(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
嵌合される相手コネクタのハウジング(以下、相手側ハウジング)との間を封止するシール部材を備える防水コネクタが知られている(例えば、特許文献1)。
このような防水コネクタは、端子を保持するとともに、外周部にシール部材を介して相手側ハウジングが嵌合される第1ハウジングと、第1ハウジングよりも外側に配置されて第1ハウジングとの間に相手側ハウジングを受容する第2ハウジングとを備えている。
防水コネクタを相手コネクタに嵌合すると、第1ハウジングと相手側ハウジングとの間でシール部材が押し潰されることによって、シール部材が第1ハウジングと相手側ハウジングとの両者に密着し、コネクタ内部が防水される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水コネクタの第2ハウジングは、相手側ハウジングにロックされるロック部材を備えている。
図6(a)に基づいて説明すると、防水コネクタは、端子を保持するとともに、外周部にシール部材50を介して相手側ハウジング61が嵌合される第1ハウジング51と、第1ハウジングとの間に相手側ハウジング61を受容する第2ハウジング52とを備え、第2ハウジング52は、そのフード部53と一体に形成されるロックアーム54を有している。
このような防水コネクタを相手コネクタに嵌合すると、ロックアーム54のロック突起54Aが相手側ハウジング61のロック突起62と互いに係止されることで、防水コネクタと相手コネクタとが抜け止めされる。
図6(b)に示す防水コネクタも、
図6(a)とは形状は異なるが同様の機能の部材を備えており、
図6(a)と同じ符号を付して説明に替える。
【0005】
図6(a)および(b)に示す第2ハウジング52においてフード部53が設けられる範囲では、第1ハウジング51および相手側ハウジング61にフード部53が重ねられるため、このように第2ハウジング52内に覆われた第1ハウジング51と相手側ハウジング61との間に介在するシール部材50は、外部からの液体を被り難い。
しかし、第2ハウジング52においてロックアーム54が設けられる部分には、フード部53が連続していないので、フード部53で覆われていないロックアーム54の下方は、外部に開放されており遮るものがないところがあるので、このロックアーム54下方の空間を通じて、外部からの液体がシール部材50にまで到達し易い。
ここで、コネクタの使用環境によっては、水だけでなく、燃料油、薬液等がコネクタの周辺にあり、そのような液体との接触によってシール部材50が変質、劣化して防水性が低下するおそれがある。
また、水であっても、防水コネクタが高圧の洗浄水を受けたときなどには、シール部材50が水の浸入を許すおそれがある。
以上のような厳しい使用条件を考慮すると、外部からの液体がシール部材50に容易に到達するのは好ましくない。
【0006】
そこで、
図7に示すように、第2ハウジング52のフード部53を全周に亘って設けるとともに、フード部53の外側にロックアーム54を設けることが考えられる。この構造によれば、第1ハウジング51および相手側ハウジング61の全周に亘り、第2ハウジング52で覆われるので、外部の液体がシール部材50に到達するのを抑制する観点からは好ましい。
しかし、
図7のような構造では、ロックアーム54がフード部53よりも外側に設けられるので、コネクタが嵩張り、大型化してしまう。
【0007】
上記のような課題に基づいて、本発明は、コネクタの大型化を招くことなく、外部の液体がシール部材に到達するのを抑制できる防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防水コネクタは、端子を保持するとともに、外周部に相手側ハウジングが環状のシール部材を介して嵌合される第1ハウジングと、第1ハウジングよりも外側に配置されて第1ハウジングとの間に相手側ハウジングを受容する第2ハウジングと、を備え、第2ハウジングは、相手側ハウジングにロックされるロック部材を有している。
そして、本発明は、ロック部材の下方に位置する第1ハウジングの外周部に、相手側ハウジングの周縁部との間を塞ぐ防液壁が立設されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、第1ハウジングの外周部に、相手側ハウジングとの間を塞ぐように防液壁が設けられていることにより、第1ハウジングの外周部と、防液壁と、相手側ハウジングの周縁部との内側にシール部材が覆われるので、第2ハウジングのフード部が設けられていないロック部材の下方においても、外部からの液体がシール部材に容易には到達し難い。
このように、防液壁によって厳しい使用条件下での防水性をも確保しながら、その防液壁は、ロック部材と相手側ハウジングとが係止し合うのに必要な、ロック部材の下方の空間に位置しているので、防液壁を設けても、防水コネクタが大型化しない。
本発明において、ロック部材の下方とは、ロック部材をコネクタの径方向外側から第1ハウジングに投影したときに、ロック部材と第1ハウジングの外周部との間に存在するスペースをいう。
【0010】
本発明の防水コネクタでは、防液壁が、相手側ハウジングの周縁部の厚みと同様の高さとされることが好ましい。
本発明において、第1ハウジングの外周部と相手側ハウジングの周縁部との間を塞ぐように設けられる防液壁は、必ずしも相手側ハウジングの周縁部に突き当てられてはおらず、多くの場合、防液壁と相手側ハウジングの周縁部との間には公差相当の隙間が存在する。この隙間が防液壁の高さ方向に長いと、外部からの液体がシール部材に到達し難いので、その点では防液壁は高い方が良いが、防液壁が高過ぎても、ロック部材に干渉し易くなる。
したがって、本発明のように、防液壁の高さを相手側ハウジングの周縁部の厚みと同様とすれば、ロック部材に干渉することなく、液体の侵入路となりうる隙間の長さを長く確保できるので、防水性の向上に寄与できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防水コネクタによれば、第1ハウジングおよび相手側ハウジングに全周に亘り部材を重ねなくても、外部の液体がシール部材に到達するのを抑制することによって高い防水性を実現できる上、コネクタの大型化を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付する
図1〜
図5に示す実施形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態の防水コネクタ10は、
図1および
図2に示すように相手コネクタ20に嵌合される。
防水コネクタ10において相手コネクタ20に嵌合される側を前、それとは逆側を後と定義して、以下説明する。
【0014】
防水コネクタ10は、相手コネクタ20の各端子21にそれぞれ電気的に接続される図示しない複数の端子を保持するインナーハウジング12と、インナーハウジング12を収容するアウターハウジング40とを備えている。
【0015】
インナーハウジング12は、端子がそれぞれ挿入される複数のキャビティ31が形成されるインナー本体12Aと、インナー本体12Aの前端側に設けられるインナーピース12Bとを備えている。なお、インナー本体12A、インナーピース12Bは、各々、絶縁性の樹脂を射出成形することにより一体に製作される。アウターハウジング40および相手コネクタ20のハウジング(以下、相手側ハウジング)22も同様である。
【0016】
インナー本体12Aの外周部には、環状のシール部材33が装着されている。シール部材33は、インナー本体12Aの外周部に形成された段差13に前方から位置決めされている。このシール部材33は、本実施形態ではシリコーンゴムから形成されているが、ニトリルゴム、フッ素ゴム等から形成することもできる。
【0017】
インナー本体12Aの外周部には、シール部材33よりも後方で、径方向外側に向けて立ち上がる防液壁37が形成されている。したがって、防液壁37は、防水コネクタ10の嵌合方向に直交する壁面を有している。この防液壁37は、インナーハウジング12の周方向に沿って所定の長さL(
図3)に亘り形成されている。
【0018】
また、インナー本体12Aの後端部には、各端子にそれぞれ接続される図示しない複数の電線の外周を一括して止水するワイヤシール36が設けられている。
【0019】
インナーピース12Bは、インナー本体12Aと共に端子を保持する。
インナーピース12Bをインナー本体12Aに組み付けると、インナーピース12Bの後端部によりシール部材33が後方から位置決めされる。
【0020】
次に、アウターハウジング40は、インナー本体12Aの後端部に対向する電線引出部40Aと、電線引出部40Aの周囲に前方に向けて設けられる筒状のフード部40Bとを備えている。
端子に接続された電線が引き出される電線引出部40Aの上面には、相手側ハウジング22にロックされるロックアーム43が一体に設けられている。ロックアーム43は、電線引出部40Aの後端から前方に向けて延びており、フード部40Bまで達している。
【0021】
ロックアーム43は、基端側にロック解除操作部49、および先端側に係止片46を備えるアーム本体44と、アーム本体44の基端側を支持するU字状のバネ片45とを備えている。
係止片46は、アーム本体44の下面側(インナーハウジング12側)から突出している。
【0022】
ロックアーム43の幅方向両側には、電線引出部40Aおよびフード部40Bから立ち上がる一対の保護壁47,47(
図3)が設けられている。
保護壁47,47の前端側には、屋根48が架けられており、係止片46を含むロックアーム43の前端側は、この屋根48によって覆われている。
上記の保護壁47および屋根48が設けられることにより、ロックアーム43に電線、その他の物がぶつかり難くなるので、ロックアーム43が変形、破損から保護される。
このようにロックアーム43が配置される保護壁47,47の間の領域は、フード部40Bが設けられていないためにコネクタ外部に開放されている。
【0023】
アウターハウジング40にインナーハウジング12が収容されると、フード部40Bの内周部と、インナー本体12Aの外周部との間には、相手側ハウジング22を受容する間口が形成される。
そして、上述の防液壁37は、
図2に示すように、バネ片45よりも前側にあって、かつアーム本体44との間に間隔をおいてアーム本体44の下方に位置する。アーム本体44の下方、すなわちロックアーム43と、インナー本体12Aおよび相手側ハウジング22との間には、ロックアーム43と相手側ハウジング22とを互いに係止するのに必要な空間Sが形成される。防液壁37は、この空間Sに位置しており、ロックアーム43に干渉しない高さおよび厚みで設けられている。
【0024】
相手側ハウジング22は、端子21を保持するとともに、シール部材33を介してインナーハウジング12の外周部に嵌合される。
端子21は、その一端側が相手側ハウジング22内に挿入されるとともに、他端側が相手側ハウジング22の外側に延出し、途中から下方に向けて屈曲している。端子21の他端には、タインプレート(整列板)27が装着される。
【0025】
相手側ハウジング22の外周部には、防水コネクタ10のロックアーム43の係止片46と互いに係止される係止突起25が設けられている。
また、相手側ハウジング22の周縁部22Aには、隙間を介して防液壁37が対向している。防液壁37の高さは、周縁部22Aの厚みと同様とされるのが好ましい。
【0026】
以上説明した構成の防水コネクタ10と相手コネクタ20とを嵌合させるには、アウターハウジング40のフード部40Bとインナーハウジング12との間に相手側ハウジング22を挿入する。すると、相手側ハウジング22によってシール部材33が押し潰されて、相手側ハウジング22とインナーハウジング12とに密着するので、内部の防水が図られる。
一方、相手側ハウジング22の係止突起25によってロックアーム43の係止片46が押し上げられるので、バネ片45が撓む。そして、係止片46が係止突起25を乗り越えるとバネ片45の撓みが復元し、係止片46と係止突起25とが互いに係止される。これによって防水コネクタ10と相手コネクタ20との抜け止めが図られる。
【0027】
防水コネクタ10と相手コネクタ20との嵌合を解除するには、ロック解除操作部49を押し下げる。これによってバネ片45が撓んで、係止突起25から係止片46が離れるので、双方のコネクタ10,20を前後方向に離間させて嵌合を解除することができる。
【0028】
さて、防水コネクタ10と相手コネクタ20とを嵌合すると、アウターハウジング40のフード部40Bにより、相手側ハウジング22が所定の間隙を介して覆われる。このため、フード部40Bにより覆われる範囲では、アウターハウジング40の内部に水等の液体が侵入し難いので、シール部材33まで外部からの液体が到達することは困難である。
一方、ロックアーム43が設けられる範囲は外部に開放されているので、ロックアーム43の下方の空間Sには外部の液体が侵入し易い。
【0029】
しかるに、空間Sには、防液壁37が存在しており、防水コネクタ10と相手コネクタ20とが嵌合されると、防液壁37によって、インナーハウジング12と相手側ハウジング22との間が塞がれる。これにより、インナーハウジング12の外周部と、防液壁37と、相手側ハウジング22の周縁部22Aとの内側にシール部材33が覆われる。
したがって、
図5に示すように、空間Sに侵入した液体がシール部材33に到達するまでには、防液壁37と相手側ハウジング22の周縁部22A先端との間の経路R1、相手側ハウジング22の周縁部22A下端とインナー本体12Aの外周部との間の経路R2からなる屈曲した狭隘路を経なければならない。この狭隘路の屈曲部で液体の流れが停滞するので、一方向に延出する直線状の経路だけからなる狭隘路よりも、液体の流れを阻止し易くなる。このため、外部から液体が空間Sに侵入したとしても、本実施形態によれば、シール部材33がその液体を容易には被らない。
【0030】
しかも、防液壁37が相手側ハウジング22の周縁部22Aの厚みと同様の高さを有していると、狭隘路を最大限に長く確保できるので、外部から液体がシール部材33に到達するのをより十分に抑制できる。
なお、本願における「同様の高さ」とは、周縁部22Aの厚みより防液壁37が少し低い場合および少し高い場合を含む。ここで、周縁部22Aの厚みより防液壁37が少し低い場合には、U字状のバネ片45が撓むとき、その先端が防液壁37に当たらないようにすることができることが多く、好適である。
さらに、防液壁37が、保護壁47,47間の間隔に対応する長さLで設けられていると、ロックアーム43が設けられることにより外部に開放される範囲の全体において、上述のようにシール部材33が覆われるので、シール部材33は、全周に亘り、外部の液体を被り難い。これによって防水性をより向上させることができる。
【0031】
以上のように、外部からの液体がシール部材33に到達し難いので、シール部材33を変質、劣化させる成分を有する燃料油や薬液等の液体がシール部材33に到達して防水性が低下するリスクを抑えることができる。このため、シール部材33に、そのような液体に対する耐性が低く安価な材料を用いることができるので、コスト低減にも寄与できる。
また、高圧の水が空間Sに侵入したとしても、その水がシール部材33に至る屈曲した狭隘路で減圧され、シール部材33がシール圧を上回る水圧を受けないので、高圧洗浄にも耐える。
【0032】
本実施形態によれば、上述のように、インナーハウジング12の外周部に防液壁37が設けられることにより、外部から空間Sに液体が侵入しても、その液体がシール部材33に到達するのを抑制できる。このように高い防水性能を得るのに寄与する防液壁37は、アウターハウジング40の内側に位置しているので、防水コネクタ10の寸法が大きくなることはない。
本実施形態の防水コネクタ10は、その高い防水性能から、例えば、二輪車に搭載される機器等、厳しい条件で使用される機器に特に好適に用いることができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、インナー本体12Aおよびインナーピース12Bの二つの部材により構成されたインナーハウジング12を用いているが、シール部材33を保持する溝が外周部に形成された単一部材からなる第1ハウジングを用いることもできる。
また、上述した防液壁37の形態は一例であり、例えば階段状の防液壁にすることもできる。この場合、相手側ハウジングの周縁部も階段状(ただし、防液壁とは上下反転)とし、両者を噛み合わせると、インナーハウジング12の外周部と相手側ハウジング22との間の狭隘路を長くとれるとともに、その狭隘路に複数の屈曲部が設けられるので、防水性の向上に寄与できる。
防水コネクタ10および相手コネクタ20のハウジングの形態は、上記に限らず、種々の構成とすることができる。
以上で述べた以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。