と、前記第一のタンクの側壁の少なくとも1個所に設けられたスラッジ回収手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
上記構成によれば、第一のタンクに流入されたスラッジを含む液体(以下、ダーティ液という)は、浄化された後に第二のタンクに流入することとなる。すなわち、ダーティ液は、第一のタンクに流入されると、第一のタンクの底面と、第二のタンクの底面との間を通過して、第二のタンクの連通口から当該第二のタンク内に流入することとなるのであるが、ダーティ液に混入するする金属屑等の比重の大きいスラッジは、当該液中を沈降するとともに、磁性体である金属屑が第一のタンクの底面に印加される磁場によって磁着されることとなり、この種のスラッジが除去された後の浄化液(以下、クリーン液という)が連通口から第二のタンク内に流入するのである。なお、浮遊するスラッジは、第二のタンクの側壁によって遮断され、第二のタンク内には流入できないことから、結果的に、第二のタンク内には、沈降するスラッジおよび浮遊するスラッジの双方を除去したクリーン液のみが流入することとなるのである。
【0009】
また、第一のタンクの底面に磁着するスラッジは、案内手段によって第一のタンクの側壁に案内されることにより、当該側壁においてスラッジ回収手段によって回収されることとなり、当該スラッジが第一のタンクの底面に堆積することを抑えることとなるのである。ここで、磁場印加手段は、複数の領域で磁場を発生させるものであることから、第一のタンクの底面には、磁着可能な地点が複数存在することとなる。そのため、案内手段が第一のタンクの底面を摺接してスラッジを移動させる場合において、当初磁着した場所から移動したスラッジは、その移動先においても磁着されることとなり、再びダーティ液に混入させずに案内することができるものである。そして、スラッジ回収手段に到達して回収されるまで、第一のタンクの底面に留めることができることから、スラッジの回収率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーン液を貯留する第二のタンクは、ダーティ液を貯留する第一のタンクの内部に配置されていることから、小型の浄化装置を構成することができる。つまり、処理中の液体を異なる槽において個別に貯留する必要がないことから、その平面的な広さをコンパクトにすることができるのである。また、処理液の容量を増加させる場合は、平面的に拡大することのほかに、両タンクを深く構成することによっても対応することが可能であるから、処理容量の増加に対しても装置全体を小型化することができる。
【0011】
また、金属屑等の磁性体は第一のタンクの底面において除去でき、浮遊するスラッジは、第二のタンクに流入させないようにすることから、第一のタンクに流入したダーティ液が連通口を介して第二のタンクに流入する際に、それぞれのスラッジを同時に除去することができる。そして、第一のタンクの底面に磁着するスラッジは、再びダーティ液に混入することなくスラッジ回収手段によって回収されることから、タンク内に堆積することを抑制することができ、スラッジの除去作業およびタンクの清掃作業を省くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の概略を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態の全体を示す説明図である。
図3】磁場印加手段の詳細を示す説明図である。
図4】磁場印加手段による磁界の状態を示す説明図である。
図5】スラッジの除去の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態の概略を示す図である。この図に示すように、本実施形態は、横断面形状が円形の有底筒状の第一のタンク1の内部に、同様に横断面形状が円形の有底筒状の第二のタンク2が配置され、第一のタンク1の底面1cの下部には磁場印加手段3が設けられ、第二のタンク2の底面2cの下部にはスクレーパ(案内手段)4が設けられるものである。また、第一のタンク1の外部にはスラッジ回収部(回収手段)5が併設されている。
【0014】
第一のタンク1には、ダーティ液の流入を受けるための流入部10と、その流入部10からタンク1の内部に流入させるための流入口11とが設けられ、また、第一のタンク1の側壁の内部表面1aにおいて、この流入口11が開口する部分の直下には、水平方向に平面を有する誘導板12が設けられており、タンク1に流入したダーティ液を第一のタンク1の周方向に分散させるようになっている。この流入口11から少し離れた位置には、スラッジを排出するための排出口(スラッジ回収部5との連通部)13,14が設けられており、各排出部13,14は側壁の外部表面1bにおいてスラッジ回収部5に連通している。従って、下部に排出口13からは沈下したスラッジが、上部の排出口14からは浮遊するスラッジが、それぞれスラッジ回収部5によって回収されるようになっている。
【0015】
第二のタンク2は、前述のとおり有底筒状に設けられているが、その底面2cには、複数の連通口21,22,23,24が設けられている。この連通口21,22,23,24は、第二のタンク2の内部と、前記第一のタンク1の内部とを連通するものであり、第一のタンク1に流入したダーティ液からスラッジを除去した後のクリーン液が、当該連通口21,22,23,24を介して第二のタンク2に流入できるようにしているのである。なお、図の連通口21,22,23,24は、いずれも円形に開口させているが、その形状は円形に限らず、楕円形であってもよく、また、その他の形状(例えば扇状)であってもよい。第二のタンク2に流入したクリーン液は、タンク2の上部に設けられるポンプPによって汲み上げられ、再利用に供されることとなる。そのためポンプPの吸引口PPは、第二のタンク2の内部において開口するように設置される。
【0016】
さらに、第二のタンク2の中央には、当該第二のタンク2の上部に設置されるモータM1によって回転駆動される回転軸6が貫設されている。この回転軸6の先端はスクレーパ4の中央部41に接続され、当該スクレーパ4を回転させることができるようになっている。また、当該回転軸6を第二のタンク2の底面2cで固定することにより、第二のタンク2をも回転させる構成とすることも可能である。なお、第二のタンク2を回転軸6によって回転させる構成とする場合には、スクレーパ4は、第二のタンク2の底面2cの下部に固着することにより、当該スクレーパ4を第二のタンク2と一体となって回転させる構成とすることができる。
【0017】
ところで、第二のタンク2は、第一のタンク1の中心に配置されるものである。詳細には、第一のタンク1の円形断面の中心と、第二のタンク2の円形断面の中心とが同心となるように設置されるのである。従って、第一のタンク1の側壁の内部表面1aと、第二のタンク2の側壁の外部表面2bとの間隔が、タンク1,2の全周において均等な状態となっているのである。また、第二のタンク2の底面2cは、第一のタンク1の底面1cよりも上方に配置されており、第二のタンク2の底面2cが第一のタンク1の底面1cとの間で適宜間隔を有するように設けられている。そして、両底面1c,2cの対向面は平行となっており、この両底面1c,2cの間に形成される間隙を利用してスクレーパ4が設置されるのである。
【0018】
スクレーパ4は、沈降したスラッジ(特に磁性体)を所定方向に案内する案内手段として機能するものである。すなわち、本実施形態のスクレーパ4は、二つの回転翼42,43が、中央部41から対称に延出させて設けられており、中央部41が回転軸6によって回転駆動を受けることにより、回転可能になっている。また、各回転翼42,43の下部端縁が第一のタンク1の底面1cに摺接しており、スクレーパ4が回転することにより、各回転翼42,43の下端縁が第一のタンク1の底面1cに沿って摺動し、当該タンク1の底面1cに沈降するスラッジを移動させることができるようになっている。そして、各回転翼42,43は、図示のとおり、回転軸(中央部41)から先端に向かって、法線方向から逸れるように弧状に形成されており、かつ、その先端は、スクレーパ4の回転方向よりも後方に位置させている。従って、各回転翼42,43の回転方向前方の面に当接したスラッジは、その回転方向に沿って移動されるとともに、当該面に沿って外向きに移動されることとなり、最終的には、先端まで移動(案内)されることとなるのである。
【0019】
また、スクレーパ4を構成する回転翼42,43は、第一のタンク1の底面1cの表面上を摺動することから、当該底面1cを保護するために樹脂製としている。また、先端には、ステンレス製のバネ鋼42a,43aが設けられ、第一のタンク1の側壁に対して適当な力で付勢できるようにしている。このバネ鋼42a,43aによる付勢により、先端と側壁との摺接を可能にするとともに、スラッジが側壁に堆積することを回避するものである。さらに、バネ鋼42a,43aの付勢により、各バネ鋼42a,43aの先端がスラッジ回収部5の排出部(連通部)13において、押圧力が解かれるような状態となり、当該排出部(連通部)13の内部に侵入し得ることとなることから、スラッジを当該排出部(連通部)13に対して押し込むように作用させることができるものである。
【0020】
スラッジ回収部5は、円筒状の本体と、その内部にスクリューが内蔵されたものである。詳細は後述するが、上部モータM2によってスクリューを回転することにより、スラッジを上方に搬送させることができるものであり、当該スラッジ回収部5の適宜個所から外方に排出できるように構成されている。
【0021】
なお、第二のタンク2の壁面の外部表面2bには、周方向に平面を有する板状部材71が設けられ、また、第一のタンク1の壁面の内部表面1aにも周方向に平面を有する板状部材72が設けられている。これは、第二のタンク2が回転するように構成した場合において、両部材71,72によって浮遊物誘導手段として機能するためのものである。すなわち、第二のタンク2が回転軸6に連結されて回転するように構成された場合において、第二のタンク2の側壁の外部表面2bに設けた板状部材71は、当該タンク2の回転により、そのタンク2の外部側面を周回することとなり、回転誘導部として、液体(ダーティ液)とともに液体に浮かぶ浮遊物をタンク2の周方向に誘導するものである。他方、第一のタンク1の側壁の内部表面1aに設けた板状部材72は、一個所に固定する固定誘導部として、前記回転誘導部71による液体および浮遊物を堰き止めるように作用するものである。そして、上記回転誘導部71と固定誘導部72により、浮遊物がスラッジ回収部5の上部に設けた排出口(連通部)14に誘導されることとなるのである。上記のような構成においては、回転誘導部71の先端が固定誘導部72の一部に接触することとなることから、両者71,72をバネ鋼によって構成することにより、接触時の抵抗を緩和させることが可能となる。
【0022】
上記構成の各部を組み付けた状態を図2に示す。この図は、液体の流れを中心に示す図である。この図に示すように、第一のタンク1の内部には第二のタンク2が配置されており、それぞれの底面1c,2cおよび側面1a,2bには、両者間に適宜間隔が設けられている。ダーティ液は、第一のタンク1にのみ流入される。つまり、第一のタンク1の側壁と第二のタンク2の側壁との中間に流入されることとなる(図中下向き矢印参照)。従って、第一のタンク1に流入したダーティ液は、第二のタンク2の底面2cを通過しなければ、第二のタンク2の内部には流入できない構成となっている。
【0023】
そこで、ダーティ液が第一のタンク1の底面1cと第二のタンク2の底面2cとの間を通過する際に磁場印加手段3による磁力によって磁性体を吸着するのである。吸着された磁性体は、前述のとおりスクレーパ4によってタンク1の側壁に案内され、さらに、側壁を周方向に案内された後、下部の排出口13に連通するスラッジ回収部5の開口部53を介して、当該スラッジ回収部5の内部に移動させられることとなる。当該磁性体が除去された液体は、第二のタンク2の底面2cから当該タンク2の内部に流入することとなるから、当該第二のタンク2には、浄化された液体(クリーン液)が貯留されることとなる。このクリーン液は、ポンプによって汲み上げられ、再利用されることとなる。なお、図2には、ポンプが二台設置した状態を示しているが、これは、処理される液体の量に応じて汲み上げる量を変化させるためのものであり、このように複数のポンプを使用する場合のほか、一台のポンプにより出力調整することにより汲み上げる量を変化させてもよい。
【0024】
なお、ダーティ液に混入する浮遊物は、第一のタンク1において浮遊することから、第二のタンク2への流入が回避されるものであるが、ダーディ液の流入の状態によっては、第二のタンク2の内部へ流入可能性が皆無ではない。そのために、ポンプPによる吸引部を第二のタンク2の底面付近に開口させる(図中左側のポンプ参照)ように配置することにより、浮遊物が吸引させることを回避し得る。その場合、液面が下がって浮遊物を吸引しないように、液面センサSによって液面の高さを検知することが好ましい。また、念のために、第二のタンク2の上澄み液を吸引して、第一のタンク1に戻す流路を形成するようにしてもよい。このような流路は、別途ポンプを備えることもできるが、例えば、ポンプPによる陰圧を利用してエジェクタを介して流路を形成してもよい(図中左側のポンプの一点鎖線参照)。さらに、第二のタンク2の側壁の内部表面2aに摺接するスクレーパ8を備える構成としてもよい。このスクレーパ8は、第二のタンク2の外部において支持させることにより、第二のタンク2が回転することによって、その内部表面2aに付着する浮遊物を掻き取ることができる。ここで、掻き取られた浮遊物は、前述した別途形成される流路を経由して第一のタンク1に戻すことにより、他の浮遊物とともに排出されることとなる。
【0025】
また、図2に示しているように、磁場印加手段は、第一のタンク1の底面1cの下部のほかに、スラッジ回収部5にも設けられている。前述のように、スラッジ回収部5は、円筒状の本体部51の内部にスクリュー52が内蔵されているのであるが、上記本体部51の側面に第二の磁場印加手段54が設けられている。この磁場印加手段54は、具体的には永久磁石を鉛直方向に整列させたものであり、本体部51の下端から適宜位置まで(液体の液面よりも上方まで)の範囲で磁場を印加させることができるように配置されたものである。このように、本体部51の側面に磁場印加手段54を設けることにより、スラッジ回収部5に移動した磁性体は、磁場印加手段54に吸着されることとなるから、重力方向(下方)に堆積することがなく、スクリュー52の羽根によって掻き取られながら、スクリュー52の螺進とともに徐々に上方に移動されることとなる。そして、スラッジ回収部5の上部に設けた排出部55から外部に排出されることとなる。磁場印加手段54は、上記排出部55の近傍(少し下方)の領域までに設けることにより、排出部55では磁場の影響を受けないこととなり、磁性体をスラッジ回収部5から排出することが容易となる。
【0026】
次に、第一のタンク1の底面1cの下部に設ける磁場印加手段3について詳述する。図1に示されているように、磁場印加手段3は、円形板状に構成されるとともに、複数の層が積層された状態で構成されている。下部の層はヨーク層31であり、上部の層は非磁性体層32である。そして、磁力を発生させるために、上記両層磁力層31,32の中間に永久磁石が複数配置され、磁石層が形成されているのである。各層31,32は第一のタンク1の底面1cの全体に至る大きさに設けられており、中間に設けられる磁石層にはその領域全体に複数の永久磁石が点在するように配置されている。なお、タンク1の底面1cには非磁性体層32が接することとなるから、タンク1の底面1cには磁場のみが作用することとなる。また、第一のタンク1の底面1cを非磁性体層32として機能させる構成とすることができる。この場合、第一のタンク1は、少なくともステンレス鋼等の非磁性体で構成され、磁場印加手段3は第一のタンク1と一体的に構成されることとなる。
【0027】
ここで、磁石層を形成する永久磁石の状態を図3に示す。図中に矩形で示す部分は全て永久磁石である。この図に示すように、ヨーク層31の全体(すなわち第一のタンク1の底面全体)に、複数の永久磁石を連続しない状態で点在させるように配置するのである。このように、連続しない状態で複数の永久磁石を配置することにより、磁性体が各磁石の存在する位置において間欠的に磁着されることとなるのである。すなわち、第一のタンク1の底面1cにおいて、当初いずれかの磁石により磁着する磁性体は、スクレーパ4によって移動方向が案内される際に、その移動方向において近接する他の磁石の位置に移ってさらに磁着されることとなる。従って、上記のような磁着位置の移動を繰り返すことによって、磁性体は、いずれかの磁石の作用により磁着された状態を維持しつつ、徐々に周辺(第一のタンク1の側壁)に移動することとなるのである。
【0028】
このように、複数の磁石は、連続しない状態で接近して配置されていれば、磁性体を間欠的に磁着することが可能であるが、その表面(第一のタンク1の底面に対向する面)に、複数の磁極を有する磁石を使用することができる。図中30a,30b,30c,30dはその一例を示す。この例のように、単一の磁石の表面に複数の磁極を有する場合、非常に接近した位置で磁場を生じさせることができ、近接する他の磁石との間において、離れた位置で生じさせる磁場とは異なる状態とすることができるのである。また、この場合、隣接する磁石の磁極を選択することにより、例えば、同極を向かい合わせとする場合(図中30a,30b参照)と、異極を向かい合わせとする場合(図中30c,30d参照)とによっても異なる磁場を生じさせることが可能となる。
【0029】
このように磁界の発生状体を変化させることにより、図4に示すように、磁性体を十分に磁着させることが可能となるのである(図中半楕円の線は磁力線を示す)。すなわち、図4(a)に示すように、接近する磁極間の磁界Mg1は、近い範囲であるが高い範囲まで作用するが、離れた磁極間の磁界Mg2は、低い範囲ではあるが遠い範囲まで作用することとなる。また、ヨーク層31が下部に積層されることにより、磁力を増幅させることができる。図4(a)はヨーク層31を設けていない状態を示すが、図4(b)はヨーク層31を設けた状態を示している。この図のように、ヨーク層31を設ける場合には、各磁極間に個別のヨーク31a,31bを配設した状態となり、各ヨーク31a,31bによって磁力が増幅されるのである。
【0030】
なお、ヨーク層31を設けない構成としてもよいが(図4(a))、この場合は、磁力の作用は、高さ方向に小さいことから、その作用により磁性体を吸着できる範囲が狭くなる。すなわち、図4(a)に示しているように、第一のタンク1の底面1cと、第二のタンク2の底面2cとを接近して構成することとなる。この場合には、第一のタンク1に注入した液体(図中黒色矢印)は、その狭い間隙を通過することとなるから、その間の流速が高くならざるを得ないこととなる。これに対し、ヨーク層31を設けた構成では、図4(b)に示しているように、両底面1c,2cの間隙を大きく構成することができることから、両者間を流れる液体の流速を低くすることができる。そして、このように低速で流体を流すことにより、液体が、第二のタンク2の側壁2bから連通口21〜24に移動するまでの間に磁性体を磁着させることが容易となるのである。上記のような異なる状態は、液体浄化に必要な流速に応じて適宜選択すればよい。
【0031】
本実施形態は、上記のような構成であることから、図5に示すように、研削盤等の工作機械から排出されるクーラント等のダーティ液DLを浄化し、クリーン液CLを再び研削盤等で再利用させることができる。つまり、金属屑等の磁性体は液中を沈降し、第一のタンク1の底面1cにおいて磁着されつつスラッジ回収部5によって排除されるのである。ここで、沈降する非磁性体のスラッジは、磁性体によって抱き込まれる状態となって、当該磁性体と同様の移動経路を経て外部に排出される。すなわち、金属屑等の微細な磁性体は、複数の磁石によって、当該磁石による磁力が作用する領域に集中することとなるから、その磁性体の間に非磁性体のスラッジが挟み込まれるようになり、これら磁性体および非磁性体の集合物が一塊のスラッジSgとなって、全体が磁性体と同様に移動し排出されることとなる。
【0032】
また、研削盤等から排出されるダーティ液には微細な砥粒のように沈降しないスラッジが含まれる。このような沈降しないスラッジは、第二のタンク2の底面2cよりも下方に移動しないから、第二のタンク2に流入することはない。従って、沈降するスラッジSgを第一のタンク1の底面1cで吸着することにより、第二のタンク2には浄化されたクリーン液のみが貯留されることとなるのである。このことから液体浄化という意味においては、沈降スラッジSgを排除することによって完結することとなる。
【0033】
しかしながら、第一のタンク1の内部にスラッジ(沈降するものに限らず浮遊するものを含む)の堆積を抑制し、スラッジの除去作業やタンクの清掃作業を不要にするためには、浮遊するスラッジを除去する必要がある。
【0034】
そこで、次に、浮遊物を除去するための構成について説明する。浮遊物を除去するためには、前述のように、第二のタンク2を回転軸6によって回転させるとともに、浮遊物誘導部71,72を設ける構成とするのである(図1参照)。第二のタンク2を回転させることにより、回転誘導部71をタンク2の外部側面を周回させることができるからである。
【0035】
そして、比重が軽く浮上するスラッジは、液面付近を漂うことから、液面付近に浮遊物誘導部71,72を設けることにより、液体をスラッジ回収部5に向けて誘導し、浮遊する(特に浮上した)スラッジを排除することができるのである。なお、この浮遊物は、分散した状態では浮遊することとなるが、これらが集中する(凝集する)ことによって浮力を失って沈降する場合がある。このように沈降するときには、前述の非磁性体と同様に磁性体に囲まれて、磁性体と一体となって排出されることとなる。また、これとは逆に集中(凝集)しない浮遊物は、水流に従って移動することとなるから、前記浮遊物誘導部71,72のうち、回転誘導部71によって生じる水流により、第一のタンク1の内部を移動し、やがて固定誘導部72に到達することにより、スラッジ回収部5に誘導され、排除されることとなるのである。
【0036】
また、浮遊物は、第一のタンク1の側壁の内部表面1aまたは第二のタンク2の側壁の外部表面2bに付着することがある。そこで、両誘導部71,72の先端縁を相互に他方のタンク1,2の側面1a,2bに摺接させて設けることにより、これら付着するスラッジをも排除することが可能となる。すなわち、第一のタンク1の側壁の内部表面に設けられる固定誘導部72の端縁は、第二のタンク2の側壁の外部表面2bに摺接し、第二のタンク2の側壁の外部表面に設けられる回転誘導部71の端縁は、第一のタンク1の側壁の外部表面2bに摺接するように、各誘導部71,72の大きさを調整するのである。これにより、第二のタンク2が回転する構成とした場合には、両タンク1,2の対向する両表面1a,2bは相対的に継続して移動することとなり、摺接する各誘導部71,72の各端縁がそれぞれの平面1a,2bの表面からスラッジを剥ぎ取り、スクレーパとして機能することとなるのである。
【0037】
なお、両誘導部71,72は、前述したように双方ともにバネ鋼で構成することができ、両者が接触する場合には、その接触抵抗を緩和させることができる。そして、例えば、固定誘導部72は、第一のタンク1の側壁の内部表面1aから僅かな間隙を有して設置し、回転誘導部71は、固定誘導部72の表面よりも下方に設けることにより、両平面が接触することを回避することが可能となる。この場合、回転誘導部71は、略L字形に形成し、第一のタンク1の側壁の内部表面1aとの摺接端縁を長く形成するようにしてもよい。
【0038】
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、本発明がこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内において種々の形態とすることが可能である。例えば、上述の浮遊物除去のための構成において、当該第二のタンク2が回転することを条件として、回転誘導部71を第二のタンク2の表面に設ける構成としたが、この回転誘導部71を第二のタンク2とは分離して、単独で回転するように構成してもよい。そのためには、例えば、スクレーパ4によって支持する構成とし、当該スクレーパ4と一体的に回転するように設けてもよい。この場合は、第二のタンク2は回転させない構成とすることができる。
【0039】
また、上記実施形態におけるスクレーパ4は、弧状に形成された回転翼42,43を有する構成としたが、この回転翼42,43は弧状以外の形状とすることができる。すなわち、回転翼42,43は、その回転により、掻き取ったスラッジを外方へ(側壁に向かって)案内できる構成であれば、その形状は特に限定されるものではない。つまり、長尺な回転翼42,43の長手方向の先端が、法線方向よりも回転方向後方に逸れた状態となっていればよく、例えば、直線状の回転翼42,43の長手方向が上記方向に向かって傾斜するように構成してもよい。
【0040】
さらに、第一のタンク1および第二のタンク2は、同心円の円形断面に形成しているが、これは、スクレーパ4が回転翼によって構成したことに伴って、沈降したスラッジの側壁への案内を容易にするものであって、その形状に限定する趣旨ではない。すなわち、円形以外の断面に形成したタンク1,2を使用する場合もあり得る。例えば、スクレーパ4が平行移動するような構成であれば、タンク1,2の断面形状は矩形でも同様の機能を発揮させることができる。さらに、スラッジ回収部5は、スクリュー52によって回収させることとしたが、その他の手段により回収させることができれば変更してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 第一のタンク
2 第二のタンク
3 磁場印加手段
4 スクレーパ(案内手段)
5 スラッジ回収部(スラッジ回収手段)
6 回転軸
13,14 連通部(スラッジの排出口)
21,22,23,24 連通口
30a,30b,30c,30d 永久磁石
31 ヨーク層
32 非磁性体層
42,43 回転翼
51 スラッジ回収部の本体部
52 スクリュー
54 第二の磁場印加手段
71 回転誘導部
72 固定誘導部
図1
図2
図3
図4
図5