特許第5808783号(P5808783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5808783
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】自動車用排気ガスシステム及び自動車
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20151021BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20151021BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   F01N3/24 QZAB
   F01N3/08 B
   F01N3/24 N
   B01D53/94 222
   B01D53/94 241
   B01D53/94 400
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-196147(P2013-196147)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62548(P2014-62548A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】10 2012 216 923.7
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】シルビア カルボ ツイコ
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032472(JP,A)
【文献】 特開2009−085179(JP,A)
【文献】 特開2009−068460(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0302088(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0107617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/025
F01N 3/08 − 3/38
B01D 46/42
B01D 53/86 −53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃エンジンから排出される排気ガス(3)を浄化するための排気ガス浄化装置(2)と、
前記排気ガス浄化装置(2)に対する下流側に間隔をおいて配置され、排気ガスシステム(1)に還元剤を、当該還元剤が当該排気ガスシステム(1)内に導入される流れ方向が少なくとも部分的に当該排気ガスシステム(1)内の排気ガスの流れ方向(102)に反する方向に向かうようにして導入する還元剤供給装置(4)と、
前記排気ガス浄化装置(2)と前記還元剤供給装置(4)との間に配置され、刃形に構成される還元剤偏向部材(8)を有する還元剤偏向装置(7)とを備え
前記排気ガス浄化装置(2)の出口側部(10)は、前記排気ガス浄化装置(2)の出口断面エリア(11)を規定し、
前記出口断面エリア(11)には、複数の取付部材(12)が互いに間隔をおいて平行に支柱の形で配置され、それぞれの前記取付部材(12)は前記出口側部(10)の端側にあり、
前記還元剤偏向部材(8)が、当該還元剤偏向部材(8)に当たる前記還元剤を前記排気ガス浄化装置(2)から離れる方向に偏向させるようにして、前記複数の取付部材(12)のそれぞれに複数並べて配置されている自動車用排気ガスシステム。
【請求項2】
前記還元剤偏向部材(8)は、その先端部が前記還元剤供給装置(4)に向かう湾曲状に構成され、軸端部(13)により、前記取付部材(12)に締結される請求項1に記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項3】
前記還元剤偏向部材(8)は、その先端部が、前記還元剤供給装置(4)から導入される前記還元剤の向かう方向に角度を有して曲がる形状とされ、軸端部(13)により、前記取付部材(12)に締結される請求項1に記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項4】
前記取付部材(12)は、直線支柱として構成される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項5】
前記取付部材(12)は、湾曲状の支柱として構成される請求項1乃至請求項のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項6】
前記還元剤偏向部材(8)は、前記取付部材(12)上に互いに間隔をおいてそれぞれ配置され、前記還元剤偏向部材(8)のグリッドが形成されている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項7】
前記取付部材(12)は、互いに平行かつ互いに間隔をおいて配置された第1支柱部材(14)及び第2支柱部材(15)の2部材を有する柱として構成され、前記還元剤偏向部材(8)は、その先端部が前記還元剤供給装置(4)に向かう湾曲状に構成され、前記第1支柱部材(14)及び前記第2支柱部材(15)の中間領域において互いに隣接してかつ間隔をおいて並べて配置される請求項に記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項8】
前記還元剤供給装置(4)により当該排気ガスシステム(1)内に導入され、前記還元剤偏向部材(8)に当たる前記還元剤が蒸発するように、前記還元剤偏向部材(8)が構成される請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項9】
前記還元剤偏向部材(8)は、前記還元剤の前記出口側部(10)への拡散方向に、不透明体の形で配置及び/又は構成されている請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項10】
前記還元剤偏向部材(8)は、前記取付部材(12)に一体形成されている請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項11】
前記出口断面エリア(11)の領域では、5、10個、又は20個の前記取付部材(12)が互いに間隔をおいて配置される請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の自動車用排気ガスシステム(1)と、
前記排気ガスシステム(1)の上流側に配置され、前記排気ガスシステム(1)に流動的に接続される内燃エンジンと、を備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用排気ガスシステム、及び当該排気ガスシステムを有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスの汚染物質排出を確実に減少させるため、車両触媒コンバータにより、自動車の内燃エンジン内において正常操作条件下で生成される排気ガスの浄化が可能とされている。当該排気ガスの浄化は、排気ガス処理装置内における内燃エンジンの排気ガスに還元剤を添加して生じさせる。このような排気ガスへの還元剤の添加に基づく既知の方法は、いわゆる選択接触還元(SCR)である。この方法では、排気ガス内の窒素酸化物成分が化学的に還元される。
【0003】
このような選択接触還元は、例えば、高濃度の酸素を有する排気ガスに囲まれた環境下となるディーゼルエンジンのように、燃料燃焼中に高度の空気過剰を発生させる内燃エンジンについて特に好適である。このような排気ガス内の高濃度酸素に対しての窒素酸化物の還元には、従来の3方向触媒コンバータは使用不可能であるため、ディーゼルエンジンに関しては、CO及びCの排出を減らす酸化触媒コンバータが頻繁に使用される。例えば、プラチナやパラジウム等の触媒活性貴金属が、いわゆる「ウォッシュコート」に取り入れられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の選択触媒還元は、ディーゼル酸化触媒コンバータの下流側の排気ガス処理装置の領域で生じる。そして、アンモニアを還元剤として使用できるが、当該アンモニアは排気ガス処理装置に利用可能とする必要がある。但し、排気ガスシステム内へのアンモニア供給では、アンモニアは通常排気ガスシステム内に直接注入されるよりも、還元剤先駆物質の形で排気ガスシステム内に導入される。当該先駆物質は、例えば、尿素水溶液とすることができ、これは「アドブルー(Adblue)」という名前で商業的に知られている。このような先駆物質についての実際の還元剤(アンモニア)への変換は、排気ガス処理装置の下流側にある内燃エンジンの領域における排気ガス流れ内で、熱的かつ/又は触媒コンバータを用いて行わせることができる。
【0005】
還元剤の排気ガスシステムへの供給は、例えば、インジェクタによる注入で行うことができ、当該インジェクタが、実際のディーゼル酸化触媒コンバータの下流側に配置可能とされている。ただし、このような配置によると、特定の設置環境では、注入された尿素水溶液の水滴がディーゼル酸化触媒コンバータの表面に当たり、そこに不適な沈殿物を形成するおそれがある。尿素水溶液から形成されるアンモニアも同様である。例えば、「ウォッシュコート」によるディーゼル酸化触媒の触媒活性貴金属とアンモニアとの接触では、プラチナ又はパラジウムによりアンモニアの窒素酸化物に対して望ましくない反応をもたらすおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記課題をなくす又は少なくとも低減する実施の形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、独立請求項の事項により解決される。好ましい実施の形態としては、従属請求項の事項がある。
【0008】
本発明は、例えば、ディーゼル酸化触媒コンバータ「DOC」等の排気ガスシステムの排気ガス浄化装置と、例えば、尿素水溶液を排気ガスシステムへ導入するためのインジェクタタイプの還元剤供給装置と、刃形で構成されている少なくとも1個の還元剤偏向部材とを有する還元剤偏向装置を提供する思想全般に基づくものである。
【0009】
このような還元剤偏向装置により、還元剤の先駆物質(例えば、尿素水溶液)又は還元剤自体(例えば、アンモニア)と、排気ガス浄化装置(例えば、ディーゼル酸化触媒コンバータ)との不適な接触を回避することができる。これは、特に排気ガス浄化装置内の触媒活性貴金属に適用される。
【0010】
還元剤及び還元剤先駆物質溶液を、排気ガス浄化装置から少なくとも1個の還元剤偏向部材により偏向することができ、その結果、先駆物質、又は先駆物質から形成される還元剤が、ディーゼル酸化触媒コンバータに浸透することを十分又は完全に防止することができる。
【0011】
これにより、排気ガス浄化装置における沈殿物又は窒素酸化物等の副産物の望ましくない形成が十分に又は完全に回避されるため、結果として、排気ガスシステムの効率向上がもたらされる。
【0012】
また、本発明に係る排気ガスシステムは、自動車の内燃エンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、排気ガス浄化装置の下流側に間隔をおいて配置される還元剤供給装置と、を備える。このような還元剤供給装置により、還元剤を排気ガスシステム内に導入することができる。ここで、「還元剤供給装置」とは、アンモニア等の還元剤を直接排気ガスシステム内に導入する装置のみを意味するものではなく、この用語は、還元剤供給装置により、例えば、尿素水溶液等の還元剤の先駆物質が排気ガスシステム内に導入され、そしてこの先駆物質が、排気ガスシステム内での化学反応等により、実際の還元剤に変換される間接的還元剤供給を含む意味であることは明らかである。
【0013】
また、好適な実施形態として、還元剤が排気ガスシステム内に導入される流れ方向は、少なくともその一部分が、排気ガスシステム内における排気ガスの流れ方向に反する方向に向かうように、還元剤供給装置を構成及び/又は配置できる。換言すれば、少なくとも最初は、還元剤が排気ガス流れ方向に反する方向成分を有する動きの拡散等の方向を有するものとされ、当該還元剤は、これよりも上流側に配置される排気ガス浄化装置の方向に向かって移動するように導入される。これにより、還元剤の蒸発のために用いることが可能な時間と、排気ガスとの混合のために用いることが可能な時間が増加する。そしてこれは、限られたスペースであっても還元剤の導入の効率を改善する。還元剤の(主な)流れ方向の傾きは、排気ガスの(主な)流れ方向に対して45°±30°が好ましく、更には45°±15°が特に好ましい。
【0014】
また、好適な実施形態として、還元剤供給装置により排気ガスシステム内に導入されて還元剤偏向部材に当たる還元剤が、排気ガス浄化装置から離れるような方向に偏向するように当該還元剤偏向部材を構成することを挙げることができる。このような偏向であっても、還元剤供給装置により排気ガスシステム内に導入される還元剤は、僅かな割合のみではあるが、排気ガス浄化装置に到達し、望ましくない副産物又は沈殿物を生じさせる可能性がある。排気ガス浄化装置に還元剤が全く到達しないのが理想的である。還元剤偏向装置及びその還元剤偏向部材による、排気ガス浄化装置から離れる方向への当該還元剤の偏向によれば、還元剤が排気ガス浄化装置の部分、特にその表面(例えば、プラチナ被覆)に接触せず、汚染もしないため、その結果、排気ガス浄化装置の表面に対しての還元剤の望ましくない化学反応を回避することができる。
【0015】
さらに、他の実施の形態として、還元剤供給装置により排気ガスシステム内に導入され、還元剤偏向部材に当たる液体の還元剤が蒸発するような追加又は代替の対策を採り得る。インパクト・ベポライザー表面を備えることにより、還元剤の蒸発を補助することができる。特に、還元剤偏向部材は、排気ガス流れに対して流出側に各ベポライザー表面を有することができ、その結果、それは流入排気ガスにより加熱され、これが還元剤の蒸発を補助する。当該蒸発のかなりの割合が還元剤偏向部材において生じるように、還元剤と還元剤偏向部材とを接触させる液体還元剤導入が行われる実施の形態が特に好ましい。
【0016】
特に好ましい実施形態としては、還元剤偏向装置は、排気ガス浄化装置における出口側部分に配置及び/又は取り付けられる。このようにして、還元剤又はその先駆物質が、排気ガス浄化装置の下流側の還元剤供給装置により排気ガスシステム内に導入されるようにすることで、排気ガスの流れ方向に反する方向に還元剤又はその先駆物質が排気ガスシステムに注入される場合に、還元剤偏向装置を特に効果的に使用することができる。
【0017】
ここでは、排気ガスラインにおける排気ガス浄化装置の下流側に配置される単独の部品として、還元剤偏向装置を構成可能としているが、技術的に非常に簡単な方法で構成される実施の形態として、還元剤偏向装置を、例えば、溶接等により、排気ガス浄化装置の出口側部に直接取り付けることも可能である。
【0018】
また、排気ガスシステムに注入される還元剤又はその先駆物質から排気ガス浄化装置を十分に保護するために、還元剤偏向装置は、単一の還元剤偏向部材に限られず、排気ガス浄化装置の出口側部の領域に配置される複数の還元剤偏向部材を全て備えたものとすることができる。
【0019】
還元剤又は先駆物質の上記出口側部に向かう拡散方向での還元剤偏向部材の不透明体配置、又は/及び不透明体構成により、還元剤偏向装置の特に効果的な断面を形成可能である。ここで「拡散方向」は、還元剤又はその先駆物質が、還元剤供給装置により排気ガスシステム内へ注入される方向を意味する。
【0020】
更なる実施の形態では、出口側部は、排気ガス浄化装置の出口断面エリアと規定される。この出口断面エリアの領域には、実質的に支柱の形で構成されている少なくとも1個の取付部材を配置することができ、これは出口開口部の端部に配置されている。次に、少なくとも1個の取付部材に、少なくとも1個の還元剤偏向部材を配置可能である。実質的に支柱の形で構成される上記取付部材を、例えば、溶接により、出口開口部に取り付けることができる。実質的に支柱の形で構成される当該取付部材の使用により、機械的に非常に安定した還元剤偏向部材の配置を出口側部の領域で達成でき、そして選択的に、事前説明した不透明体配置又は構成を、簡単な方法で実現することも可能である。
【0021】
技術的に非常に簡単な方法で構成し、そのため好適な価格にできるものとして、還元剤偏向部材を取付部材上に一体形成したものを挙げることができる。
【0022】
自動車内の排気ガスシステムを実現するために特に好ましい実施の形態としては、互いに間隔をおいて配置される少なくとも2個、好ましくは4個、最も好ましくは10個の取付部材を、出口断面エリアの領域に配置することができる。そして各取付部材を、ここでは支柱の形で構成することができる。このように複数の取付部材を備えることにより、多数の還元剤偏向部材をそれぞれの取付部材に配置可能になるため、排気ガスシステム内に導入される還元剤又はその先駆物質を特に効果的に偏向させることが可能となる。
【0023】
好ましくは、取付部材を、出口断面エリアに線形に配置することができる。そして還元剤偏向部材を、取付部材上に互いに間隔をおいて配置でき、その結果、還元剤偏向部材のグリッドが、還元剤偏向部材により形成される。このような還元剤偏向部材のグリッド状配置により、還元剤又はその先駆物質の特に効果的な偏向が達成される。
【0024】
技術的に非常に簡単な方法で構成される実施の形態としては、取付部材を直線支柱としてそれぞれ構成してもよい。これらの支柱は、排気ガス浄化装置の出口断面エリアの領域で互いに略平行かつ間隔をおいて配置される。
【0025】
この代替の変形例では、取付部材を、排気ガス浄化装置の出口断面エリアの領域で、同様に間隔をおいて配置可能な湾曲状支柱として構成してもよい。
【0026】
還元剤偏向部材による還元剤又はその先駆物質の更に向上した偏向は、軸方向に湾曲状とされ、又は角度が付けられた還元剤偏向部材の構成からなる好ましい実施の形態によって達成される。本実施の形態では、還元剤偏向部材は、各取付部材の軸方向端部に締結される。
【0027】
さらに、本発明は、1つ以上の上述した特徴を有し、排気ガスシステムの上流側に配置されて当該排気ガスシステムに流動的に接続される内燃エンジンと、当該排気ガスシステムとを備える自動車に関する。
【0028】
本発明のさらに重要な特徴及び効果は、従属請求項、図面、図面に関する説明から把握される。
【0029】
前記特徴及び下記特徴は、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、示された各組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせにおいて、又は単独で使用することができる。
【0030】
本発明の好ましい例示的な実施の形態は、図面に例示され、下記説明にてさらに詳述される。ここでは、同一符号は、機能的に同一の構成要素又はその同類物を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来技術に係る排気ガスシステムの概略図である。
図2】本発明に係る排気ガスシステムの概略図であり、図2(a)は側面図を示し、図2(b)は裏面図を示す。
図3図2に示した実施形態の第1変形例であり、偏向部材が湾曲状に構成された例を示す図である。
図4図2に示した実施形態の第2変形例であり、偏向部材が角度を有して構成された例を示す図である。
図5図2に示した実施形態の第3変形例であり、偏向部材が湾曲状に構成されている例を示す図である。
図6図2に示した実施形態の第4変形例であり、取付部材が2部材で構成されている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1の説明図では、排気ガスシステム100が概略図で示されている。排気ガスシステム100は、排気ガス浄化装置101を有している。この排気ガス浄化装置101は、例えば、自動車の内燃エンジン(図略)から排出される排気ガス102の浄化をするためのディーゼル酸化触媒コンバータとして構成され得る。当該ディーゼル酸化触媒コンバータにより、例えば、排気ガス102中のCO及びCの排出低減が可能である。
【0033】
選択的接触還元のため、インジェクタタイプの還元剤供給装置103が、排気ガス浄化装置101の下流側に配置可能とされている。この剤供給装置103により、例えば、尿素水溶液といった還元剤先駆物質を排気ガスシステム100内に導入可能となっている。この尿素水溶液は、排気ガス流の範囲内で熱的に及び/又は触媒を用いることで、排気ガス浄化装置101の下流側となる領域104内で還元剤(例えば、アンモニア)に変換される。粒子フィルタ106(「SDPF」)は、領域104の下流側に配置される。排気ガス中に尿素水溶液を効果的に混合させるために、例えば、多孔質混合器等の形で、適切な混合部材を領域104に配置できる(明確化のために図1では不図示)。この代替策として、特に好ましい排気ガスと尿素水溶液との混合を達成するために、図1に示すように、排気ガスシステムの領域104内にインジェクタ103により注入される尿素水溶液の流れ方向Rが、少なくとも部分的に排気ガスシステム100内の排気ガスの流れ方向102に反する向きとされている。
【0034】
しかしながら、この短所は、図1に示される尿素水溶液105の一部が、排気ガス浄化装置101内に浸透する可能性があり、望ましくない沈殿物等が、その中に形成されてしまうことである。さらに、尿素水溶液又はそれから形成されるアンモニア(NH)は、排気ガス浄化装置101の、例えばパラジウム又はプラチナの表面コーティングにより、窒素酸化物(NOx)に反応するおそれがある。これらの作用は、排気ガスシステム100の浄化能力低下を招く。
【0035】
また、排気ガスシステム100の領域104において、尿素水溶液と排気ガスとを効果的に混合するために多孔質混合器等を採用する場合、この多孔質混合器に反映される還元剤が、類似した方法でディーゼル酸化触媒コンバータに浸透する可能性があり、上記沈殿物又は望ましくない副生成物(例えば、NOx)をもたらすおそれがある。
【0036】
一方、図2の説明図には、本発明に係る排気ガスシステムが示されている。ここで、図2(a)は排気ガスシステムの概略側面図を示し、図2(b)は排気ガスシステム1を排気ガスの流れ方向に反する方向から見た図である。図2では、本発明に係る排気ガスシステムは1で示されている。
【0037】
排気ガスシステム1は、自動車(不図示)の内燃エンジンから排出される排気ガス3を浄化するためのディーゼル酸化触媒として排気ガス浄化装置2を有する。排気ガス浄化装置2の下流側、又は排気ガス浄化装置2から間隔をおいて、還元剤供給装置4が配置されている。これにより、図2(a)に概略的に示されている還元剤5を排気ガスシステム1内に導入可能としている。還元剤供給装置4により、好ましい例としての尿素水溶液といった還元剤先駆物質溶液を排気ガスシステム1内に導入可能となる。排気ガス浄化装置2の下流側の領域6では、還元剤先駆物質を排気ガスシステム1から排気ガス3と混合することができ、結果として、還元剤(尿素水溶液の場合はアンモニア(NH))を生成することができる。還元剤により、排気ガス3に含まれる酸化窒素(NOx)を窒素(N)に還元することができる。
【0038】
排気ガスを還元剤先駆物質と効果的に混合させるために、後者を、少なくとも部分的には、排気ガス3の流れ方向に反する方向となる流れ方向Sに、システム1内に注入する(図2(a)参照)。このとき、還元剤先駆物質溶液又はここから形成される還元剤が排気ガス浄化装置2に進入する可能性がある。このため、本発明では、還元剤偏向装置7が、排気ガス浄化装置2と還元剤供給装置4との間に配置されている。この還元剤偏向装置7は、刃形に構成された還元剤偏向部材8を少なくとも1個有している。
【0039】
図2(a)では、このような還元剤偏向部材8が8つ例示されている。また、変形例として、異なる数の還元剤偏向部材8を設けることができることも明らかである。還元剤又は還元剤先駆物質は還元剤供給装置4により排気ガス装置1内に導入されるが、還元剤偏向部材8は、当該還元剤偏向部材8に当たる還元剤又は還元剤先駆物質を排気ガス浄化装置2から離れる方向に偏向するように構成されている。還元剤偏向装置7は、排気ガス浄化装置2の出口側部10に配置又は/及び取り付けられる。好ましい変形例としては、還元剤偏向部材8を、不透明体の形で拡散方向Sに並べて配置又は/及び構成することができる。これにより、還元剤が排気ガス浄化装置2に浸透することを非常に適切に防ぐことができる。
【0040】
図2(a)によれば、出口側部10は、排気ガス浄化装置2の出口断面エリア11を規定している。図2(b)は、出口断面エリア11を視認する方向からの排気ガス浄化装置2を示す。出口断面エリア11の領域には、例えば5つの取付部材12が配置されている。これら取付部材12は、実質的に支柱の形で構成され、それぞれ排気ガス浄化装置2の出口側部10における端側に設けられている。本実施の形態の変形例として、支柱の形で構成される異なる数の取付部材12とすることも可能である。数個の還元剤偏向部材8を、各取付部材12に配置可能である。図2(b)に示すこのような各偏向部材は、単なる例である。取付部材12は、例えば、溶接により、排気ガス浄化装置2の出口側10における端側に取付可能である。同様に、還元剤偏向部材8を各取付部材12に溶接することが可能である。ただし、変形例として、還元剤偏向部材8を各取付部材12上に一体的に形成する構成も採り得る。出口断面エリア11の領域には、少なくとも5個、更に好ましくは10個、最も好ましくは少なくとも20個の取付部材12を、互いに間隔をおいて配置することが好ましい。
【0041】
図2(b)では、取付部材12が出口断面エリア11に線形に配置されている。各取付部材12上に、還元剤偏向部材8を互いに間隔をおいて配置しているので、還元剤偏向部材のグリッドの原型は、還元剤偏向部材8により形成される。
【0042】
それぞれの取付部材12は、図2(b)に例示されているように、排気ガス浄化装置2の出口断面エリア11の領域に互いに略平行にかつ間隔をおいて配置され、実質的に直線支柱として構成することができる。
【0043】
還元剤偏向部材8を、A軸方向に直線的に構成することができる(図2(a)参照)。
【0044】
図3及び図4に変形例を示す。還元剤偏向部材8は、上記A軸方向に沿って構成されるが、図3に示すように湾曲状、又は、図4に示すように角度を有する形状として、それぞれ構成することも可能であり、取付部材12上における軸端部13にそれぞれ取り付けることができる。
【0045】
図5に示す変形例のように、取付部材12を、排気ガス浄化装置2の出口断面エリア11の領域に互いに間隔をおいて配置される湾曲状の支柱としてそれぞれ構成することも可能である。
【0046】
最後に、図6に、取付部材12又はそれに取り付けられる還元剤偏向部材8の特定の変形例を示す。この取付部材12は、分離された第1支柱部材14及び第2支柱部材15の2部材を有する柱として構成されている。第1支柱部材14及び第2支柱部材15の2部材は、A軸方向に向かうようにして、互いに平行かつ互いに間隔をおいて配置されている。数個の還元剤偏向部材8が、第1支柱部材14及び第2支柱部材15の中間領域において互いに隣接して、かつ間隔をおいて軸方向に並べて配置される。例えば、還元剤偏向部材8は、溶接により、第1支柱部材14及び第2支柱部材15にそれぞれ端部側で取り付けられている。但し、これに代えて、還元剤偏向剤8を第1支柱部材14及び第2支柱部材15の2部材に一体的に形成することもできる。
【0047】
図6の説明図では、それぞれ湾曲状に構成された還元剤偏向部材8が示されている。ただし、更なる変形例として、直線状又は角度をもって構成した還元剤偏向部材8も採用し得る(これについては、図2及び4参照)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6