(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗布液を貯留する塗布液貯留部と、基板に対して塗布液を吐出するノズルと、前記塗布液貯留部から前記ノズルに対して塗布液を送液する管路と、前記管路に配設された熱式の流量計と、を備えた塗布装置であって、
筐体部と、
前記筐体部内に配設され、前記熱式の流量計をその内部に収納する、透光性を有する樹脂製のフィルムから構成された気室と、
前記気室内に温度制御された気体を供給する気体供給手段と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
塗布液を貯留する塗布液貯留部と、基板に対して塗布液を吐出する複数のノズルと、前記塗布液貯留部から本管を介して供給される塗布液を前記ノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、前記本管に配設され当該本管を流動する塗布液の流量を計測する熱式の基準流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の熱式の支管流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブと、を備えた塗布装置であって、
筐体部と、
前記筐体部内に配設され、前記熱式の基準流量計および前記複数の熱式の支管流量計をその内部に収納する気室と、
前記気室内に温度制御された所定圧力の気体を供給することにより、前記気室内を外部に対して陽圧にする気体供給手段と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、高分子有機EL(Electro Luminescence)材料を用いたアクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置を製造するときには、ガラス基板に対して、TFT(Thin Film Transistor)回路の形成工程、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)電極の形成工程、隔壁の形成工程、正孔輸送材料を含む流動性材料の塗布工程、加熱処理による正孔輸送層の形成工程、有機EL材料を含む流動性材料の塗布工程、加熱処理による有機EL層の形成工程、陰極の形成工程、および、絶縁膜の形成による封止工程が順次実行される。
【0003】
このような有機EL表示装置の製造時に、正孔輸送材料を含む流動性材料や有機EL材料を含む流動性材料等の塗布液を基板に塗布する塗布装置として、塗布液を連続的に吐出する複数のノズルを、基板に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させることにより、基板上の塗布領域に塗布液をストライプ状に塗布する装置が知られている。
【0004】
ところで、このような塗布装置においては、塗布液の塗布量にムラがあった場合においては、これに伴って表示装置の表示ムラ等が発生することから、塗布液の塗布量を極めて正確に制御する必要がある。
【0005】
このため、特許文献1には、塗布液を供給する供給部と、塗布液を吐出する複数のノズルと、処理液供給部から本管を介して供給される塗布液をノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、本管に配設されこの本管を流動する塗布液の流量を計測する基準流量計と、支管に各々配設されこれら各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の支管流量計と、支管に各々配設されこれらの各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブと、を備えた塗布装置において、実吐出流量と基準流量計の流量計測値との関係を示す関係式と、基準流量計の流量計測値と支管流量計の流量計測値との関係を示す関係式とを求め、これらの関係式を利用して流量制御バルブを制御するようにした塗布装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された塗布装置においては、一般的に、流量計として熱式のものが使用される。この熱式の流量計は、発熱体から流体が熱を運び去る程度を測定することにより流体の流量を計測するものである。このような熱式の流量計は、塗布液を汚染することなく微小流量に至るまで塗布液の流量を正確に測定しうることから、上述した塗布装置に多用されている。
【0008】
ところで、上述した特許文献1に記載の塗布装置のように、本管に配設された基準流量計の他、複数の支管に配設された支管流量計を使用する場合に、これら複数の流量計間において温度差が生じ、これによって各流量計の間で流量の測定誤差が生ずる場合がある。このような測定誤差が発生した場合には、塗布液の塗布量にも誤差が生ずることになり、塗布液を正確に塗布することができないという問題が生ずる。このような問題は、例えば、流量計を設置した設置部の扉を開けることにより、負圧で設置部内に外気が流入した場合等において、特に問題となる。
【0009】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、熱式の流量計を使用して塗布液の流量を正確に測定することにより、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、塗布液を貯留する塗布液貯留部と、基板に対して塗布液を吐出するノズルと、前記塗布液貯留部から前記ノズルに対して塗布液を送液する管路と、前記管路に配設された熱式の流量計と、を備えた塗布装置であって、筐体部と、前記筐体部内に配設され、前記複数の流量計をその内部に収納する
、透光性を有する樹脂製のフィルムから構成された気室と、前記気室内に温度制御された気体を供給する気体供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
塗布液を貯留する塗布液貯留部と、基板に対して塗布液を吐出するノズルと、前記塗布液貯留部から前記ノズルに対して塗布液を送液する管路と、前記管路に配設された熱式の流量計と、を備えた塗布装置であって、筐体部と、前記筐体部内に配設され、前記熱式の流量計をその内部に収納する気室と、前記気室内に温度制御された所定圧力の気体を供給することにより、前記気室内を外部に対して陽圧にする気体供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
請求項1または請求項2に記載の発明において、前記気室は、その上方に形成された気体の供給口と、その下方に形成された気体の排出口とを備える。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記供給口と前記熱式の流量計の間に配設された板状部材をさらに備える。
【0014】
請求項5に記載の発明は、塗布液を貯留する塗布液貯留部と、基板に対して塗布液を吐出する複数のノズルと、前記塗布液貯留部から本管を介して供給される塗布液を前記ノズルに接続される複数の支管に分流する分岐部と、前記本管に配設され当該本管を流動する塗布液の流量を計測する熱式の基準流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を計測する複数の熱式の支管流量計と、前記支管に各々配設され当該各支管を流動する塗布液の流量を調節する複数の流量制御バルブと、を備えた塗布装置であって、筐体部と、前記筐体部内に配設され、前記複数の基準流量計および前記複数の複数の支管流量計をその内部に収納する気室と、前記気室内に温度制御された
所定圧力の気体を供給
することにより、前記気室内を外部に対して陽圧にする気体供給手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1
および請求項2に記載の発明によれば、熱式の流量計を使用した場合においても、塗布液の流量を正確に測定することができる。このため、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能となる。
【0016】
請求項
1に記載の発明によれば、気室が透光性を有する樹脂製のフィルムから構成されていることから、簡易な構成でありながら、熱式の流量計の雰囲気温度を一定に維持することが可能となる。また、外部からの視認性がよいことから、熱式の流量計等のメンテナンスを容易に実行することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、気体の流れを一定なものとすることができ、熱式の流量計の雰囲気温度を適正に制御することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、板状部材の作用により、供給口から供給された気体が直接熱式の流量計に噴出されることを防止することができる。このため、熱式の流量計に向かう気体の流れを一定なものとすることができ、熱式の流量計の雰囲気温度を適正に制御することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、熱式の基準流量計および複数の熱式の支管流量計を使用した場合においても、塗布液の流量を正確に測定することができる。このため、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明に係る塗布装置の平面図であり、
図2はその正面図である。
【0022】
この塗布装置は、矩形状のガラス基板100に対して塗布液を塗布するためのものである。より詳細には、この塗布装置は、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用のガラス基板100に、揮発性の溶媒(本実施の形態では、芳香族の有機溶媒)、および、発光材料としての有機EL材料を含む塗布液を塗布するためのものである。
【0023】
この塗布装置は、ガラス基板100を移動させるための基板移動機構11を備える。この基板移動機構11は、
図2に示すように、ガラス基板100をその裏面から保持する基板保持部10を有する。この基板保持部10は、一対のレール12に沿って移動する基台13と、この基台13上に配設された回転台14とにより支持されている。このため、この基板保持部10は、
図1に示すY方向に、ガラス基板100の表面と平行に移動可能となっている。このY方向は、塗布ヘッド20の往復移動方向である主走査方向(
図1におけるX方向)と直交する方向である。以下、このY方向を「副走査方向」とも呼称する。また、この基板保持部10は、鉛直方向(
図1におけるZ方向)を向く軸を中心に、回転可能となっている。
【0024】
この基板保持部10は、ガラス基板100を下側から加熱するヒータをその内部に備える。このガラス基板100の表面には、それぞれがX方向に伸びる複数の塗布領域が、Y方向に、例えば100〜150μmのピッチにて配列形成されている。この塗布領域は、例えば、X方向に配置された隔壁などによって形成されている。
【0025】
また、この塗布装置は、ガラス基板100上に形成された、図示しないアライメントマークを撮像して検出するとともに、塗布ヘッド20による塗布軌跡を撮像するための左右一対の撮像部15を備える。この一対の撮像部15には、各々、CCDカメラが配設されている。また、この塗布装置は、塗布軌跡の試験的な塗布に使用される左右一対の試験塗布ステージ部16を備える。この塗布装置においては、試験塗布ステージ部16に試験的に塗布された塗布軌跡を利用して、塗布ヘッド20の送り制御を調整する構成が採用されている。
【0026】
基板保持部10に保持されたガラス基板100の表面に向けて塗布液を吐出する塗布ヘッド20は、ヘッド移動機構21により、ガイド部22に沿って、ガラス基板100表面に平行な主走査方向(
図1におけるX方向)に往復移動される。この塗布ヘッド20には、同一種類の塗布液を連続的に吐出するための複数のノズル23が副走査方向に関して等間隔に配設されている。
図1および
図2では図示の都合上、5個のノズル23のみを図示しているが、ノズル23の個数はさらに多数となっている。
【0027】
塗布ヘッド20は、エア供給管および後述する複数の支管をひとまとめにした供給管群26を介して、塗布液供給部24およびエア供給源25と接続されている。塗布ヘッド20の往復移動方向(X方向)に関して基板保持部10の両側には、塗布ヘッド20におけるノズル23からの塗布液を受ける2つの受液部17、18が配設されている。また、塗布ヘッド20の往復移動方向(X方向)に関して一方の受液部18の側方には、上述した複数のノズル23の副走査方向のピッチを調整するためのノズルピッチ調整機構19が配設されている。
【0028】
図3は、ヘッド移動機構21におけるスライダ31付近の断面図である。
【0029】
図1に示すヘッド移動機構21におけるガイド部材22には、スライダ31が摺動可能に配設されている。このスライダ31には、ガイド部材22が貫通する貫通孔32が形成されている。このスライダ31には、
図1に示すように、供給管群26に含まれるエア供給管を介して、エア供給源25から一定圧力のエアが供給される。このため、
図3に示すように、貫通孔32の内周面とガイド部22の外周面との間にエアが噴出される。
図3では、エアの噴出方向を符号A1を付す矢印にて示している。これにより、スライダ31がガイド部22に非接触状態にて係合しつつ、主走査方向に移動可能に支持される。
【0030】
図1を参照して、ガイド部22の両端部付近には、Z軸方向を向く軸を中心に回転可能な一対のプーリ33が配設されている。この一対のプーリ33には、無端状の同期ベルト34が巻回されている。スライダ31の一端は、この同期ベルト34に固定されている。一方、スライダ31の他端には、上述した塗布ヘッド20が固定されている。このため、図示しないモータの駆動により同期ベルト34を時計回りあるいは反時計回りに回転させることにより、塗布ヘッド20を(−X)方向または(+X)方向に往復移動させることができる。このとき、上述した気体の作用により、スライダ31をガイド部22に対して非接触状態で支持することができるので、塗布ヘッド20の往復移動を、高速かつ滑らかなものとすることが可能となる。
【0031】
この塗布装置においては、このヘッド移動機構21が、塗布ヘッド20を主走査方向に移動させる主走査方向移動機構となり、基板移動機構11が、基板保持部を副走査方向に移動させる副走査方向移動機構となる。この塗布装置においては、塗布ヘッド20の主走査方向への移動が完了する毎に、ガラス基板100を副走査方向に移動させることにより、ガラス基板100の表面の塗布領域に対して塗布液の塗布を実行する。なお、塗布ヘッド20の主走査時には、受液部17、18の近傍にて加速または減速が完了し、ガラス基板100の上方においては、塗布ヘッド20は、例えば、毎秒3〜5m程度の一定速度で移動する。
【0032】
以上のような構成を有する塗布装置において、塗布液の塗布を開始する場合においては、最初に、ガラス基板100が基板保持部10に保持される。そして、撮像部15によりガラス基板100に形成されたアライメントマークを検出し、その検出結果に基づいて基板保持部10が移動および回転し、ガラス基板100が
図1において実線にて示す塗布開始位置に配置される。この状態において、塗布ヘッド20における複数のノズル23から塗布液の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構21により塗布ヘッド20が主走査方向に移動される。
【0033】
そして、複数のノズル23のそれぞれからガラス基板100の表面に向けて塗布液が一定の流量にて連続的に吐出されるとともに、塗布ヘッド20が主走査方向に連続的に一定の速度にて移動し、ガラス基板100の塗布領域の複数の線状領域に塗布液がストライプ状に塗布される。
【0034】
このようにして、塗布ヘッド20が
図1および
図2中に二点鎖線にて示す受液部18と対向する待機位置まで移動することにより、塗布液によるストライプ状のパターンが形成される。塗布ヘッド20が待機位置まで移動すると、基板移動機構11が駆動され、ガラス基板100が基板保持部10と共に副走査方向に移動する。このとき、塗布ヘッド20では、複数のノズル23から受液部18に向けて塗布液が連続的に吐出されている。
【0035】
以上のような動作を必要な塗布動作が完了するまで継続する。そして、ガラス基板100が塗布終了位置まで移動すると、複数のノズル23からの塗布液の吐出が停止され、塗布装置によるガラス基板100に対する塗布液の塗布動作が終了する。塗布が終了したガラス基板100は、他の塗布装置等に搬送され、この塗布装置により塗布された塗布液以外の他の2色の塗布液が塗布される。そして、ガラス基板100に対して所定の塗布工程が行われた後、他の部品と組み合わされて有機EL表示装置が製造される。
【0036】
図4は、この発明に係る塗布装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0037】
この塗布装置は、装置全体を制御する制御部60を備える。この制御部60は、上述した基板移動機構11、回転台14およびヘッド移動機構21と接続されている。また、この制御部60は、塗布液供給部24における流量制御バルブ40、基準流量計42、流量制御バルブ44、支管流量計45、開閉バルブ46、開閉バルブ51および校正部52と接続されている。なお、図示は省略しているが、この制御部60は、後述する各種の動作を実行するためのRAMやROM等から構成される記憶部や、CPU等から構成される演算部を備える。この制御部60としては、一般的なパーソナルコンピュータを利用してもよく、また、プリント基板等によりこの制御部を構成してもよい。
【0038】
次に、塗布液の供給機構の構成について説明する。
図5は、塗布液供給部24の構成、および、塗布液供給部24と塗布ヘッド20における複数のノズル23との接続関係を示す模式図である。
【0039】
この発明に係る塗布装置における塗布液供給部24は、流量制御バルブ40と、塗布液貯留部41と、基準流量計42と、分岐部としてのマニホールド43と、複数個の流量制御バルブ44a、44b、44c・・・44nと、複数の支管流量計45a、45b、45c・・・45nと、複数の開閉バルブ46a、46b、46c・・・46nと、開閉バルブ51と、校正部52とを備える。各開閉バルブ46a、46b、46c・・・46nは、塗布ヘッド20における複数のノズル23a、23b、23c・・・23nと、各々接続されている。
【0040】
なお、この明細書においては、必要に応じ、複数個の流量制御バルブ44a、44b、44c・・・44nを総称して流量制御バルブ44と、複数の支管流量計45a、45b、45c・・・45nを総称して支管流量計45と、複数の開閉バルブ46a、46b、46c・・・46nを総称して開閉バルブ46と、複数のノズル23a、23b、23c・・・23nを総称してノズル23と表現する。
【0041】
また、この明細書においては、塗布液貯留部41から流量制御バルブ40および基準流量計42を介してマニホールド43に至る、分岐前の管路を、本管と呼称する。また、この明細書においては、マニホールド43から各流量制御バルブ44a、44b、44c・・・44n、各支管流量計45a、45b、45c・・・45n、各開閉バルブ46a、46b、46c・・・46nを介して各ノズル23a、23b、23c・・・23nに至る、分岐後の管路を、支管と呼称する。この塗布装置には、a〜nに相当する複数の支管が存在することになる。さらに、この明細書においては、マニホールド43から開閉バルブ51を介して校正部52に至る管路を、校正用支管と呼称する。
【0042】
塗布液貯留部41は、塗布液を貯留した可撓性の袋状容器を気密チャンバー内に収納した構成を有し、気密チャンバー内に加圧空気を供給することにより塗布液を流量制御バルブ40、基準流量計42およびマニホールド43等に向けて圧送する構成を有する。また、基準流量計42は、塗布液貯留部41から吐出されマニホールド43に流入する塗布液の流量を計測する構成を有する。この基準流量計42は、ヒータと温度センサを利用して発熱体から流体が熱を運び去る程度を測定することにより、塗布液の流量を測定する熱式の流量計が使用される。この基準流量計42による流量の測定値は、
図4に示す制御部60に送信される。
【0043】
各流量制御バルブ44は、
図4に示す制御部60からの指令を受け、各支管を流動する塗布液の流量を調節する。また、各支管流量計45は、各支管を流動する塗布液の流量を計測する。この支管流量計45としては、基準流量計42と同様、ヒータと温度センサを利用して発熱体から流体が熱を運び去る程度を測定することにより、塗布液の流量を測定する熱式の流量計が使用される。この支管流量計45による流量の測定値は、
図4に示す制御部60に送信される。これらの流量制御バルブ44および支管流量計45は、マスフローコントローラを構成する。さらに、各開閉バルブ46は、
図4に示す制御部60からの指令を受け、各支管の流路を開放あるいは閉鎖する。同様に、開閉バルブ51は、
図4に示す制御部60からの指令を受け、マニホールド43から校正部52に至る校正用支管の流路を開放あるいは閉鎖する。
【0044】
校正部52は、校正用支管から吐出される塗布液の重量を計測する図示しない電子天秤を備える。この校正部52は、電子天秤を利用して校正用支管から吐出された塗布液の重量を測定する。そして、制御部60は、測定された重量値と塗布液の比重とに基づいて塗布液の体積を演算するとともに、演算された体積と基準流量計42による塗布液の流量の測定値とを比較することにより、基準流量計42の校正を実行する。
【0045】
このとき、上述したように、塗布液供給部24において使用される基準流量計42および支管流量計45は、発熱体から流体が熱を運び去る程度を測定することにより流体の流量を計測する熱式の流量計が使用される。このような熱式の流量計は、その流量計が設置された雰囲気の温度が流量測定値に影響を与えるという問題がある。このため、この発明に係る塗布装置においては、基準流量計42および支管流量計45を、温度および風量を制御された気室72内に収納する構成を採用している。
【0046】
図6は、塗布液供給部24の斜視図である。また、
図7は、塗布液供給部24の要部を示す概要図である。なお、
図7(a)は塗布液供給部24を正面から見た概要図であり、
図7(b)は塗布液供給部24を側面から見た概要図である。
【0047】
この図において符号84は、本管に配設されたマスフローコントローラを示している。このマスフローコントローラ84は、上述した流量制御バルブ40および基準流量計42を含み、本管を流れる塗布液の流量管理を行うものである。このマスフローコントローラ84は、ボード83の表面に配設されている。また、この図において符号82は、支管に配設された複数のマスフローコントローラを示している。このマスフローコントローラ82は、上述した流量制御バルブ44と支管流量計45とを各々含み、各支管を流れる塗布液の流量管理を行うものである。このマスフローコントローラ82は、基板81の表面に配設されている。
【0048】
これらのマスフローコントローラ82、84および基板81、83は、透光性を有する樹脂製のフィルムから構成される気室72内に収納されている。この気室72は、その上部には比較的大径の気体の供給口74が形成され、その下部には比較的小径の気体の排出口73が形成された直方体状を有する袋状部材から構成される。そして、この気室72には、
図7(a)に示すように、ファスナー等から構成される開閉機構79が形成されている。なお、この実施形態のようにファスナー等から構成される開閉機構79を使用した場合には、気室72の開閉が容易となる。但し、この開閉機構79としては、例えば、メンテナンス時に工具を使用して気室72を開閉する構成のものを採用してもよい。
【0049】
この気室72は、金属等から構成されその前面に扉を有する筐体部71内に収納されている。この筐体部71の上部には、その内部にファンを備えた気体噴出部76が配設されている。この気体噴出部76には、工場配管から供給され、温度制御部77により温度制御された加圧空気等の気体が、供給管78を介して供給される。これにより、気体噴出部76から筐体部71内の気室72に向けて、温度制御された気体によるダウンフローが供給される。なお、気室72における供給口74の下方、すなわち、供給口74とマスフローコントローラ82、84との間には、板状部材75が配設されている。なお、外気の温度が一定に維持されている場合においては、温度制御部77を省略し、外気をそのまま気室72内に取り込むようにしてもよい。
【0050】
このような構成を有する塗布液供給部24においては、気体噴出部76から噴出された温度制御後の気体は、気室72における供給口74から気室72内に侵入する。この気体は、供給口74から排出口73に向かう層状の流れとなって気室72内を流下する。このとき、板状部材75の作用により、供給口74から気室72内に侵入した気体が、直接、マスフローコントローラ82、84に当たることが防止される。
【0051】
この塗布液供給部24においては、温度制御され、かつ、流れが制御された気体が、マスフローコントローラ82、84、すなわち、熱式の基準流量計42および熱式の支管流量計45の周囲を層状に流下する構成であることから、これら熱式の基準流量計42および熱式の支管流量計45の周囲の温度を一定に維持することが可能となる。
【0052】
また、この気室72は、その上部に比較的大径の気体の供給口74が形成され、その下部に比較的小径の気体の排出口73が形成されるとともに、その内部に所定圧力の気体が供給される。このため、気室72内は、外部に対して陽圧となる。従って、筐体部71における扉を開閉した場合においても、気室72内に外気が侵入することはない。このため、マスフローコントローラ82、84、すなわち、熱式の基準流量計42および熱式の支管流量計45の周囲の温度を一定に維持することができる。これにより、熱式の基準流量計42および熱式の支管流量計45を使用して塗布液の流量を正確に測定することができ、塗布液の塗布量を正確に制御することが可能となる。
【0053】
なお、装置のメンテナンス等を行うときには、ファスナー等から構成される開閉機構79を開放する。このときには、気室72が透光性を有する樹脂製のフィルムから構成されることから、外部からの視認性がよく、そのメンテナンスを容易に実行することが可能となる。
【0054】
上述した実施形態においては、気体噴出部76を気室72の上方に配設し、気室72の上側に配置された供給口74から気室72の下側に配置された排出口73に向けて気体を流している。しかしながら、気体を下方から上方に向けて流してもよく、また、横方向(左右方向)に流してもよい。ここで、上述した実施形態のように、気体を上から下に向けて流した場合においては、装置の設置環境(一般的にはクリーンルーム内)におけるダウンフロー方向に気体を流すことになることから、気体の排気を容易に実行することが可能となる。一方、気体を下方から上方に向けて流した場合においては、支管流量計45を含むマスフローコントローラ82付近の加熱された気体を迅速に排出することができるという利点がある。
【0055】
また、上述した実施形態においては、略直方体状の気室72を採用しているが、気室72の形状として、他の形状を採用してもよい。また、気室72の一つの面、または、複数の面と、筐体部71の一部と兼用させてもよい。この場合には、筐体部71内に個別の気密領域を構成するように、シート状のフィルム等を使用して気密室を形成するようにしてもよい。