(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
保護フィルム、偏光子、及び1軸延伸されたポジティブAプレートの順で積層された上側偏光板と、1軸延伸されたポジティブAプレート、偏光子、及び保護フィルムの順で積層された下側偏光板とを含み、
前記上側偏光板及び下側偏光板のポジティブAプレートは、それぞれ正面位相差値(R0)が10〜100nmで、屈折率比(NZ)が0.9〜1.1であり、その遅相軸が隣接した偏光子の吸収軸と平行になるように配置される複合構成偏光板セット。
前記ポジティブAプレートは三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSF)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる群から選ばれたもので製造されるものである請求項1に記載の複合構成偏光板セット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、高温多湿な環境に長時間露出した場合でも物理的変化に対する抵抗性に優れており、最初に設計された位相差補償効果を維持することができる複合構成偏光板セットと、これを備えたIPSモード液晶表示装置に関する。
【0017】
以下、本発明の複合構成偏光板セットを具体的に説明する。
本発明の複合構成偏光板セットは、保護フィルム、偏光子、及び1軸延伸されたポジティブAプレートの順で積層された上側偏光板と、1軸延伸されたポジティブAプレート、偏光子、及び保護フィルムの順で積層された下側偏光板とを含む。
上側偏光板及び下側偏光板のポジティブAプレートは、それぞれ正面位相差値(R0)が10〜100nm、屈折率比(NZ)が0.9〜1.1である。また、その遅相軸は隣接した偏光子の吸収軸と平行になるように配置される。
偏光子とは、入射する自然光を所望する単一偏光状態(線偏光状態)に変える役目をする光学フィルムであって、当分野で一般的に偏光機能を遂行するものであれば特に限定されない。
【0018】
上記偏光子は、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムをヨウ素や二色性染料で染色して、それを一定方向に延伸して製造することができる。また、透明基板上に、偏光機能を有する微細なパターンの導電性格子があり、該格子の谷と山に絶縁層がコーティングされている薄型偏光板などを使用することができる。
偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化することで製造することができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。上記酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体の具体例としては、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を持つアクリルアミド類などが挙げられる。
【0019】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は変性されたものであることができるが、例えばアルデヒド類に変性されたポリビニルポルマールまたはポリビニルアセタールなども使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の鹸化率は、通常85〜100モル%、好ましくは98モル%以上であることができる。 また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜5,000である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を膜に形成させて偏光子として使用する。ポリビニルアルコール系樹脂の膜形成方法は特に制限されず、公知の多様な方法を利用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の膜厚みは特に制限されず、例えば10〜150μmであることができる。
【0020】
偏光子は、通常、上記のようなポリビニルアルコール系フィルムを1軸延伸する工程、二色性色素で染色して吸着させる工程、ホウ酸水溶液で処理する工程及び水洗と乾燥工程を経て製造される。
ポリビニルアルコール系フィルムを1軸延伸する工程は染色の前、染色と同時、または染色の後に遂行することができる。1軸延伸が染色の後に遂行される場合はホウ酸処理前、またはホウ酸処理中に遂行することもできる。勿論、これらのうち、複数個の段階で1軸延伸を遂行することも可能である。1軸延伸は周速の異なるロールまたは熱ロールを使用することができ、大気中で延伸する乾式延伸であることもあり、溶媒で膨潤させた状態で延伸する湿式延伸であることもある。延伸比は通常3〜8倍である。
【0021】
延伸されたポリビニルアルコール系フィルムを二色性色素で染色する工程は、例えば二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬する方法を利用することができる。二色性色素は、具体的にヨウ素または二色性染料が用いられる。また、ポリビニルアルコール系フィルムは染色の前に水に予め浸漬して膨潤させることが好ましい。
【0022】
二色性色素としてヨウ素を利用する場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する染色用水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬して染色する方法を利用することができる。通常、染色用水溶液においてのヨウ素の含量は、水(蒸溜水)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含量は水100重量部に対して0.5〜20重量部である。染色用水溶液の温度は通常20〜40℃であり、浸漬時間、例えば染色時間は通常20〜1,800秒である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を利用する場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む染色用水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬して染色する方法を利用することができる。染色用水溶液においての二色性有機染料の含量は、水100重量部に対して通常1×10
-4〜10重量部であり、1×10
-3〜1重量部であることが好ましい。染色用水溶液は硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色補助剤としてさらに含有することができる。染色用水溶液の温度は通常20〜80℃であり、浸漬時間、例えば染色時間は通常10〜1,800秒である。
【0023】
染色されたポリビニルアルコール系フィルムをホウ酸処理する工程は、ホウ酸含有水溶液に浸漬することで遂行することができる。通常、ホウ酸含有水溶液においてのホウ酸の含量は水100重量部に対して2〜15重量部であり、5〜12重量部であることが好ましい。二色性色素としてヨウ素を利用した場合のホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その含量は、通常、水100重量部に対して0.1〜15重量部であり、5〜12重量部であることが好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は50℃以上、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃であり、浸漬時間は 60〜1,200秒、好ましくは150〜600秒、より好ましくは200〜400秒である。
【0024】
ホウ酸処理の後、ポリビニルアルコール系フィルムは水洗及び乾燥される。水洗処理はホウ酸処理されたポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬することで遂行することができる。水洗処理時の水の温度は5〜40℃であり、浸漬時間は1〜120秒である。水洗後に乾燥して偏光子を得る。乾燥処理は、通常、熱風乾燥器や遠赤外線加熱器を利用して遂行することができ、乾燥処理温度は通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、乾燥時間は通常60〜600秒、好ましくは120〜600秒である。
偏光子の厚みは5〜40μmであることができる。
【0025】
本発明で1軸延伸されたポジティブAプレートは正面位相差値(R0)が10〜100nmである。上記ポジティブAプレートは屈折率比(NZ)が0.9〜1.1である。
上記ポジティブAプレートの正面位相差値(R0)は広視野角を確保するために考慮された最適の範囲であり、10nm〜100nm、好ましくは50nm〜80nmである。
また、ポジティブAプレートは理論的には屈折率比(NZ)が1.0の場合を意味するが、現実的にはフィルムの製造工程上、屈折率比(NZ)が1.0であるポジティブAプレートを製造することは非常に困難である。それで通常、当業界では屈折率比(NZ)が1.0である場合と実質的に同一特性を有することができる屈折率比(NZ)範囲もポジティブAプレートとして取り扱っている。
【0026】
本発明は、実質的なポジティブAプレートの屈折率比(NZ)範囲を0.9〜1.1とする。
ポジティブAプレートの光学特性は可視光線領域内の全波長に対して下記の数式1〜3で定義される。
光源の波長に対する言及がない場合は、波長589nmの光に対する光学特性である。ここで、Nxは面内方向で屈折率が最大である軸方向の屈折率であり、Nyは面内方向でNxと垂直方向の屈折率であり、Nzは厚み方向の屈折率であり、それらは以下に説明するように
図2に示される。
【0030】
本明細書では、上記Rthは厚み方向の位相差(遅延:retardation)であり、厚み方向における面内平均屈折率との差を示すものである。これは実質的な位相差とは言えない参考値である。
R0は正面位相差であり、光がフィルムをノーマル方向(垂直方向)で通過したときの実質的な位相差である。
NZは屈折率比であり、これをもって位相差フィルムのプレートの種類を区分することができる。
【0031】
位相差フィルムに適用されるプレートの種類は、フィルムの面内方向に光軸(光は位相差が存在せずに伝搬する)を有するAプレート;面と垂直方向の光軸を有するCプレート;及び光軸が2つ存在する場合は二軸性プレートに区分される。
【0032】
本発明のポジティブAプレートは正(+)の屈折率特性を有するフィルムからなることができる。具体的に三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSF)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる群から選ばれたものを使用することができる。
本発明のポジティブAプレートは外部環境の物理的変化に対する抵抗性を維持するために上記正(+)の屈折率特性を有するフィルムを1軸延伸して製造される。上記延伸されたフィルムは、フィルムを構成する高分子の配列が変形されるので無延伸されたフィルムに比べて外部環境の物理的変化に対する敏感度が低下される。
【0033】
延伸は固定端延伸と自由端延伸とに分けられる。固定端延伸とはフィルムを延伸する間に延伸する方向以外の長さを固定する方式である。自由端延伸とはフィルムを延伸する間に延伸方向以外の方向に対して自由度を付与する方式である。
本発明のポジティブAプレートは自由端であって、1軸延伸する。
また、延伸以外に追加工程を適用して遅相軸(Slow Axis)の方向、位相差値及びNZの値を制御することができ、この追加工程は当分野で一般的に適用される工程であって特に限定しない。
【0034】
1軸延伸されたポジティブAプレートはその遅相軸が下側偏光板の偏光子の吸収軸と互いに平行になるように配置する。偏光機能が与えられたポリビニルアルコール(PVA)からなる偏光子は、偏光板の構成のうち高温多湿な外部環境で最も敏感に反応する。よって、ポジティブAプレートの遅相軸と偏光子の吸収軸を平行になるように配置して物理的挙動が同じ方向に生じられるように誘導することで、外部環境に対する物理的抵抗性を向上することができる。
【0035】
保護フィルムは、偏光子が機械的に弱いためそれを保護するためのフィルムを通称するものである。
保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、遮水性及び等方性などに優れたフィルムを使用することができる。上記保護フィルムはこれを構成する樹脂の種類によって透湿度が変わるので、これを考慮して適宜選択することが好ましい。
保護フィルムは、具体的にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を持つポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、方向族ポリアミドなどのアミド系樹脂;イミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエテルエテルケトン系樹脂;硫化ポリフェニレン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂などのような熱可塑性樹脂からなる群から選ばれたフィルムを使用することができ、上記熱可塑性樹脂のブレンド物からなるフィルムも使用することができる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂からなるフィルムを使用することもできる。
【0036】
保護フィルムのうち、上記熱可塑性樹脂の含量は50〜100重量%、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは60〜98重量%、最も好ましくは70〜97重量%である。含量が50重量%未満の場合は熱可塑性樹脂が有している本来の高透明性を十分発現できないことがある。
【0037】
偏光板は、通常、ロール・ツー・ロール(Roll−To−Roll)工程、及びシート・ツー・シート(Sheet−to−Sheet)工程を用いて製造される。歩留まり及び製造工程上の効率性などを考慮してロール・ツー・ロール工程を適用するのが好ましく、特にPVA偏光子の吸収軸の方向が常にMD方向に固定されるので、この適用が効果的である。
【0038】
本発明による複合構成偏光板セットは高温多湿な環境に長時間露出した場合でも物理的変化に対する抵抗性に優れており、最初に設計された位相差補償効果を維持することができる。一例として50℃、80%RH下で3日間露出した後の正面位相差値(R0)の変化量は0.5nm未満であり、厚み方向位相差値(Rth)の変化量は 1nm未満である。
【0039】
本発明の上記複合構成偏光板セットをIPSモード液晶表示装置に使用することができる。
【0040】
液晶セルは、電圧が無印加された状態で視認側の右側水平方向を基準に反時計回りを正(+)方向にしたとき、液晶配向方向が90°(S−IPS)または液晶配向方向が0°(FFS)であるものを使用することができる。
S−IPSは、下記の数式4で定義されるパネル位相差値(△n×d)値が589nm波長において300nm〜330nm範囲であり、FFSは370〜400nm範囲である。
【0042】
本発明の上側偏光板の吸収軸は下側偏光板の吸収軸と互いに直交するように構成される。このとき下側偏光板の偏光子の吸収軸は視認側の正面から見たとき、垂直方向に位置するのが好ましい。
バックライトユニットから近い下側偏光板の偏光子の吸収軸が垂直方向であると、下側偏光板を通過した光は水平方向に偏光される。水平方向に偏光された光はパネルの電圧が印加された液晶セルを通過して明状態になったときに、光は垂直方向に進んで、吸収軸が水平方向である視認側の上側偏光板を通過する。このとき、視認側で吸収軸が水平方向である偏光サングラスを掛けている人も液晶表示装置から出た光を認知することができる。
しかし、バックライトユニットから近い下側偏光板の偏光子の吸収軸が水平方向であると、偏光サングラスを掛けた人には画像が見えなくなる。
【0043】
また、大型の液晶表示装置の場合、視認側で画像がよく見えるようにするために水平方向に広い液晶表示装置を使用する。これは人間の主視野角が垂直方向より水平方向が広いことを考慮したのであって、広告用などの特殊目的の液晶表示装置を除いた一般的な液晶表示装置では4:3タイプまたは16:9タイプで製作される。
【0044】
本発明の視野角補償の効果はポアンカレ球上に各光学層を通過するときの偏光状態変化を示すことで分かる。
ポアンカレ球は特定視角における偏光状態の変化を表現する方法である。これは液晶表示装置の内部に備えられたそれぞれの光学素子を通過するときの偏光状態の変化を示すことができる。このとき、液晶表示装置の内部に入射される光は偏光された光を使用し、入射される光は液晶表示装置の内部を通過して特定視角に沿って出射される。
本発明において「特定視角」とは、
図4に示した半円座標系でΦ=45゜、θ=60゜の方向である。上記方向に出射される光の偏光状態の変化を全波長に対してポアンカレ球上に示すことで波長分散性を確認することができる。
【0045】
また、高温多湿な環境下に露出した後、上記特定視角(斜め方向)における色感は
図7a〜
図7cの波長による透過率で確認することができる。
本発明は、上側偏光板と下側偏光板に延伸された特定のポジティブAプレートを備えることにより、300〜780nm波長で均一な透過率を示すので、正面だけでなく斜め方向でも色感が優秀である。
【0046】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するだけのものであり、本発明の範疇及び技術思想範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、かかる変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例1】
【0047】
<実施例1>
本発明に係る各光学フィルム、液晶セル及びバックライトなどの実測データを、
図1に示すような積層と共にTECH WIZ LCD 1D(サナイシステム、韓国)に使用した。
図1の構造を以下に具体的に説明する。
【0048】
バックライトユニット40側から下側偏光板10と、電圧無印加状態で視認側の右側水平方向を基準に反時計回りを正(+)方向にしたとき、液晶配向方向が90゜であるIPSモード液晶セル30及び上側偏光板20で構成した。上記下側偏光板10は液晶セル側からポジティブAプレート14と、偏光子11及び保護フィルム13を積層した。上側偏光板20は液晶セル側からポジティブAプレート24と、偏光子21及び保護フィルム23を積層した。
【0049】
視認側の右側水平方向を基準に反時計回りを正(+)方向にしたとき、下側偏光板10の偏光子11の吸収軸12は90゜であり、上側偏光板20の偏光子21の吸収軸22は0゜になるように構成した。
液晶セルはLG Display社製の42インチパネルLC420WU5に適用されたものを使用した。
【0050】
一方、本発明の実施例で使われたそれぞれの光学フィルム及びバックライトは下記のような光学的物性を有している。
下側偏光板10の偏光子11及び上側偏光板20の偏光子21は延伸されたPVAをヨウ素で染色して偏光子機能を付与した。上記偏光子の偏光性能は370〜780nmの可視光線領域で視感度の偏光度が99.9%以上であり、視感度のグループ透過率は41% 以上である。
【0051】
上記視感度の偏光度と視感度のグループ透過率は波長による透過軸の透過率をTD(λ)、波長による吸収軸の透過率をMD(λ)、JIS Z 8701:1999に定義された視感度の補償値を
としたとき、下記の数式5〜9で定義される。ここで、S(λ)は光源スペクトラムであり、光源はC光源である。
【0052】
【数5】
【0053】
【数6】
【0054】
【数7】
【0055】
【数8】
【0056】
【数9】
【0057】
589.3nmの光源で、上側偏光板のポジティブAプレート24と下側偏光板のポジティブAプレート14は、それぞれ正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が25nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。上記上側偏光板内の偏光子21の吸収軸22とポジティブAプレート24の遅相軸25は平行であり、下側偏光板内の偏光子11の吸収軸12とポジティブAプレート14の遅相軸15は
直交している。
【0058】
上側偏光板のポジティブAプレート24と下側偏光板のポジティブAプレート14は自由端延伸する1軸延伸工程で上記の光学特性を有するように製造した。
また、上側偏光板20の外側保護フィルム23及び下側偏光板10の外側保護フィルム13として、入射光589.3nmに対して厚み方向位相差値(Rth)が50nmである三酢酸セルロース(TAC)を使用した。バックライトユニット40としては32インチTV LC320WX4 モデル(LG. PHILIPS LCD 社製)に搭載された実測データを使用した。
【実施例2】
【0059】
<実施例2>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が25nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が80nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が40nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例3】
【0060】
<実施例3>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が80nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が40nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が80nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が40nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例4】
【0061】
<実施例4>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が80nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が40nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が25nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例5】
【0062】
<実施例5>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が30nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が15nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が30nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が15nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例6】
【0063】
<実施例6>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が10nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が5nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が10nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が5nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例7】
【0064】
<実施例7>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が100nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が50nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が100nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が50nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例8】
【0065】
<実施例8>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板のポジティブAプレート24と下側偏光板のポジティブAプレート14はそれぞれ正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が20nmであり、屈折率比(NZ)が0.9であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【実施例9】
【0066】
<実施例9>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板のポジティブAプレート24と下側偏光板のポジティブAプレート14はそれぞれ正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が30nmであり、屈折率比(NZ)が1.1であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【0067】
<比較例1>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板と下側偏光板のポジティブAプレート24、14の代りに正面位相差値(R0)が1nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が2nmである等方性保護フィルムをそれぞれ使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【0068】
<比較例2>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板内の偏光子21の吸収軸22とポジティブAプレート24の遅相軸25は直交するように、下側偏光板内の偏光子11の吸収軸12とポジティブAプレート14の遅相軸15は直交するように構成してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【0069】
<比較例3>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24は正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が25nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14の代りに正面位相差値(R0)が1nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が2nmである等方性保護フィルムを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【0070】
<比較例4>
上記実施例1と同様に構成されるが、上側偏光板20のポジティブAプレート24の代りに正面位相差値(R0)が1nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が2nmである等方性保護フィルムを使用した。
また、下側偏光板10のポジティブAプレート14は正面位相差値(R0)が50nmであり、厚み方向位相差値(Rth)が25nmであり、屈折率比(NZ)が1.0であるものを使用してIPSモード液晶表示装置を製造した。
【0071】
<試験例>
上記実施例及び比較例で製造された複合構成偏光板セット及び液晶表示装置の特性を下記の方法で測定した。
(1)液晶表示装置の偏光度
30×30mm大きさの偏光板をV7100を用いて偏光度を測定した。
(2)複合構成偏光板セットの位相差変化量
50℃の温度、80%RHのチャンバ(高温多湿のチャンバ)に複合構成偏光板セットを投入して、3日経過後の位相差量をそれぞれ測定した。
(3)液晶表示装置の偏光状態変化
ポアンカレ球上でΦ=45゜、θ=60゜斜め方向の偏光状態変化を測定した。
(4)複合構成偏光板セットのシミの発生有無
50℃の温度、80%RHのチャンバ(高温多湿のチャンバ)に複合構成偏光板セットを投入して、3日経過した後のシミの発生有無を目視で確認した。
[シミの発生程度の基準]
○:殆ど発生しない △:普通 ×:たくさん発生する
【0072】
図5は実施例1〜7及び比較例1〜4で製造された液晶表示装置の偏光度を測定したものである。偏光度は延伸有無にかかわらず同等範囲を示すことが確認できる。
【0073】
図6は実施例1〜7及び比較例1〜4で使われた複合構成偏光板セットの位相差変化量を示したものである。上記
図6から、延伸有無によって、高温多湿のチャンバに投入前後の正面位相差値及び厚み方向位相差値の変化量が大きく変わることが確認できる。位相差値の変化量は無延伸フィルムを使用した場合、延伸フィルムを使用した場合に比べて格段に大きいことが分かる。
また、延伸フィルムと無延伸フィルムの組合が延伸フィルムの組合に比べて位相差値の変化量が大きいことが確認できる。
【0074】
また、下記の表1は実施例1〜7及び比較例1の複合構成偏光板セットのシミの発生程度を確認したものである。表1から、本発明の複合構成偏光板セットを使用した実施例1〜7のシミの発生程度が格段に低いことが確認できる。
【0075】
【表1】
【0076】
図7a〜
図7cは実施例1、比較例1及び3で製造されたIPS液晶表示装置を高温多湿のチャンバに投入した後、波長による透過率変化を測定して示したものである。このとき、青色経路の波長は430nmであり、赤色経路の波長は630nmであり、緑色経路の波長は430nmである。
図7をみると、実施例1の複合構成偏光板セットは高温多湿のチャンバに投入した後でも全波長(300〜780nm)で均一な透過率を示す。一方、比較例1及び3では波長による透過率の差が存在することが確認できる。よって、上記の実施例1は波長による透過率変化が低いため正面及び斜め方向における色感が優秀である。
【0077】
図8aは実施例6、比較例1及び4で製造された液晶表示装置の偏光状態変化を示したものである。上記
図8aをみると、等方性フィルムを使用した比較例1と実施例6が同じ視感を示すことが確認できる。このとき、上記
図8aはポアンカレ球上で550nmの光源を基準とし、下側偏光板10の偏光子11を通過したとき(偏光状態1)、ポジティブAプレート14(偏光状態2)、液晶セル30(偏光状態3)及びポジティブAプレート24(偏光状態4)の順で通過した偏光状態の変化である。
図8bは実施例5で製造された液晶表示装置の偏光状態である。上記
図8bの偏光状態をみると、
図8aと同じ視感を示すことが分かる(
図9参照)。
図8cは比較例2で製造された液晶表示装置の偏光状態である。上記
図8cは偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が互いに直交しており、本発明とは偏光状態変化が全然違うように示されたことが確認できる。
図8cの偏光状態は視野角の確保及び視感度の変化が大きいことが予想される。
【0078】
図9は実施例1〜7及び比較例1の全ての視角からの透過率をシミュレーションしたものであって、等方性フィルムを使用した比較例1と同じ視感を示すことが確認できる。
図10〜13は実施例8及び実施例9で製造されたIPSモード液晶表示装置の偏光状態変化及び全ての視角からの透過率を示したものであって、実施例5と非常に似ていることが確認できる。
【0079】
即ち、屈折率比(NZ)が0.9及び1.1であるプレートは屈折率比(NZ)が1.0であるポジティブAプレートと実質的に同じ特性を示すことが確認できる。
なお、本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
保護フィルム、偏光子、及び1軸延伸されたポジティブAプレートの順で積層された上側偏光板と、1軸延伸されたポジティブAプレート、偏光子、及び保護フィルムの順で積層された下側偏光板とを含み、
前記上側偏光板及び下側偏光板のポジティブAプレートは、それぞれ正面位相差値(R0)が10〜100nmであり、その遅相軸が隣接した偏光子の吸収軸と平行になるように配置される複合構成偏光板セット。
(態様2)
前記ポジティブAプレートは、正面位相差値(R0)が10〜80nmである態様1に記載の複合構成偏光板セット。
(態様3)
前記ポジティブAプレートは、正面位相差値(R0)が10〜50nmである態様2に記載の複合構成偏光板セット。
(態様4)
前記ポジティブAプレートは、屈折率比(NZ)が0.9〜1.1である態様1に記載の複合構成偏光板セット。
(態様5)
前記ポジティブAプレートは三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSF)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる群から選ばれたもので製造されるものである態様1に記載の複合構成偏光板セット。
(態様6)
前記上側偏光板と下側偏光板の各吸収軸は互いに直交するように構成された態様1に記載の複合構成偏光板セット。
(態様7)
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合構成偏光板セットを備えるIPSモード液晶表示装置。