(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5809043
(24)【登録日】2015年9月18日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】第4級アンモニウム塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/12 20060101AFI20151021BHJP
C07C 211/63 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
C07C209/12
C07C211/63
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-278051(P2011-278051)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-129607(P2013-129607A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】小坂 遥香
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝久
【審査官】
品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/011352(WO,A1)
【文献】
特開2005−075816(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101050182(CN,A)
【文献】
特開2009−227664(JP,A)
【文献】
特表平05−505614(JP,A)
【文献】
特表2003−533501(JP,A)
【文献】
特開平11−302241(JP,A)
【文献】
特開2000−229919(JP,A)
【文献】
特開平10−182565(JP,A)
【文献】
特開昭50−149605(JP,A)
【文献】
特開2005−179187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/12
C07C 211/63
C07C 211/62
C07B 43/04
C11D 1/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される第3級アミンと炭素数1〜3のハロゲン化アルキルから選ばれる4級化剤とを、水中で、4級化剤/第3級アミン=
0.950〜0.995のモル比で反応させる、第4級アンモニウム塩の製造方法。
【化1】
(式中、R
1は、エステル基、アミド基又はエーテル基が挿入されていてもよい、炭素数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【請求項2】
前記4級化剤がメチルクロライドである、請求項1記載の第4級アンモニウム塩の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物が、一般式(1)中のR1が炭素数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である請求項1又は2記載の第4級アンモニウム塩の製造方法。
【請求項4】
前記第3級アミンと前記4級化剤との反応を、30〜110℃で行う、請求項1〜3の何れか1項記載の第4級アンモニウム塩の製造方法。
【請求項5】
前記第3級アミンと前記4級化剤との反応を、0.5〜3時間行う、請求項1〜4の何れか1項記載の第4級アンモニウム塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第4級アンモニウム塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用洗浄剤や殺菌剤、抗菌剤及び繊維などの柔軟剤や毛髪処理剤、帯電防止剤等に基剤として用いられている第4級アンモニウム塩は、第3級アミンと4級化剤を必要に応じて溶媒を使用して反応させる方法等により製造される。しかし、製造された第4級アンモニウム塩には、反応中に副生する低級アミンや未反応の4級化剤等の不純物を含有し、この不純物は極少量を含有しても匂いや保存安定性を悪くするという問題があった。
【0003】
そのために、従来では匂いや、色相、保存安定性の改善を目的に、反応後に常圧下あるいは減圧下でのキャリアーガスを用いた除去や減圧下での留去が行われている。例えば、特許文献1では、反応溶媒にエチルアルコールやイソプロピルアルコール等を使用して4級化し、次いで、その反応溶媒と共に不純物を留去することで色相を改善している。特許文献2には、加熱下での留去時間が、泡立ちにより長くなることで匂いが悪化するのを改善する方法として、シリコーン等の消泡剤を添加した後、留去する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献3には、溶媒として非イオン界面活性剤を用いて、第3級アミンをジアルキル硫酸で4級化させる、不純物の副生が少なく、匂いの良好な第4級アンモニウム塩の製造方法が開示されている。また、特許文献4には、第3級アミン化合物と4級化剤とを、溶媒不存在下で反応させる第4級アンモニウム塩の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−106370号公報
【特許文献2】特開平11−279132号公報
【特許文献3】特開2005−179187号公報
【特許文献4】特開2001−278846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、製造される第4級アンモニウム塩は低級アルコールとの混合物として得られることから、引火性であるために取り扱い設備の高コスト化、及び商品として低級アルコールによる匂い影響や引火点が検出されて使用できない等の問題が発生する。また、特許文献2でも、効率的な匂い改善の効果が得られない等の問題があった。更に、従来の第4級アンモニウム塩は、過酷な条件で保存された後の匂いの発生を十分に抑制することは困難であり、特許文献1〜4にはこの課題やその課題の解決手段の具体的な言及はない。特許文献3の方法は4級化剤としてジアルキル硫酸を用いるものである。
【0007】
本発明の課題は、製造直後の異臭がなく、過酷な条件で保存された後も異臭の発生を抑制できる高品質な第4級アンモニウム塩が得られる製造方法を提供することである。さらに詳しくは、過酷な条件で保存された後も異臭の発生を抑制できる優れた高品質な第4級アンモニウム塩を、溶媒留去や脱臭う操作等の煩雑な精製を行わずに、水溶液の形態で得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(I)で表される第3級アミン〔以下、第3級アミン(I)という〕と炭素数1〜3のハロゲン化アルキルから選ばれる4級化剤とを、水中で、4級化剤/第3級アミン=0.90〜1.03のモル比で反応させる、第4級アンモニウム塩の製造方法に関する。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R
1は、エステル基、アミド基又はエーテル基が挿入されていてもよい、炭素数6〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R
2、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明により、製造直後の異臭がなく、過酷な条件で保存された後も異臭の発生を抑制できる高品質な第4級アンモニウム塩を製造することができる。さらに、この第4級アンモニウム塩は、水溶液の形態で得ることができ、過酷な条件で保存された後も異臭の発生を抑制できることに加え、溶媒による匂いや引火性を有さないことから、取り扱い性に優れ、衣料用洗浄剤、殺菌剤、抗菌剤、繊維用柔軟剤、毛髪処理剤、帯電防止剤等の調製原料として用いる場合に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いられる第3級アミン(I)は、一般式(I)中のR
1が、エステル基(−COO−もしくは−OCO−)、アミド基(−NHCO−もしくは−CONH−)、エーテル基(−O−)が挿入されていてもよい、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、より好ましくは炭素数10〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。R
1は炭素数8〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、更に炭素数10〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であることがより好ましく、より更に炭素数10〜18の直鎖のアルキル基であることが更に好ましい。
【0013】
4級化剤は炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり、好ましくは炭素数1〜2のハロゲン化アルキルであり、より好ましくはメチルクロライドである。
【0014】
本発明では、水中で第3級アミン(I)を4級化して第4級アンモニウム塩を製造する。また、水の他に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール(炭素数1〜3)、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオール類(炭素数2〜5)、アセトン、アセトニトリルのような有機溶媒を、本反応に影響が無い範囲内で、適宜加えることも可能である。影響のない添加量の範囲としては、例えば、得られた第4級アンモニウム塩水溶液に引火点が発現しない範囲で加えることが出来る。具体的には、エチルアルコールの場合には5質量%以下で添加する事が出来る。本発明では、4級化を水中で行うため、反応溶媒は水を95質量%以上含有することが好ましく、95〜100質量%含有することがより好ましい。
【0015】
水に対する第3級アミン(I)の割合は、得られる第4級アンモニウム塩水溶液の常温における流動性の確保及び効率的な生産性の観点から、4級化剤を最初に導入する前の時点で、20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜70質量%、更に好ましくは30〜60質量%である。この割合は、〔第3級アミン(I)の仕込量/水の仕込量〕×100により求められるものである。
【0016】
本発明では、第3級アミン(I)と4級化剤とを、水中で、4級化剤/第3級アミン=0.90〜1.03のモル比で反応させる。過酷な条件で保存された後の異臭発生を抑制の観点、4級化後の未反応第3級アミン含量の低減や4級化剤の副反応、反応後に残存する4級化剤の廃棄等の後処理への負担低減の観点から、当該モル比は、0.93〜1.00が好ましく、0.950〜0.995がより好ましい。
【0017】
第3級アミンを4級化剤と反応させて第4級アンモニウム塩を製造する際の反応溶媒や、第3級アミンと4級化剤のモル比は、従来、種々の組み合わせが知られている。しかし、本発明は、第3級アミン(I)のようなモノ長鎖アルキル又はアルケニル−ジメチル型の第3級アミンを水中で4級化する場合、当該第3級アミンと4級化剤とのモル比が、製造直後の異臭のみならず、過酷な条件で保存された後の異臭の発生抑制に、大きく影響することを見出したものである。本発明によりこのような異臭低減効果が得られる理由は明らかではないが、水中での4級化反応では、臭気物質前駆体(過酷な条件で保存された後に強い臭気を生ずる物質に変化する前駆体)が生成すると考えられ、本発明のごく限定された4級化剤/第3級アミンのモル比で、その生成が抑制されているものと推定される。
【0018】
第3級アミン(I)と4級化剤との反応温度は、操作性及び反応性の観点並びに第4級アンモニウム塩の分解を抑える観点から、好ましくは30〜110℃であり、より好ましくは40〜80℃であり、更に好ましくは50〜75℃である。この範囲の温度では、第3級アミン(I)は、反応初期では溶解しない状態で水を含む反応系中に存在する。本発明では、不均一系で4級化反応を開始するものであり、4級化剤の添加後、4級化反応が進行するに従って反応系中の第4級アンモニウム塩の割合が増加し、全体として均一系(溶解)へと移行しているものである。
【0019】
また、第3級アミン(I)と4級化剤との反応時間は、好ましくは0.5〜3時間であり、より好ましくは1.0〜2.5時間である。温度を前記範囲とする場合にこの反応時間はより好ましい。なお、この反応時間の始点は、4級化剤の全量が反応系に添加され且つ反応温度に達した時点とすることができる。
【0020】
本発明では、第3級アミン(I)と4級化剤との反応を、30〜110℃、更に40〜80℃、より更に50〜75℃で0.5〜3時間、更に1.0〜2.5時間行うことが好ましい。
【0021】
本発明により製造された第4級アンモニウム塩は、各種洗浄剤(衣料用洗浄剤、身体用洗浄剤、毛髪用洗浄剤等)、毛髪処理剤、柔軟剤等に使用することができる。
【実施例】
【0022】
第3級アミン(I)としてラウリルジメチルアミンを、また、4級化剤としてメチルクロライドを用いた。オートクレーブに、ラウリルジメチルアミン、イオン交換水、メチルクロライドを入れ、63℃まで昇温した。そのままの温度で2時間攪拌し反応させ、第4級アンモニウム塩を含有する水溶液を得た。表1に、実施例1〜5及び比較例1〜4の、4級化剤/第3級アミンのモル比、仕込み量等、及び異臭抑制の結果を示す。
【0023】
なお、表1中のモル比は、ラウリルジメチルアミンの分子量を213.41、メチルクロライドの分子量を50.49として算出した。
【0024】
製造直後の水溶液又は60℃で6ヶ月保存後の水溶液を、100mLのビーカーに入れ、室温にてパネラー5名による官能評価を行い、下記基準で異臭の抑制を評価した。なお、水溶液の保存は、協同硝子株式会社製の広口規格びんPS−No.11(胴径51.5mm、高さ95.5mm、口径39.5mm、ガラス製)に水溶液50mLを入れて密閉、遮光の状態で行った。結果を表1に示す。
◎:5名が異臭を感じなかった
○:4名が異臭を感じなかった
△:2名又は3名が異臭を感じなかった
×:0名又は1名が異臭を感じなかった(4名又は5名が異臭を感じた)
【0025】
【表1】