特許第5808781号(P5808781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5808781-無人航空機の飛行制御システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808781
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】無人航空機の飛行制御システム
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/20 20060101AFI20151021BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   B64C13/20 Z
   B64C13/18 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-188927(P2013-188927)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-54613(P2015-54613A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2014年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸英
(72)【発明者】
【氏名】宮田 研史
(72)【発明者】
【氏名】阪口 晃敏
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−080898(JP,A)
【文献】 特開2002−362497(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0058928(US,A1)
【文献】 野波 健蔵,“敏速かつ的確な映像情報収集のための完全自律小型無人ヘリコプタ”,映像情報インダストリアル,産業開発機構株式会社,2006年 1月 1日,第38巻, 第1号,p. 59〜63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/16 − 13/22
B64C 39/02
B64D 47/00
G08G 5/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機自身の制御信号と地上設備からの制御信号とによって無人航空機の飛行を制御する無人航空機の飛行制御システムであって、
前記無人航空機及び前記地上設備には、前記無人航空機の飛行状態を検出する機体センサーからのセンサー出力信号に基づいて、前記無人航空機の各部を動作させる機体アクチュエータの駆動を制御可能な少なくとも1つの飛行制御装置と、互いに信号を送受信可能な信号送受信手段とがそれぞれ設けられ、
前記無人航空機上の前記少なくとも1つの飛行制御装置と、前記地上設備の前記少なくとも1つの飛行制御装置とで、前記無人航空機上の一の飛行制御装置を主機とする飛行制御機能の冗長系が構成され、
前記無人航空機上で飛行制御を行う飛行制御装置に異常が発生した場合に、当該飛行制御装置から他の飛行制御装置への飛行制御機能の移行を前記地上設備から実行可能に構成され
前記無人航空機上では、前記少なくとも1つの飛行制御装置が前記センサー出力信号に基づく演算結果データを出力するととともに、当該演算結果データが前記信号送受信手段を介して前記地上設備へ送信され、
前記地上設備では、前記少なくとも1つの飛行制御装置が前記無人航空機から送信された前記センサー出力信号に基づく演算結果データを出力するととともに、当該演算結果データと前記無人航空機から送信された演算結果データとの比較によって、飛行制御を行う飛行制御装置に異常が発生したか否かが判定されることを特徴とする無人航空機の飛行制御システム。
【請求項2】
前記無人航空機には、主機と第一バックアップ機の2つの飛行制御装置が搭載され、
前記地上設備には、第二バックアップ機の飛行制御装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無人航空機の飛行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機の飛行制御システムに関し、特に当該飛行制御システムの飛行制御機能を冗長化するうえで有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無人で飛行する無人航空機では、一般に、機体センサーからのセンサー出力信号や地上設備からの制御信号に基づいて、機体に搭載された飛行制御装置が飛行制御を行う。この種の無人航空機において、飛行制御の信頼性を向上させようとした場合、機体に複数の飛行制御装置を搭載させて飛行制御機能の冗長化を図ることが考えられる。しかし、機体に複数の飛行制御装置を搭載させることは、重量や搭載スペースの点で好ましくないのは勿論のこと、各種の制約からこの搭載がそもそも困難な場合もある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、無人航空機自体には飛行制御装置(自動制御装置)を搭載させずに、地上設備に複数の飛行制御装置を設けている。この技術によれば、機体センサーからのセンサー出力信号に基づいて地上設備の飛行制御装置が生成した機体操縦信号を無人航空機へ送信してその飛行制御を行いつつ、地上設備に設けた複数の飛行制御装置によって飛行制御機能の冗長化を図ることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−80898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、センサー出力信号や機体操縦信号が常に機体と地上設備間のデータリンクを介して送受信される制御形態であるため、飛行制御装置を機体に搭載させる場合に比べて制御精度が低下するおそれがある。機体と地上設備間のデータリンクにはデータ量の制限やデータ遅延などが生じうるため、主たる飛行制御装置に故障が生じた非常時だけであれば未だしも、常時このような制御形態が採られることは、より高精度な飛行制御を望むうえで好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、十分な冗長度が確保できる数量の飛行制御装置を無人航空機に搭載できない場合であっても、高精度な飛行制御をしつつ、飛行制御機能の冗長化を好適に図ることができる無人航空機の飛行制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
無人航空機自身の制御信号と地上設備からの制御信号とによって無人航空機の飛行を制御する無人航空機の飛行制御システムであって、
前記無人航空機及び前記地上設備には、前記無人航空機の飛行状態を検出する機体センサーからのセンサー出力信号に基づいて、前記無人航空機の各部を動作させる機体アクチュエータの駆動を制御可能な少なくとも1つの飛行制御装置と、互いに信号を送受信可能な信号送受信手段とがそれぞれ設けられ、
前記無人航空機上の前記少なくとも1つの飛行制御装置と、前記地上設備の前記少なくとも1つの飛行制御装置とで、前記無人航空機上の一の飛行制御装置を主機とする飛行制御機能の冗長系が構成され、
前記無人航空機上で飛行制御を行う飛行制御装置に異常が発生した場合に、当該飛行制御装置から他の飛行制御装置への飛行制御機能の移行を前記地上設備から実行可能に構成され
前記無人航空機上では、前記少なくとも1つの飛行制御装置が前記センサー出力信号に基づく演算結果データを出力するととともに、当該演算結果データが前記信号送受信手段を介して前記地上設備へ送信され、
前記地上設備では、前記少なくとも1つの飛行制御装置が前記無人航空機から送信された前記センサー出力信号に基づく演算結果データを出力するととともに、当該演算結果データと前記無人航空機から送信された演算結果データとの比較によって、飛行制御を行う飛行制御装置に異常が発生したか否かが判定されることを特徴とする。
ここで、「主機」とは、飛行制御システムの各部が正常に動作している常態において優先的に機能するものを意味する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無人航空機の飛行制御システムにおいて、
前記無人航空機には、主機と第一バックアップ機の2つの飛行制御装置が搭載され、
前記地上設備には、第二バックアップ機の飛行制御装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無人航空機に設けられた少なくとも1つの飛行制御装置と、地上設備に設けられた少なくとも1つの飛行制御装置とで、無人航空機上の1つの飛行制御装置を主機とする飛行制御機能の冗長系が構成されており、無人航空機上で飛行制御を行う飛行制御装置に異常が発生した場合に、当該飛行制御装置から他の飛行制御装置への飛行制御機能の移行が地上設備から行われる。これにより、従来と異なり、常態では無人航空機上の主機の飛行制御装置で飛行制御を行いつつ、無人航空機上の飛行制御装置に異常が発生した場合には、地上設備のものを含む他の飛行制御装置に飛行制御機能を代替させることができる。したがって、十分な冗長度が確保できる数量の飛行制御装置を無人航空機に搭載できない場合であっても、高精度な飛行制御をしつつ、飛行制御機能の冗長化を好適に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】無人航空機の飛行制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
[構成]
図1は、本実施形態における無人航空機の飛行制御システム(以下、単に「飛行制御システム」という。)1の構成を示すブロック図である。
この図に示すように、飛行制御システム1は、地上設備20からの制御信号によって無人航空機10の飛行を制御するものである。
【0014】
無人航空機10は、後述する地上設備20のデータリンク送受信器21とデータリンクを構成して互いに各種信号を送受信可能なデータリンク送受信器11のほか、機体センサー12と、機体アクチュエータ13と、2つのFCU(Flight Control Unit:飛行制御装置)14,14とを備えている。
【0015】
機体センサー12は、無人航空機10の飛行状態を検出するための各種のセンサーであり、ジャイロセンサー,速度センサー,GPS(Global Positioning System),高度センサー等を含んで構成されている。この機体センサー12は、検出した各種の飛行状態データを、センサー出力信号S1としてデータリンク送受信器11及び2つのFCU14,14へそれぞれ出力する。
機体アクチュエータ13は、無人航空機10の各部を動作させる各種のアクチュエータであり、具体的には、エルロン,ラダー,エレベータ,スロットル,フラップ,脚等を動作させるためのものである。
【0016】
2つのFCU14,14は、それぞれ、地上設備20から送信される後述の自動制御モード信号S7や機体センサー12からのセンサー出力信号S1に基づいて、機体アクチュエータ13の駆動を制御する駆動制御信号S2を生成し、データリンク送受信器11及び機体アクチュエータ13へ出力する。また、2つのFCU14,14は、自動制御モード信号S7やセンサー出力信号S1に基づく演算結果のデータを、FCU出力信号S3としてデータリンク送受信器11へそれぞれ出力する。この2つのFCU14,14は、第一FCU14aと第二FCU14bからなり、このうち、第一FCU14aが常態で優先的に機能する(飛行制御を行う)主機であり、第二FCU14bがその第一バックアップ機である。
【0017】
また、2つのFCU14,14は、第一切替器15及び第二切替器16をこの順番に介して機体アクチュエータ13と接続されている。
このうち、第一切替器15は、機体アクチュエータ13に入力させる駆動制御信号S2を、第一FCU14aからのものと第二FCU14bからのものとで切り替えるものである。この第一切替器15は、常態で第一FCU14aからの駆動制御信号S2が機体アクチュエータ13に入力されるように設定されている。
一方、第二切替器16は、機体アクチュエータ13に入力させる駆動制御信号S2を、無人航空機10上のFCU14(第一FCU14a又は第二FCU14b)からのものと、後述する地上設備20の第三FCU22からのものとで切り替えるものである。この第二切替器16は、常態で無人航空機10上のFCU14からの駆動制御信号S2が機体アクチュエータ13に入力されるように設定されている。
これら第一切替器15及び第二切替器16は、データリンク送受信器11を介して地上設備20から送信される後述の第一切替信号S4及び第二切替信号S5が入力されることで、切替動作を行う。
【0018】
地上設備20は、無人航空機10のデータリンク送受信器11と互いに各種信号を送受信可能なデータリンク送受信器21のほか、第三FCU22と、遠隔操縦装置23と、中央制御装置24とを備えている。
【0019】
第三FCU22は、無人航空機10に搭載されたFCU14と同様のFCU(飛行制御装置)である。すなわち、第三FCU22は、データリンクを介して無人航空機10から送信されるセンサー出力信号S1や、中央制御装置24から入力される後述の自動制御モード信号S7に基づいて、駆動制御信号S2を生成してデータリンク送受信器21へ出力する。また、第三FCU22は、自動制御モード信号S7やセンサー出力信号S1に基づく演算結果のデータを、FCU出力信号S3として中央制御装置24へ出力する。この第三FCU22は、無人航空機10に搭載された第一FCU14aの第二バックアップ機である。つまり、無人航空機10上の第一FCU14a及び第二FCU14bと、地上設備20の第三FCU22とは、無人航空機10上の第一FCU14aを主機として、飛行制御機能の冗長系を構成している。
【0020】
遠隔操縦装置23は、オペレータによる無人航空機10の遠隔操縦(手動操縦)が可能なものであり、この操縦操作に応じた機体アクチュエータ13の駆動制御信号S2をデータリンク送受信器21へ出力する。この遠隔操縦装置23による遠隔操縦時には、オペレータは、無人航空機10の飛行状態を視認可能な機器(例えば中央制御装置24のディスプレイなど)を見ながら操縦操作を行う。
【0021】
遠隔操縦装置23と第三FCU22とは、第三切替器25を介してデータリンク送受信器21と接続されている。第三切替器25は、データリンク送受信器21を介して無人航空機10へ送信する駆動制御信号S2を、第三FCU22からのものと遠隔操縦装置23からのものとで切り替えるものである。この第三切替器25は、常態で第三FCU22からの駆動制御信号S2がデータリンク送受信器21に入力されるように設定されており、後述する第三切替信号S6が中央制御装置24から入力されることで切替動作を行う。
【0022】
中央制御装置24は、飛行制御システム1を中央制御するものである。具体的には、中央制御装置24は、自動離着陸や自動航行等の制御モードを指示する自動制御モード信号S7を、データリンク送受信器21を介して無人航空機10へ送信するとともに第三FCU22へ出力する。また、中央制御装置24は、後述するように、データリンク送受信器21を介して無人航空機10から送信されるFCU出力信号S3や、第三FCU22から入力されるFCU出力信号S3に基づいて、各FCUの動作状況を監視し、飛行制御を行うFCUの切り替えが必要か否かを判定する。そして、FCUの切り替えが必要と判定した場合、中央制御装置24は、第一切替信号S4又は第二切替信号S5をデータリンク送受信器21を介して無人航空機10へ送信したり、第三切替信号S6を第三切替器25へ出力したりする。
【0023】
[動作]
続いて、飛行制御システム1の動作について説明する。
まず、各部が正常に動作している常態における飛行制御システム1の動作について説明する。
【0024】
常態においては、無人航空機10上の第一FCU14aが、主機のFCUとして当該無人航空機10の飛行制御を行う。具体的には、第一FCU14aは、機体センサー12から入力されるセンサー出力信号S1に基づいて駆動制御信号S2を生成し、この駆動制御信号S2を機体アクチュエータ13へ出力することで、その駆動を制御する。このとき、第一FCU14aは、自動離着陸や自動航行等の制御モードを指示する自動制御モード信号S7を地上設備20の中央制御装置24から受信しており、この自動制御モード信号S7で指示された制御モードに対応するように、駆動制御信号S2を生成する。また、第一FCU14aは、駆動制御信号S2を生成する際の演算結果のデータであるFCU出力信号S3を、地上設備20の中央制御装置24へ送信する。
【0025】
このとき、第一FCU14aのバックアップ機である無人航空機10上の第二FCU14bや地上設備20の第三FCU22も、第一FCU14aと同様に動作している。つまり、第二FCU14b及び第三FCU22は、センサー出力信号S1や自動制御モード信号S7に基づいて駆動制御信号S2を生成して機体アクチュエータ13に向けて出力するとともに、FCU出力信号S3を中央制御装置24に向けて出力する。このうち、駆動制御信号S2は第一切替器15及び第二切替器16で遮断されて機体アクチュエータ13には入力されないが、FCU出力信号S3は中央制御装置24に入力される。中央制御装置24は、第一FCU14aを含む3つのFCUから入力された3つのFCU出力信号S3を比較することで、第一FCU14aが正常に動作しているか否かを常時監視する。
【0026】
続いて、無人航空機10上の第一FCU14aに異常が発生した場合における飛行制御システム1の動作について説明する。
【0027】
地上設備20の中央制御装置24は、上述したように、3つのFCU(第一FCU14a,第二FCU14b及び第三FCU22)から入力される3つのFCU出力信号S3を比較することで、第一FCU14aの動作状況を常時監視している。そして、中央制御装置24は、例えば、第一FCU14aからのFCU出力信号S3に他の2つのFCUからのものと一致しない部分が含まれるなどした場合に、第一FCU14aに異常が発生し、飛行制御を行うFCUの切り替えが必要と判定する。
【0028】
すると、中央制御装置24は、第一切替信号S4をデータリンク送受信器21を介して無人航空機10へ送信し、第一切替器15へ入力させる。第一切替信号S4が入力された第一切替器15は、第一FCU14aからの駆動制御信号S2に代えて、第二FCU14bからの駆動制御信号S2が機体アクチュエータ13に入力されるように、信号ラインを切り替える。こうして、異常が発生したと判定された第一FCU14aに代えて、正常に機能する第二FCU14bが無人航空機10の飛行制御を行う状態となり、正常な飛行制御状態が維持される。このときには、中央制御装置24は、第二FCU14b及び第三FCU22から入力される2つのFCU出力信号S3を比較することで、第二FCU14bが正常に動作しているか否かを常時監視する。
【0029】
この状態において、中央制御装置24は、さらに第二FCU14bにも異常が発生して、飛行制御を行うFCUの切り替えが必要と判定した場合、飛行制御を行うFCUを第二FCU14bから第三FCU22へ切り替える。具体的には、中央制御装置24は、第二切替信号S5をデータリンク送受信器21を介して無人航空機10へ送信し、第二切替器16へ入力させる。第二切替信号S5が入力された第二切替器16は、第二FCU14bからの駆動制御信号S2に代えて、地上設備20の第三FCU22からの駆動制御信号S2が機体アクチュエータ13に入力されるように、信号ラインを切り替える。こうして、異常が発生したと判定された第二FCU14bに代えて、正常に機能する第三FCU22が無人航空機10の飛行制御を行う状態となり、正常な飛行制御状態が維持される。
【0030】
また、この状態において、さらに第三FCU22にも異常が発生したと中央制御装置24が判定したり、モニタ員によって手動操縦への切り替え操作が中央制御装置24に入力されたりした場合には、中央制御装置24は、飛行制御を行う機器を第三FCU22から遠隔操縦装置23へ切り替える。具体的には、中央制御装置24は、第三切替信号S6を第三切替器25へ出力することで、第三FCU22からの駆動制御信号S2に代えて、遠隔操縦装置23からの駆動制御信号S2が無人航空機10へ送信されるように、第三切替器25に信号ラインを切り替えさせる。こうして、第三FCU22に代えて、遠隔操縦装置23を操作するオペレータが無人航空機10の飛行制御を行う状態となる。
【0031】
以上のように、本実施形態の飛行制御システム1によれば、常態では無人航空機10上の主機の第一FCU14aで飛行制御を行いつつ、無人航空機10上の第一FCU14a(又は第二FCU14b)に異常が発生した場合には、地上設備20の第三FCU22を含む他のFCUに飛行制御機能を代替させることができる。したがって、十分な冗長度が確保できる数量のFCUを無人航空機10に搭載できない場合であっても、高精度な飛行制御をしつつ、飛行制御機能の冗長化を好適に図ることができる。
【0032】
また、無人航空機10上の2つのFCU14,14の両方に異常が発生した場合であっても、地上設備20の中央制御装置24によって地上設備20の第三FCU22へ飛行制御機能を移行させて、この第三FCU22で無人航空機10の飛行制御を行うことができる。したがって、無人航空機10と地上設備20とのデータリンクさえ機能していれば、無人航空機10の正常な飛行制御状態を維持することができる。
【0033】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、無人航空機10に2つのFCU14(第一FCU14a及び第二FCU14b)が搭載され、地上設備20に1つの第三FCU22が設けられることとしたが、無人航空機10及び地上設備20には、少なくとも1つのFCU(飛行制御装置)がそれぞれ設けられていればよい。
【0035】
また、飛行制御を行うFCUに異常が発生した(と判定された)場合には、地上設備20の中央制御装置24が飛行制御機能の移行を行うこととしたが、中央制御装置24のモニタ員が最終的にこの移行を指令することとした方がよい。より詳しくは、この場合には、モニタ員(人間)が中央制御装置24の判定結果を含む全ての関連情報を総合的に捉えたうえで、どのように飛行制御機能の移行を行うか、或いは行わないかを最終的に判断した方がよい。
【0036】
また、中央制御装置24は、飛行制御を行うFCUに異常が発生したか否かの判定を行う場合に、各FCUから出力された演算結果のデータであるFCU出力信号S3を比較することとしたが、機体アクチュエータ13の駆動を制御する駆動制御信号S2を比較することとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 飛行制御システム
10 無人航空機
11 データリンク送受信器(信号送受信手段)
12 機体センサー
13 機体アクチュエータ
14 FCU(飛行制御装置)
14a 第一FCU
14b 第二FCU
15 第一切替器
16 第二切替器
20 地上設備
21 データリンク送受信器(信号送受信手段)
22 第三FCU
23 遠隔操縦装置
24 中央制御装置
25 第三切替器
S1 センサー出力信号
S2 駆動制御信号
S3 FCU出力信号(演算結果データ)
S4 第一切替信号
S5 第二切替信号
S6 第三切替信号
S7 自動制御モード信号
図1