【文献】
Jonah H.Lee,"A new indentation model for snow",Journal of Terramechanics VoL.46(1),2009年 2月,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記雪単体を層別するステップでは、前記雪単体の微視構造として、内部三次元像解析装置による前記雪単体の断層撮影画像、及び前記断層撮影画像の処理結果である三次元の情報を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ性能予測方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るタイヤ性能予測方法及びタイヤ設計方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0016】
従、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0017】
(1)タイヤ設計方法の概略
まず、本実施形態に係るタイヤ性能予測方法及びタイヤ設計方法の概略について説明する。具体的には、(1.1)タイヤ性能予測方法を実行するシステムの機能ブロック構成及び(1.2)タイヤ性能予測フローについて説明する。
【0018】
(1.1)タイヤ性能予測方法を実行するシステムの機能ブロック構成
図1は、本実施形態に係るタイヤ性能予測方法を実行するタイヤ性能予測システム100の機能ブロック構成図である。タイヤ性能予測システム100は、タイヤモデル200及び雪モデル310(
図4参照)を用いて、雪路面におけるタイヤ性能を予測する。
【0019】
タイヤ性能予測システム100は、タイヤモデル作成部101、雪モデル作成部103、雪路面モデル作成部105、境界条件設定部107、演算部109、記憶部111及び出力部113を備える。
【0020】
タイヤモデル作成部101は、タイヤモデル200を作成する。
図4は、タイヤモデル200と、雪モデル310を用いて表現される雪路面モデル300とを示す。
【0021】
タイヤモデル200は、接地及び転勤の少なくとも一方により変形を与えることが可能なトレッドパターン210を有する。
【0022】
雪モデル作成部103は、雪モデル310を作成する。雪モデル310は、タイヤモデル200、具体的には、トレッドパターン210と接触する雪路面を表現する。
【0023】
雪モデル310は、弾塑性体または塑性体としてモデル化される。雪モデル310は、雪の密度または雪の体積歪みと、雪の圧力との関係によって、雪の体積圧縮特性の非線型性を表現する。また、雪モデル310は、雪の降伏応力と、雪の圧力との関係によって、雪のせん断特性を表現する。
【0024】
雪路面モデル作成部105は、雪路面モデル300を作成する。雪モデル310で表現される雪路面モデル300において、雪の体積圧縮特性の非線型性は、雪の密度または雪の体積歪みと雪の圧力との関係に基づく多項式または区間線型化された連続関数で表現される。
【0025】
また、雪モデル310で表現される雪路面モデル300において、雪のせん断特性は、雪の降伏応力と雪の圧力との関係に基づく線型関数で表現される。
【0026】
境界条件設定部107は、タイヤモデル200と雪路面モデル300に負荷される外力や拘束条件、摩擦係数などの各種条件を設定する。
【0027】
演算部109は、タイヤモデル200と雪路面モデル300とを用いて、タイヤ性能の演算(シミュレーション)を実行する。具体的には、演算部109は、タイヤモデル200及び雪モデル310を用いて各種演算を実行し、及び雪モデル310の少なくとも何れかに生じる物理量に基づいて、雪路面におけるタイヤ性能を予測する。
【0028】
なお、タイヤモデル200と雪路面モデル300の境界条件の設定、及び雪モデル310を弾塑性体もしくは塑性体としてモデル化し、タイヤモデル200と雪モデル310との連成計算については、本出願人による特許第4437884号に記載されている方法を適宜用いることができる。
【0029】
記憶部111は、各種のタイヤモデル200及び雪路面モデル300を記憶する。また、記憶部111は、境界条件設定部107において用いられる各種データや、演算部109によって演算された結果を記憶する。
【0030】
出力部113は、演算部109によって演算されたタイヤ性能のシミュレーション結果を出力する。
【0031】
(1.2)タイヤ性能予測フロー
次に、タイヤ性能予測システム100によるタイヤ性能の予測フローについて説明する。具体的には、(1.2.1)雪モデル作成フロー及び(1.2.2)タイヤ性能予測及びタイヤ設計フローについて説明する。
【0032】
(1.2.1)雪モデル作成フロー
図2は、雪モデル310の作成フローを示す。
図2に示すように、ステップS10において、タイヤ性能予測システム100は、実物の雪単体の室内試験により、タイヤの使用条件と実質上同一条件と見なせる雪の変形速度となる試験条件を決定する。さらに、タイヤ性能予測システム100は、雪単体の硬さ、雪単体の温度或いは雪の微視構造毎に雪単体を層別する。
【0033】
なお、雪単体を層別するステップでは、雪単体の微視構造として、内部三次元像解析装置による雪単体の断層撮影画像、及び断層撮影画像の処理結果である三次元の情報を用いることができる。
【0034】
図5(a)及び(b)は、X線CTスキャナにより雪を断層撮影し、コンピュータにより雪の内部三次元情報を再構築した雪の三次元解析画像と、雪の構造イメージとを示す。X線CTスキャナに代表される内部三次元像解析装置で雪を計測すると、雪の微視構造を正確に把握でき、雪質の層別に活用できる。
【0035】
なお、このような内部三次元像解析の方法は、X線CTイメージングに限られるものではなく、MRI(magnetic resonance imaging:核磁気共鳴画像法)や、中性子によるイメージング技術も利用できる。
【0036】
ステップS20において、タイヤ性能予測システム100は、層別した雪単体を用いて、雪単体の体積圧縮特性及び雪のせん断特性を規定するパラメータを決定する。
【0037】
ステップS30において、タイヤ性能予測システム100は、層別した雪単体及び決定したパラメータを用いて雪モデル310を作成する。なお、雪モデル310の詳細については、後述する。
【0038】
(1.2.2)タイヤ性能予測及びタイヤ設計フロー
図3は、タイヤ性能予測及びタイヤ設計フローを示す。
図3に示すように、本実施形態に係るタイヤ設計フローは、タイヤモデル200と雪路面モデル300とを用いたタイヤ性能予測方法を用いて、雪路面におけるタイヤ性能を数値解析によって予測するステップと、予測したタイヤ性能に基づいて、当該タイヤ性能予測方法の対象としたタイヤの設計案を修正するステップと、修正された設計案に基づくタイヤの雪路面におけるタイヤ性能を数値解析によって再び予測するステップとを含む。以下、
図3に従って具体的に説明する。
【0039】
ステップS110において、タイヤ性能予測システム100は、タイヤモデル200を作成する。タイヤモデル200の作成は、例えば、上述した特許文献(特許第4437884号)に記載されている方法を用いることができる。
【0040】
ステップS120において、タイヤ性能予測システム100は、雪路面モデル300を作成する。なお、雪路面モデル300の詳細については、後述する。
【0041】
ステップS130において、タイヤ性能予測システム100は、タイヤモデル200と雪路面モデル300との境界条件を設定する。
【0042】
ステップS140において、タイヤ性能予測システム100は、タイヤモデル200と雪路面モデル300とを用いて、タイヤと雪の連成計算を実行する。
【0043】
ステップS150において、タイヤ性能予測システム100は、タイヤと雪の連成計算が終了したか否かを判定する。
【0044】
タイヤと雪の連成計算が終了した場合(ステップS150のYES)、ステップS160において、タイヤ性能予測システム100は、連成計算に基づくタイヤ性能のシミュレーション結果を出力する。
【0045】
ステップS170において、タイヤ性能予測システム100は、タイヤ性能のシミュレーション結果を評価する。具体的には、タイヤ性能予測システム100は、得られたシミュレーション結果が、所望のタイヤ性能を示しているか否かを評価する。
【0046】
ステップS180において、タイヤ性能予測システム100は、シミュレーション結果に基づくタイヤ性能が良好か否かを判定する。
【0047】
タイヤ性能が良好である場合(ステップS180のYES)、タイヤ性能予測システム100は、シミュレーションに用いたタイヤモデル200に基づくタイヤ設計案を採用する。
【0048】
一方、タイヤ性能が良好でない場合(ステップS180のNO)、ステップS190において、タイヤモデル200の作成に用いられたタイヤ設計案を修正し、ステップS110〜S170の処理を繰り返す。
【0049】
(2)雪モデル310及び雪路面モデル300の作成
次に、雪モデル310及び雪路面モデル300の作成について説明する。
【0050】
(2.1)基本構成
上述したタイヤ性能のシミュレーションによるタイヤ設計では、タイヤ性能の予測精度を向上し得る雪モデル310及び雪路面モデル300が不可欠である。以下、上述した特許文献(特許第4437884号)に記載されているタイヤ性能予測方法からの改善点について主に説明する。
【0051】
上述したように、本実施形態では、雪モデル310は、弾塑性体または塑性体としてモデル化される。雪モデル310は、雪の密度または雪の体積歪みと、雪の圧力との関係によって、雪の体積圧縮特性の非線型性を表現する。また、雪モデル310は、雪の降伏応力と、雪の圧力との関係によって、雪のせん断特性を表現する。
【0052】
雪は、負荷がかかると、その内部構造(空洞と氷の結晶で形成される構造)が変化して変形するが、除荷しても変形が回復して初期形状に戻ることはない。このため、このような特徴を数値モデルとして表現するために雪モデル310を塑性体とする。また、雪モデル310には、必要に応じて弾性体としての特性も与えられ、荷重負荷時に適切な反力を発生させるようにモデル化されている。
【0053】
さらに、雪の密度または雪の体積歪みと雪の圧力との関係によって、雪の体積圧縮特性が非線型性を有する理由は、
図5(a)及び(b)に示したように、雪が空洞と氷の結晶で形成される構造であるため、雪である限りどんなに圧縮されても氷の密度(920kg/cm
3)を超えることはなく、雪が圧力によって踏み固められる体積圧縮過程では、密度の上限値が存在するためである。
【0054】
また、初期の圧縮過程では、雪の微視構造が空洞と水の結晶で形成されているため、氷の結晶が結びつく境界であるスノーボンド(
図5(b)参照)は、圧力が弱い場合でも破壊され圧縮され易くなるなど、雪の圧力と密度との関係が、その微視構造に強く依存した非線型性を示す。
【0055】
さらに、雪は粘弾性材料であり、変形速度が小さい場合にはクリープ変形が主体となり、変形速度が大きい場合には脆性破壊が主体となる。タイヤと雪の相互作用は、当該変形速度が大きい領域で発生するため、スノーボンドの破壊強度を正確に計測するためには、タイヤと雪との相互作用に対応した、変形速度が十分大きい場合における雪の物性を計測することが必須となる。
【0056】
また、特許文献(特許第4437884号)に示されているとおり、無負荷状態の新雪は、極めて弱い破壊強度しか有しないが、踏み固められることにより破壊強度が増すことが知られている。このような特徴を数値モデル上で表現するためには、雪の降伏応力と雪の圧力との関係によって、雪のせん断特性を表現することが有効である。
【0057】
(2.2)具体的構成1
本実施形態では、雪モデル310で表現される雪路面モデル300において、雪の体積圧縮特性の非線型性が、雪の密度または雪の体積歪みと雪の圧力との関係に基づく多項式または区間線型化された連続関数で表現される。
【0058】
雪の体積圧縮特性が有する非線型性は、計測する雪の条件固有のものである。従って、雪モデル310の精度向上のためには、雪を正確に層別して雪の体積圧縮特性を精密に計測し、この結果を忠実に雪モデル310に反映させる必要かある。室内試験において、雪の体積圧縮特性を精密に計測し、その結果を直接、多項式もしくは区間線型化された連続関数で表現することによって、雪の条件に合致した高精度な雪モデル310を作成できる。
【0059】
ここで、雪の体積圧縮特性の計測結果を多項式で表現する場合には、雪の体積圧縮特性の計測結果は、3次以上の多項式で表現されることが好ましい。さらには、雪の体積圧縮特性の計測結果は、4次以上の多項式で表現されることが好ましい。或いは、雪の体積圧縮特性の計測結果は、フーリエ級数で表現されてもよい。
【0060】
また、雪の体積圧縮特性の計測結果を区間線形化された連続関数で表現する場合には、タイヤ接地面に近い区間、すなわち、0.5MPa以下の応力が雪に加わる区間について、0.1MPa以下の単位で連続関数を区切ることが好ましい。或いは、0.5MPa以下の応力が雪に加わる区間について、0.05MPa以下の単位で連続関数を区切ることが好ましい。一方で、0.5MPaを超える応力が雪に加わる区間について、体積圧縮特性を表現可能な区間、例えば、体積圧縮特性の非線形性の強さに応じて、0.3MPa以下や1.0MPa以下の単位で連続関数を区切ることが好ましい。
【0061】
(2.3)具体的構成2
本実施形態では、雪モデルで表現される雪路面モデル300において、雪のせん断特性が、雪の降伏応力と雪の圧力との関係に基づく線型関数で表現される。
【0062】
雪の体積圧縮特性と同様に、雪のせん断特性もスノーボンドの破壊強度に強く依存するため、雪の微視構造に強く依存する。従って、雪モデル310の精度向上のためには、雪の降伏応力と雪の圧力との関係で表現することによって、雪の条件に合致した高精度な雪モデル310を作成できる。
【0063】
(2.4)具体的構成3
本実施形態では、雪路面モデル300は、(i)雪単体の室内試験により、タイヤの使用条件と実質上同一条件と見なせる雪の変形速度となる試験条件において、雪単体の硬さまたは雪単体の温度毎に雪単体を層別するステップと、(ii)層別した雪単体を用いて、雪単体の体積圧縮特性及び雪のせん断特性を規定するパラメータを決定するステップとによって作成される。
【0064】
上述したように、体積圧縮特性及び雪のせん断特性は、雪の条件に強く依存する。また、雪モデル310の精度向上には、これらのパラメータを精密に計測することが不可欠である。
【0065】
そこで、これらのパラメータ決定には、雪の物性が均一な雪サンプルが確保できる、雪単体の室内試験結果を用いる。これにより、再現性の高い繰り返し実験を行うことが可能になり、精度の高いパラメータを決定し得る。さらに、タイヤの使用条件と実質上同一条件と見なせる、十分に変形速度が大である試験条件にて、雪単体の室内試験を行うことによって、雪の粘弾性特性によるスノーボンドの脆性破壊を十分に考慮した精度の高いパラメータを決定し得る。
【0066】
また、雪の条件として、雪の硬さや雪の温度を採用し、これらの条件を揃えた実験を行うことにより、実質上同一条件と見なせる雪の条件において再現性の高い繰り返し実験が行えるため、精度の高いパラメータを決定し得る。
【0067】
なお、雪の硬さの定量化には、例えば、コンパクションテスター(米国Smitheres社製CTI Compaction Gauge)や、木下式硬度計(木下誠一氏考案の実用新案)、ラムゾンデ(ラム硬度計)などを用いることができる。或いは、雪の貫入力と雪の貫入抵抗を連続的に計測してもよい。
【0068】
雪の温度の定量化には、雪の表面温度、内部温度または温度が制御され一定値となった実験室の室温などを用いてもよい。温度計には、熱電対、抵抗温度計、放射温度計などを用いることができる。
【0069】
雪の体積圧縮特性の定量化には、雪のサンプルを円筒状の型に入れて保持し、全体に均一な圧縮力を加える(
図6参照)ことによって、雪の密度と圧力の関係を計測する方法を用いることができる。なお、密度は、初期体積と変形後の体積との比、及び型を除いた重量から計測することができる。また、密度は、雪の体積歪みに置き換えてもよい。
図6は、雪の体積圧縮特性(密度−圧力の関係)の一例(硬圧雪、−6℃)を示す。
【0070】
雪のせん断特性の定量化には、雪の一面せん断試験(Shear box test)により、圧縮力を加えつつ、雪を上箱と下箱の相対変位によりせん断変形を与えることによって、上箱と下箱に挟まれた雪のせん断特性を計測する方法を用いることができる(
図7参照)。加える圧縮力が雪への圧力となり、せん断変形時の最大せん断応力を雪のせん断強度または降伏応力とする。
図7は、雪のせん断特性(圧力−せん断強度の関係)の一例(硬圧雪・温度毎)を示す。実施例では、雪のせん断特性の実測値(
図7を参照)を線形関数に近似させて、シミュレーションが行われていることに留意すべきである。
【0071】
また、
図8(a)及び(b)は、雪の高速圧縮による密度変化を示す。
図8(a)に示すように、実測では、バネ仕掛けの衝撃体を用いて硬圧雪に高速圧縮変形を加えた。変形前の雪の密度は450kg/m
3であったが、衝撃体直下の密度は、750kg/m
3に増加している。
【0072】
衝撃体直下の雪の表層では、スノーボンドが破壊する。一方、破壊した氷の粒子同士が接触することによって下層では密度が上昇し難くなる。つまり、高密度部は、衝撃体直下の表層付近に集中する。これは、雪の変形速度が雪の物性、変形結果に強く影響を及ぼす例である。変形速度が小さい場合は、衝撃体の下層全体が均一に圧縮されるため、表層に集中した高密度部が生じ得ない。
【0073】
(3)実施例
次に、上述したタイヤ性能予測方法によるタイヤ性能のシミュレーション実施例を示す。実施例に係るタイヤに関して、リム及び内圧は、JATMA YEAR BOOK(2009、日本自動車タイヤ協会規格)において規定されるラジアルプライタイヤのサイズに対応する適用リム及び空気圧−負荷能力対応表に基づいて設定した。
【0074】
実施例のタイヤサイズは、195/65R15である。また、中央3列の陸部の形状が異なるトレッドパターンを用いた。パターン1は溝なし・サイプなし、パターン2は溝あり・サイプなし、パターン3は溝・サイプありである。
【0075】
図9は、上述したタイヤ性能予測方法によるタイヤ性能の予測結果と実測結果との比較を示す。「従来例」は、上述した特許文献(特許第4437884号)に記載されたタイヤ性能予測方法に基づく予測結果である。「実測」では、6J-15のリムに組み付け、内圧を200kPaに設定した試作タイヤを乗用車に装着した状態において、雪路の発進テストを行った。
【0076】
発進テストは、乗用車の静止状態からアクセル全開で走行を開始し、50m走行するまでの時間を予測または実測した。数値は、従来例を100とした指数で示している。
【0077】
(4)作用・効果
図9に示すように、実施例では、実測値に近い値が予測できている。すなわち、本実施形態に係るタイヤ性能予測方法によれば、雪モデル310が、弾塑性体または塑性体としてモデル化される。また、雪モデル310は、雪の密度または雪の体積歪みと、雪の圧力との関係によって、雪の体積圧縮特性の非線型性を表現し、雪の降伏応力と、雪の圧力との関係によって、雪のせん断特性を表現する。
【0078】
このため、実際の雪の特性に良く合致した状態でタイヤ性能のシミュレーションを実行できるようになり、路面におけるタイヤ性能の予測精度を向上し得る。つまり、このようなタイヤ性能予測方法を用いることによって、タイヤ設計・評価サイクルを効率的に実行し得る。
【0079】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、雪単体の室内試験により雪モデル310を作成していたが、必ずしも雪単体の室内試験により雪モデル310を作成しなくても構わない。
【0081】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。従、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【0082】
なお、日本国特許出願第2010−166096号(2010年7月23日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。