(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1のマルチコアファイバ同士を接続する場合、それらマルチコアファイバの端面同士が対向され、当該マルチコアファイバに光が入射される。そして、一般的には、マルチコアファイバの端面部分を、当該マルチコアファイバの側面のうち互いに直交する2つの方向から撮影し、その撮影結果に基づいて各マルチコアファイバを位置決めする手法が採用される。
【0007】
ところが、特許文献1のマーカーは複数のコアが並べられる方向と重なる部位に配置されているため、当該方向からの撮影画像にはマーカーがコアの死角になって撮影されないことになる。
【0008】
したがって、複数のコアが並べられる方向とは直交する方向の撮影画像だけでは、当該方向を境界として一方側にマーカーがあるのか他方側にマーカーがあるのか判別し難くなる。この結果、他のマーカーなどを設ける等といった対策が講じられないと、マルチコアファイバの位置決めがあいまいとなってしまうことが懸念される。
【0009】
そこで本発明は、他の光学部品との接続をより簡易化させ得るマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、複数のコアと、前記複数のコアを囲むクラッドと、前記クラッド内に配置されるマーカーとを備えるマルチコアファイバであって、前記複数のコアは、前記クラッドの中心を通る直線上に並べられて配置され、前記マーカーは、前記複数のコアが直線上に並べられる第1方向において各前記コアと重ならず、かつ、前記第1方向とは直交する第2方向において各前記コアと重ならない部位に、前記クラッドの長さ方向に沿って配置されることを特徴とする。
【0011】
このようなマルチコアファイバにおいては、マルチコアファイバに入射した光をマルチコアファイバの側面から見た場合、複数のコアが並べられる第1方向とその第1方向とは直交する第2方向との双方からマーカーを視認させることができる。このため、他のマーカーなどを設ける等といった対策を講じなくても、1つのマーカーだけでマルチコアファイバ断面における第1方向及び第2方向の各コアの状態を立体的に捉えさせることができ、当該マルチコアファイバを明瞭に位置決めさせることが可能となる。こうして、本発明のマルチコアファイバは、他の光学部品との接続をより簡易化させることができる。
【0012】
また、前記マーカーは、前記複数のコアそれぞれから、前記複数のコアにおける中心軸間の距離よりも離れた部位に配置されることが好ましい。
【0013】
このようにした場合、マーカーが設けられていない場合と同程度にまでコア間のクロストークを低減することができる。
【0014】
また、前記マーカーは、前記クラッドの中心軸を通り前記第2方向に沿った直線上とは異なる部位に配置されるようにすることができ、あるいは、前記直線上の部位に配置されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、他の光学部品との接続をより簡易化させ得るマルチコアファイバが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するために好適となる実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
【0018】
(1)第1実施形態
図1は、第1実施形態におけるマルチコアファイバ1の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11と、複数のコア11を被覆するクラッド12と、クラッド12内に配置されるマーカー13と、クラッド12を被覆する第1保護層14と、第1保護層14を被覆する第2保護層15とを主な構成要素として備える。
【0019】
複数のコア11は、クラッド12の中心軸C1を通る直線LN上に並べられて配置されており、最も外側に位置する1対の外側コア11Aと、当該1対の外側コア11Aに挟まれる内側コア11Bとを有する。
【0020】
本実施形態の場合、内側コア11Bは2本とされ、互いに隣り合う内側コアの中心軸間の距離Λ1は、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2よりも大きくされる。これら中心軸間の距離Λ1及びΛ2は24μm以上35μm以下の範囲内とされる。
【0021】
なお、
図1では、クラッド12の中心C1を通る直線LN上に各コア11の中心が位置しているが、当該直線LN上に並べられて各コア11が配置されていれば、各コア11の中心はクラッド12の中心C1を通る直線からずれた位置であっても良い。
【0022】
また、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとのカットオフ波長の差は100nm以下とされ、外側コア11Aの外周面とクラッド12の外周面との最短距離SDは15μm以上62.5μm以下の範囲内とされる。
【0023】
マーカー13は、クラッド12の平均屈折率よりも高くコア11の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有するガラス部材とされる。例えば、ゲルマニウム等の平均屈折率を上げるドーパントが添加された石英でコア11が構成され、純粋な石英でクラッド12が構成され、当該コア11のドーパント量よりも少ない量のドーパントが添加された石英でマーカー13が構成される。
【0024】
本実施形態の場合、マーカー13の断面における外形は円形状とされ、当該マーカー13の断面積はコア11の断面積よりも小さくされる。
【0025】
このようなマーカー13は、
図2に示すように、複数のコア11が直線上に並べられる第1方向において各コア11と重ならず、かつ、当該第1方向とは直交する第2方向において各コア11と重ならない部位PAに、クラッド12の長さ方向に沿って配置される。
【0026】
マーカー13とそのマーカー13に最も近いコア11との中心軸間の距離Λ3は、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2よりも大きくされる。すなわち、マーカー13は、複数のコア11それぞれから、当該複数のコアにおける中心軸間の距離Λ1及びΛ2よりも離れた部位に配置される。
【0027】
なお、本実施形態の場合、マーカー13は、クラッド12の中心軸C1を通り第2方向に沿った直線上とは異なる部位に配置されている。
【0028】
以上のマルチコアファイバ1では、複数のコア11が直線上に並べられる第1方向において各コア11と重ならず、かつ、第1方向とは直交する第2方向において各コア11と重ならない部位PAに、マーカー13がクラッド12の長さ方向に沿って配置されている。
【0029】
このようなマルチコアファイバ1においては、複数のコア11それぞれに入射した光をマルチコアファイバの側面から見た場合、第1方向と第2方向との双方からマーカー13を視認させることができる。
【0030】
このため、他のマーカーなどを設ける等といった対策を講じなくても、1つのマーカー13だけでマルチコアファイバ断面における第1方向及び第2方向の各コア11の状態を立体的に捉えさせることができる。
【0031】
したがって、本実施形態におけるマルチコアファイバ1と他のマルチコアファイバとを接続する際に、当該マルチコアファイバ1を明瞭に位置決めさせることが可能となる。こうして、本実施形態におけるマルチコアファイバ1は、他の光学部品との接続をより簡易化させることができる。
【0032】
また、このマーカー13は、複数のコア11それぞれから、当該複数のコアにおける中心軸間の距離Λ1及びΛ2よりも離れた部位に配置されているため、当該マーカー13が設けられていない場合と同程度にまでコア間のクロストークを低減することができる。
【0033】
さらに、このマーカー13は、クラッド12の中心軸C1を通り第2方向に沿った直線上とは異なる部位に配置されている。このため、マーカー13は、中心軸C1を基準として第1方向において非対称に位置しており、当該第1方向において対称に位置する場合に比べて容易に各コア11を識別させることができる。
【0034】
ところで、本実施形態の場合、互いに隣り合う内側コア11Bの中心軸間の距離Λ1は、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2よりも大きい。
【0035】
このため、中心軸間の距離Λ1及びΛ2が同程度である場合に比べて、内側コア11B同士のクロストークを抑えつつも最短距離SDを小さくすることができる。
【0036】
また、これら中心軸間の距離Λ1及びΛ2が24μm以上とされているため互いに隣り合うコア間のクロストークを有効に抑えることができ、当該中心軸間の距離Λ1及びΛ2が35μm以下とされているためマルチコアファイバ1の外径が大きくなることを抑制することができる。
【0037】
さらに本実施形態の場合、外側コア11Aの外周面とクラッド12の外周面との最短距離SDは、15μm以上62.5μm以下とされているため、各コア11に対する外乱の影響を有効に抑えつつも薄厚化することができる。なお、この最短距離SDは、20μm以上35μm以下とされることがより好ましい。
【0038】
さらに本実施形態の場合、最もカットオフ波長のばらつきが生じ易い外側コア11Aと内側コア11Bとのカットオフ波長の差が100nm以下とされている。このため、マルチコアファイバ1の長さが1000m以下の短距離用であったとしても、クラッド12に囲まれる複数のコア11おいて互いに隣り合うコアすべてのカットオフ波長の差を100nm以下とすることができる。したがって、外側コア11Aと内側コア11Bとのカットオフ波長の差が100nmを超える場合に比べて、シングルモードで光を伝搬させ得る通信波長帯域を広げることができる。
【0039】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。ただし、第2実施形態におけるマルチコアファイバの構成要素のうち第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0040】
図3は、第2実施形態におけるマルチコアファイバ2の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図3に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ2では、マーカー13の配置部位が第1実施形態と異なる。
【0041】
本実施形態におけるマーカー13は、クラッド12の中心軸C1を通り第2方向に沿った直線上の部位に配置されている点で、当該直線上とは異なる部位に配置されていた第1実施形態の場合と相違する。
【0042】
なお、本実施形態におけるマーカー13は、第1実施形態と同様に、第1方向及び第2方向において各コア11と重ならない部位PAに、クラッド12の長さ方向に沿って配置される。また、本実施形態におけるマーカー13は、第1実施形態と同様に、複数のコア11それぞれから、当該複数のコアにおける中心軸間の距離Λ1及びΛ2よりも離れた部位に配置される。
【0043】
このようなマルチコアファイバ2によれば、上記第1実施形態と同様に、他の光学部品との接続をより簡易化させることができるのみならず、マーカー13が設けられていない場合と同程度にまでコア間のクロストークを低減することができる。
【0044】
(3)変形例
上記実施形態では内側コア11Bのコア数が2本とされた。しかしながら内側コア11Bのコア数は、1本とされても良く、3本以上とされても良い。なお、内側コア11Bのコア数が2本以上とされる場合、互いに隣り合う内側コア11Bの中心軸間の距離Λ1と、外側コア11Aとその外側コア11Aの隣に位置する内側コア11Bとの中心軸間の距離Λ2とは同程度であっても良い。ただし、内側コア11B同士のクロストークを抑えつつも最短距離SDを小さくする場合には、上述したように、距離Λ1が距離Λ2よりも大きくされることが好ましい。
【0045】
上記実施形態では、マーカー13がクラッド12の平均屈折率よりも高くコア11の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有するガラス部材とされた。しかしながら、クラッド12の平均屈折率及びコア11の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有するガラス部材でマーカー13が構成されていても良い。例えば、ゲルマニウム等の平均屈折率を上げるドーパントが添加された石英でコア11が構成され、純粋な石英でクラッド12が構成され、フッ素等の平均屈折率を下げるドーパントが添加された石英でマーカー13が構成される。また、マーカー13が空孔とされても良い。
【0046】
また上記実施形態では、マーカー13の断面における外形が円形状とされた。しかしながら、この外形は円形以外の様々な形状を適用することができる。
【0047】
また上記実施形態では、マーカー13の断面積がコア11の断面積よりも小さくされた。しかしながら、マーカー13の断面積はコア11の断面積以上であっても良い。なお、マーカー13の断面積とコア11の断面積とが異なる場合には、マーカー13の断面積とコア11の断面積とが同じ場合に比べて、調芯時におけるマーカー13の識別性をより一段と高めることができる。また、マーカー13の断面積とコア11の断面積とが異なる場合には、マーカー13の断面積とコア11の断面積とが同等である場合に比べて、コア間のクロストークをより一段と抑えることができる。
【0048】
本発明のマルチコアファイバは、上述した内容以外に、適宜、本願目的を逸脱しない範囲で組み合わせ、省略、変更、周知技術の付加などをすることができる。
【0049】
(4)マルチコアファイバの接続方法
次に、マルチコアファイバの接続方法について図面を用いながら詳細に説明する。
図4は、マルチコアファイバの接続方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、マルチコアファイバの接続方法は、端面対向工程P1、調芯工程P2及び融着工程P3を主工程として備える。
【0050】
<端面対向工程>
端面対向工程P1は、接続させるべき1対のマルチコアファイバにおける端面同士を、当該マルチコアファイバの中心軸が一致するように対向させる工程である。
【0051】
図5は、1対のマルチコアファイバを接続する様子を示す図である。なお、この
図5では、便宜上、上記第1実施形態における1対のマルチコアファイバ1を接続する様子が示されている。
【0052】
図5に示すように、本工程では、1対のマルチコアファイバ1が載置台30に載置され、これらマルチコアファイバ1それぞれの中心軸が一致する状態で、当該マルチコアファイバ1における端面同士が対向される。
【0053】
なお、1対のマルチコアファイバ1における一方から他方に向かって光が伝搬できる程度に端面同士が対向されていれば、当該端面間に隙間があってもなくても良い。
【0054】
また、1対のマルチコアファイバ1は、コア11とマーカー13との相対的位置関係が同様であれば、各マルチコアファイバ1のクラッド12の直径が互いに異なっていても良く、各マルチコアファイバ1の第1保護層14や第2保護層15の厚さが異なっていても良い。
【0055】
<調芯工程>
調芯工程P2は、端面同士が対向された1対のマルチコアファイバにおけるコア11の光軸を調整する工程である。
【0056】
第1段階として、
図5に示すように、1対のマルチコアファイバ1の端面部分が、第1カメラCR1及び第2カメラSR2を用いて、当該マルチコアファイバの側面のうち互いに直交する2つの方向から撮影される。このとき、マルチコアファイバ1には光が入射される。
【0057】
第2段階として、2つのカメラのうち、例えば第1カメラCR1における撮影結果を用いて各マルチコアファイバ1が回転される。
【0058】
すなわち、
図6に示すように、第1カメラCR1で撮影される画像IM1において、コア11を伝搬する光の投影ラインLN1と、マーカー13を伝搬する光の投影ラインLN2とが1ラインずつ現れる状態となるように、各マルチコアファイバ1が回転される。
【0059】
具体的には、例えば、第1カメラCR1に接続されるコンピュータから、投影ラインLN1及びLN2が画像IM1に現れるまで、マルチコアファイバ1に設置された回転器具に回転指令が与えられる。
【0060】
第3段階として、第3段階で用いられたカメラとは異なる例えば第2カメラCR2を用いて各マルチコアファイバ1が回転される。
【0061】
すなわち、
図7に示すように、第2カメラCR2で撮影される画像IM2において、コア11を伝搬する光の投影ラインLN1が4ラインとも同等の幅で現れ、マーカー13を伝搬する光の投影ラインLN2が1ライン現れる状態となるように、各マルチコアファイバ1が回転される。
【0062】
具体的には、例えば、第2カメラCR2に接続されるコンピュータから、互いに同等幅の4つの投影ラインLN1と1つの投影ラインLN2とが画像IM2に現れるまで、マルチコアファイバ1に設置された回転器具に回転指令が与えられる。
【0063】
このようにして本工程では、第1カメラCR1での撮影結果と、第2カメラSR2での撮影結果とに基づいて各マルチコアファイバ1が位置決めされる。
【0064】
<融着工程>
融着工程P3は、調芯工程P2を経た1対のマルチコアファイバの端面同士を融着する工程である。具体的には、例えば、酸水素バーナあるいはアーク溶接などによって端面同士が融着される。
【0065】
このように、接続対象となる1対のマルチコアファイバは、上述の端面対向工程P1、調芯工程P2及び融着工程P3を順次経ることで接続することができる。
【0066】
以上の説明では、マルチコアファイバ同士の接続の例について説明したが、本発明は、マルチコアファイバと複数のコアを有する平面導波路との接続や、マルチコアファイバと送受信デバイスとの接続にも適用することができる。