特許第5808715号(P5808715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公益財団法人鉄道総合技術研究所の特許一覧

<>
  • 特許5808715-軌道スラブ 図000002
  • 特許5808715-軌道スラブ 図000003
  • 特許5808715-軌道スラブ 図000004
  • 特許5808715-軌道スラブ 図000005
  • 特許5808715-軌道スラブ 図000006
  • 特許5808715-軌道スラブ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808715
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】軌道スラブ
(51)【国際特許分類】
   E01B 37/00 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   E01B37/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-152249(P2012-152249)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-15722(P2014-15722A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】片岡 宏夫
(72)【発明者】
【氏名】本野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】細田 充
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−163264(JP,A)
【文献】 特開2009−235856(JP,A)
【文献】 特開昭48−040103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00〜37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道レールが上面に取り付けられる軌道スラブ本体と、
前記軌道スラブ本体の両側端部に長手方向に沿って取り付けた補強対策工とを備え
前記補強対策工は、前記上面と平行に延びる補強部と、前記軌道スラブ本体の側面と平行に延びる取付部とを備え、
前記取付部は、前記補強部の略中央部から垂下して延び、前記補強対策工の断面が略T字状に形成されることを特徴とする軌道スラブ。
【請求項2】
請求項に記載の軌道スラブにおいて、
前記補強対策工は、前記取付部を介して前記軌道スラブ本体の側面に形成された吊上げ部に螺合して取り付けられることを特徴とする軌道スラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道スラブに関し、特に、鉄道車両が脱線した場合に脱線被害の拡大を防止するために補強された補強対策工を備えた軌道スラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震等で鉄道車両が脱線した場合の脱線被害の拡大防止策として、線路に逸脱防止ガードを設置して一定の範囲以上の鉄道車両の逸脱を防ぐ軌道スラブが知られている。
【0003】
このような逸脱防止工としては、種々の形態が知られており、例えば、下記の特許文献に記載されているように、軌道スラブに逸脱防止ガードを設けることが知られている。逸脱防止ガードは、軌道レールと平行に軌道レールの内側(内軌側)に立設した壁部を有しており、鉄道車両が脱線した際に、車輪と逸脱防止ガードとが接触することで脱線被害の拡大を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の脱線被害の逸脱防止工は、脱線した鉄道車両の車輪が軌道スラブの端部を走行しないことを条件としていたため、図6に示すように、鉄道車両が脱線して車輪40bが軌道スラブ100の端部140を走行した場合は、軌道スラブ100の端部140が欠損して脱線被害が拡大する可能性があった。また、バラスト区間の逸脱防止ガードと接続する軌道スラブの区間では、鉄道車両が脱線した場合に車輪が軌道スラブの端部を走行しないように逸脱防止ガードの間隔を十分に広く設置するには配置上の制限があり、逸脱防止ガードの設計および使用条件が厳しいといった問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で軌道スラブの端部を補強することで逸脱防止ガードの設計および使用条件を緩和することができる補強対策工を備えた軌道スラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軌道スラブは、軌道レールが上面に取り付けられる軌道スラブ本体と、前記軌道スラブ本体の両側端部に長手方向に沿って取り付けた補強対策工とを備え、前記補強対策工は、前記上面と平行に延びる補強部と、前記軌道スラブ本体の側面と平行に延びる取付部とを備え、前記取付部は、前記補強部の略中央部から垂下して延び、前記補強対策工の断面が略T字状に形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る軌道スラブにおいて、前記補強対策工は、前記取付部を介して前記軌道スラブ本体の側面に形成された吊上げ部に螺合して取り付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る軌道スラブは、軌道レールが上面に取り付けられる軌道スラブ本体と、軌道スラブ本体の上面の両側端部に長手方向に沿って取り付けた補強対策工とを備えているので、軌道スラブの端部を鉄道車両の車輪が走行した場合でも、脱線時に鉄道車両から作用する水平荷重および鉛直荷重に耐えうる強度を有し、簡易な構造で軌道スラブの端部の欠損を防止して脱線被害の拡大を防止することができる。また、補強対策工によって端部が補強されていることにより、軌道スラブ本体を幅狭に設計したり、逸脱防止ガードの間隔を狭く設計した場合であっても軌道スラブの端部が欠損することを防止できるので、逸脱防止ガードの設計および使用条件を緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る軌道スラブの上面図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る軌道スラブの断面図。
図3】第1の実施形態に係る軌道スラブにおいて、鉄道車両が脱線した状態を説明するための概念図。
図4】本発明の第2の実施形態に係る軌道スラブの断面図。
図5】本発明の第3の実施形態に係る軌道スラブの断面図。
図6】従来の軌道スラブにおいて、鉄道車両が脱線した状態を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る軌道スラブの上面図であり、図2は、本発明の第1の実施形態に係る軌道スラブの断面図であり、図3は、第1の実施形態に係る軌道スラブにおいて、鉄道車両が脱線した状態を説明するための概念図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る軌道スラブ10は、コンクリートからなる板状の軌道スラブ本体11と、該軌道スラブ本体11の上面11aの両側端部に長手方向に沿って取り付けた補強対策工20とを備えている。
【0018】
軌道スラブ本体11は、上面11aに一対の軌道レール13,13が取り付けられている。また、軌道レール13は、その上面で鉄道車両の車輪を支持案内する部材であり、鉄道車両の進行方向に沿って敷設される。なお、軌道レール13は、鉄道車両の走行による振動や衝撃を干渉するための緩衝材などを介して軌道スラブ本体11に締結されている。
【0019】
さらに、図2に示すように、軌道スラブ本体11の側面11bには、吊上げ部12が形成されている。吊上げ部12は、軌道スラブ本体11の側面11bに埋め込み栓を複数挿入して形成されており、軌道スラブ10を敷設する際に重機によって吊上げる部位として従来から形成されているものである。
【0020】
補強対策工20は、一辺が補強部21を構成し、他辺が取付部22を構成するように等辺山形鋼を用いて構成されている。補強部21は、軌道スラブ本体11に取り付けた状態において、軌道スラブ本体11の上面11aと略平行に延び、取付部22は、補強部21の一端から垂下するとともに軌道スラブ本体11の側面11bと平行に延びて形成されている。
【0021】
補強対策工20は、塗装などの表面処理が施された鋼材から成っており、取付部22を軌道スラブ本体11の吊上げ部12に六角ボルトなどの締結手段24によって螺合して固定されている。なお、締結手段24は、軌道スラブ本体11に形成された吊上げ部12に対応して螺合されるため、図1に示すように、補強対策工20に対して4本の締結手段24を用いている。
【0022】
このように形成された本実施形態に係る軌道スラブ10は、図3に示すように鉄道車両が脱線した場合に、一方の車輪40aが逸脱防止ガード30に接触した場合に、他方の車輪40bが軌道スラブ10の端部を走行しても、補強対策工20によって軌道スラブ本体11の端部が補強されているので、軌道スラブ本体11の欠損を防止することができる。
【0023】
なお、補強対策工20を取り付けることによって、補強対策工20の厚み分だけ、軌道スラブ10の幅寸法が増大することとなるので、鉄道車両が脱線した場合でも軌道スラブ10から車輪が脱落することを防止することも可能となる。
【0024】
以上説明した第1の実施形態に係る軌道スラブ10は、補強対策工20として等辺山形鋼を用いた場合について説明を行った。次に説明する第2の実施形態に係る軌道スラブ10aは、第1の実施形態とは異なる形態を有する補強対策工の実施例について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る軌道スラブの断面図である。
【0026】
図4に示すように、本実施形態に係る補強対策工20aは、軌道スラブ本体11の上面11aと平行に延びる補強部21aと、軌道スラブ本体11の側面11bと平行に延びる取付部22とを備えている。第1の実施形態に係る補強対策工20と異なる点は、補強部21aが第1の実施形態に係る補強対策工20よりも幅方向に延長して形成されており、取付部22が補強部21aの略中央部から垂下して延びるように形成されている点である。このように形成されることで、本実施形態に係る補強対策工20aは、断面が略T字状に形成されている。
【0027】
このように、本実施形態に係る補強対策工20aは、軌道スラブ10aの幅方向に延長された補強部21aを備えているので、鉄道車両が脱線した場合であっても、軌道スラブ本体11の端部を補強できるほか、補強対策工20aの厚み以上に車輪が走行できる範囲を大きくとることができるので、より確実に軌道スラブ10aから車輪が脱落することを防止することができる。
【0028】
以上説明した第2の実施形態に係る軌道スラブ10aは、補強対策工20aとして断面略T字状に形成した場合について説明を行った。次に説明する第3の実施形態に係る軌道スラブ10bは、第1及び第2の実施形態とは異なる形態を有する補強対策工の実施例について説明を行うものである。なお、上述した第1及び第2の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る軌道スラブの断面図である。
【0030】
図5に示すように、本実施形態に係る軌道スラブ10bは、補強対策工20bが、軌道スラブ本体11の上面11aと平行に延びる補強部21と、補強部21の端部から垂下するとともに、軌道スラブ本体11の側面11bと平行に延びる取付部22とを備えている。第1及び第2の実施形態に係る補強対策工20,20aと異なる点は、補強部21の一端部から軌道スラブ本体11の上面11aと鉛直な方向に立設して延びる壁部23が形成されている点である。
【0031】
このように、本実施形態に係る補強対策工20bは、軌道スラブ10bの長手方向に沿って壁部23が立設しているので、鉄道車両が脱線した場合であっても、軌道スラブ本体11の端部を補強できるほか、壁部23と車輪とが当接することで、より確実に軌道スラブ10bから車輪が脱落することを防止することができる。また、壁部23の強度を確保できれば、軌道スラブに取り付けた逸脱防止ガード30を省略することも可能となり、より簡単な構造で鉄道車両の脱線による脱線被害の拡大を抑制することができる。
【0032】
また、上述した第1から第3の実施形態に係る補強対策工20,20a,20bは、4本のボルトで軌道スラブに取り付けた場合について説明したが、ボルトの本数はこれに限られず、鉄道車両の走行による振動等によって補強対策工が脱落することを防止できれば、適宜その数を変更することができる。また、補強対策工の取付方法は、ボルトに限らず、種々の取付方法を適用することができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
10,100 軌道スラブ, 11 軌道スラブ本体, 11a 上面, 11b 側面, 12 吊上げ部, 13 軌道レール, 20,20a,20b 補強対策工, 21 補強部, 22 取付部, 23 壁部, 24 締結手段, 30 逸脱防止ガード, 40a,40b 車輪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6