(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと動力断接用クラッチと電動発電機と変速機と駆動輪とがこの順で配設され、前記クラッチの切断により前記エンジンの動力が遮断可能な車両駆動系と、前記エンジンの排気系に排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記車両駆動系を制御する制御手段とを有する、ハイブリッド自動車を制御する制御装置であって、
前記制御手段は、クリープ走行を含む車両の発進時で且つ前記フィルタの再生要求があった場合にのみ、前記クラッチを接続させるとともに、前記変速機の変速段を通常の発進用変速段よりも低速段側の変速段に切り替える
ことを特徴とする、ハイブリッド自動車の制御装置。
前記制御手段は、車両をクリープ走行させるために前記電動発電機の駆動力によってクリープトルクを発生するモータクリープ発生時に、前記フィルタの再生要求があった場合、前記クラッチを接続させるとともに、前記モータクリープから前記エンジンの駆動力によってクリープトルクを発生するエンジンクリープに切り替える
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン(内燃機関、以下、単にエンジンとも言う)を搭載した自動車(以下、車両とも言う)では、通常、排気中に煤等の粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)が含まれており、これが直接大気中に放出されるのを防ぐために、PMを捕集するパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)と呼ばれるフィルタがエンジンの排気通路に備えられる。
【0003】
DPFのPM捕集量(PM堆積量)には限度があり、また、PM堆積量の増加に伴って排圧が増大し、燃費の悪化を招くので、PM堆積量が基準値以上になったら、DPFに溜まったPMを除去するDPF再生処理を行なう。この再生処理では、DPFの温度を上昇させてDPFに堆積したPMを燃焼し除去する。この排気温度を上昇させる手法には、例えば、触媒方式があり、この方式では、フィルタの前段に強力な酸化触媒を置き、排気中の窒素酸化物(NOx)をより二酸化窒素(NO
2)の多い状態にし、二酸化窒素の強力な酸化性能でPMを燃焼させる。
【0004】
一方、このようなエンジンと電動発電機(以下、モータとも言う)とを車両の駆動源として備えたハイブリッド自動車も開発されており、特許文献1には、ハイブリッド自動車において、DPFの再生時に、バッテリの過充電を生じることなく、迅速に昇温可能とする技術が提案されている。
【0005】
この技術では、DPFの再生のための昇温要求時に、バッテリ充電量SOCが低レベルの時は、エンジンによりモータを駆動して発電を行なわせ、エンジンの高負荷運転により、排気温度を上昇させ、バッテリ充電量SOCが高レベルになると、エンジンでの燃料噴射時期の遅角による排気温度上昇を併用して、発電量を低下させ、過充電を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により、本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置を、
図1〜
図3を用いて説明する。
なお、本実施形態にかかるハイブリッド自動車は、トラックやバスといった大型自動車に適用されるものとして説明するが、本発明は大型自動車に限らず、自動車(以下、車両とも言う)に広く適用しうるものである。また、本ハイブリッド自動車は、エンジン(内燃機関)とモータ(電動発電機)とのいずれも又は一方を車両の走行駆動源として用いることができる、パラレル式ハイブリッド自動車として構成される。
【0016】
〔パワートレイン(駆動系)の構成〕
図1は本実施形態に係るハイブリッド自動車の制御装置をパワートレイン(駆動系)と共に示す模式的な構成図である。
図1に示すように、本ハイブリッド自動車は、エンジン(内燃機関)1の出力軸(回転軸)1aに動力断接用クラッチ3を介して電動発電機(以下、単に「モータ」とも言う)2の回転軸2aが装備され、モータ2の回転軸2aに変速機4の入力軸4aが直結され、エンジン1とモータ2との両方又は一方を車両の走行駆動源として用いることができる、パラレル式ハイブリッド自動車として構成されている。
【0017】
また、クラッチ3には図示しないクラッチアクチュエータによって断接される自動クラッチが用いられ、変速機4には図示しないギヤシフトユニットにより変速段を切り替えられる機械式自動変速機が用いられている。また、変速機4の出力軸4bはプロペラシャフト5,ディファレンシャル6,及びドライブシャフト7を介して左右の駆動輪8に接続されている。
したがって、クラッチ3が接続されているときには、エンジン1の出力軸1aとモータ2の回転軸2aとの双方が駆動輪8と機械的に接続可能とされ、クラッチ3が切断されているときにはモータ2の回転軸2aのみが駆動輪8と機械的に接続可能とされる。
【0018】
モータ2は、バッテリ19に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることによりモータ(電動機)として作動し、その駆動力が変速機4によって変速段に応じた速度に変速された後に駆動輪8に伝達される。また、車両減速時には、モータ2がジェネレータ(発電機)として作動し、駆動輪8の回転による運動エネルギが変速機4を介しモータ2に伝達されて交流電力に変換されることにより回生制動力を発生する。そして、この交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後、バッテリ19に充電され、駆動輪8の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0019】
一方、エンジン1の駆動力は、クラッチ3が接続されているときにモータ2の回転軸2aを経由して変速機4に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪8に伝達されるようになっている。従って、エンジン1の駆動力が駆動輪8に伝達されているときにモータ2がモータとして作動する場合には、エンジン1の駆動力とモータ2の駆動力とがそれぞれ駆動輪8に伝達される。即ち、車両の駆動のために駆動輪8に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン1から供給されると共に、残部がモータ2から供給される。
【0020】
また、バッテリ19の充電率(以下SOCとも言う)が低下してバッテリ19を充電する必要があるときには、モータ2がジェネレータとして作動すると共に、エンジン1の駆動力の一部を用いてモータ2を駆動することにより発電が行なわれ、発電された交流電力をインバータ20によって直流電力に変換した後にバッテリ19に充電する。
【0021】
また、エンジン1の排気通路10には、排気浄化装置11が介装されている。この排気浄化装置11は、ケーシング内に、上流から、酸化触媒12,ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFまたはフィルタと略称する)13が介装されている。酸化触媒12は排気中のHC(炭化水素),CO(一酸化炭素),NOx(窒素酸化物)を酸化処理する。このうち、NOxの酸化は、NOxをよりNO
2(二酸化窒素)の多い状態にする。DPF13の再生要求があると、DPF13をPMが燃焼可能な所定の温度域に昇温させることにより、このNO
2の強力な酸化性能でPMを燃焼させることができる。
【0022】
〔パワートレインにかかる制御系統の構成〕
このようなパワートレインにおけるエンジン1,クラッチ3,モータ2,変速機4の制御について説明する。
【0023】
エンジン1を制御するためのエンジンECU21、モータ2のインバータ20を制御するためのインバータECU22、バッテリ19を制御するためのバッテリECU23、変速機4を制御するための変速機ECU24がそれぞれ設けられ、これらのエンジンECU21,インバータECU22,バッテリECU23,及び変速機ECU24を通じて車両を統合制御するために、車両ECU(制御手段)25が設けられている。また、車両ECU25はクラッチ3の断接も制御する。なお、各ECU21〜25は、メモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。
【0024】
車両ECU25は、車両やエンジン1の運転状態情報、及びエンジンECU21,インバータECU22,バッテリECU23並びに変速機ECU24からの情報などに応じて、これらの制御状態や車両の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン1や電動機2やクラッチ3を適切に運転するための統合制御を行なう。
この際、車両ECU25は、エンジン1が発生すべきトルク(エンジントルク)及びモータ2が発生すべきトルク(モータトルク)を設定する。なお、モータ2が発生すべきトルクは、モータ2を電動機として作動させる場合には正の値となり、モータ2を発電機として作動させる場合には負の値となる。
【0025】
エンジンECU21は、エンジン1の始動・停止制御やアイドル制御、或いは排気浄化装置11の再生制御など、エンジン1自体の運転に必要な各種制御を行なうと共に、車両ECU25によって設定されたエンジン1に必要とされるトルク(エンジントルク)をエンジン1が発生するよう、エンジン1の燃料の噴射量や噴射時期などを制御する。
【0026】
インバータECU22は、車両ECU25によって設定されたモータ2が発生すべきトルク(モータトルク)に基づきインバータ20を制御することにより、モータ2をモータ作動または発電機作動させて運転制御する。
【0027】
バッテリECU(バッテリ充電率検出手段)23は、バッテリ19の温度や、バッテリ19の電圧、インバータ20とバッテリ19との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ19のSOCを求め、求めたSOCを検出結果と共に車両ECU25に送出する。
【0028】
変速機ECU24は、図示しないチェンジレバーユニット,パーキングブレーキスイッチ,ブレーキスイッチ(ストップランプスイッチ),車両ECU25等が接続されており、それぞれの信号が入力されるようになっている。変速機ECU24では、通常走行時には車速センサ(車速検出手段)32により検出された車速Vと車両ECU(制御手段)25により要求されたエンジン負荷(エンジン要求トルク)Tとに基づいて、変速機4のギヤシフトユニットの作動を制御して変速段の切り替えを行なう。
【0029】
また、本発明に特徴的な発進時及びクリープ走行時には、車両重量や道路勾配(道路面の前後傾斜)に基づいて発進変速段(発進段)を設定する。車両ECU25からの発進段変更情報によって設定した発進段を変更する。車両重量は車重センサからの検出情報として取得することができ、道路勾配は傾斜センサからの検出情報として取得することがでる。車両重量は道路勾配と車両の加速度とから推定することもできる。なお、発進段は、通常は3速段(単に、3速とも言う)を用い、車両重量が大きい場合や道路勾配が一定勾配以上の上り勾配で、発進トルクを基準値以上要する場合には、1速段(単に、1速とも言う)または2速段(単に、2速とも言う)を用いる。
【0030】
また、アクセルの操作状態、即ち、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)APを検出するアクセルペダルポジションセンサ(アクセル状態検出手段、以下、「APS」とも言う)31と、車速Vを検出する車速センサ(車速状態検出手段)32と、ブレーキの操作状態、即ち、ブレーキペダルの踏み込み状態BPを検出するブレーキペダルポジションセンサ(ブレーキ状態検出手段、以下、「BPS」とも言う)33とが、更に備えられており、APS31,車速センサ32及びBPS33から各検出情報と、バッテリ充電率検出手段としてのバッテリECU23からのSOC情報とが、車両ECU25に送られるようになっている。
【0031】
車両ECU25では、主にアクセル開度APに基づいて、車両に要求される要求トルクTを算出し、充電率SOCに基づいて、要求トルクTをモータトルクTmとエンジントルクTeとに配分設定し、算出した各トルクをエンジンECU21及びインバータECU22に出力する。なお、要求トルクTは他に車載の補機類から要求されるトルクも加味される。
【0032】
車両ECU25では、充電率SOCが基準量以上あれば、要求トルクTが、モータ2が発生しうる最大トルクTm
MAX又はこれに近い設定トルクを超えない限りは、要求トルクTのすべてをモータトルクTmに割り振り、クラッチ3を遮断してモータ単独走行をし、要求トルクTが最大トルクTm
MAX又はこれに近い設定トルクを超えたら、要求トルクTをモータトルクTmとエンジントルクTeとに割り振り、モータ2とエンジン1との併用走行をする。この併用走行時には、好ましくは、エンジントルクTeは最良燃費領域の近傍の値に設定し、残りをモータトルクTmに割り振る。
【0033】
充電率SOCが基準量未満であれば、要求トルクTのすべてをエンジントルクTeに割り振りエンジン単独走行をし、充電率SOCの減少状態によっては、エンジントルクTeを要求トルクTにモータ2を発電機として駆動する発電用駆動トルクを加えた値として、バッテリを充電する。
【0034】
特に、発進時(微速走行時を含む)には、充電率SOCが基準量以上あることを条件に、原則的にクラッチ3を遮断してモータ単独駆動とする。
ただし、DPF13の再生要求があると、DPF13をPMが燃焼可能な所定の温度域に昇温させるために、エンジン1,クラッチ3,モータ2,変速機に対して特有の制御(DPF再生時制御)を実施する。
【0035】
〔DPF再生時制御〕
車両ECU25は、DPF13の再生を判定する機能(DPF再生判定手段)25aと、DPF13の再生制御を実施する機能(DPF再生制御手段)25bとをそなえ、DPF再生判定手段25aはDPF13のPM堆積量が限度量又は限度量に近い基準量に達したと推定されると、DPF13の再生が必要であると判定して、DPF再生制御手段25bはDPF再生判定手段25aによりDPF13の再生が必要であると判定されると、DPF13に堆積したPMを燃焼させ放出するDPF13の再生制御を実施する。
【0036】
このDPF13の再生制御は、エンジンの図示しないインジェクタによりポスト噴射を行ない、酸化触媒12においてポスト噴射燃料の燃焼(酸化)及び排気中の窒素酸化物(NOx)をより二酸化窒素(NO
2)の多い状態にし、二酸化窒素の強力な酸化性能でPMを燃焼させる。
また、DPF再生判定手段25aは、このDPF13の再生処理により、DPF13のPM堆積量が0又は略0に減少したと推定されると、再生完了と判定し、DPF再生制御手段25bは再生処理を終了する。
【0037】
なお、DPF13のPM堆積量を推定する技術としては、種々の公知技術があり、これらを適宜適用すればよい。
例えば、PM堆積中には、エンジンの運転状態情報としてエンジン回転数とエンジン負荷との情報を得て、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じた単位時間当たりのPM排出量(mg/sec)を予め用意されたマップによって求め、DPF13の新品時または再生後からのエンジン運転時間の累計より、DPF13に堆積しているPM堆積量(エンジン運転対応DPF堆積量)を推定する技術が知られている。
【0038】
また、PM再生中には、DPF13の再生開始時から、エンジン運転状態、特に、燃料供給量に対応してDPF13から離脱するPMの量を推定し、この離脱PM量の積算値が所定値以上になると、PM堆積量が0又は略0に減少した推定し、DPF13の再生完了と判定することができる。
また、DPF13の上流側の圧力を圧力センサで検出し、下流側の圧力を推定して、上流側の圧力と下流側の圧力との差圧からPM堆積量を推定する技術や、DPF13の上流側及び下流側の圧力をともに圧力センサで検出して、これらの差圧(DPF前後差圧)からPM堆積量(差圧対応DPF堆積量)を推定する技術も知られている。この技術は、PM堆積中にもPM再生中にも適用できる。
【0039】
車両ECU25は、DPF13の再生制御を実施する場合に、特に、車両の発進時(いわゆるクリープ走行と呼ばれる微速走行時を含む)には、エンジン1,クラッチ3,モータ2,変速機4を通常時(DPF13の再生制御を行ななわない場合)とは異なる特有の制御(DPF再生時制御)を実施する機能(DPF再生時制御手段)25cを有している。
【0040】
DPF再生時制御手段25cは、このDPF再生時制御として、まず、変速機4の発進段(発進用変速段)を通常時よりも低速段側に切り替える。つまり、通常時には、発進段は3速が選択され、車両重量や道路勾配によっては2速が選択されるが、DPF再生時には、発進段が通常時に3速であれば2速に、発進段が通常時に2速であれば1速に、それぞれ切り替える。
【0041】
また、DPF再生時制御手段25cは、このDPF再生時制御として、いわゆるクリープ走行の際に、モータ2の駆動力によってクリープトルクを発生させる(モータクリープ)のではなくエンジン1の駆動力によってクリープトルクを発生させる(エンジンクリープ)。
【0042】
つまり、ブレーキペダルが操作されて車両が停止している場合には、モータトルクもエンジントルクも駆動輪に出力されないが、ここで、ブレーキペダルの操作が解除され、且つ、アクセルペダルが踏み込まれていない場合、通常時には、充電率SOCが基準量以上あることを条件に、モータ2による駆動トルクによってクリープトルクが与えられ(モータクリープ)、このとき、クラッチ3は遮断され、エンジン1が停止状態であっても作動状態であっても、エンジントルクも駆動輪8に出力されない。一方、DPF再生時には、モータクリープを禁止して、エンジン1が停止していればエンジン1を始動しクラッチ3を接続して、エンジン1による駆動トルクによってクリープトルクを与えるエンジンクリープに切り替える。
【0043】
したがって、例えば、このクリープ走行中に、DPF再生が開始されたら、クラッチ3を遮断してモータ2を単独作動させてモータクリープ走行を行なう通常時の態様から、モータ2の出力トルクを0に低下させモータクリープを停止(モータクリープ禁止)し、エンジン1が停止していればエンジン1を始動しクラッチ3を接続してモータクリープからエンジンクリープに切り替える。
【0044】
そして、DPF再生時制御手段25cは、発進操作(アクセルオン)がされると、DPF再生には通常時よりもモータアシストの割合を減少させるか或いはモータアシストを0とする。つまり、通常時には、充電率SOCが基準量以上あることを条件に、可能な限りモータ2の駆動トルクを用いたモータアシスト走行を行なうが、DPF再生時には、充電率SOCが基準量以上あっても、モータトルクの割合を減少させエンジントルクの割合を増加させる。この割合の変更は、例えばモータトルクの割合に係数k(0<k<1)を乗算するか、エンジントルクの割合に係数kを乗算するかによって行なってもよい。また、モータ2の回転数に基づき、かかる割合の決定を行なってもよい。
【0045】
また、DPF再生時制御手段25cは、発進完了後の走行時にも、DPF再生には通常時よりもモータアシストの割合を減少させる。つまり、通常時には、充電率SOCが基準量以上あることを条件に、可能な限りモータ2のトルクを用いたモータアシスト走行を行なうが、DPF再生には、充電率SOCが基準量以上あっても、モータトルクの割合を減少させエンジントルクの割合を増加させる。この場合も、上記のように係数を用いてもよい。
【0046】
〔作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかるハイブリッド自動車の制御装置は、上述のように構成されるので、例えば、
図3のフローチャートに示すように、DPF再生(フィルタ再生)に関する制御が行なわれる。
【0047】
つまり、
図3に示すように、ステップS10により、DPF(フィルタ)13の再生が必要と判定されると、即ち、DPF再生判定手段25aがDPF13の再生の開始を判定し再生完了と判定するまでは、ステップS20に進み、インジェクタによるポスト噴射によって、DPF再生制御を行なう。
【0048】
そして、ステップS30に進み、車両が停車状態またはクリープ走行(微速走行)状態にあるか否かを判定し、車両が停車状態またはクリープ走行(微速走行)状態になければ、即ち、所定速度以上の走行領域にあれば、ステップS90に進み、発進完了後の走行制御、つまり、通常時より
もモータアシストの割合を減少させ、エンジントルクの割合を増加させる制御を行なう。これにより、エンジン出力(負荷)が高められ、この分だけ排気の温度が高まって、DPF13の昇温を促進する。この結果、DPF13の再生が速やかに完了する。
【0049】
一方、車両が停車状態またはクリープ走行(微速走行)状態
にあれば、ステップS40に進み、車両の発進段を、通常時の発進段よりも低速段側に切り替える。
ここで、ステップS50に進み、発進操作(アクセルペダルの踏み込み、即ち、アクセルオン)があるか否かを判定し、発進操作があれば、ステップS80に進み、通常時には主にモータ2のトルクを用いて発進するところを、エンジン1のトルクを主に用いて発進する(エンジン発進)。これにより、エンジン出力(負荷)が高められ、この分だけ排気の温度が高まって、DPF13の昇温を促進する。この結果、DPF13の再生が速やかに完了する。
【0050】
一方、発進操作がなければ、ステップS60に進み、クリープ走行条件、即ち、アクセルペダルの踏み込みもブレーキペダルの踏み込みもない(アクセルオフ及びブレーキオフ)という条件が成立したら、ステップS70に進み、クリープ走行の際のクリープトルクを、モータ2によるクリープトルクではなくエンジン1によるクリープトルクとする。つまり、モータクリープを禁止して、エンジン1が停止していれば、エンジン1を始動しクラッチ3を接続して、エンジントルクによってクリープトルクを与えるエンジンクリープに切り替える。これにより、エンジン出力(負荷)が高められ、この分だけ排気の温度が高まって、DPF13の昇温を促進する。この結果、DPF13の再生が速やかに完了する。
図2中の実線がDPF13の再生時の状態を示し、
図2中の破線が通常時(再生時でない)の状態を示している。
【0051】
図2は、DPF13の再生時と、通常時(DPF13の再生をしない時)における、停車から発進に至る変速機4のギヤ段,アクセル操作,ブレーキ操作,モータトルク,エンジントルクの変遷を対比して示すタイムチャートである。
図2に示すように、アクセルオフでブレーキオンの車両停止状態では、通常時は変速段が3速を選択されるところをDPF13の再生時には2速が選択される。モータトルク,エンジントルクは、通常時も再生時も0とされる。
【0052】
ここで、ブレーキオフによりクリープ走行に入ると(時点t
1)、通常時はモータトルクをクリープトルクに用いるが、再生時はエンジントルクをクリープトルクに用いる。
そして、アクセルオンにより発進を行なうと(時点t
2)、通常時には、可能な限りモータ2の駆動トルクを用いたモータアシスト走行を行なうが、DPF再生には、モータトルクの割合を減少させエンジントルクの割合を増加させる。
【0053】
このように、本制御装置によれば、クリープ走行時からアクセルオンによる発進時にかけて、エンジン出力(負荷)が高められ、この分だけ排気の温度が高まって、フィルタ(DPF)13の昇温を促進するため、DPF13の再生が速やかに完了するのである。
【0054】
〔その他〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、かかる実施の形態を適宜変更して実施しうるものである。
例えば、上記実施形態では、発進時には、モータトルクを減少させるとしているが、発進時に、クリープ走行時と同様にモータによる発進を禁止してもよい。